(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】流動床反応器、装置及び含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/24 20060101AFI20240306BHJP
C07C 1/20 20060101ALI20240306BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240306BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240306BHJP
B01J 29/85 20060101ALI20240306BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240306BHJP
【FI】
B01J8/24 301
C07C1/20
C07C11/04
C07C11/06
B01J29/85 M
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022573388
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2020121553
(87)【国際公開番号】W WO2022077452
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶 茂
(72)【発明者】
【氏名】張 涛
(72)【発明者】
【氏名】張 今令
(72)【発明者】
【氏名】徐 庶亮
(72)【発明者】
【氏名】唐 海龍
(72)【発明者】
【氏名】王 賢高
(72)【発明者】
【氏名】張 聘
(72)【発明者】
【氏名】▲ジャー▼ 金明
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】李 華
(72)【発明者】
【氏名】李 承功
(72)【発明者】
【氏名】劉 中民
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104672044(CN,A)
【文献】特開昭56-73537(JP,A)
【文献】特開昭55-118422(JP,A)
【文献】特公昭42-6970(JP,B1)
【文献】特公昭30-64(JP,B1)
【文献】特開昭49-59787(JP,A)
【文献】特開2009-142811(JP,A)
【文献】特表平3-504352(JP,A)
【文献】特開平2-14749(JP,A)
【文献】特開昭59-73022(JP,A)
【文献】特開昭51-119568(JP,A)
【文献】特表2020-517596(JP,A)
【文献】特表2004-536060(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104672040(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107961743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1382198(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第3721995(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/24
C07C 1/20
C07C 11/04
C07C 11/06
B01J 29/85
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器ハウジングと、反応領域と、コークス制御領域と、輸送管とを含む流動床反応器であって、
前記反応器ハウジングは、下ハウジングと、上ハウジングとを含み、前記下ハウジングは、反応領域を包囲形成し、前記輸送管は、前記反応領域の上方に設けられ、且つ前記反応領域と連通され、前記輸送管の外周には、上ハウジングが設けられ、前記上ハウジングと前記輸送管は、コークス制御領域を含むキャビティを包囲形成し、
前記輸送管の上部には、ガス出口が設けられ、
前記反応領域は、反応原料入口と、コークス制御触媒入口とを含み、
前記コークス制御領域は、触媒入口と、コークス制御触媒出口と、コークス制御ガス出口と、コークス制御原料入口とを含み、
前記コークス制御領域は、環状のチャンバであり、
前記コークス制御領域内には、n個のバッフル板が設けられ、n個の前記バッフル板は、コークス制御領域をn個のサブコークス制御領域に分割し、前記n個のサブコークス制御領域は、第1のサブコークス制御領域、第2のサブコークス制御領域ないし第nのサブコークス制御領域を含み、
n-1個の前記バッフル板には、触媒がコークス制御領域内で環形に沿って流れるように少なくとも一つの触媒流通孔がいずれも設けられ、nは、整数であり、
前記触媒入口は、第1のサブコークス制御領域に設けられ、前記コークス制御触媒出口は、第nのサブコークス制御領域に設けられ、前記コークス制御ガス出口は、隣接する二枚のバッフル板の間に設けられる、ことを特徴とする流動床反応器。
【請求項2】
2≦n≦10であ
り、
前記コークス制御領域の断面は、環形であり、前記サブコークス制御領域の断面は、扇形であり、
前記コークス制御ガス出口は、コークス制御領域ガス輸送管を介して前記輸送管に接続され
前記サブコークス制御領域の底部には、コークス制御領域分配器が設けられ、
前記コークス制御原料入口は、前記コークス制御領域分配器と連通され、又は前記コークス制御原料入口は、前記コークス制御領域分配器の下方に位置し、
前記反応原料入口には、前記反応領域の底部に設けられる反応領域分配器が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の流動床反応器。
【請求項3】
前記流動床反応器は、使用済み剤領域をさらに含み、前記使用済み剤領域は、前記コークス制御領域の上方に設けられ、且つ前記輸送管の外周に嵌合され、前記使用済み剤領域と前記コークス制御領域との間には、仕切板が設けられ、
前記使用済み剤領域の底部には、使用済み剤領域分配器が設けられ
、
前記使用済み剤領域は、流動床反応器熱除去器をさらに含み、
前記流動床反応器は、前記使用済み剤領域の上方に設けられ、且つ前記輸送管の外周に嵌合される固気分離領域をさらに含み、前記固気分離領域には、固気分離器が設けられ、前記使用済み剤領域は、前記固気分離領域と連通され、
前記固気分離器は、第1の固気分離器と、第2の固気分離器とを含み、前記第1の固気分離器の入口は、前記輸送管と連通され、前記第1の固気分離器の触媒出口は、前記使用済み剤領域に設けられ、
前記第2の固気分離器の触媒出口も前記使用済み剤領域に設けられ、
前記流動床反応器は、生成ガス輸送管と、ガス収集室とをさらに含み、前記生成ガス輸送管と前記ガス収集室は、前記反応器ハウジングの上部に設けられ、前記生成ガス輸送管は、前記反応器ハウジングの頂端に設けられ、前記生成ガス輸送管は、前記ガス収集室の頂部に接続され、
前記第2の固気分離器のガス出口は、前記ガス収集室に接続され、前記第1の固気分離器のガス出口は、前記ガス収集室に接続され、
前記流動床反応器は、前記反応器ハウジング外に設けられる使用済み剤循環管をさらに含み、
前記使用済み剤循環管の入口は、前記使用済み剤領域に接続され、前記使用済み剤循環管の出口は、前記反応領域の底部に接続される、ことを特徴とする請求項
1に記載の流動床反応器。
【請求項4】
装置であって、前記装置は、流動床反応器と、流動床再生器とを含み、前記流動床反応器は、前記流動床再生器と連通され、前記流動床反応器は、請求項1に記載の流動床反応器から選ばれる、ことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記流動床再生器は、再生器ハウジングを含み、前記再生器ハウジングには、使用済み触媒入口が設けられ、前記使用済み触媒入口は、前記流動床反応器の使用済み剤領域と連通され、
前記使用済み触媒入口は、第1のストリッパーを介して前記流動床反応器の使用済み剤領域と連通され、
前記再生器ハウジングの底端は、前記コークス制御領域と連通され、
前記再生器ハウジングの底端は、第2のストリッパーを介して前記コークス制御領域と連通され、
前記第2のストリッパー内には、再生器熱除去器が設けられ、
前記再生器ハウジングには、再生器分配器がさらに設けられ、前記第2のストリッパーの一端は、前記再生器ハウジング内に延びており、
前記流動床再生器は、再生器固気分離器と、再生器ガス収集室と、排煙輸送管とをさらに含み、前記再生器固気分離器は、前記再生器ハウジング内に設けられ、前記再生器ガス収集室と前記排煙輸送管は、前記再生器ハウジングの上部に設けられ、前記排煙輸送管は、前記再生器ハウジングの頂端に設けられ、前記排煙輸送管は、前記再生器ガス収集室の頂部に接続され、前記再生器固気分離器のガス出口は、前記再生器ガス収集室に接続され、前記再生器固気分離器の再生触媒出口は、前記再生器ハウジングの下部に設けられる、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法であって、請求項
1に記載の流動床反応
