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特許7449543カルボン酸アミド化合物の製造方法及び触媒並びにフロー製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】カルボン酸アミド化合物の製造方法及び触媒並びにフロー製造システム
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20240307BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240307BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20240307BHJP
   C07C 237/12 20060101ALN20240307BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
C07C231/02
B01J29/70 Z
B01J29/08 Z
C07C237/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020022753
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127318
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 一彰
(72)【発明者】
【氏名】堀部 貴大
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-000050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0142322(US,A1)
【文献】特開2017-144424(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068770(WO,A1)
【文献】特表2010-538021(JP,A)
【文献】特開2015-101554(JP,A)
【文献】特開2015-101553(JP,A)
【文献】Ke Wang et al.,Chem. Commun.,2018年,54,pp.5410-5413,https://doi.org/10.1039/C8CC02558D
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された触媒存在下で、カルボン酸とアミンを反応させ
前記強酸は、HBF 、HBF ・OEt およびBF ・OEt から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするカルボン酸アミド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記カルボン酸がα位に不斉炭素を有するカルボン酸である請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸がアミノ酸又はアミノ酸誘導体である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アミンがアミノ酸又はアミノ酸誘導体である請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトから水を除外した化学式がNaO・Al・2SiO又は0.7CaO・0.3NaO・Al・2SiOで表される請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成され
前記強酸は、HBF 、HBF ・OEt およびBF ・OEt から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、アミド結合形成用触媒。
【請求項7】
カルボン酸アミド化合物のフロー製造システムであって、
上流から順に、
カルボン酸とアミンの混合溶液を下流の触媒部に導入する導入経路と、
ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された触媒が担持され、前記カルボン酸と前記アミンの脱水縮合反応が進行する触媒部と、
前記触媒部から、カルボン酸アミド化合物を含有する反応溶液を排出する排出経路と、を備え
前記強酸は、HBF 、HBF ・OEt およびBF ・OEt から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするフロー製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドなどのカルボン酸アミド化合物の製造方法、及び、当該製造方法に使用する触媒、並びに、カルボン酸アミド化合物のフロー製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オリゴペプチドや環状ペプチドをはじめとする医農薬品に注目が集まっている(非特許文献1を参照。)。
【0003】
ペプチドなどのカルボン酸アミド化合物を合成する手法の一つに、カルボン酸とアミンの脱水縮合反応がある。入手容易なカルボン酸とアミンを用いる脱水縮合反応により、アミド結合を形成することができるので、かかる脱水縮合反応は入手容易で安価な原料から付加価値の高い生成物を生み出すことのできる直接的かつ理想的手法であるといえる。
【0004】
しかしながら、カルボン酸とアミンの直接的な脱水縮合反応においては、カルボン酸とアミンとの酸塩基反応による安定な塩の形成が脱水縮合反応の障壁となっているため、高温での反応条件を必要とし、かつ、触媒を用いた場合であっても、必ずしも、所望の反応が選択的に進行するとはいえなかった。特に、カルボキシ基のα位の炭素が不斉炭素である光学活性な原料を用いた場合、不斉炭素の立体配置が維持されず、ラセミ化又はエピ化が生じることがあった。
【0005】
そのため、既存のアミド結合の形成方法としては、種々の縮合剤を用いて、カルボン酸を活性なアシル中間体とし、その後、アシル中間体へのアミンの求核反応によりアミド結合を形成させるのが一般的である(非特許文献2を参照。)。かかる方法は、医薬品合成にも用いられる信頼性の高いものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. L. Lau, M. K. Dunn Bioorg. Med. Chem. 2018, 26, 2700-2707.
