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特許7449572分岐鎖アミノ酸蛍光センサーおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】分岐鎖アミノ酸蛍光センサーおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240307BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240307BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240307BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C07K19/00
C12Q1/02 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/195
C12N15/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020572599
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2019078274
(87)【国際公開番号】W WO2019174633
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】201810215698.7
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507166519
【氏名又は名称】▲華▼▲東▼理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 弋
(72)【発明者】
【氏名】趙 玉政
(72)【発明者】
【氏名】李 写
(72)【発明者】
【氏名】鄒 叶君
(72)【発明者】
【氏名】張 長程
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/052946(WO,A2)
【文献】国際公開第2007/007199(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132774(US,A1)
【文献】Biosensors and Bioelectronics,2013年,vol.50,p.72-77
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2007年,vol.8,p.513-525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ロイシン応答性ポリペプチドと、
b)光学活性ポリペプチドと、
を含む蛍光センサーであって、
前記光学活性ポリペプチドが前記ロイシン応答性ポリペプチドに挿入されており、
前記ロイシン応答性ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%の同一性をもつアミノ酸配列を有し、ペリプラズム結合タンパク質の典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、
前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基248~258または残基325~329の間に挿入されるか、または前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基248~258または残基325~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、
或いは、
前記ロイシン応答性ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列または配列番号2と少なくとも90%の同一性をもつアミノ酸配列を有し、ペリプラズム結合タンパク質の典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、
前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間に挿入されるか、または前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換している、ことを特徴とする蛍光センサー。
【請求項2】
前記ロイシン応答性ポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%の同一性をもつアミノ酸配列を有し、ペリプラズム結合タンパク質の典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基251255、325326、325327、325328、325329、326327、326328、326329または327328の間に挿入されるか、若しくは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基251~255、325~327、325~328、325~329、326~328または326~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し
或いは、
前記ロイシン応答性ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列、または配列番号2と少なくとも90%の同一性をもつアミノ酸配列を有し、ペリプラズム結合タンパク質の典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基328329、328330または329330の間に挿入されるか、若しくは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基328~330の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換している、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光センサー。
【請求項3】
前記ロイシン応答性ポリペプチドはさらに、イソロイシンおよび/またはバリンにも応答することを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光センサー。
【請求項4】
前記蛍光センサーは、前記ロイシン応答性ポリペプチドと前記光学活性ポリペプチドとの間に、1つまたは複数のリンカーをさらに有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の蛍光センサー。
【請求項5】
前記蛍光センサーは、位置決め配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光センサー。
【請求項6】
前記光学活性ポリペプチドは蛍光タンパク質であり、
前記光学活性ポリペプチドは、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光 タンパク質、オレンジ蛍光タンパク質、リンゴ赤色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質 からなる群から選ばれる、或いは
前記光学活性ポリペプチドは配列番号3~13に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光センサー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーをコードする核酸または前記核酸と相補性を有する核酸。
【請求項8】
発現制御配列と作動可能に連結される請求項7に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーを発現するベクターを含む細胞を提供する工程と、前記細胞の発現条件下で前記細胞を培養する工程と、前記蛍光センサー を分離する工程と、を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーの製造方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーまたは請求項10に記載の方法で製造される蛍光センサーをサンプルと接触させる工程と、前記光学活性ポリペプチドの変化を検出する工程と、を含む分岐鎖アミノ酸の検出方法であって、前記分岐鎖アミノ酸は、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選ばれることを特徴とする、分岐鎖アミノ酸の検出方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーまたは請求項10に記載の方法で製造されるサンプル中の分岐鎖アミノ酸を検出する蛍光センサーの使用であって、前記分岐鎖アミノ酸は、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選ばれることを特徴とする、蛍光センサーの使用。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光センサーまたは請求項10に記載の方法で製造される蛍光センサーを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光タンパク質に関し、より具体的には、分岐鎖アミノ酸を検出するための蛍光センサーおよびその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、ロイシン、イソロイシンおよびバリンを含み、タンパク質合成速度を調節するための効果的な栄養シグナル分子として機能する。これらの3つの分岐鎖アミノ酸は、人間にとって必須の9つのアミノ酸に属し、筋肉タンパク質中の必須アミノ酸の35%を、および哺乳類に必要なアミノ酸の40%を占めている。それらは免疫、脳機能および他の生理的方面で重要な役割を担う(P.C. Calder, 2006; B.Skeieら, 1990)。3つの分岐鎖アミノ酸は全て、リンパ球の成長と増殖に必要なものである(K.TajiriとY. Shimizu, 2013)。分岐鎖アミノ酸は脳のタンパク質合成とエネルギー生産に影響を与え、且つさまざまな神経伝達物質の合成に関与する可能性がある(J. D. Fernstrom, 2005)。
【0003】
ロイシンは分岐鎖アミノ酸の中で最も重要なアミノ酸であり(BuseとReid, 1975; Buseら, 1979 ; LiとJefferson, 1978 ; Anthonyら, 2000)、インスリン依存性および独立性の経路を介してmRNAの翻訳開始を刺激することで、筋肉タンパク質の合成を刺激することができる(Norton和Layman,2006)。ロイシンはある程度で血液脳関門を通過でき(Smithら, 1987)、他のアミノ酸よりも吸収されやすい(Grillら, 1992)。ロイシンは、タンパク質合成の翻訳制御(Kimball and Jefferson, 2001)や血糖調節(Layman and Baum, 2004)など、代謝においてユニークな調節的役割を果たす。研究により、分岐鎖アミノ酸の異常な含有量は通常、糖尿病(Hu, F. Bら, 2001;Wang, T. Jら, 2011;Mapstone, Mら, 2014)、肥満(Goffredoら, 2017)、老化(D'Antonaら, 2010)、癌(Tarlungeanu, D. Cら, 2016;Mayers, J. R.ら, 2014;Tonjes, Mら, 2013)などを含むいくつかの主要な代謝性疾患に関連していることが示された。
【0004】
分岐鎖アミノ酸、特にロイシンは上記の重要な機能を持っているからこそ、それらの含有量の検出も特に重要になる。常用される検出方法としては、質量分析法(Pontoni, Gら, 2014, 1996)、クロマトグラフィー(Tateda Nら,Analytical sciences : the international journal of the Japan Society for Analytical Chemistry 2001, 17(6):775-778;Wadud Sら,Journal of chromatography B, Analytical technologies in the biomedical and life sciences 2002, 767(2):369-374)、キャピラリー電気泳動法(Li X-tら,Chem Res Chin Univ 2013, 29(3):434-438;Meng Jら,The Analyst 2010, 135(7):1592-1599)、紫外可視分光法(Hortala MAら,J Am Chem Soc 2003, 125(1):20-21;Pu Fら, Anal Chem 2010, 82(19):8211-8216;Du Jら, Chemical communications (Cambridge, England) 2013, 49(47):5399-5401;Engeser Mら,Chemical Communications 1999, (13):1191-1192)がある。しかし、これらの検出方法には、細胞の破壊が必要であることやサンプルの処理に時間がかかること、分離・抽出・精製が困難であることなど、技術的に大きな欠陥があるせいで、インシチュでハイスループット定量分析を行うことができず、分岐鎖アミノ酸の関連研究分野の発展はある程度制限されている。
【0005】
従って、当技術分野では、高特異的な分岐鎖アミノ酸検出技術、特に生理的レベルおよび細胞下レベルに適した、インシチュで、リアルタイムで、動的で、ハイスループットで、時空間分解能の高い検出方法の開発が切望されている。
【0006】
当技術分野はまた、蛍光分光測定法(Engeser Mら,Chemical Communications 1999, (13):1191-1192)によって、Ni(II)テトラアザ大環状錯体と共有結合したナフタレン断片の蛍光発光強度の変化の計測により分岐鎖アミノ酸を測定するが、前記のNi(II)テトラアザ大環状錯体は温度依存性のスピン交換相互作用を受ける必要がある。該方法では、依然として前記のようなモニターの要求を満たすことができない。
【0007】
従来の低分子色素検出技術や急速に発展している量子ドット検出技術と比較して、蛍光タンパク質検出技術は、ほとんどの生細胞イメージングにおいてユニークで且つ圧倒的な利点を持っており、細胞、組織、ひいては臓器全体に遺伝的に導入することができるので、蛍光タンパク質は、全細胞マーカーまたは遺伝子活性化の指標とすることができる。
