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特許7449571流体制御装置、継手ブロック及び流体制御装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】流体制御装置、継手ブロック及び流体制御装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F16K27/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020563058
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048642
(87)【国際公開番号】W WO2020137572
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018244204
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221891(WO,A1)
【文献】特開2002-206700(JP,A)
【文献】特開2008-267428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する上面および底面、前記上面から前記底面側に向けて延びる側面を有し、流体流路を画定するとともに、前記上面で開口する当該流体流路の流路口を画定し、前記底面側にそれぞれ係合部を有する上流側および下流側継手ブロックと、
長手方向に直線状に延びるとともに上流側および下流側継手ブロックの係合部が係合可能なガイド部を有する支持部材と、
前記上流側および下流側継手ブロックを介して前記支持部材に支持される流体機器と、を有する流体制御装置であって、
前記ガイド部は、前記上流側および下流側継手ブロックのガイド方向への移動を許容しつつ当該上流側および下流側継手ブロックを前記支持部材上に拘束し、
前記流体機器は、流体流路を画定するボディを有し、当該ボディはその底面で開口する2つの流路口を有し、
互いに突き合わされた前記上流側および下流側継手ブロックの流路口と前記ボディの2つの流路口の周囲に配置されるシール部材を圧するとともに前記ボディを前記上流側および下流側継手ブロックに連結するための締結ボルトが螺合するネジ穴が、前記上流側および下流側継手ブロックの上面から底面側に向けて形成されており、
前記上流側継手ブロックのネジ穴は、長手方向において当該上流側継手ブロックの流路口よりも上流側にのみ形成され、
前記下流側継手ブロックのネジ穴は、長手方向において当該下流側継手ブロックの流路口よりも下流側にのみ形成され、
互いに連結された前記上流側および下流側の継手ブロックと前記ボディに前記締結ボルトの締付力によって発生する曲げ力に抗する反力を利用して、前記上流側および下流側の継手ブロックが前記ガイド部へ固定されており、
前記継手ブロックの長手方向における、前記係合部の長さは、前記継手ブロックの長さより短く形成され
前記継手ブロックの底面は、長手方向一方又は両方の端部に、前記継手ブロックから前記支持部材への力の加わる位置を規定する逃げ部を有する、流体制御装置。
【請求項2】
互いに対向する上面および底面、前記上面から前記底面側に向けて延びる側面を画定するとともに、上面に開口した流体流路を画定し、前記底面側に係合部を有する継手ブロックと、
長手方向に直線状に延びるとともに上流側および下流側継手ブロックの係合部が係合可能なガイド部を有する支持部材と、を有し、
前記ガイド部は、前記上流側および下流側継手ブロックのガイド方向への移動を許容しつつ当該上流側および下流側継手ブロックを前記支持部材上に拘束し、
底面側で開口する少なくとも2つの流路口を有し、該流路口が前記継手ブロックの流体流路と接続されるように前記継手ブロックの上面に固定された流体機器をさらに有する流体制御装置の製造方法であって、
互いに突き合わされた前記上流側および下流側継手ブロックの流路口と前記流体機器の2つの流路口の周囲に配置されるシール部材を圧するとともに前記流体機器を前記上流側および下流側継手ブロックに連結するための締結ボルトが螺合するネジ穴を、前記上流側および下流側継手ブロックの上面から底面側に向けて形成し、
前記上流側継手ブロックのネジ穴を、長手方向において当該上流側継手ブロックの流路口よりも上流側にのみ形成し、
前記下流側継手ブロックのネジ穴を、長手方向において当該下流側継手ブロックの流路口よりも下流側にのみ形成し、
前記継手ブロックの長手方向における、前記係合部の長さを、前記継手ブロックの長さより短く形成し、
前記継手ブロックの底面の長手方向一方又は両方の端部に、前記継手ブロックから前記支持部材への力の加わる位置を規定する逃げ部を形成し、
互いに連結された前記上流側および下流側の継手ブロックと前記流体機器に前記締結ボルトの締付力によって発生するモーメントに抗する反力を利用して、前記上流側および下流側の継手ブロックを前記ガイド部へ固定する工程を含む、流体制御装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器が集積化された流体制御装置、継手ブロックおよび、この流体制御装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置等のチャンバへ各種のプロセスガスを供給するために使用される流体制御装置としては、下記の引用文献1,2等に開示されたものが知られている。
