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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】旅客搭乗橋
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/305 20060101AFI20240306BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240306BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240306BHJP
【FI】
B64F1/305
G01B11/00 A
G05D1/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023509915
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013257
(87)【国際公開番号】W WO2022208601
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國武 隆
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/194933(WO,A1)
【文献】特開2015-174185(JP,A)
【文献】特開2016-013613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/305
G01B 11/00
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナルビルに接続され、鉛直軸線まわりに正逆回転自在なロタンダと、
基端が前記ロタンダに俯仰自在に接続されるとともに長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、
前記トンネル部の先端に回転自在に設けられ、航空機の乗降部に先端部が装着されるキャブと、
前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、長手方向に伸縮動作することにより前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行し、中心点を通る軸線まわりに正逆回転することにより走行方向を変更可能に構成された走行装置と、
前記キャブを回転させるキャブ回転装置と、
前記キャブに取り付けられ、前記航空機の乗降部を撮影する第1及び第2のカメラと、
前記走行装置、前記昇降装置及び前記キャブ回転装置を制御する制御装置と、
を備えた旅客搭乗橋であって、
前記制御装置は、
前記航空機及び前記旅客搭乗橋の各部の位置を、所定位置を原点とする3次元直交座標系を用いた位置座標で表現するよう構成されており、
前記キャブが移動の起点となる所定の待機位置にあるときに、前記第1及び第2のカメラに前記乗降部を撮影させ、この撮影させた前記乗降部の画像に基づいて前記航空機の乗降部の基準点の位置座標を算出する第1の乗降部位置算出処理と、
前記第1の乗降部位置算出処理により算出された前記乗降部の基準点の位置座標に基づいて、前記キャブの先端部が前記乗降部から所定距離前方の位置となる前記キャブの一時停止位置における前記キャブの先端部の基準点の目標位置座標を算出するキャブ停止位置算出処理と、
前記キャブ停止位置算出処理により算出された前記一時停止位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記一時停止位置における特定の水平方向に対する前記キャブの第1の所望回転角度とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、前記一時停止位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さと前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを算出する第1の逆運動学計算処理と、
前記走行装置の中心点が前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標位置座標となるように前記走行装置を走行動作させる処理と、前記昇降装置の長さが前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標長さとなるように前記昇降装置を伸縮動作させる処理と、前記トンネル部に対する前記キャブの回転角度が前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標回転角度となるように前記キャブ回転装置を駆動させる処理とを実施することにより、前記キャブを前記待機位置から前記一時停止位置へ移動させる第1の移動処理と、
を行うよう構成された旅客搭乗橋。
【請求項2】
前記第1の逆運動学計算処理は、
前記キャブが水平状態であると仮定して、前記一時停止位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記一時停止位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第1の所望回転角度とを用いて、前記一時停止位置における前記キャブの中心点の水平2方向における座標と、前記第1の所望回転角度に対応する前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを近似的に算出した後、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記一時停止位置における前記キャブの基準点から前記トンネル部の中心線に下した垂線の足の水平2方向における座標を算出し、前記垂線の足の高さ方向の座標を前記一時停止位置における前記キャブの基準点の高さ方向の座標と同一として、前記垂線の足の位置座標を算出する第1計算処理と、
前記第1計算処理で算出した前記垂線の足の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、前記一時停止位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さとを算出する第2計算処理と、を有する、
請求項1に記載の旅客搭乗橋。
【請求項3】
前記第1の所望回転角度は、
平面視において、前記特定の水平方向と、エプロン上に描かれた機体誘導ラインと直交する水平方向とのなす角度である、
請求項1または2に記載の旅客搭乗橋。
【請求項4】
水平方向に離れて前記キャブに取り付けられ、前記キャブの先端部と前記航空機との距離を計測する一対の距離センサを、さらに備え、
前記制御装置は、さらに、
前記キャブが前記一時停止位置で停止しているときに、前記一対の各々の距離センサにより計測される前記キャブの先端部と前記航空機との距離が等しくなるように前記キャブ回転装置を駆動させて前記キャブを回転させるキャブ回転処理と、
前記キャブ回転処理の後、前記第1及び第2のいずれか一方のカメラに前記乗降部を撮影させ、この撮影させた前記乗降部の画像と、前記距離センサにより計測された前記キャブの先端部と前記航空機との距離とに基づいて、前記乗降部の基準点の位置座標を算出する第2の乗降部位置算出処理と、
前記第2の乗降部位置算出処理により算出された前記乗降部の基準点の位置座標に基づいて、前記キャブの先端部が前記乗降部に装着される位置となる前記キャブの装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標を算出するキャブ装着位置算出処理と、
前記キャブ装着位置算出処理により算出された前記装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記装着位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第2の所望回転角度とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、前記装着位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さと前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを算出する第2の逆運動学計算処理と、
