(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】硬化性組成物、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240307BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240307BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20240307BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240307BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240307BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240307BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/29
C08K5/06
C08K3/013
C08J5/24 CFC
B32B15/08 J
H05K1/03 610L
H05K1/03 610N
H05K1/03 610K
H05K1/03 610R
H05K1/03 630G
(21)【出願番号】P 2022572722
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2022029884
(87)【国際公開番号】W WO2023013717
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021128756
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚義
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博史
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/022084(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124164(WO,A1)
【文献】特開2012-007007(JP,A)
【文献】特開2005-097448(JP,A)
【文献】特開2009-007467(JP,A)
【文献】特開平05-047964(JP,A)
【文献】特開平04-314723(JP,A)
【文献】特開平06-136093(JP,A)
【文献】特開平04-004213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 5/29
C08K 5/06
C08K 3/013
C08J 5/24
B32B 15/08
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)に由来する構成単位とを含有する重合体(E)と、
環状カルボジイミド化合物(D)と、を含有し、
前記アルケニルフェノール(A)が、ジアリルビスフェノール及び/又はジプロペニルビスフェノールを含有し、
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、下記式(B1)で表されるエポキシ変性シリコーンを含有し、
前記エポキシ化合物(C)が、下記式(b2)で表される化合物を含み、
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、下記式(D3)で表される環状構造を有し、
【化1】
【化2】
(式中、R
1は、各々独立に、単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を示し、R
2は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基を示し、nは、0~100の整数を示す。)
【化3】
(式(b2)中、R
aは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を示す。)
前記重合体
(E)は、少なくとも、
前記エポキシ変性シリコーン(B)及び前記エポキシ化合物(C)が有するエポキシ基と前記アルケニルフェノール(A)が有する水酸基との付加反応と、
得られた付加反応物が有する水酸基とエポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)が有するエポキシ基との付加反応と、
によって得られる重合体である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合体(E)の重量平均分子量が、3.0×10
3~5.0×10
4である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合体(E)の含有量が、樹脂固形分100質量%に対して、5~50質量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、5~50質量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、20~60質量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化合物(C)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、5~40質量%である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、1.0~30質量部である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記アルケニルフェノール(A)の1分子当たりの平均フェノール基数が1以上3未満であり、前記エポキシ変性シリコーン(B)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満であり、前記エポキシ化合物(C)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記重合体(E)の重量平均分子量が、3.0×10
3~5.0×10
4であり、
前記重合体(E)の含有量が、樹脂固形分100質量%に対して、5~50質量%であり、
前記アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、5~50質量%であり、
前記エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、20~60質量%であり、
前記エポキシ化合物(C)に由来する構成単位の含有量が、前記重合体(E)の総質量に対して、5~40質量%であり、
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、1.0~30質量部であり、
前記アルケニルフェノール(A)の1分子当たりの平均フェノール基数が1以上3未満であり、前記エポキシ変性シリコーン(B)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満であり、前記エポキシ化合物(C)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満であり、
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)及び該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)からなる群より選択される1種以上を更に含有する、請求項1、2又は10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記エポキシ化合物(C)が、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、前記アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)及びアルケニル置換ナジイミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(H)を更に含有する、
請求項1、2又は10に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
無機充填材を更に含有し、
前記無機充填材が、シリカ類、ベーマイト及びアルミナからなる群より選択される1種類以上を含む、
請求項1、2又は10に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
基材と、
該基材に含浸又は塗布された、請求項1、2又は10に記載の硬化性組成物と、を含む、
プリプレグ。
【請求項16】
請求項15に記載のプリプレグを含む積層体と、
該積層体の片面又は両面に配置された金属箔と、を含む、
金属箔張積層板。
【請求項17】
請求項15に記載のプリプレグを含む絶縁層と、
該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに伴い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。これに伴い、半導体パッケージ用のプリント配線板に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。このようなプリント配線板に求められる特性としては、例えば、低熱膨張率、耐薬品性、ピール強度等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、特定のマレイミド化合物と、分子構造中にエポキシ基を有するシリコーン化合物と、フェノール性水酸基を有する化合物とを含有する熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性及び低熱膨張性に優れ、金属箔張積層板及び多層プリント配線板に好適に用いられることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ポリマレイミドと、下記式(I)で表されるジグリシジルポリシロキサンと、下記式(II)で表されるジアリルビスフェノール類との付加重合物と、下記式(III)で表されるアリル化フェノール樹脂とを所定の割合及び条件にて反応させて半導体封止用樹脂を得る製造方法が開示されている。この文献によれば、上記の製造方法により得られる半導体封止用樹脂は、ポリマレイミドと、上記の付加重合物との相溶性が良いこと、更には半導体封止用樹脂を用いた組成物の硬化物特性(例えば、高いガラス転移温度、耐湿性及び熱時の強度)に優れ、半導体封止用樹脂組成物として信頼性の高いものであることが開示されている。この文献には、下記式(III)中、b成分は、ポリマレイミドとの樹脂生成反応においてマレイミド基と反応し、ポリマレイミドとポリシロキサンとの相溶性を改善する重要な成分であると開示されている。
【化1】
(式中、R
1は、アルキレン基又はフェニレン基を表し、R
2は、各々独立して、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1~100の整数を表す。)
【化2】
(式中、R
4は、エーテル結合、メチレン基、プロピリデン基、又は直接結合(単結合)を表す。)
【化3】
(上記式中、a,b,及びcは、それぞれ各組成の百分率を表し、0<a,b,c<100かつa+b+c=100である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-149154号公報
【文献】特開平4-4213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、分子構造中にエポキシ基を有するシリコーン化合物と、マレイミド化合物のような熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物は、低熱膨張性に優れる。しかしながら、本発明者らは、上記樹脂組成物において、上記シリコーン化合物と熱硬化性樹脂との相溶性が十分でないことに起因して成形性に問題があることを見出した。更に、本発明者らは、上記樹脂組成物は、耐薬品性及び金属箔張積層板とする際の金属箔ピール強度(例えば、銅箔ピール強度)が十分ではないことを見出した。
【0007】
一方、特許文献2に記載の樹脂組成物は、半導体封止用に用いられるものであって、プリント配線板の特性として求められる低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性については検討されていない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を有する硬化性組成物、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、アルケニルフェノールと、エポキシ変性シリコーンと、該エポキシ変性シリコーン以外のエポキシ化合物と、環状カルボジイミド化合物とを含有する硬化性組成物、あるいは、アルケニルフェノールに由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーンに由来する構成単位と、該エポキシ変性シリコーン以外のエポキシ化合物に由来する構成単位とを含有する重合体と、環状カルボジイミド化合物とを含有する硬化性組成物であれば、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は次のとおりである。
〔1〕
アルケニルフェノール(A)と、エポキシ変性シリコーン(B)と、該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)と、を含有する、
硬化性組成物。
〔2〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、下記式(D1)で表される環状構造を有し、
前記環状構造を形成する原子数が8~50である、
〔1〕に記載の硬化性組成物。
【化4】
(式中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基であり、前記結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
〔3〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.0~15質量部である、
〔1〕又は〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕
前記アルケニルフェノール(A)の1分子当たりの平均フェノール基数が1以上3未満であり、前記エポキシ変性シリコーン(B)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満であり、前記エポキシ化合物(C)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満である、
〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔5〕
前記アルケニルフェノール(A)が、ジアリルビスフェノール及び/又はジプロペニルビスフェノールを含有する、
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔6〕
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有する、
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔7〕
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、下記式(B1)で表されるエポキシ変性シリコーンを含有する、
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化5】
(式中、R
1は、各々独立に、単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を示し、R
2は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基を示し、nは、0~100の整数を示す。)
〔8〕
前記エポキシ化合物(C)が、下記式(b2)で表される化合物を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化6】
(式(b2)中、R
aは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を示す。)
〔9〕
アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)に由来する構成単位とを含有する重合体(E)と、
環状カルボジイミド化合物(D)と、を含有する、
硬化性組成物。
〔10〕
前記重合体(E)の重量平均分子量が、3.0×10
3~5.0×10
4である、
〔9〕に記載の硬化性組成物。
〔11〕
前記重合体(E)の含有量が、樹脂固形分100質量%に対して、5~50質量%である、
〔9〕又は〔10〕に記載の硬化性組成物。
〔12〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、下記式(D1)で表される環状構造を有し、
前記環状構造を形成する原子数が8~50である、
〔9〕~〔11〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化7】
(式中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基であり、前記結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
〔13〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.0~15質量部である、
〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔14〕
前記アルケニルフェノール(A)の1分子当たりの平均フェノール基数が1以上3未満であり、前記エポキシ変性シリコーン(B)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満であり、前記エポキシ化合物(C)の1分子当たりの平均エポキシ基数が1以上3未満である、
〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔15〕
前記アルケニルフェノール(A)が、ジアリルビスフェノール及び/又はジプロペニルビスフェノールを含有する、
〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔16〕
