(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】光源装置、点灯回路、駆動方法
(51)【国際特許分類】
H05B 41/292 20060101AFI20240307BHJP
H05B 47/24 20200101ALI20240307BHJP
【FI】
H05B41/292
H05B47/24
(21)【出願番号】P 2020146946
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152294
【氏名又は名称】木村 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-015287(JP,A)
【文献】特開2000-150181(JP,A)
【文献】特開2006-302563(JP,A)
【文献】特開2009-295556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/292
H05B 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体バリア放電ランプを備えた光源部と、
前記光源部に電力を供給する点灯回路を備えた光源装置において、
前記点灯回路は、トランスと、前記トランスの一次側において電源回路が接続され、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、が設けられており、
前記スイッチング素子の動作によって前記トランスの二次側に配置される前記光源部に電力を供給するよう構成されており、
前記点灯回路は、前記トランスの一次側又は二次側に流れる電流又は電圧を検出する検知部を備え、
前記制御部は、前記
誘電体バリア放電ランプを定常点灯させる定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作と、
前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作と、を有し、
前記点灯回路は、前記制御部が判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子が動作される際に、前記検知部で検出された電流又は電圧に基づき、点灯動作の停止を判断する判定部を備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記トランスの二次側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記光源部の低電圧側に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記判定部は、点灯動作が正常であるかの判定基準値が設定されており、
前記検知部からの検出値が、所定時間内に前記判定基準値を超えない場合、前記制御部に停止信号を出力することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の光源装置。
【請求項5】
誘電体バリア放電ランプの点灯回路であって、
前記点灯回路は、トランスと、前記トランスの一次側に配置された電源と、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、を備え、
前記スイッチング素子の動作によって、
前記誘電体バリア放電ランプが接続される前記トランスの二次側に電力を供給するよう構成されており、
前記点灯回路は、前記トランスの一次側又は二次側に流れる電流又は電圧を検出する検知部を備ており、
前記制御部は、
前記誘電体バリア放電ランプを定常点灯させるため定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作と、
前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作と、を有し、
前記点灯回路は、前記制御部が判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子が動作される際に、前記検知部で検出された電流又は電圧の値に基づき、点灯動作の停止を判断する判定部を備えていることを特徴とする誘電体バリア放電ランプの点灯回路。
【請求項6】
前記検知部は、前記トランスの二次側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記トランスの二次側において、低電圧側に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記判定部は、点灯動作が正常であるかの判定基準値が設定されており、
前記検知部からの検出値が、所定時間内に前記判定基準値を超えない場合、前記制御部に停止信号を出力することを特徴とする請求項5~7の何れかに記載の光源装置。
【請求項9】
誘電体バリア放電ランプを点灯させる駆動方法であって、
トランスと、前記トランスの一次側に配置された電源と、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、を有し、