前記走行装置の中心点が前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標位置座標に向かうように前記走行装置を走行動作させる処理と、前記昇降装置の長さが前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標長さとなるように前記昇降装置を伸縮動作させる処理と、前記トンネル部に対する前記キャブの回転角度が前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標回転角度となるように前記キャブ回転装置を駆動させる処理とを実施することにより、前記キャブを前記一時停止位置から前記装着位置へ移動させる第2の移動処理と、を行うよう構成された、
請求項1~3のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項5】
前記第2の逆運動学計算処理は、
前記キャブが水平状態であると仮定して、前記装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記装着位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第2の所望回転角度とを用いて、前記装着位置における前記キャブの中心点の水平2方向における座標と、前記第2の所望回転角度に対応する前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを近似的に算出した後、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記装着位置における前記キャブの基準点から前記トンネル部の中心線に下した垂線の足の水平2方向における座標を算出し、前記垂線の足の高さ方向の座標を前記装着位置における前記キャブの基準点の高さ方向の座標と同一として、前記垂線の足の位置座標を算出する第3計算処理と、
前記第3計算処理で算出した前記垂線の足の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、前記装着位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さとを算出する第4計算処理と、を有する、
請求項4に記載の旅客搭乗橋。
【請求項6】
前記第2の所望回転角度は、
平面視において、前記特定の水平方向と、前記航空機の前記キャブが装着される部分の水平方向に延びる接線と直交する水平方向とのなす角度である、
請求項4または5に記載の旅客搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
空港のターミナルビルと航空機との間の乗客の歩行通路になる設備として、旅客搭乗橋が知られている。旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続されて水平回転自在に支持されたロタンダと、基端がロタンダに接続されて伸縮自在に構成されたトンネル部と、トンネル部の先端に回転自在に設けられ航空機の乗降部に装着されるキャブと、トンネル部の先端寄りに支持脚として設けられたドライブコラムとを備えている。ドライブコラムには、トンネル部を支持して上下移動させる昇降装置と、昇降装置の下部に設けられ一対の走行車輪を有する走行装置とを備えている。このような旅客搭乗橋の移動を自動化することが提案されている(例えば特許文献1~3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャブに航空機の乗降部を撮影するカメラを取り付け、所定の待機位置にキャブがあるときに、カメラで撮影される乗降部の画像に基づいて当該乗降部の水平位置情報を算出し、この水平位置情報に基づいて、キャブを乗降部に装着するために移動させる移動先の目標位置を算出し、待機位置にあるキャブを目標位置に向かって移動させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、航空機の乗降口と接続可能なヘッド部(キャブ)に第1及び第2の2つのカメラを備えた構成が記載されている。そして、操作盤において駆動開始の入力が行われると、走行駆動部によって車輪走行が開始され、ヘッド部が航空機の数メートル手前まで到達したとき、第1及び第2カメラによる航空機の第1の特徴部及び第2の特徴部の撮像が開始される。そして、第1及び第2カメラの撮像画像を用いて航空機の乗降口の目標点の位置を算出し、航空機の乗降口に対するヘッド部の相対位置及び相対角度を算出し、これらに基づいて制御補正量を算出し、それに基づいて各種駆動部が駆動されて、ヘッド部を航空機の目標点に向けて移動させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、ロタンダが接続されるターミナルビルに第1及び第2の2つのカメラが設置された構成が記載されている。そして、操作盤において駆動開始の入力が行われると、走行駆動部によって車輪走行が開始され、ヘッド部が航空機の数メートル手前まで到達したとき、第1及び第2カメラによる航空機の第1の特徴部及び第2の特徴部の撮像が開始される。そして、第1及び第2カメラの撮像画像を用いて航空機の乗降口の目標点の位置を算出し、航空機の乗降口に対するヘッド部の相対位置及び相対角度を算出し、これらに基づいて制御補正量を算出し、それに基づいて各種駆動部が駆動されて、ヘッド部を航空機の目標点に向けて移動させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6720414号公報
【文献】特開2020-175727号公報
【文献】特開2020-175728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の構成では、旅客搭乗橋の各部の位置を二次元座標系を用いて算出している。しかしながら、旅客搭乗橋はトンネル部が水平状態ではなく傾斜した状態で、キャブが航空機に装着される場合が多い。そのため、二次元座標系を用いて算出される各部の位置には誤差が含まれて正確ではないという問題があり、キャブの目標位置への移動を精度良く行うことは難しいと考えられる。
【0008】
また、特許文献2の構成では、航空機の乗降口に接近しながら、航空機の乗降口に対するヘッド部の相対位置及び相対角度を繰り返し算出して制御補正量を算出する必要がある。このため、ヘッド部を移動しながらヘッド部に設置された第1及び第2カメラで乗降口を撮影するが、旅客搭乗橋の移動による振動やたわみ等により、上記算出する相対位置及び相対角度には誤差が含まれて正確に算出することができないという問題があり、ヘッド部(キャブ)の目標位置への移動を精度良く行うことは難しいと考えられる。
【0009】
また、特許文献3の構成では、第1及び第2カメラが航空機から遠く離れたターミナルビルに設置されているため、航空機の乗降口に対するヘッド部の相対位置及び相対角度を正確に算出することができず、ヘッド部(キャブ)の目標位置への移動を精度良く行うことは難しいと考えられる。
【0010】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、キャブの目標位置への移動を精度良く行うことが可能になる旅客搭乗橋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続され、鉛直軸線まわりに正逆回転自在なロタンダと、基端が前記ロタンダに俯仰自在に接続されるとともに長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、前記トンネル部の先端に回転自在に設けられたキャブと、前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、長手方向に伸縮動作することにより前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行し、中心点を通る軸線まわりに正逆回転することにより走行方向を変更可能に構成された走行装置と、前記キャブを回転させるキャブ回転装置と、前記キャブに取り付けられ、航空機の乗降部を撮影する第1及び第2のカメラと、前記走行装置、前記昇降装置及び前記キャブ回転装置を制御する制御装置と、を備えた旅客搭乗橋であって、