【文献】C. A. G. N. Montalbetti, V. Falque Tetrahedron, 2005, 61, 10827-10852.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DCCやHBTUなどの縮合剤を用いる既存のアミド結合の形成方法では、アシル中間体がそれ自身のα位のプロトンも活性化してしまうため、生成物のラセミ化又はエピ化や他の副反応が問題となる。また、縮合剤を用いる既存のアミド結合の形成方法では、カルボン酸に対して当モル量の縮合剤が必要である。さらに、縮合剤を用いる既存のアミド結合の形成方法は、反応後に縮合剤由来の副生成物が生成されるので、環境調和型反応であるとは言い難い。以上の観点から、DCCやHBTUなどの縮合剤を用いることなく、カルボン酸とアミンの脱水縮合反応を行うことができる新たな製造方法、及び、触媒の開発が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、カルボン酸とアミンの脱水縮合反応を行うことができる新たな製造方法、及び、触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
カルボン酸とアミンの脱水縮合反応について種々の検討を重ねた結果、本発明者はホウ素を含有する強酸とゼオライトを共存させた環境下で、所望の反応が促進されることを知見した。本発明はかかる知見に基づき完成された。
【0010】
本発明のカルボン酸アミド化合物の製造方法は、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成される触媒存在下で、カルボン酸とアミンを反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカルボン酸アミド化合物の製造方法により、カルボン酸アミド化合物を効率的に合成することができる。また、光学活性な原料を用いた場合には、カルボン酸アミド化合物のラセミ化又はエピ化を抑制することができる。さらには、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成される触媒は固体なので、反応溶液からの除去が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】代表的なカルボン酸アミド化合物3aのH-NMRチャートである。
図2】代表的なカルボン酸アミド化合物3aの13C-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0014】
本発明のカルボン酸アミド化合物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ということがある。)は、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成される触媒(以下、「本発明の触媒」ということがある。)存在下で、カルボン酸とアミンを反応させることを特徴とする。
【0015】
本発明の触媒は、カルボン酸とアミンの脱水縮合反応によるアミド結合形成用の触媒として作用する。本発明の触媒は固体なので、取り扱いが容易であるし、反応終了時に簡便な方法で除去することもできる。また、本発明の触媒を担持させた担持体を使用することで、工業的に有利な製造システムを構築することもできる。
【0016】
本発明の触媒の使用態様としては、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトを混合して形成された本発明の触媒を単離して用いてもよいし、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトを混合して得られる本発明の触媒を含む懸濁液をそのまま分離せずに用いてもよい。また、反応系内で本発明の触媒を形成させてもよい。
【0017】
ゼオライトとは、多孔性の結晶性アルミノ珪酸塩であり、化学式M2/XO・Al・mSiO・nHO(ただし、MはX価の金属である。mはm≧2を満足する。nはn≧0を満足する。)で表される。
ゼオライトは強酸性条件下で変性することが知られている。そのため、ホウ素を含有する強酸がゼオライトの表面に作用することで、ゼオライトの表面が変性し、アミド化に適した触媒が形成されると考えられる。
【0018】
ホウ素を含有する強酸としては、ゼオライトを変性させる程度のものであればよく、ゼオライトと反応してゼオライトに対してホウ素を供与し得る強酸であるのが好ましい。ホウ素を含有する強酸としては、1種類を採用してもよく、複数種類を併用してもよい。ホウ素を含有する強酸としては、ルイス酸でもよいし、ブレンステッド酸でもよい。
【0019】
ホウ素を含有する強酸を用いた場合には、ゼオライトの表面に、B-O-B結合を有する活性中心となる場が形成され得ると推定される。ホウ素を含有する強酸としては、ホウ素に加えてFを含有するB及びF含有酸を選択するのが好ましい。FはゼオライトのSiとの親和性が高いので、B及びF含有酸を用いた場合には、フッ素アニオンに因り、ゼオライトの変性が促進されて、活性中心となる場が速やかに形成され得ると推定されるためである。
