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特許7449570コントロールモーメントジャイロ及びドライブ・バイ・ワイヤ式ステアリングシステムを用いて二輪車をバランスさせる統合制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】コントロールモーメントジャイロ及びドライブ・バイ・ワイヤ式ステアリングシステムを用いて二輪車をバランスさせる統合制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/495 20240101AFI20240307BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240307BHJP
   B62J 45/414 20200101ALI20240307BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240307BHJP
【FI】
G05D1/495
G05B11/36 G
G05B11/36 505A
B62J45/414
B62J45/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020546951
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019021163
(87)【国際公開番号】W WO2019173597
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/639,942
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519352595
【氏名又は名称】リット モーターズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー デイヴィッド アーサー
(72)【発明者】
【氏名】キム ダニエル キー ヨン
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/161308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
G05B 11/36
B62J 45/414
B62J 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車用のバランス制御システムであって、
角運動量を生成する1又は2以上のコントロールモーメントジャイロ(CMG)と、
前記二輪車に関するy軸加速度を、遠心力による前記二輪車の加速度と、重力による前記二輪車の加速度と、前記1又は2以上のCMGによる前記二輪車の加速度との組合わせに基づいて測定するための加速度計であって、前記二輪車のy軸は、前記二輪車の進行方向に垂直でありかつ地面に対して平行であり、該加速度計によって測定された前記y軸加速度に少なくとも部分的に基づいて第1の角度誤差を生成する、加速度計と、
1又は2以上のCMGに関するジンバルレートを制御する1又は2以上のCMGコントローラと、
処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記加速度計で測定された前記y軸加速度に少なくとも部分的に基づいて前記二輪車に関するロール角を計算し、
前記計算されたロール角に少なくとも部分的に基づいて力成分を決定し、
前記決定された力成分と、所望車両ロールレートと前記CMGによって計測された車両ロールレートとの差とに基づいて前記1または2以上のCMGに関するジンバルレートを制御するCMGコントローラのためのCMGコマンドを生成し、前記1または2以上のCMGに関する前記ジンバルレートに基づいて第2の角度誤差を生成し、
前記第1の角度誤差と第2の角度誤差の合計を算出し、
前記第1の角度誤差と第2の角度誤差の合計に基づいてロールレートコマンドを生成し、
前記加速度計から受け取った測定値にノイズフィルタを適用することによってフィルタ処理されたロールレートを生成し、
前記ロールレートコマンドと、前記フィルタ処理されたロールレートとを比較し、
前記ロールレートコマンドと前記フィルタ処理されたロールレートとの比較に基づいてトルクコマンドを生成し、
前記1又は2以上のCMGコントローラが前記1または2以上のCMGに関するジンバルレートを制御し前記トルクコマンドに少なくとも部分的に応答して前記角運動量を変更し、さらに、
前記トルクコマンドに少なくとも部分的に応答してステアリングコマンドを増強するステアリング増強ユニットと、を備えている、
ことを特徴とするバランス制御システム。
【請求項2】
二輪車用のコントロールモーメントジャイロ(CMG)によって記憶された角運動量を制御する方法であって、
前記CMGアレイによって記憶されている前記二輪車の角運動量の合計および合計角運動量の残部として、コントロールモーメントジャイロ(CMG)のアレイによって記憶されている角運動量を決定し、
前記CMGアレイに記憶された角運動量に基づいてロール角センサ内のオフセットを算出し、遠心力、重力を含む1または2以上の力からの外力の合計が、前記二輪車への外部トルクを生成するように前記ロール角センサにバイアスをかけ、前記CMGによって記憶されている角運動量をゼロに再記憶する、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年3月7日出願の米国仮出願第62/639,942号「コントロールモーメントジャイロ及びドライブ・バイ・ワイヤ式ステアリングシステムを用いて二輪車をバランスさせる統合制御方法」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。
(技術分野)
