(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】回転霧化頭型塗装機
(51)【国際特許分類】
B05B 5/04 20060101AFI20240306BHJP
B05B 3/10 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B05B5/04 A
B05B3/10 B
(21)【出願番号】P 2023148983
(22)【出願日】2023-09-14
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141963(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/035472(WO,A1)
【文献】実開平02-091656(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/04
B05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアを動力源とするエアモータと、
前記エアモータの軸線に沿って前後方向に延びた状態で回転自在に支持され、前部が前記エアモータから突出した中空な回転軸と、
前記回転軸内を通って前記回転軸の前記前部まで延びたフィードチューブと、
前記回転軸の前記前部に取付けられ、前記フィードチューブから供給された塗料を前端の放出端縁から放出するカップ状の回転霧化頭と、
前記回転霧化頭の外周側に設けられた円筒状のシェーピングエアリングと、
前記回転霧化頭を取り囲んで前記シェーピングエアリングの前部に円環状に設けられ、前記回転霧化頭の前記放出端縁から放出された塗料に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出部と、
を備えてなる回転霧化頭型塗装機において、
前記シェーピングエアリングには、当該シェーピングエアリングの周囲を流れる空気から前記シェーピングエア噴出部を隔離させる隔離手段が設けられて
おり、
前記隔離手段は、前記シェーピングエア噴出部の外周側を取り囲むように前記シェーピングエアリングの前記前部に設けられ、前記シェーピングエア噴出部の開口端よりも前側に延びた円筒状の庇部であることを特徴とする回転霧化頭型塗装機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機において、
前記隔離手段は、
前記庇部と、前記シェーピングエア噴出部の開口端よりも後側に位置して前記シェーピングエアリングから径方向の外側に突出した円環状の鍔部
と、によって構成されていることを特徴とする回転霧化頭型塗装機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機において、
前記シェーピングエアリングは、前側に位置する前外筒面と、後側に位置する後外筒面と、前記前外筒面と前記後外筒面との間の段差部と、を備え、
前記シェーピングエア噴出部は、前記シェーピングエアリングの前記段差部に周方向に並んで開口した多数個の孔によって形成され、
前記庇部は、前記シェーピングエアリングの前記段差部の最外周部に形成されていることを特徴とする回転霧化頭型塗装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディ等の被塗装物を塗装するのに好適に用いられる回転霧化頭型塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被塗装物としての自動車のボディを塗装する場合には、塗料の塗着効率、塗装仕上りが良好な回転霧化頭型塗装機が用いられている。この回転霧化頭型塗装機は、圧縮エアを動力源とするエアモータと、エアモータの軸線に沿って前後方向に延びた状態で回転自在に支持され、前部がエアモータから突出した中空な回転軸と、回転軸内を通って回転軸の前部まで延びたフィードチューブと、回転軸の前部に取付けられ、フィードチューブから供給された塗料を前端の放出端縁から放出するカップ状の回転霧化頭と、回転霧化頭の外周側に設けられた円筒状のシェーピングエアリングと、シェーピングエアリングの前部に設けられ、回転霧化頭の放出端縁から放出された塗料に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出部と、を備えている(特許文献1)。
