IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェラー テクノチェル ゲー エム ベー ハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

特許7449457インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料
<>
  • 特許-インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料 図1
  • 特許-インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料 図2
  • 特許-インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料 図3
  • 特許-インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料 図4
  • 特許-インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】インク遮断機能を備えた、紙を担体とする昇華転写印刷用の転写材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/50 20060101AFI20240306BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20240306BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20240306BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B41M5/50 120
B41M5/41 400
B41M5/50 420
D21H27/00 Z
D21H27/30 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023547353
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022055268
(87)【国際公開番号】W WO2022184768
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】21160232.1
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591010561
【氏名又は名称】シェラー テクノチェル ゲー エム ベー ハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schoeller Technocell GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】ウィッチャー,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッハー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホーニグ,クヌート
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッパート,マルティン
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-200071(JP,A)
【文献】特開平11-277917(JP,A)
【文献】特開平11-038554(JP,A)
【文献】特開2009-269324(JP,A)
【文献】特開平7-242070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/035
B41M 5/26- 5/52
D21H 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側面が色受理層でコーティングされたベース紙を具備する、染料昇華プロセスのための転写材料であって、ベース紙はパルプの質量に対して少なくとも1.5wt%の、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から選択されたポリマー分散物を含有することを特徴とする、転写材料。
【請求項2】
ベース紙はパルプの質量に対して少なくとも3wt%のポリマー分散物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の転写材料。
【請求項3】
転写材料のインク浸透は30%未満、好ましくは20%未満であることを特徴とする、請求項1~2のいずれか1項に記載の転写材料。
【請求項4】
ベース紙はパルプの質量に対して少なくとも5wt%の顔料をさらに含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の転写材料。
【請求項5】
顔料は疎水性顔料であることを特徴とする、請求項4に記載の転写材料。
【請求項6】
疎水性顔料は、カオリン、炭酸カルシウム、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩、シリカ類、又はこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の転写材料。