本発明の実施形態は、コントロールモーメントジャイロ(CMG)ベースの二輪車バランス制御に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は、2016年3月17日出願の米国仮出願第62/309,893号の優先権を主張する、2017年3月17日出願の国際出願PCT/US17/23025「セルフバランス二輪車の制御」の優先権を主張する、2018年9月7日出願の米国出願第16/085,975号に記載されたようなコントロールモーメントジャイロ(CMG)ベースの二輪車バランス制御に関し、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。従来、CMGベースの二輪車バランス制御は、1又は2以上のCMGを使用して、制御のみがバランストルクを引き起こすように、車輪の地面接触線に平行な軸線周りのトルクを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】一実施形態によるセルフバランス二輪車用の制御ブロック図である。
図2】時速25マイル(MPH)の速度での二輪車のロールトルク成分の図である。
図3】二輪車の作動時のフロントホイールレート及びCMGジンバルレートを示す。
図4】一実施形態による二輪車のCMGジンバルレート及びステアリング導関数を示す。
図5】一実施形態による二輪車を制御するためのステアリング補償と共にCMGジンバルレートを示す。
図6A】一実施形態による補償前のCMGジンバル角偏位を示す。
図6B】一実施形態による補償後のCMGジンバル角偏位を示す。
図7】セルフバランス二輪車用の制御システムの構成要素を示す。
図8】本発明の一実施形態を示す。
図9A】本発明の一実施形態の態様を示す。
図9B】本発明の一実施形態の態様を示す。
図10】本発明の一実施形態によるシミュレーションされた90度コーナーセットを示す。
図11】本発明の一実施形態による時間の関数としての速度のプロットを示す。
図12図4に示すような時間の関数としての速度のプロットに基づいた結果として生じるロール角を示す。
図13】本発明の一実施形態による、コーナーに進入し脱出する場合に二輪車に対してバランストルクを提供するためのCMGの動きに関するジンバルレートを示す。
図14】本発明の一実施形態による、角度センサにバイアスをかけることで記憶された角運動量(H)をゼロにすることを示す。
図15】本発明の一実施形態によるステアリング角、運転者入力、及び制御トリムのグラフである。
図16】本発明の一実施形態によるジンバルレートに比例するトルクを生成するコントロールモーメントジャイロの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明の一実施形態は、セルフバランス二輪車を制御するための方法、装置、及びシステムを説明する。以下の説明において、実施形態の完全な理解を可能にするために多くの特定の詳細内容が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載された技術を、1又は2以上の特定の詳細内容なしで、又は他の方法、構成要素、材料などで実施できることを認識できるであろう。場合によっては、特定の態様が曖昧になるのを避けるために、周知の構造、材料、又は工程は詳細に記載されていない。
【0005】
図1は、一実施形態によるセルフバランス二輪車の制御ブロック図である。一部の実施形態において、制御フローは、ノイズフィルタ102に供給され車両のIMU交差軸加速度100を提供する。また、制御値Hcmg152は記憶制御値H150に適用され、次に補償フィルタ154(ノイズフィルタ102と同じ次数とすることができる)によってフィルタ処理される。ノイズフィルタ102の出力は、補償フィルタ154からの出力から差し引かれ、差分が第1の利得104を受け、次に記憶制御値H150にk×(s+1)/s(要素110、kは定数、sはラプラス演算子である)を乗じたものに加えられる。結果として得られた値には、第2の利得106が乗じられ、次に補償108が加えられる。
【0006】
一部の実施形態において、IMUロールレート120は、第2の補償フィルタ122(この補償フィルタは、ノイズフィルタ未満の次数とすることができる)によってフィルタ処理され、補償124が加えられる。その結果は補償108から差し引かれ、差分を生成する。一部の実施形態において、この差分にステアリング増強128が加えられ、ステアリング増強は以下で詳細に説明する。
【0007】
一部の実施形態において、この結果は、値k×(τs+1)/s(要素130、τは、伝達関数の先頭項の時定数である)が乗じられる。次に、CMG利得は、1/cos(β)(要素132)で線形化され、CMGレートコマンド140を生成し、このコマンドは第1のCMG制御142及び第2のCMG制御144に提供され、CMGジンバル角δを生成する。ジンバル角の総和は、CMGレートコマンドの生成にフィードバックされ、各CMGジンバル角の間の差分は、記憶H制御値150を生成する。図示のように、CMG制御142-144からのδ(ドット)値をCMGの角運動量であるhcmg146値及びhcmg148値に乗じたものの総和は、CMGロールトルク160である。
【0008】
ジャイロは、回転フライホイールを中心として構築された角運動量保存要素である。フライホイールは、CMGアレイ(ロールトルクを提供する1又は2以上のCMGを備える)から車両に角運動量を伝えることでトルクアクチュエータとして機能する。角運動量ベクトルが回転すると、回転方向でありかつ角運動量ベクトルに垂直なトルクが発生する。この発生したトルクに対する反トルクは車両に加わる。一方の角運動量ベクトルが上向きで他方の角運動量が下向きであり、これらの回転方向が反対方向の一対のCMGを使用すると、単一軸のトルクがもたらされる。対象の軸はロール軸である。角運動量ベクトルは、上下である必要はないが、公称ベクトル和がゼロであるように配置され、高い精度でもって、角運動量ベクトルの和が車両のロール軸に沿って方向性をもって増大でき維持されるように配置される。対称性は、車両に伝えられる等しくて反対方向の角度モーメントをもたらす。角運動量ベクトルの長さが変わると車両に加えられるトルクが生じる。「CMG」は、一般に、剛体の高度制御に特に適用されたジャイロを表す(従来、衛星及び宇宙船に使用された)。以下に説明するように、様々な構成で、CMGシステムは、セルフバランス二輪車に適用される。