【0003】
回転霧化頭型塗装機を用いた塗装では、シェーピングエア噴出部からシェーピングエアを噴出することにより、回転霧化頭から噴霧された塗料粒子を、均一な膜厚分布が得られる噴霧パターンに成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転霧化頭型塗装機を用いて塗装を行った場合には、回転霧化頭から噴霧された塗料粒子のうち、被塗装物に塗着しなかった一部の塗料粒子がシェーピングエアリングの周囲で浮遊する。また、塗装時には、前述したように、シェーピングエア噴出部からシェーピングエアが噴出されている。この場合、前向きに噴出されるシェーピングエアは、シェーピングエアリングの周囲の空気と一緒に浮遊する塗料も前側に移動させてしまう。これにより、シェーピングエアリングの前側部分には、浮遊塗料が付着して堆積してしまう。このように、シェーピングエアリングに塗料が堆積した場合には、シェーピングエアによって剥離した塗料が噴霧塗料と一緒に塗装面に付着する虞があり、品質不良を生じさせる原因になる。
【0006】
これに対し、品質不良を抑制するには、生産ラインの稼働中であっても定期的に塗装機を清掃する時間を設ける必要がある。また、塗装機の清掃間隔を短くしたり、清掃時間自体を長くしたりすることで、品質不良を抑制できるが、清掃コストの増大や生産性の低下を招いてしまう。
【0007】
他の対策としては、塗装機用の自動洗浄装置を設け、一回または数回の塗装を行った後に、自動洗浄装置で塗装機先端に配されるシェーピングエアリングを洗浄することが考えられる。しかし、自動洗浄装置を設置するには、費用が増大し、また洗浄用のシンナの使用量が増えるという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、シェーピングエアリングの前側部分の汚れを抑制することにより、洗浄作業を省略して生産性の向上、清掃に要するコストの低減を図ることができるようにした回転霧化頭型塗装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮エアを動力源とするエアモータと、前記エアモータの軸線に沿って前後方向に延びた状態で回転自在に支持され、前部が前記エアモータから突出した中空な回転軸と、前記回転軸内を通って前記回転軸の前記前部まで延びたフィードチューブと、前記回転軸の前記前部に取付けられ、前記フィードチューブから供給された塗料を前端の放出端縁から放出するカップ状の回転霧化頭と、前記回転霧化頭の外周側に設けられた円筒状のシェーピングエアリングと、前記回転霧化頭を取り囲んで前記シェーピングエアリングの前部に設けられ、前記回転霧化頭の前記放出端縁から放出された塗料に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエア噴出部と、を備えてなる回転霧化頭型塗装機において、前記シェーピングエアリングには、当該シェーピングエアリングの周囲を流れる空気から前記シェーピングエア噴出部を隔離させる隔離手段が設けられており、前記隔離手段は、前記シェーピングエア噴出部の外周側を取り囲むように前記シェーピングエアリングの前記前部に設けられ、前記シェーピングエア噴出部の開口端よりも前側に延びた円筒状の庇部であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シェーピングエアリングの前側部分の汚れを抑制することができ、洗浄作業を省略して生産性の向上、清掃に要するコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る回転霧化頭型塗装機を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る回転霧化頭型塗装機を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る回転霧化頭型塗装機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1ないし第3の実施形態について説明するが、そのうち、第1および第2の実施形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施形態に係る回転霧化頭型塗装機を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0013】
