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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】中ぐり用切削刃ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20240307BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20240307BHJP
   B23B 27/10 20060101ALI20240307BHJP
   B23P 15/30 20060101ALI20240307BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240307BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240307BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240307BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240307BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240307BHJP
【FI】
B23B29/02 A
B23B27/00 C
B23B27/10
B23P15/30
B23K26/34
B23K26/21 Z
B22F3/105
B22F3/16
B33Y80/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020113781
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012157
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520239850
【氏名又は名称】有限会社ナツバタ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】596069634
【氏名又は名称】株式会社新井製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】520239861
【氏名又は名称】株式会社Aizaki
(73)【特許権者】
【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】相澤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 英平
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154003(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139545(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0142746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34;
B23P 15/28-15/52;
B23K 26/00-26/70;
B22F 1/00-8/00,10/00-12/90;
C22C 1/04-1/059,33/02;
B29C 64/00-64/40,67/00-67/08,
67/24-69/02,73/00-73/34;
B29D 1/00-29/10,33/00,99/00;
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に設けられ、先端部に中ぐり加工用の交換チップ状の切削刃が固定される切削刃用取付座部が設けられている中ぐり用切削刃ホルダであって、
前記先端部を含めた先端側部位が、後端部を含む他の部位よりも外形が細く形成され、棒状の軸心の軸線に直交するように切断した断面形状について線対称や点対称のいずれにもなっていない非対称に設けられ、
前記先端部を含む先端側部位の内部に固有振動数を高めるように設けられた空洞部が、棒状の軸心の軸線に直交するように切断した断面形状について線対称や点対称のいずれにもなっていない非対称に設けられていることを特徴とする中ぐり用切削刃ホルダ。
【請求項2】
前記空洞部が、前記切削刃を冷却するように前記先端部に開口して設けられた吐出口へクーラントを流通させるためのクーラント流路の一部を構成することを特徴とする請求項1記載の中ぐり用切削刃ホルダ。
【請求項3】
前記先端側部位に設けられた空洞部には、該空洞部を形成する外殻を内側から支持する三次元補強構造が設けられ、該三次元補強構造が占める前記空洞部の空間が、閉塞されたセル状の部位が設けられていない連通空間になっていることを特徴とする請求項1又は2記載の中ぐり用切削刃ホルダ。
【請求項4】
前記三次元補強構造が、ジャイロイド構造であることを特徴とする請求項3記載の中ぐり用切削刃ホルダ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の中ぐり用切削刃ホルダを製造する中ぐり用切削刃ホルダの製造方法であって、前記空洞部を形成する外殻が、最適化設計法を用いることによって設計され、レーザ溶融式の三次元積層造形によって形成されることを特徴とする 中ぐり用切削刃ホルダの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒状に設けられ、先端部に中ぐり加工用の交換チップ状の切削刃が固定される切削刃用取付座部が設けられている中ぐり用切削刃ホルダに関する。
【0002】
従来、中ぐり用切削刃ホルダとしては、旋削工具、特にボーリングバーにおける切削時のびびり振動を防止するように、ホルダ本体内に収容されたウエイトと、内面に対して間隔をおいて支持する支持手段と、ホルダ本体に対して相対移動させる駆動手段と、該手段を制御する制御手段とから構成され、この制御はヘッドの振動を検出するセンサの検出信号によって行うことで、ウエイトの駆動周波数、振幅などを制御することができ、ウエイト変位に伴う反作用によって刃先の振動が相殺され、また、支持手段の支持方向、駆動手段の駆動方向をホルダ本体の軸線方向、あるいは半径方向に向けることにより、ウエイトの変位に伴う反作用の方向を種々に設定できる(特許文献1)ものが提案されている。
