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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240307BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F02F11/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121178
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018225
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石野 優子
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-099951(JP,U)
【文献】特開2003-021237(JP,A)
【文献】実開昭60-124557(JP,U)
【文献】実開昭62-028963(JP,U)
【文献】実開昭49-016648(JP,U)
【文献】特開2011-7248(JP,A)
【文献】米国特許第3386746(US,A)
【文献】実開昭60-188854(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦形状面とそれに連続して形成された円弧形状面とを有する一方部材と、該一方部材の前記平坦形状面と合体する平坦形状面とそれに連続して形成され前記円弧形状面と合体する円弧形状面とを有するとともに前記一方部材と相対して接合する他方部材との間をシールする弾性体製のガスケットであって、
前記一方部材に形成された溝に嵌め入れられて装着されるガスケット本体と、
前記ガスケット本体の両側部から溝幅方向に突出して形成される鍔部とを備え、
前記ガスケット本体は、前記一方部材及び前記他方部材の前記平坦形状面に沿って形成される平坦形状部と、前記一方部材及び前記他方部材の前記円弧形状面に沿って形成される円弧形状部と、前記平坦形状部と前記円弧形状部とが交差する角部とを有し、
前記円弧形状部は、前記他方部材の円弧形状面に対向する面が前記平坦形状部に向けて傾斜するテーパー部を有し、
前記角部は、前記平坦形状部より前記他方部材の平坦形状面側へ向けて突出して形成された突出部を有していることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1において、
前記突出部における前記鍔部の厚みは、前記平坦形状部に対応する部位から前記角部に対応する部位に向けて漸次厚みが大きくなるように形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項2において、
前記突出部における前記鍔部の下面は、前記角部に対応する部位に向けて傾斜して形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記角部と、該角部と連続する前記鍔部との間には、他の部位より厚みが厚い肉盛り部が形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項4において、
前記肉盛り部は、断面視において、前記鍔部に向けて幅寸法が漸次大きくなるように形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記肉盛り部は、前記ガスケット本体が前記溝に装着された状態で前記溝を形成する両側の壁面角部に弾接する厚みを有していることを特徴とするガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間をシールするため、一方部材に形成された溝に装着されるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなガスケットの中でも、平坦形状面及びそれに連続して形成された円弧形状面を有する一方部材と、一方部材の形状に合わせて形成された他方部材との間をシールするガスケットは、平坦形状面と円弧形状面とが交差する角面をシールすることが難しく、できてしまう隙間には液状ガスケットを充填する対応がなされている。
そこでシール性を向上させるために、下記特許文献1には、角面をシールする部位に溝幅方向に突出して厚みを持たせた突部を備えたガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-21237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に開示のガスケットの場合、他方部材に一方部材を合体させる際に、突部にボリュームがありすぎて、他方部材の円弧形状面に突部が弾接し、捲れやズレが生じる可能性があり、その状態で組付けられてしまうと隙間が発生し設計どおりのシール性を発揮できない。また一方部材や他方部材が樹脂製等、剛性の低いものの場合、突部によって充填過多となり、樹脂製部材の変形の要因になる可能性がある。