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特許7449584光抽出が高められた発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】光抽出が高められた発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240307BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240307BHJP
   H01L 33/04 20100101ALI20240307BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L33/32
H01L33/04
H01L33/58
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021522014
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019078320
(87)【国際公開番号】W WO2020083757
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】1871254
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,ティフェンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン,イヴァン-クリストフ
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144873(US,A1)
【文献】特開2016-025357(JP,A)
【文献】特開2017-108020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイスであって、
面を有する支持体と、
前記面上に載置されて、ワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードと、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に設けられて、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックと
を備えており、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接している導電層を更に備えており、
前記発光ダイオードの内の少なくとも1つ又は前記群の発光ダイオードの内の1つを覆う前記封止ブロックの屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項2】
光電子デバイスであって、
面を有する支持体と、
前記面上に載置されて、ワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードと、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に設けられて、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックと
を備えており、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接している導電層を更に備えており、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックの少なくとも1つに、前記封止ブロックを覆って前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す共形的な誘電体層を備えており、
前記封止ブロックの屈折率が1.8 ~2.2 の範囲内であり、前記誘電体層の厚さが200 nm~5μmの範囲内であり、前記誘電体層の屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項3】
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記封止ブロックは、前記発光ダイオードの側壁全体に沿って前記発光ダイオード又は前記一群の各発光ダイオードを覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記誘電体層は前記導電層と前記封止ブロックとの間に配置されているか、又は前記導電層は、前記誘電体層と前記封止ブロックとの間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
各半導体素子はIII-V 族化合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項6】
各半導体素子は窒化ガリウムを含んでいることを特徴とする請求項5に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
各半導体素子の平均直径が200 nm~2μmの範囲内であり、各封止ブロックの平均直径が3μm~30μmの範囲内であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの発光ダイオードに、前記封止ブロックを覆う光輝性層を更に備えており、
前記光輝性層は、前記発光ダイオードによって放射される放射線の波長とは異なる波長で放射線を放射するように構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記封止ブロックを覆うレンズを更に備えており、前記レンズ間に空隙が存在することを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記レンズを覆う角度フィルタを更に備えており、
前記角度フィルタは、前記面に直交する方向に対する入射角が第1の入射角範囲内である放射線を遮断して、前記入射角が前記第1の入射角範囲とは異なる第2の入射角範囲内である放射線を通すように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記角度フィルタは、可視光線を少なくとも部分的に通さず、開口部を有する層を有していることを特徴とする請求項10に記載の光電子デバイス。
【請求項12】
面を有する支持体と、前記面上に載置されてワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードとを備えた光電子デバイスを製造する方法であって、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックを形成し、
前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接する導電層を形成し、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記発光ダイオードの内の少なくとも1つ又は前記群の発光ダイオードの内の1つを覆う前記封止ブロックの屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項13】
