(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】回転翼飛行体
(51)【国際特許分類】
B64U 10/11 20230101AFI20240306BHJP
B64U 30/294 20230101ALI20240306BHJP
B64U 60/50 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
B64U10/11
B64U30/294
B64U60/50
(21)【出願番号】P 2023012321
(22)【出願日】2023-01-12
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】523031747
【氏名又は名称】小林 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆夫
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0346135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/11
B64U 30/294
B64U 60/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
推進力を生み出すプロペラ一基と方向舵一基、上下二段の回転翼の中央より上の位置に配置し、離着陸用車輪一組を備え、上下二段の回転翼及びプロペラを後傾することにより、プロペラの迎角を一定に保ち、出力の増減による前後振り子運動を防止し、車輪の抗力による前屈転倒を防ぎ、短い離着陸性能を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転翼飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに実用されている翼を有する飛行体は、主翼が機体に対して固定され機体が前進することによって揚力を発生させ飛行する固定翼飛行体(特許文献1)と、1個以上の回転する翼によって揚力を発生させ飛行する回転翼飛行体(特許文献1)とに分類される。回転翼飛行体(特許文献1)としては、鉛直方向の軸に対して翼を公転させて揚力を得るヘリコプターやオートジャイロ等が広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定翼飛行体は、主翼が機体に固定されているため、上昇又は下降の際に主翼が受ける空気の流れを変えるためには機体も進行方向に対して傾いてしまう。
【0005】
一方、ヘリコプターやオートジャイロのように鉛直方向の軸に対して翼を公転させて揚力を得る回転翼飛行体では、上昇又は下降の際に機体自体を水平に維持することが可能である。しかしながら、ヘリコプターやオートジャイロのように鉛直方向の軸に対して翼を公転させて揚力を得る回転翼飛行体は、緊急時において回転動力が停止した際に動力なしで滑空することができず安全上の問題が発生する場合がある。
【0006】
例えば、推進力がなくなった場合には舵等で方向が制御することができ、舵がとれなくなった場合であっても、機体を自然に水平に保ったまま滑空し、着陸できる飛行体であれば従来より安全な飛行が可能となる。
【0007】
本発明は、従来の固定翼飛行体や回転翼飛行体では得られなかった機体の短距離の離着陸、水平維持及び滑空等を同時に実現できる回転翼飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様は、回転翼飛行体であって、機体と、飛行時の進行方向に対して翼軸が横向きに配置され、飛行時に前記翼軸を中心に回転する回転翼を備え、前記回転翼は、飛行に伴った空気抵抗によって回転することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記回転翼は、飛行姿勢において、空気抵抗によって、上部が進行方向の逆方向かつ下部が進行方向に向けて回転する構造を有することが好適である。
【00010】
また、前記回転翼は、回転中に上部が進行方向の逆方向に凸となり、下部が進行方向に凸となるS字形状を有することが好適である。左右翼のS字形状の位置は回転方向に90度ずらして軸ブレを防ぐため配置することが好適である。
【0011】
また、前記回転翼は、機体の進行方向に略平行に配置された円盤状の部材を備えることが好適である。
【0012】
また、飛行時において、前記回転翼が生み出す揚力中心より、前記機体の重心の中心位置が低い位置に維持されることが好適である。
【0013】
また、飛行時において、前記回転翼に対する前記機体の重心位置が調整可能であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の固定翼飛行体や回転翼飛行体では得られなかった機体の短距離の離着陸、水平維持及び滑空等を同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における回転翼飛行体の構成を示す正面全体図である。