【0008】
緑色蛍光タンパク質は元々オワンクラゲ(Aequorea victoria)から抽出されたものであり、野生型AvGFPは238個のアミノ酸からなり、分子量は約26 kDである。従来の研究で確認されたように、天然GFPタンパク質の65~67番目の3つのアミノ酸Ser-Tyr-Glyは、自発的にp-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(p-hydroxybenzylideneimidazolinone)という蛍光発色団を形成することができ、その発光の本体となる。野生型AvGFPのスペクトル特徴は非常に複雑で、蛍光励起のメインピークは395 nmにあり、475 nmには別のサテライトピークがあるが、後者の蛍光強度は前者の約1/3である。標準的な溶液条件において、395 nmで励起すると508 nmで発光が得られ、475 nmで励起すると503 nmで最大発光波長が得られる(Heim,R.ら,Proc Natl Acad Sci U S A. 1994,V.91(26),pp.12501-12504)。
【0009】
GFPタンパク質変異に対する研究の深化に伴い、分子生物学技術を用いて、抜群のGFP誘導体が既に数多く開発されており、野生型GFPを基に異なる単一点変異またはその組み合わせを行うことで、例えば増強型のGFP(S65T、F64L)、YFP(T203Y)、CFP(Y66W)などを得ることができる。一方、GFPタンパク質配列の再配列により、元の145~238位のアミノ酸部分を新規タンパク質のN末端とし、元の1~144位のアミノ酸を新規タンパク質のC末端とし、両者の断片を一つの柔軟な短ペプチド鎖を介して連結させ、空間変化に敏感な円順列変異蛍光タンパク質(circular permutation fluorescent protein)を形成した上で、元のタンパク質のT203Yに点変異を行うと、円順列変異黄色蛍光タンパク質cpYFPが形成される(Nagai,Tら,Proc Natl Acad Sci U S A. 2001,V.98(6),pp.3197-3202)。
【0010】
蛍光タンパク質に関する研究がますます深くなっているため、関連するいくつかの蛍光による分析・検出技術もさらに開発されている。例えば、従来で常用されている蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術の主な原理は、2つの蛍光発色団が十分に接近する場合、所定の周波数のフォトンを吸収したドナー分子がより高い電子エネルギー状態に励起され、該電子が基底状態に戻る前に、双極子相互作用によって隣接のアクセプター分子へのエネルギー移動が実現される(つまり、共鳴エネルギー移動が発生する)。FRETは非放射エネルギー遷移であって、分子間の電気双極子相互作用により、ドナーの励起状態のエネルギーがアクセプターの励起状態に移動する過程であり、ドナーの蛍光強度は低下するが、アクセプターはそれ自体の特徴的な蛍光よりも強く発光することができ(蛍光増感)、または蛍光を発光しなくてもよい(蛍光消光)。緑色蛍光タンパク質に関する従来のさらなる研究により、緑色蛍光タンパク質変異体から由来のシアン蛍光タンパク質(CFP)と黄色蛍光タンパク質(YFP)は、抜群のドナー/アクセプターペアであることが分かった。CFPの発光スペクトルとYFPの吸収スペクトルはかなり重なり合っており、それらが十分に接近すると、CFPの吸収波長による励起で、CFPの発色団がエネルギーを効率的にYFPの発色団に共鳴移動させることから、CFPの蛍光発光は弱くなるまたは消滅し、主要な発光はYFPの蛍光になる。2つの発色団の間のエネルギー移動効率は、それらの間の空間距離の6乗に反比例し、空間位置の変化に非常に敏感である。従って、従来の研究報告では、遺伝子工学的な組換え手段を利用し、研究しようとするタンパク質遺伝子の両末端をそれぞれCFPおよびYFPと融合させ、新規な融合タンパク質を発現させ、該タンパク質とその特異的な標的分子との結合によって生じる空間の変化を、蛍光の変化によって直観的に表示させる。
【0011】
従って、本文で用いられる蛍光タンパク質の配列は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)の蛍光タンパク質およびその誘導体から由来のものであってもよく、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)などの配列を含むが、これらに限定されず、そのうち、黄色蛍光タンパク質YFPの配列が好ましく、円順列変異型の黄色蛍光タンパク質cpYFPの配列がより好ましい。
【0012】
分岐鎖アミノ酸とロイシンの結合タンパク質は両方とも、大腸菌(Escherichia coli)から由来するもの、或いはサルモネラから由来し且つ分岐鎖アミノ酸とロイシンの結合タンパク質と90%以上の相同性を持つは分岐鎖アミノ酸とロイシンの結合タンパク質であり、ペリプラズム結合タンパク質の有する2つの典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、分岐鎖アミノ酸とロイシンに結合できる。
【0013】
発明者らは、蛍光タンパク質を分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質と融合させた蛍光センサーが、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質と分岐鎖アミノ酸またはロイシンとの結合をリアルタイムで且つ直観的に表示できることを見出した。
【0014】
本文に記載の参考文献に対する引用または検討は、これらの参考文献が本発明に対して従来技術であることを認めたものとして理解すべきではない。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、細胞内外において、分岐鎖アミノ酸またはロイシンをリアルタイムで位置決め、ハイスループットで定量的に検出するための分岐鎖アミノ酸蛍光センサーまたはロイシン蛍光センサーを提供することである。
【0016】
本発明は、a)ロイシン応答性ポリペプチドと、b)光学活性ポリペプチドとを含む蛍光センサーであって、前記光学活性ポリペプチドが前記ロイシン応答性ポリペプチドに挿入されている蛍光センサーを提供する。一つの実施形態において、ロイシン応答性ポリペプチドはさらに、イソロイシンやバリンのような他の分岐鎖アミノ酸にも応答する。
【0017】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは蛍光タンパク質、またはその機能性断片若しくは変異体である。一つの実施形態において、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、オレンジ蛍光タンパク質、リンゴ赤色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質からなる群から選ばれる。一つの実施形態において、蛍光タンパク質は配列番号3~13に示される配列を有する。
【0018】
一つの実施形態において、本発明にかかる蛍光センサーはさらに、ロイシン応答性ポリペプチドと光学活性ポリペプチドの間にある1つまたは複数のリンカーを含む。一つの実施形態において、本発明にかかる蛍光センサーはリンカーを含まない。本発明における前記リンカーは、任意のアミノ酸配列であってもよいが、その長さが4個のアミノ酸を超えないものは好ましい。
【0019】
一つの実施形態において、本発明にかかる蛍光センサーはさらに、センサーを例えば細胞の特定の細胞小器官へ位置決めするための位置決め配列を含む。
【0020】
一つの実施形態において、本発明における前記ロイシン応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片、およびロイシン結合タンパク質またはその機能性断片からなる群から選ばれる。
【0021】
一つの実施形態において、本発明における前記ロイシン応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号1に示される配列またはその機能性断片を有する配列、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列が好ましい。
【0022】
一つの実施形態において、本発明における前記ロイシン応答性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号2に示される配列またはその機能性断片を有する配列、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列が好ましい。
【0023】
本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの任意の位置にあってもよい。一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間に位置し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長またはロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長またはロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。
【0024】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、325/326、325/327、325/328、325/329、326/327、326/328、326/329、327/328、327/329または328/329。
【0025】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、327/328、327/329、327/330、327/331、328/329、328/330、328/331、329/330、329/331または330/331。
【0026】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基325~329の間に位置し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基325~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基326/327または327/328の間に位置する。
【0027】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間に位置し、番号は前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号はロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基328/329または329/330の間に位置する。
【0028】
本発明のもう一つは、a)分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドと、b)光学活性ポリペプチドとを含む蛍光センサーであって、前記光学活性ポリペプチドが前記分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドに挿入されている蛍光センサーを提供する。
【0029】
一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは蛍光タンパク質、またはその機能性断片若しくは変異体である。一つの実施形態において、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、オレンジ蛍光タンパク質、リンゴ赤色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質からなる群から選ばれる。一つの実施形態において、蛍光タンパク質は配列番号3~13に示される配列を有する。
【0030】
一つの実施形態において、蛍光センサーは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドと光学活性ポリペプチドの間にある1つまたは複数のリンカーを含む。一つの実施形態において、蛍光センサーはリンカーを含まない。本発明における前記リンカーは、任意のアミノ酸配列であってもよいが、その長さが4個のアミノ酸を超えないものは好ましい。
【0031】
一つの実施形態において、蛍光センサーは、センサーを例えば細胞の特定の細胞小器官へ位置決めするための位置決め配列を含む。
【0032】
一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸はロイシン、イソロイシンバリンおよびバリンからなる群から選ばれる。
【0033】
一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片、およびロイシン結合タンパク質またはその機能性断片からなる群から選ばれる。
【0034】
一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号1に示される配列またはその機能性断片を有する配列、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列が好ましい。
【0035】
一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号2に示される配列またはその機能性断片を有する配列、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列が好ましい。
【0036】
本発明において、光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドの任意の位置にあってもよい。一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間に位置し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長またはロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長またはロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。
【0037】
