(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】調整可能な充填パッドを有する頭部安定化システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61G 13/12 20060101AFI20240307BHJP
A61B 90/14 20160101ALI20240307BHJP
【FI】
A61G13/12 B
A61B90/14
(21)【出願番号】P 2020560197
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2019000497
(87)【国際公開番号】W WO2019207359
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520051861
【氏名又は名称】プロ メッド インストゥルメンツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】シューエル、マティアス、イー.
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02262435(GB,A)
【文献】実開昭52-125388(JP,U)
【文献】米国特許第07117551(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0324592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/12
A61B 90/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置中に患者の頭部を支持および安定化するための医療機器であって、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台と連結するように構成されているものであり、この医療機器は、
(a)
アームの対であって、各アームは、側方部分と、直立部分と、端部とを有し、前記端部が側方頭部支持部を受けるように構成されているものであり、各側方頭部支持部
は前記患者の頭部に側方支持を提供するように構成されている、前記
アームの対と、
(b)前記患者の頭部に接触するように構成され
たパッドであって、
各側方頭部支持部
に連結可能であり、
前記パッドの
各々は充填材を選択的に保持するように構成された
単一のチャンバを有するものであり、前記チャンバの
各々は、チャンバ内の充填材の量を変更するよう前記充填材を調整可能に充填できるように構成され、
前記チャンバは、さらに、それらチャンバの充填材の量を一体的に調整可能なように構成されている、前記パッドと
を有する医療機器。
【請求項2】
請求項1に記載の機器において、さらに、
(c)前記患者の頭部に水平支持を提供するように構成された中央頭部支持部と、
(d)前記中央頭部支持部と連結可能なクッションであって、前記患者の頭部と接触するように構成されているクッションと
を有するものである、機器。
【請求項3】
請求項1に記載の機器において、前記充填材は、液体、固体、ゲル、気体、流体、形状適合材料、およびそれらの組み合わせのうちの選択された1つを有するものである機器。
【請求項4】
請求項1に記載の機器において、前記充填材は空気を含むものである、機器。
【請求項5】
請求項1に記載の機器において、前記チャンバは前記充填材が充填されるように構成された内部空間を有するものであり、前記チャンバは前記内部空間へのアクセスをもたらすように構成されたポートを有するものである、機器。
【請求項6】
請求項
5に記載の機器において、前記チャンバは、さらに、前記充填材の全部または一部が前記内部空間から解放され排出されるように構成されている、機器。
【請求項7】
請求項1に記載の機器において、さらに、充填材を前記パッドへ選択的に移送する、前記パッドの前記チャンバに連結可能なポンプを有するものである、機器。
【請求項8】
医療処置中に患者の頭部を支持および安定化するための医療機器であって、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台と連結するように構成されているものであり、この医療機器は、
(a)2若しくはそれ以上の側方頭部支持部であって、前記2若しくはそれ以上の側方頭部支持部の各々は前記患者の頭部に側方支持を提供するように構成されているものである、前記側方頭部支持部と、
(b)前記患者の頭部と接触するように構成された2若しくはそれ以上のパッドであって、 前記2若しくはそれ以上のパッドの各々は前記2若しくはそれ以上の側方頭部支持部のそれぞれ1つと連結可能であり、前記2若しくはそれ以上のパッドの各々は第1の充填材を受容するように構成された第1のチャンバを有するものである、前記パッドと、
(c)前記患者の頭部に水平支持を提供するように構成された中央頭部支持部と、
(d)前記中央頭部支持部に連結可能なクッションであって、前記患者の頭部に接触するように構成されているものであり、このクッションは第2の充填材を受容するように構成された
マルチチャンバ構造を有するものである、前記クッションと
を有する医療機器。
【請求項9】
請求項
8に記載の機器において、前記第1の充填材および前記第2の充填材は同一である、機器。
【請求項10】
請求項
8に記載の機器において、さらに、前記2若しくはそれ以上のパッドそれぞれの第1のチャンバを流体連通させる連結部材を有するものである、機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年4月26日に出願された「弧機構を有する頭部安定化システム及び方法」と題する米国仮特許出願第62/662,874号、及び2018年4月26日に出願された「カセット機構を有する頭部安定化システム及び方法」と題する米国仮特許出願第62/662,855号に対する優先権を主張するものであり、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示されるシステム及び方法は、患者安定化の分野に関し、特に、頭部安定化機器として知られている安定化機器を用いた頭部及び首の安定化に関する。前記頭部安定化機器は頭部固定機器(以下、「HFDs」または単数形で「HFD」ともいう)ともいう。HFDは、様々な外科処置及び他の医療処置の間、例えば、特定の姿勢で患者頭部を確実に支持することが望ましい頭部または首の外科手術または検査の間に用いられることがある。処置や好みの理由により特定の方法で患者を位置付けることが必要な場合があるため、全てのHFDが必要な患者安定化を提供するのに最適であるとは限らない。様々な安定化機器が製作され使用されてきたが、本発明者よりも前に本明細書に記載の発明を製作し使用してきた者はいないと考えられる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2019/034935号
(特許文献2) 国際公開第2019/034933号
(特許文献3) 英国特許出願公開第2262435号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2016/106508号明細書
(特許文献5) 米国特許第7,117,551号明細書
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、発明を具体的に示し明確に請求する特許請求の範囲により結論付けられるが、本発明は添付の図面と併せて特定の実施例についての以下の説明からより良好に理解されると考えられる。添付の図面において、同一の参照符号は同一の要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、弧機構を有する例示的なHFDの斜視図を表す。
【
図5】
図5は、
図1のHFDの斜視図を表し、安定化アセンブリが除去されて示されている。
【
図7】
図7は、
図1のHFDの部分斜視図を表し、中央頭部支持部の部分をより良好に示すように特定の構成要素が除去されて示されている。
【
図9】
図9は、単方向弧機構を有する別の例示的なHFDの背面図を表す。
【
図10】
図10は、
図9のHFDの弧部材、ポジションアダプタ、及びロック部材の部分斜視図を表す。
【
図11】
図11は、
図9のHFDの斜視図を表し、患者の頭部が弧部材に沿って調整された頭蓋クランプにより安定化されている場合を示す。
【
図12】
図12は、マルチチャンバ旋回式クッションを有する別の例示的なHFDの斜視図を表す。
【
図15】
図15は、
図12のHFDの別の斜視図を表し、仰臥位で患者の頭部が安定化されている場合を示す。
【
図16】
図16は、非侵襲式HFDとして構成された別の例示的なHFDの斜視図を表す。
【
図21】
図21は、
図16のHFD及び本明細書に記載の他のHFDで使用可能な流体制御システムの例示的な概略図を表す。
【
図22】
図22は、弧部材の回転式調整を含む別の例示的なHFDの斜視図を表す。
【
図23】
図23は、頭蓋クランプ、ロック部材、及び操作部が示されていない、
図22のHFDの部分斜視図を表す。
【
図24】
図24は、
図23に示すHFDであるが、クッション及び基部が除去されている別の部分斜視図を表す。
【
図26】
図26は、カセット機構を有する別の例示的なHFDの斜視図を表す。
【
図30】
図30は、頭蓋クランプの一部と連結された
図29の位置決めアセンブリの部分斜視図を表す。
【
図34】
図34は、
図26のHFDで使用可能な別の例示的な中央頭部支持部および別の安定化アセンブリのペアの斜視図を表す。
【
図38】
図38は、非侵襲式HFDとして構成された別の例示的なHFDの斜視図を表す。
【0005】
図面は決して限定することを意図するものではなく、発明の様々な実施形態は、図面において必ずしも表されていない他の方法を含め、様々な他の方法で実施され得ることが企図される。本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示し、本記載と共に本発明の原理を説明する役目を果たすが、本発明は示される厳密な配置に限定されるものではないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施例の以下の説明は、本発明の範囲を限定するために用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が、以下の説明から当業者にとって明らかになるであろう。認識されるように、本発明は、全て本発明から逸脱することなく、他の異なる態様及び明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的であると見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではない。
【0007】
I.弧機構を有する例示的な頭部固定機器
特定の医療処置の間、HFDを用いて患者の頭部を安定化することが必要であり、または望ましいことがある。医療チーム及びそれらの器具への最良のアクセスをもたらすように患者を位置付けることが望ましいことがある。これは、患者が、腹臥位、仰臥位、または、患者の頭部が患者の左半身及び右半身を定義する矢状面から左または右に回転された中間位置にある場合がある。これらの位置、および患者頭部を安定化するその他の位置に適応する際、HFD自体の調整機能は、患者を確実に安定化して患者頭部の移動またはズレが回避されるようにする上での要素となる。ここで図面を参照すると、
図1~
図5は医療処置の間に患者の頭部を支持し安定化するように構成された例示的なHFD(100)を示す。HFD(100)は、中央頭部支持部(110)と、弧部材(140)と、頭蓋クランプ(170)と、操作部(190)とを有する。
【0008】
中央頭部支持部(110)は、本体(112)と、本体(112)上の取付機構(114)とを有し、取付機構(114)は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形式である。いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(114)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(110)の取付機構(114)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(110)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0009】
中央頭部支持部(110)はまた、本体(112)と連結しクッション(118)を保持または維持する基部(116)を有する。クッション(118)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法によって基部(116)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(118)は、当該クッション(118)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(116)と選択的に連結されている。クッション(118)は、HFD(100)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。
図7の本実施例において、基部(116)は、ネジまたはボルトなどの留め具を用いて基部(116)と連結されたディスク(120)によって本体(112)と連結する。ディスク(120)は、本体(112)において定義されたスロット(122)内で受けられる。いくつかの例において、ディスク(120)はスロット(122)内で回転自在なように構成されており、取り付けられた基部(116)及びクッション(118)が回転自在に調整できるようになっている。
【0010】
使用中、中央頭部支持部(110)は、患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(110)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されるときに、患者頭部の下方に延在する平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(110)は、中央頭部支持部(110)によって定義された平面が床に平行し、または中央頭部支持部(110)上で重力の方向に直交するように位置付けられる。さらに、中央頭部支持部(110)は、クッション(118)の中心を通って延在し中央頭部支持部(110)の重力の方向と平行な中心軸(A1)を定義する。
【0011】
HFD(100)の弧部材(140)は、中央頭部支持部(110)と連結する。本実施例において、弧部材(140)は、湾曲細長部材(142)と、当該湾曲細長部材(142)と一元的に形成されたコネクタ(144)とを有する。いくつかの他の例では、コネクタ(144)は、ネジ、ボルトなどの着脱可能な留め具によって細長部材(142)と連結する。本明細書における教示を考慮すれば、弧部材(140)を中央頭部支持部(110)と連結する他の方法が当業者には明らかであろう。コネクタ(144)は、以下でさらに詳細に説明されるように、弧部材(140)を中央頭部支持部(110)の本体(112)と連結する。
【0012】
弧部材(140)の細長部材(142)は、或る弧長さを有する湾曲形状を定義する。この構成により、弧部材(140)はさらに、クッション(118)上に位置付けられているときの患者頭部の中心ポイントから細長部材(142)の断面の中間のポイントまでの中心軸(A1)に沿った距離を表す湾曲の半径を定義する。本実施例において、弧長さは、中央頭部支持部(110)によって定義された中心軸(A1)から約45度オフセットまで弧部材(140)に沿ったいずれかの方向に頭蓋クランプ(170)を位置付けることを可能にするのに十分な長さである。この頭蓋クランプ(170)の位置付けについては以下でさらに詳述する。単なる例であって限定するものではないが、いくつかの実施例において、弧部材(140)は、約200~約350ミリメートルの弧長さを有することができ、約120~約200ミリメートルの湾曲の半径を定義することができる。例えば、一実施例において、弧部材(140)は、約293ミリメートルの弧長さを有する約152ミリメートルの湾曲の半径を定義する。当然、それらの特定の寸法は全ての例において必要とされるものではなく、本明細書における教示を考慮すれば他の好適な寸法が当業者には明らかであろう。
【0013】
本実施例において、弧部材(140)の湾曲細長部材(142)は台形状の外形を有するように構成されている。弧部材(140)のこの形状により、弧部材(140)は、弧部材(140)を受けるように構成された相補的形状のスロット(152)を備えたポジションアダプタ(150)と係合することができる。本実施例において、ポジションアダプタ(150)のスロット(152)、及び弧部材(140)の細長部材(142)の外形は、湾曲蟻継ぎ状境界面を形成する。本明細書における教示を考慮すれば、用いうるスロット(152)及び弧部材(140)の外形についてその他の相補的形状が当業者には明らかであろう。
【0014】
頭蓋クランプ(170)は、当涯頭蓋クランプ(170)が弧部材(140)沿って選択的に移動可能または調整可能なように弧部材(140)と連結することができる。本実施例において、頭蓋クランプ(170)は、ポジションアダプタ(150)を介して弧部材(140)と間接的に連結するが、他の例では、HFD(100)は、頭蓋クランプ(170)が弧部材(140)と直接的に連結するように修正されてもよい。弧部材(140)に沿って頭蓋クランプ(170)を移動させまたは調整することにより、頭蓋クランプ(170)の位置は中央頭部支持部(110)に対して調整可能である。さらに、患者の頭部が中央頭部支持部(110)によって支持されるとき、少なくともいくつかの実施例では、弧部材(140)に沿った頭蓋クランプ(170)の移動は、患者頭部の周りで同軸または実質的に同軸で頭蓋クランプ(170)の位置を変える。同様の観点において、患者は当該患者を左半身及び右半身に分割する矢状面を定義し、その矢状面に沿って長手方向に延在する軸は患者によって定義される長手方向軸と見なされる。概して、この長手方向軸は患者の頭部から患者の足に延在する。少なくともいくつかの実施例では、弧部材(140)に沿った頭蓋クランプ(170)の移動は、患者によって定義されたこの長手方向軸を中心に頭蓋クランプ(170)の位置を変える。上述したように、いくつかの例において、頭蓋クランプ(170)は、中央頭部支持部(110)によって定義された中心軸(A1)から約45度まで、中央頭部支持部(110)及び患者の長手方向軸に対していずれかの方向に調整可能である。このように、HFD(100)は、中央頭部支持部(110)によって支持される患者頭部のいずれかの側で頭蓋クランプ(170)を最大約45度斜め横向きに位置付けることを可能にする。本明細書における教示を考慮すれば、当業者は、約45度よりも大きい頭蓋クランプ(170)の位置調整が達成できるように、弧部材(140)の弧長さが延ばされてもよいことが明らかであろう。
【0015】
頭蓋クランプ(170)は、ロック部材(172)と、伸長バー(174)のペアとを有する。ロック部材(172)は、伸長バー(174)を受けるように構成された開口部(176)のペアを有する。伸長バー(174)はロック部材(172)に対し、および互いに独立して移動可能である。さらに、ロック部材(172)は、それぞれの伸長バー(174)を係合させて、伸長バー(174)を適格な位置に固定し、または伸長バー(174)の調整を可能にするように構成されたロック部(178)のペアを有する。このように、各伸長バー(174)は歯型ラック(180)を有し、各ロック部(178)はロック部材(172)内に存在する相補的な形状の歯型部分を有し、ロック部材(172)は、それと関連付けられた歯型ラック(180)と係合し、または係脱するように移動可能である。例えば、ロック部(178)は最初、歯型部分が歯型ラック(180)と係合し、それによりロック部材(172)に対して伸長バー(174)の位置をロックまたは固定するように、バネまたは他の構造によって付勢されている。各ロック部(178)は、ロック部(178)の歯型部分を歯型ラック(180)から係脱させるようロック部材(172)から下方向にまたは離れるように引き出されてもよく、それにより、ロック部材(172)及び他方の伸長バー(174)に対する伸長バー(174)の横方向の移動が可能になる。
【0016】
本実施例において、伸長バー(174)は、一方がロック部材(172)内のその位置に関して他方に取って代わることができるように相互に交換可能である。各伸長バー(174)はさらに、安定化アセンブリ(186)を受けるように構成された穴(184)を有する上端部分(182)を有する。安定化アセンブリ(186)は、患者の頭部と接触し、患者の頭部に側方支持及び安定化を提供するように構成されている。本実施例において、安定化アセンブリ(186)は、単一のピンまたは二重ピンアセンブリの形式をとってもよい。さらに、安定化アセンブリ(186)は安定化アセンブリ(186)によって患者頭部に加えられた圧力を調整するためのトルクネジ(141)を含んでもよい。他の例では、安定化アセンブリ(186)は単一チャンバまたはマルチチャンバパッドの形式をとってもよい。本実施例に戻ると、各伸長バー(174)は、直立部分(188)と、長手方向軸を定義する直立部分(188)を伴う基部(189)とを有する。本実施例において、各々のそれぞれの穴(184)は、各々のそれぞれの伸長バー(174)の直立部分(188)によって定義される長手方向軸からオフセットされる。さらに、ロック部材(172)内で伸長バー(174)が位置付けられるとき、それらの穴(184)は、互いに反対方向にオフセットされ、各穴(184)を通って延在する共通軸(A2)と位置合わせされ共通軸(A2)を共有するようになっている。さらに、各伸長バー(174)は、伸長バー(174)の少なくとも一部に沿って位置付け可能な1若しくはそれ以上の付属物を受けるように構成されたレールを定義する。
【0017】
上述したように、頭蓋クランプ(170)は弧部材(140)と連結する。本実施例において、頭蓋クランプ(170)のロック部材(172)は、ポジションアダプタ(150)と連結し、ポジションアダプタ(150)は次いで、上述したように弧部材(140)と連結する。本実施例において、ポジションアダプタ(150)とロック部材(172)との間の連結は蟻継ぎを用いる。このように、ポジションアダプタ(150)はロック部材(172)の突起部(175)を受けるように構成されたスロット(154)を有する。本実施例において、突起部は台形状の外形を有し、スロット(154)はスロット(154)内で突起部(175)を受けることができるように相補的な外形の形状を有する。
【0018】
ポジションアダプタ(150)とロック部材(172)との間の連結は選択的に調整可能である。より具体的には、ロック部材(172)はポジションアダプタ(150)に対して垂直にまたは長手方向に調整することができる。この調整により、頭蓋クランプ(170)の安定化アセンブリ(186)と中央頭部支持部(110)との間の距離の調整が可能になる。例えば、患者の方位、患者頭部のサイズ、または他のパラメータに応じて、頭蓋クランプ(170)及びそれに付随する安定化アセンブリ(186)は、中央頭部支持部(110)からより近くまたはより遠くに移動させる必要があることがある。
【0019】
ポジションアダプタ(150)とロック部材(172)との間の調整を説明する更なる観点において、ポジションアダプタ(150)の側壁(158)は平面を定義し、ロック部材(172)はこの平面に沿って並進移動式に調整可能である。このポジションアダプタ(150)に対するロック部材(172)の移動または調整は、上述したように中央頭部支持部(110)に対するロック部材(172)及びその連結された構成要素の間隔を変更する。
【0020】
HFD(100)の操作部(190)は、弧部材(140)に沿って頭蓋クランプ(170)の位置を選択的に固定するように構成されている。操作部(190)はまた、ポジションアダプタ(150)に対する頭蓋クランプ(170)の位置を選択的に固定することにより中央頭部支持部(110)に対する頭蓋クランプ(170)の位置を選択的に固定するように構成されている。本実施例において、HFD(100)のこの二重固定機構は、弧部材(140)に沿った頭蓋クランプ(170)の位置及び中央頭部支持部(110)に対する頭蓋クランプ(170)の位置の両方を実質的に同時に選択的に固定することを可能にする。
【0021】
図6を参照すると、操作部(190)はノブ(194)に連結されたネジ棒(192)を有する。ロック部材(172)は操作部(190)のネジ棒(192)を受けるように構成されたネジ穴(173)を有する。ネジ穴(173)はロック部材(172)の片側から反対側へ貫通する。本実施例において、ネジ穴(173)は突起部(175)を通って延在する。操作部(190)はさらに、ポジションアダプタ(150)の側壁(158)の切欠き部(156)内に位置付け可能な圧縮プレート(196)を有する。片側において、切欠き部(156)を含む側壁(158)はロック部材(172)の突起部(175)を受けるスロット(154)の一部を定義する。反対側では、切欠き部(156)を含む側壁(158)は弧部材(140)を受けるスロット(152)の一部を定義する。このように、切欠き部(156)はポジションアダプタ(150)のスロット(152、154)を連結する。
【0022】