【請求項7】
疎水性顔料は80m/gを超える比表面積を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の転写材料。
【請求項8】
ベース紙はパルプの質量に対して少なくとも5wt%の合成繊維をさらに含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の転写材料。
【請求項9】
ポリマー分散物はベース紙の厚さの範囲内に一様に分布していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の転写材料。
【請求項10】
請求項1に記載の転写材料を生産するための方法であって、
(a)抄紙機でベース紙を生産するステップであって、パルプの質量に対して少なくとも1.5wt%の、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択されたポリマー分散物が、ベース紙の生産の間にパルプ懸濁液に添加されるステップ;
(b)ベース紙を乾燥及び平滑化するステップ;
(c)ベース紙の表面に色受理層を付与するステップ;並びに
(d)ステップ(c)で得られた転写材料を乾燥するステップ
を含む方法。
【請求項11】
該プロセスは、ステップ(a)とステップ(b)との間に、以下の追加のステップ(a1)すなわち
(a1)サイズプレス又はフィルムプレスにおいて、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも1.0g/mのポリマー分散物を含む含浸溶液で、ベース紙を含浸するステップ
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
昇華によって被転写材料に画像を転写する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の転写材料に対してインクジェット印刷プロセスによって画像が印刷され、該画像が昇華によって被転写材料に転写されることを特徴とする方法。
【請求項13】
被転写材料は、ポリエステル織物、ポリエステル不織布、又はポリエステルでコーティングされた材料から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、染料昇華プロセスのための転写材料及び該転写材料の調製方法に関する。本発明はさらに、インクジェット印刷画像を本発明による転写紙から被転写材料へと転写するための方法に関する。
【0002】
可撓性を有するシート様の転写材料に最初に印刷され、該転写材料から印刷画像が印刷対象物へと転写される、転写印刷プロセスは、力学的な理由から直接印刷プロセスではうまく印刷できない繊維製品又は剛体のような印刷材料について利用可能である。そのような転写印刷プロセスの具体的実施形態は染料昇華プロセスであり、これは例えばB. Thompson, “Printing Materials - Science and Technology”, 1998, p.468に記載されている。この方法では、印刷される画像は印刷インクを使用して転写材料に塗布され、該印刷インクは印刷物が熱暴露により乾燥された後に気化し、気相から再び、最終的に印刷される予定の材料の上に画像として堆積される。昇華染料は、例えば繊維製品への個別かつ個人用の印刷を可能にするデジタル印刷(特にインクジェット印刷プロセス)によって転写材料に塗布することができると有利である。昇華を用いて最終的な被印刷物に転写することが可能な染料を含んだインクジェット印刷プロセスのための印刷インクは、例えば独国特許出願公開第10246209A1号明細書に記載されている。
【0003】
転写される予定の印刷画像がインクジェット印刷技術によって印刷される、典型的な転写材料は、色受理層でコーティングされた担体、例えばベース紙を具備する。
【0004】
染料昇華プロセスに適した転写材料は、一方では、転写される予定の画像を印刷している時にインク液の十分な吸収を可能とするべきであり、これはさもないと印刷鮮明度が損なわれるからであるが、同時に他方では、印刷対象の材料に印刷画像が転写される間に失われる昇華性染料は最小限であるべきである。理想的には、担体の紙内部及び転写プレスの表面への浸透(いわゆるインク浸透)に起因する昇華性染料の損失は、印刷画像が転写材料から被印刷材料へと転写される時に完全に防止されるべきである。
【0005】
昇華印刷に従来使用された市販の転写材料は、基本的に2つのグループに分けることができる。一方では、フィルム形成性の結合剤が色受理層において使用され、このフィルム形成性の結合剤がインクの浸透に対するある一定のバリア機能を既に有している、転写材料のグループが存在する。他方では、微小孔性の色受理層が使用されるが、該色受理層の大半は色受理層の中にフィルム形成性の結合剤を使用しない。上記の最後に述べた製品では、インクの浸透は、少なくとも1つのバリア層を担体の後側面に、又は担体と色受理層との間に設けることにより解決される。しかしながら、バリア層の粘着性により、生産の間及びその後の利用において問題が生じる。利用におけるさらなる問題は、バリア層を設けることによるカール性(望ましからぬ紙の丸まり)の著しい悪化である。
【0006】