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたものであり、適正な設計どおりのシール性を実現でき、組み付け性のよいガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスケットは、平坦形状面とそれに連続して形成された円弧形状面とを有する一方部材と、該一方部材の前記平坦形状面と合体する平坦形状面とそれに連続して形成され前記円弧形状面と合体する円弧形状面とを有するとともに前記一方部材と相対して接合する他方部材との間をシールする弾性体製のガスケットであって、前記一方部材に形成された溝に嵌め入れられて装着されるガスケット本体と、前記ガスケット本体の両側部から溝幅方向に突出して形成される鍔部とを備え、前記ガスケット本体は、前記平坦形状面に沿って形成される平坦形状部と、前記円弧形状面に沿って形成される円弧形状部と、前記平坦形状部と前記円弧形状部とが交差する角部とを有し、前記円弧形状部は、前記他方部材の円弧形状面に対向する面が前記平坦形状部に向けて傾斜するテーパー部を有し、前記角部は、前記平坦形状部より前記他方部材の平坦形状面側へ向けて突出して形成された突出部を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明のガスケットによれば、ガスケットの円弧形状部はテーパー部を有しているので、シールし難い他方部材側の平坦形状面と円弧形状面とが交差する角面にテーパー部が弾接し、適正な設計どおりのシール性を実現できる。また、前記突出部が前記平坦形状部より前記他方部材の平坦形状面側へ向けて突出して形成されているので、他方部材の角面の隙間が生じることなくシールすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るガスケットによれば、適正な設計どおりのシール性を実現でき、組み付け性のよいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るガスケットの要部を模式的に示す概略正面図である。
図2】同ガスケットの角部周辺の構造を説明するための部分拡大図であって、図1におけるX部拡大図である。
図3】(a)、(b)は同ガスケットの角部周辺の構造を説明するための部分拡大図であって、(a)は図2におけるA矢示方向からみた概略斜視図、(b)は図2におけるB矢示方向からみた概略斜視図である。
図4】(a)は図2におけるY-Y線断面図であり、(b)はヘッドカバーの溝に同ガスケットを嵌め入れた状態の概略断面図である。
図5】(a)は図2におけるZ-Z線断面斜視図、(b)は図2を平面視した場合の概略斜視図である。
図6】(a)及び(b)は同ガスケットをシリンダヘッドのヘッドカバーに装着された状態を模式的に示す概略正面図である。(a)はヘッドカバーをシリンダヘッドに合体させる前の状態を説明するための図であり、(b)はヘッドカバーをシリンダヘッドに合体させた後の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、説明する。
本実施形態に係るガスケットは、一方部材と他方部材との間をシールするものであり、一方部材に形成された溝に嵌め入れられて装着される。一方部材は、平坦形状面とそれに連続して形成された円弧形状面とを有する。他方部材は、一方部材の平坦形状面と合体する平坦形状面とそれに連続して形成され一方部材の円弧形状面と合体する円弧形状面とを有する。ガスケットは、一方部材に形成された溝に嵌め入れられて装着されるガスケット本体と、ガスケット本体の両側部から溝幅方向に突出して形成される鍔部とを備える。ガスケット本体は、前記一方部材及び他方部材の平坦形状面に沿って形成される平坦形状部と、前記一方部材及び他方部材の円弧形状面に沿って形成される円弧形状部と、前記平坦形状部と前記円弧形状部とが交差する角部とを有し、前記円弧形状部は、前記他方部材の円弧形状面に対向する面が前記平坦形状部に向けて傾斜するテーパー部を有している。角部は、前記平坦形状部より前記他方部材の平坦形状面側へ向けて突出して形成された突出部を有している。
以下、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、一部の図には、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0011】
図1図6は、本実施形態に係るガスケットの一例を示している。
本実施形態におけるガスケット1は、半円形状のアーチ部を有する一方部材及び他方部材の2部材間をシールするガスケットとして好適に用いられる。よって一方部材及び他方部材としては、例えば、自動車のエンジンを構成するヘッドカバー、シリンダヘッド、シリンダブロック、オイルパン及びチェーンカバーのうちの対向される2部材であってもよく、その他の2部材であってもよい。