【
図2】本発明の実施の形態における回転翼飛行体の構成を示す側面全体図である。
【
図3】本発明の実施の形態における機体の構成を示す上面全体図である。
【
図4】本発明の実施の形態における回転翼の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態における回転翼飛行体の構成を示す斜視画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における回転翼飛行体100は、
図1の正面全体図及び
図2の側面全体図に示すように、機体102及び回転翼104、回転翼105を含んで構成される。また、
図3に、機体102の上面図を示す。また、
図4に、回転翼104、回転翼105の拡大図を示す。
なお、
図2では、機体102の構成を明確に示すために回転翼104、回転翼105を破線で示している。
【0017】
本実施の形態における回転翼飛行体100は、
図2に示すように、機体102の進行方向左に対して横方向に広がる回転翼104と回転翼105を機体12の両側に備える。
回転翼104と回転翼105は同じ形状をしているので、
図4に示すようにS字状の翼を持っている。回転翼104と回転翼105は機体102に対して翼軸40を中心に自転可能に取り付けられており、回転翼飛行体100の飛行に伴って
図2の時計回り回転方向に自転することによって揚力を生み出す。
【0018】
これまでの固定翼飛行体や回転翼飛行体では、翼面の空気抵抗をなるべく少なくして気圧差を発生させることによって揚力を生み出すが、本実施の形態における回転翼飛行体100は、風力抵抗を利用して揚力を生み出すものである。すなわち、空気抵抗により回転翼104、回転翼105が回転し、進行方向に対して上向き又は下向きの力を発生させる。このような回転翼飛行体100は、他の飛行形態の飛行体よりも浮遊感のある飛行を可能とする。これを応用して推進装置故障時も浮遊感を有したオートローテーション着陸を生み出す。
【0019】
機体102は回転翼飛行体100の重心バランスを取ると共に、推進力を発生させる。機体102はプロペラ10、車輪11、制御部12、方向舵13、駆動モーター14,車軸15、ベアリング22,機体フレーム24,支持フレーム26,翼フレーム28、円盤部50を含んで構成される。後部車輪は軽量化のため小型にすることが好適である。
【0020】
機体102の構造部材となるプロペラ10,車軸15、ベアリング22,機体フレーム24,支持フレーム26及び翼フレーム28は、軽量かつ構造的強度に優れた材料とすることが好適である。例えば、木材、紙、カーボンファイバー、グラスファイバー等の繊維素材、チタン、アルミ等の軽量金属材料を用いることが好適である。
【0021】
機体102の各構成部は機体フレーム24に搭載される。機体フレーム24は、棒状の部材であり、機体102の底部に配置される。プロペラ10は駆動モーター14の一端の周に取り付けられる。本実施の形態では、プロペラ10は、機体102回転翼飛行体100の進行方向の後方側に等角度で二枚設けられる。プロペラ10は、機体102の回転翼飛行体100の進行方向の中央より上の位置に等角度で二枚設けられる。
【0022】
なお、本実施の形態では、プロペラ10は二枚設けたが、これに限定されるものではなく、回転翼飛行体100に必要な推進力等に応じて変更してもよい。またプロペラ10は回転翼飛行体100の中央より上の位置に配置させたが、これに限定されるものではなく、回転翼飛行体100に必要な推進力が得られ、重心のバランスがとれる位置であればよい。
【0023】
制御部12は、回転翼飛行体100の飛行を制御する。制御部12は、機体フレーム24に搭載される。例えば、制御部12は、無線受信システムを備え、ユーザーが無線コントローラー(図示しない)を用いて発する制御信号を受けて、駆動モーターの回転速度を制御する制御信号を生成して出力する。また、駆動モーターを駆動するためのバッテリーを備えてもよい。
【0024】
さらに、機体102には、回転翼104及び回転翼104のベアリング22を支持するための翼フレーム28が設けられる。翼フレーム28は、回転翼飛行体100の進行方向に対して縦向きに、機体102に対する回転翼104の取付角度に応じ角度で延設される。翼フレーム28は、機体フレーム24から延設される支持フレーム26によって機体フレーム24に固定される。翼フレーム28には、ベアリング22が固定される。ベアリング22には,後述する回転翼104、回転翼105の翼軸40が取り付けられる。ベアリング22は,回転翼104、回転翼105が翼軸40を中心に機体102に対して回転可能に支持する。
【0025】
回転翼104、回転翼105は、
図4の部分斜視図に示すように、翼軸40、構造フレーム42,翼面46,円盤部50を含んで構成される。
【0026】