一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、325/326、325/327、325/328、325/329、326/327、326/328、326/329、327/328、327/329または328/329。本文において、「X/Y」の形で表示される部位における2つの数字は連続した数字ではないと、光学活性ポリペプチドが該数字の間のアミノ酸を置換することを意味する。例えば、250/257とは、光学活性ポリペプチドがアミノ酸配列251~256を置換することを意味する。
【0038】
一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、327/328、327/329、327/330、327/331、328/329、328/330、328/331、329/330、329/331または330/331。本文において、「X/Y」の形で表示される部位における2つの数字は連続した数字ではないと、光学活性ポリペプチドが該数字の間のアミノ酸を置換することを意味する。例えば、250/257とは、光学活性ポリペプチドがアミノ酸配列251~256を置換することを意味する。
【0039】
一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基325~329の間に位置し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基326/327または327/328の間に位置する。一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基325~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。
【0040】
一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基327~331の間に位置し、番号はロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基327~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号はロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、本発明における前記光学活性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基328/329または329/330の間に位置する。
【0041】
本発明はさらに、本発明にかかる蛍光センサーをコードする核酸配列またはその相補配列を提供する。
【0042】
本発明はさらに、発現制御配列と作動可能に連結され、本発明にかかる蛍光センサーをコードする本発明にかかる核酸配列またはその相補配列を含む発現ベクターを提供する。
【0043】
本発明はさらに、発現制御配列と作動可能に連結される本発明にかかる核酸配列またはその相補配列を含む本発明にかかる発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0044】
本発明は、本発明にかかる蛍光センサーを発現するベクターを含む細胞を提供することと、前記細胞の発現条件下で前記細胞を培養することと、および前記蛍光センサーを分離することと、を含む本発明にかかる蛍光センサーの製造方法を提供する。
【0045】
本発明は、本発明にかかる蛍光センサーまたは本発明にかかる方法で製造される蛍光センサーをサンプルと接触させることと、および光学活性ポリペプチドの変化を検出することと、を含むサンプルにおけるロイシンの検出方法を提供する。
【0046】
本発明は、本発明にかかる蛍光センサーまたは本発明にかかる方法で製造される蛍光センサーをサンプルと接触させることと、および光学活性ポリペプチドの変化を検出することと、を含むサンプルにおける分岐鎖アミノ酸の検出方法を提供する。一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸はロイシン、イソロイシンバリンおよびバリンからなる群から選ばれる。前記検出は、インビボ、インビトロ、細胞下またはインシチュレベルで行うことができる。
【0047】
本発明は、本発明にかかる蛍光センサーまたは本発明にかかる方法で製造される蛍光センサーの、サンプルにおけるロイシンを検出するための使用を提供する。前記検出は、インビボ、インビトロ、細胞下またはインシチュレベルで行うことができる。
【0048】
本発明は、本発明にかかる蛍光センサーまたは本発明にかかる方法で製造される蛍光センサーの、サンプルにおける分岐鎖アミノ酸を検出するための使用を提供する。一つの実施形態において、分岐鎖アミノ酸はロイシン、イソロイシンバリンおよびバリンからなる群から選ばれる。前記検出は、インビボ、インビトロ、細胞下またはインシチュレベルで行うことができる。
【0049】
本発明はさらに、本発明にかかる蛍光センサーまたは本発明にかかる方法で製造される蛍光センサーを含むキットを提供する。
【0050】
本発明の有益な効果は:本発明にかかる蛍光センサーは、成熟しやすく、蛍光動的変化が大きく、特異性が良好で、且つ遺伝子操作の方法によって細胞中で発現させることもでき、細胞内外において、分岐鎖アミノ酸とロイシンをリアルタイムで位置決め、ハイスループットで定量的に検出することができる。時間のかかるサンプル処理ステップを省略した。実験結果によれば、本発明で提供される分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーは、分岐鎖アミノ酸とロイシンに対して3倍以上の最大応答を有し、細胞質、ミトコンドリア、細胞核、小胞体、細胞外膜、細胞内膜、ゴルジ体、リゾソームなどの細胞下構造において細胞を位置決めて検出することができ、且つハイスループットの化合物スクリーニングを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は実施例にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーのSDS-PAGE解析図である;
図2図2は実施例1にかかる黄色蛍光タンパク質cpYFPが分岐鎖アミノ酸結合タンパク質とロイシン結合タンパク質の異なる挿入部位で形成する分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーの、分岐鎖アミノ酸に対する応答の変化図である;
図3図3は実施例2にかかる青色蛍光タンパク質cpBFPが分岐鎖アミノ酸結合タンパク質とロイシン結合タンパク質の異なる挿入部位で形成する分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーの、分岐鎖アミノ酸に対する応答の変化図である;
図4図4は実施例3にかかるリンゴ赤色蛍光タンパク質cpmAppleが分岐鎖アミノ酸結合タンパク質とロイシン結合タンパク質の異なる挿入部位で形成する分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーの、分岐鎖アミノ酸に対する応答の変化図である。
図5図5は実施例4にかかる3種類の蛍光タンパク質が分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質のN末端若しくはC末端と連結してなる融合タンパク質の、分岐鎖アミノ酸に対する応答を示す。図5に示すように、融合タンパク質は対照に対して統計的に有意な変化が無かった。
図6図6は実施例5にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーの蛍光スペクトル特性図である;
図7図7は異なる濃度の分岐鎖アミノ酸に対する実施例5にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの滴定曲線、並びに異なる濃度のロイシンまたは分岐鎖アミノ酸に対する実施例5にかかるロイシン蛍光センサーの滴定曲線である;
図8図8は実施例6にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの、哺乳動物細胞における細胞内小器官への位置決めの分布図である;
図9図9は実施例6にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーにより、哺乳動物細胞における異なる細胞内小器官中において、分岐鎖アミノ酸の膜貫通輸送を動的にモニターするものである;
図10図10は、実施例7において、生細胞レベルで分岐鎖アミノ酸蛍光センサーによりハイスループットの化合物スクリーニング・解析を行う図である;
図11図11は実施例8にかかる分岐鎖アミノ酸蛍光センサーにより、培地および血液における分岐鎖アミノ酸を定量分析する図である。
【0052】
具体的な実施形態
I.定義:
数値や範囲が開示された場合、本文に用いられる用語の「約」とは、該数値や範囲が所定の数値や範囲の20%以内、10%以内および5%以内にあることを指す。
【0053】
本文に用いられる用語の「含む」、「含まれる」およびそれらの均等の形態(「含有する」や「……からなる」を含む)の意味は、例えばXを「含む」組成物とは、Xのみからなるものであってもよいが、他の物質を含有するもの、例えばX+Yであってもよい。
【0054】
本文に用いられる用語の「分岐鎖アミノ酸」または「BCAA」は、分岐のある脂肪族側鎖(3つ以上の原子に結合した中心炭素原子)を有するアミノ酸である。タンパク質のアミノ酸の中に、ロイシン、イソロイシンおよびバリンという3種類の分岐鎖アミノ酸がある。非タンパク質由来の分岐鎖アミノ酸は、2-アミノイソ酪酸を含む。
【0055】
本文に用いられる用語の「分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチド」とは、分岐鎖アミノ酸に応答するポリペプチドを指す。本文に用いられる用語の「ロイシン応答性ポリペプチド」とは、ロイシンに応答するポリペプチドを指す。本文において、両者を合わせて「応答性ポリペプチド」と総称してもよい。前記応答は、応答性ポリペプチドの相互作用に関連するポリペプチドの化学的、生物的、電気的または生理的なパラメータのいずれかの応答を含む。応答は微小な変化、例えば応答性ポリペプチドのアミノ酸またはペプチドフラグメントの方向の変化、並びにポリペプチドの一次、二次または三次構造の変化、例えばプロトン化、電気化学ポテンシャルおよび/または立体配座の変化を含む。「立体配座」は、分子におけるペンダント基含有分子の一次、二次および三次構造の三次元配置であり、分子の三次元構造は変化すると、立体配座は変化する。立体配座の変化の実例は、αヘリックスからβシートへの転換、またはβシートからαヘリックスへの転換を含む。蛍光タンパク質部分の蛍光が変化する限り、検出される変化が立体配座の変化である必要はないことが理解すべきである。
【0056】
本発明における前記分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドまたはロイシン応答性ポリペプチドは、「分岐鎖アミノ酸に結合するタンパク質」、「分岐鎖アミノ酸結合タンパク質」、「ロイシンに結合するタンパク質」および「ロイシン結合タンパク質」を含むが、それらに限定されない。本発明における例示的な分岐鎖アミノ酸結合タンパク質LivJまたはロイシン結合タンパク質LivKは、大腸菌(Escherichia coli)から由来するもの、或いはサルモネラから由来し且つ分岐鎖アミノ酸結合タンパク質やロイシン結合タンパク質と90%以上の相同性を持つは分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質であり、ペリプラズム結合タンパク質の有する2つの典型的なα/β球状ドメインがヒンジで連結されてなる構造を含み、分岐鎖アミノ酸またはロイシンに結合できる。分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質は、ペリプラズムにおける分岐鎖アミノ酸やロイシンの濃度の変化を感知し、分岐鎖アミノ酸やロイシンの濃度の動的変化の過程において、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質やロイシン結合タンパク質の立体配座も大きく変化する。分岐鎖アミノ酸結合タンパク質やロイシン結合タンパク質は、生理的濃度の分岐鎖アミノ酸やロイシンと特異的に結合することで生じる立体配座の変化は、蛍光タンパク質の立体配座の変化を引き起こし、ひいては蛍光タンパク質の蛍光の変化を引き起こし、かつ異なる分岐鎖アミノ酸やロイシン濃度で測定した蛍光タンパク質の蛍光で標準曲線をプロットすることで、分岐鎖アミノ酸やロイシンの存在および/またはレベルを検出して分析する。例示的な分岐鎖アミノ酸結合タンパク質は配列番号1に示され、例示的なロイシン結合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号2に示される。
【0057】
本文に用いられる用語の「融合タンパク質」は、「蛍光融合タンパク質」および「組換え蛍光融合タンパク質」と同じ意味であり、第1のポリペプチドまたはタンパク質、或いはその断片、類似物または誘導体のアミノ酸配列と、異種のポリペプチドまたはタンパク質(即ち、第1のポリペプチドまたはタンパク質、或いはその断片、類似物または誘導体と異なる第2のポリペプチドまたはタンパク質、或いはその断片、類似物または誘導体)のアミノ酸配列とを含むポリペプチドまたはタンパク質を指す。一つの実施形態において、融合タンパク質は、異種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと融合した蛍光タンパク質を含む。この実施形態によれば、異種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、異なるタイプの蛍光タンパク質であってもよいが、そうでなくてもよい。一つの実施形態において、異種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと融合する前の元のポリペプチドまたはタンパク質の活性と比較して、融合タンパク質は活性を保持または向上した。一つの具体的な実施形態において、融合タンパク質は、特異的な細胞下位置決めシグナルであってもよい異種のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと融合した蛍光センサーを含む。
【0058】
本文に用いられる用語の「蛍光センサー」とは、蛍光タンパク質と融合した応答性ポリペプチドを指し、前記応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドまたはロイシン応答性ポリペプチド、具体的には分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質であってもよい。前記蛍光センサーは、応答性ポリペプチドと分岐鎖アミノ酸(例えばロイシン、イソロイシンバリンおよびバリンからなる群から選ばれるもの)との結合で引き起こされる蛍光タンパク質の立体配座の変化を利用し、蛍光の発光・消滅または発光した蛍光の変化を引き起こし、これで分岐鎖アミノ酸の存在および/またはレベルの検出を実現する。
