(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】計測システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01C15/00 104Z
(21)【出願番号】P 2020133574
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209093(JP,A)
【文献】特開2014-191796(JP,A)
【文献】特開2013-053915(JP,A)
【文献】特開2015-049776(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223548(JP,U)
【文献】特開2019-094666(JP,A)
【文献】特開2006-349578(JP,A)
【文献】特開2019-100915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 11/00
G06T 7/00
G01S 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザスキャナを用いて法面に設けられた計測対象を計測する計測システムであって、
前記レーザスキャナによる前記法面の測定結果である三次元点群データを取得するデータ取得手段と、
前記三次元点群データを解析して、前記法面における代表的な傾斜面に並行な面を推定する面解析手段と、
前記面解析手段によって推定された面に対する法線の方向に探索し、前記計測対象の形状を推定する探索手段と、
前記探索手段によって推定された前記計測対象の形状に基づき、前記計測対象に係る所望の寸法を計測する計測手段と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記計測対象は、前記法面に対して略平行な計測面を備えており、
前記探索手段は、前記面解析手段によって推定された面の法線方向に探索し、前記計測面に対応する所定の点データを特定し、
前記所定の点データを基準点として所定範囲を指定する範囲指定手段を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記計測対象には、前記計測面が格子状に形成された法枠が含まれ、
前記範囲指定手段が指定する前記所定範囲は、少なくとも1つの法枠が収まり、
前記探索手段は、前記範囲指定手段によって指定された前記所定範囲内に収まる1つの法枠の形状を推定し、
さらに、前記範囲指定手段は、当該法枠の形状が推定された後に、当該法枠に隣接する少なくとも1つの法枠が収まる他の前記所定範囲を指定し、前記探索手段は、当該他の所定範囲内に収まる1つの法枠の形状を推定することを特徴とする請求項2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記探索手段は、前記所定範囲内の前記計測面を推定した後、当該計測面から探索して前記所定範囲内の前記法面を推定する、または、前記所定範囲内の法面を推定した後、当該法面から探索して前記所定範囲内の前記計測面を推定し、
前記計測手段は、前記探索手段による前記計測面から前記法面までの探索距離、または、前記探索手段による前記法面から前記計測面までの探索距離を、法枠の深さ寸法として計測する請求項2または請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記探索手段は、前記三次元点群データに含まれる点群を解析して、点群の縁部分を直線として検出する機能を有し、前記所定範囲内の前記法線方向に収まる点群から当該機能によって検出された直線のそれぞれを、当該所定範囲内の前記計測対象の法枠を構成する辺として推定し、
前記計測手段は、
辺の位置を推定した1つの法枠を基準とし、当該基準の法枠の辺のうち第一辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第一辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第一辺と略平行でありかつ前記第一辺に最も近い第二辺の位置と、の差を法枠の枠幅の寸法として計測することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項6】
前記探索手段は、前記三次元点群データに含まれる点群を解析して、点群の縁部分を直線として検出する機能を有し、前記所定範囲内の前記法線方向に収まる点群から当該機能によって検出された直線のそれぞれを、当該所定範囲内の前記計測対象の法枠を構成する辺として推定し、