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有する、
〔9〕~〔15〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔17〕
前記エポキシ変性シリコーン(B)が、下記式(B1)で表されるエポキシ変性シリコーンを含有する、
〔9〕~〔16〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化8】
(式中、R
1は、各々独立に、単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を示し、R
2は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基を示し、nは、0~100の整数を示す。)
〔18〕
前記エポキシ化合物(C)が、下記式(b2)で表される化合物を含む、〔9〕~〔17〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化9】
(式(b2)中、R
aは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を示す。)
〔19〕
アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)及び該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)からなる群より選択される1種以上を更に含有する、
〔9〕~〔18〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔20〕
前記エポキシ化合物(C)が、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を含む、〔19〕に記載の硬化性組成物。
〔21〕
マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、前記アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)及びアルケニル置換ナジイミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(H)を更に含有する、
〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔22〕
無機充填材を更に含有し、
前記無機充填材が、シリカ類、ベーマイト及びアルミナからなる群より選択される1種類以上を含む、
〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔23〕
基材と、
該基材に含浸又は塗布された、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の硬化性組成物と、を含む、
プリプレグ。
〔24〕
〔23〕に記載のプリプレグを含む積層体と、
該積層体の片面又は両面に配置された金属箔と、を含む、
金属箔張積層板。
〔25〕
〔23〕に記載のプリプレグを含む絶縁層と、
該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含む、
プリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を有する硬化性組成物、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
本明細書にいう「樹脂固形分」とは、特段の記載がない限り、本実施形態の硬化性組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、樹脂固形分100質量部とは、硬化性組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。また、樹脂固形分100質量%とは、硬化性組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量%であることをいう。
【0014】
本明細書にいう「相溶性」とは、以下のことをいう。詳細を後述する第1実施形態の組成物においては、「優れた相溶性」とは、アルケニルフェノール(A)と、エポキシ変性シリコーン(B)と、エポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)とを含有する混合物(例えば、ワニス)において、液相分離が生じないことをいう。また、詳細を後述する第2実施形態の組成物において、「優れた相溶性」とは、重合体(E)と環状カルボジイミド化合物(D)とを含む混合物(例えば、ワニス)において、液相分離が生じないことをいう。本実施形態の硬化性組成物は、相溶性に優れることに起因して、成形の過程における液相分離が抑制され、外観に優れる成形体を得られるほか、得られた成形体の物性の等方性にも優れる傾向にある。なお、本明細書において、「本実施形態の硬化性組成物」と称するときは、特段の断りがない限り、「第1実施形態の硬化性組成物」及び「第2実施形態の硬化性組成物」の双方を包含するものとする。
【0015】
<第1実施形態>
[第1実施形態の硬化性組成物]
第1実施形態の硬化性組成物は、アルケニルフェノール(A)と、エポキシ変性シリコーン(B)と、該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)(以下、単に「エポキシ化合物(C)」ともいう。)と、環状カルボジイミド化合物(D)とを含有する。これら成分を含む第1実施形態の硬化性組成物は、優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を有する。各特性が向上する要因は次のように考えられるが、要因はこれに限定されない。環状カルボジイミド化合物(D)は高い融点を有するため、例えば、プリプレグ作成時の温度(約140℃)においては、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)等の各熱硬化性樹脂との反応性が低く、これにより、硬化性組成物の流動特性の悪化が抑制される。そして、より温度が高いプレス成形時において、環状カルボジイミド化合物(D)が溶融し、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)等の熱硬化性樹脂と環状カルボジイミド化合物(D)とが反応することにより、架橋密度のより高い構造体を形成するため、低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性が向上する。
【0016】
[アルケニルフェノール(A)]
アルケニルフェノール(A)は、1つ以上のアルケニル基がフェノール性芳香環に直接結合した構造を有する化合物であれば特に限定されない。本実施形態の硬化性組成物は、アルケニルフェノール(A)を含有することにより、優れた相溶性を発現でき、これにより、耐熱性及び低熱膨張性のバランスが向上する。
【0017】
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~30のアルケニル基が挙げられる。なかでも、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、アルケニル基は、アリル基及び/又はプロペニル基であることが好ましく、アリル基であることがより好ましい。1つのフェノール性芳香環に直接結合しているアルケニル基の数は、特に限定されず、例えば、1~4である。本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1つのフェノール性芳香環に直接結合しているアルケニル基の数は、好ましくは1~2であり、より好ましくは1である。また、アルケニル基のフェノール性芳香環への結合位置も特に限定されないが、オルト位(2,6位)であることが好ましい。
【0018】
フェノール性芳香環は、1つ以上の水酸基が芳香環に直接結合したものをいい、フェノール環やナフトール環が挙げられる。1つのフェノール性芳香環に直接結合している水酸基の数は、特に限定されず、例えば1~2であり、好ましくは1である。
【0019】
フェノール性芳香環は、アルケニル基以外の置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数3~10の分岐状アルキル基、炭素数3~10の環状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3~10の分岐状アルコキシ基、炭素数3~10の環状アルコキシ基、及びハロゲン原子が挙げられる。フェノール性芳香環がアルケニル基以外の置換基を有する場合、1つのフェノール性芳香環に直接結合している当該置換基の数は、特に限定されず、例えば1~2である。また、当該置換基のフェノール性芳香環への結合位置も特に限定されない。
【0020】
アルケニルフェノール(A)は、1つ以上のアルケニル基がフェノール性芳香環に直接結合した構造を1つ又は複数有してもよい。本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、アルケニルフェノール(A)は、1つ以上のアルケニル基がフェノール性芳香環に直接結合した構造を1つ又は2つ有することが好ましく、2つ有することが好ましい。
【0021】
アルケニルフェノール(A)は、例えば、下記式(A1)又は下記式(A2)で表される化合物であってもよい。
【化10】
(式中、Rxaは、各々独立して、炭素数2~8のアルケニル基を表し、Rxbは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を表し、Rxcは、各々独立して、炭素数4~12の芳香環を表し、Rxcは、ベンゼン環と縮合構造を形成してもよく、Rxcは、存在していてもよく、存在していなくてもよく、Aは、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数7~16のアラルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、フルオレニリデン基、スルホニル基、酸素原子、硫黄原子又は直接結合(単結合)を表し、Rxcが存在しない場合は、1つのベンゼン環にRxa及び/又はRxbの基を2つ以上有してもよい。)
【化11】
(式中、Rxdは、各々独立して、炭素数2~8のアルケニル基を表し、Rxeは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を表し、Rxfは、炭素数4~12の芳香環を表し、Rxfは、ベンゼン環と縮合構造を形成してもよく、Rxfは、存在していても、存在していなくてもよく、Rxfが存在しない場合は、1つのベンゼン環にRxd及び/又はRxeの基を2つ以上有してもよい。)
【0022】
式(A1)及び式(A2)中、Rxa及びRxdとして表される炭素数2~8のアルケニル基としては、特に制限されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0023】
式(A1)及び式(A2)中、Rxc及びRxfで表される基がベンゼン環と縮合構造を形成している場合としては、例えば、フェノール性芳香環として、ナフトール環を含む化合物が挙げられる。また、式(A1)及び式(A2)中、Rxc及びRxfで表される基が存在しない場合としては、例えば、フェノール性芳香環として、フェノール環を含む化合物が挙げられる。
【0024】
式(A1)及び式(A2)中、Rxb及びRxeとして表される炭素数1~10のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0025】
式(A1)中、Aとして表される炭素数1~6のアルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。Aとして表される炭素数7~16のアラルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、式:-CH2-Ar-CH2-、-CH2-CH2-Ar-CH2-CH2-、又は式:-CH2-Ar-CH2-CH2-(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基を表す。)で表される基が挙げられる、Aとして表される炭素数6~10のアリーレン基としては、特に制限されないが、例えば、フェニレン環が挙げられる。
【0026】
式(A2)で表される化合物は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、Rxfがベンゼン環であること(ジヒドロキシナフタレン骨格を含む化合物)が好ましい。
【0027】
アルケニルフェノール(A)は、相溶性を一層向上させる観点から、ビスフェノール類の2つのフェノール性芳香環にそれぞれ1つのアルケニル基が結合したアルケニルビスフェノールであることが好ましい。同様の観点から、アルケニルビスフェノールは、ビスフェノール類の2つのフェノール性芳香環にそれぞれ1つのアリル基が結合したジアリルビスフェノール、及び/又はビスフェノール類の2つのフェノール性芳香環にそれぞれ1つのプロペニル基が結合したジプロペニルビスフェノールであることが好ましい。
【0028】
ジアリルビスフェノールとしては、特に制限されないが、例えば、o,o’-ジアリルビスフェノールA(大和化成工業株式会社製品の「DABPA」)、o,o’-ジアリルビスフェノールF、o,o’-ジアリルビスフェノールS、o,o’-ジアリルビスフェノールフルオレンが挙げられる。ジプロペニルビスフェノールとしては、特に制限されないが、例えば、o,o’-ジプロペニルビスフェノールA(群栄化学工業株式会社の「PBA01」)、o,o’- ジプロペニルビスフェノールF、o,o’-ジプロペニルビスフェノールS、o,o’-ジプロペニルビスフェノールフルオレンが挙げられる。
【0029】
アルケニルフェノール(A)の1分子当たりの平均フェノール基数は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1以上3未満であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。平均フェノール基数は、以下の式により算出される。
【数1】
【0030】
式中、Aiは、分子中にi個のフェノール基を有するアルケニルフェノールのフェノール基数を表し、Xiは、分子中にi個のフェノール基を有するアルケニルフェノールのアルケニルフェノール全体に占める割合を表し、X1+X2+…Xn=1である。
【0031】
[エポキシ変性シリコーン(B)]
エポキシ変性シリコーン(B)は、エポキシ基含有基により変性されたシリコーン化合物又は樹脂であれば特に限定されない。本実施形態の硬化性組成物は、エポキシ変性シリコーン(B)を含有することにより、低熱膨張性及び耐薬品性に優れる。
【0032】
シリコーン化合物又は樹脂は、シロキサン結合が繰り返し形成されたポリシロキサン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。ポリシロキサン骨格は、直鎖状の骨格であってもよく、環状の骨格であってもよく、網目状の骨格であってもよい。このなかでも、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、直鎖状の骨格であることが好ましい。
【0033】
エポキシ基含有基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(a1)で表される基が挙げられる。
【化12】
(式中、R
0は、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~5のアルキレン基)を表し、Xは、下記式(a2)で表される1価の基又は下記式(a3)で表される1価の基を表す。)
【化13】
【化14】
【0034】
エポキシ変性シリコーン(B)は、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有することが好ましい。エポキシ変性シリコーン(B)は、上記範囲内にあるエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーンを含有することにより、一層優れた相溶性を有することから、低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく一層向上できる傾向にある。上記エポキシ当量は、同様の観点から、145~245g/molであることがより好ましく、150~240g/molであることがさらに好ましい。
【0035】
エポキシ変性シリコーン(B)は、熱硬化性樹脂との相溶性により一層優れ、低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく一層向上できる観点から、2種以上のエポキシ変性シリコーンを含有することが好ましい。この場合、2種以上のエポキシ変性シリコーンは、それぞれ異なるエポキシ当量を有することが好ましく、50~350g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(以下、「低当量エポキシ変性シリコーン(B1’)」ともいう。)と、400~4000g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(以下、「高当量エポキシ変性シリコーン(B2’)」ともいう。)とを含有することがより好ましく、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(低当量エポキシ変性シリコーン(B1’’))と、450~3000g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(高当量エポキシ変性シリコーン(B2’’))とを含有することがさらに好ましい。
【0036】
エポキシ変性シリコーン(B)が2種以上のエポキシ変性シリコーンを含有する場合、エポキシ変性シリコーン(B)の平均エポキシ当量は、140~3000g/molであることが好ましく、250~2000g/molであることがより好ましく、300~1000g/molであることがさらに好ましい。平均エポキシ当量は、以下の式により算出される。
【数2】
(式中、Eiは、2種以上のエポキシ変性シリコーンのうちの1種のエポキシ変性シリコーンのエポキシ当量を表し、Wiは、エポキシ変性シリコーン(B)中の上記エポキシ変性シリコーンの割合を表し、W
1+W
2+…W
n=1である。)
【0037】
エポキシ変性シリコーン(B)は、一層優れた相溶性を有し、低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく一層向上できる観点から、下記式(B1)で表されるエポキシ変性シリコーンを含有することが好ましい。
