(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】レーダーシステム及び物体検知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/86 20060101AFI20240306BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20240306BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240306BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01S13/86
G01S13/87
G08G1/00 J
G08B25/00 510M
(21)【出願番号】P 2023503585
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008092
(87)【国際公開番号】W WO2022185430
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】原本 亮喜
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/188697(WO,A1)
【文献】特開2012-099014(JP,A)
【文献】特開昭58-189570(JP,A)
【文献】特開2010-256133(JP,A)
【文献】特開2002-222487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/00-99/00
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムにおいて、
それぞれ異なる
地点に設置され、前記レーダー装置により検知された物体を
それぞれ異なる方向から見た形状情報を取得する複数の物体形状取得装置と、
前記複数の物体形状取得装置により取得された複数の形状情報に基づく物体形状画像を表示する表示装置とを備え
、
前記レーダー装置により前記監視対象エリアに存在する物体が検知されると、前記レーダー装置により検知された物体の位置情報を前記レーダーシステムで共有し、前記物体の位置情報に基づいて前記複数の物体形状取得装置の中から特定された2以上の物体形状取得装置の各々が、前記物体の位置情報に基づいて前記物体の存在場所に合うように方向の調整を行った後に前記物体の形状情報の取得を行うように制御されることを特徴とするレーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
前記複数の物体形状取得装置は、カメラ装置を含むことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
前記複数の物体形状取得装置は、レーダー装置を含むことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
第1のレーダー装置の動作を制御する第1のレーダー制御装置と、第2のレーダー装置の動作を制御する第2のレーダー制御装置と、前記第1のレーダー制御装置及び前記第2のレーダー制御装置に対して同期信号を送信する同期処理装置とを備え、
前記第1のレーダー制御装置は、前記同期処理装置から受信した同期信号に従ったタイミングで前記第1のレーダー装置の動作を制御し、
前記第2のレーダー制御装置は、前記同期処理装置から受信した同期信号に従ったタイミングで前記第2のレーダー装置の動作を制御することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
第1のレーダー装置の動作を制御する第1のレーダー制御装置と、第2のレーダー装置の動作を制御する第2のレーダー制御装置とを備え、
前記第1のレーダー制御装置及び前記第2のレーダー制御装置は、それぞれ、GNSS衛星から得られる時刻情報を出力するGNSS受信機を有し、
前記第1のレーダー制御装置は、前記GNSS受信機から出力される時刻情報に従ったタイミングで前記第1のレーダー装置の動作を制御し、
前記第2のレーダー制御装置は、前記GNSS受信機から出力される時刻情報に従ったタイミングで前記第2のレーダー装置の動作を制御することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項6】
監視対象エリアに存在する物体をレーダー装置により検知する
レーダーシステムにより実施される物体検知方法において、
前記レーダー装置により検知された物体を、それぞれ異なる
地点に設置された複数の物体形状取得装置
によりそれぞれ異なる方向から見た複数の形状情報を取得するステップと、
前記複数の形状情報に基づく物体形状画像を表示装置に表示するステップとを有
し、
