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特許7449407ベンゾピラノン化合物の製造方法およびこれに使われる新規の中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ベンゾピラノン化合物の製造方法およびこれに使われる新規の中間体
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/773 20060101AFI20240306BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240306BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20240306BHJP
   C07C 67/287 20060101ALI20240306BHJP
   C07D 311/30 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C07C69/773 CSP
A61K31/353
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P21/00
A61P1/04
A61P17/06
A61P3/10
A61P11/06
A61P11/00
A61P35/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P13/12
A61P25/28
A61P29/02
A61P25/04
A61P31/04
A61P43/00 111
C07C67/14
C07C67/287
C07D311/30
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022563128
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2021095035
(87)【国際公開番号】W WO2021215900
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0047341
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520127775
【氏名又は名称】アイラブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】イ ソクホ
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0044025(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108676063(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0013162(KR,A)
【文献】特表2008-543944(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0026308(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式2の化合物:
[化学式2]
【請求項2】
下記の化学式3の化合物:
[化学式3]
【請求項3】
4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて下記の化学式2の化合物を収得する段階を含む、化学式2の化合物の製造方法。
[化学式2]
【請求項4】
前記反応は-20~0℃でテトラヒドロフラン(THF)、エーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、エチルエーテル、およびダイオキシンからなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中でピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、ルチジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸セシウムからなる群から選択された一つ以上の塩基存在下で遂行されることを特徴とする、請求項3に記載の化学式2の化合物の製造方法。
【請求項5】
下記の化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて下記の化学式3の化合物を収得する段階を含む、化学式3の化合物の製造方法。
[化学式2]
[化学式3]
【請求項6】
前記反応は常温でジクロロメタン(DCM)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中で遂行されることを特徴とする、請求項5に記載の化学式3の化合物の製造方法。
【請求項7】
下記の化学式3の化合物を下記の化学式4の化合物と反応させて下記の化学式5の化合物を収得する段階;および
下記の化学式5の化合物に酸を処理して下記の化学式1の化合物を収得する段階を含む、化学式1の化合物の製造方法。
[化学式1]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項8】
前記化学式5の化合物を収得する段階で前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させた後、収得される反応混合物をpH7以下に調節することを特徴とする、請求項7に記載の化学式1の化合物の製造方法。
【請求項9】
前記化学式5の化合物を収得する段階は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、およびジクロロメタン(DCM)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中でN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリエチルアミン(TEA)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)からなる群から選択された一つ以上の塩基存在下で遂行されることを特徴とする、請求項7に記載の化学式1の化合物の製造方法。
【請求項10】
前記化学式1の化合物を収得する段階は、エチルアセテート(EA)、メタノール、イソプロピルアルコール(i-PrOH)、およびメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中で遂行され、前記酸は塩酸またはトリフルオロ酢酸であることを特徴とする、請求項7に記載の化学式1の化合物の製造方法。
【請求項11】
下記の化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて前記化学式3の化合物を収得する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の化学式1の化合物の製造方法。
