(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】情報隠蔽シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 15/08 20060101AFI20240307BHJP
B42D 15/02 20060101ALI20240307BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20240307BHJP
B41M 5/44 20060101ALI20240307BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240307BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B42D15/08 Z
B42D15/02 501B
B41M5/42 220
B41M5/44 220
B32B27/00 Z
B32B27/16 101
(21)【出願番号】P 2020060521
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019072915
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390027203
【氏名又は名称】株式会社中川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】596153449
【氏名又は名称】株式会社タカラインコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】513310014
【氏名又は名称】太成二葉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 譲
(72)【発明者】
【氏名】小野木 昌平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 誠
(72)【発明者】
【氏名】荻野 隆
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-230098(JP,A)
【文献】特開2010-131762(JP,A)
【文献】特開2005-132098(JP,A)
【文献】特開2018-154099(JP,A)
【文献】特開平10-278425(JP,A)
【文献】特開2002-072893(JP,A)
【文献】特開2002-029180(JP,A)
【文献】特開2006-001212(JP,A)
【文献】特開2006-182978(JP,A)
【文献】特開2009-233935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/08
B42D 15/02
B41M 5/42
B41M 5/44
B32B 27/00
B32B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱シートの発色面上の全体又は一部に、当該感熱シートに印字・印刷された情報を隠蔽する情報隠蔽領域が設けられてなる情報隠蔽シートにおいて、
前記情報隠蔽領域は、前記感熱シートの発色面上に剥離層と樹脂被膜層とが積層され、この樹脂被膜層の上面に情報隠蔽層が設けられた構成を備え、
前記剥離層と樹脂被膜層が紫外線硬化型の塗液を塗工して形成されていることを特徴とする情報隠蔽シート。
【請求項2】
剥離層は、感熱シートのオーバーコート層の表面に紫外線硬化型剥離ニスを塗工して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報隠蔽シート。
【請求項3】
樹脂被膜層は、剥離層の上面に紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキを塗工して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報隠蔽シート。
【請求項4】
紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキは、紫外線硬化型アクリル樹脂変性ウレタン混合樹脂である請求項3に記載の情報隠蔽シート。
【請求項5】
樹脂被膜層の全体又は一部を、感熱シートの発色面上から除去するための分断線又は凹溝を情報隠蔽領域内に備えてなる請求項1から4の何れかに記載の情報隠蔽シート。
【請求項6】
情報隠蔽領域の表面に、情報隠蔽層の上面から樹脂被膜層と剥離層との境界面に至る深さの分断筋で囲われた剥離領域が設けられてなる請求項1から5の何れかに記載の情報隠蔽シート。
【請求項7】
情報隠蔽領域の表面に、情報隠蔽層の上面から樹脂被膜層と剥離層との境界面に至る深さの凹溝で囲われた剥離領域が設けられてなる請求項1から5の何れかに記載の情報隠蔽シート。
【請求項8】
樹脂被膜層の縁部又は剥離領域の縁部に、樹脂被膜層を指先で摘む起点として機能する剥離起点部が設けられてなる請求項5から7の何れかに記載の情報隠蔽シート。
【請求項9】
感熱シートの発色面上に、紫外線硬化型剥離ニスを塗布し、紫外光を
照射し硬化させて剥離層を形成する工程と、
前記硬化した剥離層の上面に、紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキを塗布し、紫外光を
照射し硬化させて樹脂被膜層を形成する工程と、
前記硬化した樹脂被膜層の上面に情報隠蔽層を設ける工程と、を含む情報隠蔽シートの製造方法。
【請求項10】
樹脂被膜層の全体又は一部を、感熱シートの発色面上から除去するための構造を情報隠蔽領域に設ける工程を含む請求項9に記載の情報隠蔽シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱式プリンターの印刷用紙として利用される記録シートにかかり、その表面に情報の秘匿を目的として前記プリンターで印字された情報を隠蔽する情報隠蔽層が設けられ、この情報隠蔽層を剥がすことで前記印字された情報を目視確認することができるように形成された構造のものに関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報などの秘匿情報を通知する手段として圧着ハガキが広く用いられているが、この圧着ハガキを作製するには専用のレーザープリンタや圧着機器などが必要なため、初期投資費用が大きくかかる。そのため、作製に要するコストを抑えるべく、作製する圧着ハガキの量がそれ程多くない場合も含めて、外部業者に作製を委託することが殆どであった。
【0003】
しかし、作製コストを抑えることができるといっても、外部業者に委託する費用が生じる分、内製するよりもコストがかかることに変わりはない。また、委託した先の外部業者において個人情報を含む秘匿情報が何らかの理由で漏洩する危険があることは避けられない。
【0004】
そこで、圧着ハガキに代えて、感熱紙の発色面側に疑似接着層を介してグラシン紙からなる基材を貼り付け、この基材の表面に隠蔽層を印刷してなる感熱記録多重シートを秘匿情報の通知手段として利用することが行われている。
この感熱記録多重シートは、出力の大きな感熱プリンターを用いて情報を印字し、印字した情報のうち、秘匿情報は隠蔽層で覆われて外側から見ることができないが、基材を剥離すれば、秘匿情報が露出して目視で確認することができるように形成されたものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記感熱記録多重シートは、秘匿情報を通知する手段として有用であるものの、その使用にあたり以下の点に留意する必要があった。
先ず、感熱記録多重シートに情報を印字・印刷するのに汎用の感熱式プリンターを用いた場合、標準の印字・印刷モードであると綺麗に印刷できなかったり印字が不鮮明になったりしやすい。
これは、基材であるグラシン紙が感熱紙の発色面に貼り付けてあるため、感熱式プリンターのサーマルヘッドからの熱が感熱紙に届き難く、また、グラシン紙が紙材であり、その内部層に空気が含まれて断熱性が高いため熱伝導の障害となって、汎用のプリンターのサーマルヘッドの熱では感熱紙を十分に発色させることができないからである。また、感熱紙に貼り付けるグラシン紙の厚さや、貼り付け方により表面にできる凹凸によって、さらに熱伝導性が悪化してサーマルヘッドの熱が伝わり難くなり、バーコードなどの微細な表示態様の情報について良好な印字品質が得られないという問題があった。