前記計測手段は、
辺の位置を推定した1つの法枠を基準とし、当該基準の法枠の辺のうち第一辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第一辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第一辺と略平行でありかつ前記第一辺に最も近い第二辺の位置と、の間の中心である第一中心位置を特定し、
当該基準の法枠の辺のうち前記第一辺に対向している第三辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第三辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第三辺と略平行でありかつ前記第三辺に最も近い第四辺の位置と、の間の中心である第二中心位置を特定し、
前記第一中心位置と前記第二中心位置との差を通芯間の寸法として計測することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項7】
前記計測対象には、ロックボルトの頭部が含まれ、
所定範囲を指定する範囲指定手段をさらに備え、
前記範囲指定手段が指定する前記所定範囲は、少なくとも隣接する2つのロックボルトの頭部が収まり、
前記計測手段は、隣接する2つのロックボルトの頭部の間の寸法を計測することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項8】
表示手段と、
前記表示手段を表示制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記探索手段によって推定された前記法面および前記計測対象の形状に基づき当該法面および当該計測対象を示す画像を前記表示手段に表示制御し、
前記表示手段に表示された前記法面および前記計測対象を示す画像に対し、作業者が入力操作を行える入力手段をさらに備え、
前記入力手段によって、所定の縁部から縁部を指定することにより、指定した範囲の寸法を前記計測手段の計測結果に基づき表示することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面に施工された構造物を計測する計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
法面の崩壊を防ぐ目的で法面保護工事が行われることがある。法面保護工事には、法面に法枠を設ける法枠工、又は法面に対してロックボルトを打設するロックボルト工などの工法が適用される。
上記の工事に関連する技術として、以下の特許文献1と特許文献2とを例示する。特許文献1には、法面をレーザスキャナにより計測することにより地盤形状を計測する手法が開示されている。特許文献2には、法面に打設されたロックボルトの一端に弾性波を印加し、弾性波の伝搬速度に基づいてロックボルトの長さを計る手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-107175号公報
【文献】登録実用新案第3223548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
法枠工の出来形計測において、法枠が施工計画に記載した寸法で施工されているか否かを確認する必要があり、その際には作業者が斜面に形成された法枠に対しメジャーを用いて計測することが一般的であるが、その計測作業は危険性を伴う作業である為、慎重を期す為に多大な時間を要していた。
一方、ロックボルト工における出来形計測も、法枠工と同様に、多大な時間や危険性を伴う作業である。
【0005】
特許文献1の場合、法面をレーザスキャナで測定するため、作業者の安全性は確保されるが、法面に施工された構造物(法枠やロックボルト)について言及されていないため、この技術をそのまま法枠工やロックボルト工の計測作業に転用することは困難である。
特許文献2の場合、作業者が斜面に形成された法枠に登坂しなければならず、作業者の安全性を確保するという観点において十分な技術ではない。