欧州特許出願公開第1101682A1号明細書は、被印刷面の通気性が低いコート紙について述べている。これは、昇華転写ステップの間に昇華性染料の一部が担体の多孔性の紙内部に浸透し、その結果として最終的に印刷される予定の材料への転写には利用不可能となるのを防止するように意図されている。しかしながら、被印刷面の孔隙率が低いそのような紙はインクジェットインクを非常にゆっくりとしか吸収せず、かつ(特に、速い印刷速度では)乾きが遅くなり、表面においてインクが滲み、その結果として印刷鮮明度が不満足なものとなる。
【0007】
これは、膨潤性で非多孔性の色受理層を有する欧州特許出願公開第1878829A1号明細書に記載された転写材料にも当てはまる。欧州特許出願公開第1878829A1号明細書は、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PES)、ポリアクリラート、及びさらなる合成熱可塑性ポリマーのような合成ポリマーをベース紙への追加コーティングとして使用すると、これらのポリマーが不都合なほどに高い保色能力を有し、その結果として染料の転写速度が低くなるので、被印刷材料に対して染料昇華方法によって転写される印刷画像の品質特性の劣化につながるであろうことを述べている。
【0008】
米国特許出願公開第2008/229962A1号明細書は、シリカ及び比較的少量の結合剤を含有しておりその結果としてかなりの通気性を有する、ベース紙のためのコーティングを提案している。それにより、転写される予定の画像を転写材料に印刷する間のインク液の十分な吸収は達成されるが、このコーティングは、染料の浸透、すなわち最終的に画像が描かれる材料への転写の際の紙内部及び転写プレス表面への浸透の結果としての昇華性染料の損失を、十分には防止しない。
【0009】
欧州特許出願公開第3302991A2号明細書も、良好なインク吸収性及び印刷品質を特徴とする、少量の結合剤及び無機フィラーを含む多孔性の色受理層について述べている。昇華性染料の損失を回避するために、転写材料の後側面上の、又はベース紙とインク受理層との間のバリア層について記載されている。しかしながら、ポリマー系バリア層が片側面に付与されることによりベース紙のカール性が増大し、これはさらなる処理において問題となる。加えて、後側面に付与されたバリア層が後側面の粘着性をもたらし、かつその結果として、染料昇華プロセスにおいて転写プレスを利用する際に転写プレス表面への転写材料の望ましからぬ付着をもたらす可能性がある。
【0010】
いわゆる熱転写材料も、独国特許出願公開第102014116550A1号明細書に記載されている。具体的には、色受理層の中に35℃~150℃の融点及び0.3~5μmの平均粒度を有する熱可塑性粒子を使用することが提案されている。熱可塑性粒子によって、印刷された色受理層の、熱転写材料の前側への付着性は、染料昇華法における印刷画像の転写の際に平坦な繊維製品の上で最適化されることになっている。独国特許出願公開第102014116550A1号明細書の色受理層は絶乾で55~80%の結合剤含量を有し、かつさらに顔料を含有することが可能である。色受理層においてこの結合剤含量である場合、無孔性である密閉されたフィルム状の層が、顔料の存在下でも存在する。したがって、独国特許出願公開第102014116550A1号明細書に記載された手法の欠点は、微小孔性の色受理層が使用される場合よりも乾燥速度が著しく劣り、その結果インクジェットインク液は非常にゆっくりとしか吸収されないということである。速い印刷速度では、乾きが遅いことにより転写材料の表面でインクが滲み、かつその結果として印刷画像の印刷鮮明度が不満足なものとなる。加えて、繊維製品上における熱転写材料の前側の顕著な付着性をさらに得るためには、大量の熱可塑性粒子が色受理層に使用されなければならない。色受理層内の大量の熱可塑性粒子により、転写材料の印刷品質(線の鮮明度)及び転写品質(繊維製品上での光学密度)は大幅に損なわれる可能性がある。この手法では、印刷及び転写の品質とは無関係に繊維製品付着性を制御することも不可能である。
【0011】
背景となる従来の技術を踏まえて、本発明の目的は、染料昇華プロセスのための転写材料であって、該転写材料の担体を通して昇華性染料を浸透させないか又はごくわずかしか浸透させず、かつ該転写材料を用いれば従来の技術の転写材料の既知の問題は生じない、転写材料を提供することである。
【0012】
上記目的は、片側面に色受理層がコーティングされたベース紙を具備する染料昇華プロセスのための転写材料であって、該ベース紙はパルプの乾燥重量に対して少なくとも1.5wt%の、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択されたポリマー分散物を含有する、転写材料によって達成される。
【0013】
驚くべきことに、本発明による転写材料のベース紙に少なくとも指定の量の特定のポリマー分散物及びそれらの混合物を導入することにより、染料昇華プロセスで使用された時の昇華性染料の浸透について明らかな改善及び予防すらももたらされることが見出された。科学理論に縛られることを望むものではないが、本発明による転写材料のベース紙の中のポリマー分散物は、ベース紙を追加のバリア層によって完全に密封する必要を伴うことなく、昇華性染料インクに対するバリアを形成するように思われる。ここで、バリア効果は、昇華性染料と特定のポリマーとの間の吸着プロセスに基づいているように思われる。追加のバリア層は本発明による転写材料には必要ないので、本発明による転写材料は、前記バリア層の利用に関係する欠点、例えば粘着性、カール性悪化、及び色受理層の過度に低い孔隙率、並びに表面におけるインクの遅乾性及び滲み並びにそれに伴う不満足な印刷鮮明度を有していない。