【0003】
また、従来の中ぐり用切削刃ホルダを構成要素とする切削工具に係るクーラントの供給構造としては、例えば、切削インサートが装着されるインサート取付座が形成されたヘッド部材が、ホルダの先端部に互いの取付面を密着させて着脱可能に取り付けられ、ホルダには、クーラントが供給されるクーラント穴が取付面に開口するように形成されるとともに、ヘッド部材側の取付面には、ホルダ側の取付面に開口したクーラント穴に連通して、切削インサートの切刃に向けて開口するように延びる凹溝が形成されている(特許文献2)ものが提案されている。なお、上記のクーラント穴は、対称性のある断面円形で、中心軸線方向に延びるように形成されている。
【0004】
また、従来の中ぐり用切削刃ホルダを構成要素とする切削工具に係るクーラントの供給構造としては、切削工具用敷板が、切削インサートとホルダとの間に配置されて、かつホルダに固定され、切削インサートは、逃げ面と、逃げ面と連なるすくい面とを含み、逃げ面とすくい面との稜線は、切れ刃を構成し、その切れ刃は、円弧状部を含み、前記切削工具用敷板には、ホルダから供給されたクーラントを円弧状部に噴射するためのクーラント供給路が設けられ、そのクーラント供給路は、ホルダからクーラント供給路にクーラントを導入するための導入口と、クーラントを円弧状部に噴射するための円弧状部用噴射口とを有し、その円弧状部用噴射口は、円弧状部に沿って湾曲した形状を有している(特許文献3)ものが提案されている。
【0005】
また、上述の切削工具用敷板は、たとえば金属3Dプリンターを用いて作製することができる。具体的には、金属粉末をレーザーで加熱して敷板が作製される(特許文献3)ことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-23605号公報(第1頁)
【文献】特開2010-105107号公報(第1頁)
【文献】特開2018-111205号公報(第1頁、[0034])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中ぐり用切削刃ホルダに関して解決しようとする課題は、上述の特許文献1のような複雑な構成となることなく、中ぐり用切削刃ホルダのヘッド部の形状的な構造によって、自励びびり振動をより抑制して精度及び品質のより高い切削加工を行うために用いることができるものが提案されていないことにある。
【0008】
そこで本発明の目的は、軽量化すると共に固有振動数を高めて防振性のより優れた形状的な構造とすることで、精度及び品質のより高い切削加工を行うために用いることができる中ぐり用切削刃ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの一形態によれば、棒状に設けられ、先端部に中ぐり加工用の交換チップ状の切削刃が固定される切削刃用取付座部が設けられている中ぐり用切削刃ホルダであって、前記先端部を含めた先端側部位が、後端部を含む他の部位よりも外形が細く形成され、棒状の軸心の軸線に直交するように切断した断面形状について線対称や点対称のいずれにもなっていない非対称に設けられ、前記先端部を含む先端側部位の内部に固有振動数を高めるように設けられた空洞部が、棒状の軸心の軸線に直交するように切断した断面形状について線対称や点対称のいずれにもなっていない非対称に設けられている。
【0010】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの一形態によれば、前記空洞部が、前記切削刃を冷却するように前記先端部に開口して設けられた吐出口へクーラントを流通させるためのクーラント流路の一部を構成することを特徴とすることができる。
【0011】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの一形態によれば、前記先端側部位に設けられた空洞部には、該空洞部を形成する外殻を内側から支持する三次元補強構造が設けられ、該三次元補強構造が占める前記空洞部の空間が、閉塞されたセル状の部位が設けられていない連通空間になっていることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの一形態によれば、前記三次元補強構造が、ジャイロイド構造であることを特徴とすることができる。
【0013】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの製造方法の一形態によれば、前記中ぐり用切削刃ホルダを製造する中ぐり用切削刃ホルダの製造方法であって、前記空洞部を形成する外殻が、最適化設計法を用いることによって設計され、レーザ溶融式の三次元積層造形によって形成されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中ぐり用切削刃ホルダによれば、軽量化すると共に固有振動数を高めて防振性のより優れた形状的な構造とすることができ、これを用いて精度及び品質のより高い切削加工を行うことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例の外観を示す斜視図である。
図2】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例の先端部を示す斜視図である。
図3】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例を示す縦断面図(図4のA-A線縦断面図)である。
図4】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例の後端面を示す説明図である。
図5】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例を示す縦断面図(図4のB-B線縦断面図)である。