前記制御装置は、
前記航空機及び前記旅客搭乗橋の各部の位置を、所定位置を原点とする3次元直交座標系を用いた位置座標で表現するよう構成されており、
前記キャブが移動の起点となる所定の待機位置にあるときに、前記第1及び第2のカメラに前記乗降部を撮影させ、この撮影させた前記乗降部の画像に基づいて前記航空機の乗降部の基準点の位置座標を算出する第1の乗降部位置算出処理と、
前記第1の乗降部位置算出処理により算出された前記乗降部の基準点の位置座標に基づいて、前記キャブの先端部が前記乗降部から所定距離前方の位置となる前記キャブの一時停止位置における前記キャブの先端部の基準点の目標位置座標を算出するキャブ停止位置算出処理と、
前記キャブ停止位置算出処理により算出された前記一時停止位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記一時停止位置における特定の水平方向に対する前記キャブの第1の所望回転角度とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、前記一時停止位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さと前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを算出する第1の逆運動学計算処理と、
前記走行装置の中心点が前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標位置座標となるように前記走行装置を走行動作させる処理と、前記昇降装置の長さが前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標長さとなるように前記昇降装置を伸縮動作させる処理と、前記トンネル部に対する前記キャブの回転角度が前記第1の逆運動学計算処理により算出された前記目標回転角度となるように前記キャブ回転装置を駆動させる処理とを実施することにより、前記キャブを前記待機位置から前記一時停止位置へ移動させる第1の移動処理と、を行うよう構成されている。
【0012】
この構成によれば、航空機及び旅客搭乗橋の各部の位置を3次元直交座標系を用いた位置座標で表現し、キャブが待機位置において、第1及び第2のカメラで撮影した乗降部の画像に基づいて航空機の乗降部の基準点の位置座標を算出し、これに基づいて、一時停止位置におけるキャブの先端部の基準点の目標位置座標を算出する。そして、この一時停止位置におけるキャブの基準点の目標位置座標とキャブの姿勢(第1の所望回転角度)とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、一時停止位置における走行装置の中心点の目標位置座標と昇降装置の目標長さとトンネル部に対するキャブの目標回転角度とを算出し、この算出結果に基づいて走行装置、昇降装置及びキャブ回転装置を駆動させ、キャブを待機位置から一時停止位置へ移動させるようにしている。
【0013】
上記のように、キャブが待機位置において、キャブに取り付けた第1及び第2のカメラで航空機の乗降部を撮影し、その乗降部の基準点の位置を絶対座標(3次元直交座標系を用いた位置座標)によって算出し、この絶対座標に基づいて一時停止位置におけるキャブの基準点の目標位置座標を算出するようにしている。よって、キャブが待機位置から一時停止位置へ移動中に、航空機の乗降部の基準点の位置を算出する必要がないので、第1及び第2のカメラによる撮影を行う必要もなく、キャブの目標位置(一時停止位置)への移動を精度良く行うことが可能になる。
【0014】
前記第1の逆運動学計算処理は、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記一時停止位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記一時停止位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第1の所望回転角度とを用いて、前記一時停止位置における前記キャブの中心点の水平2方向における座標と、前記第1の所望回転角度に対応する前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを近似的に算出した後、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記一時停止位置における前記キャブの基準点から前記トンネル部の中心線に下した垂線の足の水平2方向における座標を算出し、前記垂線の足の高さ方向の座標を前記一時停止位置における前記キャブの基準点の高さ方向の座標と同一として、前記垂線の足の位置座標を算出する第1計算処理と、前記第1計算処理で算出した前記垂線の足の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、前記一時停止位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さとを算出する第2計算処理と、を有していてもよい。
【0015】
前記第1の所望回転角度は、平面視において、前記特定の水平方向と、エプロン上に描かれた機体誘導ラインと直交する水平方向とのなす角度であってもよい。
【0016】
水平方向に離れて前記キャブに取り付けられ、前記キャブの先端部と前記航空機との距離を計測する一対の距離センサを、さらに備え、
前記制御装置は、さらに、
前記キャブが前記一時停止位置で停止しているときに、前記一対の各々の距離センサにより計測される前記キャブの先端部と前記航空機との距離が等しくなるように前記キャブ回転装置を駆動させて前記キャブを回転させるキャブ回転処理と、
前記キャブ回転処理の後、前記第1及び第2のいずれか一方のカメラに前記乗降部を撮影させ、この撮影させた前記乗降部の画像と、前記距離センサにより計測された前記キャブの先端部と前記航空機との距離とに基づいて、前記乗降部の基準点の位置座標を算出する第2の乗降部位置算出処理と、
前記第2の乗降部位置算出処理により算出された前記乗降部の基準点の位置座標に基づいて、前記キャブの先端部が前記乗降部に装着される位置となる前記キャブの装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標を算出するキャブ装着位置算出処理と、
前記キャブ装着位置算出処理により算出された前記装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記装着位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第2の所望回転角度とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、前記装着位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さと前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを算出する第2の逆運動学計算処理と、