前記取得するステップにおいて、前記レーダー装置により前記監視対象エリアに存在する物体が検知されると、前記レーダー装置により検知された物体の位置情報を前記レーダーシステムで共有し、前記物体の位置情報に基づいて前記複数の物体形状取得装置の中から特定された2以上の物体形状取得装置の各々が、前記物体の位置情報に基づいて前記物体の存在場所に合うように方向の調整を行った後に前記物体の形状情報の取得を行うように制御されることを特徴とする物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波帯などを用いたレーダー装置として、
図1のような構造のFMCW(Frequency Modulated Continuous-Wave)レーダー装置がある。
図1のレーダー装置100は、FMCW送信源101からの周波数変調されたレーダー信号を、送信電力増幅器103で増幅し、送信アンテナ104から発射する。レーダー装置100の検出範囲内に物体T(反射物)が存在する場合には、レーダー送信波が物体Tで反射される。物体Tからの反射波は、レーダー装置100の受信アンテナ105で受信され、受信電力増幅器106で増幅された後、電力分配器102からの送信レーダー信号成分と混合器107によってミキシングされ、IF信号に変換される。混合器107から出力されたIF信号は、信号処理部108でA/D変換及び信号処理される。その結果として、物体Tによる反射受信電力(反射波電力)、物体Tまでの距離、物体Tの方位、また、物体Tが移動している場合の速度(レーダー装置100に対する相対速度)等のレーダー検出結果が得られる。
【0003】
このようなレーダー装置に関し、これまでに種々の発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、移動体にミリ波レーダーを設置し、目標位置の近くにそれぞれ設置された第1の反射体と第2の反射体との間の距離と、これら反射体からの反射波の受信結果に基づいて、目標位置までの距離を測定する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダー装置の使用用途として、監視対象エリアである道路や滑走路などの路面上に存在する物体を検知する用途がある。道路や滑走路上には通常、落下物や放置物などの反射物は存在しない。そのため、レーダー装置は、反射物が存在しない検出範囲に対してレーダー送信波を送り続け、何らかの反射物が検出範囲内に現れた場合にのみ受信波(反射波)が得られ、その物体が検知される。
【0006】
レーダー装置によって物体が検知された物体を撤去・回収する必要がある場合、物体形状の情報があれば、その物体の捜索が容易になる。このとき、例えば、レーダー装置と併用してカメラ装置が用いられる。すなわち、レーダー装置による物体からの反射波電力によって物体の存在を認識した場合に、その物体の存在場所にカメラ装置の画角及び焦点を合わせて撮影する。これにより、撤去すべき物体の撮影画像が得られるので、物体の詳細形状を認識し易くなる。
【0007】
検知された物体を捜索・撤去する際、作業者は、レーダー装置から得られた物体の存在位置の情報と、カメラ装置から得られた物体形状の情報を使用することができる。しかしながら、カメラ装置が撮影する画角によっては、物体を一方向から見た形状情報しか得られず、実際の形状を忠実に捉えることは困難である。その結果、カメラ装置から得られた物体形状の情報と実際の物体形状との間に差異が生じ、物体を捜索する際に混乱を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、レーダー装置により検知された物体の形状をより的確に捉えることが可能なレーダーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、レーダーシステムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係るレーダーシステムは、監視対象エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムであって、それぞれ異なる位置に設置され、レーダー装置により検知された物体を自位置から見た形状情報を取得する複数の物体形状取得装置と、複数の物体形状取得装置により取得された複数の形状情報に基づく物体形状画像を表示する表示装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、複数の物体形状取得装置は、カメラ装置を含み得る。また、複数の物体形状取得装置は、レーダー装置を含み得る。なお、複数の物体形状取得装置は、複数のカメラ装置だけで構成されてもよく、複数のレーダー装置だけで構成されてもよく、1以上のカメラ装置と1以上のレーダー装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0011】
また、本発明に係るレーダーシステムは更に、第1のレーダー装置の動作を制御する第1のレーダー制御装置と、第2のレーダー装置の動作を制御する第2のレーダー制御装置と、第1のレーダー制御装置及び第2のレーダー制御装置に対して同期信号を送信する同期処理装置を備え、第1のレーダー制御装置は、同期処理装置から受信した同期信号に従ったタイミングで第1のレーダー装置の動作を制御し、第2のレーダー制御装置は、同期処理装置から受信した同期信号に従ったタイミングで第2のレーダー装置の動作を制御してもよい。