そのため、前記感熱記録多重シートに情報を印字・印刷するには、汎用のプリンターを高出力モードに設定して作動させたり、出力の大きな専用の感熱式プリンターを用いたりする必要があった。
【0007】
また、耐水性に劣り、わずかな濡れで使用できなくなることがあった。
すなわち、紙であるグラシン紙の層間に水が含浸することにより、グラシン紙と感熱紙が圧着した部分の剥離力よりも、グラシン紙内部の層間強度が小さくなり、グラシン紙自体で層間破壊して、グラシン紙を感熱紙との圧着面に沿って剥がすことができなくなり、感熱紙の情報印刷面を露出させることができなくなる不具合を生じることがあった。
前記のように、グラシン紙を用いた感熱記録多重シートは、汎用の感熱式プリンターの使用が難しく、耐水性が低いことから、例えば戸別に通知するガスや電気などの検針票やその請求書などに用いることができなかった。
【0008】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑み、モバイルプリンターを含む汎用の感熱式プリンターを用いて情報の印字・印刷が可能であり、耐水性に優れ、情報の秘匿が必要な各種の帳票やカード、郵便ハガキなどに利用することができる情報隠蔽シートを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、感熱シートの発色面上の全体又は一部に、当該感熱シートに印字・印刷された情報を隠蔽する情報隠蔽領域が設けられてなる情報隠蔽シートにおいて、
前記情報隠蔽領域は、前記感熱シートの発色面上に剥離層と樹脂被膜層とが積層され、この樹脂被膜層の上面に情報隠蔽層が設けられた構成を備え、
前記剥離層と樹脂被膜層が紫外線硬化型の塗液を塗工して形成されていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、情報隠蔽シートを汎用の感熱式プリンターにセットし、通常の感熱シートに印刷する場合と同様にして、その表面に情報を印字出力することが可能である。
このとき、秘匿すべき情報を情報隠蔽領域が設けられた部分に重ねて印字・印刷することで、印字・印刷された情報を情報隠蔽層で覆い隠して、外側から目視で確認することができない状態となる。
そして、情報隠蔽層が上面に設けられた樹脂被膜層を感熱シート上から除去すれば、感熱シートに印字・印刷された秘匿情報が露出して目視により確認することが可能となる。
【0011】
すなわち、本発明の情報隠蔽シートは、グラシン紙のような紙を用いず、感熱シートの発色面上に剥離層と樹脂被膜層をともに塗工により形成し、前記樹脂被膜層の上面に情報隠蔽層を印刷して情報隠蔽領域を形成してある。
感熱シート上に設けられる剥離層及びこれに重なる樹脂被膜層が、ともに塗工により薄膜状にコーティングがされて形成されているので、グラシン紙を用いたものよりも全体が肉薄となり、しかもグラシン紙のような空気層が介在することがないので、樹脂被膜層の上面の情報隠蔽層から感熱シートまでの熱伝達性が良好となる。また、剥離層と樹脂被膜層が塗工により形成されるので表面の平滑性が極めて高くなり、両層を平滑に形成することで、良好な印字濃度及び剥離性を得ることが可能となる。
前記グラシン紙のような熱の伝導を阻害する部材を含まないので、感熱式プリンターで情報を印字・印刷する際に、サーマルヘッドの熱を効率よく伝導させて、感熱シートに精密且つ鮮明に情報を印字・印刷することが可能である。また、濡れに弱い紙材を用いていないので、良好な耐水性を発揮することが可能である。
【0012】
前記構成の情報隠蔽シートにおいて、情報隠蔽領域は、情報隠蔽シートの利用態様に応じて、感熱シートの発色面上の全体に設けたり、一部に又は複数部に部分的に設けたりすることができる。
剥離層は、感熱シートの発色面上に紫外線硬化型剥離ニスを塗工して形成されていることが好ましい。
また、樹脂被膜層は、剥離層の上面に紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキを塗工して形成されていることが好ましい。紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキは、紫外線硬化型アクリル樹脂変性ウレタン混合樹脂であることが好ましい。
