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特許7449590間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法およびこれから製造された培養液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法およびこれから製造された培養液
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20240307BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021563388
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2020008450
(87)【国際公開番号】W WO2021241798
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0062365
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521465094
【氏名又は名称】シーケイ-エクソジーン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CK-EXOGENE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】4F, 254, Gangnam-daero, Gangnam-gu, Seoul 06266 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン ジュン
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/152035(WO,A1)
【文献】特表2015-523058(JP,A)
【文献】国際公開第2019/241910(WO,A1)
【文献】特表2017-509332(JP,A)
【文献】Stem Cells International, 2017, Vol.2017, Article ID 4521324, pp.1-14
【文献】STEM CELLS AND DEVELOPMENT, 2016, Vol.25, No.10, pp.788-797
【文献】American Journal of Physiology- Endocrinology and Metabolism, 2012, Vol.303,pp.E1015-E1024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞である細胞サンプルをグルコースDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)培地で4~10継代で継代培養する段階と、
前記継代培養した細胞をタンパク質合成阻害剤が含まれた基質培地で30~100時間培養させた後、細胞培養液を収得する段階と、
前記細胞培養液からエキソソームを分離する段階と、を含み、
前記細胞培養液を収得する段階において、
前記基質培地は、濃度が50ng/mlのTNFαをさらに含み、
前記タンパク質合成阻害剤は、
シクロヘキシミド(Cycloheximide)あり、
前記基質培地は、
TNFα:タンパク質合成阻害剤の割合が1:50~1:200であることを特徴とする間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項2】
前記TNFαおよびタンパク質合成阻害剤の処理時間は、30時間~100時間であることを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項3】
前記細胞培養液は、
エキソソームの数、エキソソーム由来タンパク質およびエキソソーム由来RNAのうちいずれか一つ以上の含有量を増加したことを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項4】
前記細胞培養液1ml当たり1.1×1011個以上のエキソソームが分離されることを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項5】
前記細胞サンプルを継代培養する段階において、
前記DMEM培地は、EGF、FGF-2、GDF11、KGF、HGF、PDGF、VEGF、IGFおよびTGF-bからなる群から選択される一つ以上を含
ことを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項6】
前記エキソソームのマーカーは、
CD63、CD9、CD81、S1PR1およびS1PR3からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【請求項7】
前記細胞サンプルが、
脂肪組織または胎盤組織から収得された細胞をメンブレンを通過させたろ液を遠心分離した細胞サンプルである、
ことを特徴とする請求項1に記載の間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月25日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0062365号の出願日の利益を主張し、その内容の全部は本明細書に含まれる。
【0002】