[化学式2]
【請求項12】
4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて前記化学式2の化合物を収得する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の化学式1の化合物の製造方法。
【請求項13】
4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて下記の化学式2の化合物を収得する段階;
下記の化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて下記の化学式3の化合物を収得する段階;
下記の化学式3の化合物を下記の化学式4の化合物と反応させて下記の化学式5の化合物を収得する段階;および
下記の化学式5の化合物に酸を処理して下記の化学式1の化合物を収得する段階を含む、化学式1の化合物の製造方法。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項14】
下記の化学式1の化合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加して化学式1の化合物のIV型結晶を収得する段階を含む、化学式1の化合物のIV型結晶の製造方法。
[化学式1]
【請求項15】
4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて下記の化学式2の化合物を収得する段階;
下記の化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて下記の化学式3の化合物を収得する段階;
下記の化学式3の化合物を下記の化学式4の化合物と反応させて下記の化学式5の化合物を収得する段階;
下記の化学式5の化合物に酸を処理して下記の化学式1の化合物を収得する段階;および
下記の化学式1の化合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加してIV型結晶の化学式1の化合物を収得する段階を含む、化学式1の化合物のIV型結晶の製造方法。
[化学式1]
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
【請求項16】
前記化学式1の化合物を前記メチルイソブチルケトン(MIBK)に添加する温度は15~25℃であることを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の化学式1の化合物のIV型結晶の製造方法。
【請求項17】
前記化学式1の化合物のIV型結晶は11.3、14.7、14.9、16.9、17.2、22.5、および25.7からなる群から選択された4個以上の回折角2θ±0.2°で特徴的なピークを示すことを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の化学式1の化合物のIV型結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記の化学式1で表示される2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノンの製造方法およびこれに使われる新規の中間体に関する。
[化学式1]
【背景技術】
【0002】
TNFはサイトカインの一種で、正常なTNFは炎症反応に重要な役割を担当するが、過剰生産されたTNFは大食細胞を刺激して細胞に過度な炎症反応を誘発してリウマチ関節炎、炎症性腸疾患、乾癬、強直性脊椎炎などの多くのTNF関連疾患を引き起こす。TNF関連疾患を治療するためのTNF抑制剤として、エタナセプト、アダリムマブ、インフリキシマブなどがある。これらはバイオ医薬品であって、高費用であり、反復的な注射を必要とし、耐性発生可能性があり、保管が難しい短所を有する。
【0003】
韓国登録特許第10-1934651号ではTNFに直接結合してTNF活性を抑制する新規の化合物として、下記の化学式1の構造を有する化合物である2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノン(以下、「化学式1の化合物」)を開示するが、これは優秀なTNFの細胞毒性抑制効果およびTNFの細胞結合抑制効果を有し、TNFによる細胞信号伝達を抑制し、敗血症、リウマチ関節炎、炎症性腸疾患、敗血症-誘導急性腎臓損傷などに治療効果を示し、市販中のアダリムマブおよびエタナセプトと比較しても匹敵するほどの効果を示す。
[化学式1]
【0004】
韓国登録特許第10-1934651号には下記のような製造方法が開示されており、R3、R4およびR6が水素であり、R5がClであるとき、これによると、総3段階を経て前記化学式1の化合物を製造することができる。
【0005】
ただし、前記開示された製造方法の出発物質を合成するためには多くの段階の追加工程が必要であるが、具体的には、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸から次のような4段階の追加工程を経て合成され得る。
【0006】
すなわち、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を出発物質として前記化学式1の化合物を製造するためには、総7段階の工程を経なければならない。
前記製造方法は前記化学式1の化合物の合成のために、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸にホスホラン基を先に導入し、その後2,5-ジフルオロベンゾイルオキシ基を導入した後、Wittig反応を通じて4-ベンゾピラノン化合物を合成するが、これによると、ホスホラン基を導入する反応とWittig反応が別途の段階に分かれて反応段階が増加し、ホスホラン基を先に導入するためにヒドロキシ基の保護基付着反応および脱保護反応が追加的に伴わなければならないため、反応段階が増加する。また、前記製造方法は収率が15%未満と非常に低いため、大量合成に適していない問題点を有する。
したがって、前記化学式1の化合物を商業的に生産するためには、より効率的で経済的な製造方法が必要である。
そこで、本発明者らは、高い収率で大量合成が可能であり、さらに効率的で経済的な新規の製造方法を開発して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1934651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は下記の化学式1の化合物を効率的および経済的に合成でき、高い収率で大量製造できる下記の化学式1の化合物の新規の製造方法を提供しようとする。
[化学式1]
【0009】
また、本発明は化学式1の化合物の製造方法に使われる新規の中間体である下記の化学式2および3の化合物を提供しようとする。
