(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析方法及び画像解析システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20240307BHJP
A61M 1/14 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61M1/28
A61M1/14 100
(21)【出願番号】P 2019126938
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519248427
【氏名又は名称】METRICA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 宇貴
(72)【発明者】
【氏名】幅野 莞佑
(72)【発明者】
【氏名】森本 耕吉
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-047657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076592(US,A1)
【文献】特表2016-526193(JP,A)
【文献】特開2016-214293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0227547(US,A1)
【文献】特開2013-220148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
A61M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析機器を用いて腹膜透析を行っている患者又は前記患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記撮像画像に基づいて前記透析機器が備える複数の部品それぞれ
が透析液を通過させる開状態又は透析液を通過させない閉状態のどちらであるかを特定する部品特定部と、
前記姿勢と、前記複数の部品それぞれ
が前記開状態又は前記閉状態のどちらであるかと、に基づいて前記患者又は前記補助者が前記複数の部品を操作した順序を特定し、特定した前記順序と記憶部に予め記憶された基準順序とが合致するか否かを判定する分析部と、
前記順序が前記基準順序に合致するか否かを示す情報を含む分析結果を出力する出力部と、
を有する、画像解析装置。
【請求項2】
前記分析部は、特定した前記順序に含まれる前記腹膜透析の複数のステップそれぞれにおいて前記患者又は前記補助者が複数の前記部品のうち少なくとも1つを操作した操作時間を算出し、算出した操作時間に基づいて前記複数のステップそれぞれが円滑に行われたか否かを判定し、
前記出力部は、前記複数のステップそれぞれが円滑に行われたか否かを示す情報を含む前記分析結果を出力する、請求項
1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記順序が前記基準順序に合致しないと前記分析部が判定した場合に、前記出力部は、前記撮像画像を前記画像解析装置の外部へ送信する、請求項1
又は2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記姿勢に基づいて、前記患者又は前記補助者が前記透析機器以外の物体に触れた回数を算出し、算出した前記回数に基づいて、前記腹膜透析の手順の衛生の程度を評価し、
前記出力部は、前記衛生の程度を示す情報を前記分析結果として出力する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者が着用しているマスクを検出するマスク検出部をさらに有し、
前記出力部は、前記マスク検出部が前記マスクを検出したか否かを示す情報を出力する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記画像取得部は、前記患者の身体において前記透析機器が接続されている出口部を含む前記撮像画像を取得し、
前記分析部は、前記撮像画像に基づいて前記出口部の衛生の程度を評価し、
前記出力部は、前記衛生の程度を示す情報を前記分析結果として出力する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項7】
前記分析部は、前記撮像画像を入力することにより前記撮像画像に含まれている前記出口部の衛生の程度を示す情報を出力する機械学習モデルに前記撮像画像を入力することによって、前記出口部の衛生の程度を示す情報を取得する、請求項
6に記載の画像解析装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記出口部の衛生の程度が所定の条件を満たす場合に、所定の通知を出力することと、前記透析機器を停止させる情報を出力することとのうち少なくとも一方を行う、請求項
6又は
7に記載の画像解析装置。
【請求項9】
プロセッサが実行する、
撮像画像に基づいて患者又は前記患者を補助する補助者の姿勢を特定するステップであって、当該撮像画像は透析機器を用いて腹膜透析を行っている前記患者又は補助者が撮像されたものであるステップと、
前記撮像画像に基づいて前記透析機器が備える複数の部品それぞれ
が透析液を通過させる開状態又は透析液を通過させない閉状態のどちらであるかを特定するステップと、
前記姿勢と、前記複数の部品それぞれ
が前記開状態又は前記閉状態のどちらであるかと、に基づいて前記患者又は前記補助者が前記複数の部品を操作した順序を特定するステップと、
特定した前記順序と記憶部に予め記憶された基準順序とが合致するか否かを判定するステップと、
前記順序が前記基準順序に合致するか否かを示す情報を含む分析結果を出力するステップと、
を有する、画像解析方法。
【請求項10】
画像取得装置と、前記画像取得装置と通信可能な画像解析装置とを備え、
前記画像取得装置は、
透析機器を用いて腹膜透析を行っている患者又は前記患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者の姿勢を特定する姿勢特定部と、
前記撮像画像に基づいて前記透析機器が備える複数の部品それぞれ
が透析液を通過させる開状態又は透析液を通過させない閉状態のどちらであるかを特定する部品特定部と、
前記姿勢を示す情報と、前記複数の部品それぞれ
が前記開状態又は前記閉状態のどちらであるかを示す情報と、を前記画像解析装置へ送信する送信部と、
を有し、
前記画像解析装置は、
前記姿勢を示す情報と、前記複数の部品それぞれ
が前記開状態又は前記閉状態のどちらであるかを示す情報と、を前記画像取得装置から受信する受信部と、
前記姿勢と、前記複数の部品それぞれ
が前記開状態又は前記閉状態のどちらであるかと、に基づいて前記患者又は前記補助者が前記複数の部品を操作した順序を特定し、特定した前記順序と記憶部に予め記憶された基準順序とが合致するか否かを判定する分析部と、
前記順序が前記基準順序に合致するか否かを示す情報を含む分析結果を出力する出力部と、
を有する、画像解析システム。
【請求項11】
前記画像解析装置の前記出力部は、ユーザから所定の入力を受け付けた場合、又は前記分析結果が所定の条件を満たす場合に、前記撮像画像の要求を前記画像取得装置へ送信し、
前記画像取得装置の前記送信部は、前記画像解析装置から前記要求を受信したことを条件として、前記撮像画像を前記画像解析装置へ送信する、請求項
10に記載の画像解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析を行う患者を撮像した撮像画像を解析するための画像解析装置、画像解析方法及び画像解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析治療の方法として、血液透析(Hemodialysis: HD)と腹膜透析(Peritoneal Dialysis: PD)が知られている。血液透析は患者が毎回通院する必要があるのに対して、腹膜透析は自宅や職場で行うことができるという利点がある。
【0003】