前記走行装置の中心点が前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標位置座標に向かうように前記走行装置を走行動作させる処理と、前記昇降装置の長さが前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標長さとなるように前記昇降装置を伸縮動作させる処理と、前記トンネル部に対する前記キャブの回転角度が前記第2の逆運動学計算処理により算出された前記目標回転角度となるように前記キャブ回転装置を駆動させる処理とを実施することにより、前記キャブを前記一時停止位置から前記装着位置へ移動させる第2の移動処理と、を行うよう構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、キャブが一時停止位置において、キャブの先端部と航空機との距離が等しくなるようにキャブを回転させた後、第1及び第2のいずれか一方のカメラで撮影した乗降部の画像と、距離センサにより計測されたキャブの先端部と航空機との距離とに基づいて、航空機の乗降部の基準点の位置座標を算出し、これに基づいて、装着位置におけるキャブの先端部の基準点の目標位置座標を算出する。そして、この装着位置におけるキャブの基準点の目標位置座標とキャブの姿勢(第2の所望回転角度)とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、装着位置における走行装置の中心点の目標位置座標と昇降装置の目標長さとトンネル部に対するキャブの目標回転角度とを算出し、この算出結果に基づいて走行装置、昇降装置及びキャブ回転装置を駆動させ、キャブを一時停止位置から装着位置へ移動させるようにしている。
【0018】
上記のように、キャブが一時停止位置において、航空機の乗降部の基準点の位置を絶対座標によって算出し、この絶対座標に基づいて装着位置におけるキャブの基準点の目標位置座標を算出するようにしている。よって、キャブが一時停止位置から装着位置へ移動中に、航空機の乗降部の基準点の位置を算出する必要がないので、カメラによる撮影を行う必要もなく、キャブの目標位置(装着位置)への移動を精度良く行うことが可能になる。また、一時停止位置では、距離センサを用いてキャブの先端部と航空機との距離を計測しているので、乗降部の基準点の位置座標を高精度に算出することができ、キャブの装着位置も精度よく算出することができる。よって、キャブの航空機への自動装着を良好に行うことが可能になる。
【0019】
前記第2の逆運動学計算処理は、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記装着位置における前記キャブの基準点の目標位置座標と、前記装着位置における前記特定の水平方向に対する前記キャブの第2の所望回転角度とを用いて、前記装着位置における前記キャブの中心点の水平2方向における座標と、前記第2の所望回転角度に対応する前記トンネル部に対する前記キャブの目標回転角度とを近似的に算出した後、前記キャブが水平状態であると仮定して、前記装着位置における前記キャブの基準点から前記トンネル部の中心線に下した垂線の足の水平2方向における座標を算出し、前記垂線の足の高さ方向の座標を前記装着位置における前記キャブの基準点の高さ方向の座標と同一として、前記垂線の足の位置座標を算出する第3計算処理と、前記第3計算処理で算出した前記垂線の足の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、前記装着位置における前記走行装置の中心点の目標位置座標と前記昇降装置の目標長さとを算出する第4計算処理と、を有していてもよい。
【0020】
前記第2の所望回転角度は、平面視において、前記特定の水平方向と、前記航空機の前記キャブが装着される部分の水平方向に延びる接線と直交する水平方向とのなす角度であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上に説明した構成を有し、キャブの目標位置への移動を精度良く行うことが可能になる旅客搭乗橋を提供することができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。
図2図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。
図3図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。
図4図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。
図5図5は、操作盤等の一例を示す図である。
図6図6は、旅客搭乗橋の装着時の動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、キャブが待機位置でのカメラの撮影画像の一例を示す概略図である。
図8図8(A)は、航空機の乗降部の基準点に対する一時停止位置におけるキャブの基準点の目標位置の一例を説明するための図であり、図8(B)は、航空機の乗降部の基準点に対する装着位置におけるキャブの基準点の目標位置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0025】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。また、図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。図5は、操作盤等の一例を示す図である。
【0026】
この旅客搭乗橋1は、空港のターミナルビル2の乗降口に接続された水平回転自在なロタンダ(基部円形室)4と、基端がロタンダ4に俯仰自在に接続されて長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部5と、トンネル部5の先端に正逆回転自在に設けられたキャブ(先端部円形室)6と、ドライブコラム7とを備えている。
【0027】
ロタンダ4は、支柱70によって回転軸(鉛直軸線)CL1の回りに正逆回転自在に支持されている。
【0028】
トンネル部5は、乗客の歩行通路を形成し、筒状体からなる複数のトンネル5a,5bが入れ子式に嵌合されて長手方向に伸縮自在に構成されている。なお、ここでは、2つのトンネル5a,5bによって構成されたトンネル部5が例示されているが、トンネル部5は2つ以上の複数のトンネルによって構成されていればよい。また、トンネル部5の基端部は、ロタンダ4に、水平回転軸CL4(図2)の回りに揺動自在(上下に揺動自在)に接続されることにより、ロタンダ4に俯仰自在に接続されている。
【0029】
また、トンネル部5の先端寄り部分(最も先端側のトンネル5b)には、支持脚としてドライブコラム7が取り付けられている。なお、ドライブコラム7は、キャブ6に取り付けられていてもよい。
【0030】
ドライブコラム7には、キャブ6及びトンネル部5を上下移動(昇降)させる昇降装置8が設けられている。昇降装置8は、例えば、2つの柱が入れ子式に嵌合されて伸縮可能に構成された一対の支柱部を有し、この一対の支柱部によってトンネル部5を支持している。この一対の支柱部の伸縮によって昇降装置8はトンネル部5を昇降(上下移動)させることができる。これにより、キャブ6及びトンネル部5は、ロタンダ4を基点として上下方向に揺動運動することができる。
【0031】
また、ドライブコラム7には、昇降装置8の下方に、個々に独立して正逆回転駆動可能である2つの走行車輪9(右側走行車輪9R及び左側走行車輪9L)を有する走行装置10が設けられている。走行装置10は、2つの走行車輪9の正回転駆動によって前進走行(矢印F方向への走行)が可能であり、2つの走行車輪9の逆回転駆動によって後進走行(矢印Fとは逆方向への走行)が可能に構成されている。また、走行装置10は、舵角がトンネル部5の伸縮方向(長手方向)に対して、-90度~+90度の範囲内で変更可能なように、回転軸CL2の回りに正逆回転が自在に構成され、走行方向を変更可能である。例えば、2つの走行車輪9を互いに逆方向に回転させることにより、その場において走行方向(走行車輪9の向き)を変更することもできる。走行装置10(走行車輪9)がエプロン上を走行することにより、トンネル部5をロタンダ4のまわりに回転させるとともにトンネル部5を伸縮させることができる。
【0032】
キャブ6は、トンネル部5の先端に設けられており、キャブ回転装置6R(図5)によってキャブ6の床面に垂直な回転軸線CL3の回りに正逆回転可能に構成されている。
【0033】
また、図3図4に示すように、航空機3に装着されるキャブ6の床61の先端にはバンパー62が設けられ、このバンパー62の左右方向に並んで、キャブ6と航空機3との間の距離を計測する計測手段としての距離センサ23(例えばレーザー距離計)が複数(この例では2つ)取り付けられている。なお、距離センサ23の設置位置は、適宜変更可能であり、例えば、キャブ6の床61の上に配置されていてもよい。
