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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023101521
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】光武 大貴
(72)【発明者】
【氏名】大牧 信一
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035200(JP,A)
【文献】特開2010-161868(JP,A)
【文献】特開2014-075944(JP,A)
【文献】特開2009-148135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータであって、
n相(nは2以上の整数)毎に1次巻線と2次巻線を有する1つの多脚トランスと、
前記多脚トランスの前記1次巻線のそれぞれに接続されるn個の1次側回路と、
前記多脚トランスの前記2次巻線のそれぞれに接続されるn個の2次側回路と、
を備えており、
前記1次側回路は、直流と交流とを変換するインバータとして機能し、
前記2次側回路は、整流器として機能し、
前記多脚トランスは、矩形の枠である外脚と、前記外脚の前記枠内に一方向の格子状に配置され、前記相毎の前記1次巻線及び前記2次巻線が巻き付けられるn本の中脚とで構成される磁性体のコアを有し、
前記中脚は、長手方向において前記1次巻線及び前記2次巻線が巻き付けられていない位置にギャップを有することを特徴とし、
さらに、前記多脚トランスは、それぞれの前記中脚が、長手方向において前記1次巻線及び前記2次巻線が巻き付けられている区間の両外側に前記ギャップを有していることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記多脚トランスは、
前記外脚が、前記磁性体の複数のパーツで構成され、前記中脚が設置される前記パーツを前記中脚の長手方向に移動させることで前記ギャップ間の距離を調整可能であること
を特徴とする請求項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記外脚は、前記磁性体の複数のパーツが卍組みされていることを特徴とする請求項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記多脚トランスの前記中脚毎に前記1次巻線と前記2次巻線との間隔で発生する漏れインダクタンスを共振リアクトルとすることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記2次側回路も直流と交流とを変換するインバータとして機能し、
前記1次側回路をインバータ、前記2次側回路を整流器として機能させる、あるいは前記2次側回路をインバータ、前記1次側回路を整流器として機能させることで双方向に電力移動が可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記インバータは、駆動信号の位相が360°/nずつずらされ、n相インターリーブ動作することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁束キャンセル方式のトランスを利用したDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は双方向に電力を移動させることができるDAB(Dual Active Bridge)方式DC/DCコンバータを開示する。このDAB方式DC/DCコンバータは、トランス、その1次側と2次側に主スイッチング素子で構成されたスイッチング回路、1次側又は2次側のスイッチング回路とトランスとを接続するリアクトル、および入出力平滑部を備える。DAB方式DC/DCコンバータでは、トランスとリアクトルを別々の部品で構成することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-075944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動させる電力が単体のDAB方式DC/DCコンバータの電力容量を超える場合、複数のDAB方式DC/DCコンバータを並列させ、それぞれを同位相で駆動する並列動作で、個々のDAB方式DC/DCコンバータが担当する電力を電力容量以下に抑える。あるいは、図1の回路図のように、1つのDAB方式DC/DCコンバータ内の各部品(スイッチング素子31、共振リアクトル32、トランス33)を並列接続し、各部品に流れる電流を分散させて電力容量を拡大することで単相動作も可能となる。