【0059】
本発明にかかる蛍光センサーにおいて、光学活性ポリペプチド(例えば蛍光タンパク質)は、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドまたはロイシン応答性ポリペプチドであってもよい応答性ポリペプチドへ作動可能に挿入される。タンパク質に基づく「光学活性ポリペプチド」は、発光手段を含有するポリペプチドである。蛍光は光学活性ポリペプチドの光学的特性の一つであり、本発明にかかる蛍光センサーまたは応答性ポリペプチドの応答性を検出するため手段として有用である。本文に用いられるように、用語の「蛍光特性」とは、適切な励起波長でのモル消衰係数、蛍光の量子効率、励起スペクトルまたは発光スペクトルの形状、最大励起波長と最大発光波長、励起の比率、2つの異なる波長の振幅、2つの異なる波長の発光振幅の比率、励起状態の寿命または蛍光異方性を指す。
【0060】
活性化状態と非活性化状態の間でのそれらの特性のいずれか一つの計測可能な差異は、本発明にかかる蛍光タンパク質基質の活性測定における使用にとって十分である。計測可能な差異は、いずれかの定量的な蛍光特性の量、例えば特定の波長での蛍光量または発光スペクトルにおける蛍光の積分を確認することで確認できる。好ましくは、未活性化と活性化の立体配座状態で容易に区別できる蛍光特性を持つようにタンパク質基質を選択する。
【0061】
本文に用いられる用語の「蛍光団」は「蛍光タンパク質」と同じ意味であり、その自身が蛍光を発光するまたは照射により蛍光を発光するタンパク質を指す。例えば生物技術分野で常用される緑色蛍光タンパク質GFPおよび該タンパク質から突然変異で誘導されるBFP、CFP、YFP、cpYFPなどの蛍光タンパク質は、よく検出手段として用いられる。分子内再配列により蛍光を発光するタンパク質または蛍光を促進する補因子の添加も含めて、どんな蛍光タンパク質も本発明に利用できる。例示的な蛍光タンパク質の配列は配列番号3~13に示される。
【0062】
本文に用いられる用語の「GFP」は緑色蛍光タンパク質を指し、元々はオワンクラゲ(Aequorea victoria)から抽出されたものであり、野生型AvGFPは238個のアミノ酸からなり、分子量は約26 kDである。GFPは、12本のβシート鎖によって形成されたユニークな樽状構造であり、その中には発色性トリペプチド(Ser65-Tyr66-Gly67)が包まれている。酸素の存在下で、それは自発的にp-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノンという発色団構造を形成し、蛍光を発光する。GFPの蛍光発光に補因子が必要とせず、しかも蛍光は非常に安定しているため、優れたイメージングツールである。従来の研究で確認されたように、天然GFPタンパク質の65~67番目の3つのアミノ酸Ser-Tyr-Glyは、自発的にp-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(p-hydroxybenzylideneimidazolinone)という蛍光発色団を形成することができ、その発光の本体となる。野生型AvGFPのスペクトル特徴は非常に複雑で、蛍光励起のメインピークは395 nmにあり、475 nmには別のサテライトピークがあるが、後者の振幅強度は前者の約1/3である。標準的な溶液条件において、395 nmで励起すると508 nmで発光が得られ、475 nmで励起すると503 nmで最大発光波長が得られる。
【0063】
本文に用いられる用語の「YFP」は黄色蛍光タンパク質を指し、該タンパク質は緑色蛍光タンパク質GFPから誘導されるものであり、そのアミノ酸配列はGFPと90%以上もある相同性を持ち、YFPはGFPと比較して、肝心な変化は203位のアミノ酸がトレオニンからチロシンへ突然変異したこと(T203Y)にある。元のAvGFPと比較して、YFPの励起メインピークの波長は514 nmにレッドシフトし、発光波長は527 nmに変化する。その上で、YFPの65位のアミノ酸に部位特異的変異(S65T)を行うと、蛍光強化型黄色蛍光タンパク質EYFPが得られる。
【0064】
本発明にかかる蛍光タンパク質は黄色蛍光タンパク質cpYFPであってもよく、黄色蛍光タンパク質cpYFPのアミノ酸配列は配列番号3に示される。本発明において、前記黄色蛍光タンパク質cpYFPは、GFPの元のN末端とC末端を一つの柔軟な短ペプチド鎖を介して連結させ、元のGFPの発色団に近い位置で新たなN末端とC末端を作成し、元の145~238位のアミノ酸部分を新規タンパク質のN末端とし、元の1~144位のアミノ酸を新規タンパク質のC末端とし、両者の断片を5~9個の柔軟な短ペプチド鎖を介して連結させ、空間変化に敏感な円順列変異黄色蛍光タンパク質cpYFP(circular permutation yellow fluorescent protein)を形成する。本発明において、発色団に近い位置は、Y144とN145位のアミノ酸のところが好ましい;前記柔軟な短ペプチド鎖は、VDGGSGGTGまたはGGSGGが好ましい。
【0065】
本発明において、前記赤色蛍光タンパク質cpmKateは元々海洋中の珊瑚から抽出されたものであり、野生型RFPはオリゴタンパク質で、生命体での融合発現に不利であるが、その後、RFPを基に異なる発色波長領域を持つ赤色蛍光タンパク質をさらに誘導し、その中で最も常用されるのはmCherryとmKateである。
【0066】
本発明の他の実施形態において、前記蛍光タンパク質はさらに、アミノ酸配列が配列番号6または配列番号11に示される緑色蛍光タンパク質、アミノ酸配列が配列番号4または配列番号12に示される青色蛍光タンパク質、アミノ酸配列が配列番号7に示されるシアン蛍光タンパク質cpTFP、アミノ酸配列が配列番号8に示されるオレンジ蛍光タンパク質、アミノ酸配列が配列番号5に示されるリンゴ赤色蛍光タンパク質、アミノ酸配列が配列番号9または配列番号13に示される赤色蛍光タンパク質cpmKate、およびアミノ酸配列が配列番号10に示される赤色蛍光タンパク質mcherryのうちの1種または複数種であってもよい。
【0067】
本発明にかかる蛍光センサーにおいて、蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記応答性ポリペプチドの任意の位置にあってもよく、前記応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸応答性ポリペプチドまたはロイシン応答性ポリペプチドであってもよい。具体的には、蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、応答性ポリペプチドの柔軟な領域に位置し、前記柔軟な領域とは、タンパク質の高次構造に存在するループ状ドメインなどの特定の構造を指し、これらのドメインは、タンパク質の他の高次構造よりも移動性と柔軟性が高く、且つ該領域は、該タンパク質がリガンドと結合すると、空間構造と立体配座が動的に変化する。本発明における前記柔軟な領域は、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質とロイシン結合タンパク質の挿入部位が存在する領域であってもよい。
【0068】
一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間に位置し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長または前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長または前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、325/326、325/327、325/328、325/329、326/327、326/328、326/329、327/328、327/329または328/329。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、ロイシン結合タンパク質の下記の部位に挿入される:118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、327/328、327/329、327/330、327/331、328/329、328/330、328/331、329/330、329/331または330/331。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基325~329の間に位置し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基325~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片の残基326/327または327/328の間に位置する。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基327~331の間に位置し、番号は前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。一つの実施形態において、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基327~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである。好ましくは、本発明における前記蛍光タンパク質またはその機能性断片若しくは変異体は、前記ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片の残基328/329または329/330の間に位置する。
【0069】
例えば、黄色蛍光タンパク質は配列番号1に示される分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の325/326、325/327、325/328、325/329、326/327、326/328、326/329、327/328、327/329または328/329の間に挿入される場合、蛍光センサーのアミノ酸配列は配列番号14~23に示される。例えば、黄色蛍光タンパク質は配列番号2に示される分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の327/328、327/329、327/330、327/331、328/329、328/330、328/331、329/330、329/331または330/331の間に挿入される場合、蛍光センサーのアミノ酸配列は配列番号24~33に示される。
【0070】
本発明において、蛍光団と融合する応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはロイシン結合タンパク質の全長またはその断片であってもよく、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質のアミノ酸1~345またはロイシン結合タンパク質のアミノ酸1~347が好ましい。
【0071】
「リンカー」とは、本発明にかかるポリペプチド、タンパク質または核酸において、2つの部分を連結するアミノ酸または核酸配列を指す。本発明にかかるポリペプチドまたはタンパク質において連結を行う場合、リンカーの長さは6個のアミノ酸を超えず、好ましくは4個のアミノ酸を超えず、より好ましくは3個のアミノ酸である。本発明にかかる核酸において連結を行う場合、リンカーの長さは18個のヌクレオチドを超えず、好ましくは12個のヌクレオチドを超えず、より好ましくは9個のヌクレオチドである。
【0072】
あるポリペプチドまたはタンパク質を言及する場合、本発明に用いられる用語の「変異体」は、前記ポリペプチドまたはタンパク質と同様な機能を有するが、配列が異なる変異体を含む。これらの変異体は、前記ポリペプチドまたはタンパク質の配列において、1つまたは複数(通常は1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個)のアミノ酸を欠失、挿入、および/または置換し、且つそのC末端および/またはN末端に1つまたは複数(通常は20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸を付加することにより得られる配列を含むが、それに限定されない。例えば、本分野において、特性が接近するまたは類似するアミノ酸で置換する場合、普通はポリペプチドまたはタンパク質の機能を変化させない。本分野において、特性が類似するアミノ酸とは、類似の側鎖を有するアミノ酸ファミリーを指すことが多く、本分野で明確に定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、および非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。また、例えば、C末端および/またはN末端に1つまたは複数のアミノ酸を付加しても、普通はポリペプチドまたはタンパク質の機能を変化させない。遺伝子クローニング操作では、適切な酵素切断部位を設計することがしばしば必要であり、発現されるポリペプチドまたはタンパク質の末端に1つまたは複数の無関係な残基を必然的に導入するが、これは標的ポリペプチドまたはタンパク質の活性に影響しないことは、当業者に公知される。さらにまた、融合タンパク質の構築、組換えタンパク質の発現の促進、宿主細胞外へ自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、または組換えタンパク質の精製の便利化を目的として、組換えタンパク質のN-末端、C-末端、または該タンパク質における他の適切な領域内には、いくつかのアミノ酸を追加する必要がしばしばあり、例えば、適切なリンカーペプチド、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端伸長、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、プロテインA、6HisまたはFlagのようなタグ、或いは第Xa因子またはトロンビンまたはエンテロキナーゼのタンパク質加水分解酵素部位が含まれるが、それらに限定されない。ポリペプチドまたはタンパク質の変異体は、相同性配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然変異体、誘導変異体、高または低ストリンジェンシー条件下で前記ポリペプチドまたはタンパク質のDNAにハイブリダイズできるDNAによってコードされるポリペプチドまたはタンパク質、および前記ポリペプチドまたはタンパク質に対する抗血清を使用することによって得られるポリペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。これらの変異体はさらに、前記ポリペプチドまたはタンパク質と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列相同性を持つポリペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。
