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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/07 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
A61B1/07 731
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023507351
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2021057630
(87)【国際公開番号】W WO2022043836
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】102020122282.3
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】尾登 邦彦
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051558(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0100639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力、第2の入力、および第3の入力を含むビームコンバイナ、合成部、ならびに出力を含む、
照明装置であって、
前記合成部は、前記第1の入力から前記合成部に入力される第1の光、前記第2の入力から前記合成部に入力される第2の光、および前記第3の入力から前記合成部に入力される第3の光を、前記出力から出力される合成光に合成するように構成され、
前記合成部は、2つの二色性反射面を備え、
前記合成部は、前記第1の光の第1の通過波長帯域を通過し、前記第1の通過波長帯域の外側の波長範囲の前記第1の光を遮断するように構成され、
前記合成部は、前記第2の光の第2の通過波長帯域を通過し、前記第2の通過波長帯域の外側の波長範囲の前記第2の光を遮断するように構成され、
前記合成部は、前記第3の光の前記第1の通過波長帯域を遮断し、前記第3の光の前記第2の通過波長帯域を遮断し、ならびに前記第1および第2の通過波長帯域の外側の波長範囲の前記第3の光を通過するように構成され、
前記第1の通過波長帯域は、前記第2通過波長帯域と重ならず、前記照明装置は、
前記ビームコンバイナの前記第1の入力に前記第1の光を入力するように配置された第1の光源と、
前記ビームコンバイナの前記第2の入力に前記第2の光を入力するように配置された第2の光源と、
前記ビームコンバイナの前記第3の入力に前記第3の光を入力するように配置された第3の光源をさらに備え、
前記第1の光は、前記第1の通過波長帯域の少なくとも一部を含み、
前記第2の光は、前記第2の通過波長帯域の少なくとも一部を含み、ならびに以下の条件の少なくとも1つを満足する、すなわち、
前記合成部を通過する前記第2の光と前記合成部を通過する前記第3の光との合成が、前記合成部を通過する前記第2の光と前記合成部を通過する前記第1の光との各々よりも、CIE1931によれば、前記白色点に近いこと、ならびに
前記合成部を通過した前記第3の光は、前記合成部を通過した前記第2の光および前記合成部を通過した前記第1の光よりも、CIE1931によれば前記白色点に近いことである、照明装置。
【請求項2】
以下の少なくとも1つ、すなわち、
・前記第1の通過波長帯域は、紫色光および紫外光の少なくとも1つを含む、
・前記第2通過波長帯域は、緑色光を含む、
・前記第3の光は、赤色光および青色光のうちの少なくとも1つを含む、
が当てはまる、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第2および第3の光の少なくとも1つが、赤色光、緑色光および青色光を含む、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1から第3の光源は、各々が個別に制御可能である、請求項1から3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記合成部が、
・一対のダイクロイックミラー、および
・2つのダイクロイック界面を伴うクロスプリズム
の1つである、請求項1から4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1から第3の光源の少なくとも1つが、発光ダイオードまたはレーザダイオードである、請求項1から5のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
前記2つのダイクロイック反射面は、互いに対して機械的に移動可能ではなく、ならびに
前記2つのダイクロイック反射面は、前記第1から第3の入力および前記出力に対して機械的に移動可能ではない、