【0020】
ホウ素を含有する強酸には無機酸と有機酸がある。ここで、合成目標のカルボン酸アミド化合物は有機物であり、また、本発明の製造方法においては反応溶媒として有機溶媒を使用するのが好ましいので、カルボン酸アミド化合物及び有機溶媒とホウ素を含有する強酸との分離の容易性の点から、ホウ素を含有する強酸としては無機酸を選択するのが好ましい。
【0021】
ホウ素を含有する強酸のうち無機酸としては、HBF、BF・EtO、BBr、BCl、B(OTf)を例示できる。
【0022】
ホウ素を含有する強酸のうち有機酸としては、RBX(Rはアルキル基、アリール基などの有機基である。Xはハロゲン又はOTfから選択される。なお、TfとはCFSOの略称である。)を例示でき、その具体例として、PhBCl、PhBBr、MeBBrを例示できる。
【0023】
ホウ素を含有する強酸は、触媒形成時に、系内で発生させてもよい。
例えば、HFとBFを混合すること、1モルのBHと4モルのHFを混合すること、又は、NaBFと強酸のブレンステッド酸を混合することで、系内でHBFを発生することができる。また、NaBFR(Rはアルキル基、アリール基などの有機基である。)と強酸のブレンステッド酸を混合することで、ホウ素を含有する強酸であるHBFRを発生することができる。
【0024】
ゼオライトは、脱水処理を施した上で、用いるのが好ましい。
ゼオライトの骨格構造としては、LTA、FER、MWW、MFI、MOR、LTL、FAU、BEAを例示でき、A型と呼称されるLTAが好ましい。
【0025】
特に好ましいゼオライトとして、一般にMS4A、MS4Å又はモレキュラーシーブ4Aなどと称される化学式NaO・Al・2SiO・9/2HO(水を除外した化学式はNaO・Al・2SiO)で表されるもの、及び、一般にMS5A、MS5Å又はモレキュラーシーブ5Aなどと称される化学式0.7CaO・0.3NaO・Al・2SiO・9/2HO(水を除外した化学式は0.7CaO・0.3NaO・Al・2SiO)で表されるものを挙げることができる。
【0026】
ゼオライトは孔を有するので、本発明の製造方法で生じるHOを孔内に吸着することが期待される。孔の径が大きすぎると、原料の吸着が懸念されるので、適度な径を有するゼオライトが好ましいと考えられる。
好適なゼオライトとして、径に有効直径0.4nm未満又は0.5nm未満の分子が吸着され、有効直径0.5nmを超える分子が吸着されないものを挙げることができ、より好適なゼオライトとして、径にn-ブタノールが吸着され、有効直径0.5nmを超える分子が吸着されないものを挙げることができる。
【0027】
ホウ素を含有する強酸とゼオライトの割合としては、ホウ素を含有する強酸1モルに対してゼオライト500~6000gの範囲内が好ましく、ゼオライト600~4000gの範囲内がより好ましく、ゼオライト800~3000gの範囲内がさらに好ましく、ゼオライト1000~2500gの範囲内が特に好ましい。
ホウ素を含有する強酸とゼオライトの割合が適正であれば、本発明の触媒において活性中心となる場が好適な分布状態でゼオライト表面に形成されると考えられる。
【0028】
原料のカルボン酸としては、如何なる化学構造のものでもよい。アミド結合を形成する上で不都合な置換基を有するカルボン酸を使用する場合には、保護基でアミノ基などの置換基を保護した上で原料として使用すればよい。
本発明の製造方法は原料、中間体、生成物のラセミ化やエピ化を抑制するので、原料のカルボン酸としては、α位に不斉炭素を有する光学活性なものを採用してもよい。原料のカルボン酸としては、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を採用してもよい。
【0029】
原料のアミンとしては、第一級アミン又は第二級アミンであれば、如何なる化学構造のものでもよい。アミド結合を形成する上で不都合な置換基を有するアミンを使用する場合には、保護基でカルボキシ基などの置換基を保護した上で原料として使用すればよい。原料のアミンとしては、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を採用してもよい。
【0030】
原料のカルボン酸及び/又はアミンに使用されるアミノ酸としては、アミノ基及びカルボキシ基を有する有機化合物であれば限定されない。具体的なアミノ酸として、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドを例示できる。より具体的なアミノ酸として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、セレノシステイン、ピロリシンを例示できる。
【0031】