【0034】
また、図4に示すように、キャブ6の先端部分の奥まった位置に航空機3の乗降部(ドア3a)を撮影するための第1,第2カメラ21,22が設置されている。この第1,第2カメラ21,22は、キャブ6に対して撮影方向を調整(変更)できるものが好ましく、画角を調整できるものであってもよい。本例では、第1カメラ21の上方に第2カメラ222が配置されているが、これらの第1,第2カメラ21,22は、互いに離れて配置されて航空機3のドア3aを撮影できれば、設置位置は適宜変更してもよい。
【0035】
また、キャブ6の先端部分には、クロージャ63が設けられている。クロージャ63は、前後方向に展開及び収縮可能な蛇腹部を備え、キャブ6を航空機3に装着して、蛇腹部を前方へ展開することにより、蛇腹部の前端部を航空機3の乗降部(ドア3a)の周囲に当接できる。
【0036】
また、キャブ6の例えば側壁には、前進可能なホイル64Aを有するレベル検知装置64が配置されている。レベル検知装置64は、キャブ6を航空機3に装着した後、乗客の乗降や荷物の積み下ろし等によって航空機3が上下動した場合に、キャブ6に対する航空機3の相対的な上下の移動量を検出する機器である。レベル検知装置64を作動させると、ホイル64Aが前進して航空機3の機体表面へ最適な圧力で当接し、航空機3が上下動するとホイル64Aが回転する。このホイル64Aの回転方向及び回転角度に基づいて、航空機3の上下の移動量を検出し、この移動量が所定量以上になると、この移動量を制御装置50へ出力する。制御装置50は、キャブ6が航空機3の上下動に追従移動するようにドライブコラム7の昇降装置8を制御する。
【0037】
さらに、図5に示すように、旅客搭乗橋1には、ロタンダ4の回転角度φr(図1)を検出するロタンダ用角度センサ24と、トンネル部5に対するキャブ6の回転角度φc(図1)を検出するキャブ用角度センサ25と、トンネル部5に対する走行装置10の回転角度(走行方向を示す角度)φw(図1)を検出する走行用角度センサ26と、昇降装置8の昇降量を検出する昇降センサ27と、距離計等で構成されトンネル部5の長さを検出するトンネル長さセンサ28とが、適宜な位置に設けられている。
【0038】
なお、図1では、トンネル部5が水平状態(図2の傾斜角度β=0の状態)で、キャブ6の先端部分が航空機3の方を向いた状態が示されている。一方、図2では、トンネル部5が傾斜角度βにて傾斜した状態で、キャブ6の先端部分がトンネル部5の伸長方向と同方向を向いた状態(キャブ6の回転角度φc=0の場合)が示されている。図2に示すように、旅客搭乗橋1は、トンネル部5の伸縮方向と昇降装置8の伸縮方向(昇降方向)とが直交するように、トンネル部5に昇降装置8が取り付けられている。
【0039】
そして、キャブ6の内部には、図5に示すような操作盤31が設けられている。操作盤31には、昇降装置8によるトンネル部5及びキャブ6の昇降や、キャブ6の回転等を操作するための各種操作スイッチ33の他、走行装置10を操作するための操作レバー32及び表示装置34が設けられている。操作レバー32は、多方向の自由度をもったレバー状入力装置(ジョイスティック)によって構成されている。操作レバー32及び各種操作スイッチ33によって操作装置30が構成されている。なお、操作装置30の構成は、適宜変更可能である。
【0040】
また、制御装置50は、操作盤31と相互に電気回路で接続され、操作装置30の操作に基づく動作指令等の情報が入力されるとともに、各センサ23~28の出力信号等が入力されて、旅客搭乗橋1の動作を制御するとともに、表示装置34に表示される情報等を出力する。
【0041】
なお、制御装置50には、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを有している。記憶部には、旅客搭乗橋1を動作させるための制御プログラム及び当該動作に必要な情報が予め記憶されており、演算処理部が制御プログラムを実行することにより、制御装置50は、旅客搭乗橋1の各部の動作(走行装置10、昇降装置8及びキャブ回転装置6R等の動作)の制御等を行う。なお、旅客搭乗橋1の動作中に記憶される情報も記憶部に記憶される。制御装置50は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、インターネットやLANを経由して互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。制御装置50は、例えば、キャブ6または最も先端側のトンネル5b等に設けられている。
【0042】
制御装置50は、図1に示すようなXYZ直交座標系を用いて、リアルタイムで旅客搭乗橋1の各部の位置(座標)を把握している。すなわち絶対座標として、ロタンダ4の回転軸CL1とエプロンEP(図2)の平面との交点を原点(0,0,0)にして、X軸、Y軸、Z軸(上下方向に延びる軸)をとり、旅客搭乗橋1の各部の位置座標をあらわす。この位置座標のX座標値、Y座標値、Z座標値は、それぞれ、ロタンダ4の回転軸CL1の位置である原点(0,0,0)からの距離(例えば単位〔mm〕)を示す。この例では、X座標値は図1において原点(0,0,0)より右側を正の値とし、左側を負の値とする。また、Y座標値は原点(0,0,0)に対しターミナルビル2と反対方向を正の方向とし、Z座標値は原点(0,0,0)より上方向を正の方向とする。
【0043】
制御装置50は、航空機3及び旅客搭乗橋1の各部の位置を、前述の3次元直交座標系(XYZ直交座標系)を用いた位置座標として表現する。よって、以下に記載する「位置座標」は、3次元位置座標のことである。
【0044】
図1における「Ed」はトンネル部5の中心線(長手方向に延びる中心線)を示し、前述のロタンダ用角度センサ24により検出されるロタンダ4の回転角度φrは、平面視において、X軸に対して反時計回りに計算されるトンネル部5の中心線Edがなす角度であり、特定の水平方向(X軸の正方向)に対するロタンダ4の回転角度である。また、キャブ用角度センサ25により検出されるキャブ6の回転角度φcは、トンネル部5の中心線Edに対してキャブ6の回転角度を示している。また、走行用角度センサ26により検出される走行装置10の回転角度φwは、平面視において、トンネル部5の中心線Edに対して走行装置10の回転角度を示している。
【0045】
また、図1に示すキャブ6の回転角度θcは、特定の水平方向(X軸の正方向)に対するキャブ6の回転角度である。以下、キャブ6の回転角度θcのことをキャブ絶対角度θcと言い、キャブ6の回転角度φcのことをキャブ相対角度φcと言う場合がある。トンネル部5が水平状態(図2の傾斜角度β=0)の場合には、θc=φc+φrである。
【0046】
図2において、直線100は、ロタンダ4とトンネル部5との接続部(CL4)からトンネル部5の伸縮方向に伸ばした直線を示し、走行装置10(2つの走行車輪9)の中心点P2から直線100までの距離を、伸縮可能な昇降装置8の長さLAとして昇降センサ27により検出することができる。
【0047】
制御装置50は、キャブ6の中心点P1から先端部6aの基準点6Pまでの距離LB(所定値)と、キャブ6の中心点P1からトンネル部5の先端までの距離LC(所定値)と、トンネル部5の先端からドライブコラム7の取付位置までの距離LD(所定値)と、ロタンダ4の中心点からトンネル部5の接続部(水平回転軸CL4の位置)までの距離LR(所定値)と、上記接続部の高さHR(所定値)と、走行車輪9の半径HW(所定値)と、基準点6Pと直線100との高低差LGとを予め記憶部に記憶している。トンネル部5の基端(上記接続部)からドライブコラム7の取付位置までの距離LEは、トンネル長さセンサ28で検出されるトンネル部5の長さLFから距離LDを減じることにより算出できる。
【0048】