【化15】
(式中、R
1は、各々独立に、単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を示し、R
2は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基を示し、nは、0~100の整数を示す。)
【0038】
式(B1)中、R1で表されるアルキレン基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~4である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基が挙げられる。これらの中でも、R1は、プロピレン基であることが好ましい。
【0039】
式(B1)中、R1で表されるアリーレン基は、置換基を有していてもよい。アリーレン基の炭素数としては、好ましくは6~40であり、より好ましくは6~20である。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、シクロヘキシルフェニレン基、ヒドロキシフェニレン基、シアノフェニレン基、ニトロフェニレン基、ナフチリレン基、ビフェニレン基、アントリレン基、ピレニレン基、及びフルオレニレン基等が挙げられる。これらの基には、エーテル結合、ケトン結合、あるいはエステル結合を含んでいてもよい。
【0040】
式(B1)中、R
1で表されるアラルキレン基の炭素数は、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~13である。アラルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(X-I)で表される基が挙げられる。
【化16】
(式(X-I)中、*は、結合手を表す。)
【0041】
式(B1)中、R1で表される基は、更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数3~10の分岐状アルキル基、炭素数3~10の環状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3~10の分岐状アルコキシ基、炭素数3~10の環状アルコキシ基が挙げられる。これらの中でも、R1は、プロピレン基であることが特に好ましい。
【0042】
式(B1)中、R2は、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基を表す。上記アルキル基及びフェニル基は、置換基を有してもよい。炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。アルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。これらの中でも、R2は、メチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0043】
式(B1)中、nは0以上の整数を表し、例えば、1~100である。一層優れた相溶性を有し、低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく一層向上できる観点から、nは、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは20以下である。
【0044】
エポキシ変性シリコーン(B)は、熱硬化性樹脂との相溶性により一層優れ、低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく一層向上させる観点から、式(B1)で表されるエポキシ変性シリコーンを2種類以上含有することが好ましい。この場合、2種類以上含有するエポキシ変性シリコーンは、それぞれ異なるnを有することが好ましく、式(B1)においてnが1~2であるエポキシ変性シリコーンと、式(B1)においてnが5~20であるエポキシ変性シリコーンとを含有することがより好ましい。
【0045】
エポキシ変性シリコーン(B)の1分子当たりの平均エポキシ基数は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1以上3未満であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。平均エポキシ基数は、以下の式により算出される。
【数3】
(式中、Biは、分子中にi個のエポキシ基を有するエポキシ変性シリコーンのエポキシ基数を表し、Yiは、分子中にi個のエポキシ基を有するエポキシ変性シリコーンのエポキシ変性シリコーン全体に占める割合を表し、Y
1+Y
2+…Y
n=1である。)
【0046】
エポキシ変性シリコーン(B)の含有量は、一層優れた低熱膨張性及び耐薬品性を発現できる観点から、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)の合計100質量%に対して、5~95質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、40~85質量%であることが更に好ましく、50~80質量%であることが更により好ましい。
【0047】
エポキシ変性シリコーン(B)としては、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造した製造品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製品の「X-22-163」、「KF-105」が挙げられる。
【0048】
[エポキシ化合物(C)]
エポキシ化合物(C)は、エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物であり、より具体的には、ポリシロキサン骨格を有しないエポキシ化合物である。本実施形態の硬化性組成物は、エポキシ化合物(C)を含有することにより、より優れた相溶性、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる。
【0049】
エポキシ化合物(C)としては、エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物であれば特に限定されない。本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)としては、典型的には、1分子中にエポキシ基を2つ有する2官能エポキシ化合物や1分子中にエポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ化合物を使用することができる。エポキシ化合物(C)は、一層優れた相溶性、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる観点から、2官能エポキシ化合物及び/又は多官能エポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0050】
本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)としては、特に限定されないが、下記式(3a)で表される化合物を用いることができる。
【化17】
(式(3a)中、Ar
3は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar
4は、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環を表し、R
3aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、kは1~50の整数を表し、
ここで、Ar
3におけるベンゼン環又はナフタレン環は、さらに一又は複数の置換基を有してもよく、当該置換基は、図示しないグリシジルオキシ基であってもよく、その他の置換基、例えば、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基等であってもよく、
Ar
4におけるベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環は、さらに一又は複数の置換基を有してもよく、当該置換基は、グリシジルオキシ基であってもよく、その他の置換基、例えば、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基等であってもよい。)
【0051】
上記式(3a)で表される化合物中、2官能エポキシ化合物としては、例えば、下記式(b1)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
(式(b1)中、Ar
3は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar
4は、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環を表し、R
3aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、
ここで、Ar
3におけるベンゼン環又はナフタレン環は、さらに一又は複数の置換基を有してもよく、当該置換基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基やフェニル基等のグリシジルオキシ基以外の置換基であってもよく、
Ar
4におけるベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環は、さらに一又は複数の置換基を有してもよく、当該置換基は、例えば、炭素数1~5のアルキル基やフェニル基等のグリシジルオキシ基以外の置換基であってもよい。)
【0052】
式(3a)で表される化合物は、式(3a)においてAr
4が少なくともグリシジルオキシ基で置換された、フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記式(3-1)で表される構造を有する化合物(ナフタレン骨格を有するナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂)や、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【化19】
(式中、Ar
31は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar
41は、各々独立して、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環を表し、R
31aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、pは、0~2の整数であり、好ましくは0又は1を表し、kzは1~50の整数を表し、各環は、グリシジルオキシ基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はフェニル基)を有してもよく、Ar
31及びAr
41の少なくとも一方はナフタレン環を表す。)
【0053】
式(3-1)で表される構造を有する化合物としては、式(3-2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化20】
(式中、Rは、メチル基を表し、kzは、上記式(3-1)中のkzと同義である。)
【0054】
ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記式(NE)で示されるクレゾール/ナフトールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。なお、下記式(NE)で示される化合物は、クレゾールノボラックエポキシの構成単位と、ナフトールノボラックエポキシの構成単位とのランダム共重合体であり、クレゾールエポキシ及びナフトールエポキシのいずれもが末端になりうる。
【化21】
【0055】
前記式(NE)におけるm及びnは、各々、1以上の整数を表す。m及びnの上限及びその比については特に限定されないが、低熱膨張性の観点から、m:n(ここで、m+n=100)として、30~50:70~50であることが好ましく、45~55:55~45がより好ましい。
【0056】
ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製品の「NC-7000」、「NC-7300」、「NC-7300L」や、DIC株式会社製品の「HP-9540」、「HP-9500」等が挙げられ、「HP-9540」がとりわけ好ましい。
【0057】
式(3a)で表される化合物は、上述したフェノール類ノボラック型エポキシ樹脂に該当しない化合物(以下、「アラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)であってもよい。
アラルキル型エポキシ樹脂としては、式(3a)においてAr3がナフタレン環であり、Ar4がベンゼン環である化合物(「ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)、及び式(3a)においてAr3がベンゼン環であり、Ar4がビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)であることが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0058】
ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-5000」、「HP-9900」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製品の「ESN-375」、「ESN-475」等が挙げられる。
【0059】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、下記式(3b)で表される化合物であることが好ましい。
【化22】
(式中、kaは、1以上の整数を表し、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。)
【0060】
上記式(3b)で表される化合物中、2官能エポキシ化合物としては、例えば、式(3b)においてkaが1である化合物が挙げられる。
【0061】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製品の「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3000FH」等が挙げられる。
【0062】
また、本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)としては、ナフタレン型エポキシ樹脂(式(3a)で表される化合物に該当するものを除く。)を用いることが好ましい。ナフタレン型エポキシ樹脂としては、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を一層向上させる観点から、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0063】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を一層向上させる観点から、下記式(3-3)で表される2官能エポキシ化合物又は下記式(3-4)で表される多官能エポキシ化合物、あるいは、それらの混合物であることが好ましい。
【化23】
(式中、R
13は、各々独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)、又は炭素数2~3のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基又はプロペニル基)を表す。)
【化24】
(式中、R
14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)、又は炭素数2~3のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基又はプロペニル基)を表す。)
【0064】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-6000」、「EXA-7300」、「EXA-7310」、「EXA-7311」、「EXA-7311L」、「EXA7311-G3」、「EXA7311-G4」、「EXA-7311G4S」、「EXA-7311G5」等が挙げられ、とりわけHP-6000が好ましい。
【0065】
ナフタレン型エポキシ樹脂の上記したもの以外の例としては、以下に限定されないが、下記式(b3)で表される化合物が挙げられる。
【化25】
(式(b3)中、R
3bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)、アラルキル基、ベンジル基、ナフチル基、少なくとも1つのグリシジルオキシ基を含有するナフチル基又は少なくとも1つのグリシジルオキシ基を含有するナフチルメチル基を表し、nは、0以上の整数(例えば、0~2)を表す。)
【0066】
上記式(b3)で表される化合物の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-4032」(上記式(b3)においてn=0)、「HP-4710」(上記式(b3)において、n=0であり、R3bが少なくとも1つのグリシジルオキシ基を含有するナフチルメチル基)等が挙げられる。
【0067】
また、本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)としては、ビフェニル型エポキシ樹脂(上述したエポキシ化合物(C)に該当するものを除く。)を用いることが好ましい。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記式(b2)で表される化合物(化合物(b2))が挙げられる。
【化26】
(式(b2)中、Raは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を表す。)
【0068】
式(b2)中、炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0069】
ビフェニル型エポキシ樹脂が、化合物(b2)である場合、ビフェニル型エポキシ樹脂は、アルキル基であるRaの数が異なる化合物(b2)の混合物の形態であってもよい。具体的には、アルキル基であるRaの数が異なるビフェニル型エポキシ樹脂の混合物であることが好ましく、アルキル基であるRaの数が0である化合物(b2)と、アルキル基であるRaの数が4である化合物(b2)の混合物であることがより好ましい。
【0070】
