(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】フィルタープレスのケーキブロー方法
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B01D25/12 C
B01D25/12 G
B01D25/12 U
(21)【出願番号】P 2021000745
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 寿也
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅義
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-052307(JP,A)
【文献】特開2001-334110(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00346312(EP,A1)
【文献】特開平04-219106(JP,A)
【文献】特開昭63-151314(JP,A)
【文献】特開2004-261689(JP,A)
【文献】特開昭61-015715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
B30B 9/00-9/32
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液供給側よりエアを供給してろ過室(4)に生成されたケーキ中の水分を除去する正ブローを行った後、ろ液排出側よりエアを供給してケーキ中の水分を除去する逆ブロー
を行うフィルタープレスのケーキブロー方法において、
予め
正ブロー時におけるエア流量の基準変化率(H
0)
と、基準流量(Q
0
)を設定するとともに、
逆ブロー時におけるエア流量の基準変化率(H
1
)の上限および下限と、基準流量(Q
1
)を設定し、
正ブロー時に、エア流量を計測して計測値(Q)から基準流量(Q
0)に対する変化率(H)を算出し、
変化率(H)が基準変化率(H
0)以上となった場合に逆ブローに切り替え
、
逆ブロー時に、エア流量を計測して計測値(Q)から基準流量(Q
1
)に対する変化率(H)を算出し、
変化率(H)が基準変化率(H
1
)の範囲内である場合は、逆ブローを継続し、
変化率(H)が基準変化率(H
1
)の上限より大きい場合は、エアの供給流量を減少させ、
変化率(H)が基準変化率(H
1
)の下限より小さい場合は、エアの供給流量を増加させ基準変化率を保持しながら逆ブローを行う
ことを特徴とするフィルタープレスのケーキブロー方法。
【請求項2】
前記逆ブロー時に、
予めろ液流量の基準流量(q
0)を設定し、
ろ液排出側から排出されるろ液の流量を計測し、計測値(q)が基準流量(q
0)以下になった時点で逆ブローを終了する
ことを特徴とする請求項
1に記載のフィルタープレスのケーキブロー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレスのケーキブロー方法に関し、特に、正ブロー時にケーキを通過するエアの流量が増加し始めたタイミングで逆ブローに切り替えるフィルタープレスのケーキブロー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタープレスを用いて原液を圧搾脱水したのち、ろ過室に生成されたケーキの含水率を低下させるためにケーキブローを行っていた。ケーキブローには、原液供給側からエアを供給してケーキ中の水分を除去する正ブローとろ液排出側からエアを供給してケーキ中の水分を除去する逆ブローがある。逆ブローを行う際には、逆ブローのみ単独で行う場合もあれば、正ブローと組み合わせて行う場合もあり、予め設定した一定のエア圧力で行うことが多かった。
【0003】
特許文献1には、ケーキ生成室にスラリー導入口より圧縮空気を所定時間供給して通気脱水を行った後に、ケーキ生成室に排水路より圧縮空気を所定時間供給して逆エアを行う工程を複数回繰り返す技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、エアブロー処理により排出される単位時間当たりの濾液の流量を検出し、検出流量が設定流量以上の場合には圧縮空気の流量や圧力を変更せず、検出流量が設定流量以下の場合には、圧縮空気の流量または圧力を順次増加させるエアブロー処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-52307号公報