腹膜透析を行う際に、患者又は患者の家族等の補助者は、透析機器を患者の腹部に埋め込まれた管に接続し、所定の手順で透析機器の操作(例えばクランプの開閉)を行う必要がある。特許文献1には、患者が腹膜透析を行う際に、音声及び画像によって透析機器の操作手順を出力する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者又は補助者が誤った手順で腹膜透析を行うと、患者は感染症にかかるおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載された装置が正しい腹膜透析の手順を出力しても、患者又は補助者が該手順どおりに腹膜透析を行うとは限らない。腹膜透析は患者の自宅や職場で行われるため、医師や看護師は、患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順や、感染症にかかっているか等の患者の状態を確認することができない。そのため、腹膜透析の安全性を向上させる技術が求められている。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、腹膜透析の安全性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の画像解析装置は、透析機器を用いて腹膜透析を行っている患者又は前記患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者の姿勢を特定する姿勢特定部と、前記姿勢に基づいて前記患者又は前記補助者が行っている前記腹膜透析の手順を分析する分析部と、前記分析部による分析結果を出力する出力部と、を有する。
【0008】
前記画像解析装置は、前記撮像画像に基づいて前記透析機器が備える部品の位置及び状態の少なくとも一方を特定する部品特定部をさらに有し、前記分析部は、前記姿勢と、前記部品の位置及び状態の少なくとも一方とに基づいて、前記手順が所定の基準に適合するか否かを判定し、前記出力部は、前記手順が前記所定の基準に適合するか否かを示す情報を前記分析結果として出力してもよい。
【0009】
前記部品特定部は、前記透析機器が備える複数の前記部品それぞれの前記位置及び状態の少なくとも一方を特定し、前記分析部は、前記姿勢と、複数の前記部品の位置及び状態の少なくとも一方とに基づいて前記患者又は前記補助者が複数の前記部品を操作した順序を特定し、特定した前記順序と所定の基準順序とを比較することによって、前記手順が前記所定の基準に適合するか否かを判定してもよい。
【0010】
前記分析部は、特定した前記順序において前記患者又は前記補助者が複数の前記部品のうち少なくとも1つを操作した操作時間を算出し、算出した操作時間に基づいて前記手順が円滑であるか否かを判定し、前記出力部は、前記手順が円滑であるか否かを示す情報を前記分析結果として出力してもよい。
【0011】
前記手順が前記所定の基準に適合しないと前記分析部が判定した場合に、前記出力部は、前記撮像画像を前記画像解析装置の外部へ送信してもよい。
【0012】
前記分析部は、前記姿勢に基づいて、前記患者又は前記補助者が前記透析機器以外の物体に触れた回数を算出し、算出した前記回数に基づいて、前記手順の衛生の程度を評価し、前記出力部は、前記衛生の程度を示す情報を前記分析結果として出力してもよい。
【0013】
前記画像解析装置は、前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者が着用しているマスクを検出するマスク検出部をさらに有し、前記出力部は、前記マスク検出部が前記マスクを検出したか否かを示す情報を出力してもよい。
【0014】
前記画像取得部は、前記患者の身体において前記透析機器が接続されている出口部を含む前記撮像画像を取得し、前記分析部は、前記撮像画像に基づいて前記出口部の衛生の程度を評価し、前記出力部は、前記衛生の程度を示す情報を前記分析結果として出力してもよい。
【0015】
前記分析部は、前記撮像画像を入力することにより前記撮像画像に含まれている前記出口部の衛生の程度を示す情報を出力する機械学習モデルに前記撮像画像を入力することによって、前記出口部の衛生の程度を示す情報を取得してもよい。
【0016】
前記出力部は、前記出口部の衛生の程度が所定の条件を満たす場合に、所定の通知を出力することと、前記透析機器を停止させる情報を出力することとのうち少なくとも一方を行ってもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の画像解析方法は、プロセッサが実行する、透析機器を用いて腹膜透析を行っている患者又は前記患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得するステップと、前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者の姿勢を特定するステップと、前記姿勢に基づいて前記患者又は前記補助者が行っている前記腹膜透析の手順を分析するステップと、前記分析するステップによる分析結果を出力するステップと、を有する。
【0018】
本発明の第3の態様の画像解析システムは、画像取得装置と、前記画像取得装置と通信可能な画像解析装置とを備え、前記画像取得装置は、透析機器を用いて腹膜透析を行っている患者又は前記患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像に基づいて前記患者又は前記補助者の姿勢を特定する姿勢特定部と、前記姿勢を示す情報を前記画像解析装置へ送信する送信部と、を有し、前記画像解析装置は、前記姿勢を示す情報を前記画像取得装置から受信する受信部と、前記姿勢に基づいて前記患者又は前記補助者が行っている前記腹膜透析の手順を分析する分析部と、前記分析部による分析結果を出力する出力部と、を有する。
【0019】
前記画像解析装置の前記出力部は、ユーザから所定の入力を受け付けた場合、又は前記分析結果が所定の条件を満たす場合に、前記撮像画像の要求を前記画像取得装置へ送信し、前記画像取得装置の前記送信部は、前記画像解析装置から前記要求を受信したことを条件として、前記撮像画像を前記画像解析装置へ送信してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、腹膜透析の安全性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る画像解析システムの模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る画像解析システムのブロック図である。
【
図3】腹膜透析で用いられる透析機器の模式図である。
【
図4】画像取得部が取得した撮像画像を示す図である。
【
図5】画像取得部が取得した撮像画像を示す図である。
【
図6】画像取得部が取得した撮像画像を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る画像解析システムが実行する画像解析方法のシーケンス図である。
【
図8】第2の実施形態に係る画像解析システムのブロック図である。
【
図9】第2の実施形態に係る画像解析システムが実行する画像解析方法のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
[画像解析システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る画像解析システムSの模式図である。画像解析システムSは、宅内デバイス1と、透析機器2と、撮像装置3と、管理サーバ4と、情報端末5とを含む。画像解析システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0023】
宅内デバイス1、透析機器2及び撮像装置3は、患者に対する腹膜透析が実施される自宅や職場等の場所に設けられている。宅内デバイス1は、撮像装置3が撮像した撮像画像を撮像装置3から取得し、撮像画像を解析するコンピュータである。すなわち、宅内デバイス1は、画像解析装置として機能する。宅内デバイス1は、エッジデバイスともいう。
【0024】
