(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯装置
(51)【国際特許分類】
F25B 30/02 20060101AFI20240307BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240307BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F25B30/02 H
F24H4/02 A
F25B1/00 304H
F25B1/00 341Q
F25B1/00 351K
(21)【出願番号】P 2019233197
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正晃
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145572(JP,A)
【文献】特開2003-054249(JP,A)
【文献】特開2015-222136(JP,A)
【文献】特開2009-092258(JP,A)
【文献】特開2007-192499(JP,A)
【文献】特開2012-082988(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0003583(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 30/02
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と凝縮熱交換器と膨張弁と蒸発熱交換器とが冷媒回路により接続されたヒートポンプ回路と、湯水を貯留する貯湯タンクと、この貯湯タンクから取り出した低温水を凝縮熱交換器によって加熱して貯湯タンクに戻す加熱循環回路を備えたヒートポンプ給湯装置において、
前記ヒートポンプ回路によるヒートポンプ運転の運転開始時に膨張弁の開度が所定の初期開度まで開かれ、その後予め設定された目標値まで絞られるように構成されており、ヒートポンプ運転開始時の所定の運転条件における圧縮機出口の吐出温度上昇率を予め設定された吐出温度上昇率と比較し、
前記圧縮機出口の吐出温度上昇率が前記予め設定された吐出温度上昇率よりも一定値以上
大きいと判定されたときには膨張弁の開度の目標値を補正値によって
開度増大側へ補正してヒートポンプ運転を行う
ように構成され、
入水温度と外気温をパラメータとして前記吐出温度上昇率を予め設定した吐出温度上昇率テーブルと、 入水温度と外気温をパラメータとして前記補正値を予め設定した補正値テーブルと、 入水温度と外気温をパラメータとして前記膨張弁の開度の目標値を予め設定した目標値テーブルとを有することを特徴とするヒートポンプ給湯装置。
【請求項2】
前記圧縮機は段階的に周波数制御を行うように構成されており、上記の圧縮機出口の吐出温度上昇率は、膨張弁の開度が所定の初期開度であって圧縮機の周波数が所定周波数に上昇途中の一定時間の間の温度上昇率から算出されることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯装置に関し、特に膨張弁の製品バラツキに起因して圧縮機の負荷が過大になるのを防止するようにしたヒートポンプ給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ給湯装置は、圧縮機と凝縮熱交換器と膨張弁と蒸発熱交換器とが冷媒回路により接続されたヒートポンプ回路と、湯水を貯留する貯湯タンクと、この貯湯タンクから取り出した低温水を凝縮熱交換器によって加熱して貯湯タンクに戻す加熱循環回路を備えている。
【0003】
上記のヒートポンプ回路のヒートポンプ運転は、圧縮機の運転開始を円滑にするため膨張弁の開度を開いた状態で運転が開始され、その後圧縮機が所定周波数まで立ち上がってから膨張弁の開度を予め設定された目標値まで絞るように制御している。
そのため、従来は、入水温度と外気温度をパラメータとする膨張弁開度の目標値テーブルが予め設定され、入水温度と外気温度の検出値を上記の目標値テーブルに適用して膨張弁の開度の目標値を設定していた。
【0004】
ここで、特許文献1には、ヒートポンプ回路において、圧縮機の電流値が制限を越えた場合に膨張弁の開度を開く方向に調整することが開示されている。
特許文献2には、ヒートポンプ式加熱装置において、圧縮機からの吐出温度が高くなった場合に、膨張弁の絞り開度を開くように制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-78146号公報