使用中、操作部(190)のノブ(194)は、ネジ棒(192)とネジ穴(173)との間のネジ式係合に基づきノブ(194)が回転する方向に応じて、ポジションアダプタ(150)に向かってまたはポジションアダプタ(150)から離れるようにロック部材(172)を並進移動させる。ポジションアダプタ(150)から離れるようにロック部材(172)を並進移動させることによって、ネジ棒(192)の端部は、切欠き部(156)内に存在する圧縮プレート(196)と接触し、ポジションアダプタ(150)のスロット(152)内に存在する弧部材(140)に向かって圧縮プレート(196)を動かす。圧縮プレート(196)は、切欠き部(156)に適合され、または切欠き部(156)と合致するように寸法付けられており、それにより、操作部(190)の十分な回転によって圧縮プレート(196)が弧部材(140)に拘束されて弧部材(140)に対しポジションアダプタ(150)を固定するようになっている。
【0023】
この同様の様式において、ロック部材(172)の突起部(175)がポジションアダプタ(150)から離れるように移動することにより、突起部(175)はスロット(154)の側壁に拘束されてポジションアダプタ(150)に対しロック部材(172)を固定する。このロック及びロック解除構成により、頭蓋クランプ(170)は、操作部(190)のノブ(194)の最小限の回転で、弧部材(140)に対し、及び中央頭部支持部(110)に対して調整することができる。例えば、単なる例であって限定するものではないが、一例では、HFD(100)は、操作部(190)のノブ(194)のわずか4分の1の回転により調整可能状態から固定状態に移行することができる。当然、他の例では、HFD(100)は操作部(190)のより大きな又はより小さな回転で調整可能状態から固定状態にHFD(100)を移動させるように構成されていてもよい。
【0024】
図7及び8を参照すると、中央頭部支持部(110)は中央頭部支持部(110)と弧部材(140)との間の間隔を調整するように構成されている。上述したように、弧部材(140)はコネクタ(144)を有する。コネクタ(144)は中央頭部支持部(110)の本体(112)と調整可能に連結する。図示されるように、本体(112)内にはスロット(124)がある。本実施例において、スロット(124)はディスク(120)を受けるスロット(122)の真下に位置付けられる。スロット(124)はコネクタ(144)の一部を受ける。示されるように、コネクタ(144)はスロット(124)内で受けられるように構成された上位梁部分(146)を有する。梁部分(146)の外形はスロット(124)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(146)及びスロット(124)は、共に蟻継ぎ境界面を形成する。このように、コネクタ(144)はスロット(124)に沿って並進移動可能であり、スロット(124)は弧部材(140)と中央頭部支持部(110)間の間隔を調整する。
【0025】
スロット(124)内でのコネクタ(144)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(110)はロック機構(149)を含む操作部(148)を有し、このロック機構(149)は、梁部分(146)と接触して圧縮係合により本体(112)に対しその位置を固定し、または少なくとも十分にコネクタ(144)の並進移動を可能にするようロック機構(149)を梁部分(146)との接触から係脱させることにより本体(112)に対してコネクタ(144)のスライド可能な調整をできるようにする。梁部分(146)とロック機構(149)の接触を制御するために、操作部(148)は回転するレバー(147)を含む。レバー(147)の回転によりロック機構(149)は、レバー(147)の回転方向に応じて梁部分(146)に向かって又は梁部分(146)から離れるように移動する。操作部(148)は、中央頭部支持部(110)の本体(112)のネジ穴(126)を通って延在するネジ棒(145)を含む。レバー(147)は穴(143)を含み、穴(143)はレバー(147)とネジ棒(145)が一体となって回転するような固定方法でネジ棒(145)に連結されている。レバー(147)の回転によりネジ棒(145)が回転し、その回転方向に基づいて梁部分(146)に向かって又は梁部分(146)から離れるようにネジ棒(145)が並進移動するようになっている。梁部分(146)に向かうネジ棒(145)の並進移動はロック機構(149)駆動しコネクタ(144)の梁部分(146)と接触させ、それにより、コネクタ(144)の位置、したがって中央頭部支持部(110)に対する弧部材(140)の位置を固定する。同様に、梁部分(146)から離れるネジ棒(145)の並進移動はコネクタ(144)の梁部分(146)とロック機構(149)を係脱させ、それにより、コネクタ(144)の位置、したがって中央頭部支持部(110)に対する弧部材(140)の位置を調整できるようにする。上述した構成では、コネクタ(144)は、中央頭部支持部(110)に対する弧部材(140)の位置を変更するよう、中央頭部支持部(110)によって定義された平面に沿ってまたはその平面に平行に調整可能である。
【0026】
II.単方向弧を有する例示的な頭部固定機器
患者頭部の安定化を伴う特定の医療処置、特に、処置を通じて撮像が用いられる場合におけるそれらの処置では、空間を節約する設計でHFDを用いることが望ましいことがある。これは、いくつかの撮像機器内で利用可能な小空間に基づき得るものであり、及び/またはこれは、撮像出力におけるアーチファクトに寄与し得る物質の量を減らすことに基づき得る。
図9及び10を参照すると、別の例示的なHFD(200)が示されている。このHFD(200)は、HFD(100)と多くの点で類似するが、より短い弧部材を使用し、それにより、HFD(200)の全体的なサイズ及び質量を削減する。HFD(200)の機構は、以下で説明されるものを除き、HFD(100)に関して上述した機構と同一である。したがって、簡潔性のために、上述したHFD(100)の機構は、以下で説明する差異を除き、HFD(200)に等しく適用される。
【0027】
HFD(200)は、上述したように中央頭部支持部(110)と、頭蓋クランプ(170)と、操作部(190)とを有する。ただし、HFD(200)では、弧部材(240)が上述した弧部材(140)に取って代わる。弧部材(240)は単方向弧部材として構成されている。すなわち、HFD(200)により、弧部材(240)は、中央頭部支持部(110)の真下から弓型経路に沿う1方向に外側に向かって延在する。このように、中央頭部支持部(110)と弧部材(240)との間の連結は、中央頭部支持部(110)が弧部材(240)の1端部と連結し、弧部材(240)が中央頭部支持部(110)から離れる方へ単一方向に延在したままとなるようになっている。
【0028】
更なる具体的な観点において、弧部材(240)は湾曲細長部材(242)とコネクタ(244)とを有する。本実施例において、湾曲細長部材(242)は、第1の端部(241A)と第2の端部(241B)とを有する。第1の端部(214A)及び第2の端部(241B)の各々に近接して取付区域(230)のペアがあり、各取付区域(230)ではネジ穴(233)のペアを有する。また、コネクタ(244)は、ネジ穴(234)のペアと、ネジ穴(234)のペアを通って延在し湾曲細長部材(242)においてネジ穴(233)のペアの1つによって受けられるように構成された留め具(236)のペアとを有する。このように、コネクタ(244)は、取付区域(230)のいずれか1つにおいて細長部材(242)に取り付けられるように構成されている。コネクタ(144)に関して上述したように、コネクタ(244)はコネクタ(144)が行うのと同様の様式で中央頭部支持部(110)と連結する。
【0029】
いくつかの例において、弧部材(240)は、単方向弧の代わりに、または単方向弧に加えて半弧として説明することができる。この構成では、弧部材(240)の湾曲細長部材(242)は弧長さ及び湾曲の半径を定義する。上述したように、湾曲の半径は、クッション(118)上に位置付けられるときの患者頭部の中心ポイントから細長部材(242)の断面の中間のポイントまでの中心軸(A1)に沿った距離を表す。本実施例において、弧長さは、中央頭部支持部(110)によって定義された中心軸(A1)から約45度オフセットまでの弧部材(240)に沿った1方向に頭蓋クランプ(170)を位置付けることを可能にする十分な長さである。単なる例であって限定するものではないが、いくつかの実施例では、弧部材(240)は、約120~約200ミリメートルの弧長さを有することができ、約120~約200ミリメートルの湾曲の半径を定義することができる。例えば、一実施例において、弧部材(240)は約170ミリメートルの弧長さを有する約152ミリメートルの湾曲の半径を定義する。当然、それらの特定の寸法は、全ての例において必要とされるものではなく、他の好適な寸法が本明細書における教示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0030】
本実施例において、弧部材(240)の湾曲細長部材(242)は台形状の外形を有するように構成されている。弧部材(240)のこの形状により、弧部材(240)は当該弧部材(240)を受けるように構成された相補的形状のスロット(152)を有するポジションアダプタ(150)と係合することが可能となる。本実施例において、ポジションアダプタ(150)のスロット(152)及び弧部材(240)の細長部材(242)の外形は湾曲蟻継ぎ状境界面を形成する。本明細書における教示を考慮すれば、用いうるスロット(152)及び弧部材(240)の外形についてその他の相補的形状が当業者には明らかであろう。
【0031】
HFD(200)を用いる際、弧部材(240)の単方向の性質を理由に患者の方位が最初に決定される。例えば、患者の頭部はその患者の矢状面に対して一方の側または他方の側に回転する。中央頭部支持部(110)によって支持されるときの患者頭部の回転方向に基づいて、弧部材(240)のコネクタ(244)は、第1の端部(241A)近くの取付区域(230)または第2の端部(241B)近くの取付区域(230)のいずれかにおいて湾曲細長部材(242)に取り付けられる。一例において、患者の頭部がその患者の矢状面に対して第1の方向に回転するとき、弧部材(240)についての所望の仕組みによって、湾曲細長部材(242)が第1の方向とは反対に延在するようになる。このように、湾曲細長部材(242)は患者の矢状面から離れるように延在し、湾曲細長部材(242)がその患者の頭部の背後に延在するようになっている。単なる例示的な実施例であって限定するものではないが、
図11はHFD(200)を示し、HFD(200)を用いて頭部が患者の矢状面に対して第1の方向に回転された患者を安定化させることを示す。弧部材(240)は、コネクタ(244)が湾曲細長部材(242)の第2の端部(241B)において取付区域(230)に取り付けられるように構成されている。このように、湾曲細長部材(242)は、当該湾曲細長部材(242)が患者の頭部の背後に延在するよう、第1の方向とは反対に、及び患者の矢状面から離れるように延在する。
【0032】
上述したように、頭蓋クランプ(170)は頭蓋クランプ(170)が弧部材(140)と連結するのと同様の様式において弧部材(240)と連結する。HFD(200)により、頭蓋クランプ(170)は、中央頭部支持部(110)によって定義された中心軸(A1)から約45度まで、中央頭部支持部(110)及び患者の長手方向軸に対して1方向に調整可能である。このように、HFD(200)は、中央頭部支持部(110)によって支持される患者頭部のいずれかの側で頭蓋クランプ(170)を最大約45度斜め横向きに位置付けることを可能にする。
【0033】
さらに、コネクタ(244)が弧部材(240)の湾曲細長部材(242)のいずれかの端部と連結可能なため、HFD(200)は、湾曲細長部材(242)とコネクタ(244)の選択された取付位置に応じて弧部材(240)がいずれかの方向に中央頭部支持部(110)から離れるように延在するよう構成することができる。その結果、半弧または単方向弧部材(240)を有するHFD(200)は、一患者の使用に適するよう構成することができ、当該患者は、頭部が中央頭部支持部(110)によって支持され患者の矢状面に対していずれかの方向に回転されるように位置付けられ得る。すなわち、HFD(200)により、弧部材(240)は第1の方位及び第2の方位のうちの選択された1つにおいて中央頭部支持部(110)と連結可能であると考えることができる。第2の方位では、弧部材(240)は、第1の方向に中央頭部支持部(110)の真下から外側に向かって延在するものであり、第1の方向は、弧部材(240)が第1の方位にあるときに中央頭部支持部(110)の真下から外側に向かって延在する第2の方向と反対である。
【0034】
単方向弧または半弧を有するHFD(200)のいくつかの他の例では、頭蓋クランプと弧部材との間の連結は、頭蓋クランプのいずれの側から頭蓋クランプと弧部材とを結合可能にするように構成されるようHFD(200)が修正されてもよい。このように、弧部材と頭蓋クランプの取付は対称的であると見なされる。本明細書における教示を考慮すれば、頭蓋クランプと単方向弧部材を連結する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0035】
III.圧力制御旋回式クッションを有する例示的な頭部固定機器
様々な患者の位置付けに適応する十分な調整機能をHFDに提供するために、別の望ましい機構ではHFDのクッションに選択的な旋回式調整を組み込むことができる。クッションに組み込むことができる他の機構は、クッションと患者との間の接触圧力の管理または制御に関する。
図12は、別のHFD(300)を表しており、当該別のHFD(300)には、HFD(100)に多くの点で類似するが、旋回式クッションに関する機構が組み込まれ、また、接触圧力の制御を補助する機構が組み込まれている。HFD(300)の機構は、以下で説明するものを除き、HFD(100)に関して上述した機構と同じである。したがって、簡潔性のために、上述したHFD(100)の機構は、以下で説明する差異を除き、HFD(300)に等しく適用される。
【0036】
HFD(300)は、上述したような弧部材(140)と、頭蓋クランプ(170)と、操作部(190)とを有する。ただし、HFD(300)では、中央頭部支持部(310)は上述した中央頭部支持部(110)に取って代わる。
図12及び
図13を参照すると、中央頭部支持部(310)は本体(312)と、本体(312)上の取付機構(314)とを有し、この場合、取付機構(314)は直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形態である。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(314)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(310)の取付機構(314)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(310)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0037】
また、中央頭部支持部(310)は、本体(312)と連結しクッション(318)を保持または維持する基部(316)を有する。クッション(318)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法で基部(316)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(318)は、当該クッション(318)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(316)と選択的に連結されている。クッション(318)は、HFD(300)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(316)は、本体(312)から外向き上方向に延在するアーム(320)のペアによって本体(312)と連結する。基部(316)は連結部材(322)を有し、当該連結部材(322)は基部(316)を横切って延在する軸を定義する。連結部材(322)は穴の(323)のペアを有し、当該ペアの各穴(323)は各アーム(320)の各穴(321)と位置合わせされている。連結部材(322)によって定義された軸は当該軸が旋回軸を定義するように連結部材(322)の穴(323)に沿って延在し、それにより、その旋回軸を中心に基部(316)及び連結されたクッション(318)が旋回可能になっている。留め具(325)のペアは、アーム(320)の穴(321)を通って延在し、連結部材(322)の穴(323)に係合して基部(316)と中央頭部支持部(310)の本体(312)を旋回可能に連結する。留め具(325)は、基部(316)及び連結されたクッション(318)の位置を固定するよう締め付けられてもよく、逆に、当該留め具(325)は、基部(316)及び連結されたクッション(318)の旋回可能な調整を可能にするよう緩められてもよい。
【0038】
使用中、中央頭部支持部(310)は、患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(310)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されるときに患者の頭部に対して下方に延在する平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(310)は、中央頭部支持部(310)によって定義された平面が基部(316)及び連結されたクッション(318)の旋回動作に基づいて調整され得るように位置付けられる。したがって、中央頭部支持部(310)によって定義された平面は、床に平行し、または中央頭部支持部(310)上で重力の方向に直交することに限定されるものではない。
図12及び
図15を参照すると、患者の頭部の異なる位置、すなわち、
図12に示されるようなコンコルド位置及び
図15に示されるような仰臥位に適応するよう、2つの異なる方位に旋回する基部(316)を備えたHFD(300)が示されている。
【0039】
図13を参照すると、中央頭部支持部(310)は、中央頭部支持部(310)と弧部材(140)との間の間隔を調整するように構成されている。上述したように、弧部材(140)はコネクタ(144)を有する。コネクタ(144)は中央頭部支持部(310)の本体(312)と調整可能に連結する。図示されるように、本体(312)内にはスロット(324)がある。スロット(324)はコネクタ(144)の一部を受ける。示されるように、コネクタ(144)は上位梁部分(146)を有し、当該上位梁部分(146)はスロット(324)内に受けられるように構成されている。梁部分(146)の外形はスロット(324)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(146)及びスロット(324)は共に蟻継ぎ境界面を形成する。このように、コネクタ(144)はスロット(324)に沿って並進移動可能であり、スロット(324)は弧部材(140)と中央頭部支持部(310)との間の間隔を調整する。スロット(324)内でコネクタ(144)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(310)はHFD(100)に関して上述したような操作部(148)及びロック機構(149)を有する。HFD(300)では、操作部(148)及びロック機構(149)は、HFD(100)に関して上述したのと同様の様式で構成され動作可能である。この構成では、コネクタ(144)は、中央頭部支持部(310)に対して弧部材(140)の位置を変更するよう、中央頭部支持部(310)によって定義された平面に沿って、または当該平面に平行に調整可能である。
【0040】
図14を参照すると、HFD(300)のクッション(318)は第1のチャンバ(319)を有し、当該第1のチャンバ(319)は流体が充填されるように構成された内部空間(317)を有する。流体は気体または液体であってよい。第1のチャンバ(319)は、内部空間(317)へのアクセスをもたらすように構成されたポート(301)を含む。流体は、第1のチャンバ(319)内で内部空間(317)に方向付けられ、あるいは第1のチャンバ(319)の内部空間(317)から抜き出され又は排出され得る。第1のチャンバ(319)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(317)から解放または排出することができる。
【0041】
クッション(318)はさらに、第2のチャンバ(1319)を有し、第2のチャンバ(1319)は形状適合材料が充填されるように構成されている。本実施例において、第1のチャンバ(319)は第2のチャンバ(1319)に対して下方に位置付けられる。さらに、第2のチャンバ(1319)は頭部の患者と接触するように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(319、1319)の相対位置は、その他の例では切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。一例では、形状適合材料は、ゲル、発泡体、または微粒材料のいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、クッション(318)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0042】
上述したクッション(318)の構成では、クッション(318)は、頭部が中央頭部支持部(310)によって支持されるときに患者頭部との接触圧力の均一な分布を提供するように構成されている。また、接触圧力はポート(301)を介して流体を第1のチャンバ(319)に充填することにより増大させることができる。逆に、接触圧力は上述したように第1のチャンバ(319)から流体を排出することにより減少させることができる。接触圧力を低下させることにより、血流がクッション(318)と接触している患者頭部の領域に回復し得る。いくつかの例において、全ての例で必要とされるものではないが、第1のチャンバ(319)からの流体の相当な排出により、クッション(318)が収縮または縮小し、クッション(318)が患者の頭部と接触しないような高さになる。上記と同様に、クッション(318)と患者との間の接触が不足する程度まで接触圧力を低下させることにより、クッション(318)と接触していた患者頭部の領域に血流が回復し得る。接触圧力を低下させ血流を回復させることにより組織外傷または損傷を回避することができ、またはそのリスクが低減する。さらに、組織の或る領域に血流を回復させる際に患者の安定化を犠牲にしないように、クッション(318)と患者の頭部との間の接触圧力を低下させるときに安定化アセンブリ(186)によって安定化を維持することができる。いくつかの例において、クッション(318)と接触している組織領域に血流を回復させる十分な時間が経過したら、流体を第1のチャンバ(319)に充填することによって再び接触圧力を増大させ、強化された若しくはより高い程度の安定化を提供し、または復元することができる。
【0043】
IV.側方パッドとマルチチャンバクッションとを有する例示的な非侵襲式頭部固定機器
いくつかの例において、安定化アセンブリがピンの代わりにパッドの形式を有する非侵襲式のHFD構成が望ましいことがあり、その場合、パッドが側方安定化を提供する。さらに、パッドは、特定の組織領域への血流の促進を助け組織損傷または外傷のリスクを回避または低減するよう、特定の接触圧力制御機構を伴うように構成されていてもよい。
図16を参照すると、例示的なHFD(400)が示されており、当該HFD(400)には、HFD(100)に多くの点で類似するが、非侵襲式安定化を提供するよう安定化アセンブリ(186)に対してパッド(430)が組み込まれている。また、HFD(400)はHFD(300)に関して説明したようなクッション(318)にいくつかの点で類似する旋回式クッション(418)を含む。HFD(400)はさらに、パッド(430)が患者の頭部と接触する安定化接触領域において、及びクッション(418)が患者の頭部と接触する下方安定化接触領域において圧力を制御するのを補助する機構を含む。HFD(400)の機構は、以下で説明するものを除き、HFD(100)に関して上述した機構と同じである。したがって、簡潔性のために、上述したHFD(100)の機構は、以下で説明される差異を除き、HFD(400)に等しく適用される。
【0044】
HFD(400)は、上述したような弧部材(140)と、頭蓋クランプ(170)と、操作部(190)とを有する。また、HFD(400)はHFD(300)に関して上述した中央頭部支持部(310)と同様の中央頭部支持部(410)を有するが、中央頭部支持部(410)は上述したクッション(318)の代わりにクッション(418)を含む。
図16を参照すると、中央頭部支持部(410)は、本体(412)と、本体(412)上の取付機構(414)とを有し、取付機構(414)は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形式である。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(414)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(410)の取付機構(414)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(410)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0045】
