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特許7449483高さ調節システム及びそれを有する電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】高さ調節システム及びそれを有する電動車両
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/54 20060101AFI20240307BHJP
   A61H 3/04 20060101ALI20240307BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20240307BHJP
   B62B 5/06 20060101ALI20240307BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20240307BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20240307BHJP
   B60L 15/20 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
A47C7/54 E
A61H3/04
B62B3/00 G
B62B5/06 C
A61G5/10
A47C7/46
B60L15/20 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020035163
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021137124
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ラージャー ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌祥
(72)【発明者】
【氏名】安池 重暁
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐大
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-085335(JP,U)
【文献】登録実用新案第3178719(JP,U)
【文献】特開2016-187485(JP,A)
【文献】特開2003-127868(JP,A)
【文献】米国特許第04354689(US,A)
【文献】特開2001-239340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/54
A61H 3/04
B62B 3/00
B62B 5/06
A61G 5/10
A47C 7/46
B60L 15/20
A61G 1/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるレール部材と、
前記レール部材を保持可能に構成される保持装置と
を備え、
前記保持装置によって保持される前記レール部材の保持位置を上下方向にて変更可能とするように構成される高さ調節システムであって、
前記レール部材が、上下方向にて互いに間隔を空けて配置される複数の係合片と、前記レール部材を前記保持装置に対して固定可能とするように構成される複数の固定部とを有し、
前記複数の固定部が、前記複数の係合片に対して下方にそれぞれ配置され、
前記保持装置が、互いに上下方向に間隔を空けて配置される第1及び第2ストッパと、前記第1及び第2ストッパを連結するように延びるレバーを有するリンク機構とを含み、
前記第1及び第2ストッパのそれぞれが、前記複数の係合片から選択された1つの前記係合片に係合可能となるように突出し、
前記第1ストッパが、前記係合片に下方から係合可能に構成される係合部と、ユーザにより操作可能に構成される操作部とを有し、
前記第1ストッパの係合部及び操作部が、前記第1ストッパの突出方向の先端部及び基端部にそれぞれ位置し、
前記第2ストッパが、前記係合片に下方から係合可能に構成される係合部を有し、
前記第2ストッパの係合部が、前記第2ストッパの突出方向の先端部に位置し、
前記第1及び第2ストッパのそれぞれが、その係合部を前記選択された1つの係合片に係合可能とするように配置した係合位置と、その係合部を前記複数の係合片から退避させた退避位置との間で移動可能であり、
前記リンク機構が、前記第1及び第2ストッパをそれぞれ前記係合及び退避位置に配置した第1係合状態と、前記第1及び第2ストッパをそれぞれ前記退避及び係合位置に配置した第2係合状態との間での変化をもたらすことができるように、前記第1及び第2ストッパを連動させるように構成されており、
前記レバーの長手方向の中間部分が旋回可能に支持され、
前記第1及び第2ストッパが、前記第1及び第2ストッパにおける係合及び退避位置間の移動を可能とするように、前記レバーの中間部分に対して前記レバーの長手方向の一方側及び他方側にそれぞれ位置する前記レバーの長手方向の一方側部分及び他方側部分にそれぞれ取り付けられ、
前記第1係合状態では、前記第1ストッパの係合部が前記複数の固定部から選択された1つの固定部に固定された固定状態をもたらすことができるように構成されている、高さ調節システム。
【請求項2】
隣り合う前記係合片の上下方向の間隔が、前記第1及び第2ストッパの上下方向の間隔よりも大きくなっている、請求項1に記載の高さ調節システム。
【請求項3】
前記第1ストッパが、前記レバーに対して、前記第1ストッパの長手軸線周りに回転可能に支持されており、
前記第1ストッパの係合部と前記選択された1つの固定部との固定が、前記第1ストッパの回転によって螺合及び離脱可能なネジ締結によってもたらされるようになっている、請求項1又は2に記載の高さ調節システム。
【請求項4】
前記係合片の上面が、前記第1及び第2ストッパの移動方向にて前記レール部材から離れるに従って下るように傾斜している、請求項1~3のいずれか一項に記載の高さ調節システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の高さ調節システムを有する電動車両であって、
電動車両の車体の少なくとも一部を構成するフレームを備え、
