(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240307BHJP
B43K 29/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B43K3/00 N
B43K29/00 N
(21)【出願番号】P 2019182130
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518293701
【氏名又は名称】エスケセン エーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】308018154
【氏名又は名称】有限会社レトロバンク
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【氏名又は名称】松下 恵三
(74)【代理人】
【識別番号】100182604
【氏名又は名称】長谷川 二美
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケフォード・オルセン
(72)【発明者】
【氏名】スザンヌ・クリステンセン
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】実公昭33-013017(JP,Y1)
【文献】特開2019-136056(JP,A)
【文献】特開2008-023297(JP,A)
【文献】特開2007-033974(JP,A)
【文献】実開昭59-148378(JP,U)
【文献】実開昭61-074484(JP,U)
【文献】実開昭57-083888(JP,U)
【文献】実開昭54-094433(JP,U)
【文献】実公昭34-004820(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0036608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側にペン先を有すると共に後端側に中空筒状であって内部にオイルを封入した透明部分を有する本体と、
当該本体の透明部分の内側面に長手方向に設けた複数の係止部と、
短冊形状であって長辺端縁が一対の前記係止部に係止した状態で前記本体の透明部分の内部に配置される背景板と、
短冊形状であって長辺端縁が一対の前記係止部に係止した状態で前記本体の透明部分の内部に前記背景板と離して配置される透明な補助板と、
前記補助板と前記本体の透明部分との間に形成される空間に配されるフロート体と、
を備えた筆記具。
【請求項2】
更に、前記背景板は、湾曲状態で一対の前記係止部に係止して前記透明部分の内部に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の筆記具。
【請求項3】
更に、前記背景板と前記補助板との間に形成される空間に配される第二フロート体を有することを特徴とする請求項
1又は2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な本体内部に液体が封入され当該液体内を飾りが移動する筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の筆記具の一例を示す構成図である。この筆記具500は、本体51の後端側51bの半分程度が透明であり、この透明部分53の内部にオイルを封入すると共に当該透明内部53に絵などが表示されたフロート体7を入れた構成である。前記オイルは、透明であり所定の粘度を有するものであって前記フロート体7が重力で移動可能なものである。筆記具500の先端側にはボールペンなどの芯が内設される。
【0003】
前記本体51の透明部分の内部には長手方向に背景板55が設けられる。背景板55は、長手方向に対する直交断面方向で略中央に配置される。このため、円筒形状となる本体51の内部は背景板55により長手方向に二区画に分割される。フロート体7は、板状の小片でありかつその表面には任意の絵などが表示される。フロート体7は、オイルの内部を本体51の長手方向に沿って自重で移動する。筆記具500を立てた場合、自重で背景板55に沿って下がり、反対方向に回して立てた場合、逆方向に下がる。このように、フロート体7が移動することで、背景板55との相関で任意の動きやストーリーを表現する。
【0004】