中央頭部支持部(410)はまた、本体(412)と連結しクッション(418)を保持または維持する基部(416)を有する。クッション(318)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法で基部(416)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(418)は、当該クッション(418)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(416)と選択的に連結されている。クッション(418)は、HFD(400)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(416)は、本体(412)から外向き上方向に延在するアーム(420)のペアによって本体(412)と連結する。基部(416)は、基部(416)を横切って延在する軸を定義する連結部材(422)を有する。連結部材(422)は各側に穴(423)のペアを有し、当該ペアの各穴(423)は各アームの(420)の各穴(421)と位置合わせされている。連結部材(422)によって定義された軸は当該軸が旋回軸を定義するように連結部材(422)の穴(423)に沿って延在し、それにより、その旋回軸を中心に基部(416)及び連結されたクッション(418)が旋回可能になっている。留め具(425)のペアは、アーム(420)の穴(421)を通って延在し、連結部材(422)の穴(423)に係合して、基部(416)を中央頭部支持部(410)の本体(412)に旋回可能に連結する。留め具(425)は、基部(416)及び連結されたクッション(418)の位置を固定するよう締め付けられてもよく、逆に、留め具(425)は、基部(416)及び連結されたクッション(418)の旋回可能な調整を可能にするよう緩められてもよい。
【0046】
使用中、中央頭部支持部(410)は、患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(410)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されるときに患者の頭部に対して下方に延在する平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(410)は、中央頭部支持部(410)によって定義された平面が基部(416)及び連結されたクッション(418)の旋回動作に基づいて調整され得るように位置付けられている。したがって、中央頭部支持部(410)によって定義された平面は、床に平行し、または中央頭部支持部(410)上で重力の方向に直交することに限定されるものではない。
【0047】
図16を参照すると、中央頭部支持部(410)は中央頭部支持部(410)と弧部材(140)との間の間隔を調整するように構成されている。上述したように、弧部材(140)はコネクタ(144)を有する。コネクタ(144)は中央頭部支持部(410)の本体(412)と調整可能に連結する。図示されるように、本体(412)内にはスロット(424)がある。スロット(424)はコネクタ(144)の一部を受ける。図示されるように、コネクタ(144)はスロット(424)内で受けられるように構成された上位梁部分(146)を有する。梁部分(146)の外形はスロット(424)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(146)及びスロット(424)は共に蟻継ぎ境界面を形成する。このように、コネクタ(144)はスロット(424)に沿って並進移動可能であり、それは弧部材(140)と中央頭部支持部(410)間の間隔を調整する。スロット(424)内でコネクタ(144)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(410)は、HFD(100)に関して上述したような操作部(148)とロック機構(149)を有する。HFD(400)では、操作部(148)及びロック機構(149)はHFD(100)に関して上述したのと同様の様式で構成され動作可能である。この構成では、コネクタ(144)は、中央頭部支持部(410)に対して弧部材(140)の位置を変更するように、中央頭部支持部(410)によって定義された平面に沿ってまたは平面に平行に調整可能である。
【0048】
図16~
図19を参照すると、上述したようにHFD(400)はパッド(430)を有する。パッド(430)は、筐体(431)と、第1のチャンバ(432)と、第2のチャンバ(433)とを有する。穴または切欠き部(434)が、筐体(431)、第1のチャンバ(432)、及び第2のチャンバ(433)を通って延在する。穴(434)は、過度な圧縮及び圧力から患者の耳を保護し代わりに患者の頭蓋に対してそのような圧力及び圧縮力を方向付けるように安定化の間に患者の耳を受けるように構成されるよう位置する。また、筐体(431)上には環状フランジ(435)が位置し、環状フランジ(435)は、安定化アセンブリ(186)の残りと連結するように構成されたスロット(436)を定義する。本実施例において、安定化アセンブリはカラー(437)を含み、カラー(437)はスロット(436)内に適合するフランジ(438)を有する。この構成では、パッド(430)は、
図5について上記に示したように穴(184)によって定義され穴(184)を通って延在する軸を中心に調整することができる。
【0049】
パッド(430)の第1のチャンバ(432)は流体が充填されるように構成された内部空間(439)を定義する。前記流体は、気体若しくは液体、またはそれらの組み合わせであってよい。また、第1のチャンバ(432)と連結し第1のチャンバ(432)の内部空間(439)へのアクセスをもたらす開閉可能なポート(440)もある。このように、流体は、ポート(440)によって第1のチャンバ(432)の内部空間(439)に配送することができ、あるいは第1のチャンバ(432)の内部空間(439)から排出または抜き出すことができる。
【0050】
図18及び
図20を参照すると、パッド(430)が各安定化アセンブリ(186)で用いられる場合、いくつかの例において、ポート(440)は、チューブ、ホース、または導管(441)によって連結される。チューブ(441)は、弁(457)に連結されていてもよく、さらに、以下でさらに説明するような流体リザーバ(459)に連結されていてもよい。この構成では、複数のパッド(430)の第1のチャンバ(432)を連結することにより、第1のチャンバ(432)内の圧力は同じになり、圧力は、第1のチャンバ(432)により多くの流体が充填されて圧力が増大し、または第1のチャンバ(432)から流体が排出されて圧力が減少するよう同様の態様で変化する。
【0051】
図示の例に示されるように、第1のチャンバ(432)は、筐体(431)と第2のチャンバ(433)との間に位置する。当然、他の例では、本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ(432)及び第2のチャンバ(433)の位置が切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。パッド(430)の第2のチャンバ(433)は、クッション(318)に関して上述したような形状適合材料が充填されるように構成されている。本実施例において、第2のチャンバ(433)は、患者の頭部に隣接し、患者の頭部と接触するように位置付けられている。一例では、第2のチャンバ(433)内の形状適合材料は、ゲル、発泡体、微粒材料、またはそのような材料の組み合わせのいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、パッド(430)の第2のチャンバ(433)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0052】
上述したパッド(430)の構成では、パッド(430)は、頭部がパッド(430)を有する安定化アセンブリ(186)によって支持されるときに患者頭部との接触圧力の均一な分布を提供するように構成されている。さらに、接触圧力は流体を流体制御システム(444)を表す
図20に示されるようなポート(440)を介して又はポート(440)と連結されたチューブ(441)を介して第1のチャンバ(432)に充填することにより増大させることができる。逆に、接触圧力は、上述したように第1のチャンバ(432)から流体を排出することにより低下させることができる。接触圧力を低下させることにより、血流がパッド(430)と接触している患者頭部の領域に回復し得る。いくつかの例において、全ての例で必要とされるものではないが、第1のチャンバ(432)からの流体の相当な排出により、パッド(430)が患者頭部に安定化のための十分な接触圧力を加えないようなサイズに収縮または縮小し得る。少なくともいくつかの例において、安定化させるのに十分な接触圧力は安定化圧力ということができる。パッド(430)と患者との間の安定化圧力が不足する程度まで接触圧力を低下させることにより、パッド(430)と以前接触しており安定化圧力下にあった患者頭部のこの領域に血流が回復し得る。接触圧力を低下させ血流を回復させることにより組織外傷または損傷を回避することができ、またはそのリスクが低減する。さらに、パッド(430)と患者頭部との間の接触圧力を低下させるときに中央頭部支持部(410)のクッション(418)によって患者頭部の支持を維持し、組織のある領域に血流を回復させるときに患者の支持を犠牲にしないようにすることができる。いくつかの例において、パッド(430)と接触している組織領域への血流を回復させる十分な時間が経過すると、流体を第1のチャンバ(432)に充填することにより再び接触圧力を増大させて強化された若しくはより高い程度の安定化を提供または復元することができる。
【0053】
HFD(400)のいくつかの例において、側方に位置付けされている両パッド(430)はチューブ(441)を介して連結され、それらのパッド(430)は各パッド(430)内が常に同一の圧力に維持される。いくつかの他の例では、側方に位置付けされている両パッド(430)をチューブ(441)と連結する必要はなく、したがって、各パッド(430)は、その圧力の観点で他のパッドから独立して制御することができる。さらにまた、様々な弁の配置がチューブ(441)と共に組み込まれてもよく、それにより、パッド(430)が、チューブ(441)を介して連結される場合であっても、独立して制御されるように構成することができる。本明細書における教示を考慮すれば、パッド(430)を構成し、中の圧力を制御する他の方法が当業者には明らかであろう。単なる例であって限定するものではないが、パッド(430)内の圧力要求は、上述したように弧部材(140)に沿って頭蓋クランプ(170)をスライドすることにより頭蓋クランプ(170)が患者の頭部周りで回転された場合の患者の位置によって異なってもよい。
【0054】
図16及び
図17を参照すると、HFD(400)のいくつかの例において、パッド(430)が患者頭部に加える圧力はトルクネジ(443)を用いて調整可能である。トルクネジ(443)は安定化アセンブリ(186)の1つの構成要素である。トルクネジ(443)を締め付けると、パッド(430)によって患者頭部に加えられた圧力が増大する。図示の例では、単一のトルクネジ(443)がHFD(400)の片側にあり、2つのパッド(430)がチューブ(441)によって連結され、トルクネジ(443)の作動が両パッド(430)における圧力を変化させるようになっている。いくつかの他の例では、複数のトルクネジ(443)が用いられてもよく、パッド(430)がチューブ(441)によって連結されなくてもよいように、パッド(430)の各々と1つのトルクネジが関連付けられていてもよい。HFD(400)を用いるいくつかの例において、初期安定化はトルクネジ(443)を用いて達成することができる。最初にトルクネジ(443)を設定した後、パッド(430)の第1のチャンバ(432)内の流体の量を調整することにより、例えば、圧力を増大させるよう第1のチャンバ(432)により多くの流体を方向付けることにより、または圧力を減少させるよう第1のチャンバ(432)から流体を排出することにより、その後の圧力調整を行いうる。すなわち、いくつかの例において、トルクネジ(443)が含まれるか否かに関わらず、各パッド(430)によってもたらされる接触圧力はトルクネジ(443)とは別個に独立して制御または調整することができる。いくつかの例において、トルクネジ(443)は、完全に省略することができ、従来の頭蓋ピンアセンブリに置き換えることができる。本明細書における教示を考慮すれば、
図20に示されるようなトルクネジ(443)、流体制御システム(444)、または両方の組み合わせのいずれかを用いる他の方法が当業者には明らかであろう。
【0055】
図18及び
図19を参照すると、HFD(400)は、上述したような中央頭部支持部(410)の基部(416)と連結されたクッション(418)を有する。HFD(400)のクッション(418)は第1のチャンバ(445)を有するマルチチャンバ構造を有し、第1のチャンバは流体が充填されるように構成された内部空間(446)を有する。流体は気体または液体であってよい。第1のチャンバ(445)は内部空間(446)へのアクセスをもたらすように構成されたポート(447)を含む。流体は、第1のチャンバ(445)内で内部空間(446)に方向付けられてもよく、あるいは第1のチャンバ(445)の内部空間(446)から抜き出され又は排出されてもよい。第1のチャンバ(445)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(446)から解放または排出することができる。クッション(418)はさらに、流体が充填されるように構成された内部空間(449)を有する第2のチャンバ(448)を有し、あるいは流体は、第2のチャンバ(448)の内部空間(449)から抜き出され若しくは排出されてもよい。第2のチャンバ(448)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(449)から解放または排出することができる。本実施例において、第1のチャンバ(445)の内部空間(446)及び第2のチャンバ(448)の内部空間(449)は当該第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)の内部空間(446、449)間に延在する連結チューブ(450)によって流体連通している。
【0056】
クッション(418)はさらに、第1のチャンバ(445)と第2のチャンバ(448)間に位置付けられた第3のチャンバ(451)を有する。この構成では、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)が集合的に外部チャンバのペアを定義する一方、第3のチャンバ(451)が中間チャンバを定義する。第3のチャンバ(451)はまた、内部空間(452)を有し、連結チューブ(450)が第3のチャンバ(451)の内部空間(452)を通って延在する。第3のチャンバの内部空間(452)は、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)と同様に流体が充填されるように構成されている。流体は、内部空間(452)に追加され又は内部空間(452)から除去されてもよく、それによりクッション(418)のこの領域内の圧力を変化させることができる。第3のチャンバ(451)は第1のチャンバ(445)と同様にポート(453)を有する。ポート(453)は、内部空間(452)へのアクセスをもたらし、流体を内部空間(452)に方向付け、または流体を内部空間(452)から排出するのに用いられる。
【0057】
クッション(418)はさらに、各々、形状適合材料が充填されるように構成された、第4のチャンバ(454)、第5のチャンバ(455)、及び第6のチャンバ(456)を有する。第1のチャンバ(445)は第4のチャンバ(454)に対して下方に位置付けられ、第4のチャンバ(454)は患者の頭部に接触するように構成されている。第2のチャンバ(448)は第5のチャンバ(455)に対し下方に位置付けられ、第5のチャンバ(455)は患者の頭部と接触するように構成されている。第3のチャンバ(451)は第6のチャンバ(456)に対し下方に位置付けられ、第6のチャンバ(456)は患者の頭部と接触するように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ及び第4のチャンバ(445、454)、第2のチャンバ及び第5のチャンバ(448、455)、並びに第3のチャンバ及び第6のチャンバ(451、456)の相対位置は、他の例では切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。一例では、第4のチャンバ、第5のチャンバ、及び第6のチャンバ(454、455、456)内の形状適合材料は、ゲル、発泡体、微粒材料、またはそれらの組み合わせのいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、クッション(418)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0058】
上述したクッション(418)の構成により、クッション(418)は、流体及びそれぞれの内部空間(446、449、452)の各々による調整の方法に応じて様々な圧力プロファイルを提供するように構成されている。例えば、いくつかの例において、第3のチャンバ(451)が、その内部空間(452)に第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)の内部空間(446、449)にあるのと同じ単位体積あたりの流体量を保持するように構成されている場合、接触圧力の均一な分散が達成され得る。更なる他の例では、外部チャンバが釣り合った圧力を有する一方、中間チャンバが外部チャンバ内の圧力よりも高いまたは低い圧力を有してもよい。さらに、外部チャンバと中間チャンバとの間で異なる圧力を有するこの構成では、患者頭部の確実な安定化を維持しつつクッション(418)の一部と接触している患者組織のある領域への血流を促進する方法を提供するように制御された様式で流体を排出および/または追加することができる。
【0059】
単なる例であって限定するものではないが、一例では、患者は、最初、患者頭部の部分に同一の接触圧力を加えるパッド(430)を有するHFD(400)を用いて安定化される。この初期の安定化では、クッション(418)は、外部チャンバ及び中間チャンバも患者頭部の背面部分に同一の接触圧力を加えるように構成されている。本実施例において、HFD(400)は仰臥位にある患者に用いられるが、これは全ての実施例において必要なわけではなく、HFD(400)は他の姿勢の患者に用いてもよい。いくらかの時間の経過後に、パッド(430)及び/またはクッション(418)内の圧力を操作して、患者頭部の組織がHFD(400)の一部と接触する領域への血流を回復または増加させることができる。さらに、この圧力操作には、組織への血流の増加を促進するための短時間の圧力軽減または圧力低下、それに続く、或る時間の経過後に安定化を高めるための圧力増大が含まれる。さらに、この圧力操作は、パッド(430)及び/またはクッション(418)のチャンバ間で交互に行うことができる。この交互の様式を用いることにより、HFD(400)と接触している組織領域では、許容可能な程度の安定化を維持しつつ、血流の回復または増加の処置がなされる。
【0060】
交互圧力軽減及び復元シーケンスの例は、第1の工程として、初期の安定化が構築された後、患者頭部のパッド(430)が接触する部分に血流を回復させる時間量を与えるようパッド(430)における圧力を低下させる工程を含むことができる。いくつかのそのような実施例では、パッド(430)における圧力は全く低下されなくてもよく、圧力軽減シーケンスはマルチチャンバクッション(418)に制限されてもよいことに留意されたい。また、他の実施例では、第1の工程は、マルチチャンバクッション(418)に対する圧力軽減工程またはプロセスを実行し、その後、パッド(430)の一方若しくは両方に対する圧力軽減工程を実行してもよい。ただし、本実施例では、パッド(430)における圧力が低下し、パッド(430)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間の経過後、パッド(430)における圧力は次いで、その初期レベルまで復元される。
【0061】
その後、第3のチャンバ(451)によって定義された中間チャンバはその圧力を低下させるよう排出される。この動作は、中間チャンバにおいて患者頭部に加えられた力または圧力を低下させ、したがって、中間チャンバと接触している患者頭部の背面領域への血流を増加させることができる。この場合、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)によって集合的に定義された外部チャンバは、それらの元の圧力若しくは初期の圧力に留まり、または排出された中間チャンバにより患者の頭部からのそれらの領域内の力における増大に基づいてより高い圧力を経験する。したがって、中間チャンバと接触している組織領域がこの領域における組織外傷のリスクを防止または低下させるよう血流増加または血流回復の時間を受けている間、外部チャンバ及びパッド(430)は患者の頭部に安定化を提供する。
【0062】
更なる簡潔性のために、クッション(418)の中間チャンバは、流体を収容するように構成された第3のチャンバ(451)と、形状適合材料により構成された第6のチャンバ(456)との両方を有する。同様に、外部チャンバのペアでは、外部チャンバの一方は、流体を収容するように構成された第1のチャンバ(445)と、形状適合材料により構成された第4のチャンバ(454)とを有する。また、外部チャンバの他方は、流体を収容するように構成された第2のチャンバ(448)と、形状適合材料により構成された第5のチャンバ(455)とを有する。本明細書における教示を考慮すれば理解されるように、外部チャンバ及び中間チャンバ内の上述した圧力軽減は、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバ(445、448、451)それぞれの内部空間(446、449、452)内で流体体積を変化させることによって起こり、当該圧力軽減に基づく血流の増加は形状適合材料を有する第4のチャンバ、第5のチャンバ、及び第6のチャンバ(454、455、456)それぞれと接触している組織領域において起こる。HFD(400)及び他のHFDについてのその他の構成では、流体充填チャンバは患者の頭部と接触するチャンバであってもよく、形状適合包含チャンバはそれぞれの流体充填チャンバの真下または下方に位置しうる。本明細書における教示を考慮すれば、HFD(400)及び他のHFDのチャンバについてのその他の構成が当業者には明らかであろう。
【0063】
圧力軽減シーケンスの上記実施例に再度戻ると、クッション(418)の中間チャンバにおける圧力が低下し、中間チャンバ、具体的には第6のチャンバ(456)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間の経過後、クッション(418)の中間チャンバにおける圧力は次いで、その初期レベルに復元される。その後、外部チャンバのペアは、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)それぞれから流体を排出しまたは抜き出すことによって、それらの圧力を低下させるよう排出される。この動作は、外部チャンバにおいて患者の頭部に加えられた力または圧力を低下させ、したがって、外部チャンバと接触している患者頭部のこれらの領域への、より詳細には第4のチャンバ及び第5のチャンバ(454、455)それぞれと接触している領域への血流を増加させることができる。この場合、中間チャンバは、パッド(430)と共にその元の圧力または初期の圧力に留まる。したがって、外部チャンバと接触している組織領域がこの領域における組織外傷のリスクを防止または低下させるよう血流増加または血流回復の時間を受けている間、中間チャンバ及びパッド(430)は患者の頭部に安定化を提供する。
【0064】
クッション(418)の外部チャンバにおける圧力が低下し、外部チャンバ、具体的には第4のチャンバ及び第5のチャンバ(454、455)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間の経過後、クッション(418)の外部チャンバにおける圧力は次いで、その初期レベルに復元される。上述した圧力軽減工程は、組織損傷または外傷のリスク低減を支援するために、必要に応じて又は所望に応じて複数回実施することができる。さらに、これらの圧力軽減動作は、上記環境を必要とし、または要求するような任意の順序で完了することができ、上述した実施例の順序が必要な順序または唯一の順序若しくはシーケンスと見なされるべきではない。
【0065】
HFD(400)では、上述したように、チューブ(441)を介したパッド(430)の第1のチャンバ(432)間の流体連通により、各パッド(430)における圧力を同一にすることができ、また同時に調整することができ、それにより、パッド(430)における圧力が変化する間、それが同一の様式において同程度に行われるようになっている。パッド(430)が概して患者頭部の両側に位置する場合では、パッド(430)の第1のチャンバ(432)間の流体連通により、それぞれのパッド(430)によって患者頭部の両側に加えられた力の差を変えることなく、パッド(430)内の圧力を変化させてパッド(430)により接触された組織領域への血流を促進することができる。この構成は、患者の頭部を移動させたり位置を変更させたりすることなく、パッド(430)内の圧力を変化させることができる。