器を使用することにより行われる、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記方法は、
コークス制御原料と再生器からの触媒をコークス制御領域に通入し、反応させコークス制御触媒とコークス制御生成ガスを生成することと、
前記触媒がバッフル板上の触媒流通孔を経て環状流れを形成することとを少なくとも含
み、
前記方法は、
コークス制御原料をコークス制御領域分配器からコークス制御領域に通入し、触媒を触媒入口からコークス制御領域に通入し、前記コークス制御原料と前記触媒とを、コークス制御領域で接触反応させ、コークス制御触媒とコークス制御生成ガスを生成し、前記コークス制御触媒は、コークス制御触媒出口を経て前記反応領域に入り、前記コークス制御生成ガスは、前記コークス制御ガス出口を経て前記輸送管に入るステップ(1)と、
含酸素化合物を含有する原料を反応原料入口から反応領域に送り、コークス制御触媒と接触させ、軽オレフィンを含有する流れAが得られるステップ(2)とを含み、
前記コークス制御原料は、C
1
~C
6
の炭化水素系化合物を含み、
前記炭化水素系化合物は、C
1
~C
6
のアルカン、C
1
~C
6
のアルケンから選ばれる少なくとも一つであり、
前記コークス制御原料は、水素ガス、アルコール系化合物、水のうちの少なくとも一つをさらに含み、 前記アルコール系化合物と水との合計含有量のコークス制御原料における質量含有量は、10wt%以上50wt%以下であり、
前記アルコール系化合物は、メタノール、エタノールから選ばれる少なくとも一つであり、
前記コークス制御原料は、水素ガス0~20wt%、メタン0~50wt%、エタン0~50wt%、エチレン0~20wt%、プロパン0~50wt%、プロペン0~20wt%、ブタン0~90wt%、ブテン0~90wt%、ペンタン0~90wt%、ペンテン0~90wt%、ヘキサン0~90wt%、ヘキセン0~90wt%、メタノール0~50wt%、エタノール0~50wt%、水0~50wt%を含み、
前記炭化水素系化合物は、0ではなく、
前記コークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~0.5m/s、反応温度が300~700℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が400~800kg/m
3
であり、
前記反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~7.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が100~500kg/m
3
である、ことを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記含酸素化合物は、メタノール、ジメチルエーテルから選ばれる少なくとも一つであり、前記触媒は、SAPO分子篩を含み、
前記コークス制御触媒におけるコークス含有量は、4~9wtであり、
前記コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、1wt%よりも小さ
く、
前記コークス制御触媒におけるコークス種は、ポリメチルベンゼンと、ポリメチルナフタレンとを含み、
前記ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの合計質量のコークス合計質量における含有量は、≧70wt%であり、
分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、≦25wt%であり、
ここで、前記コークス合計質量とは、コークス種の合計質量であり、
前記使用済み触媒におけるコークス含有量は、9~13wt%である、ことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(2)の後に、
軽オレフィンを含有する流れAとコークス制御ガス出口から流出するコークス制御生成ガスを、輸送管で混合流れBを形成するステップであって、流れBが輸送管を経て第1の固気分離器に入り、固気分離された後、軽オレフィンを含有するガスである気相流れCと使用済み触媒である固相流れDとに分けられるステップ(3)
と、
前記気相流れCがガス収集室に入り、固相流れDが使用済み剤領域に入り、使用済み剤領域流動化ガスを使用済み剤領域流動化ガス入口から使用済み剤領域に通入し、使用済み触媒と接触させ、使用済み剤領域流動化ガスとその担持する使用済み触媒が流れEを形成するステップ(4)であって、前記使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガス、水蒸気のうちの少なくとも一つを含むステップ(4)と、
流れEが第2の固気分離器に入り、固気分離された後、使用済み剤領域流動化ガスである気相流れFと使用済み触媒である固相流れGとに分けられ、気相流れFがガス収集室に入り、固相流れGが使用済み剤領域に入り、気相流れCと気相流れFは、ガス収集室で混合して生成ガスを形成し、生成ガスは、生成ガス輸送管を経て下流工程に入るステップ(5)と、
前記使用済み剤領域の使用済み触媒は、使用済み剤循環管を経て流動床反応器の反応領域の底部に戻るステップ(6)をとさらに含み、
前記使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~1.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が200~800kg/m
3
である、ことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
使用済み剤領域の使用済み触媒が前記流動床再生器内に入り、前記流動床再生器内で再生された後、前記コークス制御領域に入ることを
さらに含
み、
前記方法は、
前記使用済み触媒が第1のストリッパーを経てストリッピングされた後、流動床再生器の中部に入るステップ(a)と、
再生ガスを再生ガス入口から流動床再生器の底部に通入し、再生ガスを使用済み触媒と接触させ、化学反応を発生させ、排煙と再生触媒を含有する流れHを生成し、流れHが再生器固気分離器に入り、固気分離された後、排煙と再生触媒とに分けられ、排煙が再生器ガス収集室に入り、次に、排煙輸送管を経て下流の排煙処理システムに入り、再生触媒が流動床再生器の底部に戻り、流動床再生器中の再生触媒が第2のストリッパーに入り、ストリッピング・熱除去された後、流動床反応器のコークス制御領域に入るステップ(b)とを少なくとも含、
前記再生ガスは、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、空気から選ばれる少なくとも一つであり、
前記再生ガスは、空気0~100wt%、酸素ガス0~50wt%、窒素ガス0~50wt%及び水蒸気0~50wt%を含み、
前記流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~2.0m/s、再生温度が600~750℃、再生圧力が100~500kPa、ベッド密度が150~700kg/m
3
であり、
前記再生触媒におけるコークス含有量は、≦3wt%である、ことを特徴とする請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、化学工業触媒化分野に属し、流動床反応器、装置及び含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタノールからアルケンを製造する技術(MTO)は、主に中国科学院大連化学物理研究所のDMTO(メタノールからアルケンを製造する)技術と米国UOP会社のMTO技術がある。2010年、DMTO技術を用いた神華包頭メタノールからアルケンを製造する工場が建設され操業した。これは、MTO技術の世界初の工業化応用であり、2019年末までに、既に14セットのDMTO工業装置が操業され、軽オレフィン生産能力は合計約800万トン/年であった。
【0003】
近年では、DMTO技術はいっそう発展し、性能がより優れた新世代DMTO触媒が次第に工業化応用され始め、DMTO工場のためにより高い利益を創造した。新世代DMTO触媒は、より高いメタノール処理能力と軽オレフィン選択性を有する。従来のDMTO工業装置は、新世代DMTO触媒の長所を十分に利用することが困難であるため、高メタノール処理能力、高軽オレフィン選択性の新世代DMTO触媒需要に適応できるDMTO装置及び製造方法を研究開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の一方面によれば、流動床反応器を提供しており、該流動床反応器は、DMTO触媒をコークス制御反応によりオンライン改質することができ、本明細書に記載の改質とは、DMTO触媒におけるコークス含有量、コークス含有量分布とコークス種を制御することであり、それによって、DMTO触媒性能を制御し、軽オレフィンの選択性を向上させる。
【0005】
本明細書に記載の軽オレフィンとはエチレンとプロペンである。
【0006】