図6】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの先端部における空洞部の内部構造の形態例を示す破断斜視図である。
図7】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例の外観を他の角度から見た状態を示す斜視図である。
図8】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダのクーラント流路の形態例を示す透視平面図である。
図9】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダのクーラント流路の形態例を示す透視側面図である。
図10】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダのクーラント流路の形態例を示す先端側から見た透視図である。
図11】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダに切削刃を取り付けた形態例の先端部を示す斜視図である。
図12】本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの先端部の他の形態例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例を、添付図面(図1~12)に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダは、図1及び図7に示すように基本構成として、棒状に設けられ、先端部10aに中ぐり加工用の交換チップ状の切削刃40(図11参照)が固定される切削刃用取付座部20が設けられている。なお、本形態例の切削刃用取付座部20には、取付用雌螺子部22(図2など参照)が設けられており、切削刃40が螺子によって固定される構造になっている。
【0018】
そして、本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダは、先端部10aが、後端部30を含む他の部位よりも外形が細く形成されて軸心について非対称に設けられていると共に、その先端部10aを含む先端側部位10の内部には、固有振動数を高めるように軸心について非対称に形成された中空状の部位(空洞部11)が設けられている。
【0019】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダによれば、先端部10aの質量低減(重量の軽量化)と、その先端部10aの外形と先端側部位10の空洞部11の形状との非対称性(荷重が負荷された状態に対する剛性の確保)とを利用することで、固有振動数を高め、防振性を高めることができる。そして、本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダを用いることで、金属の中ぐり加工において、中ぐりバイト(中ぐり用の切削工具)の切れ刃の自励びびり振動を抑制できるため、切削表面粗さを改善することができ、精度及び品質のより高い切削加工を行うことができる。すなわち、切削工具の固有振動数を高めることで、問題となる共振が発生することを防止することができ、その効果として、精度及び品質のより高い切削加工が実現できる。また、切れ刃の自励びびり振動を抑制することで切削刃40の寿命を延長できる。
【0020】
本発明に係る中ぐり用切削刃ホルダの形態例では、各図に示すように先端部10aの外観形状が、先端に向かって徐々に細くなる非対称の先細りの形状で、外面に、凹面部が形成されるが、抉り部や窪み部が形成されない形状になっている。なお、本形態例の先端部10aの先細り形状は、複数の凹面や平面をつなげた外側面形状によって、基本的に先端に向かって徐々にその断面積を縮小する形態になっている。
【0021】
また、本形態例では、非対称で適切な大きさの空洞部11が形成されるように、空洞部11の占める大きさが、少なくとも最大となる部分において、軸心に直交する方向の外形の大きさの半分以上の長さ(50%以上の割合)となるように設けられている。そして、この先端部10aと空洞部11の非対称の形状とは、棒状のホルダの軸心を基準にして、その軸線に直交するように切断した断面形状が、外形と内部形状の両方について、少なくとも線対称や点対称のいずれにもなっていないことを意味している。
【0022】
また、図3及び図5に示す本形態例の空洞部11では、トポロジー最適化解析によって算出した最適な空洞形状をベースとし、構造設計された形状になっている。つまり、剛性を保ちつつ固有振動数を高めるため、形状最適化解析を行い、先端側の内部に特殊な形状の空洞部11を設けた形態になっている。トポロジー最適化による構造設計とは、設計したい空間にどのように材料を配置すれば最適な構造となるかを提案してくれる手法であり、再設計によって他の設計要素を加味した形状に修正され、最終的な形状に設計されている。本形態例は、このように設計されていることで、空洞部11及びこれを形成する外殻12の形状が非対称に設けられており、外殻12の肉厚が不均一に設けられている。
【0023】
なお、本形態例では、先端側の所定の範囲である先端側部位10の質量を50%とすることを条件に最適化解析を行い、その結果をベースに再設計がなされ、空洞部11が切削液(クーラント)の通路(クーラント流路31)を兼ねるように構造設計がなされている。具体的に、図に示した本形態例の最適化解析では、先端側部位10における切削刃40の刃先(切れ刃)が張り出す側と軸心を中心にして反対側の部位について、空洞が外部に開いた開放形状となり、クーラント流路31が形成されないものになったが、それを再設計し、その空洞の開放形状を閉じた形態とした。このため、図3及び図5に示すように、切削刃40の切れ刃が張り出す側とは反対側の先端側部位10の外殻12の肉厚が、他の部位と比較して薄く形成されている。このように設計することによって、本形態例では、従来の空洞部11を設けない中実のものと比較して、固有振動数(共振周波数)を13%高めることができた。
【0024】