【0066】
例えば、一実施例において、各パッド(430)により患者頭部の各側面に加えられた初期の力は約20ニュートンであってもよく、したがって、各パッド(430)により加えられた力が同一であるから、その力の差はゼロである。例示的なの圧力軽減プロセスが実行されたとき、各パッド(430)によって患者頭部の各側に加えられる力はここで、約50ニュートンであってもよく、したがって、各パッド(430)により加えられた力が同一に留まることから、その力の差はゼロに維持される。HFD(400)の図示の例では、パッド(430)はチューブ(441)によって流体連通されているが、これは、全ての例において必要とされるわけではない。例えば、いくつかの他の例では、パッド(430)は第1のチャンバ(432)内の流体体積に基づいてそれらの圧力に関し独立して調整可能または制御可能であってもよい。
【0067】
パッド(430)と同様に、上述したようなHFD(400)では、連結チューブ(450)を介したクッション(418)の第1のチャンバ(445)と第2のチャンバ(448)間の流体連通により、クッション(418)の各外部チャンバにおける圧力を同一にすることができ、また同時に調整することができ、それにより、クッション(418)の外部チャンバにおける圧力が変化する間、それが同一の様式において同程度に行われる。図示され説明されるように、患者の頭部を左半身及び右半身に分割する矢状面を中心にクッション(418)の外部チャンバが実質的に対称的に位置するように、クッション(418)の外部チャンバは、仰臥位にあるときに概して患者頭部の矢状面の両側に位置する。クッション(418)の外部チャンバ間の流体連通により、クッション(418)の各外部チャンバによって患者頭部に加えられた力の差を変えることなく、クッション(418)の当該外部チャンバ内の圧力を変化させて、クッション(418)の外部チャンバによって接触している組織領域への血流を促進することができる。この構成は、患者の頭部を移動させたり位置を変更させたりすることなく、すなわち、クッション(418)の一方の外部チャンバに他の外部チャンバと比較して不均一な力が加えられたことにより患者の長手方向軸を中心とする回転が生じてしまうことなく、クッション(418)の外部チャンバ内の圧力を変化させることができる。
【0068】
V.例示的な流体制御システム及び方法
ここで、
図20を参照すると、HFD(400)を有する流体制御システム(444)が概略的に示されている。上記に詳述したように、HFD(400)は、患者の頭部に側方安定化を提供するパッド(430)と、水平支持及び安定化を提供するクッション(418)とを含む。
図20に示されるように、トルクネジ(443)は、パッド(430)が患者頭部に加える圧力を増大または減少させることができるようにパッド(430)の1つと連結する。連結チューブ(441)はパッド(430)を共に連結し、それによりそれらパッド(430)が流体連通するようになっている。上述したように、連結チューブ(441)は各パッド(430)の第1のチャンバ(432)を連結する。この構成では、各パッド(430)における圧力は同一であり、各パッド(430)は患者の頭部に同一の力を分け与える。
【0069】
また、連結チューブ(441)には弁(457)が連結されている。弁(457)は、パッド(430)から流体を選択的に排出してパッド(430)内の圧力を低下させ、または追加の流体がパッド(430)へ流れてパッド(430)内の圧力を増大させることができるように構成されている。弁(457)はポンプ(458)と連結し、ポンプ(458)は、所望に応じてパッド(430)に追加の流体を供給するように構成されている。いくつかの例において、ポンプ(458)はまた、排出または抜き出された流体をパッド(430)から離れるように方向付けるよう構成され得る。流体リザーバ(459)がポンプ(458)と流体連通している。流体リザーバ(459)は、ポンプ(458)を介して配送されることとなる追加の流体をパッド(430)に提供するように構成されている。いくつかの例において、パッド(430)から流体を排出することは、パッド(430)から流体リザーバ(459)へ流体を移動させるよう弁(457)を開放し、ポンプ(458)を動作させることを伴う。ポンプ(458)はまた、流体リザーバ(459)がいくつかの例において省略されてもよいように、流体リザーバ(459)なしに用いうる。そのような例では、ポンプ(458)は、周囲環境からパッド(430)に空気を配送するように構成されていてもよい。同様に、そのような例では、パッド(430)から流体を排出することは、流体リザーバ(459)に排出する代わりに、パッド(430)から周囲環境に空気を再度排出することを伴ってもよい。いくつかの実施例では、流体リザーバ(459)自体を周囲環境と見なすことができる。
【0070】
流体制御システム(444)についての簡略化された構成を有する一例では、流体リザーバ(459)が省略され、ポンプ(458)は、圧力計を備え手動で動作するように構成されたハンドポンプまたはフットポンプを有する。本実施例において、ポンプ(458)は、パッド(430)及びクッション(418)内の流体体積及び圧力を調整するよう、様々な弁(457、460、461)と選択的に連結可能である。いくつかの例において、
図25に示されるものなど、流体制御システム(480)は、複数の弁(457、460、461)の代わりに用いうる切り替え可能な単一の弁(463)を有することができる。そのような例では、弁(463)は、ポンプ(458)およびクッション(418)のそれぞれのポート(447、453)と連結する。また図示されるように、弁(463)は、連結チューブ(441)を介してパッド(430)と連結することもできるが、この追加の流体連通は、全ての例において必要とされるわけではなく、また別個の流体制御システムによって制御されてもよい。流体制御システム(480)内の流体を制御する場合、弁(463)は、流体がクッション(418)および/またはパッド(430)の流体保持チャンバのいずれかに方向付けられうるように構成されている。さらに、弁(463)は、クッション(418)および/またはパッド(430)のチャンバのうちの2つ以上に流体を同時に方向付けるように構成することができる。ポンプ(458)は圧力計(462)を有するように構成され、圧力計(462)は弁(463)が能動的に流体連通するチャンバ内の圧力を示すように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、様々な流体制御システムについてのその他の構成が当業者には明らかであろう。例えば、流体を方向付けるために、単一のポンプまたは複数のポンプが用いられてもよく、単一の弁または複数の弁が用いられてもよく、また、様々なポート及び連結チューブが用いられてもよいことが理解されよう。
【0071】
本実施例において、ポンプ(458)はまた、クッション(418)のそれぞれのポート(447、453)と連結した2つの他の弁(460、461)を連結する。弁(460、461)は、弁(457)と同様に構成され、したがって、ポンプ(458)も流体リザーバ(459)からクッション(418)の外部チャンバ及び中間チャンバのいずれかまたは両方に追加の流体を提供するように動作することができる。HFD(400)に関して上述したように、流体はクッション(418)の第1のチャンバ及び第3のチャンバ(445、451)に提供される。さらに、この構成では、流体は、一実施例において弁(460、461)を介して当該流体を大気に排出することによって、あるいは弁(460、461)を開放しポンプ(458)を動作させて当該流体を流体リザーバ(459)に移すことによって、クッション(418)から排出または抜き出すことができる。本明細書における教示を考慮すれば、パッド(430)及びクッション(418)内の圧力を操作するよう流体制御システム(444)を構成及び動作させる他の方法が当業者には明らかであろう。
【0072】
図21は、HFD(400)のマルチチャンバクッション(418)で使用可能な別の例示的な流体制御システム(470)を示す。流体制御システム(470)は、外部チャンバ及び中間チャンバが上述したような交互様式において排出および再充填可能な流体制御を提供するように構成されている。繰り返しとなるが上述したように、この交互排出または圧力軽減は、患者頭部の特定の領域への血流を増加させる一方、患者頭部の適切な安定化を維持する機能を提供する。
【0073】
図21に図示の例に示されるように、流体制御システム(470)はポンプ(471)を有し、当該ポンプ(471)は流体を収容する流体リザーバ(472)に連結されている。流体制御システム(470)において、ポンプ(471)はさらに、2つの弁(473、474)と連結する。その1つの弁(473)はクッション(418)の第1のチャンバ(445)のポート(447)と連結し、もう1つの弁(474)はクッション(418)の第3のチャンバ(448)のポート(453)と連結する。ポンプ(471)、流体リザーバ(472)、弁(473、474)、及びポート(447、453)間の連結によってそれらの構成要素が流体連通し、その結果、それらの構成要素間で流体を移送することができる。したがって、流体制御システム(470)は、クッション(418)に流体を方向付け、またはクッション(418)から流体を抜き出し若しくは排出するように構成されている。上述したように、クッション(418)の第1のチャンバ(445)は、チューブ(450)によって第2のチャンバ(448)と連結し、それにより流体変化が同一の様式において同程度に両チャンバ(445、448)に影響を与え、外部チャンバのペアが同一の圧力を有するようになっている。
【0074】
第1のチャンバ(445)の内部空間(446)内で、流体制御システム(470)は圧力センサ(475)を含む。いくつかの他の例では、圧力センサ(475)は代わりに第2のチャンバ(448)の内部空間(449)内に配置することができる。流体制御システム(470)はさらに、第3のチャンバ(451)の内部空間(452)内に位置する圧力センサ(476)を含む。本実施例において、圧力センサ(475、476)は制御ユニット(477)と連結する。図示の実施例では、制御ユニット(477)も第3のチャンバ(451)の内部空間(452)内に位置する。いくつかの他の例では、制御ユニット(477)はクッション(418)内またはクッション(418)の外側の他の位置に配置することができる。また、制御ユニット(477)には弁(473、474)及びポンプ(471)が連結されている。制御ユニット(477)、ポンプ(471)、弁(473、474)、及びセンサ(475、476)間の連結によってそれらの構成要素が電気通信し、その結果、電気信号がそれらの構成要素間で送受信できるようになる。本明細書に記載の信号を送受信する構成要素は、それらの構成要素内に収容されているバッテリによって電力供給される。当然、他の例では、構成要素内のバッテリの代わりにまたは構成要素内のバッテリに加えて、別個の電源が用いられてもよい。本明細書における教示を考慮すれば、本明細書に記載の構成要素に電力を供給する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0075】
図21について上述した構成では、動作中、流体制御システム(470)は、制御ユニット(477)が圧力センサ(475、476)からの信号を用いて第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバ(445、448、451)内の流体体積を変化させるように動作可能となるよう構成することができる。例えば、患者の頭部がHFD(400)により安定化されたいくらかの時間の経過後、HFD(400)に接触した特定の組織領域に血流を回復させて、上述したような組織外傷または損傷のリスクを低下させるよう、患者の頭部に対する圧力を選択的に軽減することが望ましいことがある。流体制御システム(470)では、制御ユニット(477)は、命令セットを実行して、それにより、前に流体が排出または抜き出された各チャンバへ再び流体を配送することによって圧力を増大させる前に、組織への血流が増加する時間ができるように流体を排出または抜き出すことによって圧力を軽減させるような交互の様式で、クッション(418)の外部チャンバのペア及び中間チャンバが操作されるようプログラムすることができる。
【0076】
単なる例であって限定するものではないが、流体制御システム(470)を用いる圧力軽減の1つの交互シーケンスは、制御ユニット(477)において、圧力センサ(475)が既定値に達するまで流体が第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)から排出または抜き出される第1の圧力軽減動作またはプロセスを開始することによって実施され得る。既定値は、圧力センサ(475)の読取り値の減少率であってもよく、あるいはそれは患者の安定性に影響を与えることなく組織領域への血流を増加させるように決定されうる選択された圧力値であってもよい。圧力センサ(475)が既定値に達すると、既定の待機時間が確保され、この場合、外部チャンバと接触している組織領域への血流の回復または増加のための時間が提供される。既定の待機時間の経過後、制御ユニット(477)は、センサ(475)が圧力についての前記既定値に達するまで、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(445、448)に流体を方向付けて、流体を追加する信号をポンプ(471)及び弁(473)に送信する。この既定値は、圧力軽減サイクルが始まる前のクッション(418)の外部チャンバにおける圧力と同一であってよく、または異なる圧力値であってもよい。
【0077】
外部チャンバが患者頭部に十分な安定力を提供するよう再充填され十分な圧力を有する場合、次に、制御ユニット(477)は、圧力センサ(476)が既定値に到達するまで流体を第3のチャンバ(451)から排出または抜き出す第2の圧力軽減動作またはプロセスを開始する。既定値は、圧力センサ(476)の読取り値の減少率であってもよく、またはそれは、患者の安定性に影響を与えることなく組織領域への血流を増加させるように決定されうる選択された圧力値であってもよい。圧力センサ(476)が既定値に到達すると、既定の待機時間が確保され、この場合、中間チャンバと接触している組織領域への血流の回復または増加のための時間が提供される。その既定の待機時間の経過後、制御ユニット(477)は、センサ(476)が圧力についての既定値に到達するまで、第3のチャンバ(451)に流体を方向付け流体を追加する信号をポンプ(471)及び弁(474)に送信する。この既定値は、圧力軽減サイクルが始まる前のクッション(418)の中間チャンバにおける圧力と同一であってもよく、または異なる圧力値であってもよい。この時点から、交互サイクルが完了すると、後続の交互サイクルがその直後またはいくらかの時間の経過後に続く。
【0078】
本明細書における教示を考慮すれば、流体制御システム(470)を構成及び動作させる他の方法が当業者には明らかであろう。例えば、いくつかの例において、センサ(475、476)、弁(473、474)、ポンプ(471)、及び/または制御ユニット(477)は、クッション(418)内の圧力及び流体データを視覚的に表示できる出力ディスプレイと連結されてもよい。他の例では、このデータは、ディスプレイを有する機器に無線で送信されてもよく、例えば、流体制御システム(470)は、コンピュータまたはタブレットにインストールされたアプリケーションを介して動作可能であってもよい。またさらに、他の例では、制御ユニット(477)はクッション(418)の外側に位置してもよく、さらに、制御ユニット(477)は、クッション(418)の両チャンバおよびパッド(430)の1若しくはそれ以上からの流体配送及び抜き出しを制御できるように、同様のセンサ及び弁を用いてパッド(430)と連結されていてもよい。またさらに、いくつかの例において、センサ(475、476)の一方または両方が効果的にポンプ(471)の一部となり、またはポンプ(471)内にあるように、ポンプ(471)は圧力の統合測定部を含む。
【0079】
VI.弧部材及び湾曲部材を有する例示的な頭部固定機器
いくつかの例示的なHFDに関して上述したように、特定の実施例では、連結される弧部材及び頭蓋クランプは、患者の頭部を支持するHFDのクッションに向かってまたはクッションから離れるよう或る程度まで調整可能である。
図22は別の例示的なHFD(500)を表し、このHFD(500)には、この種類の調整機能を含むが、以下でさらに説明するように異なる弧部材(540)及び湾曲部材(502)が組み込まれている。
【0080】
図22~
図24を参照すると、HFD(500)は、上述したHFD(300)に類似するが、HFD(500)は上述した弧部材(140)の代わりに弧部材(540)を組み込み、また、HFD(500)は湾曲部材(502)を含む。HFD(500)は上述したような頭蓋クランプ(170)及び操作部(190)を有する。HFD(500)はまた、HFD(300)に関して上述したような中央頭部支持部(310)及び旋回式クッション(318)を有する。クッション(318)は、クッション(418、118)などの他のクッションと置き換えられてもよいことに留意すべきである。本明細書における教示を考慮すれば、クッション(318)の代わりにクッション(118、418)を組み込む方法が当業者には明らかであろう。HFD(500)はさらに、患者の頭部を安定化するためにピンが用いられているHFD(300)と同様の安定化アセンブリ(186)を含む。HFD(500)は、HFD(400)に関して上述したパッド(430)が他の例で示したピンに取って代わるように修正されてもよいことに留意すべきである。本明細書における教示を考慮すれば、ピンの代わりに安定化アセンブリ(186)に対してパッド(430)を組み込む方法が当業者には明らかであろう。述べたように、以下で説明するものを除き、HFD(500)の機構は、HFD(300)に関して上述した機構と同じである。したがって、簡潔性のために、上述したHFD(300)の機構は上記及び以下で説明する差異を除き、HFD(500)に等しく適用される。
【0081】
HFD(500)では、中央頭部支持部(310)及び弧部材(540)は、中央頭部支持部(310)と弧部材(540)との間の間隔を調整するように構成されている。上述したような弧部材(140)でなすのと同様の様式で弧部材(540)が頭蓋クランプ(170)と連結するため、中央頭部支持部(310)と弧部材(540)との間の間隔調整も中央頭部支持部(310)と頭蓋クランプ(170)との間の間隔を調整する。弧部材(540)はコネクタ(544)を有する。コネクタ(544)は
図22~
図24の図示の例に示されるような湾曲部材(502)と調整可能に連結する。湾曲部材(502)は細長部分(503)と梁部分(504)とを有する。図示されるように、コネクタ(544)内にはスロット(545)がある。スロット(545)は湾曲部材(502)の細長部分(503)を受ける。また示されるように、湾曲部材(502)はさらに、中央頭部支持部(310)の本体(312)と連結する。図示されるように、本体(312)内にはスロット(324)がある。スロット(324)は湾曲部材(502)の梁部分(504)を受ける。この構成により、湾曲部材(502)の細長部分(503)は弧長さ及び湾曲の半径を定義する。湾曲の半径は、クッション(318)上に位置付けられるときの患者頭部の中心ポイントから細長部分(503)の断面の中間におけるポイントまでの距離を表す。単なる例であって限定するものではないが、いくつかの実施例では、湾曲部材(502)は、約80~約180ミリメートルの弧長さを有することができ、約120~約200ミリメートルの湾曲の半径を定義することができる。例えば、一実施例では、湾曲部材(502)は、約123ミリメートルの弧長さを有する約162ミリメートルの湾曲の半径を定義する。当然、それらの特定の寸法は、全ての例において必要とされるわけではなく、本明細書における教示を考慮すれば他の好適な寸法が当業者には明らかであろう。
【0082】
本実施例において、湾曲部材(502)の細長部分(503)の外形はスロット(545)に対して相補的な形状を有する。さらに、梁部分(504)の外形はスロット(324)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、細長部分(503)及びスロット(545)は断面において共に蟻継ぎ境界面を形成し、梁部分(504)及びスロット(324)は断面において共に蟻継ぎ境界面を形成する。このように、弧部材(540)は、湾曲部材(502)の細長部分(503)に沿ってそのスロット(545)と共にコネクタ(544)を移動させることによって、中央頭部支持部(310)に対して調整可能である。また、弧部材(540)は、中央頭部支持部(310)のスロット(324)に沿って湾曲部材(502)の梁部分(504)を移動させることによって、中央頭部支持部(310)に対して調整可能である。よって、この構成は、複数の方法を、本実施例では弧部材(540)、その連結された頭蓋クランプ(170)、及び中央頭部支持部(310)の間の間隔を調整する2つの方法を提供する。
【0083】
本実施例において、湾曲部材(502)の細長部分(503)に沿って弧部材(540)のコネクタ(544)のスロット(545)を移動させることは、弧または湾曲経路に沿って起こる。このように、弧部材(540)は湾曲部材(502)に対して回転自在であり、回転はコネクタ(544)のスロット(545)及び湾曲部材(502)の細長部分(503)の境界面に沿って起こる。本実施例において、スロット(545)は湾曲の半径を有し、湾曲部材(502)の細長部分(503)は湾曲の合致した半径を定義する。
【0084】
湾曲部材(502)は、本実施例において、弧部材(540)の湾曲細長部材(542)に垂直に方位付けられる。すなわち、弧部材(540)の湾曲細長部材(542)によって定義された平面は湾曲部材(502)の細長部分(503)の長手方向弧によって定義された平面に垂直である。この構成では、患者の頭部がHFD(500)のクッション(318)によって支持されることにより、弧部材(540)は患者の長手方向軸の方向に沿って患者の頭部周りで回転自在である。この調整は、弧部材(540)の湾曲細長部材(542)に沿って頭蓋クランプ(170)を調整できることに関する上述の調整に加え、患者を確実に安定化するための別の調整を補足し提供する。したがって、この構成により、頭蓋クランプ(170)が弧部材(540)と連結されることで、頭蓋クランプ(170)は、患者の頭部を通って延在する患者の長手方向軸を中心に、および患者の頭部を通って延在する患者の長手方向軸に沿っての両方において、患者頭部の周りで回転自在に調整することができる。この範囲の調整は、患者頭部への安定化アセンブリ(186)の適切な配置または位置付けを促進することを支援する。
【0085】
上述したように、弧部材(540)はまた、HFD(500)の中央頭部支持部(310)に対して並進移動することができる。この並進移動は梁部分(504)及びスロット(324)の境界面に沿って起こる。このように、弧部材(540)が中央頭部支持部(310)に対して調整されるとき、湾曲部材(502)の梁部分(504)はスロット(324)内で線形式に並進移動する。上述した他の調整と組み合わせたこの調整は、患者の頭部上で安定化アセンブリ(186)及び頭蓋クランプ(170)を配置または位置付けすることに関する更なる程度の自由度を提供する。本明細書における教示を考慮すれば、HFD(500)と共に、確実な患者の安定化のための安定化アセンブリ(186)の適切な配置を提供するための弧部材(540)及び湾曲部材(502)を構成する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0086】
上述したような湾曲部材(502)の細長部分(503)に沿った弧部材(540)の回転式調整機能を制御するために、弧部材(540)のコネクタ(544)は、当該コネクタ(544)内でロック機構を制御する操作部(548)を有するものであり、当該ロック機構は湾曲部材(502)の細長部分(503)に沿ってコネクタ(544)の相対位置を選択的に固定する。操作部(548)及びロック機構は、HFD(100)に関して上述したような操作部(148)及びロック機構(149)と類似する。同様に、中央頭部支持部(310)のスロット(324)に沿った湾曲部材(502)の梁部分(504)の並進移動式調整機能を制御するために、中央頭部支持部(310)はHFD(100)に関して上述したような操作部(148)及びロック機構(149)を有する。HFD(500)により、操作部(148)及びロック機構(149)は、HFD(100)に関して上述したのと同様の様式で構成され動作可能である。本明細書における教示を考慮すれば、湾曲部材(502)に対して弧部材(540)の調整機能を制御し、また中央頭部支持部(310)に対して湾曲部材(502)の調整機能を制御するようにHFD(500)を修正し得る他の方法が当業者には明らかであろう。
【0087】
VII.カセット機構を有する例示的な頭部固定機器
図26~
図30は、医療処置中に患者の頭部を支持および安定化するのに使用できるように構成された例示的なHFD(1000)を示す。HFD(1000)は、中央頭部支持部(1100)と、位置決めアセンブリ(1200)によって中央頭部支持部(1100)に連結可能な頭蓋クランプ(1001)とを有する。
【0088】