透析機器2は、患者又は患者を補助する補助者による操作に応じて、患者の体内への透析液の注入と、患者の体内からの透析液の排出とを行うための器具である。患者を補助する補助者は、腹膜透析を実施するための作業を行う、患者以外の人間(例えば患者の家族、介護士等)である。また、透析機器2は、患者の体内への透析液の注入と、患者の体内からの透析液の排出とを、電気的に制御する制御装置を含んでもよい。
【0025】
より具体的には、透析機器2は、患者又は補助者の操作に応じて患者の体内の透析液を手動で交換するCAPD(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis)を実施する機器であってもよく、電気的な制御装置によって患者の体内の透析液を自動的に交換するAPD(Automated Peritoneal Dialysis)を実施する機器であってもよい。CAPD及びAPDのどちらの場合であっても、患者又は補助者は、患者に対する腹膜透析を実施するために、透析機器2を患者の腹部に埋め込まれた管に接続し、所定の手順で透析機器2の操作(例えばクランプの開閉やスイッチの操作)を行う必要がある。
【0026】
本実施形態において、患者又は補助者が腹膜透析を行うことは、患者に対する腹膜透析を実施するための作業であり、例えば透析機器2を患者の体に埋め込まれた管に接続すること、注液用バッグ及び排液用バッグの交換を行うこと、透析機器2自体を操作すること、患者の身体において管が埋め込まれている出口部の管理(観察、洗浄、消毒、薬品の塗布等)をすること、及びその他の腹膜透析関連の作業(記録をつけること等)のうち少なくとも1つを含む。
【0027】
撮像装置3は、透析機器2を用いて腹膜透析を行っている患者又は患者を補助する補助者を撮像する、少なくとも1つの撮像部(カメラ)を有する。撮像装置3は、腹膜透析を行っている患者又は補助者を撮像した撮像画像を宅内デバイス1へ出力する。撮像装置3が撮像する範囲は、患者又は補助者の全身であってもよく、患者又は補助者の体の一部であってもよい。撮像装置3は、宅内デバイス1と一体化されてもよく、宅内デバイス1との間で有線又は無線で信号を授受してもよい。
【0028】
管理サーバ4は、宅内デバイス1が出力した情報を記録するとともに、ユーザに対する情報を情報端末5へ出力するコンピュータである。ユーザは、例えば医師、看護師等の医療従事者である。管理サーバ4は、複数の宅内デバイス1及び複数の情報端末5に接続されてもよい。
【0029】
情報端末5は、ユーザの操作を受け付けるとともに、管理サーバ4が出力した情報を表示するコンピュータである。情報端末5は、管理サーバ4と一体化されてもよく、管理サーバ4との間で有線又は無線で信号を授受してもよい。情報端末5は、ユーザによる操作を受け付け可能なキーボード、マウス等の操作部と、情報を表示可能な液晶ディスプレイ等の表示部とを有する。
【0030】
本実施形態に係る画像解析システムSが画像を解析する処理の概要を以下に説明する。まず宅内デバイス1は、撮像装置3によって、透析機器2を用いて腹膜透析を行っている患者又は患者を補助する補助者を撮像し、撮像画像を取得する。
【0031】
宅内デバイス1は、取得した撮像画像に基づいて、腹膜透析を行っている患者又は補助者の姿勢を特定する。宅内デバイス1は、特定した姿勢に基づいて、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順を分析する。例えば宅内デバイス1は、後述のように、患者又は補助者の姿勢に基づいて、腹膜透析において不衛生な行為をしていることを検出することによって、腹膜透析の手順が正しいか否か(すなわち所定の基準に適合するか否か)を判定する。また、宅内デバイス1は、患者又は補助者の姿勢に基づいて、患者又は補助者が透析機器2のクランプ(締め具)等の部品がどのような順序で操作したかを特定し、特定した順序が所定の順序に沿っているかに基づいて、腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かを判定する。
【0032】
宅内デバイス1は、撮像画像を用いた分析結果を、管理サーバ4へ送信する。さらに宅内デバイス1は、腹膜透析の手順が正しくないと判定した場合に、撮像画像を管理サーバ4へ送信する。管理サーバ4は、宅内デバイス1から受信した分析結果及び撮像画像を情報端末5に表示させる。
【0033】
このように本実施形態に係る画像解析システムSは、腹膜透析を行っている患者又は患者を補助する補助者を撮像した撮像画像に基づいて、患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順を分析し、分析結果を医療従事者等のユーザに対して出力する。そのため、医療従事者等のユーザは、患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順に基づいて患者又は補助者に対して適切な指導を行うことができ、患者に対する腹膜透析の安全性を向上できる。
【0034】
[画像解析システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る画像解析システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0035】
宅内デバイス1は、制御部11と、記憶部12とを有する。制御部11は、画像取得部111と、姿勢特定部112と、マスク検出部113と、部品特定部114と、分析部115と、出力部116とを有する。記憶部12は、画像記憶部121と、分析基準記憶部122と、分析結果記憶部123とを有する。
【0036】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、宅内デバイス1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部11との間でデータの授受を行ってもよい。画像記憶部121は、撮像装置3が撮像した撮像画像を記憶する。分析基準記憶部122は、分析を行うための基準値や機械学習モデル等、分析に用いる情報を記憶する。分析結果記憶部123は、撮像画像を用いた分析結果を記憶する。画像記憶部121、分析基準記憶部122及び分析結果記憶部123は、それぞれ記憶部12上の記憶領域であってもよく、あるいは記憶部12上で構成されたデータベースであってもよい。
【0037】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、画像取得部111、姿勢特定部112、マスク検出部113、部品特定部114、分析部115及び出力部116として機能する。制御部11の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、制御部11がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0038】
管理サーバ4は、制御部41と、記憶部42とを有する。制御部41は、受信部411と、分析部412と、出力部413とを有する。記憶部42は、画像記憶部421と、分析基準記憶部422と、分析結果記憶部423とを有する。
【0039】
記憶部42は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部42は、制御部41が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部42は、管理サーバ4の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部41との間でデータの授受を行ってもよい。画像記憶部421は、撮像装置3が撮像した撮像画像を記憶する。分析基準記憶部422は、分析を行うための基準値や機械学習モデル等、分析に用いる情報を記憶する。分析結果記憶部423は、撮像画像を用いた分析結果を記憶する。画像記憶部421、分析基準記憶部422及び分析結果記憶部423は、それぞれ記憶部42上の記憶領域であってもよく、あるいは記憶部42上で構成されたデータベースであってもよい。
【0040】