面を有する支持体と、前記面上に載置されてワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードとを備えた光電子デバイスを製造する方法であって、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックを形成し、
前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接する導電層を形成し、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックの少なくとも1つに、前記封止ブロックを覆って前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す共形的な誘電体層を備えており、前記封止ブロックの屈折率が1.8 ~2.2 の範囲内であり、前記誘電体層の厚さが200 nm~5μmの範囲内であり、前記誘電体層の屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記封止ブロックは、前記発光ダイオードの側壁全体に沿って前記発光ダイオード又は前記一群の各発光ダイオードを覆っていることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記封止ブロックを覆うレンズを形成することを特徴とする請求項12~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
凹部を夫々有するレンズを有する一体構造を形成し、
前記一体構造を前記支持体に固定し、
前記封止ブロックを前記凹部に挿入することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、半導体材料に基づく光電子デバイス、及び、該光電子デバイスの製造方法に関する。本発明はより具体的には、三次元素子、特に半導体のマイクロワイヤ又はナノワイヤによって形成された発光ダイオードを備えた光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを備えた光電子デバイスにより、光電子デバイスは、電気信号を電磁放射線に変換するように適合されたデバイス、特に電磁放射線、特に光の放射のためのデバイスと理解されている。発光ダイオードを形成するように適合された三次元素子の例として、以降III-V 族化合物と称される少なくとも1つのIII 族元素及び1つのV 族元素を主として含む化合物(例えば窒化ガリウムGaN )に基づく半導体材料を有するマイクロワイヤ又はナノワイヤがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光電子デバイスの光抽出効率(LEE) は一般に、光電子デバイスから出る光子の数の、発光ダイオードによって放射される光子の数に対する割合によって定められる。光電子デバイスの抽出効率は、可能な限り高いことが望ましい。
【0004】
既存の光電子デバイスの不利点は、各発光ダイオード内で放射される光子の一部が発光ダイオードから出ないということである。
【0005】
従って、実施形態の一目的は、上記に記載された発光ダイオード、特にマイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス、及び、該光電子デバイスの製造方法の欠点を少なくとも部分的に対処することである。
【0006】
実施形態の更なる目的は、光電子デバイスの抽出効率を高めることである。
【0007】
実施形態の更なる目的は、各発光ダイオードから出ない光の割合を減少させることである。
【0008】
実施形態の更なる目的は、発光ダイオードによって放射される光が隣り合う発光ダイオードに吸収/捕捉される割合を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、光電子デバイスであって、
面を有する支持体と、
前記面上に載置されて、ワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードと、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に設けられて、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックと
を備えており、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接している導電層を更に備えており、
前記発光ダイオードの内の少なくとも1つ又は前記群の発光ダイオードの内の1つを覆う前記封止ブロックの屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする光電子デバイスを提供する。
【0010】
更なる実施形態は、光電子デバイスであって、
面を有する支持体と、
前記面上に載置されて、ワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードと、
前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に設けられて、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックと
を備えており、
前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接している導電層を更に備えており、
前記光電子デバイスは、前記封止ブロックの少なくとも1つに、前記封止ブロックを覆って前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す共形的な誘電体層を備えており、
前記封止ブロックの屈折率が1.8 ~2.2 の範囲内であり、前記誘電体層の厚さが200 nm~5μmの範囲内であり、前記誘電体層の屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内であることを特徴とする光電子デバイスを提供する。
【0011】
実施形態によれば、前記誘電体層は前記導電層と前記封止ブロックとの間に配置されているか、又は前記導電層は、前記誘電体層と前記封止ブロックとの間に配置されている。
【0012】
実施形態によれば、各半導体素子はIII-V 族化合物である。
【0013】
実施形態によれば、各半導体素子は窒化ガリウムを含んでいる。
【0014】
実施形態によれば、各半導体素子の平均直径が200 nm~2μmの範囲内であり、各封止ブロックの平均直径が3μm~30μmの範囲内である。
【0015】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、少なくとも1つの発光ダイオードに、前記封止ブロックを覆う光輝性層を更に備えている。
【0016】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記封止ブロックを覆うレンズを更に備えており、前記レンズ間に空隙が存在する。
【0017】
実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記レンズを覆う角度フィルタを更に備えている。