剥離層と樹脂被膜層を形成するにあたり、表面の平滑性を高めるために、公知のラミコート(LC処理)により加工するのが好適である。
また、前記樹脂被膜層の上面に形成される情報隠蔽層は、地紋印刷インキである墨インキで隠蔽印刷加工をして形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記構成の情報隠蔽シートにおいて、樹脂被膜層の全体又は一部を、感熱シートの発色面上から除去するための構造、例えば分断線や凹溝などを情報隠蔽領域が備えていることが好ましい。
樹脂被膜層を除去するための構造は、感熱シート上からの樹脂被膜層の除去、つまり樹脂被膜層を剥離層から剥離する操作を容易に行えるようにするための構造であり、情報隠蔽領域の表面に、情報隠蔽層の上面から樹脂被膜層と剥離層との境界面に至る深さの分断筋で囲われた剥離領域を形成し、前記分断筋で区画された周辺の領域はシートに残したままで、剥離領域のみが剥離層から剥離除去されるようにした形態が挙げられる。
他の形態として、樹脂被膜層を剥離層から剥離する操作を容易に行えるようにするための構造であり、情報隠蔽領域の表面に、情報隠蔽層の上面から樹脂被膜層と剥離層との境界面に至る深さの凹溝で囲われた剥離領域を形成し、前記凹溝で区画された周辺の領域はシートに残したままで、剥離領域のみが剥離層から剥離除去されるようにした形態が挙げられる。
これらの場合に、剥離領域の縁部に、樹脂被膜層を指先で摘む起点として機能する剥離起点部が設けられていてもよい。
これによれば、情報隠蔽シートの表面に配された情報隠蔽領域は、分断筋や凹溝で囲われた剥離領域とその周辺の領域とに区画され、剥離領域の端部を剥離起点として剥離操作することで、分断筋や凹溝に沿って当該領域を剥離層から引き剥がすことができ、情報隠蔽層が重なって見えなかった感熱シート上の、秘匿情報が印字・印刷された部分を露出させて、目視により確認が可能な状態にすることができる。なお、情報隠蔽シートを感熱式プリンターにセットして情報を印字・印刷する際、秘匿すべき情報が前記剥離領域内に印字・印刷されるようにレイアウトされる。
樹脂被膜層の縁部に剥離起点部を設け、樹脂被膜層の端部を指先で摘まんで捲り上げたり引き上げたりするなどして、樹脂被膜層の全体が感熱シートから剥離除去されるようにしてもよい。
前記剥離起点部は、樹脂被膜層を剥離除去する操作がし易くなるように、樹脂被膜層の縁部を指先で摘まめる加工が施された部位をいう。例えば、樹脂被膜層内に前記樹脂被膜層と剥離層との境界面に至る深さに分断筋や凹溝を設けることで、分断筋や凹溝に沿わせた指先で樹脂被膜層の縁部を掻き摘まめるような加工や、ペン先などを情報隠蔽シートの裏面側から押し当てたり分断筋や凹溝が山折れするように情報隠蔽シートを湾曲させたりしたときに樹脂被膜層の縁部が剥離層から捲れ上がって指先で摘まめるような加工、樹脂被膜層の縁部に摘み部を形成する加工などが挙げられる。
【0014】
また、本発明の情報隠蔽シートの製造方法は、感熱シートの発色面上に、紫外線硬化型剥離ニスを塗布し、紫外光を照射し硬化させて剥離層を形成する工程と、
前記硬化した剥離層の上面に、紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキを塗布し、紫外光を照射し硬化させて樹脂被膜層を形成する工程と、
前記硬化した樹脂被膜層の上面に情報隠蔽層を設ける工程と、を含むことを特徴とする。
また、樹脂被膜層の全体又は一部を、感熱シートの発色面上から除去するための構造を情報隠蔽領域に設ける工程を含むことを特徴とする。
情報隠蔽シートの表面に分断筋で囲った剥離領域を設ける場合、前記樹脂被膜層に情報隠蔽層が形成された後にシート表面に分断筋を入れる加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の情報隠蔽シートの正面図である。
【
図3】
図1の情報隠蔽シートの樹脂被膜層の一部を捲り上げた状態の外観図である。
【
図4】