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、法面に施工された構造物の計測作業において、作業の安全性を確保すると共にその効率化を図りうる計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、レーザスキャナを用いて法面に設けられた計測対象を計測する計測システムであって、前記レーザスキャナによる前記法面の測定結果である三次元点群データを取得するデータ取得手段と、前記三次元点群データを解析して、前記法面における代表的な傾斜面に並行な面を推定する面解析手段と、前記面解析手段によって推定された面に対する法線の方向に探索し、前記計測対象の形状を推定する探索手段と、前記探索手段によって推定された前記計測対象の形状に基づき、前記計測対象に係る所望の寸法を計測する計測手段と、を備えることを特徴とする計測システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、法面に施工された構造物の計測作業において、作業の安全性を確保すると共にその効率化を図りうる計測システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】法枠NBの測定手順を示すフローチャートである。
【
図4】仮想面Aから視た法面NMと法枠NBを示す模式図である。
【
図5】法面NMと法枠NBの断面を示す模式図である。
【
図6】1つ目の計測対象である格子枠K1を示す模式図である。
【
図7】2つ目の計測対象である格子枠K2を示す模式図である。
【
図8】計測対象であるロックボルトRの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
<計測システム100の概要>
まず、
図1、2を用いて、計測システム100の概要について説明する。
図1は、計測対象である法枠NBの斜視図である。
図2は、計測システム100のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、法面NMに対して法枠NBが設けられている。法面NMは切土や盛土により作られる人工的な斜面であるため、法面NMには一般的にうねりを有する場所が含まれるが、
図1はうねりの少ない場所に設けられた法枠NBを示している。
法枠NBは、法枠工法を行う際に法面NMに形成される構造物であり、モルタルやコンクリートによって形成される。
図1に示したように、法枠NBは格子状に形成されている。
図1には同じ大きさの格子状に形成された法枠NBを示しているが、法面NMの傾斜などに応じて、枠の大きさおよび形状が異なるものが含まれる場合もある。
ここで、法面NMに設けられた法枠NB(計測対象)を計測するレーザスキャナRSについて説明する。
図1に示すようにレーザスキャナRSを地面に設置し、法面NMを見上げるような状態で法面NMに設けられた法枠NBを計測する。レーザスキャナRSの配置は、法枠NBを計測するために適した位置を適宜選択すればよい。
【0013】
図2は、計測システム100のブロック図である。
計測システム100は、後述する各種の処理を実行可能な情報処理端末である。なお、図示してはいないが、計測システム100は、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力装置、演算処理装置、記憶部等を備えている。
【0014】
計測システム100は、データ取得手段110、面解析手段120、探索手段130、計測手段140、表示制御手段150、および、表示手段160を備えている。
データ取得手段110は、法枠NBをレーザスキャナRSで測定して得られる三次元点群データを取得する。
面解析手段120は、三次元点群データを解析して、法面NMにおける代表的な傾斜面に並行な面(以下、仮想面Aと称する場合がある)を推定する。
探索手段130は、面解析手段120によって推定された仮想面Aに対する法線の方向に探索し、計測対象(法枠NB)の形状を推定する。また、探索手段130は、三次元点群データに含まれる点群を解析して、点群の縁部分を直線として検出する機能(以下、エッジ検出機能と称する場合がある)を有している。ここで、エッジ検出機能は、ハフ変換を応用して実現される機能であり、計測対象の或る面と当該面に交差する面の交差部分を縁部分として検出する。
計測手段140は、探索手段130によって推定された計測対象の形状に基づき、計測対象(法枠NB)に係る所望の寸法を計測する。
表示制御手段150は、計測手段140および探索手段130によって計測された寸法などを表示手段160に表示させる。
表示手段160は、表示制御手段150によって制御されるディスプレイ装置である。なお、
図2では、計測システム100が表示手段160を備えるように構成しているが、表示手段160は表示制御手段150からの制御信号などに基づき表示制御されればよく、計測システム100とは別に設けてもよい。
【0015】
ここで、「三次元点群データ」とは、レーザスキャナRSの測定結果を示すデータであり、計測対象となる法枠NBおよび当該法枠NBが設けられる法面NMに含まれる各構成要素の空間位置情報(三次元空間上に表現された位置情報)を表す点データの集合体である。