【0018】
実施形態によれば、前記角度フィルタは、可視光線を少なくとも部分的に通さず、開口部が横切る層を有している。
【0019】
更なる実施形態は、面を有する支持体と、前記面上に載置されてワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードとを備えた光電子デバイスを製造する方法を提供する。前記方法では、前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックを形成し、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接する導電層を形成し、前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在し、前記発光ダイオードの内の少なくとも1つ又は前記群の発光ダイオードの内の1つを覆う前記封止ブロックの屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内である。
【0020】
更なる実施形態は、面を有する支持体と、前記面上に載置されてワイヤ、円錐又は円錐台の形態の半導体素子を有する発光ダイオードとを備えた光電子デバイスを製造する方法であって、前記発光ダイオード又は一群の発光ダイオード毎に、前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通して前記発光ダイオード又は前記一群の発光ダイオードを覆う封止ブロックを形成し、前記封止ブロックを覆って各発光ダイオードと接する導電層を形成し、前記封止ブロックの最大の厚さが1μm~30μmの範囲内であり、隣り合う発光ダイオード又は隣り合う群の発光ダイオードを覆う前記封止ブロック間に空隙が存在することを特徴とする方法を提供する。前記光電子デバイスは、前記封止ブロックの少なくとも1つに、前記封止ブロックを覆って前記発光ダイオードによって放射される放射線を少なくとも部分的に通す共形的な誘電体層を備えており、前記封止ブロックの屈折率が1.8 ~2.2 の範囲内であり、前記誘電体層の厚さが200 nm~5μmの範囲内であり、前記誘電体層の屈折率が1.3 ~1.6 の範囲内である。
【0021】
実施形態によれば、前記方法では、前記封止ブロックを覆うレンズを形成する。
【0022】
実施形態によれば、前記方法では、凹部を夫々有するレンズを有する一体構造を形成し、前記一体構造を前記支持体に固定し、前記封止ブロックを前記凹部に挿入する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0024】
図1】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの実施形態を示す図である。
図2図1に示されている光電子デバイスの要素の屈折率に応じた、光電子デバイスの光抽出効率の推移曲線を示す図表である。
図3】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。
図4】光輝性層の厚さに応じた、図3に示されている光電子デバイスの光抽出効率の推移曲線を示す図表である。
図5】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。
図6】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。
図7】様々なレンズの厚さに関して図6に示されている光電子デバイスの前面に関する所与の方向の傾きに応じた、光電子デバイスによって所与の方向に放射される光の強度の推移曲線を示す図表である。
図8】レンズの厚さに応じた、頂点での半角が20°である放射円錐で図6に示されている光電子デバイスによって放射される光パワーの推移曲線を示す図表である。
図9】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。
図10】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。
図11図5に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図12】製造方法のその後の工程を示す図である。
図13】製造方法のその後の工程を示す図である。
図14】製造方法のその後の工程を示す図である。
図15】製造方法のその後の工程を示す図である。
図16】製造方法のその後の工程を示す図である。
図17】製造方法のその後の工程を示す図である。
図18】製造方法のその後の工程を示す図である。
図19】製造方法のその後の工程を示す図である。
図20】製造方法のその後の工程を示す図である。
図21図9に示されている光電子デバイスと同様の光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図22】製造方法のその後の工程を示す図である。
図23図1に示されている光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図24】製造方法のその後の工程を示す図である。
図25】製造方法のその後の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態で共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有する場合があり、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有する場合がある。明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な動作及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、光電子デバイスの発光ダイオードにバイアスをかける手段は公知であり、記載されていない。
【0026】
以下の開示では、特に示されていない場合、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「高」、「低」などの相対位置を限定する文言、又は「水平」、「垂直」などの向きを限定する文言を参照するとき、この文言は図面の向き又は通常の使用位置における光電子デバイスを指す。更に、「材料から主に形成されている化合物」又は「材料に基づく化合物」という表現は、化合物が前記材料の95%以上の割合を有し、この割合が好ましくは99%より大きいことを意味すると理解される。「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。以下の開示では、「導電層」は、電気的な伝導性を有する層を意味すると理解され、「絶縁層」は、電気的に絶縁する層を意味すると理解される。
【0027】
本開示は、三次元素子、例えばワイヤ、円錐又は円錐台、特にマイクロワイヤ又はナノワイヤの形態の素子を備えた光電子デバイスに関する。
【0028】