前記スイッチング素子の動作によって、誘電体バリア放電ランプが接続される前記トランスの二次側に電力を供給するよう構成された点灯回路を備えており、
前記点灯回路は、前記トランスの一次側又は二次側に流れる電流又は電圧を検出する検知部を備ており、
前記制御部は、
前記誘電体バリア放電ランプを定常点灯させるため定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作期間と、
前記定常動作期間の前に、前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作期間と、を有し、
前記点灯回路は、前記判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子を動作させ、その際に前記検知部で検出された電流又は電圧の値に基づき、点灯動作の停止を判断することを特徴とする誘電体バリア放電ランプの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は誘電体バリア放電ランプを備えた光源装置、及び、点灯回路、及び、駆動方法に関する。特に、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプを備えた光源装置、及び、点灯回路、及び、駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、誘電体バリア放電により発光する紫外線放射ランプ(例えば、エキシマランプ)を使う殺菌装置が知られている。この紫外線放射ランプは誘電体材料である発光管を介在して配置された一対の電極により、いわゆる誘電体バリア放電を発生させて、放電容器の内部に封入した発光ガスに対応した光を放射するものである。発光ガスとして、KrClを封入した場合には波長222nmに単一ピークを有する紫外光が発生し、発光ガスとしてKrBrを封入した場合には、波長207nmに単一ピークを有する紫外光が発生する。
【0003】
この種の紫外線放射ランプは、人や動物への悪影響を抑制しつつ、微生物やウイルスを不活化できる光源として期待されており、医療施設、学校、役所等、頻繁に人が集まる施設や、自動車、電車、バス、飛行機、船等の乗物など、多様な場面で活用されることが期待されている。そのため、光源装置もこのような要求に対応し、小型化された装置の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、誘電体バリア放電ランプを搭載した光源装置は、放電容器に電圧を印加させる点灯回路を備え、点灯回路の駆動によって放電容器内の発光ガスを放電させ、200nm~230nmの紫外線を発生させる。
具体的には、点灯回路はトランスを備え、トランスの一次側にスイッチング素子が設けられ、トランスの二次側に誘電体バリア放電ランプを備えた光源部が設けられており、前記スイッチング素子の駆動によって前記トランスの二次側に設けられた光源部に電圧が印加される。この代表的な回路構成として、フライバック回路が挙げられる。
【0006】
しかしながら、トランスの二次側において、点灯回路と光源部の電気的接続に不備が生じていた場合、前記トランスの二次側回路が不通となることで抵抗値が極大化し、前記トランスの二次側が高電圧となる。これはトランスの一次側にも影響し、トランスの一次側の電圧値も高くしてしまう。これによってスイッチング素子に過大な電圧が加わり、場合によってはスイッチング素子を破損させてしまう、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、誘電体バリア放電ランプを備えた光源装置、又は、誘電体バリア放電ランプの点灯回路において、スイッチング素子に対して過大な電圧が印加されることを適切に回避可能な装置構成、及び、駆動方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光源装置は、誘電体バリア放電ランプを備えた光源部と、前記光源部に電力を供給する点灯回路を備えた光源装置において、前記点灯回路は、トランスと、前記トランスの一次側において電源回路が接続され、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、が設けられており、前記スイッチング素子の動作によって前記トランスの二次側に配置される前記光源部に電力を供給するよう構成されており、前記点灯回路は、前記トランスの一次側又は二次側に流れる電流又は電圧を検出する検知部を備え、前記制御部は、前記紫外線放射ランプを定常点灯させる定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作と、前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作と、を有し、前記点灯回路は、前記制御部が判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子が動作される際に、前記検知部で検出された電流又は電圧に基づき、点灯動作の停止を判断する判定部を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、本発明に係る光源装置は、誘電体バリア放電ランプを備えた光源部と点灯回路とが適切に接続されていない場合であっても、前記検知部によって光源部と点灯回路の接続状態を判定することが可能となり、点灯回路に設けられたスイッチング素子に対して過度の電圧が印加されることを回避することが可能となる。