【0012】
また、同期処理装置に代えて、第1のレーダー制御装置及び第2のレーダー制御装置の各々は、GNSS衛星から得られる時刻情報を出力するGNSS受信機を有し、第1のレーダー制御装置は、GNSS受信機から出力される時刻情報に従ったタイミングで第1のレーダー装置の動作を制御し、第2のレーダー制御装置は、GNSS受信機から出力される時刻情報に従ったタイミングで第2のレーダー装置の動作を制御してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レーダー装置により検知された物体の形状をより的確に捉えることが可能なレーダーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示す図である。
【
図3】1台のセンサー装置を用いて物体形状を特定する様子を示す図である。
【
図4】
図3のカメラ装置120で検知物を撮影した場合の例を示す図である。
【
図5】複数台のセンサー装置の設置例を示す図である。
【
図6】複数台のセンサー装置を用いて物体形状を特定する様子を示す図である。
【
図7】
図6のカメラ装置120Aで検知物を撮影した場合の例を示す図である。
【
図8】
図6のカメラ装置120Bで検知物を撮影した場合の例を示す図である。
【
図9】
図6のカメラ装置120Cで検知物を撮影した場合の例を示す図である。
【
図10】
図6のカメラ装置120Dで検知物を撮影した場合の例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るレーダーシステムによる物体検知時の処理フローの例を示す図である。
【
図12】水平方向に回転するレーダー装置の座標系及び検知物の例を示す図である。
【
図13】複数のレーダー制御装置を同期させる第1構成例を示す図である。
【
図14】複数のレーダー制御装置を同期させる第2構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るレーダーシステムについて、図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示してある。本例のレーダーシステムは、所定の検出範囲Rに向けて設置されたレーダー装置100及びカメラ装置120を含むセンサー装置200と、制御室や監視室などに設置されたレーダー制御装置300及び表示装置400とを備えている。
図2では、説明の簡略化のためにセンサー装置200を1台のみ示しているが、
図5に示すように、実際には、それぞれ異なる検出範囲Rを監視する複数台のセンサー装置200が配置される。
【0016】
レーダー装置100は、検出範囲Rに対して送信したレーダー送信波の反射波を受信し、信号処理して得られるレーダー検出結果をレーダー制御装置300に出力する。レーダー監視装置300は、レーダー装置100から出力されたレーダー検出結果に基づいて、検出範囲R内に存在する物体X(落下物や放置物)の検出情報を表示装置400に表示させる。
【0017】
レーダー装置100の検出範囲Rは、監視対象エリアである道路や滑走路などの路面上の所定区間であり、レーダー装置100のアンテナ角度は検出範囲Rを包含するように設定される。レーダー装置100から物体Xまでの距離は、物体Xからの反射波を信号処理することで算出することができる。また、レーダー装置100のアンテナが機械的に回転している場合は、アンテナの回転角度情報に基づいて、レーダー装置100に対する物体Xの角度(方位)を特定することができる。或いは、レーダー装置100のアンテナから発射するレーダー送信波のビームの角度が電子的に走査されている場合は、ビームの走査角度情報に基づいて、レーダー装置100に対する物体Xの角度(方位)を特定することができる。
【0018】
レーダー装置100によって得られた距離及び角度の情報は、レーダー制御装置300を経由してカメラ装置120に送信される。カメラ装置120は、レーダー装置100によって得られた角度の情報に従って旋回し、レーダー装置100によって得られた距離の情報に従って焦点を調整して、画角内に存在する物体Xを撮影する。ここで、
図3に示すように、レーダー装置100及びカメラ装置120が1組しか存在しない場合(すなわち、センサー装置200が1台しかない場合)には、物体Xは一方向からしか撮影できない。この場合の問題について以下に説明する。
【0019】
図4には、
図3の配置で物体Xを撮影した場合の例を示してある。
図4の上部には、実際の物体Xを上空方向から見た物体形状(すなわち、平面視した物体形状)を示してあり、
図4の下部には、物体Xを矢印方向から撮影して得られた物体形状を示してある。このように、カメラ装置120の画角、物体Xまでの距離、撮影時の光の照射具合などの要因により、撮影画像から特定される物体形状と実際の物体形状との間に差異が生じることがある。
【0020】
例えば、
図4の上部に示すように実際の物体形状が或る程度の面積を有するものでも、側面方向の撮影画像しか得られないと、