これらの流体制御装置では、基板の上に固定されたレール等からなる支持部材に、流体流路を内部に有する複数の継手ブロックを係合させ、隣接する継手ブロックを跨ぐように各流体機器を継手ブロックに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-206700号公報
【文献】特開2015-175502号公報
【文献】国際公開WO2017/221893号
【文献】国際公開WO2017/221891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流体制御装置の分野においては、プロセスガスの供給制御により高い応答性が求められており、このためには流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるチャンバのより近くに設置する必要がある。
また、半導体ウエハの大口径化等の処理対象物の大型化が進んでおり、これに合わせて流体制御装置からチャンバ内へ供給する流体の供給流量も増加させる必要がある。
また、流体制御装置を小型化、集積化していくと、組立作業が難しくなり、組み立て工数が増大する。また、装置のメインテナンス性も低下する。
【0005】
これらの問題に対して、特許文献3及び4では、継手ブロックのネジ穴との位置関係を工夫することにより、流体流路径を確保しつつ継手ブロック等の幅寸法の縮小を実現している。また、互いに連結された継手ブロックと流体機器を締結する締結ボルトの締付力によって発生する曲げ力に抗するガイド部(レール部材)からの反力を利用して、継手ブロックをレール部材へ固定している。これにより、各流体機器のボディを各継手ブロックにボルトで締め付けるだけで、両者がレール部材に固定できるようにして、組み立て工数を低減している。
しかし、上記機構では、流体機器のボディと継手ブロックの締め付けによるロック時にレール部材がたわむという問題があった。このレール部材のたわみにより、レール部材が取り付けられた基板がたわんだり、組み立て性が悪くなったりする問題があった。
また、流体制御装置の製造時に、継手ブロックと流体機器との組立体を組み立ててからレール部材にはめ込む場合もあり、その際に、組立て誤差により組立体が僅かに屈曲していると、各継手ブロックの端部がレール部材の係合面に引っ掛かりやすいという問題もあった。
【0006】
本発明の一の目的は、上記課題を解決し、流体の供給流量を減少させることなく、一層の小型化、集積化を実現した流体制御装置であって、上記たわみの問題や組立性の問題が解決された流体制御装置、及び、流体制御装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流体制御装置は、互いに対向する上面および底面、前記上面から前記底面側に向けて延びる側面を有し、流体流路を画定するとともに、前記上面で開口する当該流体流路の流路口を画定し、前記底面側にそれぞれ係合部を有する上流側および下流側継手ブロックと、
長手方向に直線状に延びるとともに上流側および下流側継手ブロックの係合部が係合可能なガイド部を有する支持部材と、
前記上流側および下流側継手ブロックを介して前記支持部材に支持される流体機器と、を有する流体制御装置であって、
前記ガイド部は、前記上流側および下流側継手ブロックのガイド方向への移動を許容しつつ当該上流側および下流側継手ブロックを前記支持部材上に拘束し、
前記流体機器は、流体流路を画定するボディを有し、当該ボディはその底面で開口する2つの流路口を有し、
互いに突き合わされた前記上流側および下流側継手ブロックの流路口と前記ボディの2つの流路口の周囲に配置されるシール部材を圧するとともに前記ボディを前記上流側および下流側継手ブロックに連結するための締結ボルトが螺合するネジ穴が、前記上流側および下流側継手ブロックの上面から底面側に向けて形成されており、
前記上流側継手ブロックのネジ穴は、長手方向において当該上流側継手ブロックの流路口よりも上流側にのみ形成され、
前記下流側継手ブロックのネジ穴は、長手方向において当該下流側継手ブロックの流路口よりも下流側にのみ形成され、
互いに連結された前記上流側および下流側の継手ブロックと前記ボディに前記締結ボルト の締付力によって発生する曲げ力に抗する反力の一部を利用して、前記上流側および下流側の継手ブロックが前記ガイド部へ固定されており、
前記継手ブロックの長手方向における、前記係合部の長さは、前記継手ブロックの長さより短く形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の継手ブロックは、互いに対向する上面および底面、前記上面から前記底面側に向けて延びる側面を画定するとともに、流体流路を画定する継手ブロックであって、
前記底面側に係合部を有し、
それぞれ他の部材との連結可能な2つのネジ穴が上記上面から底面側に向けて形成され、当該2つのねじ穴は、長手方向において、前記2つの流路口の間に配置され、
長手方向における長さが、該長手方向における前記係合部の長さより長く形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の流体機器の製造方法は、上記構成の流体制御装置の製造方法であって、