例えば、背景板55に海中の絵が表示されており、フロート体7に魚の絵が表示されている場合、筆記具500を上下方向に反転させることで、前記フロート体7がオイルの流体抵抗により比較的ゆっくりと本体内を移動し、これにより魚が海中を移動しているような動きを表現する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】アシストオン、[online]、令和1年9月20日、インターネット〈URL:https://www.assiston.co.jp/3139〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の筆記具500は前記背景板55で本体内部が二分されており、各区画(背景版の表側又は裏側)で比較的大きな容積があるため前記フロート体7が小さいと前記背景板55に対して傾いて平行に移動しない場合がある。この場合、流体抵抗が大きくなってフロート体7の移動が緩慢になってしまう。また、斜めになると外から観察すると違和感が生じる。本発明は、係る問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る筆記具は、先端側にペン先を有すると共に後端側に中空筒状であって内部にオイルを封入した透明部分を有する本体と、当該本体の透明部分の内側面に長手方向に設けた複数の係止部と、短冊形状であって前記本体の透明部分の内部に配置される背景板と、短冊形状であって前記本体の透明部分の内部に前記背景板と離して配置される透明な補助板と、前記補助板と前記本体の透明部分との間に形成される空間に配されるフロート体とを備えたものである。
【0008】
また、本発明に係る筆記具は、先端側にペン先を有すると共に後端側に中空筒状であって内部にオイルを封入した透明部分を有する本体と、当該本体の透明部分の内側面に長手方向に設けた複数の係止部と、短冊形状であって長辺端縁が一対の前記係止部に係止した状態で前記本体の透明部分の内部に配置される背景板と、短冊形状であって長辺端縁が一対の前記係止部に係止した状態で前記本体の透明部分の内部に前記背景板と離して配置される透明な補助板と、前記補助板と前記本体の透明部分との間に形成される空間に配されるフロート体とを備えたものである。
【0009】
前記背景板は、湾曲状態で一対の前記係止部に係止して前記透明部分の内部に配置するようにするのが好ましい。更に、前記背景板と前記補助板との間に形成される空間に第二フロート体を有する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る筆記具を示す正面図である。
【
図9】
図1に示した筆記具の動作を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態2に係る筆記具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1に係る筆記具を示す正面図である。
図2は背面図、
図3は右側面図、
図4は平面図、
図5は底面図である。この筆記具100は、後端側1aが透明になると共に先端側1bにボールペンの芯を内設した本体1と、本体1の後端に設けたクリップ2とからなる。本体1の後端側1aは中空の筒状体となり径方向断面は円形である。透明部分3は径が略同じである。先端側1bは、中空の筒状体であり先端になるに従って径が小さくなる。先端付近にはスプライン状の加工が施され、当該先端を回転させることで内部のボールペンの先端が突出する(図示省略)。なお、先端側1bの構造は本発明の要旨ではないので詳細は省略する。
【0012】
前記本体1の後端側1aの透明部分3は均一径となりクリアな樹脂製となる。この後端側1aの内部空間はオイルが充填される。オイルは、所定の粘度を有する透明なものを使用する。またオイルに代えて水であっても良い。透明部分3の内側面には、係止部となる、長手方向に小さな凸部4が設けられる。この凸部4は、
図6に示すように、広いピッチと狭いピッチの交互で4か所設けられる。凸部4は断面が山形であるが、後述する背景板5の長辺端縁5aを係止できれば同形状に限定されない。例えば、断面が矩形または凹部でも良い。
【0013】
図7は、この筆記具100の組立図である。背景板5は樹脂製の薄板の短冊形状であり、表面には所定の絵が表示されている。同図の例では、海の中の絵が表示される。次に、この背景板5を短辺方向に多少湾曲させて透明部分3に差し入れる。この状態で背景板5は湾曲した状態で長辺端縁5aが広いピッチを形成する一対の前記凸部4により係止され、透明部分3の内部で固定される。絵の表示された面は凹面側5bとなる。
【0014】
続いて、透明の補助板6を前記透明部分3に挿入する。補助板6は、樹脂製の薄板の短冊形状であり、着色されていないものを用いるのが好ましい。また、補助板6には模様などが表示されていないものを使用するのが好ましい。この補助板6を短辺方向に多少湾曲させて透明部分3に差し入れる。この状態で補助板6は湾曲した状態で長辺端縁6aが広いピッチを形成する一対の前記凸部4により係止され、透明部分3で固定される。前記背景板5とは対称関係になるように凹面6bが形成される。また、背景板5と補助板6とは離れて配置されることになる。
【0015】