ものの少なくとも1つである、請求項1から6のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
人体の管腔への挿入のための内視鏡の堅固な先端部分またはカプセル型内視鏡であって、対物レンズと、前記対物レンズによって撮像される被写体空間の少なくとも一部分を前記合成光によって照明するように配置された請求項1から7のいずれかに記載の前記照明装置とを備える、内視鏡の堅固な先端部分またはカプセル型内視鏡。
【請求項9】
請求項8に記載の前記堅固な先端部分と、前記人体の前記管腔への挿入のためのシャフトとを備え、前記堅固な先端部分が、前記シャフトに直接的または間接的に接続される内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、照明システムに関する。特に、血管パターン強調照明などの2つの異なる色による白色光照明および狭帯域(有色)照明の両方を可能にする内視鏡のための照明システムに関する。
【0002】
略語
B 青色
CIE 国際照明委員会
G 緑色
Gw 緑色幅広
Hb ヘモグロビン
HbO2 酸素化ヘモグロビン
LED 発光ダイオード
R 赤色
V 紫色
WL 白色光
WLI 白色光照射
【背景技術】
【0003】
白色光(WL)および血管パターン強調照明(いわゆるヘモグロビン吸収スペクトルに同期した照明スペクトルを有する狭帯域照明)が、内視鏡撮像ではますます一般的になってきている。図1は、特開2016-022043号公報から取得した、Hb(ヘモグロビン、すなわちデスオキシヘモグロビン)およびHbO2(酸素化ヘモグロビン、すなわちオキシヘモグロビン)の吸収スペクトルを示す。E1~E8は、HbおよびHbO2の等吸収点、すなわち、Hbの吸収がHbO2の吸収と同じである波長である(E8は準等吸収点である)。換言すれば、等吸収点での吸収は、ヘモグロビンの酸素化のレベルとは無関係である。W0からW7およびWRは、それぞれ、2つの隣接する等吸収点の間および等吸収点E8を超える波長範囲を示す。
【0004】
したがって、従来の血管撮像では、図2に概略的に示すようなスペクトルで組織が照明される。スペクトルは、紫色光Vおよび/または緑色幅広光Gwを含む。緑色幅広光は、青緑色から赤色の波長を含む。これらの光は、実質的に波長範囲W0、W1(V光用)およびW5(Gw光用)の少なくとも1つを含む。これらの波長域では、HbとHbO2とで吸収の差が大きい。したがって、吸収された光の強度は、Hbを含む組織とHbO2を含む組織との間でかなり異なる。緑色幅広光Gwは、組織を光学的に観察するためにも使用される。広い分光分布を有し得るため、Gw光は緑色の色相を有する。典型的に、V光とGw光の発光スペクトルは重ならない。
【0005】
内視鏡検査では、システムを簡素化し、多くの異なる種類の内視鏡との互換性を可能にするために、光源を外部ボックス(光源ボックスまたはプロセッサシステム)に配置され得る。外部ボックスからの光は、内視鏡の遠位端に配置された対物レンズの被写体空間を照明するために、1つまたは複数の光ファイバを介して内視鏡の近位端から内視鏡の遠位端に導かれてもよい。
【0006】
CIE1931は、電磁可視スペクトルの波長分布と人間の色覚における生理学的に知覚される色とを結び付ける。図3は、CIE1931(people.cs.clemson.eduから取得したx-y平面)による色域を示す。中央の領域(色の表記なし)は、白っぽい光を示す。色域の境界の数字は、それぞれのスペクトルクリーン光の波長(nm)を示す。白色光は、座標x=1/3、y=1/3、およびz=1/3を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-022043号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、WLIと狭帯域照明との間のより大きな可撓性を可能にする改善された照明システムを提供する。
【0009】
第1の入力、第2の入力、および第3の入力を含むビームコンバイナ、合成部、ならびに出力を含む、照明装置が提供され、合成部は、第1の入力から合成部に入力される第1の光、第2の入力から合成部に入力される第2の光、および第3の入力から合成部に入力される第3の光を、出力から出力される合成光に合成するように構成され、合成部は、2つの二色性反射面を備え、合成部は、第1の光の第1の通過波長帯域を通過し、第1の通過波長帯域の外側の波長範囲の第1の光を遮断するように構成され、合成部は、第2の光の第2の通過波長帯域を通過し、第2の通過波長帯域の外側の波長範囲の第2の光を遮断するように構成され、合成部は、第3の光の第1の通過波長帯域を遮断し、第3の光の第2の通過波長帯域を遮断し、ならびに第1および第2の通過波長帯域の外側の波長範囲の第3の光を通過するように構成され、第1の通過波長帯域は、第2通過波長帯域と重ならず、照明装置は、ビームコンバイナの第1の入力に第1の光を入力するように配置された第1の光源、ビームコンバイナの第2の入力に第2の光を入力するように配置された第2の光源、ビームコンバイナの第3の入力に第3の光を入力するように配置された第3の光源をさらに備え、第1の光は、第1の通過波長帯域の少なくとも一部を含み、第2の光は、第2の通過波長帯域の少なくとも一部を含み、ならびに以下の条件の少なくとも1つを満足する、すなわち、合成部を通過する第2の光と合成部を通過する第3の光との合成が、合成部を通過する第2の光と合成部を通過する第1の光との各々よりも、CIE1931によれば、白色点に近いこと、ならびに合成部を通過した第3の光は、合成部を通過した第2の光および合成部を通過した第1の光よりも、CIE1931によれば白色点に近いことである。