制御部41は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部42に記憶されたプログラムを実行することにより、受信部411、分析部412及び出力部413として機能する。制御部41の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部41の機能の少なくとも一部はネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る画像解析システムSは、
図2に示す具体的な構成に限定されない。宅内デバイス1及び管理サーバ4は、それぞれ1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0042】
[透析機器2の構成]
図3は、腹膜透析で用いられる透析機器2の模式図である。透析機器2は、患者の腹部に埋め込まれた管と、患者の体内へ注入する前の透析液を保持する注液用バッグB1と、患者の体内から排出された後の透析液を保持する排液用バッグB2とを接続し、それらの間の透析液の輸送を制御する器具である。
【0043】
透析機器2は、管21(チューブ)を介して、患者の腹部に埋め込まれた管と、注液用バッグB1と、排液用バッグB2とを連通させる。管21は、患者の腹部に埋め込まれた管に接続するための患者側コネクタ22と、注液用バッグB1に接続するための注液側コネクタ23と、排液用バッグB2に接続するための排液側コネクタ24とを有する。管21は、分岐部25によって、患者の腹部に埋め込まれた管、注液用バッグB1及び排液用バッグB2への3方向に分岐されている。
【0044】
管21の途中には、ユーザによる操作に応じて開状態と閉状態との間で切り替えられる複数のクランプ26(締め具)が設けられている。開状態のクランプ26は、管21の中を透析液が通過可能にする。閉状態のクランプ26は、管21の中を透析液が通過不可能にする。クランプ26は開状態と閉状態とで形状が変化するため、宅内デバイス1は撮像画像中の外観に基づいてクランプ26が開状態及び閉状態のいずれにあるかを特定可能である。
【0045】
図3の例では、複数のクランプ26は、患者側クランプ26a、注液側クランプ26b及び排液側クランプ26cを含む。患者側コネクタ22と分岐部25との間には、患者側クランプ26aが設けられている。注液側コネクタ23と分岐部25との間には、注液側クランプ26bが設けられている。排液側コネクタ24と分岐部25との間には、排液側クランプ26cが設けられている。複数のクランプ26は、
図3の例に限られず、その他の数であってもよく、その他の位置に設けられてもよい。
【0046】
複数のクランプ26には互いに異なる色又は模様が付されているため、宅内デバイス1は撮像画像中の外観に基づいて複数のクランプ26それぞれを特定可能である。また、複数のクランプ26を互いに異なる形状にすることによって、宅内デバイス1が撮像画像中の外観に基づいて複数のクランプ26それぞれを特定可能にしてもよい。
【0047】
透析機器2は、
図3に示した構成に限られず、その他の構成であってもよい。例えば透析機器2は、透析液の輸送を電気的に制御する制御装置を含んでもよい。この場合には、制御装置は、管21を介して患者の腹部に埋め込まれた管に接続され、透析液の注入及び排出を電気的に制御する。制御装置と患者の腹部に埋め込まれた管とを接続する管21の途中には複数のクランプ26が設けられており、患者又は補助者は制御装置による制御を開始する前後に複数のクランプ26を操作する。
【0048】
[画像解析方法の説明]
以下、本実施形態に係る画像解析システムSが実行する画像解析方法を詳細に説明する。まず宅内デバイス1は、撮像装置3によって、患者又は補助者の撮像を開始する。このとき宅内デバイス1は、患者又は補助者が所定の操作(例えば宅内デバイス1又は透析機器2に設けられた開始ボタンの押下)を行った場合に、撮像を開始する。別の方法として、宅内デバイス1は、所定の条件(例えば透析機器2が含む制御装置の電源が入れられたこと)が満たされた場合に、自動的に撮像を開始してもよい。また、宅内デバイス1は、患者又は補助者が所定の操作(例えば宅内デバイス1又は透析機器2に設けられた終了ボタンの押下)を行った場合、又は所定の条件(例えば透析機器2が含む制御装置の電源が切られたこと)が満たされた場合に、撮像を終了する。宅内デバイス1は、撮像が開始されてから終了されるまでの撮像画像をまとめて分析してもよく、撮像が開始されてから所定時間ごとの撮像画像を逐次分析してもよい。
【0049】
宅内デバイス1において、画像取得部111は、撮像装置3が撮像した、透析機器2を用いて腹膜透析を行っている患者又は補助者を撮像した撮像画像を取得し、画像記憶部121に記憶させる。撮像画像は、動画像であってもよく、所定の時間間隔で撮像された複数の静止画像であってもよい。撮像画像は、1つの撮像範囲を撮像した1つの画像であってもよく、同時に異なる複数の撮像範囲を撮像した複数の画像の組であってもよい。
【0050】
図4は、画像取得部111が取得した撮像画像IMを示す図である。
図4は、撮像画像IMの中で患者を含む領域を表している。姿勢特定部112は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、患者の姿勢Pを特定する。姿勢特定部112が特定する姿勢Pは、患者の全身の姿勢であってもよく、患者の特定部位の位置であってもよい。例えば、姿勢特定部112は、姿勢推定モデルを用いて、撮像画像IMに含まれている人間が備える複数の関節点の座標を算出し、算出した複数の関節点の座標の組を患者の姿勢Pとして特定する。姿勢特定部112は、ここに示した方法に限られず、人間の姿勢Pを推定可能な既知の姿勢推定方法を用いることができる。姿勢特定部112は、特定した患者の姿勢P(例えば患者の複数の関節点の座標)を示す姿勢情報を出力する。また、姿勢特定部112は、同様の方法で、撮像画像に基づいて補助者の姿勢を特定してもよい。
【0051】
マスク検出部113は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、患者又は補助者が着用しているマスクMを検出する。例えば、マスク検出部113は、物体認識モデルを用いて、撮像画像IMに含まれているマスクMを検出する。マスク検出部113は、ここに示した方法に限られず、マスクMを検出可能な既知の物体検出方法を用いることができる。マスク検出部113は、患者又は補助者が着用しているマスクMを検出したか否か(例えばマスクMの座標)を示すマスク検出情報を出力する。このようにマスク検出部113は、患者又は補助者がマスクMを装着しているか否かを示す情報を出力することによって、患者又は補助者が衛生的な状態で腹膜透析を行っているかを判定可能にすることができる。
【0052】
図5は、画像取得部111が取得した撮像画像IMを示す図である。
図5は、撮像画像IMの中で透析機器2の複数のクランプ26(患者側クランプ26a、注液側クランプ26b及び排液側クランプ26c)を含む領域を表している。部品特定部114は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、透析機器2が備える複数の部品である複数のクランプ26それぞれの位置及び状態を特定する。例えば、部品特定部114は、物体認識モデルを用いて、撮像画像IMに含まれている複数のクランプ26それぞれの位置を特定するとともに、複数のクランプ26それぞれが開状態及び閉状態のいずれにあるかを特定する。上述のように複数のクランプ26の色や形状に基づいて、撮像画像IMから複数のクランプ26それぞれの位置及び状態が特定可能である。部品特定部114は、ここに示した方法に限られず、クランプ26の状態を特定可能な既知の物体検出方法を用いることができる。部品特定部114は、特定した複数のクランプ26それぞれの位置及び状態を示す部品情報を出力する。部品特定部114は、クランプ26に限らず、透析機器2が備えるその他の部品の位置及び状態を示す部品情報を出力してもよい。
【0053】
姿勢特定部112による姿勢Pの特定、マスク検出部113によるマスクMの検出、及び部品特定部114によるクランプ26の特定は、並行して行われてもよく、任意の順序で行われてもよい。
【0054】