本発明者らの研究から、DMTO触媒の活性と軽オレフィンの選択性に影響を与える主な要素は、触媒におけるコークス含有量、コークス含有量分布とコークス種であることが明らかになった。触媒の平均コークス含有量が同じである場合、コークス含有量分布が狭いと、軽オレフィンの選択性が高く、活性が高い。触媒におけるコークス種は、ポリメチル芳香族炭化水素とポリメチル環式アルカンなどを含み、ここで、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンは、エチレンの生成を促進することができる。従って、触媒におけるコークス含有量、コークス含有量分布とコークス種を制御することは、DMTO触媒の活性の制御、軽オレフィンの選択性の向上のキーポイントである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第一の方面によれば、流動床反応器を提供する。前記流動床反応器は、反応器ハウジングと、反応領域と、コークス制御領域と、輸送管とを含み、
前記反応器ハウジングは、下ハウジングと、上ハウジングとを含み、前記下ハウジングは、反応領域を包囲形成し、前記輸送管は、前記反応領域の上方に設けられ、且つ前記反応領域と連通され、前記輸送管の外周には、上ハウジングが設けられ、前記上ハウジングと前記輸送管は、コークス制御領域を含むキャビティを包囲形成し、
前記輸送管の上部には、ガス出口が設けられ、
前記反応領域は、反応原料入口と、コークス制御触媒入口とを含み、
前記コークス制御領域は、触媒入口と、コークス制御触媒出口と、コークス制御ガス出口と、コークス制御原料入口とを含み、
前記コークス制御領域は、環状のチャンバであり、
前記コークス制御領域内には、n個のバッフル板が設けられ、n個の前記バッフル板は、コークス制御領域をn個のサブコークス制御領域に分割し、前記n個のサブコークス制御領域は、第1のサブコークス制御領域、第2のサブコークス制御領域ないし第nのサブコークス制御領域を含み、
n-1個の前記バッフル板には、触媒がコークス制御領域内で環形に沿って流れるように少なくとも一つの触媒流通孔がいずれも設けられ、nは、整数であり、
前記触媒入口は、第1のサブコークス制御領域に設けられ、前記コークス制御触媒出口は、第nのサブコークス制御領域に設けられ、前記コークス制御ガス出口は、隣接する二枚のバッフル板の間に設けられる。
【0008】
コークス制御領域が1つの領域しか含まない場合、前記コークス制御領域に入る触媒の滞留時間分布は、完全混合釜反応器の滞留時間分布に近似し、このような条件下で、得られたコークス制御触媒粒子上のコークス含有量の均一性が比較的に悪く、即ち、ある触媒粒子のコークス含有量が非常に少なく、ある触媒粒子のコークス含有量が非常に多いため、触媒の平均活性が比較的に低く、平均選択性が比較的に低くなることを招く。本願において、コークス制御領域を設置し、コークス制御領域に径方向に沿ってバッフル板を取り付け、コークス制御領域を若干のコークス制御領域サブ領域に分割することによって、前記コークス制御領域に入る触媒の滞留時間分布を制御し、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布が狭く、平均活性が比較的に高く、平均選択性が比較的に高くなる。同時に、領域分け制御方式を採用することはコークス制御触媒上のコークス種及びコークス含有量の制御にも有利である。
【0009】
選択的に、前記第1のバッフル板には、前記触媒流通孔が開設されていなく、前記第2ないし第nのバッフル板には、いずれも前記触媒流通孔が開設されている。
【0010】
選択的に、本願におけるコークス制御領域の直径は、反応領域の直径よりも小さい。
【0011】
好ましくは、前記コークス制御領域の直径は、下から上へ拡大される。
【0012】
選択的に、前記第1のバッフル板及び前記第2のバッフル板によって分割形成された第1のサブコークス制御領域には、コークス制御領域触媒入口が設けられ、
前記第1のバッフル板及び前記第nのバッフル板によって分割形成された第nのサブコークス制御領域には、前記反応領域と連通されるコークス制御触媒輸送管が設けられ、前記コークス制御触媒輸送管の一端が前記コークス制御触媒出口に設けられ、他端が前記反応領域に設けられる。
【0013】
好ましくは、前記コークス制御触媒輸送管には、触媒の循環を制御するためのコークス制御触媒滑動弁がさらに設けられる。
【0014】
前記サブコークス制御領域の下方には、コークス制御領域分配器が設けられ、
前記コークス制御ガス出口は、コークス制御領域ガス輸送管を介して前記輸送管に接続される。
【0015】
本願において、コークス制御領域を設置し、コークス制御領域内に同心に順次配列されたバッフル板を取り付け、バッフル板に流通孔を有し、コークス制御領域を若干のサブコークス制御領域に分割することによって、触媒がコークス制御領域内で環状流れを形成し、それによって、前記コークス制御領域に入る触媒の滞留時間、及びコークス制御の方式を制御する。つまり、各サブ領域で制御を行う時に、触媒におけるコークス含有量の分布が狭く、触媒上のコークス種及びコークス含有量も制御されるように、制御空間中の触媒の含有量が比較的に均一になる。ある触媒粒子のコークス含有量が少なく、ある触媒粒子のコークス含有量が非常に多いため、触媒のコークス含有量の分布が広いことを招くことを避けた。
【0016】
選択的に、2≦n≦10である。
【0017】
具体的には、バッフル板に開設された触媒流通孔は1つでもよいし、或いは複数でもよく、本願は厳格に限定されるものではない。複数の触媒流通孔が設けられる場合、触媒流通孔互いの相対位置は本願でも厳格に限定されるものではなく、例えば、複数の触媒流通孔は平行に配置してもよいし、或いはランダムに配置してもよい。
【0018】
本願において、コークス制御触媒輸送管の形状は厳格に限定されるものではなく、コークス制御触媒輸送管がコークス制御触媒を反応領域に送ることができることを保証すればよく、例えば、折り曲げ構造の細長状配管であってもよく、もちろん、他の適切な形状であってもよい。
【0019】
好ましくは、各サブコークス制御領域の下方には、いずれもコークス制御領域分配器が設けられる。このように、コークス制御原料全体がコークス制御領域に均一に入ることを実現することができ、各サブ領域の間にコークス制御原料が不均一な現象の発生を避け、触媒コークス含有量分布が狭くなることをより良く実現することができる。
【0020】
選択的に、前記コークス制御領域の断面は、環形であり、前記サブコークス制御領域の断面は、扇形である。
【0021】
選択的に、前記コークス制御ガス出口は、コークス制御領域ガス輸送管を介して前記輸送管に接続される。
【0022】
選択的に、前記サブコークス制御領域の底部には、コークス制御領域分配器が設けられ、
前記コークス制御原料入口は、前記コークス制御領域分配器と連通され、又は前記コークス制御原料入口は、前記コークス制御領域分配器の下方に位置する。
【0023】
好ましくは、各サブコークス制御領域の底部には、いずれもコークス制御領域分配器が設けられる。
【0024】
選択的に、前記反応原料入口には、前記反応領域の底部に設けられる反応領域分配器が設けられる。
【0025】
具体的には、前記反応領域分配器は、反応原料を通入するために用いられる。
【0026】
具体的には、本願において、反応原料は、含酸素化合物を含有する原料である。
【0027】
選択的に、前記流動床反応器は、使用済み剤領域をさらに含み、前記使用済み剤領域は、前記コークス制御領域の上方に設けられ、且つ前記輸送管の外周に嵌合され、前記使用済み剤領域と前記コークス制御領域との間には、仕切板が設けられ、
前記使用済み剤領域の底部には、使用済み剤領域分配器が設けられる。
【0028】
選択的に、前記使用済み剤領域は、流動床反応器熱除去器をさらに含む。
【0029】
選択的に、前記流動床反応器は、前記使用済み剤領域の上方に設けられ、且つ前記輸送管の外周に嵌合される固気分離領域をさらに含み、
前記固気分離領域には、固気分離器が設けられ、
前記使用済み剤領域は、前記固気分離領域と連通される。
【0030】
選択的に、前記固気分離器は、第1の固気分離器と、第2の固気分離器とを含み、
前記第1の固気分離器の入口は、前記輸送管と連通され、前記第1の固気分離器の触媒出口は、前記使用済み剤領域に設けられ、
前記第2の固気分離器の触媒出口も前記使用済み剤領域に設けられる。
【0031】
選択的に、前記流動床反応器は、生成ガス輸送管と、ガス収集室とをさらに含み、前記生成ガス輸送管と前記ガス収集室は、前記反応器ハウジングの上部に設けられ、前記生成ガス輸送管は、前記反応器ハウジングの頂端に設けられ、前記生成ガス輸送管は、前記ガス収集室の頂部に接続され、
前記第2の固気分離器のガス出口は、前記ガス収集室に接続され、前記第1の固気分離器のガス出口は、前記ガス収集室に接続される。
【0032】
選択的に、前記流動床反応器は、前記反応器ハウジング外に設けられる使用済み剤循環管をさらに含む。
【0033】
前記使用済み剤循環管の入口は、前記使用済み剤領域に接続され、前記使用済み剤循環管の出口は、前記反応領域の底部に接続される。
【0034】
選択的に、前記使用済み剤循環管には、使用済み触媒の循環を制御するための使用済み剤循環滑動弁がさらに設けられる。
【0035】