ここで、トンネル長さセンサ28の検出値LFを用いて算出できる距離LEと、昇降センサ27により検出される昇降装置8の長さLAとが決まれば、ロタンダ4の中心点から走行装置10の中心点P2までの水平距離L2及び走行装置10の中心点P2の高さ(Z座標値=HWで一定)は一意に決まる。同様に、ロタンダ4の中心点からキャブ6の中心点P1までの水平距離L1及びキャブ6の中心点P1の高さ(Z座標値)も一意に決まる。さらに、ロタンダ4の回転角度φrが決まれば、走行装置10の中心点P2及びキャブ6の中心点P1の各XY座標値が一意に決まる。この結果、走行装置10の中心点P2及びキャブ6の中心点P1の位置座標が一意に決まる。さらに、キャブ用角度センサ25で検出されるキャブ相対角度φcが決まれば、キャブ6の先端部6aの基準点6Pの位置座標も一意に決まる。
【0049】
よって、制御装置50は、トンネル長さセンサ28の検出値LFと昇降センサ27の検出値LAとロタンダ用角度センサ24の検出値φrとを逐次取得し、これらから順運動学に基づいて、走行装置10の中心点P2の位置座標及びキャブ6の中心点P1の位置座標を算出することができる。また、制御装置50は、前述の検出値LF,LA、φrに加えてキャブ相対角度φcも逐次取得するので、順運動学に基づいて、キャブ6の先端部6aの基準点6Pの位置座標も算出することができる。なお、キャブ6を回転軸線CL3方向の上方から見て、キャブ6の基準点6Pと中心点P1とを結ぶ線分と、トンネル部5の中心線Edとのなす角度が、キャブ相対角度φcとなるように、キャブ6の基準点6Pが定められている。そして、キャブ6の基準点6Pと中心点P1とを通る直線と、キャブ6の先端部6aに沿った直線とが直交している。
【0050】
次に、旅客搭乗橋1の動作の一例について説明する。
航空機3がエプロンに到着していないときには、旅客搭乗橋1は図1の二点鎖線で示される所定の待機位置で待機している。航空機3の正規の停止位置は、航空機3の機軸が機体誘導ラインAL上で、かつ、機体誘導ラインALの延伸方向において定められた所定の位置である。航空機3は、正規の停止位置を目標にして停止されるが、実際の停止位置が正確に正規の停止位置になるとは限らない。なお、機体誘導ラインALは、エプロンの地面上に描かれている。また、機体誘導ラインALがX軸となす角度αは、所定値として、予め制御装置50の記憶部に記憶されている。
【0051】
旅客搭乗橋1の待機位置は、旅客搭乗橋1を航空機3の乗降部(ドア3a)に装着する際に移動の起点となる移動開始位置である。旅客搭乗橋1が航空機3の乗降部に装着される際には、キャブ6が待機位置から一時停止位置へ移動し、その後、装着位置へ移動することによりキャブ6が乗降部に装着される。そして、キャブ6が乗降部から離脱したときには待機位置に戻って停止し、次の航空機の乗降部への装着動作が開始されるまで、待機位置で待機している。なお、キャブ6が航空機3から離脱して待機位置へ戻る際に、走行装置10の目標とする待機位置における走行装置10の中心点P2の位置座標は、予め制御装置50に記憶されている。
【0052】
この旅客搭乗橋1では、航空機3に装着されるまでの動作が制御装置50による制御によって自動で行われる。この自動制御は、以下のようにして行われる。図6は、旅客搭乗橋1のキャブ6を航空機3へ装着する時の動作の一例を示すフローチャートである。この旅客搭乗橋1の動作は、制御装置50の制御によって実現される。なお、以下の説明で使用する「位置座標」も、3次元直交座標系(XYZ直交座標系)を用いた3次元位置座標のことである。
【0053】
旅客搭乗橋1(キャブ6)が待機位置において、オペレータが操作盤31の自動制御のスタートボタン(操作スイッチ33の一つ)を押すことにより、以下の自動制御が開始される。
【0054】
上記のスタートボタンが押されると、制御装置50は、ステップS1の第1の乗降部位置算出処理を行う。このステップS1では、制御装置50は、まず、第1,第2カメラ21,22に航空機3の乗降部(ドア3a)を撮影させる。ここで、航空機3の乗降部が撮影視野に入らない場合には、撮影視野に入るようにキャブ回転装置6Rを駆動してカメラ21,22の撮影方向等を調整させるようにしてもよい。図7は、キャブが待機位置での第1カメラ21の撮影画像の一例を示す概略図である。航空機3では、ドア3aが視認できるようにドア3aの輪郭部分にペイントが施されている(ペイント部分41)。図7の撮影画像A1におけるx及びy軸はカメラ座標系を示す。
【0055】
続いて、制御装置50は、2つのカメラ21,22の撮影画像データを取得し、これらの撮影画像データに基づいて、航空機3のドア3aの基準点3Pの位置座標(XYZ直交座標系における位置座標)を算出する。このとき、ドア3aの輪郭のペイント部分41や補強プレート3cの形状等に基づいてドア3a及びそのドア3aの基準点3Pを検出することができる。ドア3aの基準点3Pは、図7に示すようにドアシルの中央部である(またはドア3aの直下に設けられている補強プレート3cの上端中央部としてもよい)。
【0056】
制御装置50は、2つのカメラ21,22の撮影画像データから画像処理を行って、ドア3aの基準点3Pを検出し、2つのカメラ21,22から見たドア3aの基準点3Pの方向を算出し、この算出したカメラ21,22からの2つの方向と、キャブ6に対する2つのカメラ21,22の取付位置および取付角度と、待機位置におけるキャブ6の中心点P1の位置座標等を用いて、ドア3aの基準点3Pの位置座標を算出することができる。
【0057】
次に制御装置50は、ステップS2のキャブ停止位置算出処理を行う。このステップS2では、制御装置50は、最初の移動先となる一時停止位置におけるキャブ6の先端部6a(バンパー62)の所定の基準点6Pの目標位置の位置座標(目標位置座標)を算出する。
【0058】
図8(A)は、一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置の一例を示す図である。一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置の高さは、例えば、ドア3aの基準点3Pと同じ高さとする。また、基準点6Pの目標位置の水平位置は、ドア3aの基準点3Pから機体誘導ラインALと平行方向にドア3aの左側へ所定距離Da離れた位置をE1とすると、この位置E1から、さらに機体誘導ラインALと垂直方向であって航空機3から離れる方向へ所定距離Db(例えば1000mm)移動した位置とする。このようにして、一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標を算出する。
【0059】
次に制御装置50は、ステップS3の第1の逆運動学計算処理を行う。このステップS3では、制御装置50は、ステップS2により算出された一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標と、一時停止位置における特定の水平方向(X軸正方向)に対するキャブ6の第1の所望回転角度(θc1)とに基づいて逆運動学計算(逆運動学に基づく計算)を行うことにより、一時停止位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と、昇降装置8の目標長さLA1(昇降装置8の長さLAの目標値)と、キャブ相対角度φcの目標値φc1とを算出する。ここで、一時停止位置における特定の水平方向(X軸正方向)に対するキャブ6の第1の所望回転角度(θc1)とは、一時停止位置におけるキャブ絶対角度θcの所望値である。この所望値(θc1)は、平面視において、キャブ先端部6aが機体誘導ラインALと平行になる状態のキャブ絶対角度θcとする。つまり、キャブ絶対角度θcの所望値(θc1)は、平面視において、X軸正方向と、機体誘導ラインALと直交する水平方向とのなす角度になる。ここで、機体誘導ラインALがX軸となす角度がα(所定値)であるので、キャブ絶対角度θcの所望値(θc1)は、(α+90)度として算出できる。
【0060】
このステップS3では、ステップS31を行ってからステップS32を行うことが好ましい。ステップS31の第1計算処理では、まず、キャブ6が水平状態(キャブ6の回転軸線CL3が垂直状態)であると仮定して、一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標と、一時停止位置におけるキャブ6の第1の所望回転角度θc1とを用いて、一時停止位置におけるキャブ6の中心点P1のXY座標(水平2方向における座標)と、第1の所望回転角度θc1に対応するキャブ相対角度の目標値(キャブの目標回転角度)φc1とを近似的に算出する。