本出願は、間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの骨髄には、複数種の前駆細胞(progenitor)が存在することが発見され、これらのうち、多分化能を示す前駆細胞を間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells;MSC)と称する。間葉系幹細胞は、骨髄だけでなく、脂肪、肝、筋肉など身体における多くの臓器に存在することが知られている。
【0004】
間葉系幹細胞は、自己増殖能があり、骨芽細胞(osteoblasts)、軟骨細胞(chondrocytes)、筋細胞(myocytes)、骨髄間質細胞(marrow stromal cells)、腱靱帯線維芽細胞(tendonligamentfibroblasts)、脂肪細胞(adipocytes)などに分化でき、高い増殖性の付着性細胞であり、抗炎症および免疫調節能力があることが知られている。特に、T細胞とB細胞の増殖および分化抑制、樹状細胞(dendritic cell)、ナチュラルキラー(natural killer,NK)細胞およびマクロファージ(macrophage)のような免疫細胞の機能抑制など免疫抑制効果を示す。
【0005】
このような間葉系幹細胞は、間葉系幹細胞自体の分化機能よりは、間葉系幹細胞が分泌する様々な因子(paracrine/secretory factors)、例えばケモカイン(chemokine)、サイトカイン(cytokine)、成長因子(growth factors)などが幹細胞の効果を示すことが注目されている。また、間葉系幹細胞は、このような因子だけでなく、細胞外小胞体(extracellular vesicle;EV)を分泌することが知られており、細胞外小胞体が細胞間のシグナル伝達を通じて細胞の運命、機能、分化など多方面に影響を及ぼすことが知られている。
【0006】
様々な因子のうち、エキソソーム(Exosome)は、脂質二重層から構成される小胞(vesicle)であって、細胞が細胞外に分泌する物質の構成体である。エキソソームは、細胞-細胞間のコミュニケーション(cell-cell communication)および細胞性免疫を仲裁する機能的な役割を行うために、細胞内の生体分子であるタンパク質、生体活性脂質およびRNA(miRNA)を輸送(運搬)する役割をすることが知られている。このようなエキソソームは、また、アルツハイマーなど神経疾患のバイオマーカーとして研究されており、脳脊髄液と血液を分離する血液脳関門(blood-brain barrier,BBB)を透過するほどに選択的透過性が高くて、特定薬物のナノ伝達体(nanocarrier)のような薬物伝達システムの開発にも活用されている。
【0007】
なお、間葉系幹細胞から分泌されるエキソソームは、細胞-細胞コミュニケーション(cell-to-cell communication)に関与し、幹細胞が有する再生医学的な治療効能を示すことが知られており、最近では、間葉系幹細胞自体を使用することなく、間葉系幹細胞が分泌するエキソソームを用いて多様な疾患の治療効果に対する研究が活発に進行中にある。
【0008】
しかしながら、エキソソーム分離方法のうち最も普遍的に使用される超遠心分離(Ultracetrifugation)は、一度に多量のエキソソームを分離できる長所があるが、高価な装備が必要であり、分離するのに多くの時間がかかり、強い遠心分離によってエキソソームに物理的に損傷が発生することがあり、特に分離したエキソソームの純度が落ちるなどの問題がある。このような問題を改善するための方法のうち、エキソソームの膜(membrane)に存在するタンパク質であるホスファチジルセリン(phosphatidylserine,PS)に特異的に結合する物質を用いることによって分離されるエキソソームの純度を高めたPS親和性方法(PS affinity method)があるが、これは、超遠心分離方法に比べて高純度のエキソソームを分離できるが、収率が低いという短所がある。また、カラムクロマトグラフィー(chromatography)を用いたエキソソーム収得方法が従来に報告されたが、細胞培養液または血液内に浮遊しているエキソソームと類似したサイズ、密度を有する脂質タンパク質(lipoprotein)が共に溶出されるという問題がある。
【0009】
したがって、間葉系幹細胞から不純物なしで高純度のエキソソームを高濃度で得ることができる分離方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願の一実施例による生産方法は、上記したような従来の問題点を解決するためになされたものであって、間葉系幹細胞から不純物なしで高純度、高濃度でエキソソームを抽出するためのものである。
【0011】
本出願は、間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法を提供しようとする。
【0012】
本出願は、前記生産方法を用いて製造した間葉系幹細胞由来のエキソソームを含む培養液を提供しようとする。
【0013】
本出願は、前記生産方法を用いて生産されたエキソソームを有効成分として含む薬学組成物を提供しようとする。
【0014】