【文献】特公平4-72600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、逆ブローを行う際には、単独で行う場合もあれば正ブローと組み合わせて行う場合もあるが、事前に定めた所定時間一定圧で逆ブローを継続した場合、ケーキの空隙に含まれる水分がエアと置換された後も空隙にエアが供給され続けるため、無駄なエア消費が増加するという課題を有していた。
【0007】
特許文献1には、ケーキの含水率を低減させるためにスラリー導入口より圧縮空気を供給して通気脱水を行った後、排水路より圧縮空気を供給して逆エアを行う工程を複数回繰り返す技術が開示されているが、ケーキ含水率を低減させるために通気脱水と逆エアを複数回繰り返さなければならないため、エア使用量が増大するという問題があった。また、通気脱水及び逆エアを行う際にエアの圧力を調整する等の記載もない。
【0008】
特許文献2には、エアブロー処理により排出される単位時間当たりの濾液流量に応じてエアブロー時に供給する圧縮空気の流量または圧力を調整する技術が開示されているが、事前に正ブローを実施する等の記載はない。そのため、圧搾脱水後の大量の水分を含んだ状態のケーキにエアを通過させなければならず、エアブロー時に大量のエアを供給する必要があった。そのうえ、ケーキ中の水分含有率を低下させるために濾液流量に応じて圧縮空気の流量や圧力を順次増加させなければならないため、エア使用量が増大するという問題があった。
【0009】
本発明は、正ブロー時にケーキを通過するエア流量が増え始めた時点で逆ブローに切り替え、計測されるエア流量が一定になるようにエアの供給流量を調整しながら逆ブローを継続することで、逆ブロー時にエアを短時間でケーキに通過させることができるため、エアの使用量を抑えることが可能になるフィルタープレスのケーキブロー方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
原液供給側よりエアを供給してろ過室に生成されたケーキ中の水分を除去する正ブローを行った後、ろ液排出側よりエアを供給してケーキ中の水分を除去する逆ブローを行うフィルタープレスのケーキブロー方法において、予め正ブロー時におけるエア流量の基準変化率と、基準流量を設定するとともに、逆ブロー時におけるエア流量の基準変化率の上限および下限と、基準流量を設定し、正ブロー時に、エア流量を計測して計測値から基準流量に対する変化率を算出し、変化率が基準変化率以上となった場合に逆ブローに切り替え、逆ブロー時に、エア流量を計測して計測値から基準流量に対する変化率を算出し、変化率が基準変化率の範囲内である場合は、逆ブローを継続し、変化率が基準変化率の上限より大きい場合は、エアの供給流量を減少させ、変化率が基準変化率の下限より小さい場合は、エアの供給流量を増加させ基準変化率を保持しながら逆ブローを行うことで、事前にケーキの空隙内に含まれる水分の量を減らした状態で逆ブローを開始できるため、逆ブロー時に効率よく空隙内の水分を排出させることが可能となるとともに、逆ブロー時に無駄なエア消費が生じることを抑制する。
【0012】
前記逆ブロー時に、予めろ液流量の基準流量を設定し、ろ液排出側から排出されるろ液の流量を計測し、計測値が基準流量以下になった時点で逆ブローを終了することで、原液調整工程の変動などにより性状の異なる原液が供給された場合であっても無駄なエア消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフィルタープレスのケーキブロー方法は、ケーキの空隙を通過するエア流量が増え始めた時点で正ブローから逆ブローに切り替えることで、空隙に含まれる水分の量を事前に減らした状態で逆ブローを開始できるため、逆ブロー時に短時間でケーキにエアを供給できる。また、エア流量が一定になるようにエアの供給流量を制御しながら逆ブローすることで、無駄なエア消費を抑制できる。これにより、必要なエアの供給流量を減らすことができ、エア供給源のランニングコストや、ブローに用いるコンプレッサ、タンク等の設備容量を抑えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るフィルタープレスの概略構成図である。