【0073】
2つまたは複数のポリペプチドまたは核酸分子の配列において、用語の「相同性」または「相同性百分率」とは、比較ウィンドウまたは指定領域で、シーケンス比較アルゴリズムのような本分野で既知される方法を利用し、手動アラインメントと目視検査によって最大対応を比較およびアラインする場合、2つまたは複数の配列またはサブシーケンスが同一であるか、それらの指定領域内で特定の百分率のアミノ酸残基またはヌクレオチドが同一である(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が同一である)ことを指す。例えば、配列相同性百分率および配列類似性百分率を測定する適切な好ましいアルゴリズムは、BLASTとBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれAltschulら(1977) Nucleic Acids Res. 25:3389とAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403を参照できる。
【0074】
本文に用いられる用語の「機能性断片」、「誘導体」および「類似物」とは、実質的に元のポリペプチドまたはタンパク質と同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドまたはタンパク質を指す。「機能性断片」、「誘導体」および「類似物」は、天然に存在するタンパク質と同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を有してもよい。「実質的に同じ」とは、アミノ酸配列全体が同一ではないが、その大部分が同一であり、それに関連する配列機能活性を保留したことを指す。通常、2つのアミノ酸配列は、それらの少なくとも85%が同一であれば、「実質的に同じ」または「実質的に相同」のものとする。天然に存在するタンパク質と異なる三次元構造を有する断片も含む。本発明のポリペプチド応答性機能性断片、誘導体または類似物は、(i)1つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたタンパク質(そのように置換されたアミノ酸残基は、遺伝子コドンによってコードされるものであってもよいが、そうでなくてもよい)、または(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基中で置換基を持つタンパク質、または(iii)成熟タンパク質と別の化合物(例えばタンパク質の半減期を延長するポリエチレングリコールなどの化合物)の融合によって形成されたタンパク質、または(iv)該タンパク質配列に追加のアミノ酸配列を融合して形成されたタンパク質(例えばリーダー配列または分泌配列、或いは該タンパク質の精製に使用される配列またはプロタンパク質配列など、または抗原IgG断片で形成された融合タンパク質)であってもよい。本文の教示により、これらの機能性断片、誘導体および類似物は当業者に公知される範疇に属する。
【0075】
前記類似物と元のポリペプチドまたはタンパク質の差異は、アミノ酸配列での差異であってもよく、配列に影響しない修飾形態での差異であってもよく、またはその両方であってもよい。これらのタンパク質は天然または誘導の遺伝的変異体を含む。誘導変異体は各種の技術で、例えば放射線または変異剤への曝露によるランダム突然変異誘発で獲得することができ、さらに部位特異的突然変異誘発法または他の既知の分子生物学的技術で獲得することもできる。
【0076】
前記類似物はさらに、天然L-アミノ酸と異なる残基(例えばD-アミノ酸)を有する類似物、および天然に存在しないまたは合成されるアミノ酸(例えばβ、γ-アミノ酸)を有する類似物を含む。本発明にかかる応答性ポリペプチドは、以上で挙げられた代表的なタンパク質、断片、誘導体および類似物に限定されないことが理解すべきである。修飾(通常は一次構造を変更しない)形態は、アセチル化やカルボキシル化など、インビボまたはインビトロでのタンパク質の化学的誘導形態を含む。修飾はさらにグリコシル化を含み、例えばタンパク質の合成およびプロセッシングまたは更なるプロセッシングステップにおいてグリコシル化修飾されてなるタンパク質を含む。このような修飾は、タンパク質をグリコシル化を行う酵素(例えば哺乳動物のグリコシラーゼまたはデグリコシラーゼ)に曝露させることによって達成できる。修飾形態はさらに、リン酸化アミノ酸残基(例えばホスホチロシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン)を有する配列を含む。タンパク質加水分解に対する耐性を向上し、または溶解性を最適化するように修飾されたタンパク質も含む。
【0077】
本発明に用いられる用語の「核酸」は、DNA形態またはRNA形態であってもよい。DNA形態はcDNA、ゲノムDNAまたは人工合成したDNAを含む。DNAは一本鎖または二本鎖であってもよい。DNAはコード鎖または非コード鎖であってもよい。成熟タンパク質をコードするコード領域の配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15または17に示されるコード領域の配列と同一のもの、或いはその補同義変異体であってもよい。本文に用いられるように、本発明において、「補同義変異体」とは、本発明にかかるポリペプチドをコードするが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15または17に示されるコード領域の配列と差異のある核酸配列を指す。
【0078】
核酸を言及する場合、本文に用いられる用語の「変異体」は、天然に存在する対立遺伝子変異体であっても、非天然に存在する変異体であってもよい。それらのヌクレオチド変異体は、補同義変異体、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体を含む。本分野で知られるように、対立遺伝子変異体とは、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入であってもよいが、それでコードされるタンパク質の機能を実質的に変化させない核酸の代替形態である。本発明にかかる核酸は、前記核酸の配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列相同性を持つヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0079】
ここに用いられるように、用語の「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、互いに少なくとも60%の相同性を持つヌクレオチド配列が依然として互いにハイブリダイズできる典型的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を意味する。好ましくは、ストリンジェントな条件は、その条件下で、互いに少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、またはそれ以上の相同性を持つ配列が通常、依然として互いにハイブリダイズできるような条件である。該ストリンジェントな条件は当業者に公知される。ストリンジェントな条件の好ましくて非制限的な実例は、(1)低いイオン強度と高い温度下におけるハイブリダイゼーションと溶離、例えば0.2×SSC、0.1%SDS、0 ℃;或いは(2)ハイブリダイゼーションのときに、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%仔牛血清/0.1% Ficoll、42℃などのような変性剤が添加されること;或いは(3)二本の配列の間の相同性が少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上である場合のみにハイブリダイゼーションを行うことである。さらに、ハイブリダイズできる核酸でコードされるタンパク質は、配列番号4、5、6、7または8に示される成熟タンパク質と同様な生物学的機能と活性を有する。
【0080】
本発明はさらに、前記配列とハイブリダイズする核酸断片に関する。本文に用いられるように、「核酸断片」の長さは、少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも30個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100個以上のヌクレオチドである。核酸断片は核酸の増幅技術(例えばPCR)に適用できる。
【0081】
本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質の全長配列またはその断片は通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成方法で獲得できる。PCR増幅法の場合、本発明に開示された相応のヌクレオチド配列、特にオープンリーディングフレーム配列に基づいてプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリー又は当業者に既知の常法で調製されたcDNAライブラリーを鋳型として増幅し、相応の配列を獲得することができる。配列が長い場合、2回又は複数回のPCR増幅を行い、その後に各回で増幅された断片を正確な順序でライゲートすることが多い。蛍光センサーまたは融合タンパク質の全長配列またはその断片が例えば2500bp未満である場合、人工合成方法を用いて合成することができる。前記人工合成方法は、本分野の通常のDNA人工合成方法であり、例えばまずは複数の小さな断片を合成し、その後にライゲーションを行うことにより、全長配列を獲得できる。
【0082】
組換え法で相応の配列を大量に獲得することができる。通常、それをベクターにクローニングし、次に細胞にトランスフェクトし、その後に常法によって増殖された宿主細胞から相応のポリペプチドまたはタンパク質を分離・精製して獲得する。
【0083】
また、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法によって相応の配列を合成することもできる。通常、複数の小さな断片を合成しておき、その後にライゲーションを行うことにより、配列が非常に長い断片を獲得できる。
【0084】
現在、化学的合成によって本発明にかかるタンパク質(又はその断片、誘導体、類似物若しくは変異体)をコードするDNA配列を得ることは既に可能になっている。その後、該DNA配列を本分野で既知の各種の従来のDNA分子(例えばベクター)や細胞に導入することができる。突然変異PCRや化学的合成などの方法によって突然変異を本発明にかかるタンパク質配列に導入することができる。
【0085】
本文に用いられる用語の「発現ベクター」および「組換えベクター」は、互いに交換して使用することができ、例えば細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルスなどの哺乳動物細胞ウイルス、レトロウイルス、または宿主体内に複製・安定かできる他のベクターのような、本分野で周知の原核生物または真核生物ベクターを指し、これらの組換えベクターの一つの重要な特徴は、通常、発現制御配列を含むことである。本文に用いられる用語の「発現制御配列」とは、標的遺伝子の転写、翻訳および発現を調節する、標的遺伝子と作動可能に連結できるエレメントを指し、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子、またはエンハンサー、オペロン、ターミネーター、リボソーム結合部位などを含む翻訳制御エレメントであってもよいが、発現制御配列は用いられる宿主細胞次第で選択される。本発明に適用される組換えベクターは細菌プラスミドを含むが、それに限定されない。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に連結される」とは、標的ヌクレオチド配列と調節配列はヌクレオチド配列の発現が許容される形態で連結されることを指す。本発明にかかる融合タンパク質コード配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために使用できる方法は、当業者に周知される。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボ組換え技術などを含む。前記DNA配列は、mRNA合成を導くために、発現ベクターの適切なプロモーターへ効果的に連結することができる。これらのプロモーターの代表的な例は、大腸菌のlacまたはtrpプロモーター;ラムダファージPLプロモーター;CMV即時初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルスLTRを含む真核生物プロモーター、並びに原核細胞または真核細胞またはそれらのウイルスにおける遺伝子発現を制御できる他の既知のプロモーターがある。発現ベクターはさらに、翻訳開始用のリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含む。
【0086】
当業者は、組換え発現ベクターの設計が、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの要因によるものであることを理解すべきである。また、組換え発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択に適用される表現型特性を提供するために、好ましくは、例えば真核細胞用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性、或いは大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性のような一つまたは複数の選択マーカー遺伝子を含む。
【0087】