図4の下部に示すように棒状の物体として認識されてしまう可能性がある。この場合、作業者(物体の捜索者)に対して送信される物体形状の情報は「棒状の物体」であり、作業者は現場において「棒状の物体」を捜索することになる。その結果、実際の物体形状との差異により、回収すべき物体の捜索時間を必要以上に要してしまう。また、回収した物体の形状が事前情報の形状と異なると、回収結果に確信を持てないことにもつながる。
【0021】
そこで、本例のレーダーシステムでは、撮影画像から特定される物体形状と実際の物体形状との間の差異を低減するために、レーダー装置100及びカメラ装置120を含むセンサー装置200を複数台使用する。
図5には、複数台のセンサー装置200の設置例を示してある。
図5では、監視対象の路面の両側に、路面に並行させて複数台のセンサー装置200が設置されている。センサー装置200の各々は、レーダー装置100及びカメラ装置120を搭載している。これら複数台のセンサー装置200は、制御室や監視室などに設置されたレーダー制御装置300に対して光ファイバーケーブル等により接続されている。すなわち、レーダー制御装置300が、全てのセンサー装置200を制御し、これらセンサー装置200から得られる情報を管理する。
【0022】
ここで、監視対象の路面上に1つの物体が存在しているものとし、そのときの状況を上空方向から見た様子を
図6に示してある。
図6の例では、物体Xの周囲に4台のセンサー装置200A、200B、200C、200Dが設置されている。センサー装置200Aは、レーダー装置100A及びカメラ装置120Aを備えており、センサー装置200B、200C、200Dについても同様である。
【0023】
最初に、レーダー装置100Aが物体Xからの反射電力を検出し、物体Xの存在を認識したとする。レーダー装置100Aは、自身の設置原点に対する物体Xまでの距離及び角度を得ることができる。これにより、設置原点をレーダー装置100Aと同じくするカメラ装置120Aは、レーダー装置100Aにより取得された距離及び角度の情報に基づいて、物体Xの存在場所に画角及び焦点を合わせて撮影を行う。
【0024】
図7には、
図6のカメラ装置120Aで物体Xを撮影した場合の例を示してある。
図7の上部には、実際の物体Xを上空方向から見た物体形状を示してあり、
図7の下部には、カメラ装置120Aが物体Xを矢印方向から撮影して得られた物体形状を示してある。
【0025】
本例のレーダーシステムは、レーダー制御装置300が全てのセンサー装置200を制御し、これらセンサー装置200から得られる情報を管理しているので、レーダー装置100Aにより検知された物体Xの位置情報は、システム全体として共有することができる。このため、物体Xの近くにある他のセンサー装置200B、200C、200Dは、物体Xの位置情報を元に、各レーダー装置100B、100C、100Dの電波照射角度や、各カメラ装置120B、120C、120Dの画角及び焦点を、物体Xの存在場所に合うように調整することが可能である。
【0026】
図8には、
図6のカメラ装置120Bで物体Xを撮影した場合の例を示してある。
図8の上部には、実際の物体Xを上空方向から見た物体形状を示してあり、
図8の下部には、カメラ装置120Bが物体Xを矢印方向から撮影して得られた物体形状を示してある。
【0027】
図9には、
図6のカメラ装置120Cで物体Xを撮影した場合の例を示してある。
図9の上部には、実際の物体Xを上空方向から見た物体形状を示してあり、
図9の下部には、カメラ装置120Cが物体Xを矢印方向から撮影して得られた物体形状を示してある。
【0028】
図10には、
図6のカメラ装置120Dで物体Xを撮影した場合の例を示してある。
図10の上部には、実際の物体Xを上空方向から見た物体形状を示してあり、
図10の下部には、カメラ装置120Dが物体Xを矢印方向から撮影して得られた物体形状を示してある。
【0029】
このように、物体Xを複数の方向(本例では4方向)からカメラ撮影することで、それぞれ異なる態様の4つの画像を得ることができる。レーダー制御装置300は、物体Xを撮影した複数の画像を用いて画像処理を行い、物体Xの形状を表す物体形状画像を生成する。物体形状画像の生成には公知の種々の技術を利用することができ、例えば、特願平4-151821(特開平5-342368号公報)に記載された技術を用いてもよい。また、本例ではカメラ装置の位置が固定のため、物体形状画像を生成するために各カメラ装置の物体Xの部分画像の張り合わせる角度を予め決定しておき、その角度で4つの部分画像を張り合わせても良い。
【0030】
これにより、1台のカメラ装置で撮影した画像に比べて、実際の形状に近い物体形状画像を生成することが可能となる。本例では、4台のセンサー装置200を使用して物体形状画像を生成しているが、センサー装置200の台数はこれに限定されず、2台以上の任意の台数のセンサー装置200を使用することが可能である。より多くの方向から物体Xを撮影した画像を用いることで、より実際の形状に近い物体形状画像を生成できるようになる。
【0031】