【0009】
セルフバランス二輪車(本明細書ではバイクとも呼ばれる)の制御は、ロケットの例よりも非常に複雑な力を伴う。路面上の接地点に対する重心(CG)を示すためにセンサが必要である。バイクがコーナーを横切る際に、重力で打ち消すことが必要な大きな遠心力がかかる。座標系原点が、後ろのタイヤの路面との接点にある場合、x軸は後ろのタイヤから前のタイヤの方向である。そのとき、y軸は進行方向に垂直であり、地面と平行であり、進行方向の右側を示し、z軸は路面の中にある。
【0010】
一部の実施形態において、加速度計が、二輪車制御システムの角度を測定するために用いられる。このような実施構造において、車体座標系(二輪車に関して不変の座標系)のy軸の加速度を検出する加速度計が、ワールド座標系(地球に関する座標系)に基づいて姿勢を測定するジャイロよりも有用なセンサとなる。慣性計測装置(IMU)がロール軸である路面の直上に取り付けられる場合、y軸加速度に対して5つの主要成分が存在する。3つの大きな成分は、遠心力に起因する加速度、重力に起因する加速度、及びCMGに起因する加速度である。公称速度での2つの小さな加速度は、前輪及び後輪の角運動量の方向での変化に起因する。
【0011】
バランス制御自体はy軸加速度を用いることはできないが、CMG加速度を除く全ての加速度の総和は、バランスを制御するのに必要な物理量である。y軸加速度を合力ベクトルの角度に転換するためには、特定の計算が必要である。直線加速度は、IMUが車両の中心に置かれる場合、ロール軸(地面)から加速度計までの距離で除算することでロール加速度に転換される。車両が横滑り状態にない場合、重力及び遠心力からの力は、舗装道路とタイヤとの間の力によって打ち消される。タイヤ-舗装道路接触面の力は、ロール軸を介して作用するのでトルクを引き起こさない。ロール加速度に関して、ロールトルクは、ロール軸慣性モーメントで除算することで求めることができる。CMGが発生したトルクを除去した後の正味トルクは、外乱トルクである。正味トルクは、舗装道路に対するCGからの距離に所望のロール角の正弦を乗じた力である。小さな角度に関して、角度の正弦は角度に近似できる。この角度は、バイクが停止した場合又は真っ直ぐ走っている場合の垂直線からの変動である。また、これは、完全に調和されたカーブの周りを進む場合とバイクのロールが始まる場合との間の誤差の角度でもある。
【0012】
IMUからの姿勢に関するロール角は、タイヤがスリップしていない場合、前タイヤの方向、及びバイクの前進速度から計算することができる。
【0013】
一部の実施形態において、加速ユニットを利用する改善された測定は、横加速度が変化するのでタイヤがスリップしていることを即座に検出するための制御を可能にし、結果的に制御はスリップに反応することができる。これは、カーブして進む場合に倒れるのを防止することができる。以下の式で示すように、
【数1】
[1]
φ:ロール角
tf:前タイヤ質量
tfc:前タイヤ接触点での半径
f:フレーム質量
cg:フレーム重心高さ
tr:後タイヤ質量
trc:後タイヤ接触点での半径
g:重力定数
δ CMG:ジンバル角
CMG:CMGの角運動量
rtc:遠心ロールトルクからのトルク
trx:角運動量変化に起因する後タイヤのx軸周りのトルク
tfx:角運動量変化に起因する前タイヤのx軸周りのトルク
xxeft:x軸周りの有効慣性モーメント
である。
【0014】
遠心力項は全て共通項を有する。
【数2】
[2]
Psi(ψ)は前タイヤの角度、pはホイールベースである。3つの遠心力は、この項に各タイヤの質量及びフレーム質量を乗じたものである。生成された各トルクは、各成分の重心の高さにロール角の余弦を乗じたものである。ステアリング角が一定の場合、遠心トルクは、速度の2乗で増加し、ロール角が増加してトーションアームがより短くなることによって減少する。車輪からの角運動量トルクは、各車輪の角運動量ベクトルである。これは、後輪のロール角、ステアリング角、及び前輪のロール角の関数である。回転角速度ベクトルと角運動量ベクトルの外積は、トルクベクトルをもたらし、ロール軸に関するこのベクトルの成分は、車輪角運動量の方向の変化に起因するロールトルクである。
【0015】
加速度計の項は、ロール軸角加速度に、道路上の接触点からIMUへのレバーアームを乗じたものである。バイクに組み込まれたy軸は、バイクと共にロールする。y軸加速度をIMU高さで除算し、バイクCG高さで乗算してこの加速度を重心に対してスケール調整する。次に、CMGトルクに起因する加速度成分を除去し、これにロール軸周りの有効慣性モーメントを乗じ、これは力成分をもたらす。この結果は、バイクCGに作用する合力に、力の方向とロール軸の方向との間の角度の正弦を乗じたものである。これは制御に必要なパラメータであり、このようなパラメータは、即座に車輪スリップを検出し、バイク動力学の幾何学を正確に計算する。この項は、IMU姿勢を用いるよりも及びバイク動力学のためにIMU姿勢を補正しようとする試みよりも高速かつより正確である。
【0016】
図2は、時速25マイル(MPH)での二輪車のロールトルク成分を示す。ステアリングフィードフォワードは、バイクロールトルク成分の検討から生じる新しい項である。25MPHにおいて、積極的なドッグレッグ旋回を行うのに、ロールトルク成分を組み合わせることが図2に示されている。