また、本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(上述したエポキシ化合物(C)に該当するものを除く。)を用いることができる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記式(3-5)で表される化合物が挙げられる。
【化27】
(式中、R
3cは、各々独立し、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、k2は、0~10の整数を表す。)
【0071】
上記式(3-5)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式(b4)で表される化合物であってもよい。
【化28】
(式(b4)中、R
3cは、各々独立し、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)を表す。)
【0072】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造した製造品を用いてもよい。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業株式会社製品の「EPICRON HP-7200L」、「EPICRON HP-7200」、「EPICRON HP-7200H」、「EPICRON HP-7000HH」等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、エポキシ化合物(C)は、一層優れた耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる観点から、式(3a)で表されるエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、この場合において、式(3a)で表されるエポキシ樹脂はナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含み、ナフタレン型エポキシ樹脂はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0074】
エポキシ化合物(C)としては、前述したエポキシ化合物に該当しない、他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
他のエポキシ樹脂としては、上記した中でも、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を一層向上させる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことができ、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ジアリルビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールE型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールS型エポキシ樹脂等)等を用いることができる。
【0075】
エポキシ化合物(C)としては、上述したエポキシ化合物及びエポキシ樹脂のうち、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0076】
エポキシ化合物(C)の1分子当たりの平均エポキシ基数は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1以上3未満であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。平均エポキシ基数は、以下の式により算出される。
【数4】
(式中、Ciは、分子中にi個のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ基数を表し、Ziは、分子中にi個のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ化合物全体に占める割合を表し、Z
1+Z
2+…Z
n=1である。)
【0077】
エポキシ化合物(C)の含有量は、一層優れた相溶性、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる観点から、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)の合計量100質量%に対して、5~95質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、15~60質量%であることがさらに好ましく、20~50質量%であることが特に好ましい。
【0078】
[環状カルボジイミド化合物(D)]
環状カルボジイミド化合物(D)は、分子内に1つ以上の環状構造を有し、1つの環状構造中に1つのカルボジイミド基を有する化合物であれば特に限定されない。本実施形態の硬化性組成物は、環状カルボジイミド化合物(D)を含有することにより、流動性を悪化させることなく、十分な成形性を維持しながら、ガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性、低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性に優れる。
【0079】
環状構造は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有し、その第1窒素原子と第2窒素原子とが結合基により結合されている。環状構造を形成する原子数は、8~50であることが好ましく、10~30であることがより好ましく、10~20であることが更に好ましい。ここで、環状構造を形成する原子数は、環状構造を直接構成する原子の数を意味する。例えば、8員環であれば環状構造を形成する原子数は8であり、50員環であれば環状構造を形成する原子数は50である。環状構造を形成する原子数が8以上であることにより、環状カルボジイミド化合物の安定性が良好であり、保管し易く、使用し易いという利点を備える。また、環状構造を形成する原子数が50を超える環状カルボジイミド化合物の合成は困難である。
【0080】
環状カルボジイミド化合物(D)は、下記式(D1)で表される環状構造を含むことが好ましい。
【化29】
(式(D1)中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基である。結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
【0081】
ヘテロ原子とは、O、N、S及びPをいう。結合基のうち、2つの価は、環状構造を形成するために使用される。Lが3価又は4価の結合基である場合、Lは、単結合、二重結合、原子又は原子団を介して、ポリマー又は他の環状構造と結合している。
【0082】
(結合基L)
結合基Lは、下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される2~4価の結合基であることが好ましい。
【化30】
【0083】
式(1-1)中、Ar101及びAr102は、各々独立に、ヘテロ原子及び置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数5~15の芳香族炭化水素基である。
【0084】
Ar101及びAr102で表される芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、へテロ原子を含有する複素環構造を有してもよい、炭素数5~15のアリーレン基、炭素数5~15のアレーントリイル基、炭素数5~15のアレーンテトライル基が挙げられる。ここで、アリーレン基(2価)としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。アレーントリイル基(3価)としては、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。アレーンテトライル基(4価)としては、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0085】
Ar101及びAr102としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基又はベンゼンテトライル基であることが好ましく、フェニレン基又はベンゼントリイル基であることがより好ましい。
【0086】
式(1-2)中、R101及びR102は、各々独立に、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基(脂肪族炭化水素基)、2~4価の炭素数3~20の脂環族基(脂環式炭化水素基)及びこれらの組み合わせ、あるいはこれらの脂肪族基及び/又は脂環族基と2~4価の炭素数5~15の芳香族基(芳香族炭化水素基)の組み合わせが挙げられる。
【0087】
R101及びR102で表される脂肪族基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルカントリイル基、炭素数1~20のアルカンテトライル基等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基等が挙げられる。アルカントリイル基としては、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基等が挙げられる。アルカンテトライル基としては、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基等が挙げられる。これらの脂肪族基は置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0088】
脂環族基としては、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルカントリイル基、炭素数3~20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基等が挙げられる。シクロアルカントリイル基としては、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基等が挙げられる。シクロアルカンテトライル基としては、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基等が挙げられる。これらの脂環族基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0089】
芳香族基としては、へテロ原子を含有する複素環構造を有してもよい、炭素数5~15のアリーレン基、炭素数5~15のアレーントリイル基、炭素数5~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。アレーントリイル基(3価)としては、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。アレーンテトライル基(4価)としては、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が挙げられる。これらの芳香族基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0090】
R101及びR102としては、各々独立して、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基、フェニレン基又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基、フェニレン基又はエーテル基であることがより好ましい。
【0091】
式(1-1)及び(1-2)中、X1及びX2は、各々独立に、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数5~15の芳香族基又はこれらの組み合わせである。
【0092】
X1及びX2における脂肪族基、脂環族基及び芳香族基の例としては、上記R101及びR102で例示されたものと同じものが挙げられる。X1及びX2は、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基又はエーテル基がより好ましい。
【0093】
式(1-1)及び(1-2)において、s及びkは、各々独立して0~10であることが好ましく、0~3であることがより好ましく、0~1であることが更に好ましい。s及びkが、それぞれ10を超える環状カルボジイミド化合物の合成は困難であり、コストが増大する。なお、s又はkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1又はX2は、他のX1又はX2と異なっていてもよい。
【0094】
式(1-3)中、X3は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数5~15の芳香族基又はこれらの組み合わせである。
【0095】
X3における脂肪族基、脂環族基及び芳香族基の例としては、上記のR101、R102、X1及びX2で例示されたものと同じものが挙げられる。X3としては、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基又はエーテル基であることがより好ましい。
【0096】
また、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3は、O原子、N原子、S原子及びP原子から選択されるヘテロ原子を有していてもよい。但し、ヘテロ原子がN原子の場合には、そのN原子はニトロ基及び/又はアミド基として存在する。
【0097】
また、Lが2価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3の全ては、2価の基である。Lが3価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの1つは、3価の基である。Lが4価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの1つは、4価の基であるか、又はAr101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの2つが3価の基である。
【0098】
Lが3価又は4価の結合基であって、Lがカルボジイミド基を有する他の環状構造と結合している態様としては、式(1)で表される2個以上の環状構造が、スピロ環構造、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10の芳香族環構造、炭素数4~12のシクロアルカン環構造等から選ばれる炭素数1~15(好ましくは1~12)の共有部分を介して結合している態様が挙げられる。このような態様の具体例を下記式(2)、(4)、(5)に示す。
【化31】
【0099】
環状カルボジイミド化合物(D)は、下記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物であってもよい。なお、下記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物は、分子中に2つ以上のカルボジイミド基を有してもよく、1つのカルボジイミド基を有してもよい。
【化32】
(式(i)中、Xaは、下記式(i-1)~(i-3)で表される2価の基又は下記式(i-4)で表される4価の基である。Xaが2価のときqは0であり、Xaが4価のときqは1である。Ar
201~Ar
204は各々独立に芳香族炭化水素基である。これらの芳香族炭化水素基は炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を置換基として有してもよい。)
【化33】
(式(i-1)中、nは1~6の整数である。)
【化34】
(式(i-2)中、m及びnは、各々独立に0~3の整数である。)
【化35】
(式(i-3)中、R
301およびR
302は各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基を表す。)
【化36】
【0100】
また、上記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物としては、以下の構造式を有する化合物がいくつか例示される。
【化37】
【0101】
環状カルボジイミド化合物(D)は、ガラス転移温度(Tg)、耐薬品性及び耐熱性に一層優れる観点から、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含むことが好ましい。環状カルボジイミド化合物(D)は、硬化性能に一層優れる観点から、1分子内に2つ若しくは3つのカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含むことがより好ましい。これらの多価環状カルボジイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0102】
多価環状カルボジイミド化合物としては、例えば、上述したカルボジイミド化合物のうち、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有するものが挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)、耐薬品性及び耐熱性に一層優れる観点から、下記式(D2)で表される化合物であることが好ましい。
【化38】
(式(D2)中、Xは、下記式(3)で表される4価の基であり、Ar
1~Ar
4は、各々独立に、フェニレン基(例えば、オルトフェニレン基)又はナフタレン-ジイル基(例えば、1,2-ナフタレン-ジイル基)である2価の連結基であり、該連結基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの連結基は、ヘテロ原子を含む複素環構造を有していてもよい。)
【化39】
【0103】
環状カルボジイミド化合物(D)は、耐熱性に一層優れる観点から、下記式(D3)で表される化合物であることが好ましい。
【化40】
【0104】
これらの環状カルボジイミド化合物(D)は、公知の方法(例えば、国際公開第2010/071213号パンフレットに記載の方法)により製造することができる。
【0105】
環状カルボジイミド化合物(D)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、1.0~30質量部であることが好ましく、2.0~15質量部であることがより好ましく、2.5~12.0質量部であることがさらに好ましい。環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、1.0質量部以上であることにより、耐熱性、低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性に一層優れる傾向にあり、環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、30質量部以下であることにより、難燃性に一層優れる傾向にある。