原料のカルボン酸とアミンの割合としては、カルボン酸1モルに対して過剰量のアミンを使用するのが好ましい。具体的には、カルボン酸1モルに対してアミンを1~2モル使用するのが好ましく、1.05~1.8モル使用するのがより好ましく、1.1~1.6モル使用するのがさらに好ましく、1.2~1.5モル使用するのが特に好ましい。
【0032】
原料のカルボン酸及びアミンの量と、本発明の触媒の量との関係は、特に制限されない。本発明の触媒の量が多いほど、製造時間は短縮するといえる。ただし、触媒として使用する意義を考慮すると、原料に対して本発明の触媒の量が多すぎるのは無駄である。
【0033】
バッチ法でカルボン酸アミドを製造する場合であって、本発明の触媒をin situで形成させる場合においては、原料のカルボン酸に対するブレンステッド酸のモル比として、0.1~1、0.15~0.9、0.2~0.7、0.2~0.5の範囲を例示でき、原料のアミンに対するブレンステッド酸のモル比として、0.1~1、0.15~0.5、0.2~0.3の範囲を例示できる。
【0034】
本発明の製造方法においては、反応溶媒として有機溶媒を使用するのが好ましい。有機溶媒としては、原料のカルボン酸及びアミンが溶解するものが好ましい。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドを例示できる。
【0035】
本発明の製造方法は加熱条件下で実施されるのが好ましい。加熱温度としては、40~120℃、40~110℃、40~100℃、50~90℃、60~80℃を例示できる。また、有機溶媒と水の共沸点以上であって有機溶媒の沸点以下の範囲内の温度で加熱してもよい。例えば、ベンゼンと水の共沸点は69.3℃であり、トルエンと水の共沸点は85℃であり、キシレンと水の共沸点は93.5℃であり、テトラヒドロフランと水の共沸点は63.4℃であり、1,4-ジオキサンと水の共沸点は87.8℃であり、ジエチルエーテルと水の共沸点は34.2℃であり、ジイソプロピルエーテルと水の共沸点は62.2℃であり、ジクロロメタンと水の共沸点は38.1℃であり、クロロホルムと水の共沸点は56.1℃であり、四塩化炭素と水の共沸点は66℃である。
なお、加熱温度をさらに高くすれば製造時間を短縮し得るものの、ラセミ化やエピ化などの不都合な現象や他の副反応が生じることが懸念される。
【0036】
本発明の製造方法におけるカルボン酸とアミンの反応時間としては、加熱温度や原料、触媒の量に応じて、適宜決定すればよい。また、製造装置に分析装置を組み合わせて、反応溶液におけるカルボン酸アミド化合物の濃度を測定しながら製造反応を行ってもよい。
本発明の製造方法における反応容器としては、使用する物質及び生成される物質に対して耐性に優れるガラス製材料、金属製材料又は樹脂製材料のものが選択される。反応容器に、ディーンスターク装置などの有機溶媒と水の共沸を利用した脱水装置を、連結してもよい。
【0037】
本発明の触媒は固体なので、本発明の製造方法においては、バッチ法ではなく、フロー法を採用してもよい。以上の事項から、フロー法を採用したカルボン酸アミド化合物のフロー製造システムを構築できる。フロー製造システムを具体的に述べると、以下のとおりとなる。
【0038】
上流から順に、
カルボン酸とアミンの混合溶液を下流の触媒部に導入する導入経路と、
ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された触媒が担持され、前記カルボン酸と前記アミンの脱水縮合反応が進行する触媒部と、
前記触媒部から、カルボン酸アミド化合物を含有する反応溶液を排出する排出経路と、
を備えることを特徴とするカルボン酸アミド化合物のフロー製造システム。
【0039】
導入経路における混合溶液には、両原料及びカルボン酸アミド化合物を溶解し得る有機溶媒が使用される。導入経路においてポンプなどの流体移送用加圧装置が配置されるのが好ましい。導入経路の上流には、カルボン酸導入経路及びアミン導入経路、並びに、カルボン酸及びアミンを混合し、混合溶液とする混合部が配置されるのが好ましい。導入経路は、カルボン酸及びアミン並びに使用する有機溶媒に対して耐性に優れる金属製材料又は樹脂製材料で構成される。
【0040】
触媒部における容器は、一般にカラムと称される円筒形の金属製材料又は樹脂製材料で構成されるのが好ましい。金属製材料又は樹脂製材料としては、カルボン酸、アミン、使用する有機溶媒、ホウ素を含有する強酸、及び、カルボン酸アミド化合物に対して耐性に優れるものが使用される。
触媒部の下流側においては、本発明の触媒の流出を抑制するために出口径を小さく設計するか、又は、触媒部の下流側に、本発明の触媒の流出を抑制するフィルタを配置するのが好ましい。
触媒部においては、触媒部を加熱する加熱装置が配置されるのが好ましい。加熱装置で加熱することで、所望の反応を促進することができる。また、触媒活性が低下した場合に、触媒内に吸着した水分を離脱させて触媒を再生する目的で、加熱装置で加熱することに因り、触媒部を100℃以上の高温状態にすることもできる。触媒部の上流には、触媒活性が低下した場合や触媒を再生する場合にホウ素を含有する強酸を投入するための酸投入経路を設けるのが好ましい。
【0041】