【0017】
本例において、遠心力トルクは、CMGが遠心力を相殺するためにバイクをロールさせることができる前にバイクが完全に旋回するのでオーバーシュートする。理想的には、重力トルクは、遠心トルクと一致し、CMGトルクを差し引いた全てのトルクの総和はゼロである。この場合、CMGは、バイクを制御するために200フィートポンドをはるかに超えるトルクを生成する必要がある。
【0018】
遠心力につながるこの項を特定するために、前輪角が区別されCMGジンバルレートコマンドに対してプロットされる。
【0019】
図3は、二輪車の作動時のフロントホイールレート及びCMGジンバルレートを示す。前輪角Psiが遠心力を発生させる。補正スケール係数で、ステアリング導関数は、CMGジンバルレートコマンドをプッシュしてバイクを高速で横転させることができる。さらに、バイクがより速く横転する場合、重力トルクは、遠心トルクを良好に補償することができる。
【0020】
図4は、実施形態による二輪車に関するCMGジンバルレート及びステアリング導関数を示す。図4において、psiドット項は、図3に示すものと同じであるが、CMGレートコマンドはより速く、一方で振幅はより小さい。ステアリング補償は、遠心力トルク及び重力トルクをより厳密に一致させ、より小さなCMGトルク要求をもたらす。一部の実施形態において、ステアリングレート測定値は、セルフバランス二輪車の制御を改善するために用いることができる。
【0021】
図5は、実施形態による二輪車のためのステアリング補償(psiドット又は

)と共にCMGジンバルレートを示す。図5において、CMGジンバルレートは、CMGトルクを反映し、導かれたテアリングレート(φ)は、バイクをより迅速に押し倒すのを助け、非常に小さなCMG補償要求につながる。遠心トルク及び重力トルクは互いに殆ど鏡映である。前輪及び後輪の回転角運動量からのトルクは、小さいままである。
【0022】
図6A及び図6Bは、実施形態による補償の前後でのCMGジンバル角の偏位を示す。補償後の図6Bにおいて、図6Aに示す補償前の要求に比べて、補償によりCMGジンバル角偏位が著しく低減する。これは、CMGが一般にプラス又はマイナス70度の有効範囲しかないので重要である。遠心力誘発トルクの補償は、考慮すべき速度項を有する。
【0023】
遠心力の式は、
【数3】
[3]
である。
【0024】
遠心力は、速度の2乗及び一定の幾何学的カーブに比例し、加力は速度項に比例する。これは、カーブを進む困難性が速度の3乗に比例して高くなることを意味する。オートバイの場合、カーブの半径は、ステアリング角(psi)の関数である。
【数4】
[4]
【数5】
[5]
【数6】
[6]
【0025】
力を予測するために、力の時間導関数を適用することができる。
【数7】
[7]
速度が一定であれば時間導関数はゼロである。
【数8】
[8]
固定幾何学的形状に関して、旋回psiドットは速度に比例し、力は速度の3乗に比例する。その結果、理想的な補償は以下のように表すことができる。
【数9】
[9]
作動の線形領域でのkは、CMGジンバルレートコマンドが飽和した場合に必要なkよりも大きい。中間速度及び極端なロール角につながる速度に関するkを計算すると、補償は以下の形に適合する。
【数10】
[10]
この形ではkは一定であり、nは整数ではなく有理数である。
【0026】
一部の実施形態において、最後の制御トポロジー考察はステアリング増強である。コンピュータ補償のステアリングを用いると、CMG上の負荷が低減し、同様に同じ走行で両方のCMGが故障した起こりそうにない状況でバックアップ制御を提供する。ステアリングホイールのpsiドットを取り除いてステアリングホイールと前輪との間でステアリング増強を加えることで、ステアリング増強は、CMGジンバルレートコマンドへのフィードフォワードを低減することはない。ステアリング増強は命令されたステアリングに対する補正であり、バイクの補正方向へのロールを開始させる。このように、ステアリング増強は、ステアリングコマンドに比べて逆方向である。これは、リードラグ補償項を用いることで達成され、リードは右側複素平面にある。
【0027】
図7は、実施形態によるセルフバランス二輪車用の制御システムの要素を示す。一部の実施形態において、制御システム700は、以下を含むセンサ及びセルフバランス二輪車用の制御要素を含む。
705:車両制御のためのデータを処理するための処理要素
710:車両に関する特定の力及び角速度を測定するための慣性計測装置(IMU)
715:車両の横加速度を測定するための加速度計
720:車両に関するステアリングコマンドを増強するためのステアリング増強要素
725:反対方向を指し示す角運動量ベクトルを有する第1のCMG及び第2のCMGを含むことができる、1又は2以上のCMG
730:1又は2以上のCMGに関するジンバルレートを制御するための1又は2以上のCMGコントローラ
【0028】
一部の実施形態において、
(1)二輪車用の制御システムは、IMU角の代わりにy軸加速度を用いてロール軸角を求める。
(2)二輪車用の制御システムは、ステアリングレートを用いて早期に動かすためにCMGジンバルレートをもたらす。
(3)二輪車用の制御システムは、前輪転向レートの代わりにステアリングホイールコマンドのステアリングレートを求め、次に、レート補償を生じるためにオペレータの操作を車輪の動きから切り離す。これは、ステアリング増強とCMGジンバルレート補償との間の干渉を低減する。
【0029】