【0106】
[化合物(H)]
本実施形態の硬化性組成物は、低熱膨張性、耐薬品性及び銅箔ピール強度をより一層向上させる観点から、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)及びアルケニル置換ナジイミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(H)を更に含有することが好ましい。化合物(H)としては、特に限定されないが、2官能以上であることが好ましく、3官能以上の多官能であってもよい。
【0107】
本実施形態の硬化性組成物中の化合物(H)の含有量は、樹脂固形分100質量%に対して、好ましくは10~80質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましい。
【0108】
[マレイミド化合物]
本実施形態の硬化性組成物は、低熱膨張性及び耐薬品性を一層向上させる観点から、マレイミド化合物を含むことが好ましい。マレイミド化合物としては、1分子中に1つ以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1分子中にマレイミド基を1つ有するモノマレイミド化合物(例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等)、1分子中にマレイミド基を2つ以上有するポリマレイミド化合物(例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン)、m-フェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、下記式(H1a)で表されるマレイミド化合物、下記式(H1b)で表されるマレイミド化合物、これらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等が挙げられる。
【化41】
(式中、R
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n
1は1以上の整数を表す。)
【0109】
n1は、1以上であり、好ましくは1~100であり、より好ましくは1~10である。
【0110】
これらのマレイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、低熱膨張性及び耐薬品性をより一層向上させる観点から、マレイミド化合物は、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、式(H1a)で表されるマレイミド化合物及び下記式(H1b)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化42】
(式(H1b)中、R
13は各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示し、n
4は1以上10以下の整数を示す。)
【0111】
マレイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。マレイミド化合物の市販品としては、ケイ・アイ化成株式会社製品の、「BMI-70」、「BMI-80」、「BMI-1000P」、大和化成工業株式会社製品の「BMI-3000」、「BMI-4000」、「BMI-5100」、「BMI-7000」、「BMI-2300」、日本化薬株式会社製品の「MIR-3000」等が挙げられる。
【0112】
マレイミド化合物の含有量は、低熱膨張性及び耐薬品性を一層向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~50質量部であり、5~40質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることがさらに好ましい。
【0113】
[シアン酸エステル化合物]
本実施形態の硬化性組成物は、低熱膨張性及び銅箔ピール強度を一層向上させる観点から、シアン酸エステル化合物を含むことが好ましい。シアン酸エステル化合物としては、1分子中に2つ以上のシアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(H2a)で表される等のナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、式(H2a)で表される化合物を除く下記式(H2b)で表される化合物等のノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノール型シアン酸エステル化合物、ビス(3,3-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、2、2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンが挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。本実施形態においては、耐熱性、低熱膨張性及び銅箔ピール強度の観点から、シアン酸エステル化合物が、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物及び/又はノボラック型シアン酸エステル化合物等の多官能シアン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
【化43】
(式中、R
6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n
2は1以上の整数を表す。)
【化44】
(式中、Ryaは、各々独立して、炭素数2~8のアルケニル基又は水素原子を表し、Rybは、各々独立して、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を表し、Rycは、各々独立して、炭素数4~12の芳香環を表し、Rycは、ベンゼン環と縮合構造を形成してもよく、Rycは、存在していてもよく、存在していなくてもよく、A
1aは、各々独立して、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数7~16のアラルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、フルオレニリデン基、スルホニル基、酸素原子、硫黄原子、又は直接結合(単結合)を表し、Rycが存在しない場合は、1つのベンゼン環にRya及び/又はRybの基を2つ以上有してもよい。nは、1~20の整数を表す。)
【0114】
シアン酸エステル化合物は、これらの中でも、耐熱性、低熱膨張性及び銅箔ピール強度を一層向上させる観点から、式(H2a)及び/又は式(H2b)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0115】
式(H2a)中、n2は、1以上の整数を表し、1~20の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましい。
【0116】
式(H2b)中、Ryaとして表される炭素数2~8のアルケニル基としては、特に制限されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0117】
式(H2b)中、Rybとして表される炭素数1~10のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0118】
式(H2b)中、A1aとして表される炭素数1~6のアルキレン基としては、特に制限されないが、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。また、式(H2b)中、A1aとして表される炭素数7~16のアラルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、式:-CH2-Ar-CH2-、-CH2-CH2-Ar-CH2-CH2-、又は式:-CH2-Ar-CH2-CH2-(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニレン基を表す。)で表される基が挙げられる。さらに、A1aとして表される炭素数6~10のアリーレン基としては、特に制限されないが、例えば、フェニレン環が挙げられる。
【0119】
式(H2b)中、nは、1~20の整数を表し、1~15の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましい。
【0120】
式(H2b)で表される化合物は、下記式(H2c)で表される化合物であることが好ましい。
【化45】
(式中、Rxは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、Rは、各々独立して、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数1~10のアルキル基又は水素原子を表し、nは、1~10の整数を表す。)
【0121】
これらのシアン酸エステル化合物は、公知の方法に準じて製造してもよい。具体的な製造方法としては、例えば、特開2017-195334号公報(特に段落0052~0057)等に記載の方法が挙げられる。
【0122】
シアン酸エステル化合物の含有量は、低熱膨張性及び銅箔ピール強度を一層向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは3~70質量部であることが好ましく、5~60質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることがさらに好ましい。
【0123】
(アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F))
本実施形態の硬化性組成物は、一層優れた耐薬品性を発現できる観点から、アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)を含むことが好ましい。フェノール化合物(F)としては、特に限定されないが、ビスフェノール型フェノール樹脂(例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールE型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等、)、フェノール類ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、後述するアミノトリアジンノボラック樹脂等)、グリシジルエステル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂、フルオレン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0124】
これらの中でも、フェノール化合物(F)は、一層優れた相溶性及び耐薬品性を発現できる観点から、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する2官能フェノール化合物またはアミノトリアジンノボラック樹脂を含むことが好ましい。
【0125】
2官能フェノール化合物としては、特に限定されないが、ビスフェノール、ビスクレゾール、フルオレン骨格を有するビスフェノール類(例えば、フルオレン骨格を有するビスフェノール、フルオレン骨格を有するビスクレゾール等)、ビフェノール(例えば、p、p’-ビフェノール等)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等)、ジヒドロキシジフェニルケトン(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン等)、ジヒドロキシジフェニルスルフィド(例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド等)、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン等)が挙げられる。これらの2官能フェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、2官能フェノール化合物は、一層優れた耐薬品性を発現できる観点から、ビスフェノール、ビスクレゾール、及びフルオレン骨格を有するビスフェノール類からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。上記と同様の観点から、フルオレン骨格を有するビスフェノール類としては、ビスクレゾールフルオレンが好ましい。
【0126】
アラルキル型フェノール樹脂としては、例えば、下記式(c2)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
【0128】
(式中、Ar1は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar2は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R2aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、mは、1~50の整数を表し、各環は、水酸基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基等)を有してもよい。)
【0129】
式(c2)で表される化合物は、銅箔ピール強度を一層向上させる観点から、式(c2)中、Ar1がナフタレン環であり、Ar2がベンゼン環である化合物(以下、「ナフトールアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)、及び式(c2)中、Ar1がベンゼン環であり、Ar2がビフェニル環である化合物(以下、「ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
【0130】
ナフトールアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(8)で表される化合物であることが好ましい。
【0131】
【0132】
(式中、R7は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、n3は1以上の整数を表す。)
【0133】
式(8)中、n3は1以上の整数を表し、1~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましい。
【0134】
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(2c)で表される化合物であることが好ましい。
【0135】
【0136】
(式中、R2bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基(好ましくは水素原子)を表し、m1は、1~20の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。)
【0137】
フェノール化合物A’は、低熱膨張性及び耐薬品性を一層向上させる観点から、上記式(8)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0138】
アラルキル型フェノール樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により製造された製品を用いてもよい。アラルキル型フェノール樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製品の「KAYAHARD GPH-65」、「KAYAHARD GPH-78」、「KAYAHARD GPH-103」(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)、新日鐵化学株式会社製品の「SN-495」(ナフトールアラルキル型フェノール樹脂)が挙げられる。
【0139】
本実施形態の硬化性組成物は、前述のとおり、フェノール化合物(F)としてアミノトリアジンノボラック樹脂を含んでもよい。アミノトリアジンノボラック樹脂を含む場合、アルケニルフェノール(A)と、エポキシ変性シリコーン(B)と、エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)とが反応することで生成した末端水酸基やエポキシ基と、アミノトリアジンノボラック樹脂とが更に反応し、水酸基やアミノ基などの末端官能基を増加させる傾向にある。これにより、熱硬化性樹脂との反応性の高い末端官能基が多数存在することになるため、相溶性および架橋密度が向上し、銅箔ピール強度を向上できる傾向にある。
【0140】
アミノトリアジンノボラック樹脂としては、特に限定されないが、銅箔ピール強度向上の観点から、分子内の一つのトリアジン骨格に対して2~20個のフェノール水酸基を有するノボラック樹脂であることが好ましく、分子内の一つのトリアジン骨格に対して2~15個のフェノール水酸基を有するノボラック樹脂であることがより好ましく、分子内の一つのトリアジン骨格に対して2~10個のフェノール水酸基を有するノボラック樹脂であることがさらに好ましい。
【0141】
本実施形態の硬化性組成物におけるアルケニルフェノール(A)の含有量は、一層優れた相溶性、耐熱性及び低熱膨張性を発現できる観点から、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及びフェノール化合物(F)の総量100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましい。
【0142】
本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ変性シリコーン(B)の含有量は、一層優れた低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく発現できる観点から、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及びフェノール化合物(F)の総量100質量部に対して、5~70質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、20~55質量部であることがさらに好ましい。
【0143】