中央頭部支持部(1100)は、本体(1102)と、本体(1102)上の取付機構(1104)とを有し、取付機構(1104)は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台またはその他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形式にある。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(1104)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(1100)の取付機構(1104)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1100)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0089】
中央頭部支持部(1100)はまた、本体(1102)と連結しクッション(1108)を保持または維持する基部(1106)を有する。クッション(1108)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法で基部(1106)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(1108)は、当該クッション(1108)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(1106)と選択的に連結されている。クッション(1108)は、HFD(1000)が患者を支持および安定化するために使用されるときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(1106)は、ネジまたはボルトなどの留め具を用いて基部(1106)と連結されたディスク(1110)によって本体(1102)と連結する。ディスク(1110)は本体(1102)において定義されたスロット(1112)内で受けられる。本実施例において、ディスク(1110)はスロット(1112)内で回転自在であり、取り付けられた基部(1106)およびクッション(1108)が回転自在に調整できるようなっている。本実施例において、ディスク(1110)およびスロット(1112)の機構および構造は上述した機構と同一または類似である。
【0090】
クッション(1108)は形状適合材料を収容するように構成されており、当該形状適合材料は、液体、ガス、またはゲルなどの流体とすることができる。一例では、形状適合材料は、ゲル、発泡体、または微粒材料のいずれかである。本明細書の教示を考慮すれば、クッション(1108)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0091】
使用中、中央頭部支持部(1110)は、患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(1100)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されているときに患者の頭部に対して下方に延びる平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(1100)は、中央頭部支持部(1100)によって定義された平面が床に平行し、または中央頭部支持部(1100)上で重力の方向に直交するように位置付けられる。さらに、中央頭部支持部(1100)は、クッション(1108)の中心を通って延在し、中央頭部支持部(1100)の重力の方向と平行な中心軸(A1)を定義する。
【0092】
HFD(1000)の位置決めアセンブリ(1200)は中央頭部支持部(1100)と連結する。本実施例において、位置決めアセンブリ(1200)は、カセットキャリア(1202)と、コネクタ(1204)と、操作部(1206)と、ロッキングインサート(1208)とを有する。中央頭部支持部(1100)との連結において、コネクタ(1204)は梁部分(1210)を含み、当該梁部分(1210)は、中央頭部支持部(1100)のスロット(1114)によってスライド式に受けられ、ディスク(1110)を受けるスロット(1112)の下に設置される。このように、中央頭部支持部(1100)は、中央頭部支持部(1100)と位置決めアセンブリ(1200)との間の間隔を調整するように構成されている。位置決めアセンブリ(1200)は、以下でさらに説明するように頭蓋クランプ(1001)にさらに連結されるので、中央頭部支持部(1100)は、それ自体と頭蓋クランプ(1001)との間の間隔を調整するように構成されていると考えることができる。梁部分(1210)の外形はスロット(1114)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(1210)とスロット(1114)は共に蟻継ぎ状境界面を形成する。このように、コネクタ(1204)はスロット(1114)に沿って並進移動可能であり、スロット(1114)は位置決めアセンブリ(1200)と中央頭部支持部(1100)との間の間隔を調整する。
【0093】
スロット(1114)内のコネクタ(1204)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(1100)はロック機構(1118)を含む操作部(1116)を有するものであり、当該ロック機構(1118)は、梁部分(1210)に接触して圧縮係合によりスロット(1114)内で本体(1102)に対してその位置を固定し、あるいは、少なくともコネクタ(1204)の並進移動を十分に可能にするようロック機構(1118)が梁部分(1210)との接触から外れることによって本体(1102)に対するコネクタ(1204)のスライド式調整を可能にする。ロック機構(1118)と梁部分(1210)との接触を制御するために、操作部(1116)は回転するレバー(1120)を含む。レバー(1120)の回転によりロック機構(1118)はレバー(1120)が回転する方向に応じて、梁部分(1210)に向かって、または梁部分(1210)から離れるように移動する。操作部(1116)は中央頭部支持部(1100)の本体(1102)のネジ穴(1124)を通って延在するネジ棒(1122)を含む。レバー(1120)はネジ棒(1122)と係合するネジ穴(1126)を含む。ネジ棒(1122)はロック機構(1118)と連結する。レバー(1120)を回転させるとネジ棒(1122)が回転し、ネジ棒(1122)が本体(1102)のネジ穴(1124)内で、梁部分(1210)に向かって、または梁部分(1210)から離れる方向に移動する。ネジ棒(1122)を梁部分(1210)に向けて並進移動させると、ロック機構(1118)がコネクタ(1204)の梁部分(1210)と接触し、それにより中央頭部支持部(1100)に対してコネクタ(1204)の位置が固定される。同様に、ネジ棒(1122)を梁部分(1210)から離れるように並進移動させると、ロック機構(1118)が梁部分(1210)から離れるように移動してコネクタ(1204)の調整が可能になる。上記構成において、コネクタ(1204)の上記調整可能な動きは、中央頭部支持部(1100)によって定義された平面に沿い、または平行である。本明細書の教示を考慮すれば、位置決めアセンブリ(1200)を中央頭部支持部(1100)に連結する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0094】
位置決めアセンブリ(1200)のコネクタ(1204)はカセットキャリア(1202)とさらに連結する。コネクタ(1204)はカセットキャリア(1202)のフランジ(1214)を受けるように構成されたスロット(1212)を含む。この実施例では、フランジ(1214)の外形はスロット(1212)の外形に対して相補的な形状を有する。例えば、フランジ(1214)とスロット(1212)は共に蟻継ぎ状境界面を形成する。このように、カセットキャリア(1202)は、コネクタ(1204)のスロット(1212)に沿って並進移動可能であり、それにより、以下で説明するように、カセットキャリア(1202)に連結する頭蓋クランプ(1001)と中央頭部支持部(1100)との間の間隔を調整する。
【0095】
カセットキャリア(1202)とコネクタ(1204)との間の連結は、上述した並進調整に加えて、さらに回転調整するものとして構成されている。例えば、カセットキャリア(1202)のフランジ(1214)はコネクタ(1204)のスロット(1212)内で回転自在である。この回転運動により、カセットキャリア(1202)および後述するようにそれに取り付けられた頭蓋クランプ(1001)を、コネクタ(1204)および上述したようにそれに取り付けられた中央頭部支持部(1100)に対して回転調整することができる。したがって、この実施例において、位置決めアセンブリ(1200)は中央頭部支持部(1100)に対して回転的および並進的に頭蓋クランプ(1001)を調整できるように構成されている。これにより、頭蓋クランプ(1001)を、中央頭部支持部(1100)およびその上に置く患者頭部に対して上下させるができる。また、これにより、中央頭部支持部(1100)に置かれている患者頭部を中心に頭蓋クランプ(1001)を回転させることができる。さらに、この二重調整は、カセットキャリア(1202)とコネクタ(1204)間において、位置決めアセンブリ(1200)内で単一の連結境界において提供される。頭蓋クランプ(1001)と連結されたカセットキャリア(1202)の中央頭部支持部(1100)に対する回転の調整可能範囲について、本例では、頭蓋クランプ(1001)は中央頭部支持部(1100)によって定義される中心軸(A1)から最大約45度オフセットするまでいずれかの方向に回転することができる。本明細書の教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1100)に対して頭蓋クランプ(1001)をより多くおよびより少ない量または程度に調整する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0096】
位置決めアセンブリ(1200)は操作部(1206)をさらに含む。操作部(1206)は、回転位置および並進位置の両方でカセットキャリア(1202)の位置をコネクタ(1204)とともに選択的に固定するように構成されている。説明し図示した上記構成では、操作部(1206)は中央頭部支持部(1100)に対して回転位置および並進位置の両方で頭蓋クランプ(1001)の位置を選択的に固定するように構成されている。さらに、単一の操作部(1206)はこれらの調整の両方を実質的に同時に選択的に固定するように構成されている。
【0097】
図示の例では、操作部(1206)は、ノブ(1218)に連結されたネジ棒(1216)を有する。カセットキャリア(1202)は、操作部(1206)のネジ棒(1216)を受けるように構成されたネジ穴(1220)を有する。ネジ穴(1220)は、カセットキャリア(1202)にわたりその一方の側から他方の側まで延在する。この実施例では、ネジ穴(1220)はフランジ(1214)を通って延在し、ネジ棒(1216)の端部はスロット(1212)内でコネクタ(1204)に接触する。
【0098】
操作部(1206)のノブ(1218)を回転させると、ネジ棒(1216)とネジ穴(1220)との間のネジ込み係合に基づきノブ(1218)が回転する方向に応じてカセットキャリア(1202)がコネクタ(1204)に向かって、またはコネクタ(1204)から離れるように移動する。カセットキャリア(1202)をコネクタ(1204)に向かって並進移動させることにより、フランジ(1214)はコネクタ(1204)に向かって移動し、フランジ(1214)とコネクタ(1204)のスロット(1212)との境界面に十分な間隙または空間ができ、上述したようにカセットキャリア(1202)が回転的および並進的に調整できるようになっている。操作部(1206)を用いてカセットキャリア(1202)をコネクタ(1204)から離れるように並進移動させることにより、フランジ(1214)が、コネクタ(1204)から離れ、フランジ(1214)とスロット(1212)間において境界面を形成するスロット(1222)の内壁(1222)に接触するようになっており、それにより、フランジ(1214)がスロット(1212)の内壁(1222)を拘束してしてカセットキャリア(1202)がコネクタ(1204)に対して固定される。これにより、回転位置と並進位置の両方が固定される。
【0099】
この実施例では、操作部(1206)の回転は、位置決めアセンブリ(1200)を調整可能状態から固定状態に移行させるのに最小限の回転運動のみを必要とする。例えば、単なる例であって限定するものではないが、一例において位置決めアセンブリ(1200)は操作部(1206)のノブ(1218)のわずか4分の1回転で調整可能状態から固定状態に移行することができる。当然、他の例では、位置決めアセンブリ(1200)は、操作部(1206)のより多くの又はより少ないない回転で位置決めアセンブリ(1200)を調整可能状態から固定状態に移行できるように構成されていてもよい。
【0100】
図26に示すように、頭蓋クランプ(1001)は位置決めアセンブリ(1200)と連結する。より具体的には、頭蓋クランプ(1001)は、当該頭蓋クランプ(1001)が位置決め部材(1200)に対して選択的に移動可能または調整可能であるように、位置決めアセンブリ(1200)と連結する。図示の例では、カセットキャリア(1202)は、頭蓋クランプ(1001)のカセット(1002)を受けるように構成された空間(1225)を定義する側壁(1224)のペアを有する。カセットキャリア(1202)は、各側壁(1224)上に、カセット(1002)が2つの突起部(1226)によって下から保持されるようなサイズの内向き突起部(1226)を含む。この構成では、カセット(1002)はカセットキャリア(1202)に対して並進移動可能であり、当該並進移動はカセット(1002)によって定義される長手方向軸に沿って行われる。このように位置決めアセンブリ(1200)に対して頭蓋クランプ(1001)を移動または調整することにより、位置決めアセンブリ(1200)が中央頭部支持部(1100)に連結するため、中央頭部支持部(1100)に対して頭蓋クランプ(1001)の位置を調整することができる。さらに、
図26に示すように、例えば、それは、頭蓋クランプ(1001)を中心軸(A1)から少なくとも最大約45度のオフセットにより回転調整することを可能にし、また、カセットキャリア(1202)に対するカセット(1002)の位置を調整することにより頭蓋クランプ(1001)を中央頭部支持部(1100)のクッション(1108)中心に保つことを可能にする。頭蓋クランプ(1001)をクッション(1108)の中心に保つことで、クッション(1108)に載っている患者の頭部がより着実に安定化しうる。
【0101】
さらに、患者の頭部が中央頭部支持部(1100)によって支持されている場合、少なくともいくつかの例では、コネクタ(1204)に対するカセットキャリア(1202)の回転に基づく頭蓋クランプ(1001)の回転運動、およびカセットキャリア(1202)に対するカセット(1002)の並進に基づく並進運動は、患者頭部を中心に同心円状または実質的に同心円状に頭蓋クランプ(1001)の位置を変更する。同様に、患者は患者を左半身と右半身に分割する矢状面を定義し、矢状面に沿って長手方向に延びる軸は患者によって定義される長手方向軸と見なされる。概して、この長手方向軸は患者の頭部から患者の足まで延在する。少なくともいくつかの例において、上記頭蓋クランプ(1001)の動きは、患者によって定義されたこの長手方向軸を中心に頭蓋クランプ(1001)の位置を変える。上述したように、いつくかの例では、頭蓋クランプ(1001)は、中央頭部支持部(1100)および患者の長手方向軸に対して、中央頭部支持部(1100)によって定義される中心軸(A1)から最大約45度いずれかの方向に調整可能である。このように、HFD(1000)は、中央頭部支持部(1100)によって支持される患者頭部のいずれかの側で頭蓋クランプ(1001)を最大約45度斜め横向きに位置付けることを可能にする。本明細書の教示を考慮すれば、約45度よりも大きい又はより小さい調整を達成するためのHFD(1000)への修正が当業者には明らかであろう。
【0102】
ここで、頭蓋クランプ(1001)の更なる詳細に目を向けると、
図26に示されるように、頭蓋クランプ(1001)は、カセット(1002)と、伸長バー(1004)のペアとを有する。カセット(1002)は伸長バー(1004)を受けるように構成された開口部(1006)のペアを有する。伸長バー(1004)は、カセット(1002)に対して、および互いに独立して移動可能である。さらに、カセット(1002)は、それぞれの伸長バー(1004)に係合して伸長バー(1004)を適格な位置に固定し、または伸長バー(1004)の調整を可能にするように構成されたロック部(1008)のペアを有する。このように、各伸長バー(1004)は歯型ラック(1010)を有し、また、各ロック部(1008)はカセット(1002)内に存在する相補的形状の歯型部分を有し、それは歯型ラック(1010)をそれに付随するものと係合または係脱するよう移動可能である。例えば、ロック部(1008)は最初、歯型部分が歯型ラック(1010)と係合し、それによりカセット(1002)に対して伸長バー(1004)の位置をロックまたは固定するように、バネまたは他の構造によって付勢されている。各ロック部(1008)は、ロック部(1008)の歯型部分を歯型ラック(1010)から係脱させるようカセット(1002)から下方向にまたは離れるように引き出されてもよく、それにより、カセット(1002)及び他方の伸長バー(1004)に対する伸長バー(1004)の横方向の移動が可能になる。このように、カセット(1002)はロック部材と見なすことができる。
【0103】
本実施例において、伸長バー(1004)は、一方がカセット(1002)内のその位置に関して他方に取って代わることができるように相互に交換可能である。各伸長バー(1004)はさらに、安定化アセンブリ(1016)を受けるように構成された穴(1014)を有する上端部分(1012)を有する。安定化アセンブリ(1016)は、患者の頭部と接触し、患者の頭部に側方支持及び安定化を提供するように構成されている。本実施例において、安定化アセンブリ(1016)は、単一のピンまたは二重ピンアセンブリの形式をとってもよい。さらに、安定化アセンブリ(1016)は安定化アセンブリ(1016)によって患者の頭部に加えられた力または圧力を調整するためのトルクネジ(1018)を含んでもよい。他の例では、安定化アセンブリ(1016)は単一のチャンバパッドまたはマルチチャンバパッドの形式をとり得る。本実施例に戻ると、各伸長バー(1004)は、直立部分(1020)と、長手方向軸を定義する直立部分(1020)を伴う基部(1022)とを有する。本実施例において、各々のそれぞれの穴(1014)は、各々のそれぞれの伸長バー(1004)の直立部分(1020)によって定義される長手方向軸からオフセットされる。さらに、伸長バー(1004)がカセット(1002)内において位置付けられるとき、穴(1014)は反対方向にオフセットされ、各穴(1014)を通って延在する共通軸(A2)と位置合わせされ当該共通軸(A2)を共有するようになっている。さらに、各伸長バー(1004)は、伸長バー(1004)の少なくとも一部に沿って位置付け可能な1若しくはそれ以上の付属物を受けるように構成されたレールを定義する。
【0104】
上述したように、頭蓋クランプ(1001)のカセット(1002)は、位置決めアセンブリ(1200)のカセットキャリア(1202)に対して選択的に並進移動するように構成されている。
図26および
図32を参照すると、本実施例において、カセット(1002)はさらに歯型ラック(1024)を有する。カセットキャリア(1202)はさらにロッキングインサート(1208)を有する。ロッキングインサート(1208)は、カセット(1002)の歯型ラック(1024)を補完し、選択的に係合するように構成された歯型ラックを有する。ロッキングインサート(1208)が係脱位置にあるとき、カセット(1002)はカセットキャリア(1202)に対して並進移動することができる。上述したように、この並進運動は中央頭部支持部(1100)に対する頭蓋クランプ(1001)の調整を可能にする。ロッキングインサート(1208)が係合位置にあるとき、この場合、その歯型ラックがカセット(1002)の歯型ラック(1024)と係合するものであり、カセット(1002)はカセットキャリア(1202)に対して位置決定または固定される。固定されると、頭蓋クランプ(1001)は、中央頭部支持部(1100)に対して固定され、位置決めアセンブリ(1200)に対するカセット(1002)の長手方向軸に沿った並進移動ができないようになる。
【0105】
図29および
図30を参照すると、ロッキングインサート(1208)は、操作部(1206)のカラー(1228)との締り嵌めによってカセットキャリア(1202)と所定の位置に保持される。この例では、上述したように位置アセンブリ(1200)を調整できるよう操作部(1206)を緩めると、カラー(1228)とロッキングインサート(1208)との間の締り嵌めがさらに緩む。したがって、この状態では、ロッキングインサート(1208)は、カセットキャリア(1202)の側壁(1224)によって定義される空間(1225)から離れるように外向きにスライドすることができる。ロッキングインサート(1208)のこの動きにより、ロッキングインサート(1208)の歯型ラックがカセット(1002)の歯型ラック(1024)から係脱し、それにより上述したようにカセット(1002)をカセットキャリア(1202)に対して調整できるようになっている。上述したように位置アセンブリ(1200)が調整できないよう操作部(1206)が締められると、操作部(1206)のカラー(1228)がロッキングインサート(1208)を押し、ロッキングインサート(1208)がカセットキャリア(1202)内に完全に挿入または装着されるようになっている。この状態では、ロッキングインサート(1208)の歯型ラックはカセット(1002)の歯型ラック(1024)と係合し、カセット(1002)が上述したようにカセットキャリア(1202)に対して位置決めまたは固定される。
【0106】
上記構成は、コネクタ(1204)のスロット(1212)内でのカセットキャリア(1202)のフランジ(1214)の回転および並進移動による、およびカセットキャリア(1202)に対するカセット(1002)の並進移動による、中央頭部支持部(1100)に対する頭蓋クランプ(1001)の調整機能を説明および示す。さらに、この例では、単一の操作部(1206)の操作によりHFD(1000)が操作モードに応じて調整可能状態または固定状態になる。このように、操作部(1206)は、3つの異なる調整に関して調整のためにHFD(1000)を実質的に同時にロックまたはロック解除するように動作可能である。他の例では、このような実質的に同時のロックおよびロック解除調整機構は必要なく、これは順次起こってもよい。また、いくつかの他の例では、操作部(1206)がカセットキャリア(1202)から十分に後退して、カラー(1228)およびカセットキャリア(1202)間にロッキングインサート(1208)を配置し挿入し又はカセットキャリア(1202)からロッキングインサート(1208)を取り外すための十分な空間が存在するときに、ロッキングインサート(1208)を取り外し、またはカセットキャリア(1202)内に挿入することができる。本明細書の教示を考慮すれば、操作部(1206)およびその動作性を変更する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0107】
VIII.例示的な圧力制御旋回式クッション
様々な患者の位置決めに対応するための十分な調整機能をHFDに提供するに際し、他の望ましい機構ではHFDのクッションに選択的な旋回調整を組み込みうる。クッションに組み込みうる他の機構は、クッションと患者との間の接触圧力を管理または制御することに関する。
図33はHFD(1000)の中央頭部支持部(1100)の代わりに使用できる中央頭部支持部(1310)を示す。中央頭部支持部(1310)には旋回式クッション機構と接触圧力の制御を補助する機構が組み込まれている。
【0108】
中央頭部支持部(1310)は、位置決めアセンブリ(1200)のコネクタ(1204)の梁部分(1210)を受けるスロット(1324)を有する。中央頭部支持部(1310)は、さらに、本体(1312)と、本体(1312)上の取付機構(1314)とを有し、この場合、取付機構(1314)は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形式である。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(1314)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(1310)の取付機構(1314)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1310)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0109】