【0016】
計測システム100は、データ取得手段110によって取得された三次元点群データに含まれる法枠NBの全てを計測するようにしてもよいし、その法枠NBのうち一部を計測するようにしてもよい。
本実施形態では、面解析手段120の一機能である範囲指定手段125によって指定された範囲に含まれる法枠NBを計測対象とすることを前提に以下説明する。ここで範囲指定手段125は、取得した三次元点群データから法枠NBの形状が格子状である範囲やレーザスキャナRSからのレーザビームが十分に照射されている範囲など予め決められた測定条件に伴い自動的に指定されるものでもよいし、キーボード、ポインティングシステム(図示しない)などの入力手段によって、作業者が測定対象とする範囲を指定するものでもよい。
【0017】
<計測システム100の計測作業の流れについて>
続いて、
図3のフローチャートに沿って、
図4~
図7を用いて計測作業の流れについて説明する。
図3は、法枠の計測手順を示すフローチャートである。
図4は、仮想面Aから視た法面NMと法枠NBを示す模式図である。
図5は、法面NMと法枠NBの断面を示す模式図である。
図6は、1つ目の計測対象である格子枠K1を示す模式図である。
図7は、2つ目の計測対象である格子枠K2を示す模式図である。
【0018】
ステップS100では、作業者は、レーザスキャナRSを用いて法枠NBをスキャニングし、各部位の形状や位置を計測する。その計測結果は、三次元点群データとして生成される。
レーザスキャナRSによって生成された三次元点群データは、レーザスキャナRSから直接的に又は他の装置を介して間接的に、データ取得手段110によって取得される。
【0019】
ステップS110では、面解析手段120が、ステップS100で取得した三次元点群データを解析して、仮想面Aを推定する。
具体的には、面解析手段120は、法面NM及び法枠NBの上面部分を形成する点データを三次元点群データから抽出し、概ね平面とみなせる箇所(表面から所定の厚さ範囲内に点データが存在している箇所)を推定し、その平面とみなした箇所に対する平行面を仮想面Aとして設定する。
なお、上記の所定の厚さ範囲は、実際は凹凸に形成されている法面NM及び法枠NBの上面部分を平面とみなすために、法枠NBの枠高さを超える範囲であることが好ましい。
【0020】
図4は、仮想面Aから視た視点の法面NMと法枠NBを示している。
仮想面Aは法面NMに対して概ね並行な面であるため、
図4は法面NMを正面視する視点になる。また、法枠NBの上面部分は、法面NMに対して略平行な面であるため、
図4は法枠NBの上面を正面視する視点になる。従って、
図4には、法面NMに対する法枠NBの高さ部分(法面NMに対して略垂直な面)が図示されない。
以下の説明において、法枠NBの上面部分を計測面と称する場合がある。
【0021】
図4は、法枠NBを構成する格子状の枠(以下、格子枠と称する場合がある)の1つに対して、法枠NBの出来形計測において計測すべき寸法の代表的なもの(寸法M1~M4)を例示している。
寸法M1は、当該格子枠の上部分の枠幅の中心位置から下部分の枠幅の中心位置までの距離であり、当該格子枠の上下方向の通芯間距離に相当する。
寸法M2は、当該格子枠の左部分の枠幅の中心位置から右部分の枠幅の中心位置までの距離であり、当該格子枠の左右方向の通芯間距離に相当する。
寸法M3は、当該格子枠の上部分の枠幅である。
寸法M4は、当該格子枠の左部分の枠幅である。
また、
図4には図示しないが、計測システム100によって計測される寸法には、法枠NB(計測対象の格子枠)の枠深さに相当する寸法M5がある。
なお、ここで述べた上下左右は、
図4における方向であり、三次元点群データが表現されている空間における方向とは必ずしも一致しない。
【0022】
ステップS120では、範囲指定手段125が、計測対象とする法枠NBの範囲を指定する。
具体的には、範囲指定手段125は、ステップS110で設定した仮想面Aに対して、複数の格子枠が収まる平面を指定し、その平面を基準として仮想面Aの法線方向に収まる複数の格子枠を計測対象とする。
【0023】
ステップS130では、探索手段130が、仮想面Aの法線方向に探索し、法枠NBの上面部分(計測面)に対応する所定の点データを特定する。具体的には、探索手段130は、仮想面Aから探索して最初に見つかった点データを法枠NBの上面部分に対応するものとする。
ステップS140では、範囲指定手段125が、ステップS130で特定した所定の点データを基準点として所定範囲を指定する。
以下の説明において、ステップS130で特定される所定の点データをB点と称する場合があり、ステップS140で指定される所定範囲をC面と称する場合がある。