図1の情報隠蔽シートの要部拡大横断面図である。
【
図5】
図1の情報隠蔽シートに印字する態様と樹脂被膜層を捲り上げる態様を表したシートの要部拡大横断面図である。
【
図6】情報隠蔽領域内に分断筋で囲った剥離領域を設けた情報隠蔽シートの正面図である。
【
図7】
図6の情報隠蔽シートの樹脂被膜層を捲り上げる態様を表したシートの要部拡大横断面図である。
【
図8】
図6の情報隠蔽シートの剥離領域の一部を捲り上げた状態の外観図である。
【
図9】剥離領域を設けた情報隠蔽シートの他の形態の正面図である。
【
図10】剥離領域を設けた情報隠蔽シートのさらに他の形態の正面図である。
【
図11】剥離領域を設けた情報隠蔽シートのまたさらに他の形態の正面図である。
【
図12】情報隠蔽領域内に凹溝で囲った剥離領域を設けた情報隠蔽シートの正面図である。
【
図13】
図12の情報隠蔽シートの樹脂被膜層を捲り上げる態様を表したシートの要部拡大横断面図である。
【
図14】凹溝で囲った剥離領域を設けた情報隠蔽シートの他の形態の正面図である。
【
図15】凹溝で囲った剥離領域を設けた情報隠蔽シートのさらに他の形態の正面図である。
【
図16】分断筋と凹溝を組み合わせて剥離領域とした形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の情報隠蔽シートを示している。
この情報隠蔽シート1は、例えば行政機関や民間事業者などがその相手先に個人情報などの秘匿が必要な情報を、郵便ハガキを用いて通知する場合の態様であり、情報隠蔽シート1には、感熱式のプリンターを使用して、郵送に必要な情報と秘匿情報とが印字・印刷される。
【0017】
郵便ハガキを構成する情報隠蔽シート1は、感熱式のプリンターを用いて情報の印字・印刷が可能な感熱シート2からなり、その表面側の上部に、例えば書面の名称(「郵便ハガキ」)や、郵送先の郵便番号や住所、受取人の氏名、郵送元の郵便番号や住所、電話番号などの郵送元を特定する情報などの秘匿の必要のない情報(以下、「非秘匿情報」ともいう。)の印字部1a、それよりも下側に個人情報などの秘匿する必要のある情報(以下、「秘匿情報」ともいう。)の印字部1bがそれぞれ配置され、この情報印字部1bを、後述する情報隠蔽領域で覆って、情報印字部1bに印字・印刷した情報の内容を外側から目視確認することができないように形成してある。
そして、
図3に示されるように、情報隠蔽領域を構成する樹脂被膜層4を剥離除去して情報印字部1bを露出させることで印字・印刷された秘匿情報を確認することができるように形成してある。
【0018】
詳しくは、
図4に示されるように、情報隠蔽シート1は、感熱シート2の発色面上であって前記秘匿情報の情報印字部1bに、剥離層3、樹脂被膜層4及び隠蔽層5を順に重ねて印刷し、積層一体化させてなる情報隠蔽領域を配置した形態に形成してある。
【0019】
感熱シート2は、基紙21上に感熱発色層22を設け、この感熱発色層22の表面を透明なオーバーコート層23で被覆して、例えば50μm~200μm程度の厚みに形成してある。
感熱発色層22は常温では無色であり、
図5に示されるように、感熱式プリンターのサーマルヘッド7による加熱がされると黒色等適宜な色に発色(同図中、符番22a)して、情報の印字・印刷がなされて外側から目視確認することができるようになっている。
【0020】
情報隠蔽領域を構成する剥離層3は、前記感熱シート2の感熱発色層22を覆うオーバーコート層23の表面に、紫外線硬化型剥離ニスを適宜な厚みで塗布し、紫外光を照射して硬化させることにより形成してある。
剥離層3は、感熱シート2の発色面上であって後述する樹脂被膜層4が重ねて設けられる部分、つまり情報隠蔽シート1の秘匿情報の印字部1bの領域に沿って形成してある。
紫外線硬化型剥離ニスを発色面上に塗布する厚さは、例えば1μm~5μmに設定されていることが好ましい。剥離層3の厚さが1μmより小さいと樹脂被膜層4を剥離する操作がし難くなり、5μmを超えるとサーマルヘッドからの熱の伝導性が低下し、印字・印刷が不鮮明となる虞があることから、前記範囲の厚みに設定するのが好ましい。
剥離層3は、秘匿情報の印字部1bの領域に沿って、感熱シート2の発色面の一部に部分的に、又は全体に形成することができる。