【
図2】同じく、原液圧入時のろ過室の概略縦断面図である。
【
図3】同じく、正ブロー時のろ過室の概略縦断面図(a)、逆ブロー時のろ過室の概略縦断面図(b)である。
【
図5】同じく、フィルタープレスの運転方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、フィルタープレスの概略構成図である。
本発明に係るフィルタープレス1の脱水機構のみ抜粋したものであり、ろ板2及びダイアフラムろ板3を交互に開閉自在に並列している。ろ板2及びダイアフラムろ板3を開閉装置(図示しない)によって閉板することで隣接する両ろ板間
2,3間にろ過室4が形成される。ろ過室4の上方には原液及びエアを通過させる原液供給路5が形成されており、原液供給路5はろ過室4と連通している。
【0016】
原液供給路5の一端に原液供給管6を接続しており、原液貯留槽7内に貯留された原液は原液供給ポンプ8によってろ過室4へ圧入供給される。
【0017】
原液供給路5の他端にはエア供給管9を接続しており、空気槽10に貯留されたエアは圧力調整弁20を介してろ過室4へ供給される。エア供給管9は分岐しており、一方を原液供給路5に、他方をダイアフラムろ板3下部に設けたろ液排出路12bに接続されたろ液排出管13bにそれぞれ接続してある。
【0018】
ろ過室4より排出されたろ液は、ろ液排出路12aを通過した後、ろ液排出管13aを通ってろ液槽17に送られる。なお、ろ板とダイアフラムろ板を交互に配列する形態としたが、ろ板のみの構成としてもよい。原液供給路の位置に関してもこの形態に限定しない。
【0019】
図2は、原液圧入時のろ過室の概略縦断面図である。
中央部に凹面状のろ過床18を有するろ板2及び表面にダイアフラム16を張設したダイアフラムろ板3の間にろ過室4を形成しており、上方の原液供給路5から原液をろ過室4の上部中央より供給する。原液はろ過室4に吊設された一対のろ布19内に供給された後、ろ布19で固液分離されて固化し、ケーキを生成する。
【0020】
このとき、ろ布19を透過して排出されるろ液はろ板2のろ過床18下部に開口したろ液排出路12a及びダイアフラムろ板3のろ過床18下部に開口したろ液排出路12bを通って排出される。
【0021】
図3(a)は、正ブロー時のろ過室の概略縦断面図である。
正ブロー時は、原液供給側からエアをろ過室4に供給しており、エアは原液供給路5を通って上部中央よりろ過室4内のケーキに供給される。
【0022】
供給されたエアはケーキの中心からろ過面に向かって流動するため、ケーキ厚みの半分程度の幅を通過することになり、通過抵抗が小さく、短時間でケーキ内にエアを通過させることができる。ケーキに含まれる水分はエアによって除去されたあと、ろ布19を透過してろ液としてろ液排出路12a、12bより排出される。
【0023】
図3(b)は、逆ブロー時のろ過室の概略縦断面図である。
逆ブロー時はろ液排出側からエアをろ過室4に供給しており、エアはダイアフラムろ板3のろ過床18に開口したろ液排出路12bからろ過室4内のケーキに供給される。
【0024】
供給されたエアはケーキ内をダイアフラムろ板3側からろ板2側に向かってケーキの厚み方向に流動する。ケーキの上下方向に亘って均一にエアを供給できるため、ケーキ全体にエアを通過させることができる。ケーキ中に含まれる水分はエアによって除去された後、ろ布19を透過し、ろ板2のろ過床18に開口したろ液排出路12aよりろ液として排出される。
【0025】
本実施形態では、エアをダイアフラムろ板3側のろ液排出路12bから供給してろ液をろ板2側のろ液排出路12aより排出させる構成としたが、ろ板2側のろ液排出路12aよりエアを供給してダイアフラムろ板3側のろ液排出路12bよりエアを排出させる構成や、エアをダイアフラムろ板3に形成されたろ液排出路12bより供給して原液供給路5より排出させる構成としてもよい。ろ液排出路12の位置や数についても適宜変更可能とする。