分析部115は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢に基づいて、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順を分析する。分析部115による腹膜透析の手順の分析は、患者又は補助者が腹膜透析において不衛生な行為をしているかの分析と、患者又は補助者が複数のクランプ26を正しい順序で操作しているかの分析とを含む。具体的には、まず分析部115は、姿勢特定部112が姿勢Pを特定するために用いた撮像画像のタイムスタンプと、部品特定部114がクランプ26の状態を特定するために用いた撮像画像のタイムスタンプとを関連付けることによって、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、部品特定部114が出力した部品情報との時刻を合わせる。
【0055】
次に分析部115は、姿勢情報が複数の人間の姿勢Pを含む場合に、いずれか1人の姿勢Pを患者の姿勢Pとして選択する。例えば、分析部115は、過去の姿勢情報に基づいて患者の姿勢Pを選択する。この場合に、分析部115は、あるタイミングで特定された複数の人間の姿勢Pのうち、時系列における1つ前のタイミングで特定された患者の姿勢Pに最も近い姿勢Pを、患者の姿勢Pとして選択する。別の方法として、分析部115は、あるタイミングで特定された複数の人間の姿勢Pのうち、クランプ26に最も近い姿勢Pを、患者の姿勢Pとして選択してもよい。
【0056】
次に分析部115は、患者又は補助者が腹膜透析において行う不衛生な行為として、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢に基づいて、透析機器2以外の物体に触れた回数を算出する。例えば分析部115は、患者が患者自身の頭部に触れた回数を算出する。頭部は、患者の顔や毛髪を含む。このとき分析部115は、患者の姿勢Pにおける手の位置と頭部の位置との間の距離を算出し、該距離が所定値以下となった場合に患者が頭部に触れた回数に1を加算することによって、患者が頭部に触れた回数を算出する。分析部115は、患者の頭部に限らず、患者又は補助者が腹膜透析中に触れるべきではないその他の物体に触れた回数を算出してもよい。そして分析部115は、算出した回数に基づいて、腹膜透析の手順の衛生の程度を評価する。
【0057】
例えば分析部115は、算出した回数が大きいほど衛生の程度を示すスコアを低く算出し、算出した回数が小さいほど衛生の程度を示すスコアを高く算出する。分析部115は、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数と、該回数に基づいて評価した衛生の程度を示す情報(スコア)とを、分析結果として分析結果記憶部123に記憶させる。このように分析部115は患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数を算出することによって、医療従事者等のユーザは患者又は補助者が腹膜透析において不衛生な行為をしていることを把握でき、適切な指導を行うことができる。
【0058】
次に分析部115は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢と、部品特定部114が出力した部品情報が示す複数の部品それぞれの位置及び状態とに基づいて、患者又は補助者が部品の操作を行ったか否かを判定する。以下では、透析機器2が備える部品としてクランプ26を用いて、分析部115が行う処理を説明する。
【0059】
分析部115は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢と、部品特定部114が出力した部品情報が示す複数のクランプ26それぞれの位置及び状態の少なくとも一方とに基づいて、患者又は補助者がクランプ26の操作を行ったか否かを判定する。このとき分析部115は、患者の姿勢P又は補助者の姿勢における手の位置と、複数のクランプ26それぞれの位置との間の距離を算出し、該距離が所定値以下となった場合に患者又は補助者がクランプ26に触れた(すなわちクランプ26を操作した)と判定する。
【0060】
分析部115は、患者又は補助者がクランプ26に触れたと判定した場合に、患者又は補助者が触れたクランプ26の識別情報(すなわち患者又は補助者が複数のクランプ26のいずれに触れたか)と、患者又は補助者が該クランプ26に触れた時刻と、患者又は補助者が触れた際の該クランプ26の状態とを関連付ける。クランプ26の状態は、例えばクランプ26が開状態及び閉状態のどちらであるかを示す情報である。分析部115は、腹膜透析の開始から終了までの撮像画像IMについて、患者によるクランプ26の操作の判定を時系列で繰り返すことによって、患者又は補助者が複数のクランプ26を操作した順序を特定する。
【0061】
また、分析部115は、クランプ26の状態を用いず、患者又は補助者の姿勢とクランプ26の位置とに基づいて、患者又は補助者が複数のクランプ26を操作した順序を特定してもよい。この場合には、分析部115は、患者又は補助者が触れたクランプ26の識別情報と、患者又は補助者が該クランプ26に触れた時刻とを関連付けることによって、患者又は補助者が複数のクランプ26を操作した順序を特定する。このような構成により、分析部115は、透析機器2の部品の状態変化を特定しない場合であっても、患者又は補助者の姿勢と部品の位置との間の関係に基づいて、部品の操作順序を推定できる。
【0062】
分析部115は、特定した順序を、分析基準記憶部122に予め記憶された所定の基準順序と比較する。基準順序は、透析機器2に含まれる複数のクランプ26がどのような順序で、どのように操作されるか(例えばクランプ26が開状態と閉状態のどちらに切り替えられるか、又はクランプ26が触れられたか)を示す情報である。分析部115は、特定した順序が基準順序と合致していない場合(すなわち所定の基準の適合していない場合)に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しくないと判定し、そうでない場合に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しいと判定する。このように分析部115は複数のクランプ26の操作順序に基づいて腹膜透析の手順を分析することによって、高精度に腹膜透析の手順が正しいか否か(すなわち所定の基準に適合するか否か)を判定できる。
【0063】
分析部115は、クランプ26に限らず、透析機器2が備えるその他の部品(例えば注液用バッグB1や排液用バッグB2)を患者又は補助者が操作した順序を特定し、特定した順序に基づいて腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かを判定してもよい。この場合には、分析部115は、患者又は補助者の姿勢と、透析機器2の部品の位置及び状態の少なくとも一方とに基づいて、患者又は補助者が透析機器2の部品を操作した順序を特定する。
【0064】
分析部115は、患者又は補助者が複数の部品(クランプ26)を操作した順序と、該順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定とを、分析結果として分析結果記憶部123に記憶させる。
【0065】
図6(a)、
図6(b)は、画像取得部111が取得した撮像画像IMを示す図である。
図6(a)、
図6(b)は、撮像画像IMの中で患者の身体において透析機器2が接続されている出口部を含む領域を表している。出口部は、患者の身体の腹部において、透析機器2に接続される管(カテーテル)が予め埋め込まれている部分である。出口部の管が透析機器2の管21に接続されることにより、患者の体内(腹腔内)と透析機器2の管21とが連通し、透析液の注入及び排出が可能になる。
【0066】
出口部の周辺が不衛生になると、細菌等の感染が起こり得る。出口部に感染が起こった状態で腹膜透析を続けると、細菌等が患者の体内に侵入し、より重篤な腹膜炎等の感染症が発生するおそれがある。
図6(a)は出口部に感染が起こっていない状態を表しており、
図6(b)は出口部に感染が起こっている状態を表している。
図6(a)、
図6(b)に示すように、撮像画像IMに含まれている出口部の外観と出口部の衛生の程度とは相関性がある。そこで、分析部115は、撮像画像IMに基づいて、出口部の衛生の程度の評価を行う。