【0021】
樹脂被膜層4は、前記剥離層3の表面に、紫外線硬化型アクリル樹脂変性ウレタン混合樹脂からなる、紫外線硬化型ウレタン/アクリル混合樹脂インキを適宜な厚みで塗布し、紫外光を照射して硬化させることにより形成してある。
紫外線硬化型ウレタン/アクリル樹脂インキを、剥離層3の表面に塗布する厚さは、5μm~30μmに設定されていることが好ましい。樹脂被膜層4の厚さが5μmより小さいと樹脂被膜層4の剥離操作がし難くなり、30μmを超えるとサーマルヘッドからの熱の伝導性が低下し、印字・印刷が不鮮明となる虞があることから、前記範囲の厚みに設定するのが好ましい。薄い皮膜を複数層に積層して、上記厚さの範囲内に樹脂被膜層4を設けることが好ましい。
樹脂被膜層4の四隅縁部のうちの少なくとも一つの縁部には、
図1に示されるように、樹脂被膜層4を剥離除去する際に樹脂被膜層4を指先で摘む起点として機能する剥離起点部である摘み部4aを設けてある。
【0022】
情報隠蔽層5は、樹脂被膜層4の表面に墨インキで地紋印刷をするなどして、前記秘匿情報の印字部1bに印字された情報が外側から見えないように加工した部分である。
情報隠蔽層5は、秘匿情報の印字部1bの領域に沿って、樹脂被膜層4の全体又は一部に設けることができる。
【0023】
また、
図2に示されるように、感熱シート2の基紙21の裏面側にも、情報秘匿シート1の裏側から秘匿情報が透過して見えることを防止するための情報隠蔽層6を設けてある。
【0024】
このような構成の情報隠蔽シート1は、例えば以下の工程により製造することができる。
【0025】
感熱シート2を、その原反シートから繰り出しながら、先ず、その発色面に紫外線硬化型剥離ニスを塗布し、LC処理により、紫外光を照射し硬化させて剥離層3を形成する。
次いで、硬化した前記剥離層3の表面に、紫外線硬化型ウレタン/アクリル混合樹脂インキを塗布し、LC処理により、紫外光を照射し硬化させて適宜な厚みの樹脂被膜層4を形成する。
そして、硬化した前記樹脂被膜層4の表面に、墨インキで地紋模様を印刷して情報隠蔽層5を形成し、その後、前記加工がなされた原反シートを切断することで情報隠蔽シート1を得ることができる。
感熱シート2の裏面側に設ける情報隠蔽層6は、前記情報隠蔽層5を形成するのと同時に、又は情報隠蔽層5を形成した後に地紋模様を印刷することで形成することができる。予め前記原反シートの裏面に設けられていてもよい。
なお、上記剥離層3、樹脂被膜層4、情報隠蔽層5は何れも印刷方式により塗工、印刷して形成することができる。すなわち、剥離層3は感熱シート2のオーバーコート層23に印刷機で必要な部分に版のパターンで塗工、印刷され、樹脂被膜層4も同じく塗工、印刷され、情報隠蔽層5も同じく塗工、印刷される。
【0026】
このように形成された情報隠蔽シート1は、これを汎用の感熱式プリンターにセットし、通常の感熱シートに印刷する場合と同様にして、その表面に情報を印字出力することができる。
このとき、非秘匿情報の印字部1aに印字された情報は目視で確認することができるが、秘匿情報の印字部1bに印字された情報は樹脂被膜層4の表面に印刷された情報隠蔽層5で覆い隠されるため、外側から確認することができない。
【0027】
そして、樹脂被膜層4の縁部に設けた摘み部4aを摘んで、樹脂被膜層4を捲り上げ、そのまま感熱シート2の表面から剥離除去すれば、秘匿情報の印字部1bが露出して、この部分に印字・印刷された情報を目視により確認することが可能となる。
【0028】
図6は、情報隠蔽シート1に設けられた情報遮蔽領域の表面、つまり感熱シート2上の剥離層3、樹脂被膜層4及び情報隠蔽層5が積層形成された部分の表面を、分断筋8で剥離領域9とその周辺の部分に区画し、剥離領域9の端部を摘まんで引き上げることで、この領域の樹脂被膜層4が剥離層3から剥離除去されて、秘匿情報の印字部1bが露出するように設けたものである。
【0029】
詳しくは、前記と同様に、感熱シート2のオーバーコート層23上に紫外線硬化樹脂を塗布し、LC処理により剥離層3を形成し、次いで、