「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」という用語は、優先的な方向に細長い形状の三次元構造を表し、このような三次元構造は、5nm~2.5 μm、好ましくは50nm~2.5 μmの範囲内の小寸法と称される少なくとも2つの寸法と、小寸法の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも5倍、更に好ましくは少なくとも10倍の大寸法と称される第3の寸法とを有する。ある実施形態では、小寸法は、略1.5 μm以下、好ましくは100 nm~1.5 μmの範囲内、更に好ましくは100 nm~800 nmの範囲内とすることができる。ある実施形態では、夫々のマイクロワイヤ又はナノワイヤの高さは500 nm以上、好ましくは1μm~50μmの範囲内とすることができる。
【0029】
以下の開示では、「ワイヤ」という用語は「マイクロワイヤ又はナノワイヤ」を表すべく使用されている。好ましくは、ワイヤの優先的な方向に垂直な面における断面の重心を通るワイヤの平均線が実質的に直線的であり、以降ワイヤの「軸芯」と称される。
【0030】
図1は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス5 の実施形態を示す部分的な断面略図であり、1つの発光ダイオードが示されている。
【0031】
図1は、下から上に、
- 下面11及び上面12を有する導電性の支持体10(上面12は好ましくは少なくとも発光ダイオードの位置で平坦である)、
- 側壁18、下端壁19及び上端壁20を有するワイヤ16と、側壁18を少なくとも部分的に覆って下端壁19を完全に覆う半導体層の積層体を有するシェル22とを夫々有している発光ダイオードDEL (1つの発光ダイオードが図1に概略的に示されている)、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、第1の電極を形成してシェル22を覆ってシェル22と接している導電層24であって、ワイヤ16の下端壁19を覆うシェル22の部分と支持体10との間に置かれて支持体10と接している導電層24、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、支持体10上に載置されて発光ダイオードDEL を完全に囲み発光ダイオードDEL の側壁全体に沿って第1の電極24と接している絶縁性の封止ブロック25であって、上面26及び側壁27を有している封止ブロック25、
- 封止ブロック25の周りで支持体10の上面12に亘って延びている絶縁層14、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、封止ブロック25の上面26及びワイヤ16の上端壁20の一部に亘って延びている絶縁層28(ワイヤ16は、上端壁20で絶縁層28を通って延びている突出部29を有している)、
- 第2の電極を形成して、発光ダイオード毎に、関連付けられた封止ブロック25と、関連付けられた絶縁層28と、封止ブロック25間の絶縁層14とに亘って延びており、各発光ダイオードDEL の突出部29と接している導電層30、並びに
- 導電層30を覆って、特に封止ブロック25の上面26全体及び封止ブロック25の側壁27全体を覆う絶縁層32
を有する構造を示す。
【0032】
更なる実施形態によれば、絶縁層32は存在しない。更なる実施形態によれば、絶縁層32は、導電層30と封止ブロック25との間に配置されている。
【0033】
本実施形態では、発光ダイオードDEL は並列に接続され、一組の発光ダイオードを形成している。変形例として、電極24及び電極30は、発光ダイオードを異なるように接続するために配置され得る。
【0034】
実施形態によれば、絶縁層32は空気34と接している。光電子デバイス5 の前面36は、観察者が見る面であり、特に、絶縁層32が存在しない場合には封止ブロック25の空気34に曝される面、又は絶縁層32が存在する場合には絶縁層32の空気34に曝される面を有する。特に、空隙37が各対の隣り合う発光ダイオード間に設けられている。
【0035】
実施形態によれば、封止ブロック25を構成する材料は、発光ダイオードDEL によって放射される放射線の波長に関して、ワイヤ16を構成する材料の光屈折率より厳密に低く、絶縁層32を構成する材料の光屈折率より厳密に高い、屈折率とも称される光屈折率を有する。光屈折率は、媒体の光学特性、特に吸収及び拡散を特徴付ける無次元数である。屈折率は複素光学指数の実部と等しい。屈折率は、例えば偏光解析法によって決定され得る。以下の開示が屈折率を参照するとき、特に示されていない場合、屈折率は、発光ダイオードDEL によって放射される放射線の波長に関する屈折率である。実施形態によれば、絶縁層32を構成する材料の光屈折率は、封止ブロック25を構成する材料の光屈折率より厳密に低く、空気の光屈折率より厳密に高い。
【0036】
支持体10は一体構造に相当することができるか、又は導電層によって覆われた基部を有することができる。上面12は導電性を有し、例えば金属、例えばアルミニウム、銀、銅又は亜鉛で形成されている。支持体10は、互いに電気的に絶縁された様々な導電性領域を有することができる。この手段によって、様々な発光ダイオードを個別にアドレス指定することができる。実施形態によれば、上面12は反射することができる。このように、支持体10は鏡面反射を有することができる。更なる実施形態によれば、支持体10はランバート反射を有することができる。ランバート反射を有する表面を得るために、一可能性として導電性表面に凹凸を形成する。例えば、上面12が基部上に載置された導電層の面に相当する場合、金属層の上面12が、堆積されると高低を示すように、金属層を堆積する前に、基部の表面のテクスチャリングを行うことができる。
【0037】
ワイヤ16は、少なくとも1つの半導体材料から少なくとも部分的に形成されている。ワイヤ16は、III-V 族化合物、例えばIII-N 化合物を主として含む半導体材料から少なくとも部分的に形成され得る。III 族化学元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)が挙げられる。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN が挙げられる。V 族の更なる元素、例えばリン又はヒ素を更に使用することができる。一般的に言えば、III-V 族化合物内の元素は様々なモル分率で組み合わせられ得る。ワイヤ16はドーパントを含むことができる。例えば、III-V 族化合物に関して、ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)であるP型II族ドーパント、例えば炭素(C) であるP型IV族ドーパント、並びに例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S) 、テルビウム(Tb)及びスズ(Sn)であるN型IV族ドーパントを含む群から選択され得る。
【0038】