【0010】
したがって、血管撮像におけるより高い可撓性が得られ得る。すなわち、血管造影撮像における標準的な緑色幅広照明よりも白色に近い白色光による真のRGB照明を可能にする。これにより、より自然な色で組織を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】等吸収点を伴うHbおよびHbO2の吸収スペクトルを示す図である。
図2】血管撮像のための従来の照明スペクトルを概略的に示す図である。
図3】CIE1931による色域を示す図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の平面図を概略的に示す。
図5】本発明のいくつかの実施形態で使用されるクロスキューブの三次元図である。
図6図6(上)は、本発明のいくつかの実施形態で使用されるクロスキューブの反射率スペクトルを概略的に示し、図6の残りの部分は、第1から第3の光源として使用され得る例示的なLEDの発光スペクトルおよび白っぽい出力光のスペクトルを示す図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態によるクロスキューブの反射率スペクトル、第1から第3の光の発光スペクトル、および合成光のスペクトルを概略的に示す図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態においてGw光源として展開され得る黄色蛍光体被覆LEDの発光スペクトルを示す図である。
図9】本発明のいくつかの実施形態においてGw光源として展開された、ドームリフレクタレンズが適用された黄色蛍光体によって覆われた図8のLEDの発光スペクトルを示す図である。
図10】白っぽい光源として本発明のいくつかの実施形態において展開され得るLEDの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、図4の平面図に示すように、照明装置は、3つの光源1、2、および3を備え、3つの光源からの光は、クロスキューブ8などのダイクロイックコンバイナによって合成される。光源1および2は、従来の血管撮像(すなわち、V光を放射する紫または紫外光源および緑色幅広光源Gw)の狭帯域光源に対応することができる。第3の光源3は、コンバイナがGw光源および第3の光源からの光を合成する場合、合成された光が、ダイクロイックコンバイナを通過するGw光のみおよびダイクロイックコンバイナを通過するV光のみよりも、CIE1931の白色点(x=y=z=1/3)に近くなるように光を放射する。例えば、第3の光源は、赤色光、または青色光、または赤色光および青色光、または赤色光、緑色光および青色光を放射し得る。いくつかの実施形態では、第3の光源のみからの光は、ダイクロイックコンバイナを透過する場合、Gw光源のみからの光がダイクロイックコンバイナを通過し、V光源のみからの光がダイクロイックコンバイナを通過するよりも白色点に近くてもよい。
【0013】
照明装置によって放射される合成光(照明スペクトル)の一例が、3つの光源1、2、および3が点灯している場合について、図6(下から1つ前のスペクトル)に示されている。図6に示すように、V光およびGw光は、従来技術と同様であってよい。第3の光源3は、合成光にさらに青色および/または赤色(アンバー)光を寄与させる。したがって、可視スペクトルは、典型的には緑色幅広Gw光のみよりも白色点に近い、RGB光(またはBG光)を含む。したがって、医師は、従来の照明システムよりも自然な色で組織を観察することができる。
【0014】
本出願で、「白色点に近い」とは、白色点x=y=1/3(z方向は無視)からCIE1931の色域のx-y平面におけるユークリッド距離が短いことを意味する。x-y平面における座標xi、の照明光の白色点からのユークリッド距離は、(x-1/3)+(y-1/3)である。
【0015】
以下、照明装置の実施形態についてより詳細に説明する。
【0016】
図4は、照明装置の概略を平面図で示している。3つの光源1、2、および3は、それぞれ第1の光L1、第2の光L2、および第3の光L3を用いてクロスキューブ8の第1の入力面、第2の入力面、および第3の入力面を照明するように配置される。光源1、2、および3の各々は、それぞれのLED、レーザ、または別の発光デバイスを備え得る。光源1、2、および3の各々は、それぞれの光をクロスキューブ8のそれぞれの入力面に導くための1つまたは複数のレンズ、ミラー、または他の光学構成要素を備えてもよいし、備えなくてもよい。光源1、2、および3の各々は、他の光源1、2、および3とは独立して制御可能であってもよい。例えば、各光源1、2、および3は、他の光源とは独立してオンオフが切り替えられてもよい。いくつかの実施形態では、加えて、光源のいくつかの強度を独立して制御してもよい。