[化学式2]
[化学式3]
また、本発明は化学式2および3の化合物の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は新規の下記の化学式2および3の化合物を提供する。
[化学式2]
[化学式3]
【0011】
本発明は前記化学式2の化合物の製造方法を提供する。
一実施態様において、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて前記化学式2の化合物を製造することができる。前記反応は-20~0℃でテトラヒドロフラン(THF)、エーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、エチルエーテル、およびダイオキシンからなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中でピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、ルチジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸セシウムからなる群から選択された一つ以上の塩基存在下で遂行され得るが、これに制限されるものではない。
【0012】
本発明は前記化学式3の化合物の製造方法を提供する。
一実施態様において、前記化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて前記化学式3の化合物を製造することができる。前記反応は、常温でジクロロメタン(DCM)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中で遂行され得るが、これに制限されるものではない。
【0013】
本発明は下記の化学式1の化合物の製造方法を提供する。
[化学式1]
【0014】
前記化学式1の化合物は、前記化学式3の化合物を下記の化学式4の化合物と反応させて下記の化学式5の化合物を収得する段階;および下記の化学式5の化合物に酸を処理して前記化学式1の化合物を収得する段階を含む製造方法で製造され得る。
[化学式4]
[化学式5]
【0015】
また、前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させた後、収得される反応混合物をpH7以下に調節して不純物の生成を減少させることができる。前記化学式5の化合物を収得する段階は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、およびジクロロメタン(DCM)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中でN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリエチルアミン(TEA)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)からなる群から選択された一つ以上の塩基存在下で遂行され得るが、これに制限されるものではない。前記化学式1の化合物を収得する段階は、エチルアセテート(EA)、メタノール、イソプロピルアルコール(i-PrOH)、およびメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中で遂行され得、前記酸は塩酸またはトリフルオロ酢酸であり得るが、これに制限されるものではない。
【0016】
さらに他の実施態様において、前記化学式1の化合物は、前記化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて前記化学式3の化合物を収得する段階;前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させて前記化学式5の化合物を収得する段階;および前記化学式5の化合物に酸を処理して前記化学式1の化合物を収得する段階を含む製造方法で製造され得る。
前記化学式3の化合物を収得する段階は、常温でジクロロメタン(DCM)およびジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中で遂行され得るが、これに制限されるものではない。
【0017】
ここで、前記化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させた後に製造される前記化学式3の化合物をメタノールと反応させて下記の化学式6の化合物が製造されるかを確認することによって、前記化学式3の化合物の製造の有無および収率を確認することができる。下記の化学式6の化合物の収得の有無を確認することによって、分離し難い前記化学式3の化合物の収得の有無を確認した後、前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させて前記化学式5の化学物を収得する段階に進行することができる。
[化学式6]
【0018】
さらに他の実施態様において、前記化学式1の化合物は、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて前記化学式2の化合物を収得する段階;前記化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて前記化学式3の化合物を収得する段階;前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させて前記化学式5の化合物を収得する段階;および前記化学式5の化合物に酸を処理して前記化学式1の化合物を収得する段階を含む製造方法で製造され得る。
【0019】
前記化学式2の化合物を収得する段階は、-20~0℃でテトラヒドロフラン(THF)、エーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、エチルエーテル、およびダイオキシンからなる群から選択された一つ以上の反応溶媒の中でピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、ルチジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、および炭酸セシウムからなる群から選択された一つ以上の塩基存在下で遂行され得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
一実施態様において、前記化学式1の化合物は下記の反応式1によって製造され得る。
[反応式1]
【0021】
本発明は前記化学式1の化合物のIV型結晶の製造方法を提供する。
一実施態様において、前記化学式1の化合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加して化学式1の化合物のIV型結晶を製造することができる。前記化学式1の化合物を前記メチルイソブチルケトン(MIBK)に添加する温度は15~25℃であり得る。