ワイヤ16の断面は様々な形状を有することができ、例えば楕円形、円形又は多角形、特に三角形、矩形、正方形若しくは六角形を有することができる。従って、ワイヤの断面又はこのワイヤ上に堆積された層の断面の「直径」という用語を本明細書で述べるとき、この用語は、例えばワイヤの断面と同一の表面積を有する円盤の直径に相当する、この断面における所望の構造の表面積に関連付けられた変数であると理解される。各ワイヤ16の高さは250 nm~50μmの範囲内とすることができる。各ワイヤ16は、上面12に実質的に垂直な軸芯に沿って細長い半導体構造を有することができる。各ワイヤ16は一般的な円筒形状を有することができる。2つの隣り合うワイヤ16の軸芯を、0.5 μm~10μm、好ましくは1.5 μm~6μm離すことができる。例えば、ワイヤ16は、特に六角形又は正方形のアレイに従って規則的に分散することができる。
【0039】
シェル22は、
- 関連付けられたワイヤ16の側壁18及び下端壁19全体を少なくとも部分的に覆うアクティブ層、
- アクティブ層を覆うワイヤ16の導電型と反対の導電型の中間層、並びに
- 中間層を覆って、電極層24で覆われている連結層
を特に含む複数の層の積層体を有することができる。
【0040】
アクティブ層は、発光ダイオードDEL による放射線の大部分が放射される層である。実施例によれば、アクティブ層は、単一量子井戸又は多重量子井戸のような閉込め手段を有することができる。アクティブ層は、例えば、厚さが5~20nm(例えば8nm)のGaN 層及び厚さが1~10nm(例えば2.5 nm)のInGaN 層を交互に形成することにより構成されている。GaN の層はドープされることができ、例えばN型又はP型にドープされることができる。更なる実施例によれば、アクティブ層は、例えば厚さが10nmより大きいInGaN の1つの層を有することができる。
【0041】
例えばP型にドープされた中間層は、半導体層又は半導体層の積層体に相当することができ、p-n 接合又はpin 接合を可能にし、アクティブ層は、p-n 接合又はpin 接合のP型の中間層及びN型のワイヤ16間に設けられる。連結層は、半導体層又は半導体層の積層体に相当することができ、中間層及び電極24間のオーミック接触の形成を可能にする。例えば、連結層は、一又は複数の半導体層の変性までワイヤ16の導電型と反対の導電型で非常に高濃度にドープされることができ、例えば1020atoms/cm3 以上の濃度でP型にドープされることができる。半導体層の積層体は、電気担体をアクティブ層内に確実に十分分散させるために、三元合金、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN) 又は窒化アルミニウムインジウム(AlInN) から形成されてアクティブ層及び中間層に接する電子遮断層を有することができる。
【0042】
電極24及び電極30は、発光ダイオードDEL のアクティブ層にバイアスをかけて発光ダイオードDEL によって放射される電磁放射線を通すように夫々適合されている。各電極24, 30を形成する材料は、導電性を有する透明な材料、例えば、酸化インジウムスズ(つまりITO )、純酸化亜鉛、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛、ガリウムがドープされた酸化亜鉛、グラフェン又は銀のナノワイヤとすることができる。例えば、各電極層24, 30の厚さは、5nm~200 nm、好ましくは30nm~100 nmの範囲内である。
【0043】
各絶縁層14, 28, 32は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy 、ここでxは略3であり、yは略4であり、例えばSi3N4 )、酸窒化シリコン(特にSiOxNyの一般式を有する、例えばSi2ON2)、酸化アルミニウム(Al2O3 )、酸化ハフニウム(HfO2)又はダイヤモンドで形成され得る。例えば、各絶縁層14, 28の厚さは、5nm~500 nmの範囲内であり、例えば略30nmである。更に、絶縁層32は、有機材料、例えば有機ポリマー又は無機ポリマー、例えばシリコンで形成され得る。例えば、絶縁層32が存在する場合、絶縁層32の厚さは200 nm~5μmの範囲内であり、例えば略1μmである。
【0044】
封止ブロック25は、発光ダイオードDEL によって放射される放射線を少なくとも部分的に通す有機材料又は無機材料で形成され得る。上面12に垂直に測定された封止ブロック25の最大の厚さは、好ましくは1μm~30μmの範囲内である。封止ブロック25の幅は、平面視で封止ブロックに外接する円の直径に相当し得る。実施形態によれば、封止ブロック25の幅は3μm~30μmの範囲内である。実施形態によれば、上面26は平坦であり、上面12と平行である。実施形態によれば、側壁18は上面12に垂直である。変形例として、側壁18は上面12に対して傾斜し得る。
【0045】
封止ブロック25は、少なくとも部分的に透明な有機材料から形成され得る。封止ブロック25は、誘電体材料の粒子が場合によっては分散している少なくとも部分的に透明な有機材料又は無機材料のマトリクスを含むことができる。粒子を構成する誘電体材料の屈折率は、マトリクスを構成する材料の屈折率より厳密に大きい。実施例によれば、封止ブロック25は、ポリシロキサンとも称されるシリコーンから形成されたマトリクス、又はエポキシドポリマーで形成されたマトリクスを含んでおり、マトリクス内に分散している誘電体材料の粒子を更に含んでいる。粒子は、適した屈折率を有して相対的に球状のナノスケールの粒子を得ることが可能なあらゆるタイプの材料から構成されている。例えば、粒子は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、硫化亜鉛(ZnS) 、硫化鉛(PbS) 又はアモルファスシリコン(Si)で構成され得る。粒子の平均直径は同一の体積を有する球の直径であることが分かっている。誘電体材料の粒子の平均直径は2nm~250 nmの範囲内である。封止ブロック25の総重量に対する粒子の体積濃度は1%~50%の範囲内である。更なる実施例によれば、封止ブロック25は、絶縁層14, 28, 32に関連して記載されている材料の内の1つから構成され得る。
【0046】
絶縁層32が存在しない場合、封止ブロック25は1.3 ~1.6 の範囲内の屈折率を有する。絶縁層32が存在する場合、封止ブロック25は1.8 ~2.2 の範囲内の屈折率を有し、絶縁層32は1.3 ~1.6 の範囲内の屈折率を有する。
【0047】
前述された実施形態に係る光電子デバイスにより、光電子デバイス5 の抽出効率全体を高めること、つまり、前面36を介して光電子デバイス5 から出る光を増加させることが可能になることが有利である。光電子デバイス5 を見る観察者が感知するために、光は、前面36から封止ブロック25を出る必要がある。光電子デバイス5 の抽出効率を高めるために、テクスチャリングとして知られている表面処理を、前面36に高低パターンを形成するように前面36に行うことができる。
【0048】
図1に示されている光電子デバイス5 のシミュレーションを行った。これらのシミュレーションでは、電極30で覆われた封止ブロック25の外径は5μmであり、支持体10はアルミニウムで形成されており、電極24はTCO で形成されており、電極30はTCO で形成されており、ワイヤ16及びシェル22はGaN で形成され、5μmの高さ及び1.25μmの外形を有した。絶縁層32が存在する場合、絶縁層32の屈折率は1.45に選択されている。
【0049】