中央頭部支持部(1310)はまた、本体(1312)と連結しクッション(1318)を保持または維持する基部(1316)を有する。クッション(1318)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法で基部(1316)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(1318)は、当該クッション(1318)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(1316)と選択的に連結されている。クッション(1318)は、HFD(1000)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(1316)は、本体(1312)から外向き上方向に延在するアーム(1320)のペアによって本体(1312)と連結する。基部(1316)は連結部材(1322)を有し、当該連結部材(1322)は基部(1316)を横切って延在する軸を定義する。連結部材(1322)は穴のペアを有し、各穴は各アーム(1320)のそれぞれの穴と位置合わせされている。連結部材(1322)によって定義された軸は当該軸が旋回軸を定義するように連結部材(1322)の穴に沿って延在し、それにより、その旋回軸を中心に基部(1316)及び連結されたクッション(1318)が旋回可能である。留め具(1325)のペアは、アーム(1320)の穴を通って延在し、連結部材(1322)の穴に係合して基部(1316)と中央頭部支持部(1310)の本体(1312)を旋回可能に連結する。留め具(1325)は、基部(1316)及び連結されたクッション(1318)の位置を固定するよう締め付けられてもよく、逆に、当該留め具(1325)は、基部(1316)及び連結されたクッション(1318)の旋回可能な調整を可能にするよう緩められてもよい。
【0110】
使用中、中央頭部支持部(1310)は患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(1310)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されるときに当該患者の頭部に対して下方に延在する平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(1310)は、中央頭部支持部(1310)によって定義された平面が基部(1316)及び連結されたクッション(1318)の旋回動作に基づいて調整され得るように位置付けられていてよい。したがって、中央頭部支持部(1310)によって定義された平面は、床に平行し、または中央頭部支持部(1310)上で重力の方向に直交することに限定されるものではない。
【0111】
中央頭部支持部(1310)は、中央頭部支持部(1100)および位置決めアセンブリ(1200)に関して上述したのと同様の方法で、中央頭部支持部(1310)と位置決めアセンブリ(1200)との間の間隔を調整するように構成されている。例えば、コネクタ(1204)は中央頭部支持部(1310)の本体(1312)と調整可能に連結する。図示されるように、本体(1312)内にはスロット(1324)がある。スロット(1324)はコネクタ(1204)の梁部分(1210)を受ける。梁部分(1210)の外形はスロット(1324)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(1210)とスロット(1324)は共に蟻継ぎ状境界面を形成する。このように、コネクタ(1204)はスロット(1324)に沿って並進移動可能であり、それは位置決めアセンブリ(1200)と中央頭部支持部(1310)間の間隔を調整する。スロット(1324)内でのコネクタ(1204)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(1310)は操作部(1116)とロック機構(1118)とを有し、これらは、上記と同じ方法で構成され、また操作可能である。この構成では、コネクタ(1204)は、中央頭部支持部(1310)に対する位置決めアセンブリ(1200)の位置を変更するよう、中央頭部支持部(1310)によって定義される平面に沿ってまたは平行に調整可能である。
【0112】
クッション(1318)は第1のチャンバ(2319)を有し、当該第1のチャンバ(2319)は流体が充填されるように構成された内部空間(1317)を有する。流体は気体または液体であってよい。第1のチャンバ(2319)は、内部空間(1317)へのアクセスをもたらすように構成されたポート(1301)を含む。流体は、第1のチャンバ(2319)内で内部空間(1317)に方向付けられ、あるいは第1のチャンバ(2319)の内部空間(1317)から抜き出され又は排出され得る。第1のチャンバ(2319)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(1317)から解放または排出することができる。
【0113】
クッション(1318)はさらに、第2のチャンバ(1321)を有し、第2のチャンバ(1321)は形状適合材料が充填されるように構成されている。本実施例において、第1のチャンバ(2319)は第2のチャンバ(1321)に対して下方に位置付けられる。さらに、第2のチャンバ(1321)は頭部の患者と接触するように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(2319、1321)の相対位置は、その他の例では切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。一例では、形状適合材料は、ゲル、発泡体、または微粒材料のいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、クッション(1318)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0114】
上述したクッション(1318)の構成では、クッション(1318)は、頭部が中央頭部支持部(1310)によって支持されるときに患者頭部との接触圧力の均一な分布を提供するように構成されている。また、システムが頭蓋ピンと共に使用するよう構成されている場合、接触圧力はポート(1301)を介して流体を第1のチャンバ(2319)に充填することにより増大させることができる。逆に、上述したように接触圧力は第1のチャンバ(2319)から流体を排出することにより減少させることができる。接触圧力を低下させることにより、血流がクッション(1318)と接触している患者頭部の領域に回復し得る。いくつかの例において、全ての例で必要とされるものではないが、第1のチャンバ(2319)からの流体の相当な排出により、クッション(1318)が収縮または縮小し、クッション(1318)が患者の頭部と接触しないような高さになり、あるいは患者頭部へ十分な圧力が加わらないようになる。上記と同様に、クッション(1318)と患者との間の接触圧力が不足する程度まで接触圧力を低下させることにより、クッション(1318)で安定化されていた患者頭部のこの領域に血流が回復し得る。接触圧力を低下させ血流を回復させることにより組織外傷または損傷を回避することができ、またはそのリスクが低減する。さらに、組織の或る領域に血流を回復させる際に患者の安定化を犠牲にしないように、クッション(1318)と患者頭部との間の接触圧力を低下させるときに安定化アセンブリ(1016)によって安定化を維持することができる。いくつかの例において、クッション(1318)と接触している組織領域に血流を回復させる十分な時間が経過したら、流体を第1のチャンバ(319)に充填することにより再び接触圧力を増大させ、強化された若しくはより高い程度の安定化を提供または復元することができる。
【0115】
IX.側方パッドとマルチチャンバクッションを有する例示的な非侵襲式構成
いくつかの例において、安定化アセンブリがピンの代わりにパッドの形式を有する非侵襲式のHFD構成が望ましいことがあり、その場合、パッドが側方安定化を提供する。さらに、パッドは、特定の組織領域への血流の促進を助け組織損傷または外傷のリスクを回避または低減するよう、特定の接触圧力制御機構を伴うように構成することができる。
図34は、HFD(1000)による非侵襲式安定化を提供するための安定化アセンブリ(1016)用のパッド(1430)を示す。
図34はまた、HFD(1000)の中央頭部支持部(1100)の代わりに用いることができる中央頭部支持部(1410)も示す。中央頭部支持部(1410)には、上述した中央頭部支持部(1310)と同様に、旋回式クッション機構と接触圧力の制御を補助する機構が組み込まれている。中央頭部支持部(1410)は、クッション(1418)がクッション(1318)に取って代わる点で中央頭部支持部(1310)と異なる。上述したクッション(1318)と同様に、パッド(1430)には、当該パッド(1430)が患者頭部に接触する安定化接触領域の圧力を制御するのを補助する機構が含まれている。
【0116】
中央頭部支持部(1410)は、位置決めアセンブリ(1200)のコネクタ(1204)の梁部分(1210)を受けるスロット(1424)を有する。中央頭部支持部(1410)はさらに、本体(1412)と、本体(1412)上の取付機構とを有し、この場合、取付機構は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形式である。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(1410)の取付機構は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1410)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0117】
中央頭部支持部(1410)はまた、本体(1412)と連結しクッション(1418)を保持または維持する基部(1416)を有する。クッション(1418)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法で基部(1416)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(1418)は、当該クッション(1418)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(1416)と選択的に連結されている。クッション(1418)は、HFD(1000)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(1416)は、本体(1412)から外向き上方向に延在するアーム(1420)のペアによって本体(1412)と連結する。基部(1416)は連結部材(1422)を有し、当該連結部材(1422)は基部(1416)を横切って延在する軸を定義する。連結部材(1422)は各側に穴のペアを有し、各穴は各アーム(1420)のそれぞれの穴と位置合わせされている。連結部材(1422)によって定義された軸は当該軸が旋回軸を定義するように連結部材(1422)の穴に沿って延在し、それにより、その旋回軸を中心に基部(1416)及び連結されたクッション(1418)が旋回可能である。留め具(1425)のペアは、アーム(1420)の穴を通って延在し、連結部材(1422)の穴に係合して基部(1416)と中央頭部支持部(1410)の本体(1412)を旋回可能に連結する。留め具(1425)は、基部(1416)及び連結されたクッション(1418)の位置を固定するよう締め付けられてもよく、逆に、当該留め具(1425)は、基部(1416)及び連結されたクッション(1418)の旋回可能な調整を可能にするよう緩められてもよい。
【0118】
使用中、中央頭部支持部(1410)は患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。このように、中央頭部支持部(1410)は、患者の頭部が中央頭部支持部によって支持されるときに当該患者の頭部に対して下方に延在する平面を定義する。本実施例において、中央頭部支持部(1410)は、中央頭部支持部(1410)によって定義された平面が基部(1416)及び連結されたクッション(1418)の旋回動作に基づいて調整され得るように位置付けられていてよい。したがって、中央頭部支持部(1410)によって定義された平面は、床に平行し、または中央頭部支持部(1410)上で重力の方向に直交することに限定されるものではない。
【0119】
中央頭部支持部(1410)は、中央頭部支持部(1100)および位置決めアセンブリ(1200)に関して上述したのと同様の方法で、中央頭部支持部(1410)と位置決めアセンブリ(1200)間の間隔を調整するように構成されている。例えば、コネクタ(1204)は中央頭部支持部(1410)の本体(1412)に調整可能に連結する。図示されるように、本体(1412)内にはスロット(1424)がある。スロット(1424)はコネクタ(1204)の梁部分(1210)を受ける。梁部分(1206)の外形はスロット(1424)に対して相補的な形状を有する。本実施例において、梁部分(1206)とスロット(1424)は共に蟻継ぎ状境界面を形成する。このように、コネクタ(1204)はスロット(1424)に沿って並進移動可能であり、それは位置決めアセンブリ(1200)と中央頭部支持部(1410)間の間隔を調整する。スロット(1424)内でのコネクタ(1204)の調整機能を制御するために、中央頭部支持部(1410)は操作部(1116)とロック機構(1118)とを有し、これらは、上記と同じ方法で構成され、また操作可能である。この構成では、コネクタ(1204)は、中央頭部支持部(1410)に対する位置決めアセンブリ(1200)の位置を変更するよう、中央頭部支持部(1410)によって定義される平面に沿ってまたは平行に調整可能である。
【0120】
パッド(1430)は、筐体(1431)と、第1のチャンバ(1432)と、第2のチャンバ(1433)とを有する。穴または切欠き部(1434)が、筐体(1431)、第1チャンバ(1432)、および第2チャンバ(1433)を通って延在する。穴(1434)は、過度な圧縮及び圧力から患者の耳を保護し代わりに患者の頭蓋に対してそのような圧力及び圧縮力を方向付けるように安定化の間に患者の耳を受けるよう構成されるよう位置する。また、筐体(1431)上には環状フランジ(1435)が位置し、環状フランジ(1435)は安定化アセンブリ(1016)の残りと連結するように構成されたスロット(1436)を定義する。本実施例において、安定化アセンブリはカラー(1437)を含み、当該カラー(1437)はスロット(1436)内に適合するフランジ(1438)を有する。この構成では、パッド(1430)は、
図26について上記に示したように穴(1014)によって定義され、当該穴(1014)を通って延在する軸を中心に調整することができる。
【0121】
パッド(1430)の第1のチャンバ(1432)は、流体が充填されるように構成された内部空間(1439)を定義する。前記流体は、液体若しくは気体、またはそれらの組み合わせであってよい。また、第1のチャンバ(1432)と連結し第1のチャンバ(1432)の内部空間(1439)へのアクセスをもたらす開閉可能なポート(1440)もある。このように、流体はポート(1440)によって第1のチャンバ(1432)の内部空間(1439)に配送することができ、あるいは第1のチャンバ(1432)の内部空間(1439)から排出または抜き出すことができる。
【0122】
パッド(1430)が各安定化アセンブリ(1016)で用いられる場合、いくつかの例において、ポート(1440)は、チューブ、ホース、または導管(1441)によって連結される。チューブ(1441)は、弁(1457)に連結されてもよく、さらに、以下でさらに説明するような流体リザーバ(1459)に連結されてもよい。この構成では、複数のパッド(1430)の第1のチャンバ(1432)を連結することにより、第1のチャンバ(1432)内の圧力は同じになり、圧力は、第1のチャンバ(1432)により多くの流体が充填されて圧力が増大し、または第1のチャンバ(1432)から流体が排出されて圧力が減少するように同様の様態で変化する。
【0123】
第1のチャンバ(1432)は、筐体(1431)と第2のチャンバ(1433)との間に位置する。当然、他の例では、本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ(1432)及び第2のチャンバ(1433)の位置が切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。パッド(1430)の第2のチャンバ(1433)は、クッション(1318)に関して上述したような形状適合材料が充填されるように構成されている。本実施例において、第2のチャンバ(1433)は、患者の頭部と隣接し、患者の頭部と接触するよう位置付けられている。一例では、第2のチャンバ(1433)内の形状適合材料は、ゲル、発泡体、微粒材料、またはそのような材料の組み合わせのいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、パッド(1430)の第2のチャンバ(1433)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0124】
上述したパッド(1430)の構成では、パッド(1430)は、頭部がパッド(1430)を有する安定化アセンブリ(1016)によって支持されるときに患者頭部との接触圧力の均一な分布を提供するように構成されている。さらに、接触圧力は、流体制御システム(1444)を表す
図35に示されるようなポート(1440)を介して、またはポート(1440)と連結されたチューブ(1441)を介して流体を第1のチャンバ(1432)に充填することにより増大させることができる。逆に、接触圧力は、上述したような第1のチャンバ(1432)から流体を排出することにより低下させることができる。接触圧力を低下させることにより、血流はパッド(1430)と接触している患者頭部の領域に回復し得る。いくつかの例において、全ての例で必要とされるものではないが、第1のチャンバ(1432)からの流体の相当な排出により、パッド(1430)が患者の頭部に十分な接触圧力を加えないようなサイズに収縮または縮小し得る。上記と同様に、パッド(1430)と患者間の接触が不足する程度まで接触圧力を低下させることにより、パッド(1430)と接触していた患者頭部の領域に血流が回復し得る。接触圧力を低下させ血流を回復させることにより組織外傷または損傷を回避することができ、またはそのリスクが低減する。さらに、パッド(1430)と患者頭部との間の接触圧力を低下させるときに中央頭部支持部(1410)のクッション(1418)によって患者頭部の支持を維持し、組織のある領域に血流を回復させるときに患者の支持を犠牲にしないようにすることができる。いくつかの例において、パッド(1430)と接触している組織領域への血流を回復させる十分な時間が経過すると、流体を第1のチャンバ(1432)に充填することにより再び接触圧力を増大させて強化された若しくはより高い程度の安定化を提供または復元することができる。
【0125】
パッド(1430)を有するように構成されたHFD(1000)のいくつかの例において、側方に位置付けされている両パッド(1430)はチューブ(1441)を介して連結され、当該パッド(1430)が各パッド(1430)内で常に同じ圧力に保たれている。いくつかの他の例では、側方に位置付けされている両パッド(1430)をチューブ(1441)で連結する必要はなく、したがって各パッド(1430)はその圧力に関して互いに独立して制御することができる。さらに、様々なバルブ配置がチューブ(1441)と共に組み込まれてもよく、それにより、パッド(1430)はチューブ(1441)を介して連結されている場合であっても独立して制御されるように構成することができる。本明細書の教示を考慮すれば、パッド(1430)を構成しその中の圧力を制御する他の方法が当業者には明らかであろう。単なる例であって限定するものではないが、パッド(1430)内の圧力要求は上述したように頭蓋クランプ(800)が患者の頭部周りで回転された場合の患者の位置によって異なってもよい。
【0126】
パッド(1430)を有するように構成されたHFD(1000)のいくつかの例において、患者頭部に加えるパッド(1430)の圧力はトルクネジ(1443)を用いて調整可能である。トルクネジ(1443)は安定化アセンブリ(816)の1つの構成要素である。トルクネジ(1443)を締め付けると、パッド(1430)によって患者頭部に加えられる圧力が増大する。図示の例では、単一のトルクネジ(1443)が片側にあり、2つのパッド(1430)がチューブ(1441)によって連結され、トルクネジ(1443)の操作により両パッド(1430)における圧力が変化するようになっている。いくつかの他の例では、複数のトルクネジ(1443)が用いられてもよく、パッド(4130)がチューブ(1441)によって連結されなくてもよいように、パッド(1430)の各々と1つのトルクネジが関連付けられていてもよい。いくつかの例において、初期安定化はトルクネジ(1443)を用いて達成することができる。最初にトルクネジ(1443)を設定した後、パッド(1430)の第1のチャンバ(1432)内の流体の量を調整することにより、例えば、圧力を増大させるよう第1のチャンバ(1432)により多くの流体を方向付けることにより、または圧力を減少させるよう第1のチャンバ(1432)から流体を排出することにより、その後の圧力調整を行いうる。すなわち、いくつかの例において、トルクネジ(1443)が含まれるか否かに関わらず、パッド(1430)の各々によってもたらされる接触圧力は、トルクネジ(1443)とは別個に独立して制御または調整することができる。いくつかの例において、トルクネジ(1443)は完全に省略することができ、従来の頭蓋ピンアセンブリに置き換えることができる。本明細書における教示を考慮すれば、
図35に示されるようなトルクネジ(1443)、流体制御システム(1444)、または両方の組み合わせのいずれかを用いる他の方法が当業者には明らかであろう。
【0127】
上述したように、HFD(1000)はクッション(418)を備えた中央頭部支持部(1410)を有するように構成することができる。クッション(1418)は第1のチャンバ(1445)を有するマルチチャンバ構造を有し、第1のチャンバ(1445)は流体が充填されるように構成された内部空間(1446)を有する。流体は気体または液体であってよい。第1のチャンバ(1445)は内部空間(1446)へのアクセスをもたらすように構成されたポート(1447)を含む。流体は、第1のチャンバ(1445)内で内部空間(1446)に方向付けられてもよく、あるいは第1のチャンバ(1445)の内部空間(1446)から抜き出され又は排出されてもよい。第1のチャンバ(1445)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(1446)から解放または排出することができる。クッション(1418)はさらに、流体が充填されるように構成された内部空間(1449)を有する第2のチャンバ(1448)を有し、あるいは流体は第2のチャンバ(1448)の内部空間(1449)から抜き出され若しくは排出されてもよい。第2のチャンバ(1448)から流体を排出するとき、流体の全てまたは一部を内部空間(1449)から解放または排出することができる。本実施例において、第1のチャンバ(1445)の内部空間(1446)及び第2のチャンバ(1448)の内部空間(1449)は当該第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)の内部空間(1446、1449)間に延在する連結チューブ(1450)によって流体連通している。
【0128】
クッション(1418)はさらに、第1のチャンバ(1445)と第2のチャンバ(1448)間に位置付けられた第3のチャンバ(1451)を有する。この構成では、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)が集合的に外部チャンバのペアを定義する一方、第3のチャンバ(1451)が中間チャンバを定義する。3のチャンバ(1451)はまた、内部空間(1452)を有し、連結チューブ(1450)が第3のチャンバ(1451)の内部空間(1452)を通って延在する。第3のチャンバの内部空間(1452)は、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)と同様に流体が充填されるように構成されている。流体は内部空間(1452)に追加され又は内部空間(1452)から除去されてよく、それによりクッション(1418)のこの領域内で圧力を変化させることができる。第3のチャンバ(1451)は第1のチャンバ(1445)と同様にポート(1453)を有する。ポート(1453)は、内部空間(1452)へのアクセスをもたらし、流体を内部空間(1452)に方向付け、または流体を内部空間(1452)から排出するのに用いられる。
【0129】
クッション(1418)はさらに、各々が形状適合材料により充填されるように構成された、第4のチャンバ(1454)、第5のチャンバ(1455)、及び第6のチャンバ(1456)を有する。第1のチャンバ(1445)は第4のチャンバ(1454)に対して下方に位置付けられ、第4のチャンバ(1454)は患者の頭部と接触するように構成されている。第2のチャンバ(1448)は第5のチャンバ(1455)に対し下方に位置付けられ、第5のチャンバ(1455)は患者の頭部と接触するように構成されている。第3のチャンバ(1451)は第6のチャンバ(1456)に対し下方に位置付けられ、第6のチャンバ(1456)は患者の頭部と接触するように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、第1のチャンバ及び第4のチャンバ(1445、1454)、第2のチャンバ及び第5のチャンバ(1448、1455)、並びに第3のチャンバ及び第6のチャンバ(1451、1456)の相対位置は、他の例では切り替えられてもよいことが当業者には明らかであろう。一例では、第4のチャンバ、第5のチャンバ、及び第6のチャンバ(1454、1455、1456)内の形状適合材料は、ゲル、発泡体、微粒材料、またはそれらの組み合わせのいずれか1つである。本明細書における教示を考慮すれば、クッション(1418)で使用可能な他の形状適合材料が当業者には明らかであろう。