以下では本実施形態のガスケット1を自動車に搭載されるエンジンのシリンダヘッド3(他方部材)と、ヘッドカバー2(一方部材)との間に装着されるヘッドカバーガスケットに適用した例を説明する。ヘッドカバー2は、樹脂等の型成形品からなり、シリンダヘッド3の上面に覆い被さり蓋するように設けられる。ヘッドカバー2の周縁部分は、鍔状に外向きに突出したフランジ部2aが形成されており、フランジ部2aには、シリンダヘッド3の周縁部分と締結され一体とするためのボルトが挿通されるボルト孔(不図示)が設けられている。シリンダヘッド3のアーチ部30の形状、大きさは、シリンダヘッド3に横設されるカムシャフト(不図示)をシリンダヘッド3の外に設置された駆動伝達部材と接続するために、カムシャフトの形状、大きさに対応して形成される。
【0012】
図1に示すようにヘッドカバー2のフランジ部2aは、平坦形状面21と、平坦形状面21に連続して形成された円弧形状面22と、平坦形状面21と円弧形状面22とが交差する角面(ピン角)23とを有している。円弧形状面22は、シリンダヘッド3におけるアーチ部30の円弧形状面32と合体するように形成されている。具体的には円弧形状面22は、アーチ部30の形状、大きさに対応して中央部が上方向に凸をなす曲線形状、すなわち半円のアーチ状に形成され、円弧形状面22の両側は平坦形状面21,21が形成されている。またヘッドカバー2のフランジ部2aには、ガスケット1が嵌め入れられる凹条の溝20が周方向に環状に形成されている。図例の溝20は、下方が開口した開口部20cと、側壁部20a,20aと、底部20bと、壁面角部20dとを有している(図4(b)参照)。溝20の深さ寸法や形状は、ガスケット1の形状に合わせて形成されており、本実施形態における溝20は、図4(b)に示すようにガスケット1の鍔部100,100が溝20の開口部20cから突出した状態になり、ガスケット本体10のほとんどが溝20内に収まるように設けられている。
【0013】
ヘッドカバー2のフランジ部2aと接合するシリンダヘッド3の周縁部分は、平坦形状面31と、平坦形状面31に連続して形成された円弧形状面32とを有している。シリンダヘッド3に形成される円弧形状面32もヘッドカバー2の円弧形状面22と同様に、アーチ部30の形状、大きさに対応して中央部が上方向に凸をなす曲線形状、すなわち半円のアーチ状に形成され、円弧形状面32の両側は平坦形状面31,31が形成されている。
【0014】
ヘッドカバー2とシリンダヘッド3とは、相対して接合され合体させるため、シリンダヘッド3の平坦形状面31に対応してヘッドカバー2の平坦形状面21が形成され、シリンダヘッド3の円弧形状面32に対応してヘッドカバー2の円弧形状面22が形成されている。そして、ヘッドカバー2とシリンダヘッド3との合体面をシールするためにガスケット1が設けられている。よって、ヘッドカバー2をシリンダヘッド3にボルトによって締結したときには、締め付けによる圧縮でガスケット1の弾性変形により、被シール面となる平坦形状面21,31同士が密封されるとともに(図4(b)参照)、円弧形状面22,32同士も密封される。
【0015】
ガスケット1は、溝20内に嵌め入れられて装着されるガスケット本体10と、ガスケット本体10の両側部から溝幅方向に突出して形成される鍔部100,100とを備える。ガスケット本体10は、断面視において縦長矩形状に形成され、鍔部100は、ガスケット本体10の下方側(溝20への挿入方向の後方側)に形成されている。ガスケット1を溝20に装着した状態では、図4(b)、図6(a)等に示すように鍔部100,100が溝幅方向に露出した状態とされる。
図1等に示すようにガスケット本体10と鍔部100,100とは、一体に形成された型成形品であり、NBR、H-NBR、ACM、AEM、FKM等を中心とするゴム等の弾性材を用いて形成される。ガスケット本体10及び鍔部100は、それぞれに平坦形状部11,111と、円弧形状部12,112と、角部13,113とを有する。
具体的には、ガスケット本体10は、フランジ部2aの平坦形状面21に沿って形成される平坦形状部11と、フランジ部2aの円弧形状面22に沿って形成される円弧形状部12と、平坦形状部11と円弧形状部12とが交差する角部13とを有する。また鍔部100も、フランジ部2aの平坦形状面21に沿って形成される平坦形状部111と、フランジ部2aの円弧形状面22に沿って形成される円弧形状部112と、平坦形状部111と円弧形状部112とが交差する角部113とを有する。
【0016】
またガスケット1は、両側面10a,10aには溝20への挿入方向に向けて棒状で且つ適宜間隔を空けて形成された突部14が形成されている。突部14は、倒れ防止突起14aが形成されたものと、倒れ防止突起14aに加えて倒れ防止突起14aよりも径が大きい脱落防止突起14bが形成されたものとを有している。突部14は、ガスケット本体10の側面10aの高さ方向に適宜形成され、倒れ防止突起14aによって、溝20内でガスケット本体10が倒れたり、蛇行してしまうことを防止する。また脱落防止突起14bによって、ヘッドカバー2をシリンダヘッド3へ合体させる際に溝20内に嵌め入れたガスケット1が溝20から脱落してしまうことを防止する。