【0010】
また前記検知部は、前記トランスの二次側に接続されていてもよい。また前記検知部は、前記トランスの二次側において、前記光源部の低電圧側に接続されていてもよい。
また前記判定部は、点灯動作が正常であるかの判定基準値が設定されており、前記検知部からの検出値が、所定時間内に前記判定基準値を超えない場合、前記制御部に停止信号を出力するよう構成されていてもよい。
【0011】
また本発明に係る誘電体バリア放電ランプの点灯回路は、トランスと、前記トランスの一次側に配置された電源と、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、を備え、前記スイッチング素子の動作によって、紫外線放射ランプが接続される前記トランスの二次側に電力を供給するよう構成されており、前記点灯回路は、前記トランスの一次側又は二次側に流れる電流又は電圧を検出する検知部を備ており、前記制御部は、紫外線放射ランプを定常点灯させるため定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作と、前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作と、を有し、前記点灯回路は、前記制御部が判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子が動作される際に、前記検知部で検出された電流又は電圧の値に基づき、点灯動作の停止を判断する判定部を備えていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、本発明に係る誘電体バリア放電ランプの点灯回路は、誘電体バリア放電ランプが接続されるトランスの二次側において電気的な不通が生じた場合であっても、前記検知部によってトランスの二次側における接続状態を判定することが可能となり、点灯回路に設けられたスイッチング素子に対して過度の電圧が印加されることを回避することが可能となる。
【0013】
また前記検知部は、前記トランスの二次側に接続されていてもよい。また前記検知部は、前記トランスの二次側において、低電圧側に接続されていてもよい。
また前記判定部は、点灯動作が正常であるかの判定基準値が設定されており、前記検知部からの検出値が、所定時間内に前記判定基準値を超えない場合、前記制御部に停止信号を出力するよう構成されていてもよい。
【0014】
また本発明に係る誘電体バリア放電ランプの点灯駆動方法は、トランスと、前記トランスの一次側に配置された電源と、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御部と、を有し、前記スイッチング素子の動作によって、誘電体バリア放電ランプが接続される前記トランスの二次側に電力を供給するよう構成された点灯回路を備えており、前記制御部は、紫外線放射ランプを定常点灯させるため定常動作周波数(f1)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する定常動作期間と、前記定常動作期間の前に、前記定常動作周波数(f1)よりも高い判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子のON/OFFを制御する判定動作期間と、を有し、前記点灯回路は、前記判定動作周波数(f2)で前記スイッチング素子を動作させ、その際に前記検知部で検出された電流又は電圧の値に基づき、点灯動作の停止を判断することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、本発明に係る誘電体バリア放電ランプの点灯駆動方法は、誘電体バリア放電ランプが接続されるトランスの二次側において電気的な不通が生じた場合であっても、前記検知部によってトランスの二次側における接続状態を判定することが可能となり、この判定に基づいて点灯動作の停止を判断することで、スイッチング素子に対して過度の電圧が印加されることを回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様によれば、誘電体バリア放電ランプの点灯回路において、スイッチング素子に対して過大な電圧が印加されることを適切に回避可能な装置構成、及び、点灯回路、及び、駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る光源装置の点灯回路を例示した図。
【
図2】本発明に係る光源部の一態様の外観図を例示した図。
【
図3】本発明に係る点灯動作の一態様を説明する説明図。
【