【文献】特許第4123220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、膨張弁には製品個々の製品バラツキがあり、その僅かの製品バラツキが流量にかなりの影響を及ぼし、同一開度でも流量が異なる場合が少なくない。
しかし、従来では膨張弁の製品バラツキを考慮することなく、共通の目標値テーブルに基づいて膨張弁の開度の目標値を設定していた。
【0007】
ここで、標準品よりも少ない流量特性となる下限品の膨張弁が組み付けられている場合、膨張弁の開度が絞り過ぎた状態になっているため、圧縮機からの吐出温度が目標値よりも上がり過ぎてしまい、圧縮機が過負荷の過電流状態になる。そのため、圧縮機の電流値が内線規定で定められている電流値を瞬間的に超過する場合がある。
【0008】
本発明の目的は、膨張弁の製品バラツキに起因する運転開始時の圧縮機の過電流を抑制可能なヒートポンプ給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係るヒートポンプ給湯装置は、圧縮機と凝縮熱交換器と膨張弁と蒸発熱交換器とが冷媒回路により接続されたヒートポンプ回路と、湯水を貯留する貯湯タンクと、この貯湯タンクから取り出した低温水を凝縮熱交換器によって加熱して貯湯タンクに戻す加熱循環回路を備えたヒートポンプ給湯装置において、前記ヒートポンプ回路によるヒートポンプ運転の運転開始時に膨張弁の開度が所定の初期開度まで開かれ、その後予め設定された目標値まで絞られるように構成されており、ヒートポンプ運転開始時の所定の運転条件における圧縮機出口の吐出温度上昇率を予め設定された吐出温度上昇率と比較し、前記圧縮機出口の吐出温度上昇率が前記予め設定された吐出温度上昇率よりも一定値以上大きいと判定されたときには膨張弁の開度の目標値を補正値によって開度増大側へ補正してヒートポンプ運転を行うように構成され、入水温度と外気温をパラメータとして前記吐出温度上昇率を予め設定した吐出温度上昇率テーブルと、 入水温度と外気温をパラメータとして前記補正値を予め設定した補正値テーブルと、入水温度と外気温をパラメータとして前記膨張弁の開度の目標値を予め設定した目標値テーブルとを有することを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、膨張弁の製品バラツキによってヒートポンプ運転開始時の圧縮機出口の吐出温度上昇率と予め設定された吐出温度上昇率との差が一定値以上になっている場合には、膨張弁の開度の目標値を補正値によって補正してヒートポンプ運転を行う。
例えば、圧縮機出口の吐出温度上昇率が設定された値よりも一定値以上高い場合には、膨張弁の開度の目標値を補正値によって大きく補正するため、膨張弁の製品バラツキに起因する圧縮機の過電流を確実に防ぐことができる。
【0012】
そして、実際の吐出温度上昇率と吐出温度上昇率テーブルの吐出温度上昇率と比較し、その差が一定値以上の場合には、補正値テーブルから補正値を求め、その補正値でもって目標値テーブルから読み出した膨張弁開度の目標値を補正する。こうして、高い精度でもって膨張弁開度の目標値を補正することができる。
【0013】
請求項2のヒートポンプ給湯装置は、請求項1の発明において、前記圧縮機は段階的に周波数制御を行うように構成されており、上記の圧縮機出口の吐出温度上昇率は、膨張弁の開度が所定の初期開度であって圧縮機の周波数が所定周波数に上昇途中の一定時間の間の温度上昇率から算出されることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、膨張弁の開度が所定の初期開度のときの、圧縮機を所定周波数まで立ち上げる時の一定時間の間の温度上昇率を用いるため、圧縮機出口の吐出温度上昇率を一定の条件下に求めることができるから、高い精度でもって膨張弁開度の目標値を補正することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のような種々の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るヒートポンプ給湯装置の構成図である。
【
図2】ヒートポンプ給湯装置の運転開始時の圧縮機の周波数と膨張弁の開度の動作タイムチャートである。
【
図7】膨張弁の開度制御のフローチャートの一部である。
【
図8】膨張弁の開度制御のフローチャートの残部である。
【
図9】膨張弁開度の設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、ヒートポンプ給湯装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯装置1は、ヒートポンプユニット2と、貯湯タンク3と、ヒートポンプユニット2と貯湯タンク3の間で湯水を循環させる加熱循環通路 4とを有するものである。