【0014】
本発明による転写材料はベース紙を具備する。
【0015】
ベース紙は、好ましくは非塗工紙又は表面サイズ紙である。パルプ繊維、サイズ剤、例えばアルキルペンテン二量体、脂肪酸、及び/又は脂肪酸塩に加えて、ベース紙は、エポキシ化脂肪酸アミド、アルケニル又はアルキルコハク酸無水物、デンプン、樹脂類、湿潤固形物、例えばポリアミン‐ポリアミドエピクロロヒドリン、乾燥固形物、例えばアニオン性、カチオン性又は両性のポリアミド、蛍光増白剤、顔料、染料、消泡剤、及び製紙業において既知のさらなる化学添加物を含有することができる。典型的には、追加量0.2%以下のサイズ剤、追加量0.5%以下の湿潤固形物、及び追加量1.0%以下の乾燥固形物が紙生産において使用される。この場合、追加量は、経費並びに物質循環における化学物質の不必要かつ無制御な多重巡回を回避するために、可能な限り低く計量される。
【0016】
ベース紙は表面サイズ紙であってもよい。この目的に適したサイズ剤は、例えばポリビニルアルコール、又はデンプンデキストリン若しくは加工デンプン、例えば酸化デンプン若しくはデンプンエーテルなどである。ベース紙は、トップワイヤの有無にかかわらず長網抄紙機で生産することができる。ベース紙の坪量は、30~200g/m、特に40~120g/mであってよい。ベース紙は非圧縮形態でも圧縮形態(平滑化)でも使用可能である。密度が0.6~1.05g/cm、特に0.70~0.9g/cmのベース紙が特に適切である。平滑化はカレンダ加工を用いる通常の方法で行うことができる。
【0017】
この目的には典型的な任意のパルプをベース紙の生産に使用することができる。ベース紙の生産用のパルプは、好ましくは、砕木後の200μm未満の繊維状物質含量が10~35wt%、及び平均繊維長さが0.5~0.75mmである、ユーカリパルプである。200μm未満の繊維含量が限定されたパルプを使用すると、フィラーを使用する時に生じる剛性の損失が低減されることが分かっている。
【0018】
さらに、広葉樹パルプ(NBHK:北部漂白広葉樹クラフトパルプ)及び針葉樹パルプを使用することも可能である。
【0019】
本発明によれば、ベース紙は、パルプの質量に対して少なくとも1.5wt%の、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択されたポリマー分散物(以降、本発明によるポリマー分散物ともいう)を含有する。
【0020】
少なくとも1.5wt%の本発明によるポリマー分散物を使用することにより、驚くべきことに、従来の技術のように追加のバリア層を必要とすることなく、転写材料のバリア性の著しい改善がもたらされる。本発明によって使用されるポリマー分散物の量は、ベース紙の生産で使用される典型的なポリマー分散物、例えばサイズ剤、湿潤固形物、又は乾燥固形物などの量よりも明らかに多い。
【0021】
本発明によって使用されるポリアクリラートは、例えばスチレン‐アルキルアクリラートコポリマー又はメタクリル酸メチルである。スチレン‐アルキルアクリラートコポリマーのアルキルは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、及び/又はヘキシルを意味する。スチレン‐アルキルアクリラートコポリマーのアルキルは、好ましくはエチル又はブチルである。コポリマーは、スチレン‐アルキルアクリラートコポリマーのアルキルアクリラート部分において前述のアルキル基の混合物として使用することができる。本発明に従って使用されるポリエステルは、好ましくは、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリラクチド、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートから成る群から選択される。ポリエチレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、及びポリイソブチレンは、例えば、ポリオレフィンとして使用することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、ベース紙は、パルプの質量に対して少なくとも2wt%、特に少なくとも2.5wt%、好ましくは少なくとも3wt%の本発明によるポリマー分散物を含有する。そのような転写材料はさらに改善されたバリア効果を有し、その結果、やはりそのような転写材料の場合のインク浸透が顕著に低減されることが見出された。ポリマー分散物がベース紙の厚さの範囲内に一様に分布している場合は特に実用的であることが判明している。これにより、ベース材料の全域にわたる特に高度な一定したバリア効果が保証される。
【0023】
パルプ繊維に加えて、その他の天然繊維又は合成繊維の一部もベース紙を生産するために使用することができる。好ましくは、繊維の全質量中の他の繊維の含量は40wt%未満であり、より好ましくは他の繊維の含量は20wt%未満である。
【0024】
好ましい実施形態によれば、ベース紙は、パルプの質量に対して少なくとも5wt%、特に5~20wt%、極めて特に好ましくは8~15wt%の合成繊維、特にポリエチレン繊維又はポリエチレンテレフタラート繊維を含有する。合成繊維は、2~6mm、好ましくは4~6mmの長さを有することが好ましい。合成繊維の直径は、30~110μm、好ましくは50~100μmであってよい。