前記フレームが、電動車両を操作可能に構成される操作装置を支持する支柱と、前記支柱を上下方向に移動可能とするように前記支柱を支持するフレーム本体とを有し、
前記支柱が前記レール部材を有し、
前記フレーム本体が前記保持装置を有し、
前記保持装置によって保持される前記レール部材の保持位置を上下方向にて変更することによって、前記フレーム本体に対する前記操作装置の上下方向の位置が変更可能に構成されている、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に延びるレール部材と、このレール部材を保持可能に構成される保持装置とを有し、この保持装置によって保持されるレール部材の保持位置を上下方向にて変更可能とするように構成される高さ調節システムに関する。本発明はまた、このような高さ調節システムを有する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
産業上利用される製品においては、それを使用するユーザの身体的特徴等に応じて製品の少なくとも一部の高さを調節可能にすることを要求されることがある。このような製品には、上下方向に延びるレール部材と、このレール部材を保持可能に構成される保持装置とを有し、この保持装置によって保持されるレール部材の保持位置を上下方向にて変更可能とする高さ調節システムが設けられることがある。
【0003】
このような高さ調節システムの一例としては、椅子の肘掛け装置の高さ調整機構が挙げられる。この高さ調節機構は伸縮可能な肘掛支柱を有し、肘掛支柱は、椅子の座体に支持される支柱本体(保持装置)と、この支柱本体に対して長手方向にスライド可能に設けられる昇降体(レール部材)と、支柱本体及び昇降体間に介在する1つの係合部材とから構成され、支柱本体が、上下に並んだ複数の横溝を縦溝によって連結するように櫛形状に形成される係合溝を有し、昇降体が、係合部材を係合溝に係合させた状態で係合部材を横溝の延びる方向に移動可能とするように係合部材を支持する支持部と、係合溝内で移動している状態の係合部材の姿勢を規制可能とする規制部材とを有し、さらに、高さ調節機構は、係合部材を横溝に出入りさせることができるように構成される操作手段を有する。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-244092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記高さ調節システムの一例においては、係合部材が係合溝の縦溝に位置するときに、昇降体が、自由落下によって意図せずに下方に移動するおそれがある。この場合、係合部材が所望の横溝に係合することが難しくなり、さらには、昇降体の保持位置、すなわち、レール部材の保持位置を所望の高さに調節することが難しくなる。すなわち、高さ調節を効率的に行うことができない。さらに、自由落下による昇降体の意図しない下方移動によって高さ調節システムの構成部材同士が衝突するおそれがあり、その結果、これら構成部材が変形及び破損するおそれがある。
【0006】
このような実情を鑑みると、高さ調節システムにおいて、高さ調節を効率的に行うことを可能とし、高さ調節システムの構成部材の変形及び破損を効率的に防止可能とすることが望まれる。高さ調節システムを設けた電動車両において、高さ調節を効率的に行うことを可能とし、電動車両及び高さ調節システムの構成部材の変形及び破損を効率的に防止可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するために、一態様に係る高さ調節システムは、上下方向に延びるレール部材と、前記レール部材を保持可能に構成される保持装置とを備え、前記保持装置によって保持される前記レール部材の保持位置を上下方向にて変更可能とするように構成される高さ調節システムであって、前記レール部材が、上下方向にて互いに間隔を空けて配置される複数の係合片と、前記レール部材を前記保持装置に対して固定可能とするように構成される複数の固定部とを有し、前記複数の固定部が、前記複数の係合片に対して下方にそれぞれ配置され、前記保持装置が、互いに上下方向に間隔を空けて配置される第1及び第2ストッパと、前記第1及び第2ストッパを連結するように延びるレバーを有するリンク機構とを含み、前記第1及び第2ストッパのそれぞれが、前記複数の係合片から選択された1つの前記係合片に係合可能となるように突出し、前記第1ストッパが、前記係合片に下方から係合可能に構成される係合部と、ユーザにより操作可能に構成される操作部とを有し、前記第1ストッパの係合部及び操作部が、前記第1ストッパの突出方向の先端部及び基端部にそれぞれ位置し、前記第2ストッパが、前記係合片に下方から係合可能に構成される係合部を有し、前記第2ストッパの係合部が、前記第2ストッパの突出方向の先端部に位置し、前記第1及び第2ストッパのそれぞれが、その係合部を前記選択された1つの係合片に係合可能とするように配置した係合位置と、その係合部を前記複数の係合片から退避させた退避位置との間で移動可能であり、前記リンク機構が、前記第1及び第2ストッパをそれぞれ前記係合及び退避位置に配置した第1係合状態と、前記第1及び第2ストッパをそれぞれ前記退避及び係合位置に配置した第2係合状態との間での変化をもたらすことができるように、前記第1及び第2ストッパを連動させるように構成されており、前記レバーの長手方向の中間部分が旋回可能に支持され、前記第1及び第2ストッパが、前記第1及び第2ストッパにおける係合及び退避位置間の移動を可能とするように、前記レバーの中間部分に対して前記レバーの長手方向の一方側及び他方側にそれぞれ位置する前記レバーの長手方向の一方側部分及び他方側部分にそれぞれ取り付けられ、前記第1係合状態では、前記第1ストッパの係合部が前記複数の固定部から選択された1つの固定部に固定された固定状態をもたらすことができるように構成されている。
【0008】