本願の第二の方面によれば、含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法をさらに提供する。この方法は、上述した流動床反応器のうちの少なくとも一つを使用することにより行われる。
【0036】
選択的に、前記方法は、
コークス制御原料と再生器からの触媒をコークス制御領域に通入し、反応させコークス制御触媒とコークス制御生成ガスを生成することと、
前記触媒がバッフル板上の触媒流通孔を経て環状流れを形成することとを少なくとも含む。
【0037】
選択的に、前記方法は、
コークス制御原料をコークス制御領域分配器からコークス制御領域に通入し、触媒を触媒入口からコークス制御領域に通入し、前記コークス制御原料と前記触媒とを、コークス制御領域で接触反応させ、コークス制御触媒とコークス制御生成ガスを生成し、前記コークス制御触媒は、コークス制御触媒出口を経て前記反応領域に入り、前記コークス制御生成ガスは、前記コークス制御ガス出口を経て前記輸送管に入るステップ(1)と、
含酸素化合物を含有する原料を反応原料入口から反応領域に送り、コークス制御触媒と接触させ、軽オレフィンを含有する流れAが得られるステップ(2)とを含む。
【0038】
選択的に、前記コークス制御原料は、C1~C6の炭化水素系化合物を含む。
【0039】
好ましくは、前記炭化水素系化合物は、C1~C6のアルカン、C1~C6のアルケンから選ばれる少なくとも一つである。
【0040】
選択的に、前記コークス制御原料は、水素ガス、アルコール系化合物、水のうちの少なくとも一つをさらに含み、
前記アルコール系化合物と水との合計含有量のコークス制御原料における質量含有量は、10wt%以上50wt%以下である。
【0041】
好ましくは、前記アルコール系化合物は、メタノール、エタノールから選ばれる少なくとも一つである。
【0042】
選択的に、前記コークス制御原料は、水素ガス0~20wt%、メタン0~50wt%、エタン0~50wt%、エチレン0~20wt%、プロパン0~50wt%、プロペン0~20wt%、ブタン0~90wt%、ブテン0~90wt%、ペンタン0~90wt%、ペンテン0~90wt%、ヘキサン0~90wt%、ヘキセン0~90wt%、メタノール0~50wt%、エタノール0~50wt%、水0~50wt%を含み、
前記炭化水素系化合物は、0ではない。
【0043】
選択的に、前記含酸素化合物は、メタノール、ジメチルエーテルから選ばれるうちの少なくとも一つである。
【0044】
選択的に、前記触媒は、SAPO分子篩を含み、
前記コークス制御触媒におけるコークス含有量は、4~9wtであり、
前記コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、1wt%よりも小さい。
【0045】
具体的には、本願において、コークス制御領域の設置及びコークス制御プロセスの選択により、コークス制御触媒におけるコークス含有量が4~9wt%であることを実現し、触媒が粒子状であるため、触媒のコークス含有量とは各触媒粒子のコークス含有量の平均値であるが、各触媒粒子におけるコークス含有量は実際に同じものではない。本願において、触媒全体のコークス含有量分布が狭くなるように、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差を1wt%未満の範囲内に制御してもよく、それによって、触媒の活性、及び軽オレフィンの選択性を向上させる。
【0046】
選択的に、前記コークス制御触媒におけるコークス種は、ポリメチルベンゼンと、ポリメチルナフタレンとを含み、
前記ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの合計質量のコークス合計質量における含有量は、≧70wt%であり、
分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、≦25wt%であり、
ここで、前記コークス合計質量とは、コークス種の合計質量である。
【0047】
本願において、コークス種のタイプ、及びコークス種の含有量も非常に重要であり、本願の制御の目的の一つでもある。本願において、コークス制御の設置及びコークス制御プロセスパラメータの選択により、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンのコークス合計質量における含有量が≧70wt%である効果を実現し、触媒の活性、及び軽オレフィンの選択性を向上させた。
【0048】
選択的に、前記コークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~0.5m/s、反応温度が300~700℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が400~800kg/m3であり、
前記反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~7.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が100~500kg/m3である。
【0049】
選択的に、前記ステップ(2)の後に、
軽オレフィンを含有する流れAとコークス制御ガス出口から流出するコークス制御生成ガスを、輸送管で混合流れBを形成するステップであって、流れBが輸送管を経て第1の固気分離器に入り、固気分離された後、軽オレフィンを含有するガスである気相流れCと使用済み触媒である固相流れDとに分けられるステップ(3)をさらに含む。
【0050】
選択的に、前記使用済み触媒におけるコークス含有量は、9~13wt%である。
【0051】
選択的に、前記ステップ(3)の後に、
前記気相流れCがガス収集室に入り、固相流れDが使用済み剤領域に入り、使用済み剤領域流動化ガスを使用済み剤領域流動化ガス入口から使用済み剤領域に通入し、使用済み触媒と接触させ、使用済み剤領域流動化ガスとその担持する使用済み触媒が流れEを形成するステップ(4)をさらに含む。
【0052】
選択的に、前記使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガス、水蒸気のうちの少なくとも一つを含む。
【0053】
選択的に、前記ステップ(4)の後に、
流れEが第2の固気分離器に入り、固気分離された後、使用済み剤領域流動化ガスである気相流れFと使用済み触媒である固相流れGとに分けられ、気相流れFがガス収集室に入り、固相流れGが使用済み剤領域に入り、気相流れCと気相流れFは、ガス収集室で混合して生成ガスを形成し、生成ガスは、生成ガス輸送管を経て下流工程に入るステップ(5)をさらに含む。
【0054】
選択的に、前記ステップ(5)の後に、
前記使用済み剤領域の使用済み触媒は、使用済み剤循環管を経て流動床反応器の反応領域の底部に戻るステップ(6)をさらに含む。
【0055】
選択的に、前記使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~1.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が200~800kg/m3である。
【0056】
本願の第三の方面によれば、装置をさらに提供する。前記装置は、流動床反応器と、流動床再生器とを含み、前記流動床反応器は、前記流動床再生器と連通され、
前記流動床反応器は、上述した流動床反応器から選ばれる少なくとも一つである。
【0057】
選択的に、前記流動床再生器は、再生器ハウジングを含み、
前記再生器ハウジングには、使用済み触媒入口が設けられ、
前記使用済み触媒入口は、前記流動床反応器の使用済み剤領域と連通され、
好ましくは、前記使用済み触媒入口は、第1のストリッパーを介して前記流動床反応器の使用済み剤領域と連通される。
【0058】
さらに好ましくは、前記流動床反応器の使用済み剤領域と前記第1のストリッパーとの間は、使用済み傾斜管を介して連通する。
【0059】
選択的に、前記第1のストリッパーと前記使用済み触媒入口は、使用済み剤輸送管を介して連通する。
【0060】
好ましくは、前記使用済み剤輸送管には、触媒の循環を制御するための使用済み滑動弁が設けられる。
【0061】
具体的には、本願によって提供される含酸素化合物から軽オレフィンを製造するための装置は、流動床再生器を備え、流動床再生器を利用して、使用済み触媒を再生させ、再生された触媒をコークス制御領域に通入し、コークス制御を行い、コークス制御後に反応領域に通入して触媒化反応を行う。触媒をオンラインし、及び触媒をオンラインにコークス制御することができ、生産効率を向上させる。
【0062】
選択的に、前記再生器ハウジングの底端は、前記コークス制御領域と連通され、
好ましくは、前記再生器ハウジングの底端は、第2のストリッパーを介して前記コークス制御領域と連通され、
好ましくは、前記第2のストリッパー内には、再生器熱除去器が設けられる。
【0063】
選択的に、前記再生器ハウジングには、再生器分配器がさらに設けられ、
前記第2のストリッパーの一端は、前記再生器ハウジング内に延びている。
【0064】
選択的に、前記第2のストリッパーと前記再生触媒入口との間は、再生剤輸送管を介して連通する。
【0065】
好ましくは、前記再生剤輸送管には、再生滑動弁が設けられる。
【0066】