【0018】
貯湯タンク3は断熱材で覆われており、貯湯タンク3には上水を供給する給水系統5 や加熱した湯水をカランや風呂等に供給する給湯系統6が接続されている。
加熱循環通路4は、貯湯タンク4から取り出した低温水をヒートポンプユニット2の凝縮熱交換器8に供給する循環往き通路4aと、凝縮熱交換器8により加熱した湯水をヒートポンプユニット2の凝縮熱交換器8から貯湯タンク3に供給する循環戻り通路4bとを有する。
【0019】
次に、ヒートポンプユニット2について説明する。
ヒートポンプユニット2は、外装ケース2a内に圧縮機7、凝縮熱交換器8、膨張弁9(膨張手段)、蒸発熱交換器10を冷媒通路11(冷媒回路)により接続したヒートポンプ回路を有する。圧縮機7と凝縮熱交換器8の間で冷媒通路11から分岐した冷媒バイパス通路11a(バイパス通路)は、その冷媒バイパス通路11aを開閉可能な除霜用開閉弁 12を備え、膨張弁9と蒸発熱交換器10の間の冷媒通路11に接続されている。
【0020】
圧縮機7と凝縮熱交換器8の間の冷媒通路11には、圧縮機7から吐出された冷媒の温度を検知する吐出温度センサ13が取付けられている。湯水循環通路4に接続された凝縮熱交換器8の熱交換通路部8aには、凝縮熱交換器8の入口側の低温水の温度(入水温度)を検知する入水温度センサ14及び出口側の湯水の温度を検知する出口温度センサ15が取付けられている。
【0021】
ヒートポンプユニット2は、制御ユニット16と電気的に接続された補助制御ユニット 17により加熱運転等を制御する。加熱運転では、除霜用開閉弁12を閉止し、圧縮機7と蒸発熱交換器10に送風する送風機18を夫々駆動し、膨張弁9の開度を調整して冷媒通路11内に封入された冷媒を循環させる。尚、送風機18のケースには外気温を検知する外気温センサ19が取付けられ、蒸発熱交換器10の出口における冷媒温度を検知する圧縮機入り口側温度センサ20が取付けられている。センサ類13,14,15,19,20の検出信号は制御ユニット16及び補助制御ユニット17に供給される。
【0022】
加熱運転により圧縮機7において圧縮されて昇温した高温の冷媒が、凝縮熱交換器8 に導入される。凝縮熱交換器8において高温の冷媒と加熱循環通路4に接続された熱交換通路部8aを流れる湯水との間で熱交換が行われて湯水が加熱される。熱交換により降温して一部液化した冷媒は、膨張弁9において膨張してさらに降温し、蒸発熱交換器10に導入される。蒸発熱交換器10において冷媒は外気の熱を吸熱して気化し、再び圧縮機 7に導入される。
【0023】
このヒートポンプ給湯装置1においては、膨張弁9の製品バラツキにより、圧縮機出口側の冷媒の吐出圧にバラツキが発生し、圧縮機7が過負荷になって過電流が流れ、ヒートポンプユニット2に給電する電気系統が故障する場合があるので、それを防ぐために、ヒートポンプ運転は次のように行う。
ヒートポンプ回路によるヒートポンプ運転が開始されると、膨張弁9の開度が待機開度(例えば、70step)から初期開度(例えば、500step)まで開き、その開度を暫く保持した後予め設定された初期目標値まで絞られ、ヒートポンプ運転開始時の所定の運転条件における圧縮機出口の吐出温度上昇率を予め設定された吐出温度上昇率と比較し、前記圧縮機出口の吐出温度上昇率が前記予め設定された吐出温度上昇率よりも一定値以上大きいと判定されたときには膨張弁9の開度の目標値を補正値によって開度増大側へ補正してヒートポンプ運転を行う。
【0024】
図2は、ヒートポンプ給湯装置1の運転開始時における圧縮機7の周波数と、膨張弁9の開度の動作タイムチャートを示すものである。
運転開始後、圧縮機7の周波数は、所定周波数(例えば、50Hz)まで0.1Hz/secの上昇率で増加され、その後240秒間所定周波数に保持され、その後0.1Hz/secの上昇率で目標周波数(例えば、70Hz)まで周波数を増加させ、目標周波数で90秒間経過後には0.1Hz/secの上昇率で設定周波数(例えば、100Hz)まで周波数を増加させ、その後その周波数で定常運転を行う。
【0025】
運転開始後、膨張弁9は待機位置から、50パルス/sec(pps)の上昇率で初期開度(例えば、500step)まで開度を増加させ、この大きな初期開度を一定時間の間保持して圧縮機7の周波数立ち上がりを円滑にすると共に、圧縮機7を過負荷でない状態に保持した状態で、タイミングt1,t2の間の圧縮機吐出側における冷媒温度の上昇率を検知し、その後、圧縮機7が所定周波数にまで立ち上がってから90秒経過後には、膨張弁9の開度を50ppsの減少率で減少させ、初期目標開度(例えば、300step)まで減少後にはその初期目標開度を暫くの間保持し、圧縮機7の周波数が設定周波数に達した時点から90秒経過してから、0.1ppsの減少率で膨張弁9の開度を開度設定値まで減少させる。