一態様に係る電動車両は、上記高さ調節システムを有する電動車両であって、電動車両の車体の少なくとも一部を構成するフレームを備え、前記フレームが、電動車両を操作可能に構成される操作装置を支持する支柱と、前記支柱を上下方向に移動可能とするように前記支柱を支持するフレーム本体とを有し、前記支柱が前記レール部材を有し、前記フレーム本体が前記保持装置を有し、前記保持装置によって保持される前記レール部材の保持位置を上下方向にて変更することによって、前記フレーム本体に対する前記操作装置の上下方向の位置が変更可能に構成されている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る高さ調節システムにおいて、高さ調節を効率的に行うことができ、高さ調節システムの構成部材の変形及び破損を効率的に防止することができる。一態様に係る高さ調節システムを設けた一態様に係る電動車両において、高さ調節を効率的に行うことができ、電動車両及び高さ調節システムの構成部材の変形及び破損を効率的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る高さ調節システムを有する電動車両を概略的に示す側面図である。
図2図2は、一実施形態に係る高さ調節システムを有する電動車両の支柱と、この支柱に支持される電動車両の操作装置と、電動車両のフレーム本体の一部とを概略的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係る高さ調節システムの保持装置及びその周辺部分を、カバーを省略した状態で概略的に示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る保持装置を、カバーを省略すると共に分解した状態で概略的に示す分解斜視図である。
図5図5は、一実施形態に係る高さ調節システムのレール部材及び保持装置を、その一部を断面視しながら第1係合状態かつ固定状態で概略的に示す側面図である。
図6図6は、一実施形態に係るレール部材及び保持装置を第1係合状態から第2係合状態に変化する途中の状態で概略的に示す側面図である。
図7図7は、一実施形態に係るレール部材及び保持装置を第2係合状態で概略的に示す側面図である。
図8図8は、一実施形態に係るレール部材及び保持装置を第2係合状態から別の第1係合状態に変化する途中の状態で概略的に示す側面図である。
図9図9は、一実施形態に係るレール部材及び保持装置を、その一部を断面視しながら別の第1係合状態で概略的に示す側面図である。
図10図10は、一実施形態に係るレール部材及び保持装置を、その一部を断面視しながら別の第1係合状態かつ別の固定状態で概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る高さ調節システムについて以下に説明する。高さ調節システムは、高さ調節される部分を含むあらゆる製品に適用することができる。本実施形態においては、一例として、高さ調節システムを電動車両に適用する。しかしながら、高さ調節システムを適用する製品は、電動車両に限定されない。例えば、ここに列挙されるものに限定されないが、高さ調節システムを適用する製品は、椅子、テーブル、机、棚等の家具、文房具、電気製品、計測機、輸送機械、産業機械等とすることもできる。
【0012】
ここで、本実施形態において高さ調節システムを適用する電動車両は、電動車椅子の機能を備えた電動歩行補助車となっている。図1に示すように、高さ調節システム10を適用する電動車両1は、電動歩行補助者として用いられるプッシュモード(図1にて仮想線により示す)と、電動車椅子として用いられるドライブモード(図1にて実線により示す)とに変形可能になっている。特に、電動車両1は、ドライブモードにて1人乗り電動車椅子として用いられるように構成することができる。
【0013】
しかしながら、電動車両はこれに限定されない。例えば、電動車両は、プッシュモードにてショッピングカート、台車等として用いられるように構成することができる。電動車両は、ドライブモードにて電動カート等として用いられるように構成することができる。電動車両は、プッシュモード及びドライブモードの一方のみで用いられるように構成することもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0014】
本実施形態の説明にて用いられる方向について、単に「前方」、「後方」、「左方」、「右方」、「上方」、及び「下方」と呼ぶ場合、これらは高さ調節システムを基準として定義されるものとする。左方及び右方は、高さ調節システムの前方を向いた状態で定義される。さらに、「車両前方」、「車両後方」、「車両左方」、「車両右方」、「車両上方」、及び「車両下方」と呼ぶ場合、これらは車両を基準として定義されるものとする。なお、車両左方及び車両右方は、車両前方を向いた状態で定義される。
【0015】
高さ調節システムを基準とした方向と車両を基準とした方向との関係について、本実施形態においては、前方、後方、左方、右方、上方、及び下方は、車両前方、車両後方、車両左方、車両右方、車両上方、及び車両下方にそれぞれ略一致している。しかしながら、高さ調節システムを基準とした方向と車両を基準とした方向との関係は、これに限定されない。高さ調節システムを基準として定義される方向について、図1図10においては、前方及び後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図2図4においては、左方及び右方を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。図1図10においては、上方及び下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0016】
「高さ調節システム及び電動車両の概略」
図1図10を参照して、本実施形態に係る高さ調節システム10及びそれを適用する電動車両1の概略について説明する。高さ調節システム10は概略的には次のように構成される。図2図10に示すように、高さ調節システム10は、上下方向に延びるレール部材20を有する。高さ調節システム10は、レール部材20を保持可能に構成される保持装置30を有する。高さ調節システム10は、保持装置30によって保持されるレール部材20の保持位置を上下方向にて変更可能とするように構成される。
【0017】
図2及び図5図10に示すように、レール部材20は、上下方向にて互いに間隔を空けて配置される複数の係合片21を有する。レール部材20は、このレール部材20を保持装置30に対して固定可能とするように構成される複数の固定部22を有する。複数の固定部22は、複数の係合片21に対して下方にそれぞれ配置される。