回転霧化頭型塗装機には、噴霧する塗料に高電圧を印加して塗装を行う静電塗装機と、塗料に高電圧を印加することなく塗装を行う非静電塗装機とが存在している。これから述べる実施形態では、塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機として構成された回転霧化頭型塗装機を例に挙げて説明する。非静電塗装機に適用した場合でも、浮遊塗料の流れを抑制する効果を得ることができる。
【0014】
図1および
図2は本発明の第1の実施形態を示している。
図1において、本発明の実施形態に係る回転霧化頭型塗装機1は、高電圧発生器(図示せず)により塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機として構成されている。回転霧化頭型塗装機1は、例えば塗装用ロボットのアーム(図示せず)の先端に取付けられている。回転霧化頭型塗装機1は、後述のハウジング2、エアモータ3、回転軸4、フィードチューブ5、回転霧化頭6、シェーピングエアリング7、第1シェーピングエア噴出部8、第2シェーピングエア噴出部9を含んで構成されている。
【0015】
ハウジング2は、筒状体として形成され、塗装用ロボットのアームの先端に取付けられている。ハウジング2の内周側には、エアモータ3を収容するためのモータ収容部(図示せず)が前側に向けて開口している。ここで、モータ収容部は、円形の段付き穴からなり、その中心に前後方向に延びた軸線O-Oを有している。この軸線O-Oは、エアモータ3、回転軸4、回転霧化頭6が回転するときの中心軸となっている。さらに、ハウジング2の前側には、シェーピングエアリング7が設けられている。
【0016】
エアモータ3は、ハウジング2内に軸線O-O上に設けられている。エアモータ3は、圧縮エアを動力源として回転軸4および回転霧化頭6を、例えば、3k~150krpmの高速で回転するものである。エアモータ3は、ハウジング2のモータ収容部に取付けられた段付円筒状のモータケース3Aと、モータケース3Aの後側に回転可能に設けられたタービン(図示せず)と、モータケース3Aに設けられ回転軸4を回転可能に支持するエア軸受(図示せず)と、を備えている。タービンは、供給されるタービンエアの流量に応じて回転数が変化する。即ち、回転霧化頭6の回転数は、タービンにより制御される。
【0017】
回転軸4は、エアモータ3の軸線O-Oと同軸に前後方向に延びた状態で、エア軸受を介して回転自在に支持されている。回転軸4は、中空な筒体として形成され、後部がタービンの中央に一体的に取付けられ、前部4Aがモータケース3Aから突出している。回転軸4の前部4Aには、回転霧化頭6が取付けられている。
【0018】
フィードチューブ5は、回転軸4内を通って回転軸4の前部4Aまで延びている。フィードチューブ5の前側は、回転軸4の前部4Aから突出して回転霧化頭6内に延在している。フィードチューブ5の後端側は、ハウジング2の中央位置に固定的に取付けられている。
【0019】
フィードチューブ5は、同軸に配置された2重管として形成されている。この2重管の中央の流路が塗料流路5Aとなり、外側の環状流路が洗浄流体流路5Bとなっている。また、塗料流路5Aと洗浄流体流路5Bは、それぞれ、塗料、洗浄流体(シンナ、エア等)の供給源(図示せず)に接続されている。これにより、フィードチューブ5は、塗装作業を行うときに塗料流路5Aから回転霧化頭6に向けて塗料を供給する。一方、フィードチューブ5は、付着塗料の洗浄作業を行うときに洗浄流体流路5Bから回転霧化頭6に向けて洗浄流体を供給する。なお、フィードチューブは、1本の流路を塗料と洗浄流体との両方で切換えて使用する構成としてもよい。
【0020】
回転霧化頭6は、フィードチューブ5から供給された塗料を微粒化して噴霧する。回転霧化頭6は、後側の取付部6Aが回転軸4の前部4Aに取付けられている。回転霧化頭6は、エアモータ3によって回転軸4と一緒に高速回転される。
【0021】
回転霧化頭6は、取付部6Aから前側に向けカップ状に拡開する外周面6Bと、前側に向け漏斗状に拡開することによりフィードチューブ5から供給された塗料を薄膜化しつつ拡散する塗料薄膜化面をなす内周面6Cと、を備えている。また、内周面6Cの前端は、回転霧化頭6の回転時に内周面6Cで拡散された塗料を放出する放出端縁6Dとなっている。
【0022】