一部の実施形態において、二輪車用の制御システムは、慣性計測装置(IMU);1又は2以上のコントロールモーメントジャイロ(CMG);1又は2以上のCMGを制御するための1又は2以上のCMGコントローラ;車両の関するy軸加速度を測定するための加速度計であって、車両のy軸は車両の進行方向に垂直で地面に対して平行である;少なくとも部分的に加速度計で測定したy軸加速度に基づいて車両に関するロール角を計算し、少なくとも部分的に計算したロール角に基づいて力成分を決定し、少なくとも部分的に決定した力成分に基づいてCMGジンバルレートに関するCMGコマンドを生成するための処理要素と、を含む。
【0030】
一部の実施形態において、力成分は、車両の重心上の合力に、力の方向とロール軸の方向との間の角度の正弦を乗じたものである。
【0031】
一部の実施形態において、加速度計によるy軸加速度の測定値によって、横加速度の変化に基づく車両のタイヤの滑りを検出することができる。
【0032】
一部の実施形態において、1又は2以上のCMGは、角運動量ベクトルが反対方向の2つのCMGを含む。
【0033】
一部の実施形態において、処理要素は、車両用のステアリングコマンドを修正するためのステアリング増強値をさらに決定し、処理要素は、ステアリング増強値に基づいて力成分及びCMGコマンドを修正する。
【0034】
一部の実施形態において、二輪車用の制御システムは、慣性計測装置(IMU)と;1又は2以上のコントロールモーメントジャイロ(CMG)と;1又は2以上のCMGを制御するための1又は2以上のCMGコントローラと;決定したステアリング増強値によってステアリングコマンドを増強するためのステアリング増強ユニットと;少なくとも部分的にステアリング増強値の適用に基づいて1又は2以上のCMGコントローラに関するCMGコマンドの決定を修正するための処理要素と、を含む。
【0035】
一部の実施形態において、ステアリング増強値の適用は、CMGジンバルレートを早める。
【0036】
一部の実施形態において、ステアリング増強値の適用は、車両を制御するのに必要なCMG補償量を低減する。
【0037】
一部の実施形態において、ステアリング増強は、補正方向での車両のロールを開始させ、ステアリング増強は、ステアリングコマンドとは逆の方向である。
【0038】
一部の実施形態において、ステアリング増強は、1又は2以上のCMGの故障時のバックアップCMG制御として作動する。
【0039】
一部の実施形態において、方法は、加速度計を用いて二輪車のy軸加速度を測定するステップであって、車両のy軸は、車両の進行方向に垂直で地面に対して平行であり、車両が1又は2以上のコントロールモーメントジャイロ(CMG)を含む、ステップと;少なくとも部分的に加速度計で測定したy軸加速度に基づいて車両に関するロール角を計算するステップと;少なくとも部分的に計算したロール角に基づいて力成分を決定するステップと;少なくとも部分的に決定した力成分に基づいてCMGジンバルレートに関するCMGコマンドを生成するステップと、を含む。
【0040】
一部の実施形態において、力成分は、車両の重心上の合力に力の方向とロール軸の方向との角度の正弦を乗じたものである。
【0041】
一部の実施形態において、本方法は、加速度計による測定値を用いて横加速度の変化に基づいて車両のタイヤの滑りを検出するステップをさらに含む。
【0042】
一部の実施形態において、本方法は、ステアリングコマンドを修正するためのステアリング増強を決定するステップをさらに含む。
【0043】
一部の実施形態において、CMGコマンドを生成するステップは、さらに少なくとも部分的にステアリング増強に基づく。
【0044】
一部の実施形態において、ステアリング増強の適用は、CMGジンバルレートを早める。
【0045】
一部の実施形態において、ステアリング増強の適用は、車両を制御するのに必要なCMG補償量を低減する。
【0046】
一部の実施形態において、本方法は、1又は2以上のCMGの故障時にステアリング増強を用いるバックアップCMG制御を提供することを含む。
【0047】
一部の実施形態において、ステアリング増強は、補正方向での車両のロールを開始させ、ステアリング増強は、ステアリングコマンドとは逆方向である。
【0048】
本発明のさらなる実施形態は、例えば、自転車、電動自転車(e-バイク)、スクーター、電動スクーター、モーターサイクルなどの二輪車のバランス制御を増強するためにステアリングを利用する能力を付加する。本実施形態による制御アーキテクチャにより、二輪車は、同時に又は交互にメカトロニクス姿勢制御システムを用いて、静止時に又はメカトロニクスコマンドで動的に駆動される間に自立的にバランスすることができる。1又は複数の車輪ステアリングの角度を変更することで生じるトルクは、車両の速度の2乗で増加する。従って、速度ゼロでは影響がなく、車両の最高速度では大きなトルクをもたらす。車両バランス制御用のドライブ・バイ・ワイヤステアリングシステムによるステアリング作動を追加すると、大きな力が必要な場合に高速で車両の安定性が向上し、小型、軽量、CMGを用いた安定制御が可能になり及び/又は制御車両の俊敏性が向上する。
【0049】
図8を参照すると、本発明の実施形態800は、制御対象の二輪車825及びシステム構成要素801を備え、システム構成要素801は、1又は2以上の姿勢センサ(慣性計測装置805内)、1又は2以上の平衡状態(state balanced)ノイズフィルタ810、制御システム815、及び1又は2以上のバランス制御アクチュエータ820を含む。
【0050】
慣性計測装置(IMU)105は、1又は2以上の姿勢センサから信号を受け取り、二輪車のy軸方向の横加速度、及び二輪車のx軸方向の回転速度及び回転位置を測定する。本実施形態において、座標系の原点は、後輪が地面と接触する場所であり、x軸は、後輪から前輪の方向における車両のロール軸であり、y軸は、進行方向に垂直で地面に平行であり、進行方向の左側(又は右側)を指し示し、z軸は、進行方向に垂直で上方を指し示す(又は地面の中を指し示す)。
【0051】