図8に示すように、上記背景板5と補助板6により透明部分3の内部空間は3区画に分割される。具体的には、背景板5と本体1との間の第一空間S1、背景板5と補助板6との間の第二空間S2、補助板6と本体1との間の第三空間S3、に区画される。各区画には上記の通りオイルが充填されている。
【0016】
透明部分3の第三空間S3には、フロート体7が入れられる。フロート体7は、背景板5に比べて小さな小片板体であって、その表面には絵が表示されている。例えば、フロート体7の表面には魚の絵が表示される。フロート体7は、第三空間S3に配置されるため、背景板5の表面との間に必ず第二空間S2が介在する。このため、背景板5とフロート体7との間に必ず一定の距離が確保されるため、背景板5とフロート体7との関係が立体的に表現される。
【0017】
また、第三空間S3は、
図8に示すように、フロート体7が移動する領域の断面積が小さくなるので、当該フロート体7の姿勢が背景板5に対して略平行を保つようになる。即ち、フロート体7が本体長手方向から傾いたり、内部で引っ掛かることを防止できる。このため、背景板5に対してフロート体7の絵が正しい位置になるので自然に見える。更に、補助板6は透明であるため背景板5の絵がきれいに見える。
【0018】
また、本体1の透明部分3が円形であることから、外部から見ると内部の背景板5の絵が拡大して見えてしまうところ、背景板5は湾曲した状態で保持されているので本体1の透明部分3のレンズ作用により背景板5が全体的に均一に見える。このため、背景板5の絵が自然に見えるものとなる。
【0019】
次に、第二空間S2に重さの異なる第二フロート体を入れることもできる(図示省略)。このようにすれば、第三空間S3のフロート体7と干渉することなく、第二フロート体が背景板5に沿って移動できる。第二フロート体の重さをフロート体7と異なるものとすれば、本体1を上下方向に立てた場合の移動速度が変わるので、背景板5及びフロート体7との関係で幅広い表現ができるようになる。
【0020】
図9は、本発明の筆記具の動作を示す説明図である。同図(a)に示すように、後端側1aが上になる姿勢にすると、透明部分3の中のフロート体7がオイルの流体抵抗を受けながらゆっくりと自重により下降する。このとき、フロート体7は、第一空間S1にあるため背景板5に対して略平行して移動する。次に、同図(b)に示すように、上下を反転させて先端側1bが上になる姿勢にすると、透明部分3の中のフロート体7がオイルの流体抵抗を受けながら後端側1bの方向にゆっくりと自重により下降する。このときも、フロート体7は、第一空間S1にあるため背景板5に対して略平行して移動する。
【0021】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る筆記具を示す説明図である。この筆記具200は、実施の形態1と略同一の構成であるが、背景板25と補助板26との取付形態が異なる。その他の構成は実施の形態1と同一であるからその説明を省略する。背景板25と補助板26はそれぞれの長辺端縁で連結固定される。そして、背景板25と補助板26とは断面形状がラグビーボール形状になるように前記透明部分3に挿入される。
【0022】
具体的には、背景板25と補助板26との長辺端縁どうしを接続し、この背景板25と補助板26との短辺方向の幅寸法が透明部分3の内径より大きいものとする。この状態で背景板25と補助板26との間が開くように幅方向に圧縮し、当該透明部分3の内部空間に挿入する。これにより、
図11に示すように、背景板25及び補助板26が湾曲した状態で保持され、上記第一空間S1、第二空間S2及び第三空間S3を形成する。
【0023】
実施の形態1と同様、透明部分3の第三空間S3にはフロート体7が入れられる。当該フロート体7は第三空間S3に配置されるため、背景板25の表面との間に必ず第二空間S2が介在する。このため、背景板25とフロート体7との間に必ず一定の距離が確保されることになり、その結果、背景板25とフロート体7との関係が立体的に表現される。
【0024】
また、第三空間S3は、フロート体7が移動する領域の断面積が小さくなるので、フロート体7の姿勢が背景板25に対して略平行を保つようになる。このため、背景板25に対してフロート体7の絵が正しい位置になるので自然に見える。更に、補助板26は透明であるため背景板25の絵がきれいに見える。まだ、背景板25は湾曲した状態で保持されているので本体1の透明部分3のレンズ作用により背景板25が全体的に均一に見える。このため、背景板25の絵が自然に見えるものとなる。
【0025】
なお、第二空間S2に重さの異なる第二フロート体71を入れることもできる。このようにすれば、第三空間S3のフロート体7と干渉することなく、本体1を上下方向に立てた場合の移動速度が変わるので、背景板25及びフロート体7との関係で幅広い表現ができるようになる。
【符号の説明】
【0026】
100 筆記具
1 本体
2 クリップ
3 透明部分
5 背景板
6 補助板
7 フロート体