【0026】
図4は、ろ過室の概略断面図である。
図4(a)は圧搾工程時のろ過室を示している。圧搾工程時のろ過室4内のケーキは膨張させたダイアフラム16によって圧搾される。ろ過室4内に生成されたケーキは、圧入圧力や圧搾を受けて粒子が密着状態であるが、異なる粒子径が混在しているため、粒子間の空隙も大きさが異なるものが混在しており、空隙は水分で満たされている。
【0027】
図4(b)は正ブロー工程時のろ過室を示している。正ブロー時にろ過室4の上部中央から供給されたエアによって圧搾工程終了後にケーキの空隙に残った水分を除去する。供給されたエアはケーキの中心からろ過面に向かって流動し、空隙内の水分を押し出してろ布19を透過させる。ケーキの空隙に残った水分はエアと置換されるため、ケーキの空隙の水分量は
図4(a)の圧搾工程時よりも少ない。
【0028】
しかし、正ブロー時にはエアが上方より供給されるため、ケーキの上下方向で供給されるエア量にばらつきが生じ、空隙内の水分を十分に除去できない。そこで、正ブロー終了後に逆ブローを行い、ケーキ全体にエアを通過させてケーキの空隙に残った水分をさらに除去する操作を行う。
【0029】
図4(c)は逆ブロー工程時のろ過室を示している。逆ブロー時にろ液排出側より供給されたエアによって正ブロー終了後にケーキの空隙に残った水分を除去する。一方のろ過面からケーキの上下方向に亘って均一に供給されたエアは、ケーキの厚み方向に向かって流動し、空隙内の水分を押し出して他方のろ過面を透過させる。ケーキの空隙に残った水分はエアと置換されるため、ケーキの空隙の水分量は
図4(b)の正ブロー工程時よりも少ない。なお、ダイアフラム
16は圧搾終了時に膨張させた状態で逆ブローへ移行してもよいが、逆ブローへの移行が完了した時点でダイアフラム
16内の圧力を低下させてもよい。
【実施例】
【0030】
図5はフィルタープレスの運転方法のフローチャートである。
<A.初期設定>
正ブローおよび逆ブロー時の各基準値を事前に設定する。正逆ブロー時の圧力を決定する。流量計
14の計測時間、バルブ開度の制御方式を設定する。これらの値を事前に設定した後、正ブローを開始する。正ブローを開始すると、供給されたエアがケーキの空隙に残った水分を押し出すが、正ブロー開始時の空隙には大量の水分が充満しているため、正ブロー時のエア圧力に応じた一定流量の水分しか押し出すことができず、エア流量(ケーキの空隙を通過するエアの流量)は、所定の時間ほぼ一定流量で推移する。本発明では、正ブロー開始初期に所定時間だけ略一定流量で推移するエア流量の計測値を基準流量Q
0とする。
【0031】
エアを供給し続けると、徐々にケーキ中の空隙に残った水分が押し出されてエア流路が形成されるため、エアを供給し続けた場合、エア流路を通過するエアが生じ、ほぼ一定で推移していたエア流量は増加し始める。本発明では、予め基準流量Q0に対する許容範囲の割合を基準変化率H0として設定し、エア流量増加時に計測された計測値Qが許容範囲内であるか否かについて、基準変化率H0と計測変化率H(Q/Q0)とを比較する。
【0032】
逆ブローも正ブロー時と同様の挙動を示すため、逆ブロー開始初期に所定の時間だけ略一定流量で推移するエア流量の計測値を基準流量Q1とする。正ブロー時と同様に、ほぼ一定流量で推移するエア流量は増加し始め、エア流量の計測値Qが基準流量Q1よりも大きくなるため、エアの供給流量を減少させる流量制御を行う。このとき、流量制御によってエア流量の計測値Qが基準流量Q1より小さくなることがある。その際にはエアの供給流量を増加させる流量制御を行う。
【0033】
このように、逆ブロー時にエアの供給流量一定制御を行うため、基準変化率H1の上限と下限を事前に設定しておく。本発明では、予め基準流量Q1に対する許容範囲の割合を基準変化率H1として設定し、エア流量増減時に計測された計測値Qが許容範囲内であるか否かについて、基準変化率H1と計測変化率H(Q/Q1)とを比較する。なお、正ブロー時、逆ブロー時ともに予め設定した基準変化率を用いるが、正ブロー時の基準流量Q0からの増加分ΔQ0、逆ブロー時の基準流量Q1からの増減分ΔQ1を事前に設定し、計測値Qと比較してもよい。