【0067】
分析基準記憶部122には、画像を入力することにより画像に含まれている出口部の衛生の程度を示す情報(スコア)を出力する機械学習モデルを示す情報が予め記憶されている。機械学習モデルは、予め画像と、該画像に含まれている出口部の衛生の程度を示すスコア(点数)とを、既知の機械学習方法によって学習することによって生成される。衛生の程度のスコアは、例えば腫脹の大きさ、痂皮の大きさ、発赤の大きさ、疼痛の強さ、及び滲出液の種類に応じて決定される値である。本実施形態において、スコアが高いほど衛生状態が悪いように、スコアが決定される。スコアは、ここに示した定義に限定されない。
【0068】
分析部115は、分析基準記憶部122に予め記憶されている機械学習モデルに、撮像画像IMを入力することによって、出口部の衛生の程度を示すスコアを取得する。分析部115は、取得した出口部の衛生の程度を示すスコアを、分析結果として分析結果記憶部123に記憶させる。医療従事者等のユーザが撮像画像IMから出口部の衛生の程度を毎回判定するには大きな手間が掛かるが、分析部115は、機械学習モデルを用いることによって自動的に出口部の衛生の程度を評価できる。
【0069】
本実施形態において分析部115は宅内に設置された撮像装置3が撮像した撮像画像IMを用いているが、患者又は補助者が有する通信端末(スマートフォン等)の撮像部を用いて撮像した撮像画像IMを用いてもよい。この場合に、患者又は補助者は、腹膜透析の開始時、途中及び終了時のいずれかのタイミングで、通信端末の撮像部を用いて出口部を撮像する。宅内デバイス1の画像取得部111は、通信端末が撮像した出口部を含む撮像画像IMを、通信によって取得する。そして分析部115は、通信端末から取得した撮像画像IMを用いて、出口部の衛生の程度を示すスコアを取得する。
【0070】
さらに分析部115は、撮像画像IMに含まれている患者及び透析機器2の周囲の環境に基づいて、衛生の程度を評価してもよい。例えば分析部115は、既知の物体検出方法を用いて、撮像画像IMにおいて患者及び透析機器2の周囲に不衛生な要因となる所定の物体(食品やゴミ)を検出する。そして分析部115は、撮像画像IMに含まれている出口部の状態に加えて、検出した物体の数及び種類に基づいて、衛生の程度を示す情報(スコア)を算出する。これにより分析部115は、患者及び透析機器2の周囲の環境を考慮して衛生の程度を評価できる。
【0071】
さらに分析部115は、患者の生体情報、患者の投薬情報、及び患者の体内から排出された透析液の排液情報のうち少なくとも1つに基づいて、衛生の程度を評価してもよい。この場合には、分析部115は、患者の身体に設けられたセンサから、体温、血圧、脈拍数等の生体情報を取得する。また、分析部115は、記憶部12に予め記憶された患者の投薬情報(薬剤名等)を取得する。また、分析部115は、透析機器2に設けられたセンサから、患者の体内から排出された後の透析液の色、成分等の排液情報を取得する。
【0072】
そして分析部115は、撮像画像IMに含まれている出口部の状態に加えて、取得した生体情報、投薬情報、及び排液情報に基づいて、衛生の程度を示す情報(スコア)を算出する。具体的には、分析部115は、生体情報が通常の患者の状態と異なること(例えば発熱していること)を示す場合に、スコアに所定値を加算する。これは、患者が通常の状態ではない場合に、患者が感染症にかかっているおそれがあるためである。
【0073】
また、分析部115は、投薬情報が所定の薬剤(例えば糖尿病の処方薬)の投与を示す場合に、スコアに所定値を加算する。これは、糖尿病等の患者は感染症のリスクが高いためである。また、分析部115は、排液情報が通常の排液の状態と異なること(例えば排液が濁っていること)を示す場合に、スコアに所定値を加算する。これは、排液が通常の状態ではない場合に、患者が感染症にかかっているおそれがあるためである。
【0074】
このように分析部115は出口部を含む撮像画像IMに加えて、生体情報、投薬情報、及び排液情報に基づいて、衛生の程度を示すスコアを算出することによって、より高精度に衛生の程度を評価できる。
【0075】
出力部116は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、マスク検出部113が出力したマスク検出情報と、部品特定部114が出力した部品情報と、分析部115による分析結果とを、管理サーバ4へ送信することによって出力する。分析結果は、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数、該回数に基づいて評価した衛生の程度を示す情報、患者又は補助者が複数の部品(クランプ26)を操作した順序、該順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定、及び出口部の衛生の程度を示すスコアを含む。分析結果は、これらの情報のうち一部のみを管理サーバ4へ送信してもよい。出力部116は、管理サーバ4への送信に限られず、記憶装置へのデータの記録、プリンタを用いた紙への印刷、スピーカを用いた音声の出力等、その他の方法で分析結果を出力してもよい。
【0076】
さらに出力部116は、患者又は補助者が複数の部品(クランプ26)を操作した順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定が、所定の条件(例えば腹膜透析の手順が正しくないこと)を満たす場合に、撮像画像IMを管理サーバ4へ送信する。これにより、出力部116は例えば腹膜透析の手順に異常があると判定された場合にのみ撮像画像を宅内デバイス1の外部へ送信するため、宅内デバイス1が行う通信のデータ量を削減することができる。
【0077】
さらに出力部116は、出口部の衛生の程度を示すスコアが、分析基準記憶部122に予め記憶された所定の条件を満たす場合に、患者及びユーザの少なくとも一方に対する通知を出力してもよい。通知を出力する条件は、例えばスコアが所定値以上であることである。通知は、出口部の衛生状態が悪い旨を含み、患者又は補助者が有する通信端末(スマートフォン等)、又はユーザが用いる情報端末5へ送信され、画面表示又は音声によって出力される。また、出口部の衛生の程度を示すスコアが所定の条件を満たす場合であって、透析機器2が透析液の輸送を電気的に制御する制御装置を含む場合に、出力部116は、透析機器2を停止させる情報(信号)を出力してもよい。透析機器2を停止させる条件は、例えばスコアが所定値以上であることである。これにより、出力部116は、出口部の衛生の程度を示すスコアに基づいて患者又はユーザへフィードバックを行うことができる。
【0078】
通知を出力する条件と、透析機器2を停止させる条件とは、互いに異なっていてもよい。これにより出力部116は、例えば衛生の程度が第1の条件を満たす場合に通知を出力し、衛生の程度が第1の条件とは異なる第2の条件を満たす場合に透析機器2を強制的に停止させることができる。
【0079】
管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報、マスク検出情報、部品情報及び分析結果を受信し、分析結果記憶部423に記憶させる。また、受信部411は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMを受信し、画像記憶部421に記憶させる。
【0080】
分析部412は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報、マスク検出情報、部品情報及び分析結果を取得する。そして分析部412は、取得した姿勢情報、マスク検出情報、部品情報及び分析結果に対して追加の分析を行う。例えば分析部412は、分析結果が含む患者又は補助者が透析機器2の複数の部品(クランプ26)を操作した順序に含まれる複数のステップそれぞれの操作時間を算出する。具体的には、分析部412は、患者又は補助者が複数のクランプ26を操作した順序において、患者又は補助者が複数のクランプ26のうち少なくとも1つの操作を開始してから(例えばクランプ26に触れてから)、該クランプ26の操作を終了するまで(例えばクランプ26を離すまで)の時間を、1つのステップの操作時間として算出する。分析部412は、腹膜透析の開始から終了までの撮像画像IMについて操作時間の算出を時系列で繰り返すことによって、患者又は補助者が複数のクランプ26を操作した順序に含まれる複数のステップそれぞれの操作時間を算出する。