本出願は、前記生産方法を用いて生産されたエキソソームを有効成分として含む化粧料組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、本出願の一実施例は、間葉系幹細胞から細胞サンプルを収得する段階と、前記細胞サンプルを低濃度グルコースDMEM(low-glucose Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)培地で継代培養する段階と、前記培養した細胞をタンパク質合成阻害酵素が含まれた基質培地で培養させた後、細胞培養液を収得する段階と、前記細胞培養液からエキソソームを分離する段階と、を含むことを特徴とする間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法を提供する。
【0016】
本出願の一実施例において、前記幹細胞培養液を収得する段階において、前記基質培地は、TNFαをさらに含んでもよい。
【0017】
本出願の一実施例において、前記TNFαは、5~500ng/mlの濃度で含まれてもよい。
【0018】
本出願の一実施例において、前記タンパク質合成阻害酵素は、シクロヘキシミド(Cycloheximide)、アニソマイシン(Anisomycin)、アウリントリカルボン酸(Aurintricarboxylic acid)、ジフテリア毒素(Diphtheria toxin)、エデイン(Edeine)、フシジン酸(Fusidic acid)、パクタマイシン(Pactamycin)、ピューロマイシン(Puromycin)、リシン(Ricin)、フッ化ナトリウム(Sodium fluoride)、スパルソマイシン(Sparsomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)およびトリコデルマ(Trichoderma)からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上でありうる。
【0019】
本出願の一実施例において、前記基質培地は、TNFα:タンパク質合成阻害酵素の割合が1:10~1:2000でありうる。
【0020】
本出願の一実施例において、前記TNFαおよびタンパク質合成阻害酵素の処理時間は、30~100時間でありうる。
【0021】
本出願の一実施例において、前記細胞培養液は、エキソソームの数、エキソソーム由来タンパク質およびエキソソーム由来RNAのうちいずれか一つ以上の含有量が増加することができる。
【0022】
本出願の一実施例において、前記細胞培養液1ml当たり1.1×1011個以上のエキソソームが分離できる。
【0023】
本出願の一実施例において、前記細胞サンプルを継代培養する段階において、前記培地は、EGF、FGF-2、GDF11、KGF、HGF、PDGF、VEGF、IGFおよびTGF-bからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。
【0024】
本出願の一実施例において、前記細胞サンプルを継代培養する段階は、4~10継代培養できる。
【0025】
本出願の一実施例において、前記エキソソームマーカーは、CD63、CD9、CD81、S1PR1およびS1PR3からなる群から選択される一つ以上でありうる。
【0026】
本出願の一実施例において、前記サンプルを収得する段階において、前記間葉系幹細胞は、脂肪組織または胎盤組織から収得できる。
【0027】
本出願の一実施例において、前記幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞または誘導多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell,IPS)でありうる。
【0028】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて生産された間葉系幹細胞由来のエキソソームを含む培養液を提供する。
【0029】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて生産された間葉系幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む薬学組成物を提供する。
【0030】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて生産された間葉系幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本出願の一実施例による間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法は、高純度のエキソソームをより高い収率で収得できるという長所がある。
【0032】
本出願の一実施例による間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法は、基質培地にTNFαおよび/またはタンパク質合成阻害酵素を処理することによって、エキソソームを大量分離できるという長所がある。
【0033】
本出願の一実施例による間葉系幹細胞由来のエキソソームを含む培養液は、分化能と増殖能が増加したという長所がある。
【0034】
本出願の一実施例による培養液を用いて薬学組成物または化粧料組成物を提供できるという長所があり、前記薬学組成物は、エキソソームが無細胞という特性によって薬に対する副作用が発生する確率を減らすことができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】TNFαおよびCycloheximideの割合による幹細胞エキソソーム生産量の変化を示すグラフである。
図2】TNFαおよびCycloheximideを処理した間葉系幹細胞において時間に伴うエキソソーム生産量の変化を示すグラフである。