一実施態様において、本発明に係る前記化学式1の化合物の製造方法で前記化学式1の化合物を製造した後、前記化学式1の化合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加して化学式1の化合物のIV型結晶を製造することができる。
一実施態様において、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸を2,5-ジフルオロベンゾイルクロリドと反応させて前記化学式2の化合物を収得する段階;前記化学式2の化合物をオキサリルクロリドと反応させて前記化学式3の化合物を収得する段階;前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させて前記化学式5の化合物を収得する段階;前記化学式5の化合物に酸を処理して前記化学式1の化合物を収得する段階;および前記化学式1の化合物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に添加してIV型結晶の化学式1の化合物を収得する段階を含んで化学式1の化合物のIV型結晶を製造することができる。
前記化学式1の化合物のIV型結晶は、11.3、14.7、14.9、16.9、17.2、22.5、および25.7からなる群から選択された4個以上の回折角2θ±0.2°で特徴的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示すことができる。前記IV型結晶は10℃/minの昇温条件の示差走査熱量計(DSC)分析時、約160℃~約170℃範囲で吸熱ピークを有するか、熱重量(TGA)曲線が160℃以下で重さの損失がないものであり得る。
【0022】
本発明は、本発明に係る前記化学式1の化合物の製造方法で製造された前記化学式1の化合物を提供する。
【0023】
本発明は、本発明に係る前記化学式1の化合物の製造方法で製造された前記化学式1の化合物を含むリウマチ関節炎、小児リウマチ関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、板状乾癬、小児板状乾癬、乾癬性関節炎、多関節型小児特発性関節炎、ベーチェット腸炎、強直性脊椎炎、軸性脊椎関節炎、小児骨付着部炎関連関節炎、骨関節炎、リウマチ多発筋痛、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、喘息、シェーグレン症候群、肺炎、慢性閉鎖性肺疾患、サルコイドーシス、環状肉芽腫、ウェゲナー肉芽腫症、動脈硬化症、血管炎、心不全、心筋梗塞、腎臓損傷、腎臓炎、移植片対宿主病、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、痛み、ブドウ膜炎、ベーチェット病、化膿性汗腺炎、毛孔性紅色粃糠疹、糖尿病性脂肪類壊死生成、壊疽性膿皮症、スウィート症候群、角層下膿疱性皮膚症、皮膚硬化症、皮膚筋炎、敗血症および敗血性ショックからなる群から選択されたTNF過剰発現疾患の治療または予防用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造方法は、前記化学式1の化合物の合成のために4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸に2,5-ジフルオロベンゾイルオキシ基を導入する段階を先行した後、化学式4で表示されるtert-ブチル2-(トリフェニルホスホラニリデン)アセテートを反応させる段階でホスホラン中間体化合物の合成およびWittig反応を通じての4-ベンゾピラノン化合物の合成が一つの段階からなるようにして、既存の製造方法対比製造段階を減少させた。
また、本発明は反応中間体化合物である前記化学式3の化合物を分離して、中間体化合物の収率および反応の進行の有無を確認できるようにすることによって、前記化学式1の化合物の収率を向上させた。
【0025】
また、本発明は前記化学式3の化合物を前記化学式4の化合物と反応させた後、収得される反応混合物のpHを調節することによって不純物の生成を減少させて収率をさらに向上させた。
したがって、本発明は既存の製造方法から不要な工程を省略し反応速度を下げて前記化学式1の化合物を経済的かつ効率的に合成し、中間体の分離およびpH調節を通じて前記化学式1の化合物をさらに高い収率で収得できるようにした。
これにより、本発明の前記化学式1の化合物の製造方法を通じて前記化学式1の化合物を商業的に大量生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例は単に説明のためのものであり、本願発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0027】
[実施例1]4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸の製造
[反応式2]
テトラヒドロフラン(THF)(15L)、4-クロロ-2-ヒドロキシ安息香酸(3.9Kg)、ピリジン(1.79Kg)を15~30℃で反応器に入れて撹はんしながら-20~0℃に冷却させた。別途の装置にテトラヒドロフラン(THF)(45L)、2,5-ジフルオロベンゾイルクロリド(3.99Kg)溶液を製造した後、前記混合物にゆっくり滴加した。反応が完了した後、-10~0℃で反応物にエチルアセテート(EA)を添加した。精製水を添加して反応を終結させた後、反応温度を常温に上昇させた。エチルアセテート(EA)(20L)を加えた後、水(20L)で洗浄した後に水層を除去した。有機層を1MのHCl(9L)で洗浄した。有機層をpH4~5となるまで水(9L)で洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、ジメチルホルムアミド(DMF)(18L)に溶解させて水(72L)を加えた後、6時間の間常温で撹はんした。生成された固体を濾過した後、水(9L)で二回洗浄して固体を40~50℃で17時間の間真空乾燥して4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸6.4kgを収得した(純度:99%、収得率:89.5%)。
前記反応において、ピリジンの代わりにジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カリウム(K2CO3)または酢酸ナトリウム(CH3COONa)を使った場合、73.1%、52.4%、39.0%または55.4%純度の4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸を収得した。
前記反応をテトラヒドロフラン(THF)の代わりにエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)またはジクロロメタン(DCM)中で遂行した場合、77.1%、54.6%または47.4%純度の4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸を収得した。