本実施形態の硬化性組成物におけるエポキシ化合物(C)の含有量は、一層優れた相溶性、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる観点から、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及びフェノール化合物(F)の総量100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましく、15~25質量部であることがさらに好ましい。
【0144】
本実施形態の硬化性組成物におけるフェノール化合物(F)の含有量は、一層優れた耐薬品性を発現できる観点から、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及びフェノール化合物(F)の総量100質量部に対して、5~30質量部であることが好ましく、10~25質量部であることがより好ましく、15~20質量部であることがさらに好ましい。
【0145】
なお、硬化性組成物が、フェノール化合物(F)を含有しない場合、上述したアルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)の各含有量は、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)の総量100質量部に対する含有量を表す。
【0146】
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
本実施形態の硬化性組成物は、耐熱性をより一層向上させる観点から、アルケニル置換ナジイミド化合物を含むことが好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物は、1分子中に1つ以上のアルケニル置換ナジイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(H4a)で表される化合物が挙げられる。
【化49】
(式中、R
1は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)を表し、R
2は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される基を表す。)
【化50】
(式(3)中、R
3は、メチレン基、イソプロピリデン基、CO、O、S又はSO
2を表す。)
【化51】
(式(4)中、R
4は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を表す。)
【0147】
式(H4a)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法に準じて製造された製品を用いてもよい。市販品としては、丸善石油化学株式会社製品の「BANI-M」、及び「BANI-X」が挙げられる。
【0148】
アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、耐熱性をより一層向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~40質量部であり、5~35質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることがさらに好ましい。
【0149】
<第2実施形態>
[第2実施形態の硬化性組成物]
第2実施形態の硬化性組成物は、アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、該エポキシ変性シリコーン(B)以外のエポキシ化合物(C)に由来する構成単位とを含有する重合体(E)と、環状カルボジイミド化合物(D)とを含む。アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及び環状カルボジイミド化合物(D)としては、上記第1実施形態にて説明した通りである。本明細書において、第1実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)を含まない硬化性組成物であり、第2実施形態の硬化性組成物とは区別される。
【0150】
第2実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)と環状カルボジイミド化合物(D)に加えて、必要に応じて、上述した、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、前記アルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)及びアルケニル置換ナジイミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(H)を更に含有してもよい。化合物(H)は、重合体(E)の重合後に残存した未反応成分であってもよいし、合成した重合体(E)に対して、改めて添加した成分であってもよい。
【0151】
なお、第2実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)に加えて、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)からなる群より選択される1種以上を更に含有してもよい。この場合、第2実施形態の硬化性組成物に含まれるアルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)又はエポキシ化合物(C)は、重合体(E)の重合後に残存した未反応成分であってもよいし、合成した重合体(E)に対して、改めて添加した成分であってもよい。
【0152】
第2実施形態の硬化性組成物は、優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を有する。各特性が向上する要因は、第1実施形態の硬化性組成物における作用機序と同様、硬化性組成物のおかれた温度による、環状カルボジイミド化合物(D)と重合体(E)及び任意に添加された化合物(H)等の熱硬化性樹脂との反応性の制御により、相溶性及び架橋反応速度が適度に制御され、低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性が向上したものと推測される。これに加えて、第2実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)を含むことにより、一層優れた相溶性を有し、より優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を発現でき、絶縁信頼性にも優れる。重合体(E)は、シリコーン系化合物との相溶性に乏しい熱硬化性樹脂と混合した場合においても、十分な相溶性を発揮し得る。これにより、重合体(E)と熱硬化性樹脂を含む硬化性組成物は、均一なワニスや硬化物を与えることができる。当該硬化性組成物を用いて得られるプリプレグ等の硬化物は、各成分が均一に相溶したものであり、成分の不均一による物性のばらつきが更に抑制されたものとなる。
【0153】
[重合体(E)]
重合体(E)は、アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、エポキシ化合物(C)に由来する構成単位とを含有し、必要に応じて、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、アルケニルフェノールA以外のフェノール化合物(F)及びアルケニル置換ナジイミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(H)に由来する構成単位を更に含有してもよい。重合体(E)が化合物(H)に由来する構成単位を有する場合、化合物(H)としては2官能の化合物であることが好ましい。なお、本明細書において、「アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位」、「エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位」「エポキシ化合物(C)に由来する構成単位」及び「化合物(H)に由来する構成単位」とは、重合体(E)中にアルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及び化合物(H)の各成分を重合させた構成単位を含むことに加えて、同様の構成単位を与えうる反応等で形成した構成単位を含むこととする。以下、各構成単位をそれぞれ構成単位(A)、(B)、(C)、(H)ともいう。
【0154】
重合体(E)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算で、3.0×103~5.0×104であることが好ましく、3.0×103~2.0×104であることがより好ましい。重量平均分子量が3.0×103以上であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を発現できる傾向にある。重量平均分子量が5.0×104以下であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた相溶性を発現できる傾向にある。
【0155】
重合体(E)中の構成単位(A)の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、5~50質量%であることが好ましい。構成単位(A)の含有量が上記範囲内であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた相溶性を発現でき、耐熱性及び低熱膨張性のバランスが向上する傾向にある。同様の観点から、構成単位(A)の含有量は、10~45質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。
【0156】
重合体(E)中の構成単位(B)の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、20~60質量%であることが好ましい。構成単位(B)の含有量が上記範囲内であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた低熱膨張性及び耐薬品性をバランスよく発現できる傾向にある。同様の観点から、構成単位(B)の含有量は、25~55質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0157】
構成単位(B)は、50~350g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(低当量エポキシ変性シリコーン(B1’))と、400~4000g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(高当量エポキシ変性シリコーン(B2’))に由来する構成単位とを含むことが好ましい。低当量エポキシ変性シリコーン(B1’)、高当量エポキシ変性シリコーン(B2’)は、それぞれ、140~250g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(低当量エポキシ変性シリコーン(B1’’))、450~3000g/molのエポキシ当量を有するエポキシ変性シリコーン(高当量エポキシ変性シリコーン(B2’’))であることが、より好ましい。
【0158】
重合体(E)中の低当量エポキシ変性シリコーン(B1’)に由来する構成単位(B)1の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、5~25質量%であることが好ましく、7.5~20質量%であることがより好ましく、10~17質量%であることがさらに好ましい。
【0159】
重合体(E)中の高当量エポキシ変性シリコーン(B2’)に由来する構成単位(B)2の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、15~55質量%であることが好ましく、20~52.5質量%であることがより好ましく、25~50質量%であることがさらに好ましい。
【0160】
構成単位(B)1の含有量に対する構成単位(B)2の含有量の質量比は、1.5~4であることが好ましく、1.5~3.5であることがより好ましく、1.9~3.3であることがさらに好ましい。構成単位(B)1及び構成単位(B)2の含有量が上記関係を有することにより、第2実施形態の硬化性組成物は、銅箔ピール強度及び耐薬品性がより向上する傾向にある。
【0161】
重合体(E)中の構成単位(C)としては、上記式(b1)で表される化合物、上記式(b2)で表される化合物、上記式(b3)で表される化合物及び上記式(b4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種に由来する単位であることが好ましい。
【0162】
重合体(E)中の構成単位(C)の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、5~40質量%であることが好ましい。構成単位(C)の含有量が上記範囲内であると、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた相溶性を有し、一層優れた耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性を発現できる傾向にある。同様の観点から、構成単位(C)の含有量は、10~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。
【0163】
また、構成単位(C)の含有量は、構成単位(B)及び構成単位(C)の総質量に対して、5~95質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、15~60質量%であることがさらに好ましく、20~50質量%であることが特に好ましい。構成単位(B)及び構成単位(C)の含有量が上記関係を有することにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた相溶性を有し、耐熱性、耐薬品性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性がより向上する傾向にある。
【0164】
重合体(E)が化合物(H)に由来する構成単位を有する場合、重合体(E)中の構成単位(H)の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、3~40質量%であることが好ましい。構成単位(H)の含有量が上記範囲内であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた低熱膨張性、耐薬品性及び銅箔ピール強度を発現できる傾向にある。同様の観点から、構成単位(H)の含有量は、5~35質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0165】
重合体(E)がアルケニルフェノール(A)以外のフェノール化合物(F)に由来する構成単位(以下、「構成単位(F)」ともいう)を有する場合、重合体(E)中の構成単位(F)の含有量は、重合体(E)の総質量に対して、5~30質量%であることが好ましい。構成単位(F)の含有量が上記範囲内であることにより、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた耐薬品性を発現できる傾向にある。同様の観点から、構成単位(F)の含有量は、10~27.5質量%であることが好ましく、10~25質量%であることが更に好ましい。
【0166】
重合体(E)のアルケニル基当量は、300~1500g/molであることが好ましい。アルケニル基当量が300g/mol以上であることにより、第2実施形態の硬化性組成物の硬化物は、弾性率が一層低下する傾向にあり、その結果、硬化物を用いて得られる基板等の熱膨張率を一層低下できる傾向にある。アルケニル基当量が1500g/mol以下であることにより、第2実施形態の硬化性組成物の相溶性、耐熱性、耐薬品性,
低熱膨張性、銅箔ピール強度及び絶縁信頼性が一層向上する傾向にある。同様の観点から、アルケニル基当量は、350~1200g/molであることが好ましく、400~1000g/molであることがさらに好ましい。
【0167】
第2実施形態の硬化性組成物における重合体(E)の含有量は、樹脂固形分100質量%に対して、5~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、第2実施形態の硬化性組成物は、一層優れた相溶性を有し、低熱膨張性銅箔ピール強度及び耐薬品性をバランスよく一層発現できる傾向にある。
【0168】
重合体(E)は、例えば、アルケニルフェノール(A)と、エポキシ変性シリコーン(B)と、エポキシ化合物(C)と、必要に応じて化合物(H)とを、重合触媒(G)の存在下にて反応させる工程により得られる。当該反応は、有機溶媒の存在下で行ってもよい。より具体的には、上記工程において、エポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)が有するエポキシ基とアルケニルフェノール(A)が有する水酸基との付加反応と、得られた付加反応物が有する水酸基とエポキシ変性シリコーン(B)及びエポキシ化合物(C)が有するエポキシ基との付加反応などが進行することで、重合体(E)を得ることができる。
【0169】
重合触媒(G)としては、特に限定されず、例えば、イミダゾール触媒及びリン系触媒が挙げられる。これらの触媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、イミダゾール触媒が好ましい。
【0170】
イミダゾール触媒としては、特に限定されず、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンゾイミダゾール(四国化成工業株式会社製品の「TBZ」)、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業株式会社製品の「TPIZ」)等のイミダゾール類が挙げられる。このなかでも、エポキシ成分の単独重合を防ぐ観点から、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンゾイミダゾール及び/又は2,4,5-トリフェニルイミダゾールが好ましい。
【0171】
重合触媒(G)(好ましくはイミダゾール触媒)の使用量は、特に限定されず、例えば、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及び化合物(H)の総量100質量部に対して、0.1~10質量部である。重合体(E)の重量平均分子量を大きくする観点から、重合触媒(G)の使用量は、0.5質量部以上であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましい。