図3】本出願の実施例および比較例によるエキソソームの濃度をNTA(Nanoparticle-Tracking Analysis)で測定して示すグラフである。
図4】本出願の実施例および比較例によるエキソソームのタンパク質濃度をBradford assayで測定して示すグラフである。
図5】本出願の実施例および比較例に対して実施例14(a)、実施例15(b)および比較例1(c)のエキソソームのサイズおよびエキソソームのサイズによる粒子分布ヒストグラムをNTAで測定して示すグラフである。
図6】本出願の実施例および比較例に対して比較例2(d)、比較例3(e)および比較例4(f)のエキソソームのサイズおよびエキソソームのサイズによる粒子分布ヒストグラムをNTAで測定して示すグラフである。
図7】本出願の実施例および比較例に対して比較例5(g)、比較例6(h)および比較例7(i)のエキソソームのサイズおよびエキソソームのサイズによる粒子分布ヒストグラムをNTAで測定して示すグラフである。
図8】本出願の実施例および比較例によるエキソソームのWestern blotを示す図である。
図9】本出願のエキソソームを透過型電子顕微鏡(Transmission microscopy,TEM)写真で示す図である。
図10】本出願のエキソソームをExoview techniqueで分析したグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本出願をより詳細に説明する。
【0037】
以下の特定の機能的説明は、単に本出願の概念による実施例を説明するために例示されたものであって、本出願の概念による実施例は、多様な形態で実施でき、本明細書に説明された実施例に限定されるものと解されない。
【0038】
本出願の概念による実施例は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定の実施例は、本明細書に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本出願の概念による実施例を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本出願の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解すべきである。
【0039】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本出願を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含む。
【0040】
別途定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解すべきであり、本明細書で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解されない。
【0041】
本出願の一実施例は、間葉系幹細胞から細胞サンプルを収得する段階と、前記細胞サンプルを低濃度グルコースDMEM(low-glucose Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)培地で継代培養する段階と、前記培養した細胞をタンパク質合成阻害酵素が含まれた基質培地で培養させた後、細胞培養液を収得する段階と、前記細胞培養液からエキソソームを分離する段階と、を含むことを特徴とする間葉系幹細胞由来のエキソソーム生産方法を提供する。
【0042】
間葉系幹細胞から細胞サンプルを収得する段階において、前記サンプルは、メンブレンを通過させて製造されたろ液を遠心分離して細胞を収得できる。この際、メンブレンは、50μm~200μmのナイロンを使用できるが、特に制限されない。
【0043】
本出願において用語「遠心分離」は、遠心分離機を用いた分離法で軸を中心に物質を回転させて遠心力を加えることである。本出願において遠心分離は、分画遠心分離(Differential centrifugation)、密度勾配遠心分離(Density gradient centrifugation)および気体遠心分離(Gas centrifugation)からなる群から選択されるいずれか一つでありうる。
【0044】
本出願において用語「幹細胞」とは、自己複製能力を有し、2つ以上の新しい細胞に分化する能力を持つ細胞を意味し、分化全能性幹細胞(totipotent stem cells)、多能性幹細胞(pluripotent stem cells)、多分化能(多能性)幹細胞(multipotent stem cells)に分類できる。前記幹細胞として認定されるためには、未分化状態で継続して複製しなければならないし、特定の培養条件で特定の細胞に分化が可能でなければならない。上で述べた幹細胞は、分化能力と自己複製能力のため、最近、細胞治療剤組成物の候補として注目され、多くの研究が進行されている。これより、幹細胞のゲノム情報、タンパク質、成長因子を含有しているエキソソームを抽出できるという長所がある。
【0045】
前記幹細胞は、骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞または脂肪由来の幹細胞であってもよく、人体由来または動物や植物由来の幹細胞であってもよく、例えば人体脂肪由来の幹細胞であってもよいが、これらに限定しない。
【0046】
本出願において用語「エキソソーム」とは、様々な種類の細胞から分泌される膜構造の小胞体であって、他の細胞および組織に結合して、膜構成要素、タンパク質、RNAを伝達するなど多様な役割をする。
【0047】