図4】本発明に係る定常動作の一態様を説明する説明図。
【
図5】本発明に係る判定動作の一態様を説明する説明図。
【
図6】本発明に係る点灯動作の一態様を説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る光源装置の点灯回路1を例示したものである。光源部10は、筐体内に紫外線放射ランプ11(以下、単に「ランプ」ともいう)を備え、紫外線放射ランプの両端側に第一電極12と第二電極13が取り付けられている。また両電極(第一電極および第二電極)は、筐体外に延びる接続コネクタCを介して、トランス2の二次巻線L2に電気的に接続されている。
トランス2の一次巻線L1には、商用電源や直流電源から電力が供給される電源回路3が接続されている。またトランス2の一次巻線の他端には、FET素子等のスイッチング素子4が接続されており、スイッチング素子4のゲートGには制御回路5が接続されている。この制御回路5は、一般的に、昇圧フライバック回路と言われており、トランス2の一次側に設けられたスイッチング素子4のオフタイミングに対応してトランス2の二次側にパルス状の電圧波形が発生する。このような回路構成は、一般的に、フライバック回路と称されている。
【0019】
また点灯回路1には、トランスの二次側に流れる電流又は電圧を検知する検知部6が設けられている。これにより、二次側に接続された光源部10に電流が流れる際(又は電圧が印加される際)に、検知部6において所定の電流値又は電圧値が検出可能となり、これによって光源部10の導通、非導通を識別することができる。
なお、
図1では、トランス2の二次側に検知部が設けられており、例示的に、二次側の低電圧側に検知部6が設けられている。ここで、検知部6は、二次側の高電圧側に設けられていても構わない。しかし、検知部6への電圧負荷を抑える観点からは、検知部6は低電圧側に設けられることが望ましい。また、検知部6はトランス2の一次側に設けられる構成であっても構わないが、トランス2の二次側の方が電流の変動が大きいことから、検知部6による検知動作がしやすいというメリットがある。
【0020】
図2には、本発明に係る光源部の一態様の外観図が例示されている。
図2(a)は光源部の表面側(光放射側)が図示され、
図2(b)は光源部の裏面側が図示されている。光源部10は、上枠部101と、下枠部102とで構成された筐体(ハウジング)の内部に、複数本の誘電体バリア放電ランプ11が搭載されている。筐体内には、一対の電極となる第一電極12と第二電極13とが設けられ、両電極を跨るように誘電体バリア放電ランプ11が設置されている。この実施例では、各電極(12、13)はブロック状の金属体(電極ブロック)で構成されており、この電極ブロックには誘電体バリア放電ランプ11の外管形状に適合するよう溝が設けられている。
【0021】
また光源部10には、光放射面14が設けられており、例示的に窓部材が配置されている。この光放射面14から紫外線が放射され、空間中又は物体表面に存在する微生物やウイルスの不活化が行われる。なお、光放射面14には、有害光をカットする光学フィルタを設けることができる。光学フィルタは、例えば、人体への悪影響の少ない波長域190nm~237nmの光(より好ましくは、波長域190nm~230nmの光)を透過し、それ以外のUVC波長域の光をカットする波長選択フィルタとすることができる。
【0022】
図2(b)に示すように、前記光源部10は、前記第一電極12と電気的に接続される第一接続端子121と、前記第二電極13と電気的に接続される第二接続端子131が、前記筐体を貫通するよう設けられており、それぞれ導電線(122、132)に接続されている。この導電線は、コネクタ部Cを介して、前記トランス2の二次側(トランス2の二次巻線L2)に接続され、点灯回路に設けられた電源回路3からトランス2を介して、光源部10へ電力が供給される。
【0023】
図2に示すように、前記光源部10は、筐体内に一対の電極(12、13)と、所定数の誘電体バリア放電ランプ11が収容されており、筐体全体がコンパクトに設計されている。また筐体外に導電線(122、132)が伸び、コネクタ部Cを介して、筐体外に設けられた点灯回路1と電気的に接続される。このような構成により、前記光源部10は点灯回路1から着脱可能な態様となる。これは、例えば、光源部10に収容されるランプ11が点灯寿命を迎えた場合や、点灯途中で不具合が生じた場合等に、光源部10のみを交換させることでランプ交換が可能となり、使用者にとって利便性が高い構成となる。
【0024】
しかしながら、光源部10と点灯回路1が接続されていない状況で点灯動作を行った場合、光源部10が接続されていた場合と比較してトランス2の二次側が高電圧となる。これはトランス2の一次側にも影響し、トランス2の一次側の電圧も高くなることで、スイッチング素子4に過大な負荷を加えてしまうことがある。これは、場合によってはスイッチング素子4自体を破損させ、光源装置10自体の動作不良に繋がってしまうおそれがある。