【0018】
なお、図2及び図5図10は、一例として、レール部材20が3つの係合片21と、3つの固定部22とを有する場合を示している。しかしながら、レール部材は、2つの係合片又は4つ以上の係合片を有することもできる。レール部材はまた、2つの固定部又は4つ以上の固定部を有することもできる。
【0019】
図3図10に示すように、保持装置30は、互いに上下方向に間隔を空けて配置される第1ストッパ40及び第2ストッパ50を有する。保持装置30は、第1及び第2ストッパ40,50を連結するように延びるレバー61を有するリンク機構60を含む。図4図10に示すように、第1及び第2ストッパ40,50のそれぞれは、複数の係合片21から選択された1つの係合片(以下、必要に応じて、「選択係合片」という)21に係合可能となるように突出する。
【0020】
第1ストッパ40は、係合片21に下方から係合可能に構成される係合部41を有する。第1ストッパ40は、ユーザにより操作可能に構成される操作部42を有する。第1ストッパ40の係合部41及び操作部42は、第1ストッパ40の突出方向の先端部及び基端部にそれぞれ位置する。なお、第1ストッパ40の突出方向は、第1ストッパ40の長手軸線40aと略平行である。第1ストッパ40の突出方向はまた、第1ストッパ40の基端部から先端部を向く方向と、第1ストッパ40の先端部から基端部を向く方向との両方を含むものとする。
【0021】
第2ストッパ50は、係合片21に下方から係合可能に構成される係合部51を有する。第2ストッパ50の係合部51は、第2ストッパ50の突出方向の先端部に位置する。なお、第2ストッパ50の突出方向は、第2ストッパ50の長手軸線50aと略平行である。第2ストッパ50の突出方向は、第2ストッパ50の基端部から先端部を向く方向と、第2ストッパ50の先端部から基端部を向く方向との両方を含むものとする。
【0022】
図5図10を参照すると、第1及び第2ストッパ40,50のそれぞれが、次に述べる係合位置及び退避位置の間で移動可能である。図5及び図8図10に示すように、第1ストッパ40の係合部41は、係合位置では、選択係合片21に係合可能となるように配置され、かつ第2ストッパ50の係合部51は、退避位置では、複数の係合片21から退避するように配置される。図6及び図7に示すように、第1ストッパ40の係合部41は、退避位置では、複数の係合片21から退避するように配置され、かつ第2ストッパ50の係合部51は、係合位置では、選択係合片21に係合可能となるように配置される。
【0023】
図5図10を参照すると、リンク機構60は、次のような第1係合状態及び第2係合状態間の変化をもたらすことができるように、第1及び第2ストッパ40,50を連動させるように構成されている。図5及び図8図10に示すように、第1係合状態では、第1及び第2ストッパ40,50が係合及び退避位置にそれぞれ配置される。図6及び図7に示すように、第2係合状態では、第1及び第2ストッパ40,50が退避及び係合位置にそれぞれ配置される。
【0024】
図2及び図5図10に示すように、リンク機構60におけるレバー61の長手方向の中間部分61aが旋回可能に支持されている。第1ストッパ40は、この第1ストッパ40の係合及び退避位置間の移動を可能とするように、レバー61の中間部分61aに対してレバー61の長手方向の一方側に位置するレバー61の長手方向の一方側部分61bに取り付けられる。第2ストッパ50は、この第2ストッパ50の係合及び退避位置間の移動を可能とするように、レバー61の中間部分61aに対してレバー61の長手方向の他方側に位置するレバー61の長手方向の他方側部分61cに取り付けられる。
【0025】
図5及び図10に示すように、第1係合状態では、第1ストッパ40の係合部41は、複数の固定部22から選択された1つの固定部(以下、必要に応じて、「選択固定部」という)22に固定された固定状態をもたらすことができるようになっている。
【0026】
さらに、高さ調節システム10は、次のように構成することができる。図5図10に示すように、隣り合う係合片21の上下方向の間隔が、第1及び第2ストッパ40,50の上下方向の間隔よりも大きくなっている。
【0027】
図3及び図4に示すように、第1ストッパ40は、レバー61に対して、第1ストッパ40の長手軸線40a周りに回転可能に支持されている。第1ストッパ40の係合部41と選択固定部22との固定が、第1ストッパ40の回転によって螺合及び離脱可能なネジ締結によってもたらされるようになっている。なお、図3においては、第1ストッパ40の回転方向を両側矢印Jにより示す。図5図10に示すように、係合片21の上面21aは、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にてレール部材20から離れるに従って下るように傾斜している。
【0028】
次に、高さ調節システム10を適用する電動車両1は、次のように構成される。図1及び図2に示すように、車両1は、高さ調節システム10を有する。車両1は、その車体1aの少なくとも一部を構成するフレーム2を有する。フレーム2は、この車両1を操作可能とするように構成される操作装置1bを支持する支柱2aを有する。フレーム2は、支柱2aを上下方向に移動可能とするように支柱2aを支持するフレーム本体2bを有する。
【0029】
支柱2aはレール部材20を有する。フレーム本体2bは保持装置30を有する。フレーム本体2bに対する操作装置1bの上下方向の位置は、高さ調節システム10の保持装置30によって保持される高さ調節装置10のレール部材20の保持位置を上下方向に変更することによって変更できる。
【0030】
「レール部材の詳細」
図2及び図5図10を参照すると、レール部材20は詳細には次のように構成することができる。図5図10に示すように、レール部材20は、上下方向に延びるレール本体23を有する。レール本体23は、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて、第1及び第2ストッパ40,50を向く係合側面23aを有する。係合側面23aは後方を向く。しかしながら、係合側面は、後方以外を向くこともできる。例えば、係合側面は、前方、左方、右方等を向くことができる。レール本体23はまた、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて、係合側面23aとは反対側を向く反対側面23bを有する。