図7に示されるように、剥離層3の上面とその周辺の感熱シート2の上面を覆うように紫外線硬化型ウレタン/アクリル混合樹脂インキを塗布し、LC処理により、樹脂被膜層4を適宜な厚みに積層し、この樹脂被膜層4の上面全体に重ねて情報隠蔽層5を設けて形成してある。
そして、この各層が積層形成された部分の表面に、情報隠蔽層5の上面から樹脂被膜層4と剥離層3の境界面に至る深さの分断筋8を四角枠状に形成し、この分断筋8で囲われた部分を、樹脂被膜層4と情報隠蔽層5が重なり合った剥離領域9としてある。
剥離領域9の縁部は、分断筋8に沿わせた指先で樹脂被膜層4の縁部を掻き摘まめることのできる剥離起点部となっている。
【0030】
このように、情報隠蔽シート1の表面が、分断筋8で囲われた剥離領域9とその周辺の領域とに区画されているので、剥離領域9の縁部の剥離起点部を摘まんで引き上げれば、
図8に示されるように、剥離領域9内の樹脂被膜層4を分断筋8に沿って剥離層3から引き剥がすことができ、情報隠蔽層5が重なって隠れていていた、秘匿情報の印字部1bに印字・印刷された秘匿情報を露出させて目視により確認することが可能となる。
この場合、剥離領域9の一端に剥離のきっかかとなる摘まみ部を設けてもよい。また、分断筋8は、適宜な深さに設けた連続したスリットやミシン目線であってもよい。
【0031】
前記情報隠蔽領域内に分断筋8で略四角形に区画した剥離領域9を設け、この剥離領域9の縁部に剥離起点部を配した情報隠蔽シート1の他の形態を
図9から
図11に示す。
【0032】
図9に示された情報隠蔽シート1は、剥離領域9の四隅角部のうちの一つの角部を傾斜した分断筋81aで縁取るとともに、この分断筋81aと直交して剥離領域9の外方に伸びた分断筋81bを設けて形成してある。
この情報隠蔽シート1によれば、両分断筋81a,81bが交差した部分に向けて、情報隠蔽シート1の裏面側からペン先などでスポット的に力を加えたときに、樹脂被膜層4に前記交差した部分に沿った捲れ上がりが形成され、この捲れた上がった部分を剥離起点部として指先で摘まんで引き上げることで、剥離領域9を分断筋8に沿って感熱シート2の表面から簡単に剥離除去することが可能である。
【0033】
図10に示された情報隠蔽シート1は、剥離領域9の四隅角部のうちの一つの角部に傾斜した長い分断筋82を設けて形成してある。
この情報隠蔽シート1によれば、分断筋82が山折れするように当該分断筋82に沿って情報隠蔽シート1を湾曲し或いは折り曲げると、樹脂被膜層4に分断筋82に沿った割れ目ができて縁部を指先で摘まめる状態となり、この部分を剥離起点部として摘まんだまま引き上げることで、剥離領域9を分断筋8に沿って感熱シート2の表面から簡単に剥離除去することが可能である。
【0034】
図11に示された情報隠蔽シート1は、剥離領域9の四隅角部のうちの一つの角部に、剥離領域9の外方へ膨らんでいて略C字形に湾曲した分断筋83を設けて形成してある。
この情報隠蔽シート1によれば、指の爪を湾曲した分断筋83に沿わせて掻いたり押し込んだりすれば、分断筋83に沿って樹脂被膜層4が捲れて縁部を指先で摘まめる状態となり、この部分を剥離起点部として剥離操作することで、剥離領域9を分断筋8に沿って感熱シート2の表面から簡単に剥離除去することが可能である。
【0035】
図12は、情報隠蔽シート1の情報遮蔽領域の表面を、前記分断筋8に代えて細幅で線状に連続した凹溝10により、剥離領域9とその周辺の部分に区画したものであり、凹溝10で囲われた剥離領域9の端部を摘まんで引き上げることで、この領域の樹脂被膜層4が剥離層3から剥離除去されて、秘匿情報の印字部1bが露出するように設けたものである。
【0036】
上記凹溝10は、感熱シート2のオーバーコート層23上に剥離層3を形成し、その上に樹脂被膜層4を積層し、さらに樹脂被膜層4の上面に情報隠蔽層5を形成するときに、前記樹脂被膜層4及び情報隠蔽層5内に、両層が塗工されない部分を細幅で線状に配置して形成したものである。
具体的には、感熱シート2のオーバーコート層23上に紫外線硬化樹脂を塗布し、LC処理により剥離層3を形成し、次いで、剥離層3の上面とその周辺の感熱シート2の上面を覆うように紫外線硬化型ウレタン/アクリル混合樹脂インキを塗布し、LC処理により、樹脂被膜層4を適宜な厚みに積層する。このときに、