【0172】
有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、極性溶剤又は無極性溶剤を用いることができる。極性溶剤としては、特に制限されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。無極性溶剤としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0173】
有機溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、アルケニルフェノール(A)、エポキシ変性シリコーン(B)、エポキシ化合物(C)及び化合物(H)の総量100質量部に対して、50~150質量部である。
【0174】
反応温度は、特に限定されず、例えば、100~170℃であってよい。反応時間もまた特に限定されず、例えば、3~8時間であってよい。
【0175】
本工程における反応終了後、慣用の方法にて反応混合物から重合体(E)を分離精製してもよい。
【0176】
上述したように、第2実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)に加えて、必要に応じて、化合物(H)を更に含有してもよい。重合体(E)に加えて、化合物(H)を更に含有することにより、第2実施形態の硬化性組成物は、耐熱性、低熱膨張性、耐薬品性及び銅箔ピール強度がより一層向上する傾向にある。
【0177】
第2実施形態の硬化性組成物が重合体(E)及び化合物(H)を含む場合、第2実施形態の硬化性組成物における重合体(E)の含有量は、重合体(E)及び化合物(H)の合計100質量%に対して、5~60質量%であることが好ましく、10~55質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることが更に好ましい。含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物は、一層優れた相溶性を有し、耐熱性、低熱膨張性、耐薬品性及び銅箔ピール強度をバランスよく発現できる傾向にある。
【0178】
第2実施形態の硬化性組成物が重合体(E)及び化合物(H)を含む場合、第2実施形態の硬化性組成物における化合物(H)の含有量は、重合体(E)及び化合物(H)の合計100質量%に対して、好ましくは20~80質量%であることが好ましく、35~75質量%であることがより好ましく、45~65質量%であることがさらに好ましい。
【0179】
また、第2実施形態の硬化性組成物における環状カルボジイミド化合物(D)の含有量は、第1実施形態の硬化性組成物における含有量と同様である。環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、上述した範囲であることにより、耐熱性、低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性に一層優れる傾向にある。
【0180】
本実施形態の硬化性組成物は、本実施形態の硬化性組成物における効果を阻害しない限り、その他の樹脂をさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0181】
オキセタン樹脂としては、例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3’-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、東亜合成株式会社製品の「OXT-101」、「OXT-121」等が挙げられる。
【0182】
本明細書にいう「ベンゾオキサジン化合物」とは、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物をいう。ベンゾオキサジン化合物としては、小西化学株式会社製品の「ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ」「ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ」等が挙げられる。
【0183】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。
【0184】
[無機充填材]
本実施形態の硬化性組成物は、低熱膨張性を一層向上させる観点から、無機充填材を更に含有することが好ましい。無機充填材としては、特に限定されず、例えば、シリカ類、ケイ素化合物(例えば、ホワイトカーボン等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等)、金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等)、金属硫酸化物(例えば、硫酸バリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(例えば、水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等)、モリブデン化合物(例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、亜鉛化合物(例えば、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等)、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、無機充填材は、低熱膨張性を一層向上させる観点から、シリカ類、金属水酸化物及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリカ類、ベーマイト及びアルミナからなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、シリカ類であることがさらに好ましい。
【0185】
シリカ類としては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アエロジル、中空シリカ等が挙げられる。これらのシリカ類は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、分散性の観点から、溶融シリカであることが好ましく、充填性及び流動性の観点から、異なる粒度を持つ2種類以上の溶融シリカであることがより好ましい。
【0186】
無機充填材の含有量は、低熱膨張性を一層向上させる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましく、70~500質量部であることがより好ましく、100~300質量部であることがさらに好ましい。
【0187】
[シランカップリング剤]
本実施形態の硬化性組成物は、シランカップリング剤を更に含有してもよい。本実施形態の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することにより、無機充填材の分散性が一層向上したり、本実施形態の硬化性組成物の成分と、後述する基材との接着強度が一層向上したりできる傾向にある。
【0188】
シランカップリング剤としては特に限定されず、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤が挙げられ、アミノシラン系化合物(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系化合物(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン系化合物(例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン系化合物(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、スチリルシラン系化合物、フェニルシラン系化合物等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シランカップリング剤は、エポキシシラン系化合物であることが好ましい。エポキシシラン系化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製品の「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-403」等が挙げられる。
【0189】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であってよい。
【0190】
[湿潤分散剤]
本実施形態の硬化性組成物は、湿潤分散剤を更に含有してもよい。硬化性組成物は、湿潤分散剤を含有することにより、充填材の分散性が一層向上する傾向にある。
【0191】
湿潤分散剤としては、充填材を分散させるために用いられる公知の分散剤(分散安定剤)であればよく、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPER BYK-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0192】
湿潤分散剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0193】
[溶剤]
本実施形態の硬化性組成物は、溶剤を更に含有してもよい。本実施形態の硬化性組成物は、溶剤を含むことにより、硬化性組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性(取り扱い性)が一層向上したり、基材への含浸性が一層向上したりする傾向にある。
【0194】
溶剤としては、硬化性組成物中の各成分の一部又は全部を溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアルデヒド等)、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0195】
本実施形態の硬化性組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、各成分を一括的に又は逐次的に溶剤に配合し、撹拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解又は分散せるために、撹拌、混合、混練処理等の公知の処理が用いられる。
【0196】
[用途]
本実施形態の硬化性組成物は、上記の通り、優れた低熱膨張性、銅箔ピール強度及び耐薬品性を発現できる。このため、本実施形態の硬化性組成物は、プリプレグ、金属箔張積層板及びプリント配線板に好適に用いられる。本実施形態の硬化性組成物は、硬化させることで上述の用途に適用することができる。すなわち、本実施形態の硬化物は、本実施形態の硬化性組成物を硬化させてなる。
【0197】
なお、とりわけ上記した用途において、第2実施形態の硬化性組成物は、重合体(E)及び環状カルボジイミド化合物(D)に加え、少なくともエポキシ化合物(C)(重合体(E)中の構成単位(C)とは別に存在するエポキシ化合物(C)を含むことが好ましい。
この場合において、重合体(E)は、エポキシ化合物(C)に由来する単位として、前述した2官能エポキシ化合物に由来する単位を有することが好ましく、より好ましくは前述したビフェニル型エポキシ樹脂に由来する単位を有し、さらに好ましくは上記式(b2)で表される化合物(化合物(b2))に由来する単位を有し、一層好ましくはRaの数が0である化合物(b2)と、アルキル基であるRaの数が4である化合物(b2)(市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製の商品名「YL-6121H」等)に由来する単位を有する。
また、重合体(E)中の構成単位(C)とは別に存在するエポキシ化合物(C)としては、前述したナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-6000」等)及び/又はナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-9540」等)を含むことが好ましい。
【0198】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された本実施形態の硬化性組成物とを含む。プリプレグは、上述の通り、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよく、具体的には、本実施形態の硬化性組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥させることにより半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。
【0199】
本実施形態のプリプレグは、半硬化状態のプリプレグを180~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の形態も包含する。
【0200】
プリプレグにおける硬化性組成物の含有量は、プリプレグの総量に対して、プリプレグの固形分換算で、好ましくは30~90体積%であり、より好ましくは35~85体積%であり、さらに好ましくは40~80体積%である。硬化性組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。なお、ここでいう硬化性組成物の含有量計算には、本実施形態の硬化性組成物の硬化物も含む。また、ここでいうプリプレグの固形分は、プリプレグ中から溶剤を取り除いた成分をいい、例えば、充填材は、プリプレグの固形分に含まれる。
【0201】
基材としては、特に限定されず、例えば、各種プリント配線板の材料に用いられている公知の基材が挙げられる。基材の具体例としては、ガラス基材、ガラス以外の無機基材(例えば、クォーツ等のガラス以外の無機繊維で構成された無機基材)、有機基材(例えば、全芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド等の有機繊維で構成された有機基材)等が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、加熱寸法安定性に一層優れたりする観点から、ガラス基材が好ましい。
【0202】
ガラス基材を構成する繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、HMEガラス等の繊維が挙げられる。これらの中でも、ガラス基材を構成する繊維は、強度と低吸水性に一層優れる観点から、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上の繊維であることが好ましい。
【0203】
基材の形態としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形態が挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤等で表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.1mm程度のものが好適に用いられる。
【0204】
[金属箔張積層板]
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグを含む積層体と、前記積層体の片面又は両面に配置された金属箔とを含む。前記積層体は1つのプリプレグで形成されていてよく、複数のプリプレグで形成されていてよい。また、前記積層体は本実施形態のプリプレグ以外にレジンシートを含んでいてもよい。
【0205】
金属箔(導体層)としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられ、銅の金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、例えば、1~70μmであり、好ましくは1.5~35μmである。
【0206】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、積層板(上述した積層体)又は金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を用いることができる。また、積層板(上述した積層体)又は金属箔張積層板の成形(積層成形)において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。特に多段プレス機を用いた場合は、プリプレグの硬化を十分に促進させる観点から、温度200℃~250℃、圧力10~40kgf/cm2、加熱時間80分~130分が好ましく、温度215℃~235℃、圧力25~35kgf/cm2、加熱時間90分~120分がより好ましい。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0207】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグを含む絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含む。ここで、絶縁層は、本実施形態のプリプレグが硬化された硬化物であってもよい。本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層とすることにより形成できる。
【0208】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本実施形態の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(内層回路)を有する内層基板を作成する。次に、内層基板の導体層(内装回路)表面に、所定数の絶縁層と、外層回路用の金属箔とをこの順序で積層し、加熱加圧して一体成形(積層成形)することにより、積層体を得る。尚、積層成形の方法及びその成形条件は、上記の積層板及び金属箔張積層板における積層成形の方法及びその成形条件と同様である。次に、積層体にスルーホール、バイアホール用の穴あけ加工を施し、これにより形成された穴の壁面に導体層(内装回路)と、外層回路用の金属箔とを導通させるためのめっき金属皮膜を形成する。次に、外層回路用の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(外層回路)を有する外層基板を作成する。このようにしてプリント配線板が製造される。
【0209】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記絶縁層に、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【実施例】
【0210】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1)環状カルボジイミド化合物の合成