図2は、封止ブロック25の屈折率nに応じた、図1に示されている光電子デバイス5 の光抽出効率LEE の推移曲線を示す。菱形で示されたシミュレーションは、アルミニウムで形成された支持体10が鏡面反射のミラーを形成することを考慮して、絶縁層32がない状態で得られた。円で示されたシミュレーションは、支持体10がランバート反射を有することを考慮して、絶縁層32がない状態で得られた。正方形で示されたシミュレーションは、アルミニウムで形成された支持体10が鏡面反射のミラーを形成することを考慮して、絶縁層32がある状態で得られた。三角形で示されたシミュレーションは、支持体10がランバート反射を有することを考慮して、絶縁層32がある状態で得られた。
【0050】
図3は、マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス40の更なる実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス40は、図1に示されている光電子デバイス5 の要素全体を備えており、少なくともある発光ダイオードDEL に関して封止ブロック25を覆う光輝性層42を更に備えている。光輝性層42は、前述した絶縁層32の役割を更に果たすことができる。従って、光輝性層42の屈折率の範囲は、絶縁層32に関して前述した範囲と同一である。光電子デバイス40は、光輝性層42を覆う透明な層43と、所与の波長領域の放射線の透過を遮断するように構成された、層43を覆うフィルタ44とを更に備えることができる。フィルタ44は、着色層、又はブラッグフィルタを形成する様々な屈折率を有する層の積層体に相当し得る。光輝性層42は共形層とすることができる。フィルタ44により、光輝性層42から出る放射線の波長領域を調節することが可能である。層43の屈折率は、光輝性層42を出る光線のフィルタ44での反射を減らす又は除くように、可能な限り1に近く、好ましくは光輝性層42の屈折率より低く、好ましくは1.5 より低い。層43は、例えばMgF2、ポリマー、例えばアクリレートから形成されているか、又は空気の膜に相当する。
【0051】
光輝性層42は発光団を有することができ、発光団は、関連付けられた発光ダイオードDEL によって放射される光により励起されると、関連付けられた発光ダイオードDEL によって放射される光の波長とは異なる波長で光を放射するように適合されている。光輝性層42の厚さは4μm~40μmの範囲内とすることができる。
【0052】
実施形態によれば、光輝性層42は、少なくとも1つの光輝性材料の粒子を含んでいる。光輝性材料の例として、YAG:Ce又はYAG:Ce3+としても知られている3価セリウムイオンによって活性化されるイットリウムアルミニウムガーネット(YAG) が挙げられる。従来の光輝性材料の粒子の平均サイズは一般に5μmより大きい。
【0053】
実施形態によれば、各光輝性層42は、以降半導体ナノ結晶又はナノ発光団粒子とも称される半導体材料のナノスケールの単結晶粒子が分散しているマトリクスを含んでいる。光輝性材料の内部量子効率QYint は、放射される光子の数と光輝性物質に吸収される光子の数との比率に等しい。半導体ナノ結晶の内部量子効率QYint は5%より高く、好ましくは10%より高く、より好ましくは20%より高い。
【0054】
実施形態によれば、ナノ結晶の平均サイズは0.5 nm~1000 nm、好ましくは0.5 nm~500 nm、より好ましくは1nm~100 nm、特には2nm~30nmの範囲内である。50nmより小さい大きさでは、半導体ナノ結晶の光変換特性は基本的に量子閉込め現象に応じて決められる。従って、半導体ナノ結晶は、(三次元の閉込めの場合には)量子ドットに相当し、(二次元の閉込めの場合には)量子井戸に相当する。
【0055】
実施形態によれば、半導体ナノ結晶の半導体材料は、セレン化カドミウム(CdSe)、リン化インジウム(InP) 、硫化カドミウム(CdS) 、硫化亜鉛(ZnS) 、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO) 、酸化亜鉛カドミウム(ZnCdO) 、硫化カドミウム亜鉛(CdZnS) 、セレン化カドミウム亜鉛(CdZnSe)、硫化銀インジウム(AgInS2)、PbScX3(ここでXはハロゲン原子、特にヨウ素(I) 、臭素(Br)又は塩素(Cl)である)タイプのペロブスカイト及びこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を含む群から選択されている。実施形態によれば、半導体ナノ結晶の半導体材料は、Blevenec等著のPhysica Status Solidi (RRL) - Rapid Research Letters Volume 8,No. 4,p. 349-352,2014年4月の刊行物に記載されている材料から選択されている。
【0056】
実施形態によれば、半導体ナノ結晶の大きさは、半導体ナノ結晶によって放射される放射線の所望の波長に応じて選択されている。例えば、平均サイズが3.6 nm程度であるCdSeナノ結晶は青色の光を赤色の光に変換するように適合され、平均サイズが1.3 nm程度であるCdSeナノ結晶は青色の光を緑色の光に変換するように適合されている。更なる実施形態によれば、半導体ナノ結晶の組成は、半導体ナノ結晶によって放射される放射線の所望の波長に応じて選択されている。
【0057】
マトリクスは、発光ダイオードDEL によって放射される放射線及び光輝性粒子によって放射される放射線を少なくとも部分的に通す材料で形成されている。マトリクスは、例えばシリカから形成されている。マトリクスは、例えば任意の少なくとも部分的に透明なポリマーで形成されており、特にシリコーン、エポキシ又はポリ乳酸(PLA) で形成されている。マトリクスは、三次元プリンタと共に使用される少なくとも部分的に透明なポリマー、例えばPLA で形成され得る。実施形態によれば、マトリクスは、2~90重量%、好ましくは10~60重量%のナノ結晶、例えば略30重量%のナノ結晶を含んでいる。マトリクスは、例えば直径が100 nm~300 nmの範囲内の散乱粒子、特にTiO2粒子を更に含むことができる。
【0058】
図3に示されている光電子デバイス 40に関して、図2に示されている曲線を得るための前述したシミュレーションパラメータを使用してシミュレーションを行った。
【0059】
図4は、光輝性層42の厚さE42 に応じた、図3に示されている光電子デバイス40の画素光学効率POE の推移曲線を示す。画素光学効率は、自由空間に向けて放射される光パワー(変換損失を含む)と発光ダイオードによって生成される光パワーとの比率に相当する。菱形で示されたシミュレーションは、支持体10が発光ダイオード間の不透明で光沢のない材料、つまり、実質的にランバート反射を有する材料に対応するときに得られた。円で示されたシミュレーションは、支持体10が発光ダイオード間のミラーに対応し、つまり実質的に鏡面反射を有するときに得られた。塗りつぶされていない円又は菱形で示された曲線は、層43の屈折率が1.5 に等しいときに得られ、塗りつぶされた円又は菱形で示された曲線は、層43の屈折率が1に等しいときに得られた。絶縁層43の屈折率が1に近いほど、画素光学効率POE が更に増加する。光輝性層42の厚さが増加すると、POE に対する絶縁層43の屈折率の変化の寄与が減少することが更に分かる。光輝性層42の厚さが略15μmより大きい場合、光輝性層42の厚さの変化がPOE にほとんど影響を与えないことが更に分かる。