選択的に、前記流動床再生器は、再生器固気分離器と、再生器ガス収集室と、排煙輸送管とをさらに含み、
前記再生器固気分離器は、前記再生器ハウジング内に設けられ、前記再生器ガス収集室と前記排煙輸送管は、前記再生器ハウジングの上部に設けられ、前記排煙輸送管は、前記再生器ハウジングの頂端に設けられ、前記排煙輸送管は、前記再生器ガス収集室の頂部に接続され、
前記再生器固気分離器のガス出口は、前記再生器ガス収集室に接続され、前記再生器固気分離器の再生触媒出口は、前記再生器ハウジングの下部に設けられる。
【0067】
本願の第四の方面によれば、含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法をさらに提供する。この方法は、上述した装置のうちの少なくとも一つを使用することにより行われる。
【0068】
選択的に、前記方法は、使用済み剤領域の使用済み触媒が前記流動床再生器内に入り、前記流動床再生器内で再生された後、前記コークス制御領域に入ることを含む。
【0069】
選択的に、前記方法は、
前記使用済み触媒が第1のストリッパーを経てストリッピングされた後、流動床再生器の中部に入るステップ(a)と、
再生ガスを再生ガス入口から流動床再生器の底部に通入し、再生ガスを使用済み触媒と接触させ、化学反応を発生させ、排煙と再生触媒を含有する流れHを生成し、流れHが再生器固気分離器に入り、固気分離された後、排煙と再生触媒とに分けられ、排煙が再生器ガス収集室に入り、次に、排煙輸送管を経て下流の排煙処理システムに入り、再生触媒が流動床再生器の底部に戻り、流動床再生器中の再生触媒が第2のストリッパーに入り、ストリッピング・熱除去された後、流動床反応器のコークス制御領域に入るステップ(b)とを少なくとも含む。
【0070】
好ましくは、前記再生触媒におけるコークス含有量は、≦3wt%である。
【0071】
選択的に、前記再生ガスは、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、空気から選ばれる少なくとも一つである。
【0072】
好ましくは、前記再生ガスは、空気0~100wt%、酸素ガス0~50wt%、窒素ガス0~50wt%及び水蒸気0~50wt%を含む。
【0073】
選択的に、前記流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~2.0m/s、再生温度が600~750℃、再生圧力が100~500kPa、ベッド密度が150~700kg/m3である。
【0074】
選択的に、前記再生触媒におけるコークス含有量は、≦3wt%である。
【0075】
前記軽オレフィンを製造する方法は、
使用済み剤領域中の使用済み触媒を流動床再生器に通入し、再生処理を行い、再生触媒を生成し、前記再生触媒を流動床反応器のコークス制御領域に通入し、コークス制御原料と接触して反応するステップをさらに含む。
【0076】
具体的には、本願に係る流動床反応器は、下から上へ反応領域、コークス制御領域、使用済み剤領域と固気分離領域が分けられる。この方法は、流動床反応器のコークス制御領域において、コークス制御原料と触媒とが接触し、コークス制御生成ガスとコークス制御触媒を生成し、コークス制御触媒が流動床反応器の反応領域に入り、反応領域において、含酸素化合物を含有する原料とコークス制御触媒とが接触し、軽オレフィンを含有する生成ガスと使用済み触媒を生成することa)と、流動床再生器では、再生ガスと使用済み触媒とが接触し、排煙と再生触媒を生成し、前記再生触媒がコークス制御領域に流入することb)とを含む。
【0077】
本願におけるC1~C6の炭化水素系化合物とは、炭素原子個数が1~6である炭化水素系化合物である。
【発明の効果】
【0078】
本願による有益な効果は、以下を含む。
(1)本願における触媒は、(i)コークス制御領域中の触媒貯蔵量を自動的に調整することができるように、コークス制御領域におけるバッフル板中の触媒流通孔を介して上流サブ領域から下流サブ領域に順次に流れることができ、即ち、コークス制御領域中の触媒の平均滞留時間を制御することによって、触媒におけるコークス含有量を制御することができる。(ii)滞留時間分布がn個の直列の完全混合釜反応器に近似するn個のサブコークス制御領域の構造を採用して触媒の滞留時間分布を制御することによって、コークス含有量分布が狭い触媒を得た。
(2)本願は、触媒におけるコークス種の転化と生成を制御することによって、一方で、触媒に残留された不活性の高分子コークス種を低分子コークス種に転化し、もう一方で、コークス制御原料は、触媒中に入って高活性の低分子コークス種を生成することができ、且つ低分子コークス種は、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンを主とし、エチレンの選択性を向上させることができる。
(3)本願におけるDMTO触媒をコークス制御反応によりオンライン改質する方法は、コークス含有量が高く、コークス含有量分布が狭く、コークス種の主要成分がポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンであるコークス制御触媒を得て、軽オレフィンの選択性が比較的に低い触媒を軽オレフィンの選択性が高いコークス制御触媒に転化することができる。
(4)本願の触媒は、コークス制御プロセス処理を経ずに、含酸素化合物から軽オレフィンを製造するプロセスに直接使用されてもよく、コークス制御処理を経ない場合、得られた生成ガスにおける軽オレフィンの選択性が80~83wt%であり、本願の触媒は、コークス制御プロセス処理を経た後、含酸素化合物から軽オレフィンを製造するプロセスに使用され、得られた生成ガスにおける軽オレフィンの選択性が93~96wt%であった。
(5)本願の方法では、流動床反応器の反応領域のガスの見かけ線速度が高く、比較的に高いメタノール流束を得て、設備単位体積のメタノール処理量を向上させることができ、メタノール質量空間速度が5~20h-1に達することができ、使用済み剤領域は、吸熱、使用済み触媒の温度の低下、反応領域に低温の使用済み触媒への搬送、反応領域のベッド密度の向上、反応領域のベッド温度の制御に用いられるものであり、ガスの見かけ線速度が0.5~7.0m/sである場合、対応するベッド密度が500~100kg/m3であった。
(6)本願の流動床反応器は、流動床反応器第1の固気分離器が輸送管に直接接続された構造を採用し、流れB中の軽オレフィンを含有するガスを使用済み触媒から迅速に分離することを実現し、軽オレフィンの使用済み触媒の作用下でさらに反応してより大きな分子量を有するアルカン類副産物の生成を回避した。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本願の一つ実施形態による含酸素化合物から軽オレフィン(DMTO)を製造する装置の概略図である。
【
図2】本願の一つ実施形態による流動床反応器のコークス制御領域の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、実施例を参照しながら本願について詳述するが、本願はこれらの実施例に制限されない。
【0081】
特に断らない限り、本願の実施例における原料と触媒は、いずれも市販品として購入するものである。
【0082】
本願の実施例で使用されるSAPO分子篩は、中科催化(大連)有限公司から購入されたものである。
【0083】
DMTO触媒の性能を向上させるために、本願は、DMTO触媒をコークス制御反応によりオンライン改質する方法を提供し、この方法は、
触媒をコークス制御領域に送るステップ(1)と、
コークス制御原料をコークス制御領域に送るステップ(2)と、
コークス制御原料と触媒をコークス制御領域で接触させ、反応させ、コークス制御原料を触媒上でコークス化させるステップであって、コークス化された後の触媒は、コークス制御触媒と称され、コークス制御触媒におけるコークス含有量が4~9wt%であり、コークス種には、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとが含まれ、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量が≧70wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量が≦25wt%である、こと(3)と、
コークス制御触媒を反応領域に送ること(4)とを含む。
【0084】
前記触媒は、コークス含有量が≦3wt%であるDMTO触媒であり、前記DMTO触媒の活性成分は、SAPO分子篩である。
【0085】
前記コークス制御反応の反応温度は、300~700℃である。
【0086】
本願は、上述したDMTO触媒をコークス制御反応によりオンライン改質する方法を含む含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法及びその方法を用いた装置をさらに提供する。前記装置は、流動床反応器1と、流動床再生器2とを含む。
【0087】