【0061】
ここでは、例えば、キャブ6の先端の基準点6PのXY座標と、第1の所望回転角度θc1と、キャブ6の中心点P1と基準点6Pとの距離LB(所定値)とを用いて、キャブ6の中心点P1のXY座標を算出する。
そして、キャブ6の中心点P1のXY座標からロタンダ4の回転角度φr1を算出し、キャブ相対角度の目標値φc1を、φc1=θc1-φr1として算出する。
【0062】
さらに、キャブ6が水平状態であると仮定して、一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pからトンネル部5の中心線Edに下した垂線の足P11の水平2方向における座標(XY座標)を算出し、垂線の足P11の高さ方向の座標(Z座標)を一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの高さ方向の座標(Z座標)と同一として、垂線の足P11の位置座標(XYZ座標)を算出する。なお、上記の垂線の足P11は、キャブ6が水平状態でない場合もキャブ6の基準点6Pの高さと同じ高さになる。
【0063】
上記の垂線の足P11のXY座標は、例えば、次のようにして算出してもよい。まず、キャブ6の中心点P1と垂線の足P11との距離F1を算出する。この距離F1は、キャブ6の中心点P1と基準点6Pとの距離LBと、キャブ相対角度の目標値φc1とを用いて算出できる。つぎに、距離F1とロタンダ4の回転角度φr1とを用いて、キャブ6の中心点P1に対するX軸方向の差分及びY軸方向の差分を算出し、これらの差分のそれぞれを、キャブ6の中心点P1のX座標、Y座標に加えることにより、垂線の足P11のX座標、Y座標を算出することができる。
【0064】
次のステップS32の第2計算処理では、上記第1計算処理で算出した垂線の足P11の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、一時停止位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と、昇降装置8の目標長さLA1とを算出する。なお、垂線の足P11とキャブ6の中心点P1とは、トンネル部5の伸縮方向に距離F1をとってキャブ6の回転軸線CL3と直交する同一平面内に存在する。
【0065】
なお、上記では、ステップS3の逆運動学計算処理をステップS31とステップS32の計算処理によって行うようにしたが、これに限らない。例えば、収束計算などの他の方法によって行うようにしてよい。
【0066】
次に制御装置50は、ステップS4の第1の移動処理を行う。この第1の移動処理では、キャブ6を待機位置から一時停止位置へ移動させる。つまり、制御装置50は、走行装置10の中心点P2がステップS3により算出された目標位置座標となるように走行装置10を走行動作させるとともに、昇降装置8の長さLAがステップS3により算出された目標長さLA1となるように昇降装置8を伸縮動作させるとともに、キャブ相対角度φcがステップS3により算出された目標回転角度(φc1)となるようにキャブ回転装置6Rを駆動させることにより、キャブ6を待機位置から一時停止位置へ移動させる。
【0067】
次に制御装置50は、キャブ6が一時停止位置において、ステップS5のキャブ回転処理を行う。このキャブ回転処理では、制御装置50は、キャブ6が一時停止位置で停止しているときに、一対の各々の距離センサ23で計測されるキャブ6の先端部6aと航空機3との距離が等しくなるようにキャブ回転装置6Rを駆動させる。つまり、平面視において、キャブ6の先端部6aを、航空機3のキャブ6が装着される部分(ドア3a及びその近傍部分)の表面の水平方向に延びる接線TLと平行にする。
【0068】
次に制御装置50は、ステップS6の第2の乗降部位置算出処理を行う。このステップS6では、制御装置50は、まず、第1,第2カメラ21,22のいずれか一方のカメラ(例えばカメラ21)に航空機3の乗降部(ドア3a)を撮影させる。続いて、制御装置50は、撮影したカメラ21の撮影画像データを取得し、この撮影画像データと、距離センサ23で計測されたキャブ6の先端部6aと航空機3との距離と、キャブ6に対する前記一方のカメラ(例えばカメラ21)の取付位置および取付角度と、一時停止位置におけるキャブ6の中心点P1の位置座標等に基づいて、航空機3のドア3aの基準点3Pの位置座標(XYZ直交座標系における位置座標)を算出する。ここで、算出したドア3aの基準点3Pの位置座標は、近距離で撮影した画像データを用いるとともに、距離センサ23により正確な距離が計測できているので、ステップS1で算出したものに比べて精度が高い。
【0069】
次に制御装置50は、ステップS7のキャブ装着位置算出処理を行う。このステップS7では、制御装置50は、ステップS6により算出されたドア3aの基準点3Pの位置座標に基づいて、キャブ6の先端部6aがドア3aに装着される位置となるキャブ6の装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標を算出する。
【0070】
図8(B)は、装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置の一例を示す図である。装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置の高さは、例えば、ドア3aの基準点3Pよりも所定距離(例えば150mm)低い高さとする。また、基準点6Pの目標位置の水平位置は、平面視においてドア3aの基準点3Pから接線TLに沿ってドア3aの左側へ所定距離Da離れた位置をE2とすると、この位置E2から、さらに接線TLと垂直方向であって航空機3から離れる方向へ所定距離Dc(例えば20mm)移動した位置とする。このようにして、装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標を算出する。上記接線TLは、航空機3のキャブ6が装着される部分(ドア3a及びその近傍部分)の表面の水平方向に延びる接線である。
【0071】
次に制御装置50は、ステップS8の第2の逆運動学計算処理を行う。このステップS8では、制御装置50は、ステップS7により算出された装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標と、装着位置における特定の水平方向(X軸正方向)に対するキャブ6の第2の所望回転角度(θc2)とに基づいて逆運動学計算(逆運動学に基づく計算)を行うことにより、装着位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と、昇降装置8の目標長さLA2(昇降装置8の長さLAの目標値)と、キャブ相対角度φcの目標値φc2とを算出する。ここで、装着位置における特定の水平方向(X軸正方向)に対するキャブ6の第2の所望回転角度(θc2)とは、装着位置におけるキャブ絶対角度θcの所望値である。この所望値(θc2)は、平面視において、キャブ先端部6aが上記接線TLと平行になる状態のキャブ絶対角度θcとする。つまり、キャブ絶対角度θcの所望値(θc2)は、平面視において、X軸正方向と、上記接線TLと直交する水平方向とのなす角度になる。現時点では、ステップS5のキャブ6の回転処理によって、キャブ6の先端部6aが接線TLと平行になっているので、現時点においてロタンダ用角度センサ24によって検出されるロタンダ4の回転角度φrと、キャブ用角度センサ25によって検出されるキャブ相対角度φcとを加算して、キャブ絶対角度θcの所望値(θc2)を算出できる。なお、ステップS5のキャブ6の回転処理において、停止誤差が発生し、キャブ6の先端部6aと接線TLとが平行からずれている場合には、そのずれに相当する角度をさらに加算して上記所望値(θc2)を算出するようにしてもよい。
【0072】
このステップS8では、ステップS81を行ってからステップS82を行うことが好ましい。ステップS81の第3計算処理では、まず、キャブ6が水平状態(キャブ6の回転軸線CL3が垂直状態)であると仮定して、装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標と、装着位置におけるキャブ6の第2の所望回転角度θc2とを用いて、装着位置におけるキャブ6の中心点P1のXY座標(水平2方向における座標)と、第2の所望回転角度θc2に対応するキャブ相対角度の目標値(キャブの目標回転角度)φc2とを近似的に算出する。