一つの実施形態において、本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質のコード配列を、BamHIおよびHindIIIで二重酵素切断した後、BamHIおよびHindIIIで二重酵素切断されたpRSETbベクターとライゲートし、大腸菌組換え発現ベクターが得られる。本発明にかかる発現ベクターを宿主細胞に転移して、融合タンパク質を含むタンパク質またはペプチドを生成することができる。このような転移過程は、形質転換やトランスフェクションなどの当業者に周知される通常技術で行うことができる。
【0088】
本文に用いられる用語の「宿主細胞」または「細胞」は、レシピエント細胞とも呼ばれ、組換えDNA分子を受け取って収容できる細胞を指し、組換え遺伝子増幅の場所であり、理想的なレシピエント細胞は、入手および増殖が容易であるという2つの条件を満たす必要がある。本発明の「細胞」は、原核細胞と真核細胞を含んでもよく、具体的には、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を含む。
【0089】
本発明にかかる発現ベクターは、原核細胞または真核細胞における本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質の発現に適用できる。これで、本発明は、本発明にかかる発現ベクターが導入された宿主細胞、好ましくは大腸菌に関する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってもよく、代表的な例は、大腸菌、ストレプトマイセス属、ネズミチフス菌の細菌細胞、酵母のような真菌細胞、植物細胞、ショウジョウバエS2またはSf9の昆虫細胞、CHO、COS、293細胞、またはボウズメラノーマ細胞のような動物細胞などを含むが、それらに限定されない。前記宿主細胞として、遺伝子産物の発現または発酵生産に関与する各種の細胞が好ましく、そのような細胞は、例えば各種の大腸菌細胞や酵母細胞など、本分野で周知されて常用されるものである。本発明の一つの実施形態において、大腸菌BL21を用いて、本発明にかかる融合タンパク質を発現する宿主細胞を構築する。どのように適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞を選択するかは、当業者によく知られている。
【0090】
本文に用いられる用語の「形質転換」および「トランスフェクション」、「接合」および「形質導入」とは、外因性核酸(例えば、線状DNAまたはRNA(例えば、線状化ベクターまたはベクターなしの個別の遺伝子構築物))またはベクター形態の核酸(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、ファージミド、トランスポゾンまたは他のDNA)を宿主細胞に導入するための本分野で公知の様々な技術を意味し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-マンナン仲介トランスフェクション、リポフェクション、自然コンピテント、化学仲介転移またはエレクトロポレーションを含む。宿主が大腸菌のような原核生物である場合、DNAを吸収できるコンピテント細胞を指数増殖期後に収穫し、CaCl法で処理することができ、適用されるステップは本分野で周知される。もう一つの方法はMgClによるものである。必要であれば、形質転換はエレクトロポレーション法によって行うこともできる。宿主細胞が真核細胞である場合、下記のDNAトランスフェクション法を適用することができる:リン酸カルシウム共沈法、例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム包装のような従来の機械的方法など。
【0091】
得られた形質転換細胞は、前記宿主細胞の発現に適した常法により培養し、本発明にかかる融合タンパク質を発現させることができる。適用される宿主細胞に応じて、培養に用いられる培地は各種の通常培地であってもよい。宿主細胞の成長に適した条件下で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度に成長した後、選択されたプロモーターを適切な方法(例えば温度変換や化学的誘導)によって誘導し、細胞をさらに一定期間培養する。
上記の方法における組換えタンパク質は、細胞内または細胞膜上に発現し、或いは細胞外に分泌することができる。必要であれば、組換えタンパク質は、その物理的、化学的およびその他の特性を利用して、各種の分離方法によって分離または精製することができます。これらの方法は当業者に周知される。これらの方法の例は、通常のリフォールディング処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心、浸透圧破壊、超処理、超遠心、分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と他の各種の液体クロマトグラフィー技術、およびこれらの方法の組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましくは、Hisタグを利用したアフィニティークロマトグラフィーによって行う。
【0092】
一つの実施形態において、本発明にかかる融合タンパク質のコード配列を含む大腸菌の発酵によって、本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質を生産し、ニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィーカラムによって精製し、純粋な形態の本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質を得る。
【0093】
本発明にかかる蛍光センサーまたは融合タンパク質の用途は、分岐鎖アミノ酸またはロイシンの検出、生理的状態での分岐鎖アミノ酸またはロイシンの検出、細胞下レベルでの分岐鎖アミノ酸またはロイシンの検出、分岐鎖アミノ酸またはロイシンのインシチュ検出などを含むが、それらに限定されない。
【0094】
本発明はさらに、前記蛍光センサーの、分岐鎖アミノ酸またはロイシンをリアルタイムで位置決め、定量的に検出するため、並びにハイスループットの化合物スクリーニングのための使用を提供する。一つの実施形態において、前記分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーは、好ましくは細胞の異なる部分のシグナルペプチドに連結し、細胞内に転送し、細胞内の蛍光シグナルの強さを検出することで、分岐鎖アミノ酸とロイシンをリアルタイムで位置決める;分岐鎖アミノ酸とロイシンの標準的な滴下曲線により、相応の分岐鎖アミノ酸とロイシンを定量的に検出する。一つの実施形態において、前記分岐鎖アミノ酸とロイシンの標準的な滴下曲線は、異なる濃度の分岐鎖アミノ酸とロイシンの場合での分岐鎖アミノ酸蛍光センサーとロイシン蛍光センサーの蛍光シグナルに基づいてプロットされる。本発明にかかる蛍光センサーは直接に細胞内に転送し、分岐鎖アミノ酸とロイシンをリアルタイムで位置決め、定量的に検出する過程において、時間のかかるサンプル処理プロセスは不要となり、より正確的である。本発明にかかる蛍光センサーは、ハイスループットの化合物スクリーニングを行う時、異なる化合物を細胞培地に添加し、分岐鎖アミノ酸とロイシンの含有量の変化を測定し、それにより分岐鎖アミノ酸とロイシンの含有量の変化に影響を与える化合物をスクリーニングする。通常、本発明における前記使用は、疾患の診断と治療に関しない。
【0095】
本文において、濃度、含有量、百分率およびその他の数値はいずれも範囲の形式で表示ことができる。このような範囲形式の使用は便利さと簡潔さのためだけであり、範囲の上限と下限で明示的に言及された数値も含むが、該範囲に含まれる全ての個々の数値またはサブ範囲も明示的に言及されたように、それらの個々の数値とサブ範囲も含むと柔軟に解読すべきであることも、理解すべきである。
【0096】
例示的な実施形態
1.a)ロイシン応答性ポリペプチドと、
b)光学活性ポリペプチドと、
を含む蛍光センサーであって、
前記光学活性ポリペプチドが前記ロイシン応答性ポリペプチドに挿入されている蛍光センサー。
【0097】
2.前記ロイシン応答性ポリペプチドはさらに、イソロイシンやバリンのような他の分岐鎖アミノ酸にも応答する、或いは、前記光学活性ポリペプチドは蛍光タンパク質、またはその機能性断片若しくは変異体である、実施形態1に記載の蛍光センサー。
【0098】
3.さらに前記ロイシン応答性ポリペプチドと前記光学活性ポリペプチドの間にある1つまたは複数のリンカーを含む、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0099】
4.さらに位置決め配列を含む、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0100】
5.前記ロイシン応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片、およびロイシン結合タンパク質またはその機能性断片からなる群から選ばれる、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0101】
6.前記ロイシン応答性ポリペプチドは、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号1に示される配列またはその機能性断片、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列を有するものが好ましい、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0102】
7.前記ロイシン応答性ポリペプチドは、ロイシン結合タンパク質またはその機能性断片であり、配列番号2に示される配列またはその機能性断片、或いはそれと85%の配列相同性を持つ配列を有するものが好ましい、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0103】
8.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間に位置し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長または前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態6または7に記載の蛍光センサー。
【0104】
9.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基118~120、残基248~258または残基325~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長または前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態6または7に記載の蛍光センサー。
【0105】
10.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基325~329の間に位置し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態6に記載の蛍光センサー。
【0106】
11.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基325~329の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態6に記載の蛍光センサー。
【0107】
12.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間に位置し、番号は前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態7に記載の蛍光センサー。
【0108】
13.前記光学活性ポリペプチドは、前記ロイシン応答性ポリペプチドの残基327~331の間の1つまたは複数のアミノ酸を置換し、番号は前記ロイシン結合タンパク質の全長に相応するものである、実施形態7に記載の蛍光センサー。
【0109】
14.前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、オレンジ蛍光タンパク質、リンゴ赤色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質からなる群から選ばれる、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0110】
15.前記蛍光タンパク質は配列番号3~13に示される配列を有する、前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサー。
【0111】
16.前記実施形態のいずれかに記載の蛍光センサーをコードする核酸配列またはその相補配列。
【0112】
17.発現制御配列と作動可能に連結される前記実施形態のいずれかに記載の核酸配列を含む発現ベクター。
【0113】
18.実施形態17に記載の発現ベクターを含む細胞。
【0114】
19.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーを発現するベクターを含む細胞を提供することと、前記細胞の発現条件下で前記細胞を培養することと、および前記蛍光センサーを分離することと、を含む実施形態1に記載の蛍光センサーの製造方法。
【0115】
20.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーまたは実施形態19に記載の方法で製造される蛍光センサーをサンプルと接触させることと、および光学活性ポリペプチドの変化を検出することと、を含むロイシンの検出方法。
【0116】
21.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーまたは実施形態19に記載の方法で製造される蛍光センサーをサンプルと接触させることと、および光学活性ポリペプチドの変化を検出することと、を含む分岐鎖アミノ酸の検出方法。ただし、前記分岐鎖アミノ酸は、例えばロイシン、イソロイシンおよびバリンから選ばれる。
【0117】
22.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーまたは実施形態19に記載の方法で製造される蛍光センサーの、サンプルにおけるロイシンを検出するための使用。
【0118】
23.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーまたは実施形態19に記載の方法で製造される蛍光センサーの、サンプルにおける分岐鎖アミノ酸を検出するための使用。ただし、前記分岐鎖アミノ酸は、例えばロイシン、イソロイシンおよびバリンから選ばれる。