【0024】
図5及び
図6は、上述したA面とB点とC面の位置関係を示している。
C面は、A面に対して平行な面であり、B点を通過する面である。
図6に示すように、本実施形態では範囲指定手段125がB点を中心としてC面を指定する態様を例示するが、本発明の実施はこの態様に制限されない。例えば、範囲指定手段125は、C面の四隅の1つをB点とするように指定してもよいし、B点から離間した位置にC面を指定する(C面の外側にB点が位置する)ようにしてもよい。
C面の大きさは、少なくとも1つの法枠NBが収まる大きさであればよい(
図6では、C面に格子枠K1が収まることが図示されている)。ただし、C面の大きさは、
図5に示すとおりA面より小さいことが好ましく、図示しないがステップS120で指定された範囲より小さいことが好ましい。
【0025】
ステップS150では、探索手段130が、ステップS140で指定されたC面(所定範囲)内に収まる格子枠K1(1つの法枠NB)の形状を推定する。
ステップS160では、ステップS120で指定した法枠NBの全てについて、探索手段130が形状を推定したか否かが判定され、当該判定が肯定された場合にはステップS180に進み、当該判定が否定された場合にはステップS170に進む。
ステップS170では、範囲指定手段125は、ステップS150で形状を推定された格子枠K1に隣接する少なくとも1つの格子枠が収まる他の所定範囲を指定し、再びステップS150に進む。その後、再び行われるステップS150では、探索手段130は、当該他の所定範囲内に収まる格子枠の形状を推定する。
【0026】
図7は、格子枠K1の形状が推定された後に、範囲指定手段125が、格子枠K1に隣接する格子枠K2を指定した様子が図示されている。格子枠K2は、必ずしもC面内に収まる必要はなく、その一部又は全部がC面から外れてもよい。
図7では、格子枠K1の左隣の格子枠K2が範囲指定手段125によって指定された様子が図示されているが、ステップS180で指定される法枠NBは格子枠K1の上下左右いずれに隣接している格子枠であってもよい。
また、
図7では、格子枠K1に隣接する1つの格子枠K2が範囲指定手段125によって指定された様子が図示されているが、ステップS180で指定される格子枠は複数であってもよい。
【0027】
ステップS120で指定した法枠NBの全てについてステップS150の処理が済むまで、上記のステップS150、ステップS160及びステップS170が繰り返される。
【0028】
ステップS120で指定した法枠NBの全てについて、その推定された形状に基づいて、ステップS170では、計測手段140が、法枠NBに係る所望の寸法(上述の寸法M1~M5)を計測する。
【0029】
<計測手段140による計測手法について>
次に、計測手段140による計測手法について具体的に説明する。
計測手段140は、探索手段130による以下のような形状推定に基づいて、寸法M1~M5を計測する。
【0030】
上述したように、探索手段130は、C面内の計測面(法枠NBの上面部分)を推定した後、当該計測面から探索してC面内の法面NMを推定する。
計測手段140は、探索手段130による計測面から法面NMまでの探索距離を、法枠NBの深さ寸法(寸法M5)として計測する。
【0031】
探索手段130は、C面内の法線方向に収まる点群から、上述したエッジ検出機能によって検出された直線のそれぞれを、C面内の計測対象の法枠NBを構成する辺として推定する。
次に、計測手段140は、辺の位置を推定した1つの法枠(例えば格子枠K1)を基準とし、格子枠K1の辺のうち第一辺(例えば格子枠K1の左辺)の位置と、格子枠K1の中心から視て左方向に隣接している格子枠K2の辺のうち第一辺と略平行でありかつ第一辺に最も近い第二辺(例えば、格子枠K2の右辺)の位置と、の間の中心である第一中心位置を特定する。そして、探索手段130は、格子枠K1の法枠の辺のうち第一辺に対向している第三辺(例えば、格子枠K1の右辺)の位置と、格子枠K1の中心から視て右方向に隣接している他の法枠(不図示)の辺のうち第三辺と略平行でありかつ第三辺に最も近い第四辺の位置と、の間の中心である第二中心位置を特定する。
計測手段140は、上記の第一中心位置と第二中心位置との差を、左右方向の通芯間の寸法(寸法M2)として計測する。
計測手段140は、上記の第一辺と第二辺との差を、格子枠K1の左部分の枠幅の寸法(寸法M4)として計測する。