実施形態によれば、二輪車のバランス制御に用いられる2つの測定値、ロールレート及び有効ロール角が存在する。ロールレートは、直接用いることができる。有効ロール角は、2つのベクトル、遠心力及び重力の合力、及び重心から地面に接触する車輪の中心線への方向から成る。有効ロール角は、この2つのベクトルの差分である。
【0052】
横加速度もジャイロ計算ロール角も二輪車のバランス制御のために直接用いることができない。横加速度は、y軸方向に作用する力のロール成分を測定する。この力は3つの大きな項と3つの小さな項(一次制御では無視できる)を有する。これらのトルク項は、発生源に応じて2つのグループに分けることができる。加速度計は、真空中の自由落下でゼロ加速度を計測する。地面からの上向きの力は、自由落下を妨げる加速力である。この力がIMUのz軸に対して平行であると仮定すると、y軸成分は全くない。y軸加速度の力成分は、この力及びこの力を釣り合い状態に至らせる角度の正弦に比例する。
【0053】
第2種の構成要素は、IMU805の中の姿勢センサ(例えば加速度計)であり、二輪車に作用するトルクを測定する。トルクは、車輪(タイヤ)の地面接触で発生した力に作用を及ぼす。トルクは、ロール軸の慣性モーメントを加速させ、IMUをy軸方向で加速させる。空力トルクは、1つの実施形態において、二輪車(例えば、モーターサイクル)のほぼ対称性に起因して、遠心力が発生したトルクに比べて小さい。また、車輪の回転角度モーメントによって生じたトルクは、図2及び4に示すように小さい。図2及び4から分かるように、1又は2以上のコントロールモーメントジャイロ(CMG)によるトルクは有意であり、測定値内のノイズ成分は適切に調整されたCMGジンバルレート信号を差し引くことで除去することができる。これにより、直進又は旋回中に関わらず作動点の周りでの二輪車のアンバランス状態の測定値である信号が得られる。
【0054】
姿勢センサで行われる他の姿勢測定は、車体角度のジャイロ測定である。これは、二輪車が垂直方向に真っ直ぐであるか否かの情報を提供し、これは車両が直線上を進んでいる間に卓越するが、車両が曲がり角を進む場合にエラーになる。速度の関数として適切なロール角に関する計算値は、ジャイロ角度測定値と比較するために用いることができるが、タイヤが舗装道路上でスリップする場合、速度測定値に誤差がある。
【0055】
バランス制御の第2のモジュールは、協調(coordinated)ノイズフィルタ810であり、ロールトルクからフィルタ出力までのシステム利得の大きさは、交差しない。二輪車のロール軸に加わるトルクから種々のノイズフィルタの出力までの利得は、高周波数ではボード線図と同じ傾きをもつ必要があり、高周波数では同じ位相シフトである。トルクからトルクは代数的であり、トルクからロールレートは単積分であり、トルクから位置は二重積分である。このことは、ロールレート用のノイズフィルタは位置フィルタよりも1つ多い極を有し、加速度ノイズフィルタは、位置フィルタよりも2つ多い極を有することを意味する。3つの並列ループを用いて、高周波数ボード線図は、並列補償デザインに起因して、高周波数でゼロになるのを防ぐために交差しない。ラプラス領域の左側平面でのゼロは安定するが、右側平面でのゼロは極をそれに向かって引き寄せ、不安定になる。従って、1つの実施形態では、フィルタは、実行できないように設計される。他の実施形態において、最大利得分岐に関するより緩やかな傾き、及び小利得分岐でのより大きな傾きは、高周波数でゼロが生じるのを防ぐ。
【0056】
制御システム815は、協調ノイズフィルタ810の出力に接続され、制御される同じパラメータ作用する2つのアクチュエータを用いる位置制御を提供する。
【0057】
図9Aに示す実施形態900を参照すると、角度誤差加速度計905は、加速度計信号を受け取り、角度誤差kp210を生成する。同様に、CMGジンバルレート生成加速度915は、角度成分1-kp920をもたらす。比例利得kpの値は、ゼロから1の間であり、2つの等しい経路の総計を1にする。最適な性能は、kpが1の場合である。誤差の総計は、利得kphi930を通過し、1つの実施形態では、姿勢誤差のラジアン毎のレートコマンドの毎秒のラジアン単位を有する。加算器925の結果としてのロールレートコマンドは、フィルタ処理されたロールレート935と比較され、リード945、955、950、及び960を有する積分器を含むネットワークを通過する。その結果は出力965でのトルクコマンドである。
【0058】
図9Bを参照すると、トルクコマンド965は2つの経路965A及び965Bに分かれる。各経路は、CMG制御のための二輪車動力学を通るループ利得が、ステアリング制御及びアクチュエータ経路に対して等しいように補償される。各制御経路は協調して動作するので、各々は、速度領域で支配され、ここで最良に動作する。
【0059】
この制御構成は、車両制御における優れた改善をもたらす。CMGの特性は、ロールトルクアクチュエータとして用いるために、限定された角運動量が存在するようなものである。角運動量は、トルク秒のユニットをもち、このため限られた時間でトルクを生成する角運動量を転換することができる。二輪車の停車時又は低速度で旋回させることを含む低速移動時に、バイクをバランスさせるのに利用できる十分なトルクがある。速度が増加すると、遠心力が発生するトルクが速度の2乗で増加する。バランス制御のためにステアリング安定性増強を追加すると、同様に速度の2乗で増加するトルクが可能になる。ステアリング利得は低速では低減され、車両が停止すると無くなるが、高速挙動では完全に有効である。
【0060】
本発明の実施形態による、増強されたステアリング制御システムは、図10に示すように、シミュレーションした90度のカーブセット1000、1005、1010、1015、及び1020を使用し、各々は、前に対して2倍の旋回半径を有する。
【0061】