【0130】
上述したクッション(1418)の構成により、クッション(1418)は、流体及びそれぞれの内部空間(1446、1449、1452)の各々による調整の方法に応じて様々な圧力プロファイルを提供するように構成されている。例えば、いくつかの例において、第3のチャンバ(1451)が、その内部空間(1452)に第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)の内部空間(1446、1449)にあるのと同じ単位容積あたりの流体量を保持するように構成されている場合、接触圧力の均一な分散が達成され得る。更なる他の例では、外部チャンバが釣り合った圧力を有する一方、中間チャンバが外部チャンバ内の圧力よりも高いまたは低い圧力を有してもよい。さらに、外部チャンバと中間チャンバとの間で異なる圧力を有するこの構成では、患者頭部の確実な安定化を維持しつつクッション(1418)の一部と接触している患者組織のある領域への血流を促進する方法を提供するように制御された様式で流体を排出および/または追加することができる。
【0131】
単なる例であって限定するものではないが、一例では、患者は最初、患者頭部の部分に同一の接触圧力を加えるパッド(1430)により安定化される。この初期の安定化では、クッション(1418)は、外部チャンバ及び中間チャンバも患者の頭部の背面部分に同一の接触圧力を加えるように構成されている。本実施例において、HFD(1000)は仰臥位にある患者に用いられるが、これは全ての実施例において必要なわけではなく、HFD(1000)は他の姿勢の患者に用いてもよい。いくらかの時間の経過後に、パッド(1430)及び/またはクッション(1418)内の圧力を操作して、HFD(1000)の一部に接触する患者頭部の組織領域への血流を回復または増加させることができる。さらに、この圧力操作には、組織への血流の増加を促進するための短時間の圧力軽減または圧力低下、それに続く、或る時間の経過後に安定化を高めるための圧力増大が含まれる。さらに、この圧力操作は、パッド(1430)及び/またはクッション(1418)のチャンバ間で交互に行うことができる。この交互の様式を用いることにより、HFD(1000)と接触している組織領域では、許容可能な程度の安定化を維持しつつ、血流の回復または増加による処理がなされる。
【0132】
圧力軽減及び復元の交互シーケンスの例は、第1の工程として、初期の安定化が構築された後、患者頭部のパッド(1430)が接触する部分に血流を回復させる時間量を与えるようパッド(1430)における圧力を低下させる工程を含むことができる。いくつかのそのような実施例では、パッド(1430)における圧力は全く低下されなくてもよく、圧力軽減シーケンスはマルチチャンバクッション(1418)に制限されてもよいことに留意されたい。また、他の実施例では、第1の工程は、マルチチャンバクッション(1418)に対する圧力軽減工程またはプロセスを実行し、その後、パッド(1430)の一方若しくは両方に対して圧力軽減工程を実行してもよいことに留意されたい。ただし、本実施例では、パッド(1430)における圧力が低下し、パッド(1430)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間の経過後、パッド(1430)における圧力は次いで、その初期レベルまで復元される。
【0133】
その後、第3のチャンバ(1451)によって定義された中間チャンバはその圧力を低下させるよう排出される。この動作は、中間チャンバにおける患者頭部に加えられた力または圧力を低下させ、したがって、中間チャンバと接触している患者頭部の背面領域への血流を増加させることができる。この場合、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)によって集合的に定義された外部チャンバは、それらの元の圧力若しくは初期の圧力に留まり、または高い圧力を経験する。したがって、中間チャンバと接触している組織領域がこの領域における組織外傷のリスクを防止または低下させるよう血流増加または血流回復の時間を受けている間、外部チャンバ及びパッド(1430)は患者の頭部に安定化を提供する。
【0134】
さらなる簡潔性のために、クッション(1418)の中間チャンバは、流体を収容するように構成された第3のチャンバ(1451)と、形状適合材料により構成された第6のチャンバ(1456)との両方を有する。同様に、外部チャンバのペアでは、一方の外部チャンバは、流体を収容するように構成された第1のチャンバ(1445)と、形状適合材料により構成された第4のチャンバ(1454)とを有する。また、他方の外部チャンバは、流体を収容するように構成された第2のチャンバ(1448)と、形状適合材料により構成された第5のチャンバ(1455)とを有する。本明細書における教示を考慮すれば理解されるように、外部チャンバ及び中間チャンバ内の上述した圧力軽減は、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバ(1445、1448、451)のそれぞれの内部空間(1446、1449、1452)内で流体体積を変化させることによって起こり、当該圧力軽減に基づく血流の増加は形状適合材料を有する第4のチャンバ、第5のチャンバ、及び第6のチャンバ(1454、1455、1456)それぞれと接触している組織領域において起こる。その他の構成では、流体充填チャンバは患者の頭部と接触するチャンバであってもよく、形状適合包含チャンバはそれぞれの流体充填チャンバの真下または下方に位置し得る。本明細書における教示を考慮すれば、チャンバについてのその他の構成が当業者には明らかであろう。
【0135】
圧力軽減シーケンスの上記例に再び戻ると、クッション(1418)の中間チャンバにおける圧力が低下し、中間チャンバ、具体的には第6のチャンバ(1456)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間が経過した後、クッション(1418)の中間チャンバにおける圧力は次いで、その初期のレベルに復元される。その後、外部チャンバのペアは、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)それぞれから流体を排出しまたは抜き出すことにより、それらの圧力を低下させるよう排出される。この動作は、外部チャンバで患者頭部に加えられた力または圧力を低下させ、したがって、外部チャンバと接触している患者頭部のこれらの領域への、より具体的には第4のチャンバ及び第5のチャンバ(1454、1455)それぞれと接触している領域への血流を増加させることができる。この場合、中間チャンバがより高い圧力を経験する一方、パッド(1430)がそれらの元の圧力または初期の圧力に留まる。したがって、外部チャンバと接触している組織領域がこの領域における組織外傷のリスクを防止または低下させるよう血流増加または血流回復の時間を受けている間、中間チャンバ及びパッド(1430)は患者の頭部に安定化を提供する。
【0136】
クッション(1418)の外部チャンバにおける圧力が低下し、外部チャンバ、具体的には第4のチャンバ及び第5のチャンバ(1454、1455)と接触している患者の組織領域への血流が増加したいくらかの時間の経過後、クッション(1418)の外部チャンバにおける圧力は次いで、その初期レベルに復元される。上述した圧力軽減工程は、組織損傷または外傷のリスク低減を支援するために、必要に応じて又は所望に応じて複数回実施することができる。さらに、これらの圧力軽減動作は、上記環境を必要とし、または要求するような任意の順序で完了することができ、上述した実施例の順序が必要な順序または唯一の順序若しくはシーケンスと見なされるべきではない。
【0137】
上述したようにパッド(1430)と中央頭部支持部(1410)とを有するように構成されたHFD(1000)では、チューブ(1441)を介したパッド(1430)の第1のチャンバ(1432)間の流体連通により、各パッド(1430)における圧力を同一にすることができ、また同時に調整することができ、それにより、パッド(1430)における圧力が変化する間、それが同一の様式において同程度で行われるようになっている。パッド(1430)が概して患者頭部の両側に位置する場合では、パッド(1430)の第1のチャンバ(1432)間の流体連通により、それぞれのパッド(1430)によって患者頭部の両側に加えられた力の差を変えることなく、パッド(1430)内の圧力を変化させてパッド(1430)に接触している組織領域への血流を促進することができる。この構成は、患者の頭部を移動させたり位置を変更させたりすることなく、パッド(1430)内の圧力を変化させることができる。
【0138】
例えば、一実施例において、各パッド(1430)により患者頭部の各側に加えられた初期の力は約20ニュートンであってもよく、したがって、各パッド(1430)により加えられた力が同一であるから、その力の差はゼロである。例示的な圧力軽減工程が実行されると、各パッド(1430)によって患者頭部の各側に加えられる力はここで、約50ニュートンであってもよく、したがって、各パッド(1430)により加えられた力が同一に留まることから、その力の差はゼロに維持される。同様に、本実施例では、パッド(1430)はチューブ(1441)によって流体連通されるが、これは全ての例において必要とされるわけではない。例えば、いくつかの他の例では、パッド(1430)は第1のチャンバ(1432)内の流体体積に基づいてそれらの圧力に関し独立して調整可能または制御可能であってもよい。
【0139】
パッド(1430)と同様に、連結チューブ(1450)を介したクッション(1418)の第1のチャンバ(1445)と第2のチャンバ(1448)間の流体連通により、クッション(1418)の各外部チャンバにおける圧力を同一にすることができ、また同時に調整することができ、それにより、クッション(1418)の外部チャンバにおける圧力が変化する間、それが同一の様式において同程度に行われる。図示され説明されるように、患者の頭部を左半身及び右半身に分割する矢状面を中心にクッション(1418)の外部チャンバが対称的に位置するように、クッション(1418)の外部チャンバは、仰臥位にあるときに概して患者頭部の矢状面の両側に位置する。クッション(1418)の外部チャンバ間の流体連通により、クッション(1418)の各外部チャンバにより患者頭部に加えられた力の差を変えることなく、クッション(1418)の当該外部チャンバ内の圧力を変化させて、クッション(1418)の外部チャンバにより接触している組織領域への血流を促進することができる。この構成は、患者の頭部を移動させたり位置を変更させたりすることなく、すなわち、クッション(1418)の他方の外部チャンバと比較して一方の外部チャンバに不均一な力が加えられたことにより患者の長手方向軸を中心とする回転が生じてしまうことなく、クッション(1418)の外部チャンバ内の圧力を変化させることができる。
【0140】
X.例示的な流体制御システムおよび方法
図35は、概略的に示されるように、パッド(1430)とクッション(1418)とを有するように構成されたHFD(1000)で使用可能な流体制御システム(1444)を示す。上記で詳述したように、パッド(1430)は患者の頭部に側方安定化をもたらし、クッション(1418)は水平支持及び安定化をもたらす。トルクネジ(1443)はパッド(1430)が患者頭部に加える圧力を増大または減少させることができるようにパッド(1430)の1つと連結する。連結チューブ(1441)はパッド(1430)を共に連結し、それによりそれらパッド(1430)が流体連通するようになっている。上述したように、連結チューブ(1441)は各パッド(1430)の第1のチャンバ(432)を連結する。この構成では、各パッド(1430)における圧力は同一であり、各パッド(1430)は患者の頭部に同一の力を分け与える。
【0141】
また、連結チューブ(1441)には弁(1457)が連結されている。弁(1457)は、パッド(1430)から流体を選択的に排出してパッド(4130)内の圧力を低下させ、または追加の流体がパッド(1430)へ流れてパッド(1430)内の圧力を増大させることができるように構成されている。弁(1457)はポンプ(1458)に連結しており、ポンプ(1458)は所望に応じてパッド(1430)に追加の流体を供給するように構成されている。いくつかの例において、ポンプ(1458)はまた、排出または抜き出された流体をパッド(1430)から離れるように方向付けるよう構成され得る。流体リザーバ(1459)がポンプ(1458)と流体連通している。流体リザーバ(1459)は、ポンプ(1458)を介して配送されることとなる追加の流体をパッド(1430)に提供するように構成されている。いくつかの例において、パッド(1430)から流体を排出することは、パッド(1430)から流体リザーバ(1459)へ流体を移動させるよう弁(1457)を開放し、ポンプ(1458)を動作させることを伴う。ポンプ(1458)はまた、流体リザーバ(1459)がいくつかの例において省略されてもよいように、流体リザーバ(1459)なしに用い得る。そのような例では、ポンプ(1458)は周囲環境からパッド(1430)に空気を配送するように構成されていてもよい。同様に、そのような例では、パッド(1430)から流体を排出することは、流体リザーバ(1459)に排出する代わりに、パッド(1430)から周囲環境に空気を再び排出することを伴ってもよい。いくつかの実施例では、流体リザーバ(1459)自体を周囲環境と見なすことができる。
【0142】
流体制御システム(1444)についての簡略化された構成を有する一例では、流体リザーバ(1459)が省略され、ポンプ(1458)は、圧力計を備え手動で動作するように構成されたハンドポンプまたはフットポンプを有する。本実施例において、ポンプ(1458)は、パッド(1430)及びクッション(1418)内の流体体積及び圧力を調整するよう、様々な弁(1457、1460、1461)と選択的に連結可能である。いくつかの例において、
図37に示されるものなど、流体制御システム(1480)は、複数の弁(1457、1460、1461)の代わりに使用し得る切り替え可能な単一の弁(1463)を有することができる。そのような例では、弁(1463)は、ポンプ(1458)およびクッション(1418)のそれぞれのポート(1447、1453)と連結する。また、図示されるように、弁(1463)は、連結チューブ(1441)を介してパッド(1430)と連結することもできるが、この追加の流体連通は、全ての例において必要とされるわけではなく、また別個の流体制御システムによって制御されてもよい。流体制御システム(1480)内の流体を制御するとき、弁(1463)は、流体がクッション(1418)および/またはパッド(1430)の流体保持チャンバのいずれかに方向付けられ得るように構成されている。さらに、弁(1463)は、クッション(1418)および/またはパッド(1430)のチャンバのうちの2つ以上に流体を同時に方向付けるように構成することができる。ポンプ(1458)は圧力計(1462)を有するように構成され、当該圧力計(1462)は弁(1463)が能動的に流体連通するチャンバ内の圧力を示すように構成されている。本明細書における教示を考慮すれば、様々な流体制御システムについてのその他の構成が当業者には明らかであろう。例えば、流体を方向付けるために、単一のポンプまたは複数のポンプが用いられてもよく、単一の弁または複数の弁が用いられてもよく、また、様々なポート及び連結チューブが用いられてもよいことが理解されよう。
【0143】
本実施例において、ポンプ(1458)はまた、クッション(1418)のそれぞれのポート(1447、1453)と連結した2つの他の弁(1460、1461)を連結する。弁(1460、1461)は、弁(1457)と同様に構成され、したがって、ポンプ(1458)も流体リザーバ(1459)からクッション(1418)の外部チャンバ及び中間チャンバのいずれかまたは両方に追加の流体を提供するように動作することができる。上述したように、流体はクッション(1418)の第1のチャンバ及び第3のチャンバ(1445、1451)に提供される。さらに、この構成では、流体は、一実施例において弁(1460、1461)を介して当該流体を大気に排出することによって、あるいは弁(1460、1461)を開放しポンプ(1458)を動作させて当該流体を流体リザーバ(1459)に移すことによって、クッション(1418)から排出または抜き出すことができる。本明細書における教示を考慮すれば、パッド(1430)及びクッション(1418)内の圧力を操作するよう流体制御システム(1444)を構成及び動作させる他の方法が当業者には明らかであろう。
【0144】
図36は、マルチチャンバクッション(1418)を有するように構成されている場合のHFD(600)で使用可能な別の例示的な流体制御システム(470)を示す。流体制御システム(1470)は、外部チャンバ及び中間チャンバが上述したような交互様式において排出および再充填可能な流体制御を提供するように構成されている。繰り返しとなるが上述したように、この交互の排出または圧力軽減は、患者頭部の特定の領域への血流を増加させる一方、患者頭部の適切な安定化を維持する機能を提供する。
【0145】
図36に図示の例に示されるように、流体制御システム(1470)はポンプ(1471)を有し、当該ポンプ(1471)は流体を収容する流体リザーバ(1472)に連結されている。流体制御システム(1470)では、ポンプ(1471)はさらに、2つの弁(1473、1474)と連結する。当該弁(1473)の一方はクッション(1418)の第1のチャンバ(1445)のポート(1447)と連結し、他方の弁(1474)はクッション(1418)の第3のチャンバ(1448)のポート(1453)と連結する。ポンプ(1471)、流体リザーバ(1472)、弁(1473、1474)、及びポート(1447、1453)間の連結によってそれらの構成要素が流体連通し、その結果、それらの構成要素間で流体を移送することができる。したがって、流体制御システム(1470)は、クッション(1418)に流体を方向付け、またはクッション(1418)から流体を抜き出し若しくは排出するように構成されている。上述したように、クッション(1418)の第1のチャンバ(1445)はチューブ(1450)によって第2のチャンバ(1448)と連結し、それにより、流体変化が同一の様式において同程度に両チャンバ(1445、1448)に影響を与え、外部チャンバのペアが同一の圧力を有するようになっている。
【0146】
第1のチャンバ(1445)の内部空間(1446)内で、流体制御システム(1470)は圧力センサ(1475)を含む。いくつかの他の例では、圧力センサ(1475)は代わりに第2のチャンバ(1448)の内部空間(1449)内に配置することができる。流体制御システム(1470)はさらに、第3のチャンバ(1451)の内部空間(1452)内に位置する圧力センサ(1476)を含む。本実施例において、圧力センサ(1475、1476)は制御ユニット(1477)と連結する。図示の実施例では、制御ユニット(1477)も第3のチャンバ(1451)の内部空間(1452)内に位置する。いくつかの他の例では、制御ユニット(1477)はクッション(1418)内またはクッション(1418)の外側の他の位置に配置することができる。また、制御ユニット(1477)には弁(1473、1474)及びポンプ(1471)が連結されている。制御ユニット(1477)、ポンプ(1471)、弁(1473、1474)、及びセンサ(1475、1476)間の連結によってそれらの構成要素が電気通信し、その結果、電気信号がそれらの構成要素間で送受信できるようになる。信号を送受信する本明細書に記載の構成要素は、それらの構成要素内に収容されたバッテリによって電力供給される。当然、他の例では、構成要素内のバッテリの代わりにまたは構成要素内のバッテリに加えて、別個の電源が用いられてもよい。本明細書における教示を考慮すれば、本明細書に記載の構成要素に電力を供給する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0147】
図36について上述した構成では、流体制御システム(1470)は、動作中、制御ユニット(1477)が圧力センサ(1475、1476)からの信号を用いて第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び第3のチャンバ(1445、1448、1451)内の流体体積を変化させるように動作可能となるよう構成することができる。例えば、患者の頭部が安定化されたいくらかの時間の経過後、HFD(1000)に接触する特定の組織領域に血流を回復させて、上述したように組織外傷または損傷のリスクを低下させるよう、患者頭部に対する圧力を選択的に軽減することが望ましいことがある。流体制御システム(1470)では、制御ユニット(1477)は、命令セットを実行して、それにより、前に流体が排出または抜き出された各チャンバへ再び流体を配送することによって圧力を増大させる前に、流体を排出または抜き出すことによって圧力を軽減させて組織への血流が増加する時間ができるように、交互の様式でクッション(1418)の外部チャンバのペア及び中間チャンバが操作されるようプログラムすることができる。
【0148】
単なる例であって限定するものではないが、流体制御システム(1470)を用いる圧力軽減の1つの交互シーケンスは、圧力センサ(1475)が既定値に達するまで、流体が第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)から排出または抜き出される第1の圧力軽減動作またはプロセスを制御ユニット(1477)で開始することによって実施され得る。既定値は、圧力センサ(1475)の読取り値の減少率であってもよく、あるいはそれは患者の安定性に影響を与えることなく組織領域への血流を増加させるように決定されうる選択された圧力値であってもよい。圧力センサ(1475)が既定値に達すると、既定の待機時間が確保され、この場合、外部チャンバと接触している組織領域への血流の回復または増加のための時間が提供される。その既定の待機時間の経過後、制御ユニット(1477)は、センサ(1475)が圧力についての前記既定値に達するまで、第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1445、1448)に流体を方向付けて流体を追加する信号をポンプ(1471)及び弁(1473)に送信する。この既定値は、圧力軽減サイクルが始まる前のクッション(1418)の外部チャンバにおける圧力と同一であってよく、または異なる圧力値であってもよい。
【0149】
外部チャンバが、再充填され患者の頭部に十分な安定力を提供するのに十分な圧力を有する場合、次に、制御ユニット(1477)は、圧力センサ(1476)が既定値に到達するまで流体が第3のチャンバ(1451)から排出または抜き出される第2の圧力軽減動作またはプロセスを開始する。既定値は、圧力センサ(1476)の読取り値の減少率であってもよく、またはそれは、患者の安定性に影響を与えることなく組織領域への血流を増加させるように決定されうる選択された圧力値であってもよい。圧力センサ(1476)が既定値に到達すると、既定の待機時間が確保され、この場合、中間チャンバと接触している組織領域への血流の回復または増加のための時間が提供される。その既定の待機時間の経過後、制御ユニット(1477)は、センサ(1476)が圧力についての既定値に到達するまで、第3のチャンバ(1451)に流体を方向付け流体を追加する信号をポンプ(1471)及び弁(1474)に送信する。この既定値は、圧力軽減サイクルが始まる前のクッション(1418)の中間チャンバにおける圧力と同一であってもよく、または異なる圧力値であってもよい。この時点から、交互サイクルが完了すると、後続の交互サイクルがその直後またはいくらかの時間の経過後に続くこととなる。
【0150】
本明細書における教示を考慮すれば、流体制御システム(1470)を構成及び動作させる他の方法が当業者には明らかであろう。例えば、いくつかの例において、センサ(1475、1476)、弁(1473、1474)、ポンプ(1471)、及び/または制御ユニット(1477)は、クッション(1418)内の圧力及び流体データを視覚的に表示できる出力ディスプレイと連結されてもよい。他の例では、このデータは、ディスプレイを有する機器に無線で送信されてもよく、例えば、流体制御システム(1470)は、コンピュータまたはタブレットにインストールされたアプリケーションを介して動作可能であってもよい。またさらに、他の例では、制御ユニット(1477)はクッション(1418)の外側に配置されてもよく、さらに、制御ユニット(1477)は、クッション(1418)の両チャンバおよびパッド(1430)の1若しくはそれ以上からの流体配送及び抜き出しを制御することできるように、同様のセンサ及び弁を用いてパッド(1430)と連結されていてもよい。またさらに、いくつかの例において、センサ(1475、1476)の一方または両方が効果的にポンプ(1471)の一部となり、またはポンプ(1471)内にあるように、ポンプ(1471)は圧力の統合測定部を含む。
【0151】
XI.調整可能な充填式側方パッドを有する例示的な頭部固定機器