互いに連結された前記上流側および下流側の継手ブロックと前記流体機器に前記締結ボルトの締付力によって発生するモーメントに抗する反力を利用して、前記上流側および下流側の継手ブロックを前記ガイド部へ固定する工程を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、係合部の長さを、継手ブロックの長さより短く形成したので、流体機器のボディと継手ブロックの締め付け時に、シール部材の反力によって発生する曲げモーメントに抗して両者の間に作用する力の作用点のスパンがより小さくなり、同じロック力を得るために必要な締結ボルトの締め付け力が小さくて済み、レール部材のたわみを低減できる。
また、係合部の長さを、継手ブロックの長さより短く形成したので、継手ブロックと流体機器との組立体が僅かに屈曲していても、係合部の端部の出張量が小さくなって、レール部材との引っ掛かりが少なくなり、組み立て性が向上した。
また、仮に締結ボルトの締め付け力を従前と同じにした場合でも、係合部の長さを、継手ブロックの長さより短く形成した結果、レール部材全体におよぶ屈曲量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の一実施形態に係る流体制御装置の外観斜視図。
図1B図1Aの流体制御装置の背面図。
図2図1Aの流体制御装置の一部を抽出した組立体の部分断面図。
図3A】レール部材の外観斜視図。
図3B図3Aのレール部材の側面図。
図4A】第1の実施形態の継手ブロックの外観斜視図
図4B図4Aの継手ブロックの正面図。
図4C図4Aの継手ブロックの左側面図。
図5A】開閉弁の斜視図。
図5B図5Aの開閉弁のボディの底面図。
図5C図5Aの開閉弁のボディの部分断面図。
図6A】レール部材を使用せずに基準面上に配置した第1の実施形態の組立体の模式図。
図6B図6Aの組立体を締結ボルトで締め付けたときの状態を示す模式図。
図6C】レール部材を使用して図6Aの組立体を締結ボルトで締め付けた状態を示す模式図。
図7】係合部とガイド部の係合状態を示す模式図であって、(a)は継手ブロックから上方向の力を受けた場合、(b)は継手ブロックから下方向の力を受けた場合。
図8】結合体が屈曲する場合の各係合部端部の出張量を説明する模式図。
図9A】第2の実施形態の継手ブロックの正面図。
図9B】第2の実施形態の組立体を締結ボルトで締め付けた状態を示す模式図。
図10A】比較例の継手ブロックの正面図。
図10B】比較例の組立体を締結ボルトで締め付けた状態を示す模式図。
図11A】係合部とガイド部のバリエーションの一例を示す模式図。
図11B】係合部とガイド部のバリエーションの他の例を示す模式図。
図11C】係合部とガイド部のバリエーションのさらに他の例を示す模式図。
図12A】係合部とガイド部のバリエーションのさらに他の例を示す模式図。
図12B】係合部とガイド部のバリエーションのさらに他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1A図10を参照して本発明の1実施形態に係る流体制御装置について詳細に説明する。
第1の実施形態は、各継手ブロックの係合部の長さを継手ブロックの全長より短くするとともに、継手ブロックの底面(被支持面)の長手方向の両端部に逃げ部を設けた形態である。
【0013】
図1A図1Bに示すように、流体制御装置1において、金属製のベースプレート10上には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる5本のレール部材50が設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。
本発明においては、ベースプレート10に付設されるレール部材50は複数に限定されるものではなく1本であっても良いが、本数が多ければ多い程本発明の効果は顕著になる。
図1Aに示すように、正面側と中央部に配置された2本のレール部材50には、複数の継手ブロック20,30を介して各種流体機器110A~110Eが設置され、複数の継手ブロック20,30によって、上流側から下流側に向かって流体が流通する流路がそれぞれ形成されている。背面側のレール部材50には、複数の継手ブロック20,30を介して流体機器110Eを除く流体機器110A~110Dと連通管330が設置され、上流側から下流側に向かって流体が流通する流路が形成されている。
ここで、本発明の「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの底面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)110A、レギュレータ110B、プレッシャーゲージ110C、開閉弁(3方弁)110D、マスフローコントローラ110E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0014】
導入管310は、継手部材300により、継手ブロック30に形成された図示しない2つの流路口の上流側の流路口に接続されている。継手部材300と継手ブロック30との間には図示しないシール部材が介在している。シール部材としては金属製又は樹脂製などのガスケットを挙げることが出来る。
ガスケットしては、軟質ガスケット、セミメタルガスケット、メタルガスケットなどが挙げられる。具体的には、以下のものが好適に使用される。
(1)軟質ガスケット
・ゴムOリング
・ゴムシート(全面座用)
・ジョイントシート