一方、回転霧化頭6の内側には、内周面6Cの奥部(取付部6A寄り)に位置して円板状のハブ部材6Eが設けられている。このハブ部材6Eは、フィードチューブ5から供給された塗料を内周面6Cに円滑に導くことができる。さらに、回転霧化頭6の外周面6Bのうち、放出端縁6D側の前側部分6Fは、後述するシェーピングエアリング7の内筒面7Aの前側部分と径方向で対面している。
【0023】
ここで、回転霧化頭6は、エアモータ3によって高速回転された状態でフィードチューブ5から塗料が供給される。これにより、回転霧化頭6は、塗料を内周面6C(塗料薄膜化面)で薄膜化しつつ拡散し、放出端縁6Dから遠心力によって微粒化した無数の塗料粒子として噴霧する。
【0024】
シェーピングエアリング7は、回転霧化頭6の外周側に設けられている。シェーピングエアリング7は、例えば、金属等の導電性材料を用いて段付きの円筒状に形成され、回転霧化頭6を取り囲むようにハウジング2の前側に設けられている。導電性材料からなるシェーピングエアリング7は、静電反発により塗料が付着し難く、後述する庇部10の効果と併せて塗料粒子の付着を抑制することができる。
【0025】
図2に示すように、シェーピングエアリング7は、内筒面7Aと、前側に位置する前外筒面7Bと、後側に位置する後外筒面7Cと、前外筒面7Bと後外筒面7Cとの間の段差部7Dと、最前部に位置する前端部7Eと、を備えている。内筒面7Aは、前側部分が回転霧化頭6の外周面6Bの前側部分6Fと隙間をもって重なっている。これにより、外周面6Bと内筒面7Aとの間には、後述の第1シェーピングエア噴出部8が形成されている。
【0026】
また、段差部7Dは、シェーピングエアリング7の前部に配置されている。段差部7Dは、例えば、軸線O-Oと直交する円環状の平面として形成されている。段差部7Dには、後述の第2シェーピングエア噴出部9を取り囲む位置、具体的には、後外筒面7Cに連続する最外周部に位置して後述の庇部10が設けられている。
【0027】
第1シェーピングエア噴出部8は、回転霧化頭6の外周側に設けられている。第1シェーピングエア噴出部8は、放出端縁6Dから放出された塗料に向けて第1シェーピングエアを噴出する。第1シェーピングエア噴出部8は、回転霧化頭6の外周面6B(前側部分6F)とシェーピングエアリング7の内筒面7Aとの間に円環状の隙間として形成されている。これにより、第1シェーピングエア噴出部8は、前方に障害物がない状態となるから、第1シェーピングエアを安定的に噴出することができる。第1シェーピングエア噴出部8は、第1シェーピングエア供給路8A等を介してエア供給源(図示せず)に接続されている。
【0028】
シェーピングエア噴出部としての第2シェーピングエア噴出部9は、シェーピングエアリング7の前部に設けられている。第2シェーピングエア噴出部9は、第1シェーピングエア噴出部8よりも径方向の外側に位置して回転霧化頭6を取囲んで配置されている。第2シェーピングエア噴出部9は、第1シェーピングエア噴出部8と同様に、回転霧化頭6の放出端縁6Dから放出された塗料に向けて第2シェーピングエアを噴出する。
【0029】
第2シェーピングエア噴出部9は、シェーピングエアリング7の段差部7Dに周方向に並んで開口した多数個の孔によって形成されている。第2シェーピングエア噴出部9は、第2シェーピングエア供給路9A等を介してエア供給源(図示せず)に接続されている。なお、第1シェーピングエア噴出部8を廃止し、第2シェーピングエア噴出部9からのみシェーピングエアを噴出する構成としてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の特徴部分となる庇部10の構成、機能等について
図2を参照して詳細に説明する。
【0031】
隔離手段としての庇部10は、第2シェーピングエア噴出部9を取り囲むように、シェーピングエアリング7の前部に設けられている。具体的には、庇部10は、シェーピングエアリング7の前部に位置する段差部7Dの最外周部に、第2シェーピングエア噴出部9の開口端9Bよりも前側に延びた円筒状に形成されている。庇部10は、シェーピングエアリング7の周囲を流れる空気から第2シェーピングエア噴出部9を隔離させるものである。
【0032】