【0017】
図5は、クロスキューブ8の三次元図を示す。aからhの小文字は、クロスキューブの角を示す。クロスキューブは、第1のダイクロイック反射面a-c-g-eおよび第2のダイクロイック反射面b-f-h-dを含む。図4に示すクロスキューブ8の平面図において、ダイクロイック反射面の断面a-cおよび断面b-dは、クロスキューブの上面を形成している正方形の対角線を形成する。いくつかの実施形態では、クロスキューブの合成部は、第1および第2のダイクロイック反射面からなる。
【0018】
入力面は、クロスキューブの3つの外側面である。すなわち、第1の入力面は側面a-b-e-fであり、第2の入力面は側面c-g-h-dであり、第3の入力面は側面a-e-h-dである。第1の入力面は第2の入力面の反対側にあり、第3の入力面は第1の入力面と第2の入力面とを接続する。
【0019】
合成光L4は、出力面b-f-g-cから放射される。出力面は、第3の入力面の反対側にあり、第1の入力面と第2の入力面とを接続する。
【0020】
第1および第2のダイクロイック反射面の各々は、それぞれの波長帯域を反射し、反射した波長帯域の外側の波長帯域の光を透過する。好ましくは、ダイクロイック反射面の一方または両方が、それぞれの反射波長帯域外の全ての可視波長を透過する。
【0021】
図6(上)は、クロスキューブXの反射率スペクトルを概略的に示す。第1のダイクロイック反射面はV光を反射し、第2のダイクロイック反射面はGw光を反射する。ダイクロイック反射面の反射率は、図6に示すように、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
図6の残りの部分は、本発明の一実施形態による光源からの対応する光強度を概略的に示す。光源は、例えば、
・光源1(L1、紫色):上から2番目の図(例えば、日亜化学工業株式会社のNVSU233B-U405)、
・光源2(L2、緑色):上から3番目の図(例えば、日亜化学工業株式会社のNCSGE17AT)、
・光源3(L3、その他):下の図(例えば、日亜化学工業株式会社のNF2L757GRT-V1であり得る。
【0023】
図6の下から2番目の図のスペクトルは、L2とL3の両方がオンになっているときの出力光を示している。分かり得るように、合成光は、L2のみのスペクトルよりもCIE1931の白色点に近いようにR、G、およびB光を含む。
【0024】
図7には、クロスキューブの反射率スペクトルに加えて、第1から第3の放射光L1、L2、およびL3ならびに結果として得られる合成光L4の波長範囲が概略的に示されている。簡単にするため、図7の反射率スペクトルのエッジはシャープであり、反射率は100%または0%のいずれかであると仮定する。さらに、図7では、波長からの強度依存性を無視して、第1から第3の光L1からL3が放射される波長範囲のみを示している。これらの簡略化が有効でない場合、結果として得られる合成光L4は、反射率スペクトル(第1および第2の光L1およびL2について)または透過スペクトル(第3の光L3について)と光強度との畳み込みによって取得される。
【0025】
第1のダイクロイック反射面a-c-g-eは、出力面から出射するように第1の入力面に入力された第1の通過波長帯域(例えば、紫色光および/または紫外光、図6では第1として示されている)の光を反射し、その他の可視光波長を透過する。第1の光源1は、紫色光および/または紫外光L1を放射する。第1の光源1の発光スペクトルと第1のダイクロイック反射面a-c-g-eの反射スペクトルとは重なっている。したがって、第1の光源1が第1の入力面a-b-e-fに第1の光L1を放射する場合、合成光L4は、重複波長範囲の紫色光および/または紫外光を含む。例えば、この光は、従来の血管撮像からのV光であってもよく、またはそれとは異なっていてもよい。第1のダイクロイック反射面の反射スペクトルとは異なる波長(第1の通過波長帯域)の第1の光源1からの第1の光L1は、出力光L4に寄与しないように第1のダイクロイック反射面を透過する。
【0026】
第2のダイクロイック反射面b-f-h-dは、出力面から出射するように第2の入力面に入力された第2の通過波長帯域(例えば、緑色光、図6では第2として示されている)の光を反射し、その他の可視光波長を透過する。第2の光源2は、緑色光または緑色幅広光L2を放射する。第2の光源2の発光スペクトルと第2のダイクロイック反射面b-f-h-dの反射スペクトルとは重なっている。したがって、第2の光源2が第2の入力面c-g-h-dに第2の光L2を放射する場合、合成光L4は、重複波長範囲の緑色または緑色幅広光を含む。例えば、この光は、従来の血管撮像からのGw光であってもよく、またはそれとは異なっていてもよい。第2のダイクロイック反射面の反射スペクトルとは異なる波長(第2の通過波長帯域)の第2の光源2からの第2の光L2は、出力光L4に寄与しないように第2のダイクロイック反射面を透過する。第1の通過波長帯域と第2通過波長帯域とは重ならない。