【0034】
また、ろ液排出路12a、12bから排出されるろ液の排出流量と比較するためのろ液の基準流量q1を事前に設定している。
【0035】
<B.閉板>
多数のろ板2及びダイアフラムろ板3を閉板し、両ろ板2,3間にろ過室4を形成する。ろ板2及びダイアフラムろ板3のろ過床18にはろ布19が張設されており、対向するろ過床18に張設されたろ布19でろ過室4を覆っている。
【0036】
<C.圧入>
原液供給管6に介装されたバルブV3、ろ液排出管13bに介装されたバルブV4を開き、原液供給ポンプ8を駆動して原液貯留槽7に貯留された原液を原液供給路5へ圧入供給する。分岐したエア供給管9に介装されたバルブV1及びバルブV2は閉めておく。原液供給管6に圧入供給された原液は原液供給路5からろ過室4へ供給される。ろ過室4では、圧入脱水により原液の水分を分離するとともに、ろ過室4内にケーキを生成する。ろ布19で固液分離された水分はろ過床18に開口したろ液排出路12a、12bよりろ液として排出される。
【0037】
排出されたろ液はろ液排出路12aに接続されたろ液排出管13a、ろ液排出路12bに接続されたろ液排出管13bを介してろ液槽17に送られる。ろ液排出管13aとろ液排出管13bが合流する位置には流量計15を設けており、管内を流れるろ液量を測定する。
【0038】
<D.圧搾>
圧入工程後、原液供給ポンプ8を停止してバルブV3を閉じ、圧搾工程に切り替える。圧搾工程では、圧搾流体供給ポンプ(図示しない)を駆動してダイアフラムろ板3に張設されたダイアフラム16内に圧搾液やエア等の圧搾流体を供給してダイアフラム16を膨張させる。ろ過室4内に生成されたケーキは膨張させたダイアフラム16による圧搾圧力を受けて水分を排出する。
【0039】
圧搾工程後、正ブローに切り替える。なお、圧入及び圧搾の終了の指標として本実施形態では所定時間としたが、これに限定しない。また、必要に応じて正ブローに移行する前に原液供給管6、原液供給路5内に残った原液を除去する管内洗浄を実施してもよい。
【0040】
<E.正ブロー>
バルブV1を開き、ブローコンプレッサ11を駆動して空気槽10に貯留したエアを圧力調整弁20の操作によってエア供給管9から原液供給路5に供給する。バルブV2、バルブV3は閉、バルブV4は開である。
【0041】
原液供給路5に供給されたエアはろ過室4上方よりろ過室4に向かって送られる。ろ過室4に送られたエアはろ過室4に生成されたケーキの中心からろ過面に向かって流動し、ケーキの空隙に含まれる水分を除去する。エアによって除去された水分はろ布19を透過した後、ろ液としてろ液排出路12a、12bより排出され、各ろ液排出路12に接続されたろ液排出管13a、13bを通ってろ液槽17に送られる。なお、エアは所定の圧力で継続的に供給されている。
【0042】
本発明では、エア供給管9に設けた流量計14を用いてエア供給開始時よりエア流量を継続的に計測しており、正ブロー時にエア流量が増加したことを検知した時点で逆ブローに切り替えている。具体的には、計測設定した基準流量Q0に対する計測値Qの比率である変化率Hが基準変化率H0以上を検知した時点である。エア流量の増加を検知した時点でケーキ中の空隙に残った水分が押し出されてエア流路が形成されるため、増加を検知した後にエアを供給し続けた場合、エア流路を通過するエアが生じ、無駄なエア消費が増加する。
【0043】
そこで、無駄なエア消費を抑制するためにエア流量の増加を検知したタイミングで逆ブローに切り替えている。エア供給管9は原液供給路5、ろ過室4と連通しているため、エア供給管9に設けた流量計14を用いることでろ過室4に生成されたケーキの空隙を通過するエア流量を把握できる。なお、エア流量の計測方法は流量計に限定せず、空気槽に圧力計を設置して空気槽の圧力変化をもとに算出してもよい。
【0044】
正ブローでは、圧搾終了後に生成されたケーキにろ過室4の上部中央よりエアを通過させるが、生成されたケーキの厚みが薄い場合はケーキ上方から供給されるエアがショートパスする恐れがあるため、圧搾後のケーキの厚みがろ過室4の厚みの半分以上ある状態でエアを供給するのが望ましい。
【0045】
<F.逆ブロー>