図11には、本例のレーダーシステムによる物体検知時の処理フローの例を示してある。なお、レーダー制御装置300は、システム内のセンサー装置200の位置情報(すなわち、レーダー装置100及びカメラ装置120の位置情報)を予め記憶しているものとする。複数のレーダー装置100は、レーダー制御装置300による制御の下で、監視対象エリアである路面を監視する。いずれかのレーダー装置100で路面上の物体が検知されると(ステップS101)、そのレーダー装置100からレーダー制御装置300にレーダー検出結果が送信される。
【0032】
レーダー制御装置300は、レーダー検出結果を受信すると、レーダー検出結果に含まれる検知物の距離及び角度(すなわち、レーダー装置100に対する相対的な距離及び角度)と、レーダー検出結果の送信元のレーダー装置100の位置情報とに基づいて、検知物の位置情報を計算する。また、レーダー制御装置300は、計算した検知物の位置情報と、各レーダー装置100の位置情報とに基づいて、検知物の近傍にある幾つかのカメラ装置120を特定する(ステップS102)。例えば、検知物の位置に近い順に4台のカメラ装置120を特定する。
図5や
図6のようなカメラ配置の場合、検知物を取り囲む4台のカメラ装置120が特定される。なお、本手法は一例であり、他の手法によりカメラ装置120を特定しても構わない。例えば、監視対象エリアを区分したブロック毎に幾つかのカメラ装置120を予め設定しておき、検知物があるブロックに対して設定されたカメラ装置120を特定してもよい。
【0033】
レーダー制御装置300は、特定した各カメラ装置120を制御して画角及び焦点を調整し、検知物の撮影を実行させる(ステップS103)。これらのカメラ装置120による撮影画像は、レーダー制御装置300に送信される。レーダー制御装置300は、特定した各カメラ装置120から受信した複数の撮影画像を用いて画像処理を行い、検知物の形状を表す物体形状画像を生成する(ステップS104)。レーダー制御装置300は、生成した物体形状画像を表示装置400に送信し、表示装置400に表示させる(ステップS105)。
【0034】
なお、上記の説明では、複数のカメラ装置120により得られた複数の画像に対して画像処理を施す例を示したが、レーダー装置100による反射波電力の情報を物体形状画像の生成に使用することも可能である。以下、
図12を参照して説明する。
【0035】
図12は、水平方向に回転するレーダー装置100の座標系と、そこに存在する物体Xを示したものである。レーダー装置100の位置を原点とすると、物体Xの位置は、物体Xまでの距離及び角度によって決定することができる。このとき、物体Xの大きさに対する距離方向及び角度方向の分解能を十分に小さく設定すれば、レーダー装置100は、物体Xの形状に応じた複数の箇所からの反射波電力を取得することができる。
図12の例では、物体Xの領域に対応する黒丸の格子点からの反射波電力が取得される。したがって、反射波電力の受信結果を分析することで、レーダー装置100から見た物体サイズを特定することが可能となる。また、おおよその物体形状を特定することも可能である。
【0036】
そこで、カメラ装置120を用いて得られた物体形状画像だけでなく、レーダー装置100を用いて得られた物体サイズの情報を使用することで、更に実際の形状に近い物体形状画像を生成することが可能となる。
図6の例では、4台のレーダー装置100A、100B、100C、100Dが、それぞれの方向から見た物体サイズを特定する。物体サイズの特定に使用するレーダー装置100は1台でもよいが、より多くの台数のレーダー装置100を使用することで、より正確な物体サイズを特定することが可能である。これにより、作業者に対して送信される物体形状画像と実際の物体形状との差異を小さくすることができ、捜索時間の短縮が可能となる。
【0037】
また、レーダー装置100は、
図12に示したように、検知された物体Xのおおよその物体形状を特定することもできる。そこで、カメラ装置120を用いずに、レーダー装置100だけを用いて物体形状画像を生成することも可能である。この場合、カメラ装置120を使用する場合に比べて物体形状画像の精度が落ちるが、システムを簡易化及び低コスト化することができる。もちろん、カメラ装置120を用いて得られる物体形状とレーダー装置100を用いて得られる物体形状とを組み合わせて、物体形状画像を生成しても構わない。
【0038】
ここで、本例のレーダーシステムでは複数のレーダー装置100を使用するので、レーダー装置100同士で干渉することを防止するために、1台のレーダー制御装置300が各レーダー装置100の電波発射方向及び電波発射/停止タイミングを管理している。広範なエリアを監視するレーダーシステムでは多数のレーダー装置100が必要となるが、全てのレーダー装置100を1台のレーダー制御装置300に接続するための光ファイバーケーブルを確保できない場合がある。
【0039】
この場合、別のレーダー制御装置300を追加で設置する必要性が生じるが、単にレーダー制御装置300を追加するだけでは、異なるレーダー制御装置300に接続されたレーダー装置100同士の干渉を防止することはできない。そこで、本例では、異なるレーダー制御装置300に接続されたレーダー装置100同士の干渉を防止するために、複数のレーダー制御装置300を互いに同期させる仕組みを設けている。以下、その仕組みについて説明する。