庇部10は、前側に向けて拡径する内周面10Aと、前側に向けて縮径する外周面10Bと、内周面10Aと外周面10Bとを接続した先端縁10Cと、によって断面三角形状ないし断面台形状に形成されている。内周面10Aが前側に向けて拡径した構造では、第2シェーピングエア噴出部9から噴出された第2シェーピングエアを、内周面10A側に引っ張られることなく真直ぐに噴出することができる。また、前側に向けて縮径する外周面10Bは、後外筒面7Cの前側に段差なく続いている。なお、先端縁10Cは、平坦面ではなく、尾根状に形成することもできる。
【0033】
ここで、庇部10は、シェーピングエアリング7の前部に第2シェーピングエア噴出部9を囲繞して設けているから、第2シェーピングエア噴出部9は、シェーピングエアリング7に対流する空気から隔離される。従って、庇部10は、シェーピングエアリング7の周辺に浮遊している塗料粒子が第2シェーピングエア噴出部9側に引き込まれるのを抑制することができる。
【0034】
本実施形態による回転霧化頭型塗装機1は、上述の如き構成を有するもので、次に、この回転霧化頭型塗装機1を用いて塗装作業を行うときの動作について説明する。
【0035】
まず、エアモータ3のタービンにタービンエアを供給し、エアモータ3によって回転軸4と回転霧化頭6を高速で回転する。この状態で、塗料供給源からの塗料がフィードチューブ5の塗料流路5Aを通じて回転霧化頭6に供給される。これにより、回転霧化頭6は、供給された塗料を、塗料粒子として噴霧する。
【0036】
この場合、回転霧化頭6は、エアモータ3、回転軸4等を介して高電圧発生器に接続されているから、回転霧化頭6の表面を流れる塗料は、高電圧に印加されている。これにより、回転霧化頭6から噴霧された塗料粒子、即ち、帯電塗料粒子は、アースに接続された自動車のボディ等の被塗装物に向けて飛行し、その塗装面に塗着することができる。
【0037】
一方、回転霧化頭6の放出端縁6Dから放出された塗料粒子は、第1シェーピングエア噴出部8から噴出された第1シェーピングエアおよび第2シェーピングエア噴出部9から噴出された第2シェーピングエアが後側から噴き付けられることにより、噴霧パターンを良好な形状に整えることができる。
【0038】
ここで、回転霧化頭6から噴霧された塗料粒子のうち、被塗装物に塗着しなった一部の塗料粒子がシェーピングエアリング7の周囲で浮遊する。また、前向きに噴出されるシェーピングエアが、シェーピングエアリング7の周囲の空気と一緒に浮遊する塗料もシェーピングエアリング7の前側に移動させる。これにより、シェーピングエアリング7の前側部分には、浮遊塗料が付着して堆積する虞がある。
【0039】
然るに、本実施形態によれば、回転霧化頭6の外周側に設けられた円筒状のシェーピングエアリング7には、シェーピングエアリング7の周囲を流れる空気から第2シェーピングエア噴出部9を隔離させる隔離手段としての庇部10が設けられている。
【0040】
従って、庇部10は、稼働中に定期的に清掃時間を確保したり、清掃間隔を短くしたり、清掃時間を長くしたり、自動洗浄装置を設けたりすることなく、シェーピングエアリング7の前側部分の汚れを抑制することができる。具体例としては、前外筒面7Bに噴霧塗料が付着して汚れるのを防止することができる。この結果、本実施形態では、シェーピングエアリング7の洗浄作業を省略して生産性を向上することができる。また、清掃に要するコストを低減することができる。
【0041】
また、庇部10は、第2シェーピングエア噴出部9を取り囲むようにシェーピングエアリング7の前部に設けられ、第2シェーピングエア噴出部9の開口端9Bよりも前側に延びた円筒状に形成されている。これにより、第2シェーピングエア噴出部9を囲繞した庇部10は、第2シェーピングエア噴出部9をシェーピングエアリング7に対流する空気から隔離させることができる。従って、庇部10は、シェーピングエアリング7の周辺に浮遊している塗料粒子が第2シェーピングエア噴出部9側に引き込まれるのを抑制することができる。
【0042】
次に、
図3は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、隔離手段は、シェーピングエア噴出部を取り囲むようにシェーピングエアリングの前部に設けられ、シェーピングエア噴出部の開口端よりも前側に延びた円筒状の庇部と、シェーピングエア噴出部の開口端よりも後側に位置してシェーピングエアリングから径方向の外側に突出した円環状の鍔部と、によって構成されていることにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