【0081】
分析部412は、算出した複数のステップそれぞれの操作時間に基づいて腹膜透析の手順が円滑か否かを判定し、腹膜透析の手順が円滑か否かを示す情報を、分析結果として出力する。例えば分析部412は、算出した複数のステップのうち少なくとも1つの操作時間が所定の基準時間よりも長い場合に、腹膜透析の手順が円滑でないと判定し、そうでない場合に、腹膜透析の手順が円滑であると判定する。このように分析部412は複数のステップそれぞれの操作時間を算出することによって、医療従事者等のユーザは患者又は補助者がどのステップで戸惑っているかを把握でき、適切な指導を行うことができる。分析部412は、ここに示した分析に限られず、その他の分析を行ってもよい。
【0082】
画像解析システムSにおいて、宅内デバイス1(エッジデバイス)は、各家庭に設けられるため低い計算能力を有し、管理サーバ4は、宅内デバイス1よりも高い計算能力を有することが想定される。このような構成の場合に、管理サーバ4の分析部412が、宅内デバイス1で行われていない追加の分析を行うことによって、宅内デバイス1の負荷を抑えることができる。一方、管理サーバ4は、分析部412による分析を省略し、宅内デバイス1が送信した分析結果をそのまま用いてもよい。
【0083】
出力部413は、宅内デバイス1が送信した分析結果及び分析部412が出力した分析結果を、情報端末5へ送信することによって出力する。情報端末5は、管理サーバ4が送信した分析結果を、画面表示又は音声によって出力する。また、出力部413は、宅内デバイス1が送信したマスク検出情報を情報端末5へ送信してもよい。また、出力部413は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMを情報端末5へ送信してもよい。
【0084】
[画像解析方法のシーケンス]
図7は、本実施形態に係る画像解析システムSが実行する画像解析方法のシーケンス図である。まず宅内デバイス1は、撮像装置3によって、患者又は補助者の撮像を開始する。画像取得部111は、撮像装置3が撮像した、透析機器2を用いて腹膜透析を行っている患者又は患者を補助する補助者を撮像した撮像画像を取得する(S11)。
【0085】
姿勢特定部112は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、患者の姿勢P又は補助者の姿勢を特定する(S12)。マスク検出部113は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、患者又は補助者が着用しているマスクMを検出する(S13)。部品特定部114は、画像取得部111が取得した撮像画像に基づいて、複数の部品(クランプ26)それぞれの位置及び状態を特定する(S14)。
【0086】
分析部115は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢に基づいて、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数を算出する(S15)。分析部115は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報が示す患者の姿勢P又は補助者の姿勢と、部品特定部114が出力した部品情報が示す複数の部品それぞれの位置及び状態の少なくとも一方とに基づいて、患者又は補助者が部品の操作を行ったか否かを判定する。分析部115は、患者による部品の操作の判定を時系列で繰り返すことによって、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序を特定する(S16)。
【0087】
分析部115は、算出した回数に基づいて、衛生の程度を示す情報(スコア)を算出する。また、分析部115は、特定した順序が基準順序と合致していない場合(すなわち所定の基準に適合していない場合)に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しくないと判定し、そうでない場合に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しいと判定する(S17)。
【0088】
分析部115は、撮像画像IMに基づいて、出口部の衛生の程度の評価を行う(S18)。出力部116は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、マスク検出部113が出力したマスク検出情報と、部品特定部114が出力した部品情報と、分析部115による分析結果とを、管理サーバ4へ送信することによって出力する(S19)。このとき出力部116は、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定が、所定の条件(例えば腹膜透析の手順が正しくないこと)を満たす場合に、撮像画像IMを管理サーバ4へ送信してもよい。
【0089】
管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報、マスク検出情報、部品情報及び分析結果を受信する。分析部412は、分析結果が含む患者又は補助者が複数の部品を操作した順序に含まれる複数のステップそれぞれの操作時間を算出する(S20)。分析部412は、算出した複数のステップそれぞれの操作時間を、分析結果として出力する。
【0090】
出力部413は、宅内デバイス1が送信した分析結果及び分析部412が出力した分析結果を、情報端末5へ送信することによって出力する(S21)。情報端末5は、管理サーバ4が送信した分析結果を、画面表示又は音声によって出力する。
【0091】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る画像解析システムSは、腹膜透析を行っている患者又は患者を補助する補助者を撮像した撮像画像から患者の姿勢又は補助者の姿勢を特定し、特定した姿勢に基づいて患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順を分析し、分析結果を医療従事者等のユーザに対して出力する。そのため、医療従事者等のユーザは、患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順に基づいて患者に対して適切な指導を行うことができ、患者に対する腹膜透析の安全性を向上できる。
【0092】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では宅内デバイス1が主に分析を行うのに対して本実施形態では管理サーバ4が主に分析を行う。以下、第1の実施形態とは異なる構成について説明する。
【0093】
図8は、本実施形態に係る画像解析システムSのブロック図である。本実施形態に係る宅内デバイス1は、
図2の構成とは異なり、分析部115を有していない。その代わりに、管理サーバ4の分析部412は、第1の実施形態において分析部115が行っていた分析を行う。すなわち、本実施形態において、宅内デバイス1は画像取得装置として機能し、管理サーバ4は画像解析装置として機能する。
【0094】
具体的には、宅内デバイス1において、出力部116は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、マスク検出部113が出力したマスク検出情報と、部品特定部114が出力した部品情報とを、分析に用いる情報として管理サーバ4へ送信することによって出力する。第1の実施形態とは異なり、出力部116は分析結果を送信しない。出力部116は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、部品特定部114が出力した部品情報との時刻を合わせてから送信してもよい。
【0095】