図13に示されるように、剥離層3の周縁よりも内側で樹脂被膜層4が塗工されていない部分を細幅で剥離層3の周辺に沿って四角枠状に配置し、さらに、前記樹脂被膜層4が塗工されていない部分を除く、樹脂被膜層4の上面に全体に情報隠蔽層5を設けることで、樹脂被膜層4及び情報隠蔽層5内に両層が塗工されていない凹溝10が形成され、この凹溝10で囲われた部分が樹脂被膜層4と情報隠蔽層5が重なり合った剥離領域9となっている。
図12に示された感熱シート2の剥離領域9の左下角部には、樹脂被膜層4を摘まんで剥離するときの起点となる部分を示唆する太線の印刷がしてある。
【0037】
この情報隠蔽シート1によれば、地紋模様が印刷された情報隠蔽層5内に、模様の印刷がされていない凹溝10がリング状にレイアウトしてあるので、利用者に対して、この凹溝10で囲われた部分が捲って剥離除去する剥離領域9の部分であることを特定して判別せしめることができる。凹溝10で囲われた部分の樹脂被膜層4の縁部を摘まみ上げれば、樹脂被膜層4が凹溝10に沿って捲れ上がり、簡単な操作で剥離領域9を感熱シート2の表面から剥離除去することが可能である。
【0038】
また、凹溝10は、樹脂被膜層4及び情報隠蔽層5を塗工及び印刷により形成する過程で前記両層の印刷パターンを適宜に設定することで形成することができるので、刃型を用いて前記分断筋8やスリットを感熱シート2に形成する場合のような、型を製作したり消耗した刃型に取り換えたりする手間は不要であり、情報隠蔽シート1の作製コストを低廉に抑えることが可能である。
また、刃型で前記分断筋8やスリットをつける場合よりも、印刷パターンで凹溝10を設ける方が、凹溝10の形状や幅の設定といった設計上の自由度が増し、加工精度が良好であるというメリットもある。
【0039】
図14に示された情報隠蔽シート1は、凹溝10で囲われた剥離領域9の左下角部に、凹溝10の縁部を湾曲させて幅を広くした部分を設けたものである。このように、凹溝10の太さを部分的に変えることにより、剥離除去する剥離領域9の位置が目立って当該領域の視認性を向上させることが可能である。
【0040】
図15に示された情報隠蔽シート1は、感熱シート2の表面に、剥離層3と樹脂被膜層4を積層した部分を複数個所に設け、各部の樹脂被膜層4の上面に地紋模様を印刷して情報隠蔽層5を形成して情報隠蔽領域とするとともに、各情報隠蔽領域の表面を、凹溝10により、剥離領域9とその周辺の部分に区画し、各情報隠蔽領域の凹溝10で囲われた剥離領域9の樹脂被膜層4を剥離除去することで、秘匿情報の印字部1bが露出して確認することができるように設けたものである。
【0041】
また、
図16に示された情報隠蔽シート1は、前記分断筋8と凹溝10を組み合わせたものである。
より詳しくは、感熱シート2の表面に形成された情報隠蔽領域の内側周辺を分断筋8で剥離領域9とその周辺の部分に区画するとともに、剥離領域9の左下角部に太幅の凹溝10を設けて、剥離除去する剥離領域9の位置の視認性を向上させ、凹溝10に面する剥離領域9の端部を摘まんで引き上げることで、この領域の樹脂被膜層4が剥離層3から剥離除去されて、秘匿情報の印字部1bが露出するように設けたものである。
なお、前記各図には示してないが、感熱シート2の凹溝10が設けられた部分の近傍の余白に、例えば、「ここから剥がしてください。」などといった剥離領域9の剥離操作を促す説明が印刷されていてもよい。
【0042】
前記図示した情報隠蔽シート1は、郵送ハガキに適用した態様としたが、個人情報やその他の秘匿情報が印字される他の帳票、例えば公共料金の請求書やラベル、カード、ガスや水道の検針票などにも適用が可能である。
情報隠蔽シート1上の非秘匿情報の印字部1aと秘匿情報の印字部1bは適宜な位置や大きさに配置され、秘匿情報の印字部1bの配置領域に応じて、剥離層3、樹脂被膜層4及び情報隠蔽層5を、感熱シート2の発色面上に部分的に又は全体に亘って設けることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 情報隠蔽シート、2 感熱シート、21 基紙、22 感熱発色層、23 オーバーコート層、3 剥離層、4 樹脂被膜層、5,6 情報隠蔽層、7 サーマルヘッド、8 分断筋、9 剥離領域、10 凹溝