【0005】
ここで、電力容量の拡大を単相動作で対応しようとする場合、次の2つの課題が存在する。
(課題1)前述のように電流を分散させるために各部品を並列接続するため、各部品の数が増大して実装面積が大きくなる。このため、電力容量の拡大を単相動作で対応しようとすると回路や装置が大型化し、DC/DCコンバータを小型化することが困難という課題がある。
(課題2)主スイッチ素子の動作周波数を高周波化することで各部品の小型化することができる。しかし、トランスの高周波損失およびメインスイッチ素子の損失が増大し、各部品が発熱する。このため、電力容量の拡大を単相動作で対応しようとすると高周波化による各部品での損失が大きくなり、効率低下を防ぐことが困難という課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、効率低下や大型化することなく電力容量を拡大できるDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るDC/DCコンバータは、従来の複数のトランスと複数の共振リアクトルの機能を含む多脚トランスを備え、n相動作することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係るDC/DCコンバータは、
n相(nは2以上の整数)毎に1次巻線と2次巻線を有する1つの多脚トランスと、
前記多脚トランスの前記1次巻線のそれぞれに接続されるn個の1次側回路と、
前記多脚トランスの前記2次巻線のそれぞれに接続されるn個の2次側回路と、
を備えており、
前記1次側回路は、直流と交流とを変換するインバータとして機能し、
前記2次側回路は、整流器として機能し、
前記多脚トランスは、矩形の枠である外脚と、前記外脚の前記枠内に一方向の格子状に配置され、前記相毎の前記1次巻線及び2次巻線が巻き付けられるn本の中脚とで構成される磁性体のコアを有し、
前記中脚は、長手方向において前記1次巻線及び前記2次巻線が巻き付けられていない位置にギャップを有することを特徴とする。
【0009】
本DC/DCコンバータは、n相分のトランスと共振リアクトルを一つの多脚トランスに統合しているため、装置の大型化を避けながらn相動作を実現し、電力容量を拡大している。また、当該多脚トランスは、巻線部分が中脚のギャップ部分と離れているため、漏れ磁束による高周波損失を大幅に低減できる。つまり、小型化のために高周波化しても効率低下を防ぐことができる。
従って、本発明は、効率低下や大型化することなく電力容量を拡大できるDC/DCコンバータを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、効率低下や大型化することなく電力容量を拡大できるDC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電力容量を拡大させたDAB方式DC/DCコンバータを説明する図である。
図2】本発明に係るDC/DCコンバータを説明する図である。
図3】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
図4】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
図5】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
図6】本発明に係るDC/DCコンバータを説明する図である。
図7】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
図8】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
図9】本発明に係るDC/DCコンバータの多脚トランスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0013】
(実施形態1)
図2は、本実施形態のDC/DCコンバータ301を説明する図である。DC/DCコンバータ301は、
n相(nは2以上の整数)毎に1次巻線Pnと2次巻線Snを有する1つの多脚トランス100と、
多脚トランス100の1次巻線Pnのそれぞれに接続されるn個の1次側回路12-nと、
多脚トランス100の2次巻線Snのそれぞれに接続されるn個の2次側回路13-nと、
を備える。
本実施形態では、1次側回路12-nは、直流と交流とを変換するインバータとして機能し、2次側回路13-nは、整流器として機能する。