・膨張黒鉛シート
・PTFEシート
・PTFEジャケット形
(2)セミメタルガスケット
・うず巻形ガスケット(Spiral-wound gaskets)
・メタルジャケットガスケット
(3)メタルガスケット
・金属平形ガスケット
・メタル中空Oリング
・リングジョイント
【0015】
上記図示しないガスケットの両側から2本の締結ボルトBT2を締め付けることによりガスケットが圧せられ、継手部材300と継手ブロック30との間がシールされるようになっている。継手ブロック30に形成された流体流路の構成は、後述する継手ブロック20と同様なので、ここでは説明を省略する。継手ブロック30の図示しない下流側の流路口は、開閉弁110Aと接続されている。この部分の接続構造は、後述する継手ブロック20と流体機器110A~110Eとの後述する接続構造と同様であるので詳細説明は省略する。
流体制御装置1の3系統の流路には、例えば、正面側の導入管310を通じてアンモニアガス等のプロセスガスが導入され、中央部の導入管310を通じて、例えば、水素ガス等のプロセスガスが導入され、背面側の導入管310を通じて、窒素ガス等のパージガスが導入される。
3つの開閉弁(3方弁)110Dは、連通管320で互いに接続されており、パージガスをプロセスガスの流路に導入できるようになっている。
連通管330は、パージガスの流路系統にはマスフローコントローラ110Eが不要なので、マスフローコントローラ110Eの代わりに流路の途中に設けられている。
供給管340は、下流側に配置された3つの継手部材300の間を接続するとともに、図示しない処理チャンバに接続されている。
正面側、中央部および背面側の上流側および下流側の端部においては、それぞれストッパ400が締結ボルトBT2でガイド部55(図3参照)の底面に固定されており、各流路系統で互いに連結された流体機器110A~110Eの長手方向G1,G2への移動を規制している。ストッパ400は、流体機器の数等に応じて固定位置を適宜変更調整できる。
【0016】
図2は、流体制御装置1の一系統の流路の一部を構成する組立体200を示す部分断面図である。
組立体200は、レール部材50、このレール部材50上に配置された上流側および下流側継手ブロック20,20と、該継手ブロック20,20上に配置された、流体機器としての開閉弁110Aを有している。また、開閉弁110Aのボディ113と上流側および下流側継手ブロック20,20の間には、シール部材としてのガスケット120,120が設けられている。さらに、組立体200は、開閉弁110Aのボディ113を上流側および下流側継手ブロック20,20に連結するための2本の締結ボルトBTを有している。
【0017】
図3A図3Bは、レール部材50を示す図であり、図3Aは外観斜視図、図3Bは側面図である。
レール部材50は、例えば、ステンレス合金等の金属製の長尺の部材であり、断面が矩形状に形成され、上面51、これに直交する2つの側面52、上面51に平行で側面52に直交する底面53および長手方向の両端面54を画定している。上面51には、長手方向に溝状に形成されたガイド部55が延在している。このガイド部55は、図3Bに示すように、レール部材50の上面51および底面53の中央位置を通り長手方向に延びる仮想中央平面CPに関して対称に形成されており、ガイド部55は底面55bと、底面55bに向かって末広がり状に傾斜する2つの受け面55fとを有する。2つの受け面55fは逆向きに傾斜している。受け面55fは、底面55bに対して57度程度の角度で傾斜しているが、これに限定されるわけではない。レール部材50の上面51は、継手ブロック20,30、ストッパ400を支持可能な支持面として機能する。ガイド部55の底面55bの長手方向の両端部には、ベースプレート10にレール部材50を固定するための締結ボルト用の貫通孔56が形成されている。レール部材50の寸法は、幅および高さが10mm程度であり、全長が300mm程度であるが、これに限定されるわけではない。ストッパ400は、ガイド部55の長手方向の任意の位置に締結ボルトBT2で固定可能であるが、固定構造については周知のものを採用できるので詳細説明を省略する。
【0018】
図4A図4Cは、第1の実施形態の継手ブロック20を示す図であり、図4Aは外観斜視図、図4Bは正面図、図4Cは左側面図である。
継手ブロック20は、ステンレス合金等の金属製の部材であり、互いに対向する平面からなる上面20aおよび平面からなる底面20b、上面20aに対してそれぞれ直交する4つの側面21a、21b、21c、21dを有する。4つの側面21a、21b、21c、21dのうち、隣り合う2つ側面は互いに直交している。側面21a、21bは、長手方向の両端に位置する平面であり、側面21c、21dは長手方向に延びる平面である。なお、継手ブロック20は直方体形状の場合を例に挙げたが他の形状を採用することもできる。
底面20bは、レール部材50の上面51によって支持される被支持面として機能するが、この底面20bには係合部22が突出するように一体的に形成されている。係合部22は、底面20bから下方に向かって末広がり状に形成され、互いに逆向きで傾斜する係合面22fを有する。係合部22は、仮想中央平面CP2に関して対称に形成されており、係合面22fの底面22bに対する傾斜角度は、レール部材50の受け面55fと略同じ角度であるが、これに限定されるわけではない。係合部22はレール部材50のガイド部55に嵌合する形状を有し、レール部材50の長手方向の両端部からそれぞれ挿入可能である。ガイド部55は、係合部22の長手方向への移動を許容しつつ継手ブロック20をレール部材50上に拘束する。係合部22とガイド部55との間には、加工および組立の観点から、設定された公差範囲のガタが存在するが、このガタは後述するロック機構が確実に作動する範囲内に設定される。