含酸素化合物から軽オレフィンを製造するための装置であって、前記装置は、流動床反応器1を含み、ここで、前記流動床反応器1は、下から上へ反応領域、コークス制御領域、使用済み剤領域と固気分離領域が分けられ、前記流動床反応器1は、反応器ハウジング1-1、反応領域分配器1-2、輸送管1-3、コークス制御領域分配器1-4、バッフル板1-5、コークス制御領域ガス輸送管1-6、使用済み剤領域分配器1-7、流動床反応器熱除去器1-8、第1の固気分離器1-9、第2の固気分離器1-10、ガス収集室1-11、生成ガス輸送管1-12、コークス制御触媒輸送管1-13、コークス制御触媒滑動弁1-14、使用済み剤循環管1-15、使用済み剤循環滑動弁1-16、使用済み傾斜管1-17、第1のストリッパー1-18、使用済み滑動弁1-19と使用済み剤輸送管1-20を含み、
前記反応領域分配器1-2は、流動床反応器1の反応領域の底部に位置し、輸送管1-3は、流動床反応器1の中心部に位置し、その底端が反応領域の頂端に接続され、
前記コークス制御領域は、反応領域の上に位置し、コークス制御領域内には、n個のバッフル板1-5が設けられ、バッフル板1-5は、コークス制御領域をn個のサブコークス制御領域に分割し、nは、2≦n≦10である整数であり、各サブコークス制御領域の底部には、いずれもコークス制御領域分配器1-4が独立して設けられ、コークス制御領域の断面は、環形であり、サブコークス制御領域の断面は、扇形であり、第1ないしnのサブコークス制御領域は、同心に順次配列され、バッフル板1-5には触媒流通孔が含まれるが、第1のサブコークス制御領域と第nのサブコークス制御領域との間のバッフル板1-5には触媒流通孔が含まれず、再生剤輸送管2-9の出口は、流動床反応器1中の第1のサブコークス制御領域に接続され、コークス制御触媒輸送管1-13の入口は、第nのサブコークス制御領域に接続され、コークス制御触媒輸送管1-13には、コークス制御触媒滑動弁1-14が設けられ、コークス制御触媒輸送管1-13の出口は、反応領域の下部に接続され、サブコークス制御領域の上部には、コークス制御領域ガス輸送管1-6が設けられ、コークス制御領域ガス輸送管1-6の入口は、サブコークス制御領域の上部に位置し、コークス制御領域ガス輸送管1-6の出口は、輸送管1-3に接続され、
前記使用済み剤領域分配器1-7は、使用済み剤領域の底部に位置し、流動床反応器熱除去器1-8は、使用済み剤領域に位置し、
前記第1の固気分離器1-9、第2の固気分離器1-10とガス収集室1-11は、流動床反応器1の固気分離領域に位置し、第1の固気分離器1-9の入口は、輸送管1-3の上部に接続され、第1の固気分離器1-9のガス出口は、ガス収集室1-11に接続され、第1の固気分離器1-9の触媒出口は、使用済み剤領域に位置し、第2の固気分離器1-10の入口は、流動床反応器1の固気分離領域に位置し、第2の固気分離器1-10のガス出口は、ガス収集室1-11に接続され、第2の固気分離器1-10の触媒出口は、使用済み剤領域に位置し、生成ガス輸送管1-12は、ガス収集室1-11の頂部に接続され、
前記使用済み剤循環管1-15の入口は、使用済み剤領域に接続され、使用済み剤循環管1-15の出口は、反応領域の底部に接続され、使用済み剤循環管1-15には、使用済み剤循環滑動弁1-16が設けられ、
前記使用済み傾斜管1-17の入口は、使用済み剤領域に接続され、使用済み傾斜管1-17の出口は、第1のストリッパー1-18の上部に接続され、第1のストリッパー1-18は、反応器ハウジング1-1の外に配置され、使用済み滑動弁1-19の入口は、管路を介して第1のストリッパー1-18の底部に接続され、使用済み滑動弁1-19の出口は、管路を介して使用済み剤輸送管1-20の入口に接続され、使用済み剤輸送管1-20の出口は、流動床再生器2の中部に接続される。
【0088】
好適な一実施形態では、第1の固気分離器1-9は、1組の又は複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含む。
【0089】
好適な一実施形態では、第2の固気分離器1-10は、1組の又は複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含む。
【0090】
好適な一実施形態では、第2の固気分離器1-10は、入口が固気分離領域に位置され、出口がガス収集室1-11に接続される一段管路である。
【0091】
含酸素化合物から軽オレフィンを製造するための装置であって、前記装置は、流動床再生器2を含み、前記流動床再生器2は、再生器ハウジング2-1、再生器分配器2-2、再生器固気分離器2-3、再生器ガス収集室2-4、排煙輸送管2-5、第2のストリッパー2-6、再生器熱除去器2-7、再生滑動弁2-8と再生剤輸送管2-9を含み、
前記再生器分配器2-2は、流動床再生器2の底部に位置し、再生器固気分離器2-3は、流動床再生器2の上部に位置し、再生器固気分離器2-3の入口は、流動床再生器2の上部に位置し、再生器固気分離器2-3のガス出口は、再生器ガス収集室2-4に接続され、再生器固気分離器2-3の再生触媒出口は、流動床再生器2の下部に位置し、再生器ガス収集室2-4は、流動床再生器2の頂部に位置し、排煙輸送管2-5は、再生器ガス収集室2-4の頂部に接続され、
前記第2のストリッパー2-6は、再生器ハウジング2-1の外に位置し、第2のストリッパー2-6の入口管は、再生器ハウジング2-1を貫通して、再生器分配器2-2の上方に開口され、再生器熱除去器2-7は、第2のストリッパー2-6の中に位置し、再生滑動弁2-8の入口は、管路を介して第2のストリッパー2-6の底部に接続され、再生滑動弁2-8の出口は、管路を介して再生剤輸送管2-9の入口に接続され、再生剤輸送管2-9の出口は、流動床反応器1における第1のサブコークス制御領域に接続される。
【0092】
好適な一実施形態では、再生器固気分離器2-3は、1組の又は複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含む。
【0093】
本願の別の方面によれば、上述したいずれか1項に記載の装置を用いた含酸素化合物から軽オレフィンを製造する方法をさらに提供する。この方法は、以下のステップを含む。
ステップ(1)、コークス制御原料をコークス制御領域分配器1-4から流動床反応器1のコークス制御領域に通入し、触媒を再生剤輸送管2-9から流動床反応器1のコークス制御領域に通入し、コークス制御原料をコークス制御領域で触媒と接触させ、化学反応を発生させ、コークス制御触媒とコークス制御生成ガスを生成し、コークス制御触媒は、バッフル板1-5における触媒流通孔を経て第1-nのサブコークス制御領域を順次に通過し、そしてコークス制御触媒輸送管1-13、コークス制御触媒滑動弁1-14を経て流動床反応器1の反応領域に入り、コークス制御生成ガスは、コークス制御領域ガス輸送管1-6を経て輸送管1-3に入り、含酸素化合物を含有する原料を反応領域分配器1-2から流動床反応器1の反応領域に通入し、コークス制御触媒と接触させ、軽オレフィンと使用済み触媒を含有する流れAを生成し、流れAとコークス制御生成ガスは、輸送管1-3で混合して流れBを形成し、流れBは、輸送管1-3を経て第1の固気分離器1-9に入り、固気分離された後、軽オレフィンを含有するガスである気相流れCと使用済み触媒である固相流れDとに分けられ、気相流れCがガス収集室1-11に入り、固相流れDが使用済み剤領域に入り、使用済み剤領域流動化ガスを使用済み剤領域分配器1-7から使用済み剤領域に通入し、使用済み触媒と接触させ、使用済み剤領域流動化ガスとその担持する少量の使用済み触媒が流れEを形成し、流れEが第2の固気分離器1-10に入り、固気分離された後、使用済み剤領域流動化ガスである気相流れFと使用済み触媒である固相流れGとに分けられ、気相流れFがガス収集室1-11に入り、固相流れGが使用済み剤領域に入り、気相流れCと気相流れFは、ガス収集室1-11で混合して生成ガスを形成し、生成ガスは、生成ガス輸送管1-12を経て下流工程に入り、使用済み剤領域の一部の使用済み触媒は、使用済み剤循環管1-15と使用済み剤循環滑動弁1-16を介して流動床反応器1の反応領域の底部に戻り、他の部分の使用済み触媒は、使用済み傾斜管1-17を経て第1のストリッパー1-18に入り、ストリッピングされた後、使用済み触媒は、使用済み滑動弁1-19と使用済み剤輸送管1-20を経て流動床再生器2の中部に入る。
ステップ(2)、再生ガスを再生器分配器2-2から流動床再生器2の底部に通入し、流動床再生器2において、再生ガスを使用済み触媒と接触させ、化学反応を発生させ、使用済み触媒における一部のコークスが燃焼されて除去され、排煙と再生触媒を含有する流れHを生成し、流れHが再生器固気分離器2-3に入り、固気分離された後、排煙と再生触媒とに分けられ、排煙が再生器ガス収集室2-4に入り、次に、排煙輸送管2-5を経て下流の排煙処理システムに入り、再生触媒が流動床再生器2の底部に戻り、流動床再生器2中の再生触媒が第2のストリッパー2-6に入り、ストリッピング・熱除去された後、再生滑動弁2-8と再生剤輸送管2-9を経て流動床反応器1のコークス制御領域に入る。
【0094】
好適な一実施形態では、前記コークス制御原料の成分は、水素ガス0~20wt%、メタン0~50wt%、エタン0~50wt%、エチレン0~20wt%、プロパン0~50wt%、プロペン0~20wt%、ブタン0~90wt%、ブテン0~90wt%、ペンタン0~90wt%、ペンテン0~90wt%、ヘキサン0~90wt%、ヘキセン0~90wt%、メタノール0~50wt%、エタノール0~50wt%と水0~50wt%である。