図3において、第2の実施形態による回転霧化頭型塗装機11は、隔離手段として、前述した第1の実施形態で述べた庇部10に加え、後述の鍔部12を備えている。
【0044】
隔離手段としての鍔部12は、シェーピングエアリング7の外周側に設けられている。鍔部12は、庇部10と同様に、シェーピングエアリング7の周囲を流れる空気から第2シェーピングエア噴出部9を隔離させるものである。
【0045】
鍔部12は、第2シェーピングエア噴出部9の開口端9Bよりも後側、例えば、開口端9Bから回転霧化頭6の放出端縁6Dまでの距離と同等の位置に配置されている。この上で、鍔部12は、後外筒面7Cから外側に突出した円環状体として形成されている。具体的には、鍔部12は、後外筒面7Cから軸線O-Oと直交する方向に拡開して延びた前面12Aと、前面12Aよりも所定寸法後側の後外筒面7Cから前面12Aの周縁に向けて延びたテーパ状の周面12Bと、によって断面三角形状に形成されている。
【0046】
周面12Bは、後側から前側に向けて拡開するテーパ面として形成されている。従って、噴霧塗料を含む空気がシェーピングエアによって後外筒面7Cに沿って前側に流れた場合でも、テーパ状の周面12Bは、噴霧塗料を第2シェーピングエア噴出部9から遠ざけることができる。換言すると、鍔部12は、シェーピングエアリング7の周辺に浮遊している塗料粒子が第2シェーピングエア噴出部9側に引き込まれるのを抑制することができる。
【0047】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施形態では、隔離手段として、第2シェーピングエア噴出部9を取り囲むようにシェーピングエアリング7の前部に設けられ、第2シェーピングエア噴出部9の開口端9Bよりも前側に延びた円筒状の庇部10と、第2シェーピングエア噴出部9の開口端9Bよりも後側に位置してシェーピングエアリング7から径方向の外側に突出した円環状の鍔部12と、を設ける構成としている。従って、庇部10と鍔部12との2つの隔離手段は、シェーピングエアリング7の前側部分の汚れをより確実に抑制することができる。
【0048】
次に、
図4は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、隔離手段として、シェーピングエア噴出部の開口端よりも後側に位置してシェーピングエアリングから径方向の外側に突出した円環状の鍔部のみを備えていることにある。なお、第3の実施形態では、前述した第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0049】
図4において、第3の実施形態による回転霧化頭型塗装機21は、隔離手段として、前述した第2の実施形態で述べた鍔部12のみを備えている。
【0050】
かくして、このように構成された第3の実施形態においても前述した各実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0051】
なお、実施形態では、回転霧化頭型塗装機1として、回転霧化頭6に供給される塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ハウジングの外周位置に高電圧を放電する外部電極を有し、この外部電極からの放電によって回転霧化頭から噴霧された塗料粒子に高電圧を印加する間接帯電式の回転霧化頭型塗装機に適用する構成としてもよい。さらに、本発明は、塗料に高電圧を印加することなく塗装を行う非静電塗装機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,11,21 回転霧化頭型塗装機
3 エアモータ
4 回転軸
4A 前部
5 フィードチューブ
6 回転霧化頭
6D 放出端縁
7 シェーピングエアリング
9 第2シェーピングエア噴出部(シェーピングエア噴出部)
9B 開口端
10 庇部(隔離手段)
12 鍔部(隔離手段)
O-O 軸線
【要約】
【課題】 シェーピングエアリングの前側部分の汚れを抑制することにより、洗浄作業を省略して生産性の向上、清掃に要するコストの低減を図ることができるようにする。
【解決手段】 回転霧化頭6の外周側に設けられた円筒状のシェーピングエアリング7には、シェーピングエアリング7の周囲を流れる空気から第2シェーピングエア噴出部9を隔離させる隔離手段としての庇部10が設けられている。
【選択図】
図1