【0073】
ここでは、例えば、キャブ6の先端の基準点6PのXY座標と、第2の所望回転角度θc2と、キャブ6の中心点P1と基準点6Pとの距離LB(所定値)とを用いて、キャブ6の中心点P1のXY座標を算出する。
そして、キャブ6の中心点P1のXY座標からロタンダ4の回転角度φr2を算出し、キャブ相対角度の目標値φc2を、φc2=θc2-φr2として算出する。
【0074】
さらに、キャブ6が水平状態であると仮定して、装着位置におけるキャブ6の基準点6Pからトンネル部5の中心線Edに下した垂線の足P12の水平2方向における座標(XY座標)を算出し、垂線の足P12の高さ方向の座標(Z座標)を装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの高さ方向の座標(Z座標)と同一として、垂線の足P12の位置座標(XYZ座標)を算出する。なお、上記の垂線の足P12は、キャブ6が水平状態でない場合もキャブ6の基準点6Pの高さと同じ高さになる。
【0075】
上記の垂線の足P12のXY座標は、例えば、次のようにして算出してもよい。まず、キャブ6の中心点P1と垂線の足P12との距離F2を算出する。この距離F2は、キャブ6の中心点P1と基準点6Pとの距離LBと、キャブ相対角度の目標値φc2とを用いて算出できる。つぎに、距離F2とロタンダ4の回転角度φr2とを用いて、キャブ6の中心点P1に対するX軸方向の差分及びY軸方向の差分を算出し、これらの差分のそれぞれを、キャブ6の中心点P1のX座標、Y座標に加えることにより、垂線の足P12のX座標、Y座標を算出することができる。
【0076】
次のステップS82の第4計算処理では、上記第3計算処理で算出した垂線の足P12の位置座標を用いて逆運動学計算を行うことにより、装着位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と、昇降装置8の目標長さLA2とを算出する。なお、垂線の足P12とキャブ6の中心点P1とは、トンネル部5の伸縮方向に距離F2をとってキャブ6の回転軸線CL3と直交する同一平面内に存在する。
【0077】
なお、上記では、ステップS8の逆運動学計算処理をステップS81とステップS82の計算処理によって行うようにしたが、これに限らない。例えば、収束計算などの他の方法によって行うようにしてよい。
【0078】
次に制御装置50は、ステップS9の第2の移動処理を行う。この第2の移動処理では、キャブ6を一時停止位置から装着位置へ移動させる。ここで、制御装置50は、例えば、昇降装置8の長さLAがステップS8により算出された目標長さLA2となるように昇降装置8を伸縮動作させ、キャブ相対角度φcがステップS8により算出された目標回転角度(φc2)となるようにキャブ回転装置6Rを駆動させる。その後、走行装置10の中心点P2がステップS8により算出された目標位置座標となるように走行装置10を走行動作させる。ここで、走行装置10は、その中心点P2が目標位置座標に向かうように走行動作させ、前述のように中心点P2が目標位置座標に到達した時点で停止させるようにしてもよいし、走行中に距離センサ23で計測されるキャブ6の先端部6aと航空機3との距離が所定距離になった時点で停止させるようにしてもよい。以上により、キャブ6が航空機3に装着される。
【0079】
次に制御装置50は、ステップS10で、レベル検知装置64を作動させるとともにクロージャ63を展開させる。ここで、レベル検知装置64の作動とクロージャ63の展開とはどちらが先に行われてもよい。なお、ステップS10の処理は、オペレータの操作に基づいて行われるようにしてもよい。
【0080】
本実施形態では、航空機3及び旅客搭乗橋1の各部の位置を3次元直交座標系を用いた位置座標で表現し、キャブ6が待機位置において、第1及び第2カメラ21,22で撮影した乗降部の画像に基づいて航空機3の乗降部の基準点3Pの位置座標を算出し、これに基づいて、一時停止位置におけるキャブ6の先端部6aの基準点6Pの目標位置座標を算出する。そして、この一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標とキャブ6の姿勢(第1の所望回転角度θc1)とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、一時停止位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と昇降装置8の目標長さLA1とキャブ相対角度φcの目標値φc1とを算出し、この算出結果に基づいて走行装置10、昇降装置8及びキャブ回転装置6Rを駆動させ、キャブ6を待機位置から一時停止位置へ移動させるようにしている。
【0081】
上記のように、キャブ6が待機位置において、キャブ6に取り付けた第1及び第2のカメラ21,22で航空機3の乗降部を撮影し、その乗降部の基準点3Pの位置を絶対座標(3次元直交座標系を用いた位置座標)によって算出し、この絶対座標に基づいて一時停止位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標を算出するようにしている。よって、キャブ6が待機位置から一時停止位置へ移動中に、航空機3の乗降部の基準点3Pの位置を算出する必要がないので、第1及び第2のカメラ21,22による撮影を行う必要もなく、キャブ6の目標位置(一時停止位置)への移動を精度良く行うことが可能になる。
【0082】
また、キャブ6が一時停止位置において、キャブ6の先端部6aと航空機3との距離が等しくなるようにキャブ6を回転させた後、第1及び第2カメラ21,22のいずれか一方のカメラで撮影した乗降部の画像と、距離センサ23により計測されたキャブ6の先端部6aと航空機3との距離とに基づいて、航空機3の乗降部の基準点3Pの位置座標を算出し、これに基づいて、装着位置におけるキャブ6の先端部6aの基準点6Pの目標位置座標を算出する。そして、この装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標とキャブ6の姿勢(第2の所望回転角度θc2)とに基づいて逆運動学計算を行うことにより、装着位置における走行装置10の中心点P2の目標位置座標と昇降装置8の目標長さLA2とキャブ相対角度φcの目標値φc2とを算出し、この算出結果に基づいて走行装置10、昇降装置8及びキャブ回転装置6Rを駆動させ、キャブ6を一時停止位置から装着位置へ移動させるようにしている。
【0083】
上記のように、キャブ6が一時停止位置においても、航空機3の乗降部の基準点3Pの位置を絶対座標によって算出し、この絶対座標に基づいて装着位置におけるキャブ6の基準点6Pの目標位置座標を算出するようにしている。よって、キャブ6が一時停止位置から装着位置へ移動中に、航空機3の乗降部の基準点3Pの位置を算出する必要がないので、カメラによる撮影を行う必要もなく、キャブ6の目標位置(装着位置)への移動を精度良く行うことが可能になる。また、一時停止位置では、距離センサ23を用いてキャブ6の先端部6aと航空機3との距離を計測しているので、乗降部の基準点3Pの位置座標を高精度に算出することができ、キャブ6の装着位置も精度よく算出することができる。
【0084】
よって、キャブ6の航空機3への自動装着を良好に行うことが可能になる。
【0085】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、キャブの目標位置への移動を精度良く行うことが可能になる旅客搭乗橋等として有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 旅客搭乗橋
3 航空機
3a ドア
4 ロタンダ
5 トンネル部
6 キャブ
6R キャブ回転装置
8 昇降装置
10 走行装置
21 第1カメラ
22 第2カメラ
23 距離センサ
50 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8