o-ニトロフェノール(0.11mol)、ペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを、攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置に、N2雰囲気下で仕込み、130℃で12時間反応させた。その後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回、分液操作を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去して、中間生成物(ニトロ体)を得た。
【0211】
次に、得られた中間生成物(ニトロ体、0.1mol)、5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、及びエタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなった時点で反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去して、中間生成物(アミン体)を得た。
【0212】
次に、攪拌装置、加熱装置、及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2-ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌した。そこに、中間生成物(アミン体、0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2-ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させた。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回、分液操作を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2-ジクロロエタンを減圧により除去して、中間生成物(トリフェニルホスフィン体)を得た。
【0213】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ-tert-ブチルジカーボネート(0.11mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.055mol)、及びジクロロメタン150mlを仕込み、攪拌した。そこに、25℃で中間生成物(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させた。その後、ジクロロメタンを除去して、得られた固形物を精製することで、環状カルボジイミド化合物を得た。
【0214】
(実施例1)
温度計とジムロートを取り付けた三口フラスコに、ジアリルビスフェノールA(DABPA、大和化成工業(株))5.0質量部、ビスクレゾールフルオレン(BCF、大阪ガス化学(株))5.4質量部、エポキシ変性シリコーン(B)1(X-22-163、信越化学工業(株)、官能基当量200g/mol)3.7質量部、エポキシ変性シリコーン(B)2(KF-105、信越化学工業(株)、官能基当量490g/mol)11.0質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)1(YL-6121H、三菱ケミカル(株))4.9質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DOWANOLPMA、ダウ・ケミカル日本(株))30質量部を加え、オイルバスにて120℃まで加熱撹拌した。原料が溶媒に溶解したことを確認後、イミダゾール触媒g1(TBZ、四国化成工業(株))0.3質量部を加えて、140℃まで昇温したのち、5時間撹拌し、冷却後、フェノキシポリマー溶液(固形分50質量%)を得た(ポリマー生成工程)。
【0215】
なお、ジアリルビスフェノールAは、「アルケニルフェノール(A)」に相当し、エポキシ変性シリコーン(B)1及びエポキシ変性シリコーン(B)2は、「エポキシ変性シリコーン(B)」に相当し、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)1は、「エポキシ化合物(C)」に相当する。また、フェノキシポリマー溶液には、アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、エポキシ化合物(C)に由来する構成単位とを含有する重合体(E)が含まれていた。以下、重合体(E)をフェノキシポリマーともいう。
重合体(E)に対するエポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位の含有量は、48.8質量%であった。
エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位及びエポキシ化合物(C)に由来する構成単位の総量に対するエポキシ化合物(C)に由来する構成単位の含有量は、25質量%であった。
【0216】
重量平均分子量Mwの測定:
上記のようにして得られたフェノキシポリマーの重量平均分子量Mwを、以下のようにして測定した。フェノキシポリマー溶液0.5gを2gのTHFに溶解させた溶液20μLを高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、ポンプ:LC-20AD)に注入して分析した。カラムは、昭和電工製Shodex GPC KF-804(長さ30cm×内径8mm)、Shodex GPC KF-803(長さ30cm×内径8mm)、Shodex GPC KF-802(長さ30cm×内径8mm)、Shodex GPC KF-801(長さ30cm×内径8mm)、の計4本使用し、移動相としてTHF(溶媒)を用いて、流速を1mL/minとし、検出器はRID-10Aを用いた。重量平均分子量Mwは、GPC法により標準ポリスチレンを標準物質として求めた。上記のようにして測定されたフェノキシポリマーの重量平均分子量Mwは、12,000であった。
【0217】
このフェノキシポリマー溶液30質量部(固形分換算)に、ノボラック型シアン酸エステル化合物(PT-30、ロンザ(株))14質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))17質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))6質量部、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ化合物(HP-9540、DIC(株))28質量部、製造例1で得られた環状カルボジイミド化合物5質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))140質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、165℃で5分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量47.4質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0218】
(実施例2)
プリプレグ製造工程において、ノボラック型シアン酸エステル化合物(PT-30、ロンザ(株))14質量部を13質量部に、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))17質量部を16質量部に、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))6質量部を5質量部に、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ化合物(HP-9540、DIC(株))28質量部を26質量部に、製造例1で得られた環状カルボジイミド化合物5質量部を10質量部に、変更した以外は、実施例1と同様の操作によって、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量47.4質量%のプリプレグを得た。
【0219】
(実施例3)
ポリマー生成工程において、ジアリルビスフェノールA(DABPA、大和化成工業(株))5.0質量部を5.1質量部に、ビスクレゾールフルオレン(BCF、大阪ガス化学(株))5.4質量部を5.6質量部に、エポキシ変性シリコーン(B)1(X-22-163、信越化学工業(株)、官能基当量200g/mol)3.7質量部を4.2質量部に、エポキシ変性シリコーン(B)2(KF-105、信越化学工業(株)、官能基当量490g/mol)11.0質量部を8.5質量部に、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)1(YL-6121H、三菱ケミカル(株))4.9質量部を5.6質量部に、変更した以外は、実施例1と同様の操作によって、フェノキシポリマー溶液(固形分50質量%)を得た(ポリマー生成工程)。
【0220】
このフェノキシポリマー溶液をオイルバスにて100℃まで加熱したのち、アミノトリアジンノボラック(LA-3018)1.0質量部を加え、2時間攪拌し、冷却後、変性フェノキシポリマー溶液(固形分50質量%)を得た(ポリマー変性工程)。また、変性フェノキシポリマー溶液には、アルケニルフェノール(A)に由来する構成単位と、エポキシ変性シリコーン(B)に由来する構成単位と、エポキシ化合物(C)に由来する構成単位と、アミノトリアジンノボラックに由来する構成単位とを含有する重合体(E)が含まれていた。上記と同様にして測定された変性フェノキシポリマーの重量平均分子量Mwは、12,000であった。ポリマー変性工程はポリマー生成工程と連続して行うこともできる。
【0221】
この変性フェノキシポリマー溶液30質量部(固形分換算)に、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))8質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))8質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(HP-6000、DIC(株))25質量部、ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN495V、日鉄ケミカル(株))24質量部、製造例1で得られた環状カルボジイミド化合物5質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、150℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量48.8質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0222】
(実施例4)
実施例3と同様にして得られた変性フェノキシポリマー溶液30質量部(固形分換算)に、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))7.5質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))7.5質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(HP-6000、DIC(株))23質量部、ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN495V、日鉄ケミカル(株))22質量部、製造例1で得られた環状カルボジイミド化合物10質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量48.8質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0223】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られたフェノキシポリマー溶液30質量部(固形分換算)に、ノボラック型シアン酸エステル化合物(PT-30、ロンザ(株))15質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))18質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))6質量部、ナフタレンクレゾールノボラック型エポキシ化合物(HP-9540、DIC(株))30質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))140質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、165℃で5分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量47.4質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0224】
(比較例2)
実施例3と同様にして得られた変性フェノキシポリマー溶液30質量部(固形分換算)に、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))9質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、ケイアイ化成(株))9質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(HP-6000、DIC(株))27質量部、ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN495V、日鉄ケミカル(株))25質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量48.8質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0225】
(比較例3)
ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))22.5質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(HP-6000、DIC(株))35.1質量部、ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN495V、日鉄ケミカル(株))33.5質量部、製造例1で得られた環状カルボジイミド化合物9.1質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量48.8質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0226】
(比較例4)
ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株))24.6質量部、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物(HP-6000、DIC(株))38.6質量部、ナフトールアラルキル型フェノール化合物(SN495V、日鉄ケミカル(株))36.8質量部、球状シリカ(SC―2050MB、アドマテックス(株))200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株))1質量部、シランカップリング剤(KMB-403、信越化学工業(株))5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをSガラス織布(厚さ100μm)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物固形分(充填材を含む)の含有量48.8質量%のプリプレグを得た(プリプレグ製造工程)。
【0227】
[金属箔張積層板の作製]
各実施例1~4及び比較例1~4にて得られたプリプレグを2枚重ね、さらに12μmの厚さを有する電解銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度230℃で100分間の積層成形を行い、金属箔張積層板として、0.2mmの厚さを有する絶縁層を含む銅箔張積層板を得た。得られた銅箔張積層板の特性を以下に示す方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0228】
[Tg(ガラス転移温度)]
上記方法で得られた金属箔張積層板(20mm×5mm×0.2mm)の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、JISC6481に準拠して、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント製)で、ガラス転移温度(Tg)、(単位:℃)を測定した。
【0229】
[CTE(線熱膨張係数)]
金属箔張積層板の絶縁層についてガラスクロスの縦方向の線熱膨張係数を測定した。具体的には、上記方法で得られた銅箔張積層板(10mm×6mm×0.2mm)の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、220℃の恒温槽で2時間加熱して、成形による応力を除去した。その後、熱膨張率測定装置(リンザイス製水平ディラトメーター)を用いて40℃から320℃まで毎分10℃で昇温して、60℃から260℃における線熱膨張係数(CTE)、(単位:ppm/℃)を測定した。
【0230】
[銅箔ピール強度(銅箔密着性)]
上記方法で得られた銅箔張積層板(10mm×150mm×0.2mm)を用い、JIS C6481に準じて、銅箔ピール強度(銅箔密着性)、(単位:kN/m)を測定した。
【0231】
[耐デスミア性]
上記方法で得られた銅箔張積層板(50mm×50mm×0.2mm)の両面の銅箔をエッチングにより除去した後、膨潤液であるアトテックジャパン(株)のスウェリングディップセキュリガントPに80℃で10分間浸漬し、次に粗化液であるアトテックジャパン(株)のコンセントレートコンパクトCPに80℃で5分間浸漬し、最後に中和液であるアトテックジャパン(株)のリダクションコンディショナーセキュリガントP500に45℃で10分間浸漬した。この処理を繰り返し3回行った。処理前後の銅箔張積層板の質量を測定し、処理前の試料質量を基準とした質量減少量(単位:質量%)を求めた。質量減少量の絶対値が小さいほど、耐デスミア性に優れることを示す。
【0232】
【0233】
本出願は、2021年8月5日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2021-128756)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。