なお、計測手段140は、上下方向の通芯間の寸法(寸法M1)について寸法M2と同様の手法で計測可能であり、格子枠K1の左部分の枠幅の寸法(寸法M3)について寸法M4と同様の手法で計測可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態の計測手段140は、上記のような計測手法によって、寸法M1~M5を計測することができる。
【0033】
<表示制御手段150による表示制御について>
次に、表示制御手段150によって表示手段160に表示される内容について説明する。
表示制御手段150は、探索手段130によって推定された法面NMおよび計測対象である法枠NB(例えば、格子枠K1や格子枠K2)の形状に基づき当該法面NMおよび法枠NBを示す画像を表示手段160に表示制御する。
また、表示制御手段150は、表示手段160に表示された法面NMおよび法枠NBを示す画像に対し、作業者が入力操作を行える入力手段(不図示のキーボードやポインティングデバイスなど)を用いて所定の縁部から縁部を指定することにより、指定した範囲の寸法を計測手段140の計測結果に基づき表示させる。例えば、作業者が寸法M1~M4を指定した場合、表示制御手段150は、
図4に相当する画像と、それぞれの寸法M1~M4の計測結果を、表示手段160に表示させる。
このようにすることで、作業者が必要とする計測結果を容易に確認することができる。
【0034】
<変形例>
本発明の実施は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、改良等が可能である。
例えば、
図2に図示した計測システム100の構成は、本発明の目的を達成する範囲において変更可能であり、不図示の新たな構成を追加してもよく、図示した構成の一部を省いてもよい。
【0035】
上述の実施形態では、計測システム100は法枠NBの出来形計測に用いることを前提とし、計測対象が法枠NBであるものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られず、法面に設けられる他の構成(例えば、ロックボルト)に代えてもよい。
図8は、計測対象であるロックボルトRの斜視図である。
ロックボルトRは、ロックボルト工法に用いられる棒状の補強材であり、法面NMに垂直に挿入することによって、法面NMの地盤を固定する。
図8に図示するロックボルトRは、法面NMから突出している頭部RHと、頭部RHの周囲を補強する基部RBと、が含まれる。なお、
図8では、十字形状の基部RBを例示するが、その形状は特に制限されるものではない。
本変形例において、計測システム100の計測対象には少なくともロックボルトの頭部RHが含まれる。また、本変形例の計測システム100は、上述した範囲指定手段125と計測手段140を備えている。
範囲指定手段125が指定する所定範囲は、少なくとも隣接する2つのロックボルトの頭部RHが収まり、計測手段140は、隣接する2つのロックボルトの頭部RHの間の寸法を計測することが好ましい。
このような変形例により、本発明は、ロックボルト工法に用いられるロックボルトRに係る所望の寸法を計測することができる。
【0036】
上述の実施形態では、探索手段130によって推定された所定範囲内の計測対象の法枠(格子枠K1や格子枠K2)の辺の位置に基づき、計測手段140が寸法M1~寸法M4を計測することを説明したが、本発明の実施によって計測する寸法はこれに限られない。
例えば、探索手段130によって推定された所定範囲内の計測対象の法枠(格子枠K1や格子枠K2)の辺の位置に基づき、計測手段140は、当該法枠の鉛直方向長及び当該法枠の左右方向長の寸法を計測してもよい。
【0037】
上述の実施形態では、探索手段130は、計測面、法面の順に探索することとしたが、逆の順序で探索してもよい。
言い換えれば、探索手段130は、C面内の法面NMを推定した後、当該法面NMから探索してC面内の計測面を推定してもよい。このとき、計測手段140は、探索手段130による法面NMから計測面までの探索距離を、法枠NBの深さ寸法(寸法M5)として計測してもよい。
【0038】
<付記>
本実施形態は、次のような技術思想を包含する。
(1)レーザスキャナを用いて法面に設けられた計測対象を計測する計測システムであって、前記レーザスキャナによる前記法面の測定結果である三次元点群データを取得するデータ取得手段と、前記三次元点群データを解析して、前記法面における代表的な傾斜面に並行な面を推定する面解析手段と、前記面解析手段によって推定された面に対する法線の方向に探索し、前記計測対象の形状を推定する探索手段と、前記探索手段によって推定された前記計測対象の形状に基づき、前記計測対象に係る所望の寸法を計測する計測手段と、を備えることを特徴とする計測システム。