正ブロー終了後、バルブV2を開いて逆ブローを開始する。バルブV1、バルブV3、バルブV4は閉である。逆ブローは所定の圧力でエア流量が一定になるようにエアを供給する。逆ブロー開始後、所定の圧力でブローし続けることで水分の置換に寄与しない無駄なエアが生じてエア流量が増加するため、エア流量が基準流量Q1となるようにエアの供給流量を減少させる制御を行う。
【0046】
エア流量が増加した場合にエア流量を一定制御せずに逆ブローを継続した場合、無駄なエア消費が増え続けるため、大量のエアを供給しなければならない。また、エア流量が増加した際にエアの供給流量を減少させる制御を行うが、時間経過とともに、フィルタープレス1に供給されるエアの供給流量が減少した場合にケーキの空隙に残った水分を効率よく押し出すことができない。
【0047】
そこで、エア流量の一定制御を行う。具体的には、計測設定した基準流量Q1に対する計測値Qの変化率Hが予め設定した基準変化率H1の範囲内である場合は、逆ブローを継続し、変化率Hが基準変化率H1の上限より大きい場合は、エアの供給流量を減少させ、変化率Hが基準変化率H1の下限より小さい場合は、エアの供給流量を増加させる。エアの供給流量を一定に制御しながら逆ブローを行うことで、無駄なエア消費を抑制しつつ、短時間で空隙の水分を押し出すことが可能となる。
【0048】
エアの供給流量の調整は、エア供給管9に介装したバルブV2、あるいは、圧力調整弁20の開度を調整して圧力を増減させている。なお、エア流量はエア供給管9に設けた流量計14によって測定するが、空気槽10に設けた圧力計によって計測された値をもとに算出してもよい。また、エア流量を一定にする制御方法として、公知の技術、例えばステップ制御(一定値ずつ段階的に増減させる制御)、あるいは、PID制御等を用いることができる。
【0049】
逆ブローは、算出されたエア流量の変化率Hが基準変化率H1の範囲内に収まるように制御しながら所定時間実施する形態としたが、供給される原液の性状が変動した場合に無駄なエア消費が増加することがある。その場合は、ケーキの含水率を測定して必要に応じて基準変化率H1を変更して運転するが、含水率の測定及び設定値の変更等の手間がかかる。
【0050】
そこで、本発明の逆ブロー流量制御を実施しつつ、ろ液排出側から排出されるろ液の流量の計測値qと事前に設定した基準流量q0(最小ろ液流量の基準値)を比較し、計測値qが基準流量q0以下になった時点で逆ブローを終了する形態としてもよい。
【0051】
これにより、原液調整工程の変動などにより性状の異なる原液が供給された場合であっても無駄なエア消費が生じることを防ぐことができる。なお、ろ液流量はろ液排出管13a及びろ液排出管13bが合流する位置に設けた流量計15によって計測したが、ろ液槽17に液位計を設置し、液位計の値をもとに算出してもよい。
【0052】
<G.開板>
締付シリンダー(図示しない)を収縮させて並列する多数のろ板2及びダイアフラムろ板3を開板する。
【0053】
<H.ケーキ排出>
ろ板2及びダイアフラムろ板3を開板することにより、ケーキは自重、ろ布19の振動、あるいは、ろ布19の走行により機外へ落下する。続けてフィルタープレス1を運転する場合は、ろ板2とダイアフラムろ板3を閉板する閉板工程Bへ戻る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るフィルタープレスのケーキブロー方法は、正ブロー時にケーキの空隙を通過するエア流量が増加し始めた時点で逆ブローに切り替えることによって、逆ブロー時に短時間でエアをケーキに通過させることが可能になるため、エア使用量を削減できるとともに、エア供給源のランニングコストや、ブローに用いるコンプレッサ、タンク等の設備容量を抑えることができる。また、排出されるろ液量の測定値を逆ブロー終了の指標とすることで、原液調整工程の変動などにより処理原液の性状が変動した場合であっても、無駄なエア消費を抑えることが可能となるため、上水・工水スラッジ、化学工業等の生産プロセス、排水の処理において、エアブロー時に大量のエアを使用するフィルタープレスに有効である。
【符号の説明】
【0055】
4 ろ過室
H0、H1 基準変化率
H 変化率
Q0、Q1 基準流量(エア)
Q 計測値(エア)
q0 基準流量(ろ液)
q 計測値(ろ液)