排出経路は、カルボン酸、アミン、使用する有機溶媒、ホウ素を含有する強酸、及び、カルボン酸アミド化合物に対して耐性に優れる金属製材料又は樹脂製材料で構成される。
排出経路の下流には、カルボン酸アミド化合物を単離するための各種の分離装置を連結するのが好ましい。分離装置としては、水を加えて水層と有機層を分離する分液装置、有機溶媒を除去するための減圧装置、結晶化装置、クロマトグラフィーを例示できる。
【0042】
フロー製造システムの製造規模は限定されない。フロー製造システム全体の流速は、反応の進行度を確認した上で、決定すればよい。また、フロー製造システムをマイクロリアクターとしてもよい。
【0043】
フロー製造システムを自動化してもよい。その際には、フロー製造システムに、各構成要素の動作を制御する制御部が備えられる。制御部は、電子計算機を利用して、種々のパラメータに応じて各構成要素を制御する。
【0044】
フロー製造システムを自動化して、カルボン酸の種類及び/又はアミンの種類を順に変更し、多種多様なカルボン酸アミド化合物を製造するシステムとしてもよい。当該システムにより、少量多品種のカルボン酸アミド化合物が効率的に製造可能とされる。当該システムを、例えば、創薬などのハイスループットスクリーニングに応用してもよい。当該システムにおいては、特定のペプチドが連続的に合成され得るため、多種類の検体に対する特定のペプチドの網羅的なアッセイが可能であるし、また、多種類のペプチドが自動で合成され得るため、特定の検体に対する多種類のペプチドの網羅的なアッセイも可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例
【0046】
以下に、実施例などを示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの具体例によって限定されるものではない。
【0047】
<本発明の触媒の効果確認>
下記の反応式で示すとおり、カルボン酸として1a、アミンとして2aを使用した、カルボン酸アミド化合物3aの製造方法の検証を行った。
【0048】
【化1】
【0049】
(比較例1)
11mLのスクリューキャップ付き試験管に、有機溶媒として1.25mLのトルエン、ホウ素を含有する強酸として0.225mmolのHBF・OEt、0.45mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2a及び0.25mmolのN-Boc保護したL-フェニルアラニン1aを入れて反応溶液とし、密閉した。
反応溶液を80℃で24時間加熱した。反応後の反応溶液をろ過し、ろ液から有機溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、カルボン酸アミド化合物3aを単離した。
【0050】
(実施例1)
ゼオライトであるMS3Åを300mLのフラスコに入れて、ガスバーナーで10分間加熱して脱水処理を行った。脱水処理後のMS3Åの500mgを、11mLのスクリューキャップ付き試験管に入れて、さらに、有機溶媒として1.25mLのトルエン、及び、ホウ素を含有する強酸として0.225mmolのHBF・OEtを加え、常温常圧下で10分間撹拌して、触媒を形成した。
【0051】
その後、0.45mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2a及び0.25mmolのN-Boc保護したL-フェニルアラニン1aを上記の試験管に加えて反応溶液とし、密閉した。
反応溶液を80℃で24時間加熱した。反応後の反応溶液をろ過し、ろ液から有機溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、カルボン酸アミド化合物3aを単離した。
【0052】
(実施例2)
ゼオライトとしてMS4Åを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0053】
(実施例3)
ゼオライトとしてMS5Åを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0054】
(実施例4)
ゼオライトとしてMS13Xを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0055】
(比較例2)
ホウ素を含有する強酸を使用しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0056】
以上の結果を表1に示す。収率とは、1aを基準とした場合の1aと2aによる脱水縮合反応の進行割合であり、立体配置を無視した3aの収量に基づき算出した値である。drとはdiastereomer ratioの略称である。
なお、カルボン酸アミド化合物3aの化学構造は、H-NMR及び13C-NMRで確認された。代表的なカルボン酸アミド化合物3aのH-NMRチャートを図1に示し、13C-NMRチャートを図2に示す。drは、H-NMRチャートにおける6.8~7ppmのピークの積算比により算出した。目的の立体配置のものは6.89~6.91ppmにピークが観察され、1aのカルボキシ基のα位の炭素の立体配置が反転した異性体のものは6.84~6.85ppmにピークが観察された。