このシミュレーションは、安定性が車両の全速度範囲にわたって得られることを示した。全速度範囲の生成において、第1のカーブはロール角5度の速度を用い、第2のカーブはロール角15度の速度を用い、第3のカーブは25度、第4のカーブは35度、第5のカーブは45度であった。図11を参照すると、時間の関数としての速度のプロットは、6つの速度段階を示し、例えば、時速100マイルは第5旋回の後である。結果として得られたロール角は図12に示されている。
【0062】
コントロールモーメントジャイロは、図16に示すジンバルレートに比例するトルクを生成する。フライホイール1600は、スピン軸の周りを回転して角運動量H1610を生成する。スピン軸に垂直な軸G1620を有するジンバルは、角運動量ベクトルを回転させる。角運動量ベクトルHが回転すると、トルクQ1630が発生する。反力トルクQR1640は、トルクQ1630に等しく反対方向である。この反力トルクは、車両が受けるトルクである。ジンバルがより速く回転するとより大きなトルクが発生し、トルクベクトルがより速く歳差運動する。トルクは、各コーナーで加えられ、その内外に遷移する。図13に示すジンバルレートは、曲がり角に入退出する場合のバランストルクを提供するためのCMGの動きを示す。
【0063】
CMGジンバル角は、図1の記憶された角運動量制御142、144、及び150、並びに図9Bの973を用いてゼロ(中心)位置に戻される。図14から分かるように、記憶された角運動量(H)は、車両角度センサにバイアスをかけることでゼロに戻される。
【0064】
最後に、図15を参照すると、ステアリング角は、2つの項、運転者入力(図15のDriver)及び制御トリム(図15のpsitrim)で構成される。ステアリング角psi(ψ)は、図9Bのステアリング制御ループ980で生成されたトリム項を有する。ステアリングホイールの安定トリム運動は、ステアリングホイールの運動が速度の2乗に比例するトルクを生成するので、車両の速度が増加すると小さくなる。
【0065】
運転者シミュレーションは、二輪車を前方の道路の好ましい位置に向ける運転者又は制御(例えば、遠隔制御)である。道路内の目標位置は、速度が高くなるにつれて車両に対して前方に移動する。運転者は二輪車をバランスさせるために何も試行せず、全てのバランスは制御によって達成される。1つの実施形態において、ステアリングは、ドライブ・バイ・ワイヤを含むいくつかの異なる方法で機械化することができ、ドライブ・バイ・ワイヤでは、機械的バックアップと運転者を切り離すクラッチによって制御ステアリングが可能になり、ステアリングの制御部は、ステアリングホイールを回転させるためのサーボアクチュエータを制御するコンピュータ又は処理要素によって遂行される。他の実施形態において、機械的差動装置は、ステアリングホイールの機械的動作とサーボアクチュエータによる制御動作とを合わせる。モータは、安定性増強制御のために電源オフされ、バックアップモードだけで機械的に係合するブレーキを有している。ステアリングは、前輪、後輪、又は両方とすることができる。従って、二輪車は、運転者が二輪車を安定させるとき考慮することなく、従来の自動車のような制御で運転することができる。
【0066】
統合制御は、CMGバランス制御のみを備えたセルフバランスモータサイクル又は二輪車上でトラクション喪失からの回復を改善する。1つの実施形態において、スリップ時、CMGバランス制御は、二輪車を真っ直ぐにし始めることができ、低摩擦領域を通過して高摩擦面上への復帰が始まると、ステアリングの増強安定は、乾燥した舗装道路上でスリップしている車輪からの過大トルクを低減することができる。例えば氷上の滑材から乾燥した舗装道路に達すると、車輪及び運動方向は同じではなく、乾燥した舗装道路上でスリップしているタイヤの回復距離があり、全ての機構をローリング状態に戻すようになっている。
【0067】
上述の説明は、例示であって、本発明を限定するものではないことを理解されたい。上述の説明を読んで理解すると、当業者には多くの他の実施形態が明らかであろう。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載された本発明の全均等範囲と共に、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきである。
【0068】
上述の詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに基づきアルゴリズム及び演算の記号による表示によって提供されている。これらアルゴリズムによる記述及び表示は、データ処理技術における当業者によって用いられ、かかる当業者の仕事の実質的内容を他人に最も効果的に伝える手段である。アルゴリズムがここでは、一般に、所望の結果をもたらすつじつまの合う一連の演算であると考えられる。これら演算は、物理量の物理的操作を必要とする演算である。通常、必ずしも必要であるというわけではないが、これら物理量は、記憶可能であり、伝送可能であり、組み合わせ可能であり、比較可能であると共に違ったやり方で操作可能な電気信号又は磁気信号の形態を取っている。これら信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、数等として表すことは、主として共通使用の理由で場合によっては好都合であることが分かっている。
【0069】
しかしながら、念頭に置くべきこととして、これらの用語及び類似の用語の全ては、適当な物理量と関連すべきでありしかもこれら物理量に付けられる都合の良いラベルであるに過ぎない。具体的な別段の指定がなければ、上述の説明から明らかなように、明細書全体を通じて、例えば「捕捉する」、「伝送する」、「受け取る」、「構文解析する」、「形成する」、「モニタする」、「開始する」、「実施する」、「追加する」等の用語を利用した説明がコンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理( 例えば、電子)量として表されたデータを操作してこれらをコンピュータシステムメモリ若しくはレジスタ又は他のかかる情報格納、伝送又は表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに変換するコンピュータシステム又は類似の電子コンピュータ計算装置の行為及びプロセスを意味していることは理解されよう。