【0095】
好適な一実施形態では、上記の方法における含酸素化合物は、メタノール又はジメチルエーテルのうちの1種又はメタノールとジメチルエーテルとの混合物である。
【0096】
好適な一実施形態では、上記の方法における使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガスと水蒸気のうちの1種又は窒素ガスと水蒸気との混合物である。
【0097】
好適な一実施形態では、上記の方法における再生ガスは、空気0~100wt%、酸素ガス0~50wt%、窒素ガス0~50wt%及び水蒸気0~50wt%である。
【0098】
好適な一実施形態では、前記触媒の活性成分は、SAPO分子篩である。
【0099】
好適な一実施形態では、前記触媒におけるコークス含有量は、≦3wt%である。
【0100】
好適な一実施形態では、前記コークス制御触媒におけるコークス含有量が4~9wt%であり、前記コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差が1wt%よりも小さく、コークス種には、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとが含まれ、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量が≧70wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量が≦25wt%である。
【0101】
好適な一実施形態では、前記使用済み触媒におけるコークス含有量が9~13wt%であり、さらに好ましくは、使用済み触媒におけるコークス含有量が10~12wt%である。
【0102】
好適な一実施形態では、前記流動床反応器1(1)のコークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~0.5m/s、反応温度が300~700℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が400~800kg/m3である。
【0103】
好適な一実施形態では、前記流動床反応器1(1)の反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~7.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が100~500kg/m3である。
【0104】
好適な一実施形態では、前記流動床反応器1(1)の使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.1~1.0m/s、反応温度が350~550℃、反応圧力が100~500kPa、ベッド密度が200~800kg/m3である。
【0105】
好適な一実施形態では、前記流動床再生器2(2)のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が0.5~2.0m/s、再生温度が600~750℃、再生圧力が100~500kPa、ベッド密度が150~700kg/m3である。
【0106】
本願上記の方法において、生成ガスの成分は、エチレン38~58wt%、プロペン35~57wt%、C4~C6炭化水素系≦4wt%と≦他の成分4wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであり、且つエチレンとプロペンの生成ガスにおける合計選択性は、93~96wt%である。
【0107】
本願において、生産原単位の記述に関しては、含酸素化合物におけるジメチルエーテル質量を同じ炭素原子質量に基づいてメタノール質量に換算して計算し、生産原単位の単位は、トンメタノール/トン軽オレフィンである。
【0108】
本願上記の方法において、生産原単位は、2.50~2.58トンメタノール/トン軽オレフィンである。
【0109】
本願をさらに説明し、本願の技術案を理解しやすくするために、本願の典型的且つ非限定的な実施例は、以下のとおりである。
【0110】
実施例1
本実施形態は、
図1と
図2に示した装置を用い、流動床反応器中のコークス制御領域には、二枚のバッフル板が含まれ、即ちn=2であり、コークス制御領域には、2つのコークス制御領域サブ領域が含まれ、第2の固気分離器は、複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と、1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含んだ。
【0111】
本実施形態において、コークス制御原料は、ブタン6wt%、ブテン81wt%、メタノール2wt%と水11wt%との混合物であり、含酸素化合物は、メタノールであり、使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガスであり、再生ガスは、空気であり、触媒における活性成分は、SAPO-34分子篩であり、触媒におけるコークス含有量は、約1wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量は、約4wt%であり、ここで、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量は、約83wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、約9wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、約0.9wt%であり、使用済み触媒におけるコークス含有量は、約9wt%であった。流動床反応器のコークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.3m/s、反応温度が約500℃、反応圧力が約100kPa、ベッド密度が約600kg/m3であった。流動床反応器の反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約7.0m/s、反応温度が約550℃、反応圧力が約100kPa、ベッド密度が約100kg/m3であった。流動床反応器の使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、反応温度が約550℃、反応圧力が約100kPa、ベッド密度が約200kg/m3であった。流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.5m/s、再生温度が約700℃、再生圧力が約100kPa、ベッド密度が約700kg/m3であった。
【0112】
本実施形態において、流動床反応器の含酸素化合物の質量空間速度は、約20h-1であった。生成ガスの成分は、エチレン58wt%、プロペン35wt%、C4~C6炭化水素系3wt%と他の成分4wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであった。生産原単位は、2.58トンメタノール/トン軽オレフィンであった。
【0113】
実施例2
本実施形態は、
図1と
図2に示した装置を用い、流動床反応器中のコークス制御領域には、十枚のバッフル板が含まれ、即ちn=10であり、コークス制御領域には、10つのコークス制御領域サブ領域が含まれ、第2の固気分離器は、複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と、1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含んだ。
【0114】
本実施形態において、コークス制御原料は、メタン22wt%、エタン24wt%、エチレン3wt%、プロパン28wt%、プロペン4wt%、水素ガス7wt%と水12wt%との混合物であり、含酸素化合物は、メタノール82wt%とジメチルエーテル18wt%との混合物であり、使用済み剤領域流動化ガスは、水蒸気であり、再生ガスは、空気50wt%と水蒸気50wt%であり、触媒における活性成分は、SAPO-34分子篩であり、触媒におけるコークス含有量は、約3wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量は、約9wt%であり、ここで、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量は、約71wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、約23wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、約0.2wt%であり、使用済み触媒におけるコークス含有量は、約13wt%であった。流動床反応器のコークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.1m/s、反応温度が約300℃、反応圧力が約500kPa、ベッド密度が約800kg/m3であった。流動床反応器の反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.5m/s、反応温度が約350℃、反応圧力が約500kPa、ベッド密度が約500kg/m3であった。流動床反応器の使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.1m/s、反応温度が約350℃、反応圧力が約500kPa、ベッド密度が約800kg/m3であった。流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約2.0m/s、再生温度が約600℃、再生圧力が約500kPa、ベッド密度が約150kg/m3であった。