【0057】
【表1】
【0058】
比較例1及び実施例1~4の結果から、ホウ素を含有する強酸のみを触媒として使用する場合よりも、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された触媒を使用した方が、カルボン酸アミド化合物の収率が向上するといえるし、カルボン酸アミド化合物のエピ化が抑制されているといえる。
実施例1~4の結果から、ゼオライトの種類としては、MS4ÅやMS5Åが好適であり、MS5Åが特に好適であるといえる。
【0059】
また、実施例3及び比較例2の結果から、ゼオライトのみを触媒として使用する場合よりも、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された触媒を使用した方が、カルボン酸アミド化合物の収率が著しく向上するといえるし、カルボン酸アミド化合物のエピ化が著しく抑制されているといえる。
【0060】
(実施例5)
ゼオライトであるMS5Åを300mLのフラスコに入れて、ガスバーナーで10分間加熱して脱水処理を行った。脱水処理後のMS5Åの500mgを、11mLのスクリューキャップ付き試験管に入れて、さらに、有機溶媒として1.25mLのトルエン、及び、ホウ素を含有する強酸として0.225mmolのHBF・OEtを加え、常温常圧下で15分間撹拌した。撹拌後、ろ過にて白色沈殿物を分離し、これをトルエンで洗浄して、実施例5の触媒とした。
【0061】
実施例5の触媒を11mLのスクリューキャップ付き試験管に入れて、さらに、有機溶媒として1.25mLのトルエンを加えた。その後、0.45mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2a及び0.25mmolのN-Boc保護したL-フェニルアラニン1aを上記の試験管に加えて反応溶液とし、密閉した。
反応溶液を80℃で24時間加熱した。反応後の反応溶液をろ過し、ろ液から有機溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、カルボン酸アミド化合物3aを単離した。
【0062】
実施例5の結果と実施例3の結果を併記して表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2の収率の結果から、あらかじめ形成した上で単離した触媒を使用した実施例5においては、触媒活性がより高かったことが示唆される。反応温度や反応時間などを最適化することで、脱Boc反応などの不都合な副反応の抑制や、エピ化のさらなる抑制が期待される。
また、表2の結果から、実施例1~実施例4の製造における触媒活性も、有機溶媒中に溶解した何らかの物質に因るのではなく、ホウ素を含有する強酸及びゼオライトから形成された本発明の触媒に因り、奏されていたことが裏付けられたといえる。
【0065】
実施例で使用した本発明の触媒においては、ホウ素を含有する強酸でありブレンステッド酸であるHBFがゼオライトの表面で作用して、ゼオライトの1価の金属及び2価の金属をプロトンで置換すると共に、強酸性であるHBFの作用に因りAl-O-Si結合を開裂させ、さらにHBFアニオン部分が作用することで、B-O-B結合を有する活性中心となる場が形成されると考えられる。
【0066】
本発明の触媒において形成されたB-O-B結合を有する活性中心となる場が、カルボン酸と作用して6員環の中間体を形成し、これに対して、アミンが求核攻撃することで、カルボン酸アミド化合物が合成されると考えられる。ここで、反応に寄与した本発明の触媒は、再びカルボン酸と作用することで、触媒として繰り返し機能する。なお、反応に寄与した本発明の触媒が再びカルボン酸と作用する際に脱水が生じるが、ここで生じた水分子はゼオライトの孔内に吸着されると考えられる。
【0067】
<各成分の量の検討>
ゼオライトとしてMS5Åを使用した実施例3、及び、以下の実施例6~実施例13にて、各成分の量と、収率との関係を検討した。
【0068】
(実施例6)
0.35mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2aを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0069】
(実施例7)
0.25mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2aを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0070】
(実施例8)
ゼオライトであるMS5Åを300mLのフラスコに入れて、ガスバーナーで10分間加熱して脱水処理を行った。脱水処理後のMS5Åの100mgを、11mLのスクリューキャップ付き試験管に入れて、さらに、有機溶媒として1.25mLのトルエン、及び、ホウ素を含有する強酸として0.175mmolのHBF・OEtを加え、常温常圧下で10分間撹拌して、触媒を形成した。