本実施形態では、継手ブロック20の長手方向における、係合部22の長さは、継手ブロック20の長さより短く形成されている。これにより、継手ブロック20と流体機器110Aのボディ113との締結時に生ずるモーメントにより、継手ブロック20とレール部材50とがロックされる際、継手ブロック20の長手方向の端部より内側の部分に位置する係合部22の係合面22fが、レール部材50の受け面55fに当接するようになっている。
【0019】
また、本実施形態では、継手ブロック20の底面20bの長手方向の両端部に逃げ部20cを有する。この逃げ部20cは、継手ブロック20と流体機器110Aのボディ113との締結時に生ずるモーメントにより、継手ブロック20とレール部材50とがロックされる際、継手ブロック20の底面20bの端部より内側の部分が、支持面であるレール部材50の上面51に当接するようになっている。本実施形態では、逃げ部20cは、底面20bから内部に退くテーパ面になっている。しかし、逃げ部20cは、テーパ面に限らず、底面20bから内部に退く段差面や、曲面であっても良い。
【0020】
継手ブロック20の画定する流体流路23は、上面20aから底面20b側に向けて延びるとともに上面20aで開口する流路口24aを有する第1の垂直流路23aと、長手方向において互いに離隔した位置に、上面20aから底面20b側に向けて延びるとともに上面20aで開口する流路口24bを有する第2の垂直流路23bと、継手ブロック20の内部を長手方向に直線状に延びて第1および第2の垂直流路23a,23bと接続される水平流路23cとを含む。
継手ブロック20の上面20a側で開口する流路口24a、24bの周囲には、ガスケット120をそれぞれ保持するための保持凹部26,26が形成されている。
継手ブロック20には、長手方向において、上面20aで開口し底面20b側に向けて延びる2つのネジ穴25a、25bが形成されている。ネジ穴25a、25bは、上面20aで開口する2つの流路口24a、24bの間に位置する。継手ブロック20の寸法仕様は、例えば、幅が10mm程度、長さが30mm程度、流体流路23の直径が2.6mm程度。高さが13mm程度であるが、これに限定されるわけではない。継手ブロック20およびレール部材50の幅は、約10mmで略一致している。
【0021】
ネジ穴25aは、継手ブロック20の長手方向において流路口24aに対して一方側にのみ形成されている。このような構成とすることにより、1本の締結ボルトBTの締結力で、流路口24aの周囲をシールするガスケット120を押しつぶすことができるとともに、継手ブロック20と開閉弁110Aのボディ113とを連結することができる。この結果、継手ブロック20の幅を大幅に狭小化することが可能となる。同様に、ネジ穴25bは、流路口24bに対して、側面21b側ではなく側面21a側にあり、流路口24bに対して一方側のみに形成されている。このような構成とすることにより、1本の締結ボルトBTで、流路口24bの周囲をシールするガスケット120を押しつぶすとともに、継手ブロック20と他の流体機器のボディ113とを連結することができる。
【0022】
図5A図5Cは、開閉弁(流体機器)110Aを示す図であって、図5Aは斜視図、図5Bは底面図、図5C図5BのVC-VC線方向の部分断面図である。
開閉弁110Aは、アクチュエータ内蔵部111、バルブ内蔵部112およびボディ113を有し、継手ブロック20を介してレール部材50に支持される。
ボディ113の幅は、継手ブロック20の幅と整合しており、例えば、10mm程度であるが、これに限定されるわけではない。
ボディ113は、流体流路117を画定するとともに、この流体流路117は、底面113b側で開口する2つの流路口117aを有し、2つの流路口117aにはそれぞれガスケット120を保持する保持用凹部116が形成されている。
ボディ113の長手方向の両端部には、上面113aから底面113bに向けて、締結ボルトBTを挿通するための貫通孔114がそれぞれ形成されている。
【0023】
ガスケット120は、図示省略するが、厚みを有する略ワッシャ上に形成されている。

ガスケットは、ステンレス合金等のボディ113と同じ材料で形成することができるが、ボディ113よりも硬度が十分に低くなるように熱処理する必要がある。金属材料以外にも、樹脂製のガスケットを使用することも可能である。
【0024】
ここで、本発明のロック機構について説明する。
本記実施形態では、ロック機構は、レール部材50のガイド部55の2つの受け面55fと、継手ブロック20の係合部22の2つの係合面22fを含む。
図6Aは、レール部材50上ではなく、基準面BS上に2つの継手ブロック20,20を置き、ガスケット120を所定箇所に配置し、この上に流体機器としての開閉弁110Aのボディ113を置いた状態を示している。
この状態においては、ガスケット120が圧せられていないので、ボディ113の底面113bと2つの継手ブロック20の上面20aとの間には、ほぼ一定の隙間GPが形成される。