【0031】
レール部材20において、各係合片21は、レール本体23の係合側面23aから第1及び第2ストッパ40,50の移動方向に突出する。第1及び第2ストッパ40,50の移動方向が、第1及び第2ストッパ40,50の突出方向と略一致する場合、各係合片21は、レール本体23の係合側面23aから、第1及び第2ストッパ40,50の先端部から基端部を向く方向に突出することができる。
【0032】
複数の係合片21は、上下方向にて略等間隔に並んでいる。言い換えれば、複数の係合片21は、隣り合う係合片21から成る複数の係合片対を有しており、複数の係合片対における隣り合う係合片21の上下方向の間隔は、実質的に等しくなっている。しかしながら、複数の係合片対の一部における隣り合う係合片の上下方向の間隔を、複数の係合片対の別の一部における隣り合う係合片の上下方向の間隔と異ならせることもできる。
【0033】
係合片21は、その上面21aに対して上下方向の反対側に下面21bを有する。係合片21の下面21bは、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて直線状に延びる。各係合片21は、レール本体23と一体に形成することができる。第1及び第2ストッパ40,50のそれぞれが係合位置にあるときに、その係合部41,51が係合片21の下面12bに上下方向にて当接できるようになっている。
【0034】
図2及び図5図10に示すように、レール部材20において、各固定部22は、レール本体23の係合側面23aにて開口する固定穴22aを有する。図5図10に示すように、各固定部22は、レール本体23の反対側面23bから、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて各係合片21とは反対側に突出する固定片22bを有する。各固定部22の固定片22bは、レール本体23と一体に形成することができる。
【0035】
各固定穴22aは、レール本体23及び固定片22bを貫通するように、第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて延びる貫通孔22aとなっている。しかしながら、複数の固定部の少なくとも一部における固定穴は、レール本体又は固定片にて閉じるように、第1及び第2ストッパの移動方向にて延びる止まり穴とすることもできる。第1及び第2ストッパ40,50の移動方向が、第1及び第2ストッパ40,50の突出方向と略一致する場合、各固定部22の固定穴22aは、第1及び第2ストッパ40,50の突出方向に延びることができ、かつ各固定部22の固定片22bは、レール本体23の反対側面23bから、第1及び第2ストッパ40,50の基端部から先端部を向く方向に突出することができる。
【0036】
各固定穴22aは、後述する第1ストッパ40の係合部41における雄ネジ状の固定突起41bと螺合可能なネジ穴22aとなっている。しかしながら、第1ストッパの係合部における固定突起が、雄ネジ状に形成されず、かつ第1及び第2ストッパの移動方向にて直線状に延びるように形成される場合、各固定穴もまた、この固定突起に対応するように直線状に延びるように形成することができる。
【0037】
複数の固定部22は、上下方向にて略等間隔に並んでいる。言い換えれば、複数の固定部22は、隣り合う固定部22から成る複数の固定部対を有しており、複数の固定部対における隣り合う固定部22の上下方向の間隔は、実質的に等しくなっている。しかしながら、複数の固定部対の一部における隣り合う固定部の上下方向の間隔を、複数の固定部対の別の一部における隣り合う固定部の上下方向の間隔と異ならせることもできる。さらに、複数の固定部22は、第1ストッパ40の係合部41が選択係合片21に係合した状態で選択固定部22に固定できるように、それぞれ複数の係合片21に対して下方に隣接している。
【0038】
「保持装置の詳細」
図2図10を参照すると、保持装置30は詳細には次のように構成することができる。図3図10に示すように、保持装置30において、第1ストッパ40は第2ストッパ50に対して下方に位置する。しかしながら、第1ストッパは第2ストッパに対して上方に位置することもできる。
【0039】
第1ストッパ40の係合部41は、選択係合片21と係合可能な係合部本体41aを有する。また、第1ストッパ40の係合部41は、レール部材20の各固定部22に固定可能な固定突起41bを有する。固定突起41bは、第1ストッパ40の突出方向にて係合部41の先端に位置する。固定突起41bは、係合部本体41aから進退可能に構成されている。固定突起41aは、雄ネジ状に形成される。しかしながら、固定突起は、雄ネジ状に形成されず、かつ第1及び第2ストッパの移動方向にて直線状に延びるように形成することもできる。
【0040】
図2図10に示すように、第1ストッパ40の操作部42は、ユーザにより操作可能となるようにノブ状に形成されている。第1ストッパ40は、その突出方向にて、第1ストッパ40の操作部42に対して第1ストッパ40の突出方向の先端側に位置する中間部43を有する。中間部43は、第1ストッパ40の突出方向にて操作部42に連結されている。さらに、中間部43は、第1ストッパ40の突出方向にて係合部41の固定突起41bに連結されている。
【0041】
第1ストッパ40は、この第1ストッパ40をその突出方向にて移動可能とするように中間部43を支持する支持部44を有する。係合部本体41aは支持部44に連結されている。係合部41の固定突起41b及び中間部43は、係合部本体41a及び支持部44に対して第1ストッパ40の突出方向にて移動可能になっている。係合部本体41aは、少なくとも係合部41の固定突起41bを通過可能とするように貫通する挿入孔41cを有する。
【0042】
第1ストッパ40の支持部44は、第1ストッパ40の突出方向にて、第1ストッパ40の中間部43を挿入可能とするように支持部44を貫通する挿入孔44aを有する。第1ストッパ40の中間部43は、この挿入孔44aに挿入された状態で、支持部44によって支持されている。第1ストッパ40の支持部44は、リンク機構60のレバー61に対して第1ストッパ40の突出方向に略直交する方向に延びる旋回軸線40b周りに旋回可能となるように、レバー61の一方側部分61bに取り付けられている。