【0025】
本発明による転写材料のバリア効果は、ベース紙における合成繊維の追加使用によってさらに増強することができることが見出された。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による転写材料のインク浸透は、30%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは15%未満である。実際上、30%までのインク浸透は許容可能ではあるが、昇華性染料の損失につながる。20%未満又はさらに低いインク浸透を備えた転写材料は染料の損失を著しく減少させ、したがって全体としてより効率的である。
【0027】
ベース紙はフィラー及び顔料を含有することができる。
【0028】
ベース紙の生産のためのフィラー及び顔料は、そのベース紙の中の、例えばカオリン、自然形態の炭酸カルシウム、例えば石灰岩、大理石、又はドロマイト石など、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、滑石、シリカ、酸化アルミニウム、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩又はシリカ類、並びにこれらの混合物であってよい。
【0029】
好ましい実施形態によれば、本発明によるベース紙は、パルプの質量に対して少なくとも5wt%の、1以上の顔料を含有する。疎水性顔料、特にカオリン、炭酸カルシウム、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩又はシリカ類、並びにこれらの混合物から成る群から選択されたものの使用は、実際上特に適切であることが判明している。本発明によるベース紙においてそのような疎水性顔料を使用すると、昇華性染料についてのバリア効果がさらに改善することが見出された。科学理論に縛られることを望むものではないが、これは、昇華性染料の移行速度を著しく低減させる、昇華性染料と疎水性顔料との間の相互作用又は吸着プロセスに基づいているようにも思われる。この相互作用は、比表面積が高い疎水性顔料の使用によってさらに増強することが可能である。したがって、疎水性顔料は80m/gを超える比表面積を有することが好ましい。
【0030】
本発明による転写材料のベース紙は、片側面が色受理層でコーティングされている。色受理層はベース紙の印刷される側に配置されている。
【0031】
色受理層は多孔性又は微小孔性の層であってよい。本発明の意味での多孔性色受理層は、印刷の前には、一連の空気で満たされた空洞(細孔)を含有している。これらの細孔は、毛細管力によってインクを非常に速く吸収し、したがって印刷画像の迅速な乾燥をもたらすことができる。フィルム状の色受理層とは対照的に、そのような多孔性色受理層は高含量の顔料粒子を有し、かつ(フィルム形成性の)結合剤は、比較的、低い含量しか有していない。
【0032】
多孔性色受理層は高い通気性を有するが、これはベントセン(Bendtsen)法によって測定することができる。その細孔容積は、例えば吸液性の計測によるか又は水銀圧入法によって、検出及び測定することができる。
【0033】
多孔性色受理層はこのように無機顔料及び結合剤を含有する。特に好ましいのは、アニオン性、中性、又はごく弱いカチオン性の表面を有する顔料、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、滑石、ベントナイト、酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウム水和物などである。しかしながら、微粒子ポリマー化合物がさらに存在してもよく、高融点の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーが好ましい。本発明のさらなる実施形態では、色吸収層は、2以上の顔料の混合物を含有することも可能である。顔料は、100nm~30μm、より好ましくは200nm~10μmの平均粒度を有することが好ましい。
【0034】
色受理層は、好ましくは追加としてポリマー結合剤を、好ましくは親水性ポリマー結合剤を含有する。結合剤は水溶性結合剤又は水分散型の結合剤であってよい。好ましい結合剤は、スチレンコポリマー、ポリビニルアルコール、デンプン、加工デンプン、ポリ酢酸ビニル、アクリラート、又はポリウレタン分散物である。顔料と結合剤との質量比は、100:1~100:50、好ましくは100:40~100:2である。
【0035】
色受理層の適用重量は、好ましくは1g/m~50g/m、より好ましくは3g/m~30g/mである。ベントセン法により計測される色受理層の通気性は、好ましくは100mL/分より高く、特に好ましくは200mL/分~500mL/分である。
【0036】
色受理層は、水性のコーティング材料を塗布することにより紙の基材に付与されることが好ましく、製紙業において慣例の任意の塗布方法を使用することが可能である。ブレード、スクレーパー、フィルムプレス、又はカーテンコーティングによる塗布が好ましい。特に好ましいのは多層カーテンコーティング法である。
【0037】
コーティング化合物は、湿潤剤、増粘剤、レオロジー補助剤、染料、及び蛍光増白剤のような、さらなる典型的な添加剤を含有することもできる。
【0038】