なお、nは相番号であり、3相であればn=1、2、3である。本実施形態ではn=3の場合を説明するが、nは3に限定されない。
【0014】
多脚トランス100は、中脚20#n毎に1次巻線Pnと2次巻線Snとの間隔で発生する漏れインダクタンスを共振リアクトル32とすることを特徴とする。
また、1次側回路12-nのインバータは、駆動信号の位相が360°/nずつずらされ、n相インターリーブ動作することを特徴とする。
【0015】
図3は、多脚トランス100を説明する図である。
多脚トランス100は、
矩形の枠である外脚10と、
外脚10の前記枠内に一方向(図3の場合、Y方向)の格子状に配置され、相n毎の1次巻線Pn及び2次巻線Snが巻き付けられるn本の中脚20#nと、
で構成される磁性体のコアを有する。
前記中脚は、長手方向(図3の場合、Y方向)において1次巻線Pn及び2次巻線Snが巻き付けられていない位置にギャップGPを有する。
【0016】
外枠10や中脚20の磁性体は、例えば、ケイ素鋼板やフェライトである。両者を同じ種類の磁性体としてもよいし、互いに異なる磁性体としてもよい。
なお、ギャップGPは空間であってもよいが、絶縁シートのようなギャップ材が嵌められていてもよい。ギャップ材があることで、コアの強度が向上する。
また、本実施形態では、Y方向が長手方向となるように中脚20を設置しているが、X方向が長手方向となるように中脚20を設置してもよい。
また、3相なので、中脚は20#1、20#2、及び20#3の3本、1次巻線はP1、P2、P3の3つ、2次巻線はS1、S2、S3の3つである。
【0017】
なお、ギャップGPの位置は、図4図5に示す位置でもよい(図4は、ギャップGPが中脚20の上端(外脚と接する箇所)にある例。)。すなわち、図3図4に示すように、1次巻線Pn及び2次巻線Snは、共にギャップGPに対して一方側の中脚20に巻き付けられていること(図3図4の場合、ギャップGPが1次巻線Pn側にあるが、ギャップGPが2次巻線Sn側にあってもよい)でもよいし、図5に示すように、ギャップGPを挟んだ両側の中脚20に巻き付けられていること(図5の場合、ギャップGPが1次巻線Pnと2次巻線Snとの間にある)でもよい。
【0018】
つまり、多脚トランス100は次のような特徴を有する。
(1)ギャップGPを持つ複数の中脚20#n(本実施形態ではn=3)とギャップの無い外脚10で構成される。
(2)中脚20#nのうちギャップGP以外の位置に1次巻線Pnと2次巻線Snが巻かれる。1次巻線Pnや2次巻線Snと鎖交する、ギャップGPにおける漏れ磁束の量が低減され、巻線の損失を低減することができる。
(3)ギャップGPの磁気抵抗が大きい為、各々の中脚20#nで発生した磁束は互いに干渉せず、磁気抵抗の低い外脚10を通過する。
(4)多脚トランス100は、この構造により1つでn個のトランスと同様に動作することができる。
(5)各々の巻線に流れる電流の位相を360°/nずらして動作させることにより、外脚10の磁束が相殺され、鉄損を低減することができる。
(6)多脚トランス100は、外脚10を各相で共通化することでコア体積を削減することができ、複数(n個)のトランスを備える場合より小型化することができる。
【0019】
<補足>
巻線に大電流が流れるような場合、飽和を避けるために巻き数を多くするが、インダクタンス値が大きくなる。このため、コアにギャップを設けてインダクタンス値を下げる。そして、このコアのギャップ間距離でインダクタンス値を調整することができる。具体的には、多脚トランス100において、ギャップGPを広げると励磁インダクタンスは小さくなる。
一方、コアにギャップを設けることで漏れ磁束が発生し、巻線に鎖交して損失が生じる。そこで、多脚トランス100では、図3から図5のようにギャップGPの位置と巻線(Pn、Sn)の位置をずらすことで漏れ磁束の影響を低減している。
<補足終了>
【0020】
図1のようなDC/DCコンバータの場合、例えば、電力容量が2倍になると各部品の数が2倍となる。特に、共振リアクトル32とトランス33はそれぞれ独立した部品であり、DC/DCコンバータが大型化する主な要因となる。ここで、回路を小型化するためにはスイッチング周波数を高周波化する手法が一般的であるが、高周波化すると共振リアクトル32とトランス33の高周波損失が増大し、放熱のための設計が必要となる。
【0021】
一方、DC/DCコンバータ301の場合、n=3の3相動作の回路構成とし、各相の1次側・2次側の漏れインダクタンス(共振リアクトル32)および励磁インダクタンスの機能を一つの多脚トランス100として統合している。このため、DC/DCコンバータ301は電力容量が増大しても図1のようなDC/DCコンバータほど大型化することを回避できる。そして、大型化しないので、高周波化が不要であり、放熱のための設計も不要である。