【0071】
その後、0.35mmolのL-フェニルアラニンベンジルエステル2a及び0.25mmolのN-Boc保護したL-フェニルアラニン1aを上記の試験管に加えて反応溶液とし、密閉した。
反応溶液を80℃で24時間加熱した。反応後の反応溶液をろ過し、ろ液から有機溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、カルボン酸アミド化合物3aを単離した。
【0072】
(実施例9)
脱水処理後のMS5Åを250mg用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0073】
(実施例10)
脱水処理後のMS5Åを500mg用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0074】
(実施例11)
脱水処理後のMS5Åを1000mg用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0075】
(実施例12)
ホウ素を含有する強酸として0.0875mmolのHBF・OEtを用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0076】
(実施例13)
ホウ素を含有する強酸として0.05mmolのHBF・OEtを用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3aを製造及び単離した。
【0077】
以上の結果と実施例3の結果を併記して表3に示す。表3における「Am/Car」とはカルボン酸に対するアミンのモル比を意味し、「BA/Car」とはカルボン酸に対する触媒形成に使用したホウ素を含有する強酸のモル比を意味し、「BA/Am」とはアミンに対する触媒形成に使用したホウ素を含有する強酸のモル比を意味し、「Ze/BA」とは触媒形成に使用したホウ素を含有する強酸1モルに対するゼオライトの質量(g)を意味する。
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果から、各成分の量が増減すれば、所望のカルボン酸アミド化合物の収率が変化することがわかる。概ね、アミンはカルボン酸に対して過剰量を使用するのが好ましく、また、本発明の触媒を形成する際に使用するホウ素を含有する強酸の量は、カルボン酸やアミンに対して少ない量で充分であるといえる。
実施例8~実施例11の結果から、触媒形成に使用したホウ素を含有する強酸1モルに対するゼオライトの質量(g)の最適値は、600~2500の範囲内に存在すると推定される。触媒形成に使用したホウ素を含有する強酸1モルに対するゼオライトの質量(g)の値は、ゼオライト表面における触媒活性中心となる場の最適な分布に関係があると考えられる。
【0080】
<基質の検討1:アミノ酸誘導体同士の反応>
下記の反応式で示すとおり、カルボン酸1及びアミン2を使用したカルボン酸アミド化合物3の製造方法の検証を行った。
【0081】
【化2】
【0082】
(実施例14~実施例21)
ゼオライトであるMS5Åを300mLのフラスコに入れて、ガスバーナーで10分間加熱して脱水処理を行った。脱水処理後のMS5Åの250mgを、11mLのスクリューキャップ付き試験管に入れて、さらに、有機溶媒として1.25mLのトルエン、及び、ホウ素を含有する強酸として0.175mmolのHBF・OEtを加え、常温常圧下で10分間撹拌して、触媒を形成した。
【0083】
その後、0.35mmolのアミン2及び0.25mmolのN-Boc保護したカルボン酸1を上記の試験管に加えて反応溶液とし、密閉した。反応溶液を80℃で24時間加熱した。反応後の反応溶液をろ過し、ろ液から有機溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、カルボン酸アミド化合物3を単離した。
【0084】
以上の結果と実施例9の結果を併記して表4に示す。なお、実施例15*においては0.45mmolのアミン2を使用した。実施例21においてはBoc保護をCbz保護に変更したカルボン酸1を使用した。各カルボン酸アミド化合物3の化学構造は、H-NMR及び13C-NMRで確認された。
【0085】
【表4】
【0086】
実施例14~実施例21で使用したカルボン酸及びアミンはいずれもアミノ酸誘導体である。一般に、アミノ酸誘導体同士を脱水縮合してペプチドを合成することは、非アミノ酸のカルボン酸及び非アミノ酸のアミンを脱水縮合してカルボン酸アミド化合物を合成することよりも、困難であることが知られている。
しかし、表4の結果から、本発明の製造方法においては、基質により収率の変動があるものの、アミノ酸誘導体同士を脱水縮合してペプチドを合成する反応が進行することがわかる。
【0087】