1以上のさらなる層が、本発明による転写材料において、ベース紙と色受理層との間に配置構成されることも可能である。これは親水性結合剤を含有する層であることが好ましい。
【0039】
本発明はさらに、本発明によるベース材料を生産するための方法であって、
(a)抄紙機でベース紙を生産するステップであって、パルプの質量に対して少なくとも1.5wt%の、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択されたポリマー分散物が、ベース紙の生産の間にパルプ懸濁液に添加されるステップ;
(b)ベース紙を乾燥及び平滑化するステップ;
(c)ベース紙の表面に色受理層を付与するステップ;並びに
(d)ステップ(c)で得られた転写材料を乾燥するステップ
を含む方法を提供する。
【0040】
染料昇華法のための転写材料を生産するための従来知られた方法との比較では、本発明による方法は、ベース紙の生産の間にポリマー分散物を添加することによりバリア効果が生じるので、色受理層とベース紙との間、又はベース紙の後側面(色受理層でコーティングされた側ではない面)にバリア層をさらに付与するステップが省略されるということを特徴とする。これにより、転写材料の生産の際の工程ステップ及び原料が節約される。よって本発明による方法は、従来知られた手順よりもはるかに効率的である。
【0041】
本発明による転写材料に関して上記に述べた仕様は、本発明による方法にも相応に当てはまる。
【0042】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、該方法は、ステップ(a)とステップ(b)との間に、以下の追加のステップ(a1)すなわち
(a1)サイズプレス又はフィルムプレスにおいて、ポリアクリラート、ポリエステル、ポリオレフィン、又はこれらの混合物から成る群から選択された少なくとも1.0g/mのポリマー分散物を含む含浸溶液で、ベース紙を含浸するステップ
を含む。
【0043】
含浸溶液は、ステップ(a)においてベース紙の生産のためのパルプ懸濁液に既に添加されたものと同じポリマー分散物を含むことができる。ベース紙を追加で含浸することにより、抄紙機のウェットエンドにおける生産性の損失を伴うことなくインク浸透のさらなる低減がもたらされる。抄紙機のウェットエンドにおいて大量のポリマー分散物を使用することは通常は回避されている、というのも、これは粒子の電荷及びコロイド性相互作用に基づいた白水循環系の微妙なバランスを混乱させて、生産プロセスの生産性に悪影響を及ぼすからである。抄紙機のウェットエンド及びサイズプレス又はフィルムプレスの両方においてポリマー分散物を添加するという選択肢は、プロセスに関連する生産効率悪化のリスクを低減することができることを意味している、というのも、紙生産の際に2つの異なる時点で特定の合計量のポリマー分散物を導入することが可能であり、その結果、抄紙機のウェットエンド又はサイズプレス若しくはフィルムプレスにおいて局所的にポリマー分散物が過度に高い濃度になることはなく、よって上述の不都合は生じないからである。
【0044】
好ましい実施形態によれば、ベース紙は、ステップ(a1)において、本発明によるポリマー分散物の、少なくとも1.5g/m、好ましくは少なくとも2.0g/m、特に好ましくは少なくとも2.5g/m、極めて特に好ましくは少なくとも3.0g/mの含浸溶液で含浸される。
【0045】
本発明によるポリマー分散物に加えて、ステップ(a1)で使用される含浸溶液は、紙生産において一般的に使用され、かつベース紙の生産に関して上述された添加剤、例えばサイズ剤、湿潤固形物、乾燥固形物、蛍光増白剤、フィラー、顔料、染料、消泡剤、及び製紙業において既知のさらなる化学添加物などを含有することができる。
【0046】
最後に、本発明はさらに、昇華によって被転写材料に画像を転写する方法であって、本発明による転写材料に対してインクジェット印刷プロセスによって画像が印刷され、該画像が昇華によって被転写材料に転写される方法に関する。
【0047】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、被転写材料は、ポリエステル織物、ポリエステル不織布、又はポリエステルでコーティングされた材料から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による転写材料の横断面を概略的に示している。
図2】例えば、80%のインク量で印刷されたインク領域は、20%という文字で表示されている。図2はこの印刷ファイルを示している。
図3図3は、例として、80%でちょうど視覚的に識別可能でありインク浸透という点では悪い値となっている、曇り部分に印付けがなされた表紙シートを示している。
図4】昇華インクに対して非常に良好なバリア効果を有する紙を用いると、表紙シート上には何も見られない。
図5】抄紙機の試験片からDIN規格A4サンプルを準備する際には、サンプルが次の場所で得られることを確実にするべきである。
【0049】
図1は、本発明による転写材料の横断面を概略的に示している。この図では、1は紙で作られたベースを表している。ベース紙は、本発明によるポリマー分散物を含有する。ベース紙は、片側面がインクジェット印刷のための色受理層2でコーティングされている。
【0050】
以降の実施例は本発明についてさらに説明するために用いられる。
[実施例]
<ベース紙の生産>
【0051】