このような問題は、例えば、光源部10に設けられたコネクタ部Cを点灯回路1に適切に接続していなかった場合や、光源部10に収容された誘電体バリア放電ランプ11が電極(12、13)から脱離した状態となる場合、また衝撃によって光源部10内の誘電体バリア放電ランプ11が破損していた場合等、第一電極12と第二電極13の間が非導通の状態となる場合、に生じやすい。特に、乗物等に光源装置が設置される場合には、衝撃による問題が顕在化しやすい。
【0025】
本発明では、上述の導通不良によって、スイッチング素子4に過大な負荷がかからないよう、検知部6が設けられている。例えば、点灯回路1には検知部6が設けられ、検知部6は、トランス2の一次側又は二次側に流れる電流値又は電圧値をモニタリングする。光源部10の導通が確保されている場合は、スイッチング素子4のON/OFF駆動に合わせてトランス2の二次側にパルス電圧が印加され、それに応じてトランス2の二次側に電流が流れる。しかし、光源部10の導通が確保されていない(非導通)の場合は、トランス2の二次側に所定の電流が流れず、高電圧が印加された状態となる。そこで検知部6で検出された電流又は電圧から、検知電圧(Vf)を生成し、判定部7へ伝達される。判定部7では、検知電圧(Vf)の値から、光源部10が導通不良を起こしているかを判断し、制御部5へ判定信号Sを送る。制御部5は、判定信号Sに基づきスイッチング素子4のON/OFF動作を停止し、スイッチング素子4に過大な負荷がかかる前に光源装置を止めることができる。
【0026】
図3は、本発明に係る点灯動作の一態様を説明するためのグラフが示されている。
図3(a)はトランス2の二次側に接続された誘電体バリア放電ランプへの出力電圧(ランプ出力電圧)の変化を示す。また、
図3(b)はトランス2の動作周波数の変化を示す。
光源部10が導通不良を起こしているかの判断は、誘電体バリア放電ランプ11に対するランプ出力電圧が低いタイミングで行う必要がある。これはスイッチング素子4に過大な電圧負荷をかける前に判定しなければならないためである。そこで本発明に係る点灯動作では、ランプ出力電圧が定常点灯時よりも低い電圧V2を維持する判定動作期間TAを設けている。これにより、スイッチング素子4へ過大な電圧負荷を回避しつつ、検知部6で検出された電流又は電圧に基づき、生成された検知電圧(Vf)の値から、光源部10が導通不良を起こしているかを判断することができる。判定動作期間TAで問題が確認されない場合は、定常動作期間TBへ移行することで、誘電体バリア放電ランプ11を定常点灯させることができる。
【0027】
図3(b)は、判定動作期間TA、及び、定常動作期間TBにおけるトランス2の動作周波数の変化を示す。図に示すとおり、定常動作期間TBにおけるトランス2の動作周波数f1に対し、判定動作期間TAにおけるトランス2の動作周波数f2が高くなるよう制御されている。ここでのトランス2の動作周波数は、スイッチング素子4のON/OFF周期によって定められる。このように、判定動作期間TAにおける動作周波数f2が高い値に設定されることで、トランスに印加される電圧ピークが低く抑えられている。
このように、判定動作開始tAから定常動作開始tBの間において、トランスの動作周波数が高くなるよう制御されることで、スイッチング素子4に負荷がかからないよう判定部7による判定動作が行われる。
なお、本発明では、定常動作におけるトランス2の動作周波数(f1)を定常動作周波数と称し、判定動作におけるトランス2の動作周波数(f2)を判定動作周波数と称する。
【0028】
図4は、定常動作期間TBにおけるトランス2の一次側(一次巻線L1)の電圧変化と、スイッチング素子4のON/OFF駆動を概念的に示した説明図である。定常動作期間TBにおける定常動作周波数(f1)は、誘電体バリア放電ランプ11を点灯させる所定のランプ出力電圧が印加されるよう動作周波数が決定され、スイッチング素子4のON/OFF動作周期Tf1が決定される。これによりトランス2の二次側にパルス電圧が印加され、ランプが点灯される。
【0029】
図5は、判定動作期間TAにおけるトランス2の一次側(一次巻線L1)の電圧変化と、スイッチング素子4のON/OFF駆動を概念的に示した説明図である。判定動作期間TAにおける判定動作周波数(f2)は、定常動作周波数(f1)よりも高い動作周波数に設定される。例えば、定常動作周波数(f1)に対して1.2倍以上の動作周波数に設定される。これにより、トランス2に印加される電圧ピークが低く抑えられた状態となり、スイッチング素子4への電圧負荷が軽減される。
【0030】
図6は、本発明に係る点灯動作の一態様を説明するためのフローチャートである。
まず制御部へ点灯指令信号が出力された際に、スイッチング素子4のON/OFF動作を開始する。このとき、スイッチング素子4の動作周波数は、定常時よりも高い周波数である判定動作周波数(f2)で行われる。判定動作周波数(f2)で駆動する間に、検知部で検出された電流又は電圧に基づき、検知電圧(Vf)が判定部7へ出力される。判定部7では、出力された検知電圧(Vf)が、予め設定された判定基準値を満たすかどうかを確認し、判定信号Sを制御部5へ出力する。ここで、検知電圧(Vf)が判定基準値を満たさない場合は、制御部5へ停止信号S1が出力される。制御部は、停止信号S1を受けた後、スイッチング素子4の動作を停止するよう制御する。その後、異常信号を出力し、エラーがあったことを発信する。また、検知電圧(Vf)が判定基準値を満たす場合は、スイッチング素子4の動作周波数を、定常動作周波数(f1)に切り替え、ランプの定常点灯動作を実行する。