前記反応をジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使ってアセトニトリル(ACN)中で遂行した場合は61.1%、トリエチルアミン(TEA)を使ってジクロロメタン(DCM)中で遂行した場合は37.5%、トリエチルアミン(TEA)を使ってメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)中で遂行した場合は58.3%、トリエチルアミン(TEA)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)を共に使ってジクロロメタン(DCM)中で遂行した場合は41.8%純度の4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸を収得した。
【0028】
[実施例2]5-クロロ-2-(クロロカルボニル)フェニル2,5-ジフルオロベンゾエートの製造
[反応式3]
ジクロロメタン(DCM)(35L)および4-クロロ-2-((2,5-ジフルオロベンゾイル)オキシ)安息香酸(6.2Kg)を反応器に加えた後、ジメチルホルムアミド(DMF)(10mL)を反応器に加えた。常温で撹はんしながらオキサリルクロリド(5.0Kg)をゆっくり滴加した後、3時間さらに撹はんした。前記混合物を減圧濃縮してn-ヘプタン(35L)を加え、40℃以下で2時間撹はんした。n-ヘプタンが約50~60Lとなるまで濃縮した後、反応液の温度を常温に冷却させて追加的に1~2時間さらに撹はんした。生成された固体を濾過しn-ヘプタン(9L)で洗浄した後、30~40℃で30時間の間真空乾燥して5-クロロ-2-(クロロカルボニル)フェニル2,5-ジフルオロベンゾエート5.84kgを収得した(純度:100%、収得率:88.2%)。
【0029】
[実施例3]tert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレートの製造
[反応式4]
段階1:
トルエン(36L)、tert-ブチル2-(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(7.78Kg)およびN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(7.01Kg)を常温で反応器に加えた。反応液を撹はんしながら-5~5℃に冷却した後、5-クロロ-2-(クロロカルボニル)フェニル2,5-ジフルオロベンゾエート(5.7Kg)を反応器にゆっくり添加した後、22時間の間撹はんした。5%炭酸水素ナトリウム水溶液を使って反応を終結させた後、ジクロロメタン(DCM)を添加して反応液の温度を25~35℃に上昇させた。前記反応混合物を水相のpHが7以下となるまで水(10L)で洗浄した。
段階2:
有機層を95~105℃で還流撹はんした。その後、前記反応混合物を50~60℃に冷却させて濃縮した後、トルエン残余物が1.0%以下となるまで残余物をイソプロピルアルコール(IPA)(15L)中でスラリー化した。前記混合物の温度を17~23℃に調整した後、結晶化のために母液のうちtert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレートの重量が2.0wt%以下となるまで前記混合物を17~23℃で撹はんした。懸濁液を濾過して固体をイソプロピルアルコール(3L)で洗浄した後、イソプロピルアルコール(IPA)およびトルエンの総含量が1.0wt%以下となるまで固体を30~40℃で17時間の間真空乾燥した。その後、温度を20~30℃に冷却させてtert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレート4.46kgを収得した(純度:99.8%、収得率:65.4%)。
前記反応において、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミドの代わりにトリエチルアミン(TEA)またはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使った場合、76.0%または70.0%純度のtert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレートを収得した。
前記反応をトルエンの代わりにテトラヒドロフラン(THF)またはジクロロメタン(DCM)中で遂行した場合、56.1%または21.7%純度のtert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレートを収得した。
【0030】
[実施例4]2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノンの製造
[反応式5]
エチルアセテート(EA)(12.6L)およびtert-ブチル7-クロロ-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヨウ素-4H-クロメン-3-カルボキシレート(4.2Kg)を反応器に加えた後、45~55℃で完全に溶解させた後、15~25℃に冷却した。反応液に4MのHCl/エチルアセテート(EA)(21.0L)溶液をゆっくり滴加した後、42時間の間撹はんした。生成された固体をn-ヘプタン(22.5L)および水(22.5L)でそれぞれ洗浄した。40~50℃で27時間の間真空乾燥した。
メチルイソブチルケトン(MIBK)8.2Kgを反応器に加えて2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノンを添加した。2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノンの結晶型がIV型となるまで前記混合物を15~25℃で23時間の間撹はんした。固体を濾過し、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)で洗浄した後、30~40℃で26時間の間真空乾燥して2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノン2.75Kgを収得した(純度:99.9%、収得率:75.4%)。
前記反応をエチルアセテート(EA)の代わりにメタノール、イソプロピルアルコール(i-PrOH)またはメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)中で遂行した場合、52.2%、28.3%または85.8%純度の2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-カルボキシ-7-クロロ-(4H)-4-ベンゾピラノンを収得した。