【0027】
第3の光源3によって放射された第3の光L3は、合成光L4に寄与するために、第1のダイクロイック反射面a-c-g-eと第2のダイクロイック反射面b-f-h-dとの両方を透過する。したがって、第3の光源3は、第1の通過波長帯域の光および第2の通過波長帯域の光が遮断された放射された第3の光3によって合成光L4に寄与する。
【0028】
図7の例では、第1の光L1の波長範囲は、第1のダイクロイック反射面の第1の通過波長帯域(第1の反射波長帯域)よりも大きい。合成光L4は、通過波長帯域内の第1の光L1の寄与のみを含む。第1の通過波長帯域を超える波長域では、他の光L2およびL3のいずれも放射しないため、合成光L4は、この波長域に隙間12を有する。
【0029】
第2のダイクロイック反射面の第2通過波長帯域(第2の反射率波長帯域)は、第2の光L2の発光スペクトルよりも長波長側にまで広がっている。クロスキューブは、第3の光L3を、第2のダイクロイック反射面の反射率波長帯域を通過させない。このため、合成光L4は、この波長域に隙間13を有する。
【0030】
波長範囲15において、第2の光L2は、第2のダイクロイック反射面を透過する。したがって、第2の光L2は、この波長範囲15では合成光L4に寄与しない。一方、第3の光L3は、波長範囲15も含む。これは、波長範囲15の合成光L4に寄与するように、第1および第2のダイクロイック反射面の両方を通過する(透過する)。
【0031】
一方、波長範囲16では、第3の光L3が出力面から出射されないように第2のダイクロイック反射面で反射されるため、波長範囲16では、第2の光L2のみが合成光L4に寄与する。
【0032】
図7は、反射率波長帯域および対応する発光波長帯域の一例を示す。この例は限定的ではない。例えば、発光波長範囲の1つまたは複数は、対応する反射率波長帯域よりも小さくてもよい。第3の光は、その発光スペクトルにおいて、好ましくは第2の反射率波長帯域において隙間を有することができる。第3の光は、第2の反射率波長帯域の片側のみでの発光スペクトルであってもよい。合成光L4の波長帯域に何らかの隙間または任意の数の隙間が生じないように、反射率波長帯域および対応する発光波長帯域を配置してもよい。
【0033】
典型的には、第1および第2の光源1および2は、紫光源(LEDまたはレーザ)および緑色(または緑色幅広)光源(LEDまたはレーザ)などの2つの狭帯域光源を備える。第3の光源3は、典型的には、白色(または白っぽい)光源などの広帯域光源である。白っぽい光源は、蛍光体で覆われたLED(またはレーザ)であってもよく、蛍光体は、LED(レーザ)によって放射された青色/紫色/紫外光の一部をより長い波長の光に変換する。
【0034】
図8および図9は、緑色(緑色幅広)光源(図4および図6のL2)として使用され得る例示的なLEDのいくつかの発光スペクトルを示す。図8は、Gw光源として使用され得る蛍光体被覆白色LEDの発光スペクトルを示す。しかしながら、図9に示され、独国特許出願公開第11 2018 003134号明細書(図11および図12)で説明されているように、このLEDをドーム反射鏡レンズと共に使用することが好ましい。すなわち、ドームリフレクタレンズの開口部を直接通過しない白色LEDからの光は、蛍光体を通過するたびにドームリフレクタレンズとLEDとの間で数回反射され、最終的にドームリフレクタレンズの開口部を外部へと通過する。これにより、出力光における緑色蛍光の割合が高められる。
【0035】
図10は、白色光源(図4および図6のL3)として使用され得る別の例示的なLEDの発光スペクトルを示す。この場合、LEDは、赤色蛍光体と緑色蛍光体との混合物で覆われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、狭帯域光源(例えば、緑色光を発する第2の光源2)の1つは、緑色の色相を伴う白っぽいように見えるような広いスペクトルの緑色光を放射する。一方、第3の光源3は、第2の光源に補色、すなわち赤色光および青色光を放射してもよい。したがって、合成光はRGBを含む。
【0037】
表1は、ダイクロイック反射面の反射帯域のいくつかの例を示す。これらの反射帯域は、図1に示すHbとHbO2の等吸収点を考慮して選択される。W1からW6は、図1に対応して示される波長範囲を示す。示された帯域の外側の第3の光は、クロスキューブを通過して合成光に寄与し得る。
【0038】
【表1】
【0039】
上記の色の波長範囲は、以下の範囲内の例である。
・紫色または紫外線:380~450nm。
・青色:450~495nm。
・緑色:495~570nm。
・黄色:570~590nm。
・オレンジ色:590~620nm(アンバーと呼ばれることもある)。