【0060】
図5は、マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス50の更なる実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス50は、発光ダイオードDEL 毎に、光電子デバイス50が発光ダイオードDEL と支持体10との間に配置された導電性パッド52を更に備えている点、絶縁層14が導電性パッド52の側縁部を覆っている点、シェル22及び電極30がワイヤ16の下端壁19を覆わないが、ワイヤ16の上端壁20を覆っている点、絶縁層28が導電性パッド52と電極層30との間に配置されている点、並びに突出部29がワイヤ16を導電性パッド52に接続する点を除いて、図3に示されている光電子デバイス40の要素全体を備えている。
【0061】
図6は、マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス55の更なる実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス55は、図1に示されている光電子デバイス5 の要素全体を備えており、発光ダイオードDEL 毎に封止ブロック25を完全に覆うレンズ56を更に備えている。特に、レンズ56は封止ブロック25の上面及び封止ブロック25の側壁を覆っている。実施形態によれば、レンズ56は、空気34と接する外面58を有しており、外面58はワイヤ16の軸芯を含む断面に実質的に放物線の形状を少なくとも部分的に有する。空隙37が存在し、1対の隣り合う発光ダイオードDEL を覆う2つのレンズ56間に設けられている。
【0062】
レンズ56は、有機材料又は無機材料から形成されることができ、特に封止ブロック25及び/又は光輝性層42のマトリクスを形成するために前述した材料から形成されることができる。レンズ56により、光電子デバイス55によって放射される光の指向性を高めることが可能である。レンズ56の厚さZmaxは、電極層30と外面58との間の最大距離に相当する。レンズ56の幅Ymaxは、支持体10の上面12と平行に測定されたレンズ56の最大距離に相当する。実施形態によれば、厚さZmaxは8μm~50μmの範囲内である。実施形態によれば、幅Ymaxは8μm~50μmの範囲内である。レンズ56の屈折率は1.4 ~1.5 の範囲内であることが好ましい。
【0063】
実施形態によれば、支持体10は発光ダイオードDEL によって放射される放射線を反射し、レンズ56の下方部分にあるレンズ56の側壁は、発光ダイオードDEL によって放射される放射線を反射する層に囲まれている。
【0064】
図6に示されている光電子デバイス55に関して、図2に示されている曲線を得るための前述したシミュレーションパラメータを使用してシミュレーションを行った。レンズ56は、1.45の屈折率を有する材料から形成された。シミュレーションでは、レンズ56の最大の幅Ymaxはレンズ56の最大の厚さZmaxと等しかった。
【0065】
図7は、レンズ56の最大の厚さZmaxが夫々6μm、12μm及び18μmである場合の、支持体10の上面12に関する所与の方向の傾き(角度)に応じた、図6に示されている光電子デバイス55によって前記所与の方向に放射される放射線のエネルギー強度の推移曲線C1、推移曲線C2及び推移曲線C3を示す。図7から明らかなように、レンズ56の最大の厚さZmaxが増加すると、小さい入射角でのエネルギー強度、つまり支持体10の上面12と実質的に直交するように出る放射線に関するエネルギー強度が増加する。
【0066】
図8は、レンズ56の最大の厚さZmaxに応じた、支持体10の上面12に垂直な軸芯との頂点での半角が20°である放射円錐で図6に示されている光電子デバイス55によって放射される光パワーPの推移曲線を示す。黒く塗りつぶされた大きな円で示されたシミュレーションは、外面58が放物線に対応するレンズ56を用いて得られた。比較として、塗りつぶされていない大きな円で示された2つのシミュレーションは、角錐形状のレンズを用いて得られた。図8から明らかなように、レンズ56の最大の厚さZmaxが増加すると、放射円錐の光パワーが増加する。比較として、塗りつぶされていない小さい円で示されている直線P1は、レンズ56がない状態で上記に定められた放射円錐で放射される光パワーPを示し、塗りつぶされた小さい円で示されている直線P2は、ランバート放射体によって、上記に定められた放射円錐で放射される光パワーPを示す。
【0067】
図9は、マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス60の更なる実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス60は、図3に示されている光電子デバイス40の要素全体を備えており、図6に示されている光電子デバイス55のレンズ56を更に備えている。この実施形態では、レンズ56は封止ブロック25を覆っており、光輝性層42は封止ブロック25とレンズ56との間に配置されている。
【0068】
図10は、マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイス65の更なる実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス65は、図6に示されている光電子デバイス55の要素全体を備えており、発光ダイオードDEL を覆う角度フィルタ66を更に備えており、3つの発光ダイオードDEL が示されている。角度フィルタ66は、基準方向、例えば支持体10の上面12に直交する方向に対する入射角が第1の入射角範囲内である発光ダイオードDEL によって放射される光線及び光電子デバイス65の外側の周辺光の光線を遮断するように構成されており、方向が第1の入射角範囲とは異なる少なくとも第2の入射角範囲内である光線を通過させるように構成されている。本実施形態では、角度フィルタ66は、可視光線を通さず、好ましくは可視光線を吸収して貫通開口部69を有する層68を有している。貫通開口部69は、基準方向に応じて発光ダイオードDEL と垂直に整列して形成され得る。
【0069】
図10に示されているように、各発光ダイオードDEL はレンズ56で覆われていることが好ましい。角度フィルタ66は、図示されていないスペーサによって支持体10から離れて保持されており、空気34の膜が角度フィルタ66とレンズ56との間に設けられている。レンズ56から出る放射線のかなりの部分が基準方向に対して小さい入射角を有するので、この放射線の大部分は、遮断されることなく角度フィルタ66を通過する。逆に、周辺光による放射線の大部分は角度フィルタ66によって遮断される。このため、光電子デバイス65の反射素子、例えば金属トラックでの周辺光の望ましくない反射を減らすことができる。このため、更に光電子デバイス65のコントラストを高めることができる。
【0070】
図11~20は、図5に示されている光電子デバイス50を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。本方法は、以下の工程を有する。