【0115】
本実施形態において、流動床反応器の含酸素化合物の質量空間速度は、約5h-1であった。生成ガスの成分は、エチレン38wt%、プロペン57wt%、C4~C6炭化水素系4wt%と他の成分1wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであった。生産原単位は、2.53トンメタノール/トン軽オレフィンであった。
【0116】
実施例3
本実施形態は、
図1と
図2に示した装置を用い、流動床反応器中のコークス制御領域には、四枚のバッフル板が含まれ、即ちn=4であり、コークス制御領域には、4つのコークス制御領域サブ領域が含まれ、第2の固気分離器は、入口が固気分離領域に位置され、出口が流動床反応器ガス収集室に接続される一段管路であった。
【0117】
本実施形態において、コークス制御原料は、プロパン1wt%、プロペン1wt%、ブタン3wt%、ブテン51wt%、ペンタン3wt%、ペンテン22wt%、ヘキサン1wt%、ヘキセン7wt%、メタノール2wt%と水9wt%との混合物であり、含酸素化合物は、ジメチルエーテルであり、使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガス5wt%と水蒸気95wt%であり、再生ガスは、空気50wt%と酸素ガス50wt%であり、触媒における活性成分は、SAPO-34分子篩であり、触媒におけるコークス含有量は、約2wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量は、約6wt%であり、ここで、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量は、約80wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、約11wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、約0.6wt%であり、使用済み触媒におけるコークス含有量は、約11wt%であった。流動床反応器のコークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.4m/s、反応温度が約700℃、反応圧力が約300kPa、ベッド密度が約500kg/m3であった。流動床反応器の反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約3.0m/s、反応温度が約450℃、反応圧力が約300kPa、ベッド密度が約230kg/m3であった。流動床反応器の使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.2m/s、反応温度が約450℃、反応圧力が約300kPa、ベッド密度が約600kg/m3であった。流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約1.0m/s、再生温度が約750℃、再生圧力が約300kPa、ベッド密度が約360kg/m3であった。
【0118】
本実施形態において、流動床反応器の含酸素化合物の質量空間速度は、約9h-1であった。生成ガスの成分は、エチレン48wt%、プロペン48wt%、C4~C6炭化水素系2wt%と他の成分2wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであった。生産原単位は、2.50トンメタノール/トン軽オレフィンであった。
【0119】
実施例4
本実施形態は、
図1と
図2に示した装置を用い、流動床反応器中のコークス制御領域には、六枚のバッフル板が含まれ、即ちn=6であり、コークス制御領域には、6つのコークス制御領域サブ領域が含まれ、第2の固気分離器は、複数の組の固気サイクロン分離器を採用し、各組の固気サイクロン分離器は、1つの一段目の固気サイクロン分離器と、1つの二段目の固気サイクロン分離器とを含んだ。
【0120】
本実施形態において、コークス制御原料は、ブタン5wt%、ブテン72wt%、メタノール8wt%と水15wt%との混合物であり、含酸素化合物は、メタノールであり、使用済み剤領域流動化ガスは、窒素ガス73wt%と水蒸気27wt%であり、再生ガスは、空気50wt%と窒素ガス50wt%であり、触媒における活性成分は、SAPO-34分子篩であり、触媒におけるコークス含有量は、約2wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量は、約6wt%であり、ここで、ポリメチルベンゼンとポリメチルナフタレンとの質量のコークス合計質量における含有量は、約77wt%であり、分子量が>184であるコークス種の質量のコークス合計質量における含有量は、約16wt%であり、コークス制御触媒におけるコークス含有量分布の四分位偏差は、約0.3wt%であり、使用済み触媒におけるコークス含有量は、約12wt%であった。流動床反応器のコークス制御領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.5m/s、反応温度が約600℃、反応圧力が約200kPa、ベッド密度が約400kg/m3であった。流動床反応器の反応領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約4.0m/s、反応温度が約500℃、反応圧力が約200kPa、ベッド密度が約160kg/m3であった。流動床反応器の使用済み剤領域のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約0.5m/s、反応温度が約500℃、反応圧力が約200kPa、ベッド密度が約300kg/m3であった。流動床再生器のプロセス動作条件は、ガスの見かけ線速度が約1.5m/s、再生温度が約680℃、再生圧力が約200kPa、ベッド密度が約280kg/m3であった。
【0121】
本実施形態において、流動床反応器の含酸素化合物の質量空間速度は、約13h-1であった。生成ガスの成分は、エチレン53wt%、プロペン42wt%、C4~C6炭化水素系4wt%と他の成分1wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであった。生産原単位は、2.52トンメタノール/トン軽オレフィンであった。
【0122】
対比例
本対比例が実施例4と異なる点は、コークス制御反応オンライン改質DMTO触媒を用いず、コークス制御領域に通入された原料が窒素ガスであることである。窒素ガスは、不活性ガスであるため、コークス制御領域で再生触媒の性質を変化させることなく、即ち、反応領域に入る触媒が再生触媒であることに相当する。
【0123】
本実施形態において、生成ガスの成分は、エチレン44wt%、プロペン38wt%、C4~C6炭化水素系10wt%と他の成分8wt%であり、他の成分は、メタン、エタン、プロパン、水素ガス、COとCO2などであった。生産原単位は、2.92トンメタノール/トン軽オレフィンであった。
【0124】
本対比例は、DMTO触媒をコークス制御反応によりオンライン改質することが、触媒の性能を大幅に向上させ、生産原単位を低減することができることを示した。
【0125】
以上は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、本願を何ら制限するものではなく、本願は、好適実施例をもって以上のように開示したが、本願を制限するものではなく、当業者であれば、本願の技術案の範囲から逸脱することなく、上記で開示された技術内容に基づいて行われる若干の変更又は改善は、いずれも均等の実施態様に相当し、すべて技術案の範囲に属する。
【符号の説明】
【0126】
1流動床反応器、1-1反応器ハウジング、1-2反応領域分配器、
1-3輸送管、1-4コークス制御領域分配器、1-5バッフル板、
1-6コークス制御領域ガス輸送管、1-7使用済み剤領域分配器、
1-8流動床反応器熱除去器、1-9第1の固気分離器、
1-10第2の固気分離器、1-11ガス収集室、1-12生成ガス輸送管、
1-13コークス制御触媒輸送管、1-14コークス制御触媒滑動弁、
1-15使用済み剤循環管、1-16使用済み剤循環滑動弁、1-17使用済み傾斜管、
1-18第1のストリッパー、1-19使用済み滑動弁、1-20使用済み輸送管、
2流動床再生器、2-1再生器ハウジング、2-2再生器分配器、
2-3再生器固気分離器、2-4再生器ガス収集室、
2-5排煙輸送管、2-6第2のストリッパー、2-7再生器熱除去器、
2-8再生滑動弁、2-9再生剤輸送管。