ベース紙の生産にはユーカリパルプが使用された。砕木については、パルプは、およそ5%の水性懸濁液(濃厚紙料)として、リファイナーを用いて25°SRの砕木度合いまで砕木された。希薄材料中のパルプ繊維の濃度は、パルプ懸濁液の質量に対して約1wt%であった。さらなる添加剤、例えば0.15wt%の中性サイズ剤のアルキルケテンダイマー(AKD)、0.60wt%の湿潤紙力増強剤のポリアミン‐ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(Kymene(登録商標))、1.0wt%のデンプン(C‐Bond HR 35845)、及び30wt%の天然の粉砕CaCOなどが希薄紙料に添加された。量はパルプの質量に対するものである。pHをおよそ7.5に調整された希薄紙料が抄紙機のヘッドボックスからワイヤ上へと流されると、抄紙機のワイヤ部ではシートが形成されて同時にウェブの脱水が行われた。プレス部において紙ウェブはさらに脱水され、ウェブ重量に対して60wt%の含水量となった。抄紙機の乾燥部では加熱式乾燥シリンダを使用してさらなる乾燥が行われた。坪量63g/m、フィラー含量18wt%、及び水分約5.5%のベース紙が生産された。
<色受理層のためのコーティング材料の生産>
【0052】
部分けん化型ポリビニルアルコール(クラレのMowiol(登録商標)18‐88)の9.5wt%水溶液557gが、固形分48wt%の沈降炭酸カルシウム(シェーファー・カルク(Schaefer Kalk)のPrecarb(登録商標)800)の希薄分散液441gに添加され、該混合物は溶解撹拌機を使用して混合される。その後、エアープロダクツ(Air Products)の湿潤剤Surfynol(登録商標)440が0.5g添加される。得られたコーティング材料は、固形分26.6wt%、粘度150mPas、pH7.5、及び表面張力36mN/mを有する。
<転写材料の生産>
【0053】
表面サイズ処理、乾燥、及び平滑化が行われた、得られたベース紙は、インク受理層のためのコーティング材料で片側面をコーティングされる。
<本発明による実施例及び比較用実施例の調製>
【0054】
以下の表に列挙された転写材料が上述の方法に従って調製された。いずれの場合も、表1の最初の縦列に示されたバリア成分が、ベース紙の生産の際にユーカリパルプの代わりに使用された。第1の比較実施例は、パルプの代わりにベース紙の生産の際にさらなるバリア成分を添加することなく生産されたベース材料に相当し、従って「バリア成分無し」とされている。表の第1の縦列において「バリア成分無し・追加のバリア層有り」とされている比較実施例は、上述の方法に従って生産されたが、ただし本例では、ベース紙の生産の際にベース紙にバリア成分は添加されず、かつベース紙の色受理層とは反対側に、例えば完全けん化型ポリビニルアルコール(例えばMowiol(登録商標)28‐99)のような熱可塑性ポリマーでできたバリア層が追加で提供された。
【表1】
【0055】
表1に挙げられたデータは、本発明による記録材料のベース紙においてパルプの質量に対して少なくとも1.5wt%の本発明によるポリマー分散物を使用することにより、所望のバリア効果、すなわち低いインク浸透がもたらされることを示している。この場合、良好な光学密度のような有益な特性が印刷の間も維持され、かつ非常に良好なカール挙動及び低い粘着性が転写プロセスにおいて観察されることになる。良好なバリア特性、転写プロセスにおける低い粘着性、及び非常に良好なカール特性の組み合わせは、本発明による記録材料を用いた場合にのみ達成可能である。表1の結果は、この組み合わせの特性が、バリア層を持たないか又は追加のバリア層を備えた従来技術の記録材料、及びベース紙の中にパルプの質量に対して1.5wt%未満の本発明のポリマー分散物を有する記録材料を用いても、達成することができないことを示している。
方法
【0056】
結果として得られた転写材料にはカラー画像が印刷されたが;この場合、ソーグラス(Sawgrass)の昇華インクSubliJet IQを備えたエプソン(EPSON)のインクジェット式プリンタWorkforce Pro WF5110が使用された。
<インク浸透の測定>
【0057】
試験対象の昇華転写紙は、DIN規格のA4判で、印刷チャンバ内にて標準気候条件の23℃及び湿度50%の下で少なくとも1時間保管される。
【0058】
印刷は市販の昇華型デスクトッププリンタで行われる。印刷ファイルは、黒色で印刷されるインクの量が様々に減らされた10個の円形の色領域を備えている。左上の印刷領域は100%のインク量で、以降の領域は各々10%ずつインク量を減らして印刷される。印刷領域の下には、その領域の名称が%で記されているが、100%-塗布されたインク量(%)として特定されている。例えば、80%のインク量で印刷されたインク領域は、20%という文字で表示されている。図2はこの印刷ファイルを示している。
【0059】
印刷が行われた後、紙は標準気候条件下に置かれて1時間乾燥される。続いて、高度計を備えたセファ(Sefa)のROTEX AUTO X REL転写プレスにおいて昇華プロセスが行なわれる。この目的のために、開放状態の転写プレスは200℃に加熱される。その温度に到達した後、繊維製品が最初に土台の加熱プレート上に置かれ、その後印刷済みの紙が印刷面を繊維製品に向けて設置される。その直後、漂白パルプで作られた80g/mのコピー用紙であるいわゆる表紙用紙が、印刷済みの昇華紙の後側面に置かれ、転写プレスが閉止される。昇華は中程度の接触圧で30秒間持続する。