【0043】
図3図10に示すように、保持装置30の第2ストッパ50は、その係合部51に対して第2ストッパ50の突出方向の基端側に位置する取付部52を有する。第2ストッパ50の取付部52は、第2ストッパ50の突出方向に対して略直交する方向に延びる旋回軸線50b周りに旋回可能となるように、レバー61の他方側部分61cに取り付けられている。
【0044】
図3及び図4に示すように、保持装置30のリンク機構60は、レバー61の中間部分61aを、第1及び第2ストッパ40,50の旋回軸線40b,50bに略平行な旋回軸線60a周りに旋回可能に取り付けるように構成されるブラケット62を有する。第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて、リンク機構60の旋回軸線60aとレール部材20との距離は、実質的に一定となっている。
【0045】
さらに、図5及び図8図10に示すように、第1係合状態では、レバー61の一方側部分61bが、レバー61の他方側部分61cよりも第1及び第2ストッパ40,50の突出方向の先端寄りに位置し、このとき、第1及び第2ストッパ40,50が係合及び退避位置にそれぞれ配置される。図6及び図7に示すように、第2係合状態では、レバー61の他方側部分61cが、レバー61の一方側部分61bよりも第1及び第2ストッパ40,50の突出方向の先端寄りに位置し、このとき、第1及び第2ストッパ40,50が退避及び係合位置にそれぞれ配置される。
【0046】
図2に示すように、保持装置30は、第1ストッパ40の係合部41、中間部43、及び支持部44と、第2ストッパ50と、リンク機構60とを覆うカバー31を有する。第1ストッパ40の操作部42は、第1ストッパ40の突出方向の先端から基端に向かう方向にて、カバー31から突出するように配置される。第1ストッパ40は、カバー31に対して、第1ストッパ40の長手軸線40a周りに回転可能、かつ第1ストッパ40の突出方向に移動可能となっている。
【0047】
特に明確に図示はしないが、リンク機構60は、レバー61を第1係合状態から第2係合状態に復帰可能となるように付勢する付勢部材を有することができる。この場合、第1ストッパ40をその突出方向の基端から先端に向かって移動させる外力が第1ストッパ40に加えられている状態、又は第1ストッパ40がレール部材20の選択固定部22に固定されている状態で、図5及び図8図10に示すような第1係合状態がもたらされる。また、第1ストッパ40をその突出方向の基端から先端に向かって移動させる外力が第1ストッパ40に加えられず、かつ第1ストッパ40がレール部材20の選択固定部22に固定されていない状態で、図6及び図7に示すような第2係合状態がもたらされる。
【0048】
「電動車両の詳細」
図1及び図2を参照すると、車両1は詳細には次のように構成することができる。図1に示すように、車両1は、その走行動作に用いられる電動機1dを有する駆動装置1cを含む。車両1はまた、操作装置1bの操作に応じて駆動装置1cを制御可能とするように構成される制御装置1eを有する。
【0049】
車両1は、駆動装置1cによって走行動作可能に構成される移動ベース3を有する。移動ベース3は、前側ベース4と、この前側ベース4に対して車両後方に位置する後側ベース5とを有する。前側ベース4は、車両幅方向に互いに間隔を空けた左右の前輪4aを有する。後側ベース5は、車両幅方向に互いに間隔を空けた左右の後輪5aを有する。
【0050】
後側ベース5には駆動装置1cの電動機1dが配置され、電動機1dは、左右の後輪5aをそれぞれ駆動可能に構成される左右のモータ1dとなっている。左右の後輪5aは、左右のモータ1dによってそれぞれ独立して駆動可能になっている。車両1は、左右のモータ1dがそれらの回転を防ぐように停止した状態で、ブレーキを掛けられるようになっている。さらに、移動ベース3には制御装置1eが配置されている。特に明確に図示はしないが、制御装置1eは、操作装置1b及び左右のモータ1dと電気的に接続されている。
【0051】
図1の両側矢印K1により示すように、移動ベース3は、前輪4a及び後輪5a間のホイールベースを伸縮可能とするように、前側及び後側ベース4,5を互いに対して相対的に移動可能とするように構成されている。すなわち、移動ベース3は、ホイールベースを拡大した拡大状態(図1にて実線により示す)と、拡大状態よりもホイールベースを縮小した縮小状態(図1にて仮想線により示す)との間で変化可能に構成される。
【0052】
車両1は、移動ベース3上に配置されるシート6を有する。シート6は、着座面7aを有する着座部7を含む。図1の両側矢印K2により示すように、シート6は、着座位置と退避位置との間で移動可能に構成される。具体的には、図1にて実線により示すように、シート6は、着座位置にて着座面7aを車両上方に向けるように位置する。図1にて仮想線により示すように、シート6は、退避位置にて着座部7を着座位置よりも車両前方に退避させるように位置する。
【0053】
車両1は、シート6の着座面7aに対応する背もたれとして用いることができるように構成される背板8を有する。背板8もまた移動ベース3上に配置される。図1の両側矢印K3により示すように、背板8は、起立位置と倒伏位置との間で移動可能に構成される。具体的には、図1にて実線により示すように、背板8は、起立位置にて着座面7aに対して車両後方かつ車両上方に位置する。また、図1にて仮想線により示すように、背板8は、倒伏位置にて、起立位置に対して車両前方に位置する。
【0054】
車両1のフレーム本体2bは、後側ベース5から車両上方に向かって立ち上がる。フレーム本体2bは、車両前後方向にて車両1の後端寄りに位置する。シート6及び背板8は、フレーム本体2bに対して車両前方に位置する。さらに、シート6は、着座位置と退避位置との間で移動可能となるようにフレーム本体2bに旋回可能に取り付けられる。背板8は、起立位置と倒伏位置との間で移動可能となるようにフレーム本体2bに旋回可能に取り付けられる。
【0055】