【0119】
24.実施形態1~15のいずれかに記載の蛍光センサーまたは実施形態19に記載の方法で製造される蛍光センサーを含むキット。
【実施例
【0120】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。
【0121】
以下の実施例で特に具体的な条件を説明しない実験方法は、当業者に周知されるものであり、普通は通常の条件、例えばSambrookらの「Molecular Cloning - A Laboratory Manual」(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989);Jane Roskemesらの「Molecular Biology Experiment Reference Manual」;J. Sam Brook、D. W. Russellが編集し、黄培堂らが翻訳した「分子クローニング:実験マニュアル」(第3版、2002年8月、科学出版社出版、北京);章静波、徐存シゥァンらが翻訳した、Frescheniらの「Culture of Animal Cells: a Manual of Basic Technique」(第5版);章静波が翻訳した、J.S. Boni Fesnon, M. Dassaultらの「Short Protocols in Cell Biology」、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。本文において、特に断らない限り、百分率と部はいずれも重量で表される。当業者は以下の実施例を参考にして、具体的な状況に応じて修正や変更をして本発明を容易に実施することができ、これらの修正や変更は全て本願の特許請求の範囲内に入る。
【0122】
I.実験の材料と試薬
実施例で用いられるpRSETb-cpYFP、pRSETb-LivJ、pRSETb-LivKに基づくプラスミドは華東理工大学タンパク質実験室によって構築し、pRSETbプラスミドベクターはInvitrogen社から購入した。PCRに用いられるプライマーは全て上海Generay Biotech株式会社によって合成、精製し、且つ質量分析で正しく同定した。実施例で構築された発現プラスミドは全てシーケンシングされており、シーケンシングは華大基因社および上海Genebioseq社によって完成した。各実施例で用いられるTaq DNAポリメラーゼはDongsheng Biotech社から購入し、pfu DNAポリメラーゼはTiangen Biotech(北京)株式会社から購入し、primeSTAR DNAポリメラーゼはTaKaRa社から購入し、相応のポリメラーゼバッファーとdNTPは3種類のポリメラーゼの購入時のおまけとして付いていた。BamHI、BglII、HindIII、NdeI、XhoI、EcoRI、SpeIなどの制限エンドヌクレアーゼ、T4リガーゼ、T4ホスホリラーゼ(T4 PNK)はFermentas社から購入し、購入時に相応のバッファーなどのおまけが付いていた。トランスフェクション試薬のLip2000 KitはInvitrogen社から購入した。分岐鎖アミノ酸やロイシンなどはいずれもSigma社から購入した。特に断らない限り、無機塩類などの化学試薬はいずれもsigma-aldrich社から購入した。HEPES塩、アンピシリン(Amp)およびピューロマイシンはAmeresco社から購入した;96ウェル検出用ブラックプレート、384ウェル蛍光検出用ブラックプレートはGrenier社から購入した。
【0123】
実施例で用いられるDNA精製キットはBBI社(カナダ)から購入し、汎用小規模プラスミド抽出キットはTiangen Biotech(北京)株式会社から購入した。クローニング菌株Mach1はInvitrogen社から購入した。ニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィーカラムおよび脱塩用カラムのフィラーはいずれもGE healthcare社から購入した。
【0124】
実施例で用いられる主な機器は、Biotek Synergy 2多機能マイクロプレートリーダー(アメリカBio-Tek社)、X-15R高速冷却遠心機(アメリカBeckman社)、Microfuge22R卓上高速冷却遠心機(アメリカBeckman社)、PCR増幅装置(ドイツBiometra社)、超音波破砕機(寧波新芝社)、核酸電気泳動装置(申能博彩社)、蛍光分光光度計(アメリカVarian社)、CO恒温細胞インキュベーター(SANYO)、倒立蛍光顕微鏡(日本ニコン社)である。
【0125】
II.実施例で用いられる通常の分子生物学的方法および細胞実験方法
(一)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
1.標的断片増幅PCR:
該方法は主に、遺伝子断片の増幅およびコロニーPCRによる陽性クローンの同定に用いられる。前記PCR増幅の反応系は表1に示し、増幅プログラムは表2に示す。
【表1】

【表2】

本発明に用いられる長断片増幅は主に、リバースPCRでベクターを増幅し、下記の実施例において部位特異的変異を得るための技術である。変異部位についてリバースPCRプライマーを設計し、そのうちの1本のプライマーの5’末端に変異したヌクレオチド配列が含まれる。増幅した産物はこれで相応の変異部位を有するものになる。長断片増幅PCRの反応系は表3に示し、増幅プログラムは表4または表5に示す。
【表3】

【表4】

【表5】
【0126】
(二)核酸エンドヌクレアーゼによる酵素切断反応
プラスミドベクターの二重酵素切断系は表6に示し、ただし、nは体系が合計体積に達するのに必要な滅菌超純水のμL量を表す。
【表6】
【0127】
(三)DNA断片5’末端のリン酸化反応
微生物から抽出したプラスミドやゲノムの末端には全てリン酸基が含まれるが、PCR産物には含まれていないため、PCR産物の5’末端の塩基にリン酸基付加反応を行う必要があり、末端にリン酸基を含むDNA分子でしかライゲーション反応が発生しない。リン酸化反応系は表7に示し、ただし、T4 PNKはT4ポリヌクレオチドキナーゼの略称であり、DNA分子の5’末端のリン酸基の付加反応に適用される。
【表7】
【0128】
(四)標的断片とベクターのライゲーション反応
異なる断片とベクターの間のライゲーション法は異なるが、本発明において、3種類のライゲーション法が適用される。
1.平滑末端の短断片と線状化ベクターの平滑末端ライゲーション
該方法の原理は、PCRで得られる平滑末端産物は、T4 PNKの作用でDNA断片の5’末端がリン酸化反応を行った後、PEG4000およびT4 DNAリガーゼの作用で線状化ベクターとライゲートし、組換えプラスミドを得る。相同組換えライゲーション系は表8に示す。
【表8】

2.粘着末端を持つDNA断片と粘着末端を持つベクター断片のライゲーション
制限エンドヌクレアーゼで切断されたDNA断片は通常、突出した粘着末端を持つため、相補配列を含有する粘着末端ベクター断片とライゲートして組換えプラスミドを形成することができる。ライゲーション反応系は表9に示す。
【表9】

3.リバースPCRで部位特異的変異を導入した後の、5’末端がリン酸化されたDNA断片産物の自己環状化ライゲーション反応
5’末端がリン酸化されたDNA断片を、自己環状化ライゲーション反応により、線状化ベクターの3’末端と5’末端をライゲーション反応させ、組換えプラスミドを得る。自己環状化ライゲーション反応系は表10に示す。
【表10】
【0129】
(五)コンピテント細胞の調製と形質転換
コンピテント細胞の調製:
1.単一コロニー(例えばMach1)を掻き取り、5mLのLB培地に接種し、37℃で一晩振とうした。
2.一晩培養した細菌液を0.5~1mL取り、50mLのLB培地に移し、OD600が0.5に達するまで37℃、220rpmで3~5時間インキュベートした。
3.細胞を氷浴で2時間予冷した。
4.4℃、4000rpmで10min遠心した。
5.上澄を捨て、5mLの予冷した再懸濁緩衝液で細胞を懸濁させ、均一になったら、さらに再懸濁緩衝液を最終体積が50mLになるように添加した。
6.45min氷浴した。
7.4℃、4000rpmで10min遠心し、5mLの氷予冷した保存緩衝液で細菌を再懸濁した。
8.EPチューブごとに細菌液を100μL入れ、-80℃または液体窒素で凍結保存した。
再懸濁緩衝液:CaCl(100mM)、MgCl(70mM)、NaAc(40mM)
保存緩衝液:0.5mLのDMSO、1.9mLの80%グリセリン、1mLの10×CaCl(1M)、1mLの10×MgCl(700mM)、1mLの10×NaAc(400mM)、4.6mLのddH
形質転換:
1.コンピテント細胞を100μl取り、氷浴で融解させた。
2.適切な体積でライゲーション産物を加え、軽くフリックして均一に混合し、30min氷浴した。通常、加えたライゲーション産物の体積はコンピテント細胞の体積の1/10未満である。
3.細菌液を42℃の水浴に入れて90sヒートショックし、速やかに氷浴に移して5min放置した。
4.500μlのLBを加え、37℃恒温シェーカーで200の回転数で1h培養した。
5.細菌液を4000rpmで3min遠心し、上澄を200μL残して細菌を均一にフリックし、適切な抗生物質を含む寒天プレートの表面に均一に撒き、プレートを上下逆にして37℃恒温インキュベーターで一晩放置した。
【0130】
(六)タンパク質の発現、精製および蛍光検出
1.pRSETbを基にする分岐鎖アミノ酸とロイシンセンサープラスミドをJM109(DE3)に形質転換し、上下逆にして一晩培養し、プレートからクローンを250mLの三角フラスコ中に掻き取り、37℃のシェーカーに置いて、220rpmでOD=0.4~0.8になるまで培養し、1/1000(v/v)のIPTG(1M)を加え、18℃で発現を24~36h誘導した。
2.発現の誘導が完了してから、4000rpmで30min遠心して細菌を回収し、リン酸塩緩衝液を50mM加えて細菌の沈殿を再懸濁し、細菌が清澄になるまで超音波破砕した。9600rpm、4℃で20min遠心した。
3.遠心した上澄を自分で充填したニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィーカラムで精製してタンパク質を獲得し、ニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィー後のタンパク質をさらに自分で充填した脱塩用カラムを通過させて、20mMのMOPSバッファー(pH7.4)またはリン酸塩緩衝液PBSに溶解されたタンパク質を得た。
4.精製された分岐鎖アミノ酸とロイシンの結合タンパク質および突然変異タンパク質をSDS-PAGEで同定してから、アッセイバッファー(100mMのHEPES、100mMのNaCl、pH7.3)またはリン酸塩緩衝液PBSでセンサーを最終濃度が5~10μMのタンパク質溶液に希釈した。アッセイバッファー(20mMのMOPS、pH7.4)またはリン酸塩緩衝液PBSでヒスチジンを最終濃度が1Mの保存溶液に調製した。
5μMのタンパク質溶液を100μl取り、37℃で5minインキュベートし、分岐鎖アミノ酸とロイシンをそれぞれ最終濃度が100mMになるように加えて均一に混合し、多機能蛍光マイクロプレートリーダーを利用して、タンパク質の340nmでの光吸収を測定した。
1μMの蛍光センサー溶液を100μl取り、37℃で5minインキュベートし、分岐鎖アミノ酸とロイシンを加えて滴定し、485nm蛍光で励起されたタンパク質が528nmで発光した蛍光強度を測定した。サンプルの蛍光励起および発光測定は、多機能蛍光マイクロプレートリーダーによって完成した。
1μMの蛍光センサー溶液を100μl取り、37℃で5minインキュベートし、分岐鎖アミノ酸とロイシンを加え、センサータンパク質の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを測定した。サンプルの吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定は、分光光度計と蛍光分光光度計によって完成した。
【0131】
(七)哺乳動物細胞蛍光検出
1.pCDNA3.1+を基にする分岐鎖アミノ酸とロイシンセンサープラスミドをトランスフェクション試薬のLipofectamine2000(Invitrogen)によってHeLaにトランスフェクトし、37℃、5%COの細胞インキュベーターで培養した。外因性遺伝子の十分な発現から24~36h後、蛍光検出を行った。
2.誘導発現完了後、接着したHeLa細胞をPBSで3回洗浄し、HBSS溶液に置いて、それぞれ蛍光顕微鏡およびマイクロプレートリーダーによる検出を行った。
【実施例1】
【0132】
pRSETb-LivJおよびpRSETb-LivKプラスミドの構築
大腸菌遺伝子のLivJおよびLivK遺伝子をPCRによって増幅し、LivJのPCR産物をゲル電気泳動後に回収してから、BamHIおよびHindIIIで酵素切断した;LivKのPCR産物をゲル電気泳動後に回収してから、EcoRIおよびHindIIIで酵素切断したと共に、pRSETbベクターも相応に二重酵素切断した。T4 DNAリガーゼでライゲーションを行ってから、ライゲーション産物でMachIを形質転換し、形質転換されたMachIをLBプレート(アンピシリン100ug/mL)に撒き、37℃で一晩培養した。成長したMachI形質転換体からプラスミドを抽出してから、PCRによって同定した。陽性プラスミドは、正しくシーケンシングした後で、次のプラスミド構築を行った。
【0133】
pRSETb-LivJ-cpYFP、pRSETb-LivK-cpYFP蛍光センサーの挿入点が異なるプラスミドの構築と検出
本実施例において、pRSETb-LivJプラスミドを基に、LivJ結晶構造に応じて、118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、325/326、325/327、325/328、325/329、326/327、326/328、326/329、 327/328、327/329、328/329部位を選択した。そのうち、分岐鎖アミノ酸に対する応答の検出が3倍を超えたものは、326/327、327/328位であった(図2に示す)。