(2)前記計測対象は、前記法面に対して略平行な計測面を備えており、前記探索手段は、前記面解析手段によって推定された面の法線方向に探索し、前記計測面に対応する所定の点データを特定し、前記所定の点データを基準点として所定範囲を指定する範囲指定手段を、更に備えることを特徴とする(1)に記載の計測システム。
(3)前記計測対象には、前記計測面が格子状に形成された法枠が含まれ、前記範囲指定手段が指定する前記所定範囲は、少なくとも1つの法枠が収まり、前記探索手段は、前記範囲指定手段によって指定された前記所定範囲内に収まる1つの法枠の形状を推定し、さらに、前記範囲指定手段は、当該法枠の形状が推定された後に、当該法枠に隣接する少なくとも1つの法枠が収まる他の前記所定範囲を指定し、前記探索手段は、当該他の所定範囲内に収まる1つの法枠の形状を推定することを特徴とする(2)に記載の計測システム
(4)前記探索手段は、前記所定範囲内の前記計測面を推定した後、当該計測面から探索して前記所定範囲内の前記法面を推定する、または、前記所定範囲内の法面を推定した後、当該法面から探索して前記所定範囲内の前記計測面を推定し、前記計測手段は、前記探索手段による前記計測面から前記法面までの探索距離、または、前記探索手段による前記法面から前記計測面までの探索距離を、法枠の深さ寸法として計測する(2)または(3)に記載の計測システム。
(5)前記探索手段は、前記三次元点群データに含まれる点群を解析して、点群の縁部分を直線として検出する機能を有し、前記所定範囲内の前記法線方向に収まる点群から当該機能によって検出された直線のそれぞれを、当該所定範囲内の前記計測対象の法枠を構成する辺として推定し、前記計測手段は、辺の位置を推定した1つの法枠を基準とし、当該基準の法枠の辺のうち第一辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第一辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第一辺と略平行でありかつ前記第一辺に最も近い第二辺の位置と、の差を法枠の枠幅の寸法として計測することを特徴とする(2)から(4)のいずれか一つに記載の計測システム。
(6)前記探索手段は、前記三次元点群データに含まれる点群を解析して、点群の縁部分を直線として検出する機能を有し、前記所定範囲内の前記法線方向に収まる点群から当該機能によって検出された直線のそれぞれを、当該所定範囲内の前記計測対象の法枠を構成する辺として推定し、前記計測手段は、辺の位置を推定した1つの法枠を基準とし、当該基準の法枠の辺のうち第一辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第一辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第一辺と略平行でありかつ前記第一辺に最も近い第二辺の位置と、の間の中心である第一中心位置を特定し、当該基準の法枠の辺のうち前記第一辺に対向している第三辺の位置と、当該基準の法枠の中心から視て前記第三辺の方向に隣接している他の法枠の辺のうち前記第三辺と略平行でありかつ前記第三辺に最も近い第四辺の位置と、の間の中心である第二中心位置を特定し、前記第一中心位置と前記第二中心位置との差を通芯間の寸法として計測することを特徴とする(2)から(5)のいずれか一つに記載の計測システム。
(7)前記計測対象には、ロックボルトの頭部が含まれ、所定範囲を指定する範囲指定手段をさらに備え、前記範囲指定手段が指定する前記所定範囲は、少なくとも隣接する2つのロックボルトの頭部が収まり、前記計測手段は、隣接する2つのロックボルトの頭部の間の寸法を計測することを特徴とする(1)に記載の計測システム。
(8)表示手段と、前記表示手段を表示制御する表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記探索手段によって推定された前記法面および前記計測対象の形状に基づき当該法面および当該計測対象を示す画像を前記表示手段に表示制御し、前記表示手段に表示された前記法面および前記計測対象を示す画像に対し、作業者が入力操作を行える入力手段をさらに備え、前記入力手段によって、所定の縁部から縁部を指定することにより、指定した範囲の寸法を前記計測手段の計測結果に基づき表示することを特徴とする(1)から(7)のいずれか一つに記載の計測システム。
【符号の説明】
【0039】
100 計測システム
110 データ取得手段
120 面解析手段
125 範囲指定手段
130 探索手段
140 計測手段
150 表示制御手段
160 表示手段
NB 法枠
NM 法面
K1、K2 格子枠
RS レーザスキャナ