翼軸40、構造フレーム42、円盤部50は、軽量かつ構造的強度に優れた材料とすることが好適である。例えば、木材、紙、カーボンファイバー、グラスァイバー等の繊維素材、チタン、アルミ等の軽量金属材料を用いることが好適である。また、翼面46及び円盤部50は、軽量なフィルム素材で構成することが好適である。
【0027】
翼軸40は、回転翼104、回転翼105を機械的に支持する構造体である。翼軸40は、機体102の翼フレーム28に設けられたベアリング22に取り付けられ、機体102に対し翼軸40を中心に回転翼104、回転翼105を回転可能とする。材料及び形状を調整して、回転翼104、回転翼105から得られる揚力に対して回転翼飛行体100の重心位置が調整されるようにしておくことが好適である。
【0028】
構造フレーム42の形状に沿って翼面46が形成される。翼面46は、回転翼飛行体100の飛行に伴った空気抵抗によって回転翼104、回転翼105が翼軸40を中心に回転するように構成される。
【0029】
例えば、
図1、
図2及び
図4に示すように、S字状に形成した構造フレーム42を並べて取り付け、構造フレーム42の曲面に沿った翼面46を形成する。このような回転翼104、回転翼105を、
図2に示すように、機体102において進行方向の逆方向に凸となるように取り付ける。これにより、回転翼飛行体100が
図2の進行方向左に向けて飛行すると、進行方向左に対して逆向きに凸となる上部の空気抵抗は進行方向左対して凸となる下部の空気抵抗よりも大きくなり、
図2の時計回り回転方向で示すように、上部が進行方向の逆方向かつ下部が進行方向に向けて回転する。
【0030】
また、
図1、
図2、
図3に示すように、回転翼104、回転翼105の端部に機体102の進行方向に略平行に配置された円盤部50を設けることは好適である。
円盤部50を設けることによって、回転翼104、回転翼105の端部に生ずるトレーリングボルテックス等の空気抵抗を抑制することができる。これによって、機体102を後ろへ引く力を軽減し、同じ推力でも効果的に前進できる。また、回転翼104、回転翼105による揚力の発生効率を向上させることができる。
【実施例】
【0031】
上下二段の回転翼の中央より上の位置に推進力を生み出すプロペラ一基と方向舵一基を配置し、離着陸用車輪一組を備えたことによりプロペラの迎角を一定に保ち、出力の増減による前後振り子運動を防止し、上下二段の回転翼及びプロペラを後傾することにより、車輪の抗力による前屈転倒を防ぎ、短い離着陸性能を備えることを可能とした。
回転翼飛行体100の飛行時には、
図2に示すように、回転翼104、回転翼105に対する空気抵抗の中心位置より、機体102に対する空気抵抗の中心位置が低い位置に維持される。例えば、左右の回転翼104、回転翼105の長さをそれぞれ250mmとした場合、回転翼飛行体100の飛行時において下部回転翼104、回転翼105の端部と機体102の空気抵抗の中心位置との鉛直方向の距離は0~40mm程度に調整することが好適である。飛行に成功しているこの実施例はバッテリーを含めた自重は100g未満であるため航空法に抵触しないので例えば、軽さ、安定性、速度の遅さ、短距離離着陸、操作容易性を兼ね備えた安全な飛行玩具等として応用することができる。
【0032】
ただし、回転翼104、回転翼105の長さはこれに限定されるものではない。例えば、長さは1500mmとしても問題なく揚力を発生させることができる。このように、小型な回転翼飛行体100であれば、比較的安価に作成することができる。
【0033】
このように構成することによって、飛行時に回転翼104、回転翼105が回転した際も機体102と回転翼104、回転翼105とが安定した飛行姿勢を維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本実施の形態における回転翼飛行体100は、上記の玩具の他に、低速飛行性、安定性、操縦容易性、軽量性、水平を維持したままの上昇、巡航、旋回、降下、推進力を失った際の安全性、災害時の観測用飛行体、大気のある天体での宇宙開発用飛行体、遊覧用飛行体、低公害な飛行体、昆虫サイズの微小飛行体として利用することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0035】
10 プロペラ
11 車輪
12 制御部
13 方向舵
14 駆動モーター
15 車軸
22 ベアリング
24 機体フレーム
26 支持フレーム
28 翼フレーム
40 翼軸
42 構造フレーム46 翼面
50 円盤部材
100 回転翼飛行体
102 機体
104 回転翼
105 回転翼
【要約】
【課題】機体の離陸、水平維持,旋回及び滑空、着陸等を同時に実現できる回転翼飛行体を提供することを目的とする。
【解決手段】機体と、飛行時の進行方向に対して翼軸が横向き上下二段及び後傾に配置され、車輪を備え、離着陸を可能とし、飛行時に前記翼軸を中心に回転する回転翼を備え、前記回転翼は、飛行に伴った空気抵抗によって回転する回転翼飛行体とする。
【選択図】
図1