【0022】
また、インバータである各相の1次側回路12-nに対する駆動信号の位相を120°(=360°/3)ずつずらし、インターリーブ動作させることで、多脚トランス100において3相分の励磁磁束をキャンセルする磁束キャンセル方式を実現する。上記(5)で説明したように鉄損を低減することができる。
【0023】
(実施形態2)
図6は、本実施形態のDC/DCコンバータ302を説明する図である。DC/DCコンバータ302は図2のDC/DCコンバータ301に対し、次の点が異なる。
(a)2次側回路13-nも直流と交流とを変換するインバータとして機能する。
(b)多脚トランス100の1次側回路12-nをインバータ、2次側回路13-nを整流器として機能させる、あるいは多脚トランス100の2次側回路13-nをインバータ、1次側回路12-nを整流器として機能させることで双方向に電力移動が可能である。
つまり、DC/DCコンバータ302は、DAB方式DC/DCコンバータである。
【0024】
DC/DCコンバータ302の多脚トランス100は、図5で説明した構造のものが好ましいが、次の構造であることがさらに好ましい。
(c)多脚トランス100は、それぞれの中脚20#nが、長手方向において1次巻線Pn及び2次巻線Snが巻き付けられている区間の両外側にギャップGPを有している。
図7は、さらに好ましい構造の多脚トランス100を説明する図である。多脚トランス100は、
磁性体であって、矩形の枠である外脚10と、
磁性体であって、外脚10の前記枠内に一方向(図5の場合、Y方向)の格子状に配置された複数の中脚20#nと、
中脚20#n毎に巻き付けられる1次巻線Pn及び2次巻線Snと、
を備え、
それぞれの中脚20#nは、長手方向(図7の場合、Y方向)において1次巻線Pn及び2次巻線Snが巻き付けられている区間の両外側にギャップGPを有することを特徴とする。
【0025】
トランスの両側(1次側と2次側)からみたインダクタンスを等しくするためには、図5の多脚トランス100のようにギャップGPを中脚20#nの中央(1次巻線Pnと2次巻線Snとの間)に設ける構造が好ましい。前述の「補足」で説明したとおり、励磁インダクタンスはギャップGPで調整できる。しかし、この構造の場合、励磁インダクタンスを小さくするためにギャップGPを広げるとギャップGPの近傍に発生する漏れ磁束による損失が大きくなる。つまり、この構造であると、ギャップGPによる損失を避けつつ励磁インダクタンスを調整することが困難という課題があった。
【0026】
そこで、トランスの両側からみたインダクタンスを等しくでき、かつギャップGPによる損失を避けつつ励磁インダクタンスを容易に調整できる構造として、多脚トランス100のように中脚20#nの両端にギャップGPを設けることとした。外脚10を広げることで中脚20#nの両端にギャップGPを広げることができるので、ギャップGPの近傍に発生する漏れ磁束が1次巻線Pnや2次巻線Snに干渉させずに(損失を大きくせずに)、ギャップGPを広げることができる(励磁インダクタンスを低減できる。)。
【0027】
ここで、ギャップGPの調整を容易するために、図8のように多脚トランス100の外脚10が分割されていることが好ましい。具体的には、外脚10が複数のパーツ(外脚のパーツ10-1~10-8)で構成されている。このため、中脚20が設置されるパーツ(10-1、10-2、10-3、10-5、10-6、10-7)を中脚20の長手方向(Y方向)に移動させることでギャップGP間の距離を調整可能である。
【0028】
トランス100は、外脚10が前記複数のパーツが卍組みされていることを特徴とする。卍組とは、図9(A)のような組み方である。具体的には、外脚のパーツ(10-1、10-2、10-3)の一端が外脚のパーツ10-4の側面に設置され、外脚のパーツ10-4の一端が外脚のパーツ(10-5、10-6、10-7)の側面に設置され、外脚のパーツ(10-5、10-6、10-7)の一端が外脚のパーツ10-8の側面に設置され、外脚のパーツ10-8の一端が外脚のパーツ(10-1、10-2、10-3)の側面に設置される構造である。
なお、図9(B)にパーツ10-nの「一端」と「側面」の説明を示す。「一端」は角柱のパーツ10-nの一方の底面を意味し、「側面」は角柱のパーツ10-nの1つの側面(組み上げたときに内側を向く側面)を意味する。
また、図9(A)のようなパーツ10-nの組み上げを「右回り卍組」とすれば、外脚10は「左回りの卍組」であってもよい。