【0017】
ガスケット本体10の円弧形状部12は、その両側の下方部分において、シリンダヘッド3の円弧形状面32に対向する面が平坦形状部11、11に向けて傾斜するテーパー部12a、12aを有している。
図1に示すように、ガスケット本体10の円弧形状部12の中心を通る垂線Lと、円弧形状部12の下方部分(角部13側)を通る線L1とが交わる角度αが15°とされ、テーパー部12aは線L1に沿って傾斜するように形成されている。図1では、角度αは15°とした例を示しているが、角度αは10°~20°とした場合、後述の効果を発揮し望ましい。
【0018】
本実施形態のガスケット1によれば、円弧形状部12が上述のテーパー部12aを有しているので、シールし難いシリンダヘッド3側の平坦形状面31と円弧形状面32とが交差する角面33にテーパー部12aがほどよく密着して弾接し、適正な設計どおりのシール性を実現できる。即ち、ガスケット1の円弧形状部12をシリンダヘッド3の円弧形状面32に沿って形成すると、シリンダヘッド3にヘッドカバー2を合体させる際に、ガスケット本体10の角部13がシリンダヘッド3の円弧形状面32に当たって捲れが生じる場合があるが、本実施形態のガスケット1によれば、円弧形状部12がテーパー部12aを有しているので、捲れを防ぐことができ、組み付けし易い組み付け性がよいガスケットとすることができる。
テーパー部12aの傾斜具合は、アーチ部の形状、大きさに応じて設定され、角度αが5~30°の範囲に設定され得る。テーパー部12aの上述の角度αが5°を下回ると、ヘッドカバー2をシリンダヘッド3に合体させていく際にテーパー部12aを有していない場合(角度αが0°の場合)とさほど差がなく、所望するテーパー部12aの機能を果たせず、鍔部100に捲れが生じやすい傾向となる。一方、角度αが30°を上回ると、シリンダヘッド3の円弧形状面32とガスケット1との間に形成される隙間が空きすぎてしまい、密封性が低下する傾向となる。
【0019】
ガスケット本体10の角部13は、平坦形状部11よりシリンダヘッド3の平坦形状面31側へ向けて突出して形成された突出部13aを有している。突出部13aは、図2の部分拡大図や図3(a)、図3(b)等に示すように平坦形状部11の延長線上よりも、シリンダヘッド3の平坦形状面31側へ向けて徐々に突出(傾斜)するように形成されている。突出部13aにおける鍔部100の厚み(t1・図4(a)参照)は、平坦形状部11に対応する部位の鍔部100の厚み(t2・図5(a)参照)と比べて、角部13に対応する部位に向けて漸次厚みが大きくなるように形成されている。また突出部13aにおける鍔部100の下面100bは、角部13に対応する部位に向けて傾斜して形成され、これに伴い、鍔部100は正面視すると略三角形状に突出した鍔突出部100cを有している(図2参照)。
【0020】
このように本実施形態によれば、突出部13aが平坦形状部11よりシリンダヘッド3の平坦形状面31側へ向けて突出して形成されているので、シールし難いシリンダヘッド3の角面33とガスケット1との間に隙間が生じることなく、適正にシールすることができる。また本実施形態によれば、突出部13aにおける鍔部100の厚みが平坦形状部11に対応する部位から角部13に対応する部位に向けて漸次厚みが大きくなるように形成されているので、平坦形状面31に沿ってガスケット1を組み付けられるとともに、面圧が低下し易い角面33を適正にシールすることができる。
また上述のガスケット1によるシールに加え、液状ガスケット(FIPG(Formed in Place Gasket))を例えば角面33(及びその周辺)に塗布することが望ましい。この場合、振動や圧力の変動などがあっても、ガスケット1の角面33(及びその周辺)への密着度合を補強し密封性の向上を図ることができる。
【0021】
図2に示すように突出部13aの下方への突出具合(傾斜具合)は、角面33へ適度な面圧で弾接されるように設定され、ガスケット本体10の平坦形状部11における鍔部100の下面100bの延長線L2と、突出部13aの下面100bに相当する線L3とが交わる角度βが5°~20°となるように傾斜することが望ましく、図2では、角度βを10°とした例を示している。また突出部13aにおける鍔部100の下面100bは、突出部13aの突出具合に応じて、角部13に対応する部位に向けて傾斜して形成されている。よってこの鍔部100の下面100bの傾斜角度に応じて、鍔突出部100cの突出具合が異なることになる。
本実施形態のガスケット1によれば、このように突出部13aを傾斜して形成するという簡易な構造でガスケット1の面圧の調整を行うことができ、密封し難い角面33をより一層適正にシールすることができる。上述の角度βが5°を下回ると、突出部13aが形成されていない場合とさほど差がなく、所望するシール性を発揮できない傾向となる。一方、角度βが20°を上回ると、シリンダヘッド3の平坦形状面31に対する面圧が高くなりすぎて密封性が低下する傾向となる。