また、本形態例によれば、先端側部位10に適切な空洞部11を形成するように、適切な外殻12が設けられているため、前述のように、軽量化によって防振性を高めると共に、非対称性による切削荷重が負荷された状態での高い剛性の確保よって防振性を高めることができる形状的構造になっている。すなわち、切削加工がなされる際の切削の力(荷重)が負荷されることによるボーリングバー(中ぐりバイト)の撓み量であって主にホルダの本体に生じる撓み量(変位量)を、適切に抑制して防振性を高めるように、十分な剛性を備える形態になっている。さらに、本形態例のホルダの断面形状は、工作機械(切削加工装置の工具チャック部)に装着された状態で、切削の際に作用する圧力を受ける形状とするべく、先端部10aのベース形状が若干ではあるが縦長の楕円形状となるように設けられている。これによれば、剛性を高めて撓み量を抑制することができ、切削の加工精度を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明では、空洞部11を設けることによって、従来の中実に設けられた棒状のホルダの外周面において形成される抉り形状の外側の窪み部を設けることなく、先端部10aの軽量化を図っている。すなわち、本発明では、外殻12を上述のように適切に形成することで、従来の中実のホルダと比較しても同等程度に剛性が高く耐荷重性や耐久性を高める構造とすることができると共に、先端部10aの軽量化による防振性の向上を実現している。
【0026】
また、本形態例では、空洞部11を形成する外殻12が、最適化設計法を用いることによって設計されてレーザ溶融式の三次元積層造形によって形成されている。レーザ溶融式の三次元積層造形は、いわゆる金属溶融式の3Dプリンタによる造形のことであり、これによれば、非対称の複雑な最適化形状を、容易且つ適切に製造することができる。大型の3Dプリンタ装置を使って、多数本を同時に成形する方法によれば、製造コストを低減することができる。なお、材料となる金属粉体の材質は、例えば、マルエージング鋼とすることができる。
【0027】
また、本形態例では、空洞部11が、切削刃40を冷却するように先端部10aに開口して設けられた吐出口21へクーラントを流通させるためのクーラント流路31の一部を構成するように設けられている。これによれば、クーラント流路を、好適に形成することができ、十分なクーラント(切削液)を供給することが可能になることから、切削加工の精度及び品質を向上でき、切削刃40の寿命を延長できる。
【0028】
このように本形態例では、3Dプリンタを利用することで、内部に空洞部11を持つ形状とし、合せてチップ(切削刃40)に切削液を噴射する流路(クーラント流路31)を適切に形成している。すなわち、空洞部11は、切削液の流路の一部を兼ねる構造とし、これにより、積層造形後に未焼結部分として残る粉体材料を、切削液の流路を利用して排出できる構造になっている。そして、切削刃40の切れ刃から効率よく切り屑を排出するため、切れ刃の下側から切削液を当てられるように、吐出口21が設けられている。
【0029】
また、この吐出口21は、先端部10aの狭いスペースで十分な断面積を確保すると同時に、切削液を拡散させずに効率よく切れ刃に当てるため、その吐出口21の形状(切削液の出口穴の形状)が、図に示すように切れ刃に沿って長い四角形状(矩形状)に設けられている。さらに、本形態例では、吐出口21の開口面積を十分に確保するために、その吐出口21を形成する部位に、切削加工の際にワークと確実に干渉しない範囲で径方向外側へ張り出した膨出部15が形成されており、その膨出部15が設けられた部位に、空洞部11から延長された吐出口流路部31bと、その吐出口流路部31bの端末における開口である吐出口21とが形成されている。なお、吐出口21は、以上に説明した形態例に限定されるものではなく、例えば、複数設けることができるのは勿論であり、図12に示すように、別の吐出口21を切れ刃の上側から切削液を当てることができるように設けてもよい。
【0030】
また、本形態例では、先端側部位10に設けられた空洞部11には、その空洞部11を形成する外殻12を内側から支持する三次元補強構造13が設けられ、その三次元補強構造13が占める空洞部11の空間が、閉塞されたセル状の部位が設けられていない連通空間14になっている。
【0031】
この三次元補強構造13によれば、先端側部位10の剛性を高め、その強度を向上させることができると共に、レーザ溶融式の三次元積層造形によって造形された後に、材料となる金属粉末のうち溶融されなかった金属粉末を、空洞部11から排出することができる。そして、本形態例の三次元補強構造13が形成された空洞部11は、連通空間14になっていることで、クーラント流路31の一部として切削液の供給流路を兼用できる構造になっている。
【0032】
また、この三次元補強構造13は、図6に示す形態例のように、空洞部の空間を閉塞されたセル状の部位を備えない連通空間14とするものとして、ジャイロイド構造であることで、適切な補強構造とすることができる
【0033】
なお、三次元補強構造13としては、このジャイロイド構造に限定されるものではなく、空洞部の空間を閉塞されたセル状の部位を備えない連通空間14とする補強構造として、例えば、ラチス構造を採用することができる。
【0034】
さらに、本形態例の中ぐり用切削刃ホルダにおける切削加工装置に装着される被チャック部(後端部30)は、軸心に沿って長手方向に設けられた小径の細い通路であってクーラント流路31の一部を構成する軸心流路部31aを除き、ほぼ中実の形態であるため、圧縮強度が高い構造となっており、被チャック強度を確保できる形態になっている。なお、この後端部30を含めて最適化設計を行うことも可能であり、それによれば、例えば、材料を適切に節減できる形態とすることができる。
【0035】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0036】
10 先端側部位
10a 先端部
11 空洞部
12 外殻
13 三次元補強構造
14 連通空間
15 膨出部
20 切削刃用取付座部
21 吐出口
22 取付用雌螺子部
30 後端部
31 クーラント流路
31a 軸心流路部
31b 吐出口流路部
40 切削刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12