図1及び図2に示すように、操作装置1bは、支柱2aの上下方向の上端に取り付けられる。支柱2aは、フレーム本体2bの車両上下方向の上端部に位置する。フレーム本体2bは、支柱2aを挿入可能とするように筒状に形成される保持部2cを有する。フレーム本体2bの保持部2cは、フレーム本体2bの車両上下方向の上端部に配置される。支柱2aは、保持部2cに挿入された状態でフレーム本体2bに対して上下方向に移動可能になっている。
【0056】
図2に示すように、レール部材20は、レール本体23の反対側面23bを支柱2aの外周面と向き合わせた状態で支柱2aに取り付けられる。保持装置30は、このように支柱2aに取り付けられるレール部材20に合わせて、フレーム本体2bの保持部2cに取り付けられる。
【0057】
このような車両1においては、図1にて実線により示すように、車両1のドライブモードでは、移動ベース3は拡大状態にある。さらに、ドライブモードでは、シート6及び背板8をそれぞれ着座位置及び起立位置に配置することができる。図1にて仮想線により示すように、車両1のプッシュモードでは、移動ベース3は縮小状態にある。さらに、プッシュモードでは、シート6及び背板8をそれぞれ退避位置及び倒伏位置に配置することができる。特に、車両1がドライブモード及びプッシュモード間で変化するときに、拡大状態及び縮小状態間における移動ベース3の変化と、着座位置及び退避位置間におけるシート6との移動とが連動するとよい。
【0058】
「高さ調節システムの操作方法」
図5図10を参照して、本実施形態に係る高さ調節システム10の操作方法の一例について説明する。図5に示すように、最初に、第1ストッパ40の係合部41が、係合位置にて、レール部材20における隣り合う係合片21のうち下側の係合片21に係合し、かつ隣り合う固定部22のうち下側の固定部22に固定されている。第2ストッパ50は、退避位置にて、レール部材20における複数の係合片21から退避している。すなわち、第1及び第2ストッパ40,50は、下側の係合片21を選択係合片21とした第1係合状態にある。また、第1ストッパ40は、下側の固定部22を選択固定部22とした固定状態にある。
【0059】
図6に示すように、第1ストッパ40の係合部41及び下側の係合片21間の係合と、第1ストッパ40の係合部41及び下側の固定部22間の固定とが解除される。この解除時に、ユーザは、係合部41の固定突起41bとレール部材20の固定部22の固定穴22aとの螺合を解除するように、第1ストッパ40の操作部42を第1ストッパ40の長手軸線40a周りに回転させる。
【0060】
その後、第1ストッパ40が、第1ストッパ40の突出方向の先端から基端に向かう方向にて係合位置から退避位置に移動し、さらに、第2ストッパ50の係合部51が、第2ストッパ50の突出方向の基端から先端に向かう方向にて退避位置から係合位置に移動する。このような第1ストッパ40の係合位置から退避位置への移動は、ユーザの操作力又はリンク機構60の付勢部材(図示せず)の付勢力によってもたらされる。
【0061】
図7に示すように、レール部材20が、特に、自由落下によって上方から下方に向かって移動する。その後、第2ストッパ50の係合部51が、係合位置にて、隣り合う係合片21のうち上側の係合片21に係合する。また、第1ストッパ40は、退避位置にて、レール部材20における複数の係合片21から退避している。すなわち、第1及び第2ストッパ40,50は、上側の係合片21を選択係合片21とした第2係合状態にある。
【0062】
図8に示すように、第2ストッパ50の係合部51及び上側の係合片21間の係合が解除され、その後、第2ストッパ50が、第2ストッパ50の突出方向の先端から基端に向かう方向にて係合位置から退避位置に移動し、さらに、第1ストッパ40の係合部41が、第1ストッパ40の突出方向の基端から先端に向かう方向にて退避位置から係合位置に移動する。このような第1ストッパ21の突出方向の基端から先端に向かう方向への移動は、ユーザの操作力によってもたらされる。
【0063】
図9に示すように、レール部材20が、特に、自由落下によって上方から下方に向かって移動する。その後、第1ストッパ40の係合部41が、係合位置にて、隣り合う係合片21のうち上側の係合片21に係合する。また、第2ストッパ50は、退避位置にて、レール部材20における複数の係合片21から退避している。すなわち、第1及び第2ストッパ40,50は、上側の係合片21を選択係合片21とした別の第1係合状態にある。
【0064】
図10に示すように、第1ストッパ40の係合部41が、隣り合う固定部22のうち上側の固定部22に固定される。すなわち、第1ストッパ40は、上側の固定部22を選択固定部22とした別の固定状態にある。この固定時において、ユーザは、係合部41の固定突起41bとレール部材20の固定部22の固定穴22aとを螺合させるように、第1ストッパ40の操作部42を第1ストッパ40の長手軸線40a周りに回転させる。
【0065】
以上、本実施形態に係る高さ調節システム10は、上下方向に延びるレール部材20と、前記レール部材20を保持可能に構成される保持装置30とを備え、前記保持装置30によって保持される前記レール部材20の保持位置を上下方向にて変更可能とするように構成される高さ調節システム10であって、前記レール部材20が、上下方向にて互いに間隔を空けて配置される複数の係合片21と、前記レール部材20を前記保持装置30に対して固定可能とするように構成される複数の固定部22とを有し、前記複数の固定部22が、前記複数の係合片21に対して下方にそれぞれ配置され、前記保持装置30が、互いに上下方向に間隔を空けて配置される第1及び第2ストッパ40,50と、前記第1及び第2ストッパ40,50を連結するように延びるレバー61を有するリンク機構60とを含み、前記第1及び第2ストッパ40,50のそれぞれが、前記複数の係合片21から選択された1つの前記係合片21に係合可能となるように突出し、前記第1ストッパ40が、前記係合片21に下方から係合可能に構成される係合部41と、ユーザにより操作可能に構成される操作部42とを有し、前記第1ストッパの係合部41及び操作部42が、前記第1ストッパ40の突出方向の先端部及び基端部にそれぞれ位置し、前記第2ストッパ50が、前記係合片21に下方から係合可能に構