本出願において「DMEM培地」は、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)を意味し、最も一般的に使用される動物細胞培養用培地である。細胞培養時に、低濃度グルコース(low glucose)DMEM培地を使用するが、これに限定せず、高濃度グルコース(high glucose)DMEM培地を使用してもよく、高濃度グルコース培地でcellが80%~100%満たされるまで成長させた後、低濃度グルコース培地で培養してもよい。上記方法のように高濃度グルコースDMEMと低濃度グルコースDMEMを混合して培地で培養すると、細胞の速い収得が可能であるという長所がある。前記低濃度グルコースDMEM中、グルコースの濃度は、800~1200mg/Lであり、また、低濃度グルコースDMEM培地にウシ胎児血清を添加して培養できるが、これに制限されるものではない。
【0048】
本出願において用語「培養液」は、間葉系幹細胞培養液であって、間葉系幹細胞を培養した細胞培養上澄み液を指す。間葉系幹細胞培養液は、間葉系幹細胞の培養過程で細胞から分泌される様々な生理活性物質を含有している。
【0049】
前記メンブレンは、50μm~200μmでありうるが、特に制限されない。前記サンプルがメンブレンを通過したろ液を100xg~500xgで5分~30分間遠心分離して細胞ペレット(Pellet)を収得できる。また、前記メンブレンは、半透膜メンブレンを使用でき、具体的には、ナイロンメンブレンフィルター(Nylon membrane filter)でありうるが、特に制限されない。
【0050】
前記細胞ペレットを継代培養する段階は、抗生剤を含んでもよい。抗生剤は、ペニシリン(penicillin)および/またはストレプトマイシン(Streptomycin)でありうるが、これに制限されない。100~150mmの細胞培養ペトリ皿(Petri dish)に1×105cells/1ml培地の濃度で希釈でき、30℃~40℃の温度、具体的に37℃の温度で、3%~10%、具体的に5%のCO2培養器で培養できる。また、細胞培養のためにペトリ皿を使用することなく、簡単な形態のボトルでも培養が可能であり、長期間細胞を安定に維持できるので、多量の細胞培養液を生産できるという長所がある。
【0051】
前記細胞ペレットサンプルを培地で継代培養する段階は、4~10継代培養できる。4継代以下に増殖時には、細胞が増幅しないので、発現程度が低いことがあり、10継代以上に増殖時には、細胞が過発現できるという問題がある。
【0052】
前記継代培養する段階で、前記DMEM培地は、成長分化因子(Growth and differentiation factor 11,GDF11)、上皮細胞成長因子(Epidermal growth factor,EFG)、血管内皮成長因子(Vascular endothelium growth factor,VEGF)、角質細胞成長因子(Keratinocyte growth factor,KGF)、肝細胞成長因子(Hepatocyte growth factor,HGF)、形質変換成長因子(Transforming growth factor-beta,TGF-b)、線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor 2,FGF-2)、IGF(Insulin growth factor)および血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor,PDGF)からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0053】
前記継代培養する段階で80%~100%コンフルエンシー(confluency)まで70~75時間ごとに培地を交換しながら培養することが好ましい。具体的に、72時間ごとに培地を交換しながら培養することが好ましく、70時間以内に培地を交換すると、高純度のペレットを収得できないという問題があり、75時間を超過する時間ごとに培地を交換すると、高濃度のペレットを収得できないという問題がある。本出願の間葉系幹細胞由来の高純度エキソソーム抽出のための継代培養段階は、間葉系幹細胞を増幅することで、エキソソームの分化能と増殖能を増加させることができるという長所がある。
【0054】
前記「培養液」は、間葉系幹細胞培養液であって、間葉系幹細胞を培養した細胞培養上澄み液を指す。間葉系幹細胞培養液は、間葉系幹細胞の培養過程で細胞から分泌される様々な生理活性物質を含有している。
【0055】
前記基質培地は、無血清基質培地または血清基質培地でありうる。前記基質培地は、低濃度グルコース(low glucose)DMEM培地を使用するが、これに限定されず、高濃度グルコース(high glucose)DMEM培地を使用したり、その両方を含んで使用できる。
【0056】
本出願の一実施例において、前記基質培地に含まれるタンパク質合成阻害酵素は、シクロヘキシミド(Cycloheximide)、アニソマイシン(Anisomycin)、アウリントリカルボン酸(Aurintricarboxylic acid)、ジフテリア毒素(Diphtheria toxin)、エデイン(Edeine)、フシジン酸(Fusidic acid)、パクタマイシン(Pactamycin)、ピューロマイシン(Puromycin)、リシン(Ricin)、フッ化ナトリウム(Sodium fluoride)、スパルソマイシン(Sparsomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、トリコデルマ(Trichoderma)からなる群から選択されるいずれか一つでありうるが、これらに限定されず、同じ機序ができるタンパク質生合成阻害酵素であれば、代替が可能である。具体的に、前記タンパク質合成阻害酵素は、シクロヘキシミドであることが好ましい。