【0029】
つまり、トランス100は、コアが複数のパーツで構成されるので、中脚毎にギャップGPのギャップ長を調整可能である。これは、コアの製造誤差によるギャップ長のずれを吸収できるという効果と、励磁インダクタンスを所望値に調整可能という効果を得られる。
【0030】
多脚トランス100の各ギャップGPを外脚10の複数のパーツで調整し、各相の1次側及び2次側から見た励磁インダクタンスおよび漏洩インダクタンスを等しくすることで、各相の1次側回路12-nと2次側回路13-nに同じインバータ回路を採用することが可能となる。
しかし、部品間差や製造誤差により各インバータ回路の特性(回路定数)を一致させることは困難である。そこで、多脚トランス100の各ギャップGPを外脚10の複数のパーツで調整することで、各相の1次側及び2次側から見た励磁インダクタンスおよび漏洩インダクタンスを調整し、インバータ回路間の特性差を吸収することができる。
【0031】
1次側から2次側へ(図6において左から右へ)電力を移動させる場合、1次側回路12-nに対してスイッチング素子を駆動する駆動信号を入力し、2次側回路13-nの各スイッチング素子を開放状態とし、整流器として機能させる。一方、2次側から1次側へ(図6において右から左へ)電力を移動させる場合、2次側回路13-nに対してスイッチング素子を駆動する駆動信号を入力し、1次側回路12-nの各スイッチング素子を開放状態とし、整流器として機能させる。
【0032】
換言すれば、図6の回路のDC/DCコンバータ302であっても、1次側回路又は2次側回路のスイッチング動作を停止(開放状態)とすることで、図2で説明したDC/DCコンバータ301として機能する。
なお、実施形態2では、DC/DCコンバータ302の好ましい形態として図7図8の構造を持つ多脚トランス100で説明したが、DC/DCコンバータ302としては図5の構造を持つ多脚トランス100であってもよい。この場合、図5の多脚トランス100の構造に図9で説明した卍組を適用してもよい。
【0033】
(他の実施形態)
実施形態1及び2で説明した多脚トランス100において、ギャップGPは空間であってもよいが、ギャップGPに絶縁シートのようなギャップ材が嵌められていてもよい。ギャップ材をギャップGPに嵌め込むことで、中脚20#nを外脚10に固定できる。
なお、実施形態2の多脚トランス100の場合、ギャップ材15は、中脚20#nの一端側及び他端側それぞれにあるギャップGPに共通して嵌め込む一体構造としてもよいし、中脚20#n毎に分割された構造としてもよい。
【0034】
(効果)
本発明は、磁束キャンセル方式の多脚トランスを使用することで、従来方式と比較して共振リアクトルとトランスの数を大幅に減らすことができ、DC/DCコンバータの小型化を実現できる。
本発明は、磁束キャンセル方式により、従来方式に対してスイッチング周波数を高周波化せずにトランスの巻線の体積を低減することができ、巻線部分の高周波損失や主スイッチング素子のスイッチング損失を増大させることなく回路を小型化できる。
本発明は、n相インターリーブ動作により各相のリプル電流のピークがずれるため、入出力平滑用コンデンサに流れるリプル電流の実効値を小さくすることができ、コンデンサを小型化できる。
【符号の説明】
【0035】
10:外脚
10-1、10-2、・・・、10-8、10-i:外脚のパーツ(iはパーツ番号)
12、12-1、12-2、・・・、12-n:1次側回路
13、13-1、13-2、・・・、13-n:2次側回路
20、20#1、20#2、・・・、20#n:中脚
31:スイッチング素子
32:共振リアクトル
33:トランス
100:多脚トランス
301、302:DC/DCコンバータ
P1、P2、・・・、Pn:1次巻線
S1、S2、・・・、Sn:2次巻線
GP:ギャップ
【要約】
【課題】効率低下や大型化することなく電力容量を拡大できるDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るDC/DCコンバータ301は、
n相(nは2以上の整数)毎に1次巻線Pnと2次巻線Snを有する1つの多脚トランス100と、多脚トランス100の1次巻線Pnのそれぞれに接続され、直流と交流とを変換するn個のインバータ回路12-nと、多脚トランス100の2次巻線Snのそれぞれに接続されるn個の整流回路13-nと、を備える。多脚トランス100は、中脚20#n毎に1次巻線Pnと2次巻線Snとの間隔で発生する漏れインダクタンスを共振リアクトル32とすることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9