【0040】
図13には、複数のレーダー制御装置300を同期させる第1構成例を示してある。同図のシステムは、路面の片側に設置された複数のレーダー装置100を制御するレーダー制御装置300Aと、路面の別側に設置された複数のレーダー装置100を制御するレーダー制御装置300Bと、これらと接続された同期処理装置500とを備えている。
【0041】
同期処理装置500は、レーダー制御装置300A及びレーダー制御装置300Bに対して同期信号を送信する。レーダー制御装置300Aは、同期処理装置500から受信した同期信号に従って、予め設定されたタイミングで、レーダー制御装置300Aに接続されたレーダー装置100を制御する。また、レーダー制御装置300Bは、同期処理装置500から受信した同期信号に従って、予め設定されたタイミングで、レーダー制御装置300Bに接続されたレーダー装置100を制御する。すなわち、レーダー制御装置300A及びレーダー制御装置300Bは、互いに同期した状態で、配下のレーダー装置100を制御する。このとき、各レーダー装置100の電波が他のレーダー装置100に入らないように、電波照射方向及び電波発射/停止タイミングを制御する。これにより、異なるレーダー制御装置300に接続されたレーダー装置100同士の干渉を防止することができる。
【0042】
図14には、複数のレーダー制御装置300を同期させる第2構成例を示してある。同図のシステムは、路面の片側に設置された複数のレーダー装置100を制御するレーダー制御装置300Aと、路面の別側に設置された複数のレーダー装置100を制御するレーダー制御装置300Bとを備える。また、レーダー制御装置300AはGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機520を備えており、レーダー制御装置300Bも同様である。GNSS受信機520は、GNSS衛星から得られる正確な時刻情報を出力する機能を有する。
【0043】
レーダー制御装置300Aは、GNSS受信機520から出力される時刻情報に従って、予め設定されたタイミングで、レーダー制御装置300Aに接続されたレーダー装置100を制御する。また、レーダー制御装置300Bは、GNSS受信機520から出力される時刻情報に従って、予め設定されたタイミングで、レーダー制御装置300Bに接続されたレーダー装置100を制御する。すなわち、レーダー制御装置300A及びレーダー制御装置300Bは、互いに同期した状態で、配下のレーダー装置100を制御する。このとき、各レーダー装置100の電波が他のレーダー装置100に入らないように、電波照射方向及び電波発射/停止タイミングを制御する。これにより、異なるレーダー制御装置300に接続されたレーダー装置100同士の干渉を防止することができる。
【0044】
以上のように、本例のレーダーシステムは、監視対象エリアである路面に存在する物体を検知するレーダー装置100と、それぞれ異なる位置に設置され、レーダー装置100により検知された物体を自位置から見た形状情報を取得する複数のセンサー装置200と、複数のセンサー装置200により取得された複数の形状情報に基づく物体形状画像を表示する表示装置400とを備えている。このように、検知物をそれぞれ異なる方向から見た複数の形状情報を処理することで、より実際の形状に近い物体形状画像を表示できるようになる。したがって、本例のレーダーシステムによれば、レーダー装置により検知された物体の形状をより的確に捉えることが可能となる。
【0045】
ここで、物体形状画像の生成に用いられる形状情報は、センサー装置200が有するレーダー装置100及び/又はカメラ装置120により取得することができる。すなわち、物体形状画像の生成に用いられる形状情報は、カメラ装置120による撮影画像であってよく、レーダー装置100により特定された物体形状であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0046】
また、本例のレーダーシステムは、複数のレーダー制御装置300を用いる場合に、これらを同期処理装置500又はGNSS受信機520により同期させる仕組みとなっている。したがって、本例のレーダーシステムによれば、異なるレーダー制御装置300に接続されたレーダー装置100同士の干渉を防止することができる。
【0047】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0048】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、監視対象エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
100:レーダー装置、 101:FMCW送信源、 102:電力分配器、 103:送信電力増幅器、 104:送信アンテナ、 105:受信アンテナ、 106:受信電力増幅器、 107:混合器、 108:信号処理部、 120:カメラ装置、 200:センサー装置、 300:レーダー制御装置、 400:表示装置、 500:同期処理装置、 520:GNSS受信機