pRSETb-LivKプラスミドを基に、LivK結晶構造に応じて、118/119、118/120、119/120、248/249、248/250、248/251、248/252、248/253、248/254、248/255、248/256、248/257、248/258、249/250、249/251、249/252、249/253、249/254、249/255、249/256、249/257、249/258、250/251、250/252、250/253、250/254、250/255、250/256、250/257、250/258、251/252、251/253、251/254、251/255、251/256、251/257、251/258、252/253、252/254、252/255、252/256、252/257、252/258、253/254、253/255、253/256、253/257、253/258、254/255、254/256、254/257、254/258、255/256、255/257、255/258、256/257、256/258、257/258、327/328、327/329、327/330、327/331、328/329、328/330、328/331、329/330、329/331、330/331部位を選択した。そのうち、ロイシンに対する応答の検出が1.5倍を超えたものは、328/329、329/330位であった(図2に示す)。
【0134】
cpYFPのDNA断片をPCRによって生成し、該DNA断片を5’末端のリン酸化の手段によって不活性化させたと共に、リバースPCRによって増幅し、異なる切断部位を含有するpRSETb-LivJおよびpRSETb-LivK線状化ベクターを生成し、線状化のpRSETb-LivJおよびpRSETb-LivKを、5’末端がリン酸化されたcpYFP断片とPEG4000およびT4DNAリガーゼの作用でライゲートして、組換えプラスミドを生成し、これらのプレートをKodak多機能生体イメージングシステムに配置し、FITCチャンネルの励起で黄色蛍光を発光するクローンを掻き取り、シーケンシングは北京六合華大基因科技株式会社の上海支社によって完成した。
【0135】
正しくシーケンシングした後で、組換えプラスミドをJM109(DE3)に形質転換して発現を誘導し、且つタンパク質を精製し、SDS-PAGE電気泳動により、そのサイズが67KDaであった。このサイズは、pRSETb-LivJ-cpYFPおよびpRSETb-LivK-cpYFPによって発現するHisタグ精製タグ付きLivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFP融合タンパク質のサイズに一致した。結果は図1に示す。
【0136】
精製したLivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFP融合タンパク質を、分岐鎖アミノ酸とロイシンの応答性についてスクリーニングし、10mMの分岐鎖アミノ酸とロイシンを含有する融合蛍光タンパク質の検出シグナルを分岐鎖アミノ酸とロイシンフリーの融合蛍光タンパク質の検出シグナルで割った。
【0137】
結果は図2に示すように、検出結果から分かるように、分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの分岐鎖アミノ酸に対する応答が3倍を超えたものは、326/327、327/328位であり、326/327および327/328位の420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度は、分岐鎖アミノ酸濃度の増加に従って低下し、326/327および327/328位の485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度は、分岐鎖アミノ酸濃度の増加に従って向上した。ロイシン蛍光センサーのロイシンに対する応答が1.5倍を超えたものは、328/329、329/330位であり、328/329および329/330位の420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度は、分岐鎖アミノ酸濃度の増加に従って低下し、328/329および329/330位の485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度は、分岐鎖アミノ酸濃度の増加に従って向上した。
【実施例2】
【0138】
cpBFPを基にする分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの設計、構築および検出
実施例1における方法により、cpYFPを青色蛍光タンパク質cpBFPに入れ替えて、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質およびロイシン結合タンパク質に融合させ、それぞれ分岐鎖アミノ酸青色蛍光タンパク質蛍光センサーおよびロイシン青色蛍光タンパク質蛍光センサーを構築した。結果は図3に示すように、検出結果から分かるように、分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの分岐鎖アミノ酸に対する応答が3倍を超えたものは、326/327、327/328位であり、ロイシン蛍光センサーのロイシンに対する応答が1.5倍を超えたものは、328/329、329/330位であった。
【実施例3】
【0139】
cpmAppleを基にする分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの設計、構築および検出
実施例1における方法により、cpYFPをリンゴ赤色蛍光タンパク質cpmAppleに入れ替えて、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質およびロイシン結合タンパク質に融合させ、それぞれ分岐鎖アミノ酸赤色蛍光タンパク質蛍光センサーおよびロイシン赤色蛍光タンパク質蛍光センサーを構築したが、結果は図4に示すように、検出結果から分かるように、分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの分岐鎖アミノ酸に対する応答が3倍を超えたものは、326/327、327/328位であり、ロイシン蛍光センサーのロイシンに対する応答が1.5倍を超えたものは、328/329、329/330位であった。
【0140】
実施例1~3の結果から明らかなように、分岐鎖アミノ酸結合タンパク質のリンカー領域の325~329位は、cpFP蛍光タンパク質を融合させて分岐鎖アミノ酸に応答する融合蛍光タンパク質分岐鎖アミノ酸センサーを得ることに適切であり;ロイシン結合タンパク質のリンカー領域の327~331位は、cpFP蛍光タンパク質を融合させてロイシンに応答する融合蛍光タンパク質センサーを得ることに適切であった。
【実施例4】
【0141】
蛍光タンパク質と分岐鎖アミノ酸結合タンパク質の簡単な直接融合だけでは、分岐鎖アミノ酸蛍光センサーを生成できない
蛍光タンパク質cpYFPをLivKまたはLivJタンパク質のN末端またはC末端に直接融合させ、分岐鎖アミノ酸蛍光センサーを構築し、そしてcpYFPを青色蛍光タンパク質cpBFPおよびリンゴ赤色蛍光タンパク質cpmAppleに入れ替えて、それぞれ分岐鎖アミノ酸青色蛍光タンパク質蛍光センサーおよび赤色蛍光タンパク質蛍光センサーを構築した。結果は図5に示すように、蛍光検出の結果からわかるように、対照と比較して、前記分岐鎖アミノ酸蛍光センサーの分岐鎖アミノ酸に対する応答に変化はなかった。
【実施例5】
【0142】
LivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFP蛍光センサーの特性の計測
精製したLivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFPをそれぞれ0mMと5mMのロイシンで10min処理した後、蛍光分光光度計で蛍光スペクトルを検出した。励起スペクトルの測定は、発光を530nmに固定し、350~515nmの領域の励起スペクトルを検出した;発光スペクトルの測定は、励起を490nmに固定し、505~600nmの領域の発光スペクトルを検出した。LivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFP蛍光センサーのスペクトル曲線は図6Aと6Bに示すが、以上の結果から明らかなように、LivJ-cpYFP、LivK-cpYFP蛍光タンパク質の蛍光スペクトル特性はcpYFP蛍光タンパク質の蛍光スペクトル特性に似ている(Nagai, T.ら,Proc Natl Acad Sci USA. 2001,V.98(6),pp.3197-3202)。
【0143】
それらから分岐鎖アミノ酸検出範囲が0.1μM~1mMにあるセンサーのF LivJ sensor A(LivJ-cpYFP 326/327)およびF LivJ sensor B(LivJ-cpYFP 327/328)、並びにF LivK sensor A(Livk-cpYFP 328/329)およびF LivK sensor B(Livk-cpYFP 329/330)を選択し、濃度勾配(0~1mM)で3種類の分岐鎖アミノ酸を検出した。精製したLivJ-cpYFPおよびLivK-cpYFPをそれぞれ10min処理した後、420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度と485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度の比率の変化を検出し、結果は図7に示す。これで、サンプルにおける分岐鎖アミノ酸またはロイシンの含有量またはレベルについて、より適切な分岐鎖アミノ酸またはロイシンを選択して定量的に検出することができる。
【実施例6】
【0144】
FLivJ sensor A蛍光センサーの異なる細胞内小器官への位置決めおよび細胞内小器官内での蛍光センサーの特性の計測
本実施例において、異なる位置決めシグナルペプチドをFLivJ sensor Aと融合させ、FLivJ sensor A分岐鎖アミノ酸蛍光タンパク質センサーを異なる細胞小器官へ位置決めした。
【0145】
異なる位置決めシグナルペプチドが融合されたFLivJ sensor A遺伝子のプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした36時間後、PBSで洗浄してから、HBSS溶液に置いて、倒立蛍光顕微鏡によってFITCチャンネルで蛍光を検出した。FLivJ sensor Aは異なる特異的な位置決めシグナルペプチドと融合することで、細胞質、細胞核、細胞外膜、細胞内膜、ミトコンドリア、ファゴソーム、リゾソーム、ゴルジ体へ位置決めできることが見出した。結果は図8に示すように、異なる細胞下構造においては、いずれも蛍光の発光が示されており、且つ蛍光の分布と強度が互いに相違した。
【0146】
細胞質とミトコンドリアの異なる位置決めシグナルペプチドが融合されたFLivJ sensor A遺伝子のプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした36時間後、PBSで洗浄してから、HBSS溶液に置いて、40minの時間帯において、420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度と485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度の比率の変化を検出したが、結果は図9に示すように、分岐鎖アミノ酸の消耗に従って、比率485/420が徐々に低下し、それ後にBCAAを添加して検出を43min継続したが、分岐鎖アミノ酸が添加されたサンプルの比率485/420は徐々に増加したが、対照群の比率485/420は変化がなくなるまで低下し続けた。
【実施例7】
【0147】
生細胞レベルで、分岐鎖アミノ酸FLivJ sensor Aによりハイスループットの化合物スクリーニングを行った
本実施例において、分岐鎖アミノ酸FLivJ sensor Aを細胞質で発現するHeLa細胞により、ハイスループットの化合物スクリーニングを行った。
FLivJ sensor A遺伝子がトランスフェクトされたHeLa細胞をPBSで洗浄してから、HBSS溶液(分岐鎖アミノ酸フリー)に置いて、1時間処理した後、10μMの化合物で1時間処理した。分岐鎖アミノ酸を滴下した。マイクロプレートリーダーにより、420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度と485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度の比率の変化を記録した。何の化合物で処理されていないサンプルを標準とした。結果は図10に示すように、2000種類の化合物で処理された細胞のうち、殆どの化合物は分岐鎖アミノ酸の細胞への侵入に対する影響が少なかった。16種類の化合物は細胞の分岐鎖アミノ酸取り込み能を向上させることができたが、その他に、6種類の化合物は細胞の分岐鎖アミノ酸取り込み能を顕著に低下させることができた。
【実施例8】
【0148】
分岐鎖アミノ酸蛍光センサーFLivJ sensor Aにより、異なる細胞内小器官中において分岐鎖アミノ酸を定量した
実施例において、分岐鎖アミノ酸FLivJ sensor Aを細胞質で発現するHeLa細胞により、半定量を行った。FLivJ sensor A遺伝子がトランスフェクトされたHeLa細胞を下記のように分けた:その一つは、処理なしのものであり、もう一つは、PBSで洗浄してから、HBSS溶液(分岐鎖アミノ酸フリー)に置いて、1時間処理した後、1mMの3種類の分岐鎖アミノ酸で1時間処理した、或いは引き続きHBSS溶液に置いた。マイクロプレートリーダーにより、420nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度と485nmで励起されて528nmで発光した蛍光の強度の比率の変化を記録した。図11に示すように、分岐鎖アミノ酸の代謝状況を検出できた。
【0149】
以上の実施例から分かるように、本発明で提供される蛍光センサーは、タンパク質の分子量が比較的に小さく、且つ成熟しやすく、蛍光動的変化が大きく、特異性が良好で、且つ遺伝子操作の方法によって細胞中で発現させることもでき、細胞内外において、分岐鎖アミノ酸をリアルタイムで位置決めて定量的に検出することができ、且つハイスループットの化合物スクリーニングを可能にする。
【0150】
他の実施形態
本明細書では多くの実施形態が説明された。しかしながら、当業者にとって、本発明の原理から逸脱しない限り、いくつかの改善および変更をすることもでき、これらの改善および変更も本発明の保護範囲に入ると見なされるべきであることは、理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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