【0070】
また、本開示の実施形態は、本明細書において説明した演算又は操作を実施する電気回路、論理、又はプロセッサ実行ソフトウェアモジュールによる装置に関する。この装置は、必要な目的で特別に構成することができ、あるいは、コンピュータ内に記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動され又は再構成される汎用コンピュータで構成することでできる。このようなコンピュータプログラムは、非一過性コンピュータ可読記憶媒体、例えば、フロッピディスク、光ディスク、CD-ROM及び磁気-光ディスクを含む任意形式のディスク、読み取り専用記憶装置(ROM)、読み取り書き込み記憶装置(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気、もしくは光カード又は電子命令を記憶するのに適した任意形式の媒体(これらには限られない)に記憶することができる。
【0071】
上述の詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに基づきアルゴリズム及び演算の記号による表示によって提供されている。これらアルゴリズムによる記述及び表示は、データ処理技術における当業者によって用いられ、かかる当業者の仕事の実質的内容を他人に最も効果的に伝える手段である。アルゴリズムがここでは、一般に、所望の結果をもたらすつじつまの合う一連のステップであると考えられる。これらステップは、物理量の物理的操作を必要とするステップである。通常、必ずしも必要であるというわけではないが、これら物理量は、記憶可能であり、伝送可能であり、組み合わせ可能であり、比較可能であると共に違ったやり方で操作可能な電気信号又は磁気信号の形態を取っている。これら信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、数等として表すことは、主として共通使用の理由で場合によっては好都合であることが分かっている。
【0072】
しかしながら、念頭に置くべきこととして、これらの用語及び類似の用語の全ては、適当な物理量と関連すべきでありしかもこれら物理量に付けられる都合の良いラベルであるに過ぎない。具体的な別段の指定がなければ、上述の説明から明らかなように、明細書全体を通じて、例えば「捕捉する」、「決定する」、「分析する」、「駆動する」等の用語を利用した説明がコンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内で物理(例えば、電子)量として表されたデータを操作してこれらをコンピュータシステムメモリ若しくはレジスタ又は他のかかる情報格納、伝送又は表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに変換するコンピュータシステム又は類似の電子コンピュータ計算装置の行為及びプロセスを意味していることは理解されよう。
【0073】
上記において提供されたアルゴリズム及びディスプレイは、本来、任意特定のコンピュータ又は他の装置には関連していない。種々の汎用システムを本明細書において説明した教示に従ってプログラムに使用することができ、或いは、必要な方法ステップを実施するためにより専用の装置を構成することが好都合であると言える場合がある。種々のこれらのシステムに必要な構造は、以下の説明から明らかであろう。加うるに、本発明は、任意特定のプログラミング言語を用いて本発明を説明していない。理解されるように、本明細書において説明した本発明の教示を具体化するために種々のプログラミング言語を用いることができる。
【0074】
本明細書全体を通じて「一実施形態」又は「実施形態」と言った場合、これは、この実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。従って、上記説明全体を通じて種々の場所で「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句が記載されていることによっては、必ずしもこれらが全て同一の実施形態を意味するものではない。さらに、特定の特徴、構造又は特性を1又は2以上の実施形態において何らかの適切な仕方で組み合わせることができる。
【0075】
説明の目的で特定の実施形態を参照して上述の説明を行った。しかしながら、上述の説明は、網羅的ではなく、もしくは、本発明を開示した形態そのものに限定するものではない。上述の教示を考慮して多くの改造及び変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的用途を最も良く説明するために選択されると共に説明してあり、それにより、当業者は、想定される特定の用途に適合するように種々の実施形態に種々の改造を加えてこれら実施形態を最適利用することができる。
【0076】
方法及びプロセスは、特定のシーケンス又は順番で示されているが、別段の指定がなければ、行為の順序を変更することができる。従って、上述の方法及びプロセスは、例示としてのみ理解されるべきであり、上述の方法及びプロセスは、別の順序で実施でき、幾つかの行為は、並行に実施できる。加えて、1又は2以上の行為は、本発明の種々の実施形態では省略可能であり、従って、全ての具体化において全ての行為が必要であるというわけではない。他のプロセスフローの採用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16