【0022】
ガスケット本体10の角部13と、該角部13と連続する鍔部100との間には、他の部位より厚みが厚い肉盛り部15が形成されている。具体的には、図2図5(b)に示すように肉盛り部15は、正面視及び平面視において略三角形状になだらかに盛り上がって形成されており、平坦形状部11側の辺の長さが円弧形状部12側の辺の長さより大きくなるように形成されている。よって、テーパー部12aによる角面33への弾接の際に、隙間が生じやすい部位に突出部13aが充填され、肉盛り部15が突出部13aを押圧する機能を有することによって、角面33に隙間が生じることがなく、且つシール対象となる円弧形状面32、角面33、平坦形状面31に対して適度な面圧を与えることができるので、一層適正なシールが可能となる。
肉盛り部15は、図4(a)に示すように断面視において、鍔部100に向けて幅寸法が漸次大きくなるように形成されている。
よって、本実施形態のガスケット1によれば、ガスケット本体10を溝20内へ装着する途中で、肉盛り部15につっかえることなくスムーズに挿入できるので、ガスケット本体10の溝20への挿入性が良くなる。
肉盛り部15は、ガスケット本体10が溝20に装着された状態で溝20を形成する両側の壁面角部20d,20dに弾接する厚みを有している。
よって、本実施形態のガスケット1によれば、溝20への装着性が高まるため、ヘッドカバー2の溝20からガスケット1が脱落することを防止できる。またシリンダヘッド3にヘッドカバー2を合体させる際に、ガスケット本体10の角部13に対応する鍔部100の捲れ押さえ機能を発揮し、組み付け性のより一層の向上を図ることができる。
【0023】
次に図4及び図6を参照しながら、ガスケット1の溝20への装着要領及びヘッドカバー2とシリンダヘッド3との間をシールする要領について、さらに説明する。
ガスケット1は、溝20の開口部20cからガスケット本体10の上方側(溝20への挿入方向の前方側)の他方面10bを挿入していく(図4(a)参照)。そして、ガスケット本体10の他方面10bが溝20の底部20bに弾接して、ガスケット本体10が弾性変形する位置まで挿入する(図4(b)参照)。このとき、ガスケット本体10の両側面10a,10aが部分的に側壁部20a,20aに弾接するとともに、図1等に示す倒れ防止突起14a及び脱落防止突起14bが側壁部20a,20aに弾接した状態となる。これらにより、ガスケット本体10は溝20内で蛇行することなく、また溝20から脱落することなく、適正な状態でスムーズに組み付けることができる。そして、この状態でヘッドカバー2をシリンダヘッド3の上方から、円弧形状面22と円弧形状面32とが合体するように配置し、ヘッドカバー2をシリンダヘッド3に接合していく(図6(a)参照)。このとき、ガスケット1の円弧形状部12にはテーパー部12aを有しているので、シールし難いシリンダヘッド3側の平坦形状面31と円弧形状面32とが交差する角面33にテーパー部12aがほどよく弾接し、ガスケット1の角部13がシリンダヘッド3の円弧形状面32に当たって捲れてしまうことがない。続いてテーパー部12aを円弧形状面32に沿わせながら、ガスケット1の平坦形状部11がシリンダヘッド3の平坦形状面31に弾接する位置まで接合させる(図6(b)参照)。このとき、ガスケット1の角部13には突出部13aが形成され、鍔部100には鍔突出部100cが形成されているので、隙間が生じやすい角面33及び角面33の周囲とガスケット1との間に隙間が生じることがなく、また肉盛り部15によってボリュームを持たせることができ、密封性を向上させることができる。
【0024】
なお、ガスケット1、ヘッドカバー2、シリンダヘッド3等の形状、構成は図例や上記実施形態に限定されるものではない。またガスケット1は図に示すようなアーチ部30を有する2部材間に好適に用いられが、上記実施形態に限定されず、種々の2部材間をシールするシール構造に用いられるものであってもよい。さらにガスケット1の適用箇所によっては、上述の液状ガスケットの塗布がなくてもよい。ガスケット1は環状体に限らず、部分的に設けられるものであってもよく、突部14の構成も図例に限定されるものではない。また突出部13a、肉盛り部15、鍔突出部100cの形状、構成も図例に限定されない。例えば肉盛り部15は、平坦形状部11側の辺の長さが円弧形状部12の辺の長さよりも小さく形成してもよい。また平坦形状部11、平坦形状面21,31の形状も図例のような平坦形状に限定されず、多少蛇行した部分が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 ガスケット
10 ガスケット本体
11 平坦形状部
12 円弧形状部
12a テーパー部
13 角部
13a 突出部
15 肉盛り部
2 ヘッドカバー(一方部材)
20 溝
20d 壁面角部
21 平坦形状面
22 円弧形状面
23 角面
3 シリンダヘッド(他方部材)
31 平坦形状面
32 円弧形状面
33 角面
図1
図2
図3
図4
図5
図6