【0057】
本出願の一実施例の細胞培養液を収得する段階において、基質培地は、TNFαをさらに含んでもよい。前記TNFαは、5~500ng/mlの濃度で含まれてもよい。
【0058】
本出願の一実施例において、前記基質培地は、TNFα:タンパク質合成阻害酵素の割合が1:1~1:2,000でありうる。前記TNFα:タンパク質合成阻害酵素の添加割合は、1:1~1:2,000でありうるが、具体的には、1:10~1:1000であり、さらに具体的には、1:20~1:500であり、1:50~1:200でありうる。タンパク質合成阻害酵素の添加割合がTNFαより低い場合には、抽出されるエキソソームのサイズと量が多くないことがあるという問題があり、TNFα:タンパク質合成阻害酵素の添加割合が1:2,000を超過する場合には、タンパク質合成阻害酵素の割合が過多で、細胞ペレットの増幅が阻害されうるという問題がある。具体的に、TNFαとタンパク質合成阻害酵素の両方を含む場合、TNFαのみを添加したり、タンパク質合成阻害酵素のみを添加する場合より、幹細胞から抽出されるエキソソームのサイズ、数、エキソソーム由来タンパク質またはエキソソーム由来RNAの含有量が増加して、高濃度と高純度のエキソソーム抽出が可能であるという長所がある。
【0059】
本出願の一実施例において、前記TNFαおよび/またはタンパク質合成阻害酵素の処理時間は、30~100時間培養するものでありうる。
【0060】
前記TNFαおよび/またはタンパク質合成阻害酵素の処理時間が30時間未満である場合には、十分な幹細胞ペレットの培養が起こらない問題があり、100時間を超過する場合には、非常に多い培養時間によって細胞の過発現になりうるという問題がある。
【0061】
本出願の一実施例において、前記エキソソームを分離する段階は、収集した幹細胞培養液を200~400xgで5~20分間遠心分離して第1上澄み液を収得する段階と、前記上澄み液を1800~2300xgで5~30分間遠心分離して第2上澄み液を収得する段階と、前記第2上澄み液を90,000~110,000xgで50~100分間遠心分離または超遠心分離し、上澄み液を除去して、エキソソームペレットを収得する段階と、前記収得したエキソソームペレットをPBSバッファーに浮遊させ、エキソソーム粒子を分離する段階と、を含んでもよい。エキソソーム粒子を分離するとき、超音波を処理できる。
【0062】
前記エキソソームペレットを収得し、これをPBSバッファーに浮遊させて超音波処理しなければ、固く結合されているペレットにより純度の高いエキソソームを抽出できないという問題がある。したがって、収得したエキソソームペレットからエキソソーム粒子のみを分離すると、純度の高いエキソソーム粒子を抽出できるという長所がある。
【0063】
本出願の一実施例において、前記間葉系幹細胞から細胞サンプルを収得する段階は、前記サンプルを小さい切片に作成し、コラーゲン分解酵素を添加して20~40分間処理できる。その後、DMEMを添加して酵素反応を不活性化することができ、この際、選択的にFBS(10% Fetal bovine serum)をさらに含んでもよい。そして、200~400xgで3~20分間遠心分離した後、上澄み液を捨てて、細胞ペレット粒子を抽出し、ペレット粒子をFBSおよびDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)に浮遊させて細胞サンプルを収得できる。
【0064】
前記細胞サンプルを収得する段階は、得られた細胞サンプルを再懸濁した後、再懸濁した細胞をシーディング(Seeding)する段階をさらに含んでもよい。前記シーディングする段階をさらに含むと、浮遊したFBSバッファー内で細胞ペレットどうし結合する現象を防止できるという長所がある。
【0065】
本出願の一実施例において、前記サンプルを収得する段階において、前記間葉系幹細胞は、脂肪組織または胎盤組織から摘出できるものでありうる。
【0066】
前記脂肪組織から摘出できる脂肪組織由来幹細胞は、ヒトの脂肪細胞に由来した幹細胞(human adipose-derived stem cells)を意味する。これから脂肪細胞のゲノム情報、タンパク質、成長因子を含有しているエキソソームを抽出できるという長所がある。
【0067】
本出願の一実施例において、前記幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞または誘導多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell,IPS)でありうる。
【0068】
本出願の一実施例において、前記細胞培養液は、エキソソームの数、エキソソーム由来タンパク質およびエキソソーム由来RNAのうちいずれか一つ以上の含有量が増加できる。
【0069】
本出願の一実施例において、前記細胞培養液1ml当たり1.1×1010個以上のエキソソームが分離できる。より具体的に、細胞培養液1ml当たり1.1×1011個以上1.2×1012個以下のエキソソームが分離できる。
【0070】
本出願の一実施例による方法で分離したエキソソームにDNaseI処理時に、純度が10%以上高くなるという長所がある。