【0031】
本発明に係る誘電体バリア放電ランプは、例えば、発光ガスとして希ガスとハロゲンが封入されたエキシマランプである。本発明に係る構成では、点灯回路から印加されるパルス電圧によってエキシマランプに電圧が印加され、発光ガスである希ガスとハロゲンの励起二量体(エキシプレックス)が形成されることで、発光ガス種に特有のエキシマ光が放射される。
【0032】
なお、
図2に示す電極形態は、誘電体バリア放電ランプの一端側又は他端側に配置された形態であるが、電極形態はこれに限らない。例えば、長尺帯状の一対の電極を発光管の短手方向に配置する構造であってもかまわないし、あるいは、一方の電極のみ発光管内部に配置する構造であってもかまわない。
【0033】
また、本発明の光源装置を殺菌装置として使用する場合は、いわゆるUVC光か、あるいは真空紫外光を放射するランプであることが望ましい。エキシマランプ1について、数値例をあげると、発光管11は、全長40mm、発光管径φ5mmである。
【0034】
図7は、本発明に係る点灯回路の実施例を示す図であり、トランス2の二次側において、低電圧側(LV)に検知部6が取り付けられた構成である。なお、本実施例ではトランス2の二次側に流れる電流を検出する構成である。
検知部6は、トランス2の二次側に流れる電流を電圧値に変換する電流検知抵抗61と、ダイオードを介して接続された電流制限抵抗62と、コンデンサ62が設けられており、電流制限抵抗62とコンデンサ63の間の電圧(検知電圧Vf)を判定部7に出力する。判定部7には、不図示のコンパレータ回路が設けられており、検知電圧Vfと、予め設定された判定基準電圧とを比較し、所定時間において検知電圧Vfが判定基準電圧を満たさない場合には、制御部5へ停止信号S1を出力する。
【0035】
図8は、本発明に係る点灯回路の他の実施例を示す図である。ここでは、トランス2の二次側において、高電圧側(HV)と低電圧側(LV)との間の電圧を検出するよう検知部6が取り付けられている。高電圧側に対応する高抵抗体64と、低電圧側に対応する低抵抗体65を設け、トランス2の二次側に印加される電位差によって抵抗体62に流れる電流から検出電圧Vfが生成され、判定部7へ出力される。判定部7では、検出電圧Vfが判定基準値を超える場合に、トランス2の二次側が非導通状態であると判断し、制御部5へ停止信号S1を出力する。
【0036】
図9は、本発明に係る点灯回路の他の実施例を示す図である。ここでは、トランス2の一次側において、点灯回路に流れる電流を検出する検知部6が設けられている。検知部6の構成としては、例示的に、電流検出抵抗61と、ダイオードを介して電流制限抵抗62とコンデンサ63が設けられており、その間の電圧(検知電圧Vf)を判定部7へ出力する。判定部7は、所定時間において検知電圧Vfが判定基準値を超えない場合は、トランス2の二次側が非導通状態であると判断し、制御部5へ停止信号S1を出力する。
【0037】
図10は、本発明に係る点灯回路の他の実施例を示す図である。ここでは、トランス2の一次側において、点灯回路に流れる電流を検出する検知部6が設けられている。検知部6の構成は、例示的に、電流検出抵抗61と、ダイオードを介して電流制限抵抗62とコンデンサ63が設けられており、その間の電圧(検知電圧Vf)を判定部7へ出力する。判定部7は、所定時間において検知電圧Vfが判定基準値を超えない場合は、トランス2の二次側が非導通状態であると判断し、制御部5へ停止信号S1を出力する。
【0038】
本発明では、点灯回路としてフライバック型回路が採用されている。一般に、エキシマランプの点灯装置は、正弦波や矩形パルス波をランプに供給することが多いが、本発明においては、フライバック回路により振動波形を供給している。従来から知られているエキシマランプは、一般に、全長は300mm以上と大きいものが多く、電極間に良好に放電を生じさせるためには、比較的高い電圧印加が必要となるからである。その一方で、本発明に係る光装置は、車両に搭載するものであったり、照明器具に搭載するものであったり、光源装置としては小型化されている。これは、例えば殺菌・不活化用途において、光源装置の小型化・軽量化が強く要請されているためである。このため、
図2に示す光源部10においても、搭載される誘電体バリア放電ランプ(エキシマランプ)の全長は100mm以下と比較的に小さいものが採用されることとなり、この場合の点灯回路として、フライバック式の点灯回路を採用することが望ましい態様となる。
【符号の説明】
【0039】
1…点灯回路、10…光源部、11…ランプ、12…第一電極、13…第二電極、14…光放射面、2…トランス、3…電源回路、4…スイッチング素子、5…制御部、6…検知部、7…判定部、C…コネクタ部、TA…判定動作期間、TB…定常動作期間、f1…定常動作周波数、f2…判定動作周波数