管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報、マスク検出情報及び部品情報を、分析に用いる情報として受信する。分析部412は、第1の実施形態の分析部115と同様に、宅内デバイス1が送信した姿勢情報に基づいて、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数を算出し、算出した回数に基づいて腹膜透析の手順の衛生の程度を評価する。分析部412は、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数と、該回数に基づいて評価した衛生の程度を示す情報とを、分析結果として分析結果記憶部423に記憶させる。
【0096】
また、分析部412は、第1の実施形態の分析部115と同様に、宅内デバイス1が送信した姿勢情報及び部品情報に基づいて、患者又は補助者が複数の部品(クランプ26)を操作した順序を特定し、特定した順序に基づいて腹膜透析の手順が正しいか否か(すなわち所定の基準に適合するか否か)を判定する。分析部412は、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序と、該順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定とを、分析結果として分析結果記憶部423に記憶させる。
【0097】
また、分析部412は、第1の実施形態と同様に、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序に含まれる複数のステップそれぞれの操作時間を算出する。分析部412は、算出した複数のステップそれぞれの操作時間を、分析結果として分析結果記憶部423に記憶させる。
【0098】
出力部413は、分析部412による分析結果を、情報端末5へ送信することによって出力する。情報端末5は、管理サーバ4が送信した分析結果を、画面表示又は音声によって出力する。また、出力部413は、宅内デバイス1が送信したマスク検出情報を情報端末5へ送信してもよい。本実施形態において、宅内デバイス1は分析を行わないため、宅内デバイス1の計算能力を低く構成でき、患者の宅内に宅内デバイス1を導入するためのコストを削減できる。
【0099】
分析部412は、撮像画像IMに基づいて、出口部の衛生の程度の評価を行ってもよい。この場合には、宅内デバイス1の出力部116は、姿勢情報、マスク検出情報及び部品情報に加えて、撮像画像IMを、管理サーバ4へ送信する。管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMを受信し、画像記憶部421に記憶させる。分析部412は、第1の実施形態の分析部115と同様に、撮像画像IMに基づいて、出口部の衛生の程度の評価を行う。分析部412は、取得した出口部の衛生の程度を示すスコアを、分析結果として分析結果記憶部423に記憶させる。これにより、宅内デバイス1ではなく管理サーバ4が、出口部の衛生の程度を評価できる。
【0100】
情報端末5は、分析結果を参照した医療従事者等のユーザから、撮像画像IMを要求するための入力を受け付けてもよい。情報端末5がユーザから撮像画像IMを要求するための入力を受け付けた場合に、出力部413は、撮像画像IMの要求を宅内デバイス1へ送信する。また、出力部413は、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序に基づいた腹膜透析の手順が所定の基準に適合するか否かの判定が、所定の条件(例えば腹膜透析の手順が正しくないこと)を満たす場合に、自動的に撮像画像IMの要求を宅内デバイス1へ送信してもよい。
【0101】
宅内デバイス1において、出力部116は、管理サーバ4から撮像画像IMの要求を受信したことを条件として、次回の腹膜透析(すなわち出力部116が撮像画像IMの要求を受信した後の最初の腹膜透析)において撮像される撮像画像IMを、管理サーバ4へ送信する。管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMを受信し、画像記憶部421に記憶させる。出力部413は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMを情報端末5へ送信する。このような構成により、宅内デバイス1は、撮像画像IMを記録していない場合であっても、ユーザの要求に応じて次回の撮像画像IMを管理サーバ4へ送信し、ユーザが撮像画像IMを確認可能にすることができる。
【0102】
[画像解析方法のシーケンス]
図9は、本実施形態に係る画像解析システムSが実行する画像解析方法のシーケンス図である。ステップS11~S14は、
図7と同様である。出力部116は、姿勢特定部112が出力した姿勢情報と、マスク検出部113が出力したマスク検出情報と、部品特定部114が出力した部品情報とを、分析に用いる情報として管理サーバ4へ送信することによって出力する(S15’)。
【0103】
管理サーバ4において、受信部411は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報、マスク検出情報及び部品情報を、分析に用いる情報として受信する。分析部412は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報に基づいて、患者又は補助者が透析機器2以外の物体に触れた回数を算出し、算出した回数に基づいて腹膜透析の手順の衛生の程度を評価する(S16’)。分析部412は、宅内デバイス1が送信した姿勢情報及び部品情報に基づいて、患者又は補助者が透析機器2の複数の部品(クランプ26)を操作した順序を特定する(S17’)。
【0104】
分析部412は、算出した回数に基づいて、衛生の程度を示す情報(スコア)を算出する。また、分析部412は、特定した順序が基準順序と合致していない場合に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しくないと判定し、そうでない場合に、患者又は補助者が行っている腹膜透析の手順が正しいと判定する(S18’)。
【0105】
分析部412は、宅内デバイス1が送信した撮像画像IMに基づいて、出口部の衛生の程度の評価を行う(S19’)。分析部412は、患者又は補助者が複数の部品を操作した順序に含まれる複数のステップそれぞれの操作時間を算出する(S20’)。
【0106】
出力部413は、分析部412による分析結果を、情報端末5へ送信することによって出力する(S21’)。情報端末5は、管理サーバ4が送信した分析結果を、画面表示又は音声によって出力する。
【0107】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る画像解析システムSによれば、第1の実施形態と同様に、医療従事者等のユーザは、患者又は補助者が実際に行っている腹膜透析の手順に基づいて患者に対して適切な指導を行うことができ、患者に対する腹膜透析の安全性を向上できる。さらに、宅内デバイス1ではなく管理サーバ4が主に分析を行うため、宅内デバイス1を導入するためのコストを削減できる。
【0108】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0109】
宅内デバイス1及び管理サーバ4のプロセッサは、
図7、
図9に示す画像解析方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、宅内デバイス1及び管理サーバ4のプロセッサは、
図7、
図9に示す画像解析方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して画像解析システムSの各部を制御することによって、
図7、
図9に示す画像解析方法を実行する。
図7、
図9に示す画像解析方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0110】
S 画像解析システム
1 宅内デバイス
11 制御部
111 画像取得部
112 姿勢特定部
113 マスク検出部
114 部品特定部
115 分析部
116 出力部
4 管理サーバ
41 制御部
411 受信部
412 分析部
413 出力部