【0060】
昇華時間が経過した後、転写プレスは開放され、3つの層が注意深く相互に分離される。繊維製品は廃棄される。昇華インクは、インク浸透が劣る場合は後側面へと昇華し、かつインク浸透の強度に応じて、コピー紙上に多少沈殿する。インクの量は重要な役割を果たす。印刷された昇華紙上のインクの量が多いほど、後側面又は表紙シートの方向へのインク浸透の傾向が強くなる。
【0061】
印刷済みの昇華紙の上には様々なインク量の色領域があるので、表紙シート上のインク浸透の段階的変化も視認できる。表紙シートの目視検査が、インク浸透を評価するために行なわれる。昼光でも認識可能な色領域には印が付され、インク浸透に関して%値として示される。
【0062】
70~90%の値は、インク浸透について劣る昇華紙について得られる。インク浸透が改善された紙については、60~40%の値が得られる。インク浸透に対して非常に良好な挙動を示す紙は30~0%の値を達成する。インク浸透の傾向の正確な尺度付けは%値で特定することができる。図3は、例として、80%でちょうど視覚的に識別可能でありインク浸透という点では悪い値となっている、曇り部分に印付けがなされた表紙シートを示している。昇華インクに対して非常に良好なバリア効果を有する紙を用いると、表紙シート上には何も見られない(図4)。
<転写プロセスにおける粘着性の測定>
【0063】
転写材料の後側面の粘着性は触覚評価によって測定される。この目的のために、転写材料は2本の指の間に配置されて可能な限り均等な圧力で固定された。指が離れる時、既知の転写材料サンプルと比較した粘着性が1から5までの等級システムで測定される。転写プロセスが円滑に進むには2又はそれ以上の等級が望ましい。
等級1:粘着性無し
等級2:軽度の粘着性
等級3:平均的な粘着性
等級4:強力な粘着性
等級5:非常に強力な粘着性
<カール平均値の測定>
【0064】
カール平均値は、表1に挙げた本発明による転写材料又は従来技術の転写材料(比較用実施例)の、3枚のDIN規格A4サンプルを用いて試験される。抄紙機の試験片からDIN規格A4サンプルを準備する際には、サンプルが次の場所で得られることを確実にするべきである(図5も参照されたい):
1. FS端:テンダー側端部からおよそ1.5cmのDIN規格A4サンプル
2. M:巻き取り紙の中間部からのDIN規格A4サンプル
3. AS:駆動側端部(AS端)からおよそ1.5cmのDIN規格A4サンプル
【0065】
準備されたサンプルは受け手側に標識付けされ(FS、M、AS)、受け手側を上に向けて平滑面上で相対湿度50±2%及び23±1℃に30分間保たれた。
【0066】
カール平均値は、各々のDIN規格A4サンプルについて、計測されたそれぞれのサンプルの4つの角点(上記絵図に番号1~4、5~8、及び9~12で示されるように指定される)から平均値を計算すること、並びに個々のDIN規格A4サンプルについての上記3つの平均値から平均値を形成することにより測定される、すなわちカール平均値は、個々のDIN規格A4サンプルについての3つの計算された平均値の平均値である。DIN規格A4サンプルの単一の角点における個々のカール値の測定には、以下の評価スキームすなわち
0=カール無し
1~3cm=軽度のカール
>3cm=許容不可能なカール
が適用される。
【0067】
この場合、角点が測定の開始前に、すなわち、上述の事前に定めた条件(温度、相対湿度)に30分間保つ前に、位置していた地点から、DIN規格A4サンプルのうち、上述の事前に定めた条件(温度、相対湿度)で30分間の後に、角点の元の地点から始めて対角線上にDIN規格A4サンプルの中央(各角点から次の角点へと対角線上に架空の直線が描かれた時に生じる、DIN規格A4サンプルの中央に位置する交点)までの、なおも平滑面上に平らな状態で存在する部位まで、すなわち、DIN規格A4サンプルのうち、該サンプルの角部の(生じる可能性のある)巻き上がりの後になおも平滑面上に位置する部位までの、距離が計測される。
【表2】
【0068】
カール平均値は、各々のDIN規格A4サンプルについて、計測されたそれぞれのサンプルの4つの角点(上記絵図に番号1~4、5~8、及び9~12で示されるように指定される)から平均値を計算すること、並びに個々のDIN規格A4サンプルについての上記3つの平均値から平均値を形成することにより測定される、すなわちカール平均値は、個々のDIN規格A4サンプルについての3つの計算された平均値の平均値である。DIN規格A4サンプルの単一の角点における個々のカール値の測定には、以下の評価スキームすなわち
0=カール無し
1~3cm=軽度のカール
>3cm=許容不可能なカール
が適用される。
【0069】
この場合、角点が測定の開始前に、すなわち、上述の事前に定めた条件(温度、相対湿度)に30分間保つ前に、位置していた地点から、DIN規格A4サンプルのうち、上述の事前に定めた条件(温度、相対湿度)で30分間の後に、角点の元の地点から始めて対角線上にDIN規格A4サンプルの中央(各角点から次の角点へと対角線上に架空の直線が描かれた時に生じる、DIN規格A4サンプルの中央に位置する交点)までの、なおも平滑面上に平らな状態で存在する部位まで、すなわち、DIN規格A4サンプルのうち、該サンプルの角部の(生じる可能性のある)巻き上がりの後になおも平滑面上に位置する部位までの、距離が計測される。
図1
図2
図3
図4
図5