成される係合部51を有し、前記第2ストッパ50の係合部51が、前記第2ストッパ50の突出方向の先端部に位置し、前記第1及び第2ストッパ40,50のそれぞれが、その係合部41,51を前記選択された1つの係合片21に係合可能とするように配置した係合位置と、その係合部41,51を前記複数の係合片21から退避させた退避位置との間で移動可能であり、前記リンク機構60が、前記第1及び第2ストッパ40,50をそれぞれ前記係合及び退避位置に配置した第1係合状態と、前記第1及び第2ストッパ40,50をそれぞれ前記退避及び係合位置に配置した第2係合状態との間での変化をもたらすことができるように、前記第1及び第2ストッパ40,50を連動させるように構成されており、前記レバー61の長手方向の中間部分61aが旋回可能に支持され、前記第1及び第2ストッパ40,50が、前記第1及び第2ストッパ40,50における係合及び退避位置間の移動を可能とするように、前記レバーの中間部分61aに対して前記レバー61の長手方向の一方側及び他方側にそれぞれ位置する前記レバー61の長手方向の一方側部分61b及び他方側部分61cにそれぞれ取り付けられ、前記第1係合状態では、前記第1ストッパ40の係合部41が前記複数の固定部22から選択された1つの固定部22に固定された固定状態をもたらすことができるように構成されている。
【0066】
このような高さ調節システム10においては、第1ストッパ40を選択係合片21に係合させた第1係合状態から、第1ストッパ40を選択係合片21に対して上方に位置する別の選択係合片21に係合させた別の第1係合状態に変化させ、かつ第1ストッパ40を選択固定部22に固定した固定状態から、第1ストッパ40を選択固定部22に対して上方に位置する別の1つの選択固定部22に固定した別の固定状態に変化させようとする場合において、第1係合状態から別の第1係合状態に変化するまでの間、かつ固定状態から別の固定状態に変化するまでの間に、レール部材20が自由落下しても、第2ストッパ50が別の選択係合片21に係合できる。すなわち、第1係合状態から別の第1係合状態に変化するまでの間、かつ固定状態から別の固定状態に変化するまでの間に、第2係合状態をもたらすことができる。
【0067】
そのため、上述のように第1ストッパ40を選択係合片21の次に別の選択係合片21に係合させようとする場合において、第1ストッパがレール部材20の自由落下によって別の選択係合片21を超えて上方にレール部材20に対して相対的に移動することを効率的に防止できる。言い換えれば、レール部材20の別の選択係合片21がレール部材20の自由落下によって第1ストッパを超えて下方に移動することを効率的に防止できる。さらには、自由落下によるレール部材20の意図しない下方移動によって高さ調節システムの構成部材同士が衝突することを効率的に防止できる。よって、高さ調節を効率的に行うことができ、高さ調節システム10の構成部材の変形及び破損を効率的に防止することができる。
【0068】
本実施形態に係る高さ調節システム10においては、隣り合う前記係合片21の上下方向の間隔が、前記第1及び第2ストッパ40,50の上下方向の間隔よりも大きくなっている。そのため、第1係合状態から別の第1係合状態に変化するまでの間に、第2係合状態をより確実にもたらすことができる。
【0069】
本実施形態に係る高さ調節システム10においては、前記第1ストッパ40が、前記レバー61に対して、前記第1ストッパ40の長手軸線40a周りに回転可能に支持されており、前記第1ストッパ40の係合部41と前記選択された1つの固定部22との固定が、前記第1ストッパ40の回転によって螺合及び離脱可能なネジ締結によってもたらされるようになっている。そのため、このような第1ストッパ40及び固定部22のネジ締結によって、高さ調節をより効率的に行うことができる。
【0070】
本実施形態に係る高さ調節システム10においては、前記係合片21の上面21aが、前記第1及び第2ストッパ40,50の移動方向にて前記レール部材20から離れるに従って下るように傾斜している。このような高さ調節システム10において、レール部材20が保持装置30に対して上方に移動し、かつレール部材20の係合片21が第1又は第2ストッパ40,50と接触する場合であっても、第1又は第2ストッパ40,50に対する係合片21の接触部分が傾斜する上面21aになる。そのため、レール部材20が保持装置30に対して上方に移動し、かつレール部材20の係合片21が第1又は第2ストッパ40,50と接触する場合であっても、レール部材20の係合片21が第1及び第2ストッパ40,50に引っ掛かることを防止でき、かつレール部材20をスムーズに上下方向に移動させることができる。
【0071】
本実施形態に係る電動車両1は、上記高さ調節システム10を有する電動車両であって、電動車両1の車体1aの少なくとも一部を構成するフレーム2を備え、前記フレーム2が、電動車両を操作可能に構成される操作装置1bを支持する支柱2aと、前記支柱2aを上下方向に移動可能とするように前記支柱2aを支持するフレーム本体2bとを有し、前記支柱2aが前記レール部材20を有し、前記フレーム本体2bが前記保持装置30を有し、前記保持装置30によって保持される前記レール部材20の保持位置を上下方向にて変更することによって、前記フレーム本体2bに対する前記操作装置1bの上下方向の位置が変更可能に構成されている。そのため、上記高さ調節システム10を設けた電動車両1において、高さ調節を効率的に行うことができ、電動車両1及び高さ調節システム10の構成部材の変形及び破損を効率的に防止することができる。
【0072】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…電動車両(車両)、1a…車体、1b…操作装置、2…フレーム、2a…支柱
2b…フレーム本体
10…高さ調節システム、20…レール部材、21…係合片、21a…上面、22…固定部、30…保持装置、40…第1ストッパ、40a…長手軸線、41…係合部、42…操作部、50…第2ストッパ、51…係合部、60…リンク機構、61…レバー、61a…中間部分、61b…一方側部分、61c…他方側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10