【0071】
1) 発光ダイオードDEL の形成(図11
シード層としても知られている核生成層72と、核生成層72を覆う電気絶縁層74であって、発光ダイオードDEL が形成される所望の位置で核生成層72の一部を露出する貫通開口部76を有する電気絶縁層74とによって覆われた基板70上に発光ダイオードDEL を形成することができる。シード層72は、ワイヤの成長を刺激する層である。シード層72、ワイヤ16、シェル22及び電極層30を、化学蒸着法(CVD) 又は有機金属気相エピタキシ法(MOVPE) としても知られている有機金属化学蒸着法(MOCVD) によって堆積させることができる。しかしながら、分子線エピタキシ法(MBE) 、ガスソースMBE 法(GSMBE) 、有機金属MBE 法(MOMBE) 、プラズマ支援MBE 法(PAMBE) 、原子層エピタキシ法(ALE) 、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE)のような方法又は原子層堆積法(ALD) のような方法を使用することができる。更に、蒸着法又は反応性スパッタリング法のような方法を使用することができる。発光ダイオードを製造する更に詳細な方法は、米国特許第9537044 号明細書に記載されている。封止ブロック25を構成する材料の封止層78を、例えばスピン堆積法、ジェット印刷法又はシルクスクリーン法によって構造全体に堆積させる。封止層78が酸化物である場合、封止層78をCVD によって堆積させることができる。電極層30の一部を封止層78の表面で露出させる。
【0072】
2) 前述の工程で得られた構造のハンドル79への固定、基板70及び核生成層72の除去、並びに封止ブロック25及び絶縁層28を画定するための、絶縁層74側での得られた構造の部分切断(図12
ハンドル79への固定を分子接合によって又は中間接合材料を使用して行うことができる。基板70の除去を化学機械平坦化(CMP) によって行うことができる。封止ブロック25及び絶縁層28の画定を可能にする切断をエッチング又は切り出しによって行うことができる。
【0073】
3) 前述の工程で得られた構造の発光ダイオードの支持体10への固定(図13
固定を「フリップチップ」タイプの連結によって行うことができる。更なる実施形態によれば、固定を、支持体10上に設けられた導電性パッド52への発光ダイオードの分子接合とも称される直接接合によって行うことができる。図13に示されているように、図12に示されている構造の特定の発光ダイオードのみを支持体10に固定する。図14は、全ての発光ダイオードを支持体10上の所望の位置に固定したときに得られた結果を示す。
【0074】
4) 絶縁層14の形成(図15
図14に示されている構造全体に亘って絶縁層を共形堆積させ、絶縁層14を形成するためにこの共形層の一部を取り除くことにより、絶縁層14を形成することができる。
【0075】
5) 例えば共形堆積による電極層30の形成(図16
【0076】
6) 光輝性層42を有さない発光ダイオードDEL に関する、電極層30を覆う絶縁層32の可能な形成(図17
【0077】
7) 例えば所望の位置での光輝性層42を構成する材料の直接印刷、例えばインクジェット印刷、エーロゾル印刷、マイクロスタンピング、フォトエッチング、シルクスクリーン、フレキソ印刷、スプレーコーティング又は滴の堆積による、他の発光ダイオードDEL に関する光輝性層42の形成(図18
【0078】
8) 例えば共形堆積による絶縁層43の形成(図19
【0079】
9) フィルタ44の形成(図20
【0080】
発光ダイオードを覆うレンズ56を備えた光電子デバイスの場合、レンズ56を得るためにレンズを構成する材料の層を発光ダイオード上に堆積させて、この層をエッチングするか又はこの層を形成することによって、レンズ56を形成することができる。
【0081】
図21~22は、図9に示されている光電子デバイス60の変形例に相当する光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。この実施形態では、レンズ56を、発光ダイオードを備えた構造とは別に予め形成する。図21では、レンズ56は、例えば成型によって得られた一体構造82を形成する。各レンズ56は、発光ダイオードDEL を受けるように構成されている凹部84を有する。フィルタ44を特定の凹部に形成することができる。その後、一体構造82を、例えば接合材料86を使用して支持体10に固定する(図22)。本実施形態では、一体構造82が支持体10に固定されると、各レンズ56と前述した層43を形成する光輝性層42との間に空隙が残存しているように、凹部84の大きさは発光ダイオードDEL の大きさより大きい。
【0082】
図23~25は、図1に示されている光電子デバイス5 を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。本方法は、以下の工程を有する。
【0083】
1)’ 図11に関連して工程1)で前述した方法と同様の方法での発光ダイオードDEL の形成
【0084】
2)’ 封止ブロック25、絶縁層28及び核生成層72の一部88を画定するための、絶縁層74側での得られた構造の部分切断(図23
切断をエッチング又は切り出しによって行うことができる。
【0085】
3)’ 前述の工程で得られた構造の発光ダイオードの支持体10への固定(図24
固定を、図13に関連して工程3)で前述したように行うことができる。
【0086】
4)’ 支持体10に固定された発光ダイオードDEL からの基板70の選択的解放、及び核生成層の一部88の除去
【0087】
この方法のその後の工程は、図14~22に関連して前述した工程に相当し得る。
【0088】
様々な実施形態及び変形例が述べられている。当業者は、これらの実施形態のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に容易に想起される。特に、図5に示されている光電子デバイス50の発光ダイオードDEL の構造は、図1に示されている光電子デバイス5 、図6に示されている光電子デバイス55、図9に示されている光電子デバイス60及び図10に示されている光電子デバイス65と共に実施され得る。更に、既に開示された実施形態では各封止ブロック25は1つの発光ダイオードDEL を覆うように示されているが、各封止ブロック25が一群の発光ダイオード、例えば2~100 個の発光ダイオードを覆うことができることは明らかである。封止ブロックは、発光ダイオードの側壁18全体に沿って一群の発光ダイオードを夫々覆うことができる。
【0089】
最後に、本明細書に記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上記に与えられる機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である
【0090】
本特許出願は、本開示の不可欠な部分とみなされる仏国特許出願第18/71254 号明細書の優先権を主張している。
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