【0026】
上記のヒートポンプ運転を行うため、入水温度と外気温をパラメータとして吐出温度上昇率を予め設定した吐出温度上昇率テーブル(
図3参照)と、入水温度と外気温をパラメータとして膨張弁開度の補正値を予め設定した補正値テーブル(
図4参照)と、入水温度と外気温をパラメータとして膨張弁開度の目標値を予め設定した目標値テーブル(
図5参照)とを有する。
【0027】
圧縮機7は段階的に周波数制御を行うように構成されており、上記の圧縮機7出口の吐出温度上昇率は、膨張弁9の開度が所定の初期開度の状態で、圧縮機7の周波数が所定周波数に上昇途中のタイミングt1,t2の一定時間(60秒)の間の温度上昇率から算出される。
【0028】
以下、補助制御ユニット17により実行される圧縮機周波数制御及び膨張弁9の開度制御について、
図6~
図9のフローチャートに基づいて説明する。尚、膨張弁9の開度制御は、圧縮機周波数制御に対するインターバル割り込み(例えば、100ms間隔)にて実行される。
尚、これら制御のフローチャート及び前記のテーブル類は、補助制御ユニット17のマイクロコンピュータに予め格納されている。尚、フローチャートにおける符号Si(i=1,2,・・・は各ステップを示すものである。
【0029】
最初に、圧縮機周波数制御について
図6に基づいて説明する。
ヒートポンプユニット2の運転(尚、この運転には試運転も含む)が開始されると初期設定がなされた後、圧縮機の運転が開始され(S1)、0.1Hz/secの増加率で圧縮機7の周波数Nが増加される(S2)。次に周波数N=30Hzか否か判定され、その判定がNoのうちはS2,S3を繰り返し、S3の判定がYesになると、吐出温度センサ13の検出温度Th1が読み込まれてメモリに記憶され、これと同時にタイマーTM1をスタートさせる(S4)。尚、上記の30Hzは一例であり、これに限るものではない。
【0030】
S5では、タイマーTM1の計時時間TM1が60sec以上になった否か判定し、その判定がNoのうちはS5を繰り返し、S5の判定がYesになると、吐出温度センサ13の検出温度Th2が読み込まれてメモリに記憶される。このように、圧縮機7の周波数Nが所定周波数(例えば、50Hz)へ上昇中に30Hzになったタイミングt1とそれから60秒経過後のタイミングt2における吐出温度Th1,Th2が検出されてメモリに記憶される。
【0031】
その後圧縮機7の周波数が所定周波数(例えば、50Hz)になったらその所定周波数が240秒間保持され(S7,S8)、その後0.1Hz/secで周波数を70Hzまで増加させ(S9,S10)、その後90秒間70Hzに保持し(S11)、その後0.1Hz/secの増加率で設定周波数(例えば、100Hz)まで周波数Nを増加させ(S12,S13)、その後周波数Nを設定周波数に保持しながら(S14)、ヒートポンプ運転を続行する。
【0032】
次に、膨張弁9の開度制御について、
図7,
図8に基づいて説明する。
ヒートポンプユニット2の運転開始後、膨張弁9の開度Kを待機開度(待機位置)(例えば、70step)に設定し(S20)、その後、膨張弁開度Kが500stepになるまで50ppsの増加率で増加させ(S21,S22)、膨張弁開度Kが500stepになったら500stepに暫く保持する。
【0033】
次に、圧縮機7の周波数が50Hzになったか否か判定し(S24)、その判定がYesになると、S25において膨張弁開度Kの設定処理が実行される。
ここで、上記の膨張弁開度Kの設定処理について
図9に基づいて説明する。
最初に、入水温度センサ14から入水温度を読み込み、外気温センサ19から外気温を読み込んでメモリに記憶し(S50)、次に上記の入水温度と外気温と
図3に示す吐出温度上昇率テーブルから吐出温度上昇率ΔToが演算される(S51)。
【0034】
次に、実際の吐出温度上昇率ΔTがΔT=(Th2-Th1)の演算式により演算されて記憶される(S52)。次に、実際の吐出温度上昇率ΔTと、吐出温度上昇率テーブルに設定された吐出温度上昇率ΔToの差(ΔT-ΔTo)が所定値C(例えば、C=1℃/min)以上か否か判定され(S53)、その判定がYesのときはS54~S56が実行され、その判定がNoのときはS57,S58が実行される。尚、吐出温度上昇率テーブルの値は60秒間の温度上昇率を示すものである。
【0035】
S53の判定がYesの場合、S54において入水温度と外気温と