いくつかの例において、安定化アセンブリがピンの代わりにパッドの形式を有する非侵襲式のHFD構成が望ましいことがあり、その場合、パッドが側方安定化を提供する。さらに、パッドは、特定の組織領域への血流の促進を助け組織損傷または外傷のリスクを回避または低減するよう、特定の接触圧力制御機構を伴うように構成されてもよい。
図38を参照すると、例示的なHFD(1500)が示されており、当該HFD(1500)は、HFD(400)に多くの点で類似するが、HFD(400)で示されるパッド(430)ではなくパッド(1530)が組み込まれ、また弧部材(140)を有さない。HFD(1500)はまた、HFD(400)に関して説明したクッション(418)と同様のクッション(1518)を含む。HFD(1500)はさらに、パッド(1530)が患者の頭部と接触する安定化接触領域において、及びクッション(1518)が患者の頭部と接触する安定化接触領域において圧力を制御するのを補助する機構を含む。
【0152】
HFD(1500)は、上記頭蓋クランプ(170)および操作部(190)と同様の頭蓋クランプ(1570)および操作部(1590)を有し、上述した弧部材(140)を有さない。操作部(1590)を回転させて頭蓋クランプ(1570)のアームを調整することができ、それによりパッド(1530)間の位置が調整される。この点について、HFD(1500)は側方頭部支持部(1600)を有し、当該側方頭部支持部(1600)はパッド(1530)を有する。HFD(1500)はまた、HFD(400)に関して上述した中央頭部支持部(410)と同様の中央頭部支持部(1510)も有するが、この中央頭部支持部(1510)には上記クッション(418)の代わりにクッション(1518)が含まれている。
図38を参照すると、中央頭部支持部(1510)は、本体(1512)と、本体(1512)上の取付機構(1514)とを有し、取付機構(1514)は直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台または他の構造と連結するように構成されたスターバーストの形態である。例えば、いくつかの例において、pro med instruments GmbHから入手可能な基部ユニットなどの基部ユニットが手術台に取り付けられ、取付機構(1514)は当該基部ユニットと連結する。いくつかの例において、スイベルアダプタまたはpro med instruments GmbHから入手可能な他のアダプタなどのアダプタが基部ユニットと連結してもよく、中央頭部支持部(1510)の取付機構(1514)は当該アダプタと連結する。本明細書における教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1510)を手術台などの安定した構造と連結する様々な方法が当業者には明らかであろう。
【0153】
中央頭部支持部(1510)はまた、本体(1512)と連結しクッション(1518)を保持または維持する基部(1516)を有する。クッション(1518)は、接着剤、ネジ若しくはフック及びループなどの機械的留め具、または当業者にとって明らかな他の方法によって基部(1516)と連結することができる。いくつかの例において、クッション(1518)は、当該クッション(1518)を使用後に廃棄可能または洗浄及び殺菌のために取り外しできるように、基部(1516)と選択的に連結されている。クッション(1518)は、HFD(1500)を用いて患者を支持及び安定化するときに患者の頭部と接触するように構成されている。本実施例において、基部(1516)は本体(1512)から外向き上方向に延在するアーム(1520)のペアによって本体(1512)と連結する。いくつかの構成において、全ての構成で必要ではないが、使用中、中央頭部支持部(1510)は患者の頭部に水平支持を提供するように構成されている。
【0154】
図示の実施形態では、HFD(1500)の中央頭部支持部(1510)が頭蓋クランプ(1570)と結合されて示されている。いくつかの他の例において、中央頭部支持部(1510)は、上述したように弧部材(140)および/またはカセットキャリア(1202)を介して頭蓋クランプ(1570)と結合されている。本明細書の教示を考慮すれば、中央頭部支持部(1510)を頭蓋クランプ(1570)と結合するための更なる他の好適な構成が当業者には明らかであろう。
【0155】
図38~
図41を参照すると、上述したようにHFD(1500)はパッド(1530)を有する。パッド(1530)は筐体(1531)とチャンバ(1532)とを有する。穴または切欠き部(1534)が筐体(1531)およびチャンバ(1532)を通って延在する。穴(1534)は、過度な圧縮及び圧力から患者の耳を保護し代わりに患者の頭蓋に対してそのような圧力及び圧縮力を方向付けるように、安定化の間、患者の耳を受けるよう構成されるように位置する。また、筐体(1531)上には環状フランジ(1535)が位置し、環状フランジ(1535)は安定化アセンブリの残りと連結するように構成されたスロット(1536)を定義する。本実施例において、安定化アセンブリはカラー(1537)を含み、カラー(1537)はスロット(1536)内に適合するフランジ(1538)を有する。この構成では、パッド(1530)は、
図5に示したように穴(184)によって定義され穴(184)を通って延在する軸を中心に調整することができる。
【0156】
パッド(1530)のチャンバ(1532)は、充填材(1602)が充填されるように構成された内部空間(1539)を定義する。いくつかの例において、充填材は流体であり、当該流体は、液体、気体、またはそれらの組み合わせであってよい。更なる他の例では、充填材は固体材料であり、粒子または粒状材料とすることができる。更なるいくつかの他の例において、充填材は、いくつかの観点で固体および液体の両方の特性を有するゲルまたは他の粘性材料である。これらの充填材は全て、接触する表面の形状に適合するような形状適合材料とすることができ、またそのように見なされる。パッド(1530)のチャンバ(1532)にはポート(1540)も含まれており、当該ポート(1540)は、開閉可能で、チャンバ(1532)の内部空間(1539)に連結されて当該内部空間(1539)へのアクセスを可能にする。このように、充填材は、ポート(1540)によりチャンバ(1532)の内部空間(1539)に配送することができ、または排出若しくは抜き出すことができる。図示の実施形態では、チャンバ(1532)は、単一の内部空間(1539)を有し、加える圧力および安定化を変更または制御するのに用いられる間、充填材を調整可能に充填できる。更なる他の例では、チャンバ(1532)は上述したようにマルチチャンバパッドを形成するよう複数の内部空間を含んでもよい。
【0157】
図40を参照すると、パッド(1530)が各安定化アセンブリで用いられる場合、いくつかの例において、ポート(1540)は、チューブ、ホース、または導管によって連結される。チューブは、弁に連結されてもよく、さらに、上述したように流体リザーバに連結されてもよい。この構成では、複数のパッド(1530)のチャンバ(1532)を連結することにより、各パッドのチャンバ(1532)内の圧力は同じになり、その圧力は、チャンバ(1532)により多くの充填材が充填されて圧力が増大し、またはチャンバ(1532)から充填材が取り除かれて圧力が減少するように同様の態様で変化する。
【0158】
上述したパッド(1530)の構成では、パッド(1530)は、頭部がパッド(1530)を有する安定化アセンブリ(186)によって支持されるときに患者頭部との接触圧力の均一な分布を提供するように構成されている。さらに、ポート(1540)を介してより多くの充填材をチャンバ(1532)に充填することにより接触圧力を増大させることができる。逆に、上述したようにチャンバ(1532)から充填材を排出または取り除くことにより接触圧力を低下させることができる。接触圧力を低下させることにより、血流がパッド(1530)と接触している患者頭部の領域に回復し得る。いくつかの例において、全ての例で必要とされるものではないが、チャンバ(1532)からの充填材の相当な除去または排出により、パッド(1530)が患者頭部に十分な安定化のための接触圧力を加えないようなサイズに収縮または縮小し得る。少なくともいくつかの例において、安定化させるのに十分な接触圧力は安定化圧力ということができる。パッド(1530)と患者との間の安定化圧力が不足する程度まで接触圧力を低下させることにより、以前パッド(1530)と接触しており安定化圧力下にあった患者頭部のこの領域に血流が回復し得る。接触圧力を低下させ血流を回復させることにより、組織外傷または損傷を回避することができ、またはそのリスクを低減させることができる。さらに、パッド(1530)と患者頭部との間の接触圧力を低下させるときに中央頭部支持部(1510)のクッション(1518)によって患者頭部の支持を維持し、組織のある領域に血流を回復させるときに患者の支持を犠牲にしないようにすることができる。いくつかの例において、パッド(1530)と接触している組織領域への血流を回復させる十分な時間が経過すると、充填材をチャンバ(1532)に充填することにより再び接触圧力を増大させて強化された若しくはより高い程度の安定化を提供または復元することができる。全ての例において、パッド(1530)が患者頭部に接触している領域への血流の一部または全てを回復させるためにパッド(1530)と患者頭部との間の全安定化圧力が不足する程度までパッド(1530)内の圧力を下げる必要はないことを理解すべきである。
【0159】
HFD(1500)のいくつかの例において、両方の側方パッド(1530)は、常に同じ圧力に保たれる。他のいくつかの例では、各パッド(1530)は、その圧力と充填材の量に関して他のパッドから独立して制御可能である。すなわち、各パッド(1530)内の圧力および/または充填材量の独立した制御を有するそのような例では、上記のような連結チューブは省略されてよく、または充填材を方向付けるための様々なバルブを含み得る。本明細書の教示を考慮すれば、パッド(1530)を構成し内部の圧力を制御する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0160】
図38および
図39を参照すると、HFD(1500)のいくつかの例において、患者の頭部に適用される圧力パッド(1530)はトルクネジ(1543)を用いて調整可能である。トルクネジ(1543)は安定化アセンブリの1つの構成要素であってよい。トルクネジ(1543)を締めると、パッド(1530)によって患者頭部に加えられる圧力が増大する。一例において、単一のトルクネジ(1543)がHFD(1500)の片側にあり、パッド(1530)はトルクネジ(1543)の操作によって両パッド(1530)の圧力が変化するようにチューブで連結されている。他の例では、複数のトルクネジ(1543)を用いることができ、各パッド(1530)に1つのトルクネジが関連付けられていてもよい。複数のトルクネジ(1543)を用いるいくつかの例では、パッド(1530)は上記チューブによって連結されていない。HFD(1500)を用いるいくつかの例において、初期安定化はトルクネジ(1543)を用いて達成することができる。最初にトルクネジ(1543)を設定した後、パッド(1530)のチャンバ(1532)内の充填材の量を調整することにより、例えば、圧力を増大させるようチャンバ(1532)により多くの充填材を方向付けることにより、または圧力を減少させるようチャンバ(1532)から充填材を取り除き又は排出することにより、その後の圧力調整を行うことができる。すなわち、いくつかの例では、トルクネジ(1543)が含まれているかどうかに関係なく、各パッド(1530)によって提供される接触圧力は、トルクネジ(1543)とは独立して個別に制御または調整することができる。いくつかの例において、トルクネジ(1543)は、完全に省略することができ、従来の頭蓋ピンアセンブリに置き換えることができる。本明細書の教示を考慮すれば、トルクネジ(1543)および/または充填量のいずれかを用いてパッド(1530)内の圧力を制御する他の方法が当業者には明らかであろう。
【0161】
図40および
図41を参照すると、HFD(1500)は、上述したように中央頭部支持部(1510)の基部(1516)に連結するクッション(1518)を有する。本実施例において、HFD(1500)のクッション(1518)は第1のチャンバ(1545)を有するマルチチャンバ構造を含み、当該第1のチャンバ(1545)は充填材が充填されるように構成された内部空間(1546)を有する。第1のチャンバ(1545)は内部空間(1546)へのアクセスをもたらすように構成されたポート(1547)を含む。充填材は、第1のチャンバ(1545)内の内部空間(1546)に方向付けられ、または第1のチャンバ(1545)の内部空間(1546)から抜き出され又は排出され得る。第1のチャンバ(1545)から充填材を排出または除去する場合、充填材の全部または一部を内部空間(1546)から解放または排出することができる。クッション(1518)は第2のチャンバ(1548)をさらに含み、当該第2のチャンバ(1548)は充填材が充填されるように構成された内部空間(1549)を有し、または充填材は第2のチャンバ(1548)の内部空間(1549)から抜き出され又は排出され得る。充填材を第2のチャンバ(1548)から排出または除去する場合、充填材の全部または一部を内部空間(1549)から解放または排出することができる。本実施例において、第1のチャンバ(1545)の内部空間(1546)および第2のチャンバ(1548)の内部空間(1549)は、当該第1のチャンバおよび第2のチャンバ(1545、1548)の内部空間(1546、1549)間に延びる連結チューブ(1550)により流体連通している。
【0162】
クッション(1518)はさらに、第1のチャンバ(1545)と第2のチャンバ(1548)間に配置された第3のチャンバ(1551)を含む。この構成では、第1および第2のチャンバ(1545、1548)が集合的に外部チャンバのペアを定義する一方、第3のチャンバ(1551)が中間チャンバを定義する。第3のチャンバ(1551)もまた、内部空間(1552)を有し、連結チューブ(1550)が第3のチャンバ(1551)の内部空間(1552)を通って延在する。第3のチャンバ(1551)の内部空間(1552)は、第1のチャンバおよび第2のチャンバ(1545、1548)と同様に充填材が充填されるように構成されている。充填材は内部空間(1552)に追加され又は内部空間から除去されてもよく、それによりクッション(1518)のこの領域内の圧力を変化させることができる。第3のチャンバ(1551)は第1のチャンバ(1545)と同様のポート(1553)を有する。ポート(1553)は、内部空間(1552)へのアクセスを提供し、充填材を内部空間(1552)に方向付け、または充填材を内部空間(1552)から排出若しくは除去するのに用いられる。図示の実施形態は、3つのチャンバ(1545、1548、1551)を有するクッション(1518)を示しているが、クッション(1518)は任意の好適な数の1若しくはそれ以上のチャンバを有し得ることを理解されたい。
【0163】
上記クッション(1518)の構成により、クッション(1518)は、充填材及びそれぞれの内部空間(1546、1549、1552)の各々による調整の方法に応じて様々な圧力プロファイルを提供するように構成されている。例えば、いくつかの例において、第3のチャンバ(1551)が、その内部空間(1552)に第1のチャンバ及び第2のチャンバ(1545、1548)の内部空間(1546、1549)にあるのと同じ単位容積あたりの流体量を保持するように構成されている場合、接触圧力の均一な分散が達成され得る。更なる他の例では、外部チャンバが釣り合った圧力を有する一方、中間チャンバが外部チャンバ内の圧力よりも高いまたは低い圧力を有してもよい。さらに、外部チャンバと中間チャンバとの間で異なる圧力を有するこの構成では、患者頭部の確実な安定化を維持しつつクッション(1518)の一部と接触している患者組織のある領域への血流を促進する方法を提供するように制御された様式で充填材料を除去および/または追加することができる。
【0164】
単なる例であって限定するものではないが、一例では、患者は、最初、患者頭部の一部に同一の接触圧力を加えるパッド(1530)を有するHFD(1500)を用いて安定化される。この初期の安定化では、クッション(1518)は、外部チャンバ及び中間チャンバが患者頭部の他の部分にも同一の接触圧力を加えるように構成されている。本実施例において、HFD(1500)は仰臥位にある患者に用いられるが、これは全ての実施例において必要なわけではなく、HFD(1500)は他の姿勢の患者に用いてもよい。いくらかの時間の経過後、パッド(1530)及び/またはクッション(1518)内の圧力を操作して、HFD(1500)の一部と接触する患者頭部の組織領域への血流を回復または増加させることができる。さらに、この圧力操作には、組織への血流の増加を促進するための短時間の圧力軽減または圧力低下、それに続く、或る時間の経過後に安定化を高めるための圧力増大が含まれる。さらに、この圧力操作は、パッド(1530)及び/またはクッション(1518)のチャンバ間で交互に行うことができる。この交互の様式を用いることにより、HFD(1500)と接触している組織領域では、許容可能な程度の安定化を維持しつつ、血流の回復または増加の処置がなされる。
【0165】
XII.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書における教示を組み合わせ又は適用しうる様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願または本出願の後続の提出書類のいずれかの時点において提示されうるいずれかの請求項の対象範囲を制限することを意図していないことを理解すべきである。放棄は意図していない。以下の実施例は、単なる例示を目的に提供されているに過ぎない。本明細書における様々な教示は他の多くの方法で配置され適用されてもよいことが企図される。また、いくつかの変形例は、以下の実施例で言及される特定の特徴を省略しうることが企図される。したがって、発明者または発明者に関与した継承者によって後に別段に明確に示されない限り、以下で言及される態様または特徴のいずれも重要であると考えられるべきではない。以下に言及するもの以外の追加機構を含む、本出願または本出願に関連するその後の提出書類に請求項が提示された場合、それらの追加機構は特許性に関連する理由で追加されたと推定されないものとする。
【0166】
実施例1
医療処置中に患者の頭部を支持および安定化するための医療機器は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台と連結するように構成されている。前記医療機器は、(a)1若しくはそれ以上の側方頭部支持部であって、当該1若しくはそれ以上の側方頭部支持部の各々は前記患者の頭部に側方支持を提供するように構成されている、前記側方頭部支持部と、(b)前記患者の頭部に接触するように構成された1若しくはそれ以上のパッドとを有する。前記1若しくはそれ以上のパッドの各々は前記1若しくはそれ以上の側方頭部支持部のそれぞれ1つと連結可能である。前記1若しくはそれ以上のパッドの各々は充填材を選択的に保持するように構成されたチャンバを有するものであり、前記チャンバは、さらに、当該チャンバ内の充填材の量を変更するよう前記充填材を調整可能に充填できるように構成されている。
【0167】
実施例2
実施例1に記載の機器において、さらに、(c)前記患者の頭部に水平支持を提供するように構成された中央頭部支持部と、(d)前記中央頭部支持部と連結可能なクッションであって、前記患者の頭部と接触するように構成されている、前記クッションとを有するものである、機器。
【0168】
実施例3
実施例1~2のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記充填材は、液体、固体、ゲル、気体、流体、形状適合材料、およびそれらの組み合わせのうちの選択された1つを有するものである機器。
【0169】
実施例4
実施例1~2のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記充填材は空気を含むものである、機器。
【0170】
実施例5
実施例1~4のいずれか1つ以上に記載の機器において、2つの側方頭部支持部と、2つのパッドとを有するものである機器。
【0171】
実施例6
実施例1~5のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記2つのパッドそれぞれのチャンバは、それらの充填材の量を独立して制御可能なように構成されている、機器。
【0172】
実施例7
実施例1~5のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記2つのパッドそれぞれのチャンバは、それらの充填材の量を一斉に調整可能なように構成されている、機器。
【0173】
実施例8
実施例1~7のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記チャンバは前記充填材が充填されるように構成された内部空間を有するものであり、前記チャンバは前記内部空間へのアクセスをもたらすように構成されたポートを有するものである、機器。
【0174】
実施例9
実施例1~8のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記チャンバは、さらに、前記充填材の全部または一部が前記内部空間から解放され排出されるように構成されている、機器。
【0175】
実施例10
実施例1~9のいずれか1つ以上に記載の機器において、さらに、充填材を前記パッドへ選択的に移送する、前記パッドの前記チャンバに連結可能なポンプを有するものである、機器。
【0176】
実施例11
医療処置中に患者の頭部を支持および安定化するための医療機器は、直接的に、または1若しくはそれ以上の中間構造を介して間接的に手術台と連結するように構成されている。前記医療機器は、(a)2若しくはそれ以上の側方頭部支持部であって、各々が前記患者の頭部に側方支持を提供するように構成されているものである、前記側方頭部支持部と、(b)前記患者の頭部と接触するように構成された2若しくはそれ以上のパッドであって、各々が前記2若しくはそれ以上の側方頭部支持部のそれぞれ1つと連結可能であり、当該2若しくはそれ以上のパッドの各々は第1の充填材を受容するように構成された第1のチャンバを有するものである、前記パッドと、(c)前記患者の頭部に水平支持を提供するように構成された中央頭部支持部と、(d)前記中央頭部支持部に連結可能なクッションであって、前記患者の頭部に接触するように構成されているものであり、このクッションは第2の充填材を受容するように構成された第2のチャンバを有するものである、前記クッションとを有する。
【0177】
実施例12
実施例11に記載の機器において、前記第1の充填材および前記第2の充填材は同一である、機器。
【0178】
実施例13
実施例11~12のいずれか1つ以上に記載の機器において、前記クッションはマルチチャンバ構造を有するものである、機器。
【0179】
実施例14
実施例11~13のいずれか1つ以上に記載の機器において、さらに、前記2若しくはそれ以上のパッドそれぞれの第1のチャンバを流体連通させる連結部材を有するものである、機器。
【0180】
実施例15
実施例1~14のいずれか1つ以上に記載の機器において、さらに、弧機構有するものである、機器。
【0181】
実施例16
実施例1~14のいずれか1つ以上に記載の機器において、さらに、カセット機構を有するものである、機器。
【0182】
XIII.その他
本明細書に説明されている教示、説明、実施形態、実施例などのいずれか1つ若しくはそれ以上は、本明細書に説明されている他の教示、説明、実施形態、実施例などのいずれか1つ若しくはそれ以上と組み合わされてもよいことが理解されよう。したがって、以下に説明する教示、説明、実施形態、実施例などは、相互に分離していると見なされるべきではない。本明細書の教示を考慮すれば、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0183】
単なる例であって限定するものではないが、側方パッド(1530)は、示した各側方パッドまたは側方ピンの代わりに、本明細書に記載のHFDのいずれかで用いることができる。さらに、本明細書に記載のHFDのいずれかに関して示し記載した様々な側方パッドは本明細書に記載の他の任意のHFDで用いることができる。また、本明細書に記載のHFDのいずれかに関して示し記載した様々な中央頭部支持部およびクッションは、本明細書に記載の他の任意のHFDで用いることができる。さらに、いくつかの例では、中央頭部支持部およびそのクッションが完全に省略されてもよい。同様に、本明細書の教示を考慮すれば、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が当業者にとって容易に明らかであろう。そのような修正および変形は特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0184】
本発明の様々な実施形態を示し説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明した方法及びシステムの更なる適応が当業者による好適な修正によって達成され得る。そのような潜在的な修正のいくつかが言及されてきたが、その他のものが当業者には明らかであろう。例えば、上述した実施例、実施形態、幾何学形状、材料、寸法、比率、及び工程などは、例示的であり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項の観点で考慮されるべきであり、明細書及び図面において示され説明された構造及び動作の詳細に限定されないものと理解される。