・赤色:620~750nm。
可視光は、波長範囲400~750nmをカバーすると想定される。
【0040】
光強度の大部分が、示された波長範囲で放射/反射/透過されれば十分である。光は、示された波長範囲外のさらなる構成要素を含んでも含まなくてもよい。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、ダイクロイック反射面がそれぞれの通過波長帯(反射率=100%)を完全に反射し、それぞれの通過波長帯域外の波長(透過率=100%)を完全に透過するかのように記載されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、反射率は100%より小さくてもよい。例えば、60%より大きくてもよく、好ましくは80%より大きくてもよい。これに対応して、いくつかの実施形態では、透過率は100%より小さくてもよい。例えば、60%より大きくてもよく、好ましくは80%より大きくてもよい。
【0042】
光がクロスキューブによって合成される、本発明のいくつかの実施形態が記載されている。しかしながら、本発明は、光を合成させるためのクロスキューブに限定されない。その代わりに、クロスキューブのダイクロイック反射面に対応する分光反射率を有する2つのダイクロイックミラーが使用されてもよい。2つのダイクロイックミラーは、次々に配置される。第1のダイクロイックミラーでは、第1から第3の光のうちの2つの光が合成され、第2のダイクロイックミラーでは、第1のダイクロイックミラーからの合成光が第1から第3の光のうちの残りの光と合成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、さらに3つを超える光が合成される。例えば、クロスキューブ(または2つのダイクロイックミラー)からの合成光は、(さらなる)ダイクロイックミラーによって第4の光と合成され、または(さらなる)クロスキューブなどによって第4の光および第5の光と合成される。また、クロスキューブは、1つまたは2つのさらなる二色性反射面を備えてもよい。図5の斜視図において、これらのさらなる二色性反射面は、クロスキューブの上面および底面に入射する光を出力面(面a-f-g-dおよびh-e-b-c)に反射するように配置されてもよい。これらのさらなるダイクロイック反射面の反射帯域は、互いに重ならず、他のダイクロイック反射面の反射帯域と重ならない。
【0044】
クロスキューブの代わりに、クロスプリズムを使用してもよく、辺の長さの少なくとも1つが他の辺の長さと異なり、および/またはエッジの少なくとも1つが直角を形成しない。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、照明装置は、可動部分を含まなくてもよい。特に、反射ダイクロイック面は、互いに対して、入力面に対して、または光源に対して移動可能でなくてもよい。これにより、セットアップが容易になり、メンテナンスの労力が軽減される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態による照明システムは、外部ボックス(光源ボックスまたはプロセッサシステム)に配置されてもよい。外部ボックスからの光は、内視鏡の遠位端に配置された対物レンズの被写体空間を照明するために、1つまたは複数の光ファイバを介して内視鏡の近位端から内視鏡の遠位端に導かれてもよい。しかしながら、光源は、代わりに、制御本体、内視鏡コネクタ、または内視鏡の先端部に配置されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、クロスキューブから光ファイバに光を誘導するための光ファイバおよび光学系は、照明装置の出力に属すると考えられてもよい。これらの実施形態では、光源およびダイクロイック反射界面を設計するときに、クロスキューブから出力される光に対するそれらの影響を考慮に入れることができる。
【0048】
照明装置を含む内視鏡は、シャフト(例えば、可撓性のチューブ)のないカプセル型内視鏡であってもよいし、剛性先端部分およびシャフト(例えば、剛性または可撓性のチューブ)を含む内視鏡であってもよい。剛性先端部分は、角度セグメントを介して直接的または間接的にシャフトに接続されてもよい。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態による照明装置は、少なくとも2つの色の照明光および白色(または実質的に白色)の照明光が必要または所望される場合、内視鏡の外側で使用してもよい。観察される物質に応じて、着色光源は、紫色(または紫外)光および緑色(または緑色幅広)光とは異なる色を放射してもよい。例えば、405nmに吸収ピーク波長を有する、5-ALAなどのいくつかの蛍光撮像剤を適用することができ、それに応じてダイクロイックミラーの反射帯域を適合させることができる。
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