図4に示す膨張弁開度補正値テーブルから開度補正値ΔKが演算される。次に、S55において入水温度と外気温と
図5に示す膨張弁開度目標値テーブルから開度目標値Koが演算される。
次に、S56において、開度補正値ΔKと開度目標値Koから開度設定値Ksが、Ks=(開度目標値Ko+開度補正値ΔK)の演算式で演算され、その後リターンする。
S53の判定がNoの場合、S57において入水温度と外気温と膨張弁開度目標値テーブルから開度目標値Koが演算される。
次に、S58において開度設定値Kso が開度設定値Kso=開度目標値Koの演算式により演算され、その後リターンする。
【0036】
次に、
図7,
図8のフローチャートに戻り、S26においては、タイマーTM2がスタートされ、その値タイマーTM2の計時時間が90秒経過すると(S27)、膨張弁開度Kが50ppsの減少率で減少され、次のS29においては吐出温度上昇率の差(ΔT-ΔTo)が前記の所定値C以上か否か判定され、その判定がYesのときはS30において、膨張弁開度Kが、膨張弁開度K=(初期目標開度Ko1 +開度補正値ΔK)(尚、初期目標開度Ko1は例えば300step)の演算式で演算される。
【0037】
その後、膨張弁開度Kを上記の値に保持したまま、圧縮機7が設定周波数になってから90秒経過したか否か判定し(S31)、その判定がYesになると、膨張弁開度Kを0.1ppsの減少率で減少させ(S32)、次にS33において膨張弁開度Kが補正後の開度設定値Ksになったか否か判定し、その判定がYesになるとその開度設定値Ksを保持しながら、ヒートポンプ運転を続行する。
【0038】
S29の判定がNoの場合は、S35において膨張弁開度Kが膨張弁開度K=初期目標開度Ko1に設定され、次にS36において圧縮機7が設定周波数になってから90秒経過したか否か判定し(S36)、その判定がYesになると、膨張弁開度Kを0.1ppsの減少率で減少させ(S37)、次にS38において膨張弁開度Kが開度設定値Ksoになったか否か判定し、その判定がYesになるとその開度設定値Ksoを保持しながら、ヒートポンプ運転を続行する(S39)。
【0039】
以上説明したヒートポンプ給湯装置1の作用、効果について説明する。
膨張弁9の製品バラツキによってヒートポンプ運転開始時の圧縮機出口の実際の吐出温度上昇率と予め
図3に示す吐出温度上昇率テーブルに設定された吐出温度上昇率との差が一定値以上になっている場合には、
図4の補正値テーブルから膨張弁開度の補正値を読み出し、
図5の目標値テーブルに設定された膨張弁9の開度の目標値を補正値によって補正してヒートポンプ運転を行う。こうして、高い精度でもって膨張弁開度の目標値を補正することができる。
【0040】
このように、圧縮機出口の吐出温度上昇率が設定された値よりも一定値以上高い場合には、膨張弁9の開度の目標値を補正値によって大きく補正するため、膨張弁9の製品バラツキに起因する圧縮機7の過電流を確実に防ぐことができる。
【0041】
膨張弁9の開度が所定の初期開度のときの、圧縮機7を所定周波数まで立ち上げる時の一定時間の間の温度上昇率を用いるため、圧縮機出口の吐出温度上昇率を一定の条件下に求めることができるから、高い精度でもって膨張弁開度の目標値を補正することができる。
【0042】
前記実施形態を変更する例について説明する。
1)前記実施形態では、
図4に示すように補正値テーブルを1つ設け、実際の吐出温度上昇率ΔTと、吐出温度上昇率テーブルに設定された吐出温度上昇率ΔToの差(ΔT-ΔTo)が所定値C以上か否か判定するようにしたが、前記所定値Cに代えて所定値C1,C2(但し、C1>C2)を設定し、1つの補正値テーブルに代えて、所定値C1に対応する補正値テーブルと、所定値C2に対応する補正値テーブルとを設け、吐出温度上昇率ΔToの差(ΔT-ΔTo)の大きさに応じて、補正値テーブルを使い分けるように構成してもよい。
【0043】
2)前記実施形態では、吐出温度上昇率の差(ΔT-ΔTo)が所定値C以上の場合には、
図7のS30に示すように、初期目標開度Ko1も開度補正値ΔKで補正するようにしたが、初期目標開度Ko1では圧縮機が過負荷になる可能性が低いため、初期目標開度Ko1は開度補正値ΔKで補正しないように構成してもよい。
【0044】
3)圧縮機の周波数を段階的に増加させる
図2に示すパターンは一例を示すものであってこれに限るものではない。その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ヒートポンプ給湯装置
2 ヒートポンプユニット
3 貯湯タンク
4 加熱循環通路
7 圧縮機
8 凝縮熱交換器
9 膨張弁
10 蒸発熱交換器
11 冷媒通路