次いで、図6Bに示すように、上流側および下流側継手ブロック20,20のネジ穴25a,25bにボディ113の貫通孔114を通じて締結ボルトBTをねじ込み、締めつけていくと、上流側および下流側継手ブロック20,20には、ネジ穴25a,25bに矢印F,Fで示す方向の引き上げ力が作用するとともに、ガスケット120,120からは矢印F,Fで示す下向きの力が作用する。したがって、上流側継手ブロック20には、図で時計回りのモーメントが加わり、下流側継手ブロック20には、図で反時計回りのモーメントが加わる。図6Bは、これらのモーメントにより継手ブロックが回転方向に変位する様子を強調して示している。
【0025】
図6C(a)は、レール部材50のガイド部55に上流側および下流側継手ブロック20,20の係合部22,22を挿入し、図6Bと同様に締結ボルトBTを締め付けた状態を示す。
このとき、上流側(図で左側)の継手ブロック20に加わる上記時計回りのモーメントが、この継手ブロック20の回転方向の変位を拘束しているレール部材50に加わり、係合部22の左端に対応するA点に上方向の力W、右側の逃げ部20cの最奥部に対応するB点に下方向の力Wがそれぞれ加わる。
同様に、下流側(図で右側)の継手ブロック20に加わる上記反時計回りのモーメントが、この継手ブロック20の回転方向の変位を拘束しているレール部材50に加わり、係合部22の右端に対応するD点に上方向の力W、左側の逃げ部20cの最奥部に対応するC点に下方向の力Wがそれぞれ加わる。
【0026】
図7は、レール部材50と継手ブロック20の係合部が係合した状態を示す断面図である。
図7(a)は、上方向の力Wが加わったA,D点(図6C参照)における状態を示す。このとき、レール部材50の上面51(支持面)と継手ブロック20の底面20b(被支持面)との間には、所定の隙間cが存在する一方、レール部材50の受け面55fは、継手ブロック20の係合面22fと接触し、上方向の力Wを受けている。
一方、図7(b)は、下方向の力Wが加わったB,C点(図6C参照)における状態を示す。このとき、レール部材50の受け面55fと継手ブロック20の係合面22fとの間には、隙間eが存在する一方、レール部材50の上面51(支持面)は、継手ブロック20の底面20b(被支持面)と接触し、下方向に力Wを受けている。
これらの力Wの作用により、継手ブロック20,20は、レール部材50に対してロックされる。
【0027】
このロックの際に生ずるレール部材50のたわみについて検討する。
図6C(b)は、図6C(a)のレール部材50と等価の梁のたわみのモデルを示す。
このレール部材50のB,C点に下方向の力Wが、A,D点に上方向の力Wがそれぞれ加わる。各継手ブロック20の長さをl、組立体中心からA点(又はD点)、B点(又はC点)までの距離をそれぞれa、bとすると、継手ブロック20の両端位置でのレール部材50のたわみ量δは、下式で表される。
【数1】
ここで、Eはヤング率、Iは断面2次モーメントである。
したがって、aとbの差が小さいほどたわみ量δは小さくなる。
例えば、a=0.7,b=0.15とすると、δ=0.54(Wl/3EI)程度になるので、Wの値をロックに必要な所定値に管理する場合、後述する従来構造のたわみ量(Wl/3EI)の0.54倍と小さくなる。
【0028】
一方、上記Wを得るのに必要な締結ボルトBTの締結力Fについて検討する。
継手ブロック20に対して締結ボルトBTの締結力Fとガスケットの反力(Fに等しい)によって生ずるモーメントと、レール部材50から加わるモーメントは等しいから、締結ボルトBTとガスケットの120の中心との距離をsとすると、
F=W(a-b)/sの関係が成り立つ。
本実施形態の構造で、例えば、s=0.23、a=0.7、b=0.15のときは、必要な締結力Fは、F=2.3W程度になる。これは、後述する従来構造(s=0.23、a=1、b=0)の締結力F=4.3Wの0.54倍と小さくなる。
【0029】
したがって、本実施形態では、小さい締結力Fで、必要なロック力Wが得られ、たわみ量δも小さくなる。
このたわみ量δを小さくする効果は、継手ブロック20の係合部の長さを短くし、かつ底面の逃げ部を大きくすることによって、力Wの作用点のスパン(a-b)を小さくするほど高まる。しかし、前記スパン(a-b)を小さくしすぎると、締結ボルトBTを締め込んでも各作用点での継手ブロック20のレール部材50への近接・離間方向の変位が小さくなり隙間c(図7(a)参照)を越えにくくなって、ロックが掛かりにくくなる。
したがって、継手ブロック20の係合部の縮小量や底面の逃げ部の大きさは、適切な量に設定すること、または、隙間c(図7(a)参照)を極力小さくすることが必要である。
【0030】
なお、上記梁のたわみのモデルは、流体機器(開閉弁)110Aとその上流側および下流側継手ブロック20,20からなる組立体200に係合されたレール部材50について、継手ブロック20,20の両端位置におけるレール部材50のたわみ量δ(「単位組立体当たりのたわみ量δ」ともいう)について検討した。しかし、実際の流体制御装置では、前記上流側および下流側継手ブロック20,20の両側にさらなる流体機器110A等が接続され、その外側にさらなる継手ブロック20,20等が接続されて、上記組立体200の構成が半分ずつ重なり合って連続している。したがって、実際の流体制御装置でのレール部材50の両端部でのたわみ量の計算は困難であるが、上記単位組立体当たりのたわみ量δが大きければ、レール部材50の両端部でのたわみ量も大きくなると考えられる。したがって、後述の実施形態及び比較例についても、前記同様に、単位組立体当たりのたわみ量δを検討する。