なお、実施例9及び実施例20で使用したカルボン酸はフェニルアラニン誘導体であり、実施例14で使用したカルボン酸はアラニン誘導体であり、実施例15及び実施例21で使用したカルボン酸はロイシン誘導体であり、実施例16で使用したカルボン酸はグリシン誘導体であり、実施例17で使用したカルボン酸はチロシン誘導体であり、実施例18で使用したカルボン酸はセリン誘導体であり、実施例19で使用したカルボン酸はトレオニン誘導体である。
実施例9~実施例19及び実施例21で使用したアミンはフェニルアラニン誘導体であり、実施例20で使用したアミンはロイシン誘導体である。
【0088】
<基質の検討2:一般的なカルボン酸及び一般的なアミンを用いた検討>
カルボン酸としてイブプロフェンとして知られる2-[4-(2-Methylpropyl)phenyl]propanoic acidを用い、アミンとして2-フェネチルアミンを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物を製造及び単離した。
合成目標であるカルボン酸アミド化合物が収率95%以上で製造されたことが確認された。なお、カルボン酸アミド化合物の化学構造はH-NMRで確認された。
以上の結果から、本発明の製造方法は、カルボン酸やアミンの基質に因らず、目的とするカルボン酸アミド化合物を合成可能といえる。
【0089】
<酸の種類の検討>
(実施例22)
触媒形成時に、ホウ素を含有する強酸として0.175mmolのBF・OEtを用い、さらに0.175mmolのNHFを加えたこと以外は、実施例15と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3を製造及び単離した。
【0090】
(実施例23)
触媒形成時に、ホウ素を含有する強酸として0.175mmolのBF・OEtを用いたこと以外は、実施例15と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3を製造及び単離した。
【0091】
(比較例3)
ホウ素を含有する強酸を使用しなかったこと以外は、実施例15と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3を製造及び単離した。
【0092】
(比較例4)
ホウ素を含有する強酸に替えて、0.175mmolのNHFを使用したこと以外は、実施例15と同様の方法で、カルボン酸アミド化合物3を製造及び単離した。
【0093】
以上の結果と実施例15の結果を併記して表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例15、実施例22及び実施例23の結果から、ホウ素を含有する強酸としては、ブレンステッド酸及びルイス酸のいずれも好ましいといえる。また、各実施例と各比較例の結果から、ゼオライトに作用させる酸として、フッ素を含有する酸のみを用いた場合には、触媒効果が低いことがわかる。
以上の試験結果から、ゼオライトに作用させる酸としてホウ素を含有する強酸を使用する本発明の技術的意義が明確になったといえる。
【0096】
<本発明の触媒の再利用>
(実施例24)
ゼオライトであるMS5Åを300mLのフラスコに入れて、ガスバーナーで10分間加熱して脱水処理を行った。ソックスレー抽出器を備えた反応容器に、脱水処理後のMS5Åの250mg、有機溶媒として1.25mLのトルエン、及び、ホウ素を含有する強酸として0.175mmolのHBF・OEtを加え、常温常圧下で15分間撹拌して、触媒を形成した。
【0097】
カルボン酸として0.25mmolのイブプロフェン、アミンとして0.25mmolの2-フェネチルアミンを上記の反応容器に加え、加熱還流条件下、4時間反応を行った。
反応容器を室温まで冷却した後、デカンテーションにて触媒と反応溶液を分離・回収した。
【0098】
回収した触媒をトルエンで数回洗浄した後に1.25mLのトルエンと共にソックスレー抽出器を備えた反応容器に投入し、さらに、カルボン酸として0.25mmolのイブプロフェン、及び、アミンとして0.25mmolの2-フェネチルアミンを加えて、加熱還流条件下、4時間反応を行った。
反応容器を室温まで冷却した後、デカンテーションにて触媒と反応溶液を分離・回収した。
【0099】
再度、回収した触媒をトルエンで数回洗浄した後に、上記の操作を繰り返した。
【0100】
1度目の反応の反応溶液、2度目の反応の反応溶液及び3度目の反応の反応溶液を、H-NMRで分析したところ、いずれの反応においても95%以上の収率で目的のカルボン酸アミド化合物が合成されたことが確認された。
本発明の触媒は再利用しても触媒活性を失い難く、触媒回転数(turnover number)が著しく大きいと推定される。
【0101】
(比較例5)
HBF・OEtを加えなかったこと以外は、実施例24と同様の方法で反応を行った。反応溶液をH-NMRで分析したところ、目的のカルボン酸アミド化合物の収率は15%であった。
【0102】
以上の結果から、加熱温度が高く、反応時間が短い場合であっても、本発明の触媒がその機能を発揮し得ることを理解できる。
図1
図2