【0031】
次に、本実施形態において、継手ブロック20と流体機器110Aとの組立体200をあらかじめ組み立ててからレール部材50へはめ込む際の組立性について検討する。
図8に示すように、組み立て誤差により、組立体が曲率半径rの円弧Arcに外接する多角形状に屈曲している場合を考える。この多角形とは、引っ掛かりやすい各継手ブロック20の係合部22の長さ方向の各端部Eを結ぶ多角形とし、各係合部の底面の長手方向中心CTで前記円弧Arcに外接していると仮定する。
係合部22の長さをdとすると、各係合部22の端部Eの出張量qは、q=d/8rで近似される。
本実施形態では、d=0.4*l(lは継手ブロックの長さ)としたので、出張量qは、q=0.16*l/2rとなり、後述する従来例(a=1*l)の場合の0.16倍と小さい。したがって、組立体をレール部材に挿入する際に、引っ掛かりにくくなり、組み立て性も向上する。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、図9Aに示すように、各継手ブロック20の係合部22の長さを継手ブロック20の全長より短くした形態で、継手ブロック20の被支持面(底面20b)の長手方向の両端部に逃げ部は設けない形態である。
本実施形態は、継手ブロック20の被支持面(底面20b)の長手方向の両端部に逃げ部を設けていない点を除いて第1の実施形態と同様なので、共通部分の詳細な説明は省略する。
図9B(a)は、本実施形態の継手ブロック20を用いた組立体201を示す部分断面図である。2つの継手ブロック20,20をレール部材50に係合し、流体機器との間を締結ボルトBTで締め込むと、第1の実施形態と同様に、締結ボルトの締結力Fとガスケットの反力(Fに等しい)によって、各継手ブロック20,20を互いに反対方向に回転させようとするモーメントが生じ、このモーメントがレール部材50に加わる。このモーメントは、本実施形態では、係合部22の先端に対応するレール部材50のA,D点に上向きの力Wとして加わり、左右の継手ブロック20の底面20bの端部が互いに当接するG点(組立体の中央)に下向きの力2Wとして加わる。
これらの力Wの作用により、継手ブロック20,20は、レール部材50に対してロックされる。
【0033】
このロックの際に生ずるレール部材50のたわみについて検討する。
図9B(b)は、図9B(a)のレール部材50と等価の梁のたわみのモデルを示す。
各継手ブロック20の長さをl、中心からA点又はD点までの距離をaとすると、継手ブロック20の両端位置でのレール部材50のたわみ量δは、下式で表される。(この式2は、式1において、b=0とした場合に相当する。)
【数2】
ここで、Eはヤング率、Iは断面2次モーメントである。
したがって、aが小さいほどたわみ量δは小さくなる。
例えば、a=0.7とすると、δ=0.56(Wl/3EI)程度になるので、Wをロックに必要な所定値に管理する場合の、後述する従来構造のたわみ量(Wl/3EI)の0.56倍と小さくなる。
【0034】
一方、上記Wを得るのに必要な締結ボルトBTの締結力Fについて検討する。
締結ボルトBTの締結力Fとガスケット120の反力(Fに等しい)によって生ずるモーメントと、レール部材50に加わるモーメントは等しいから、締結ボルトBTとガスケットの120の中心との距離をsとすると、F=Wa/sの関係が成り立つ。
本実施形態の構造で、例えば、s=0.23、a=0.7のときは、締結力F=2.9W程度になる。これは、後述する従来構造(s=0.23、a=1)の締結力F=4.3Wの約0.67倍と小さくなる。
【0035】
本実施形態における、継手ブロックと流体機器との組立体をあらかじめ組み立ててからレール部材50へはめ込む際の組立性について検討すると、継手ブロックの係合部の両端部の出張量q(図8参照)は、第1の実施形態と同じなので、引っ掛かりは起こりにくいと考えられる。但し、継手ブロックの底面の逃げがない分、第1の実施形態より、継手ブロック底面の端面での引っ掛かりが起こる可能性は高いと考えられる。
【0036】
(比較例)
比較例は、図10Aに示すように、各継手ブロック20の係合部22の長さを継手ブロック20の全長と同一にした形態で、継手ブロック20の被支持面(底面20b)の長手方向の両端部の逃げ部も設けない形態である。
本比較例は、これらの点を除いて第1及び第2の実施形態と同様なので、共通部分の詳細な説明は省略する。
図10B(a)は、本実施形態の継手ブロック20を用いた組立体202を示す部分断面図である。2つの継手ブロック20,20をレール部材50に係合し、流体機器110Aとの間を締結ボルトBTで締め込むと、第1及び第2の実施形態と同様に、締結ボルトBTの締結力Fとガスケット120の反力(Fに等しい)によって、各継手ブロック20,20を互いに反対方向に回転させようとするモーメントが生じ、このモーメントがレール部材50に加わる。このモーメントは、本比較例では、継手ブロック20の底面20bの外側端部の位置に対応するレール部材50のA,D点に上向きの力Wとして加わり、継手ブロック20の内側端部の位置(すなわち組立体の中心)G点に下向きの力合計2Wとして加わる。
これらの力Wの作用により、継手ブロック20,20は、レール部材50に対してロックされる。
【0037】
このロックの際に生ずるレール部材50のたわみについて検討する。
図10B(b)は、図10B(a)のレール部材50と等価の梁のたわみのモデルを示す。
梁の中心部に下方向の力2Wが加わり、梁の両端部にそれぞれ上方向の力Wが加わった状態と等価である。
各継手ブロック20の長さをl、中心から両端部までの距離をlとすると、継手ブロック20の両端位置でのレール部材50のたわみ量δは、下式で表される。(この式3は、式1において、a=l、b=0とした場合に相当する。)
【数3】
ここで、Eはヤング率、Iは断面2次モーメントである。
したがって、たわみ量δは、Wl/3EIとなり、前記第1及び第2の実施形態の場合より大きい。
【0038】
一方、上記Wを得るのに必要な締結ボルトBTの締結力Fについて検討する。
締結ボルトの締結力Fとガスケットの反力(Fに等しい)によって生ずるモーメントと、レール部材50に加わるモーメントは等しいから、締結ボルトBTとガスケットの120の中心との距離をsとすると、F=Wl/sとの関係が成り立つ。
本比較例の構造で、例えば、s=0.23、l=1のときは、締結力F=4.17W程度になり、前記第1及び第2の実施形態の場合より大きい。
【0039】
次に、本比較例において、継手ブロックと流体機器との組立体をあらかじめ組み立ててからレール部材50へはめ込む際の組立性について検討する。第1の実施形態で説明したように、組立体の曲率半径をr、係合部の長さをdとすると、各係合部の端部の出張量q(図8参照)は、q=d/8rで近似される。本比較例では、d=lなので、出張量qは、q=l/8rとなり、第1の実施形態の場合の出張量q=0.16*l/8rより大きい。
【0040】
以上の検討結果をまとめると、下表のようになる。
【表1】
表1は、ロック力Wを一定にした場合の締結力Fとたわみ量δの例を示す。
必要なロック力Wを得るために必要な締結力Fは、第1及び第2の実施形態では、比較例の各々0.55倍と0.7倍と小さくなり、たわみ量δも各々0.53倍、0.56倍と小さくなる。
したがって、必要なロック力Wが得られるように、低減した締結力Fを得るべく締結ボルトBTのトルク管理を行えば、たわみ量δを大幅に減らすことができる。
【0041】
【表2】
一方、表2は、締結力Fを従来と同じに設定した場合の、ロック力(W)とたわみ量(δ)の例を示す。この場合、たわみ量δは、第1及び第2の実施形態では、比較例の各々0.97倍と0.81倍と小さくなる。一方、ロック力(W)は、第1及び第2の実施形態では、比較例の各々1.82倍と1.43倍に増加する。
【0042】
以上より、必要なロック力Wが得られるように、低減した締結力Fを得るべく締結ボルトBTのトルク管理を行うことが、たわみ量δを大幅に減らすことができ、好ましい。
尚、この必要なロック力Wや、それを実現する締結ボルトBTのトルクなどは、取り付ける流体機器の数や重さ、設置する向き(縦置きか横置きか)等を考慮して、計算で求めても良いし、実験で求めても良い。また、締結力Fを低減させず従来と同じ値に設定した場合でもたわみ量(δ)の低減効果が期待できる。
【0043】
【表3】
表3は、組立体を予め組み立ててからレール部材50へはめ込む際の組立性を、係合部22の端部の出張量qで評価した結果を示す。第1及び第2の実施形態では、比較例に比べて出張量qが減少したので、組立体をレール部材50に挿入する際に、引っ掛かりにくくなり、組み立て性も向上する。
【0044】
上記各実施形態では、係合部22の係合面22fおよびガイド部55の受け面55fを斜面のみで形成したが、図11Aに示すように、係合部22_1,ガイド部55_1を傾斜面と垂直面とで構成することもできる。また、図11B図11Cに示すように、係合部22_2,22_3,ガイド部55_2,55_3に湾曲面を用いてもよい。さらに、図12A,12Bに示すように、係合部22_4,22_5を凹状、ガイド部55_4,55_5を凸状としてもよい。
【0045】
上記実施形態では、継手ブロック20とボディ113とを1本の締結ボルトBTで連結する場合について説明したが、流路口24aに対してネジ穴が水平流路23c側に存在すれば、複数の締結ボルトBTを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 流体制御装置
10 ベースプレート
20 継手ブロック
20a 上面
20b 底面
20c 逃げ部
21a~21d 側面
22 係合部
22b 底面
22f 係合面(整列機構)
23 流体流路
23a、23b 垂直流路
23c 水平流路
24a、24b 流路口
25a,25b ネジ穴
26 保持凹部
30 継手ブロック
50 レール部材
55 ガイド部
55f 受け面(整列機構)
110A 開閉弁(2方弁)(流体機器)
110B レギュレータ(流体機器)
110C プレッシャーゲージ(流体機器)
110D 開閉弁(3方弁)(流体機器)
110E マスフローコントローラ(流体機器)
111 アクチュエータ内蔵部
112 バルブ内蔵部
113 ボディ
113a 上面
113b 底面
114 貫通孔
300 継手部材
310 導入管
320,330 連通管
340 供給管
400 ストッパ
BT,BT2 締結ボルト
GP,GP1,GP2,GP3 隙間
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B