【0071】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて製造された間葉系幹細胞由来の高純度エキソソームを含む培養液を提供する。
【0072】
本出願の一実施例において、前記培養液は、エキソソームの数、エキソソーム由来タンパク質およびエキソソーム由来RNAのうちいずれか一つの含有量を増加させるものでありうる。
【0073】
また、前記エキソソームの状態を分析するために、蛍光物質で標識できるので、蛍光物質が標識されたエキソソームの蛍光シグナル値を測定してエキソソームの状態を分析することによって、抽出値を標識できるという長所がある。
【0074】
本出願において用語「蛍光物質」は、物理的条件の変化、化学的処理によって光を発生する物質を意味する。例えば、前記蛍光物質は、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein,GFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow fluorescent protein,YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red fluorescent protein,RFP)のような蛍光タンパク質(fluorescent protein)であるか、発光タンパク質(photoprotein)またはルシフェラーゼ(luciferase)でありうる。
【0075】
また、前記蛍光物質が標識されたエキソソームは、エキソソームの内部に蛍光物質が単独で位置したり、膜タンパク質と蛍光物質が結合した融合タンパク質を含んでもよい。前記融合タンパク質は、蛍光物質が膜タンパク質に直接あるいはリンカーを介して結合できるので、エキソソームの量とシグナル値を正確に把握できるという長所がある。
【0076】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて製造された間葉系幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む薬学組成物を提供する。
【0077】
本出願の薬学組成物には、一般的に知られている補助剤および更なる好適な担体または希釈剤が使用できる。本出願の薬学組成物は、固形剤、溶液剤、乳剤、分散剤、ミセル、リポソームなどの形態で使用でき、ここで得られた組成物は、腸内または非経口適用するのに適した有機または無機担体または賦形剤とともに、活性成分として本出願の薬学組成物を含む。活性成分は、例えば錠剤、ペレット剤、カプセル剤、座剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤および使用するのに適した任意のその他の形態に対して一般的に非毒性の製薬上許容される担体とともに混合できる。使用可能な担体としては、固体状、半固体状または液体状のブドウ糖、乳糖、アラビアガム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム塩、滑石、とうもろこしデンプン、コロイダルシリカ、ジャガイモデンプン、ウレア、中鎖トリグリセリド、デキストラン、および製剤の製造に使用するのに適したその他の担体が含まれる。また、補助剤、安定化剤、増粘剤および着色剤および香料剤が使用できる。
【0078】
前記薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用できる。詳細には、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製できる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記本発明の薬学組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製できる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用できる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤としては、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0079】
本出願による薬学組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。本出願で使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本出願の薬学組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与できる。
【0080】
本出願の薬学組成物は、活性物質が標的細胞に移動できるように任意の装置により投与できる。好ましい投与方式および製剤は注射剤である。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液、ハンクス液または滅菌水溶液などの水性溶剤、オリーブオイルなどの植物油、エチルオレイン酸などの高級脂肪酸エステルおよびエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはグリセリンなどの非水性溶剤などを用いて製造でき、粘膜透過のために、通過するバリアーに適した当業界に公知となった非浸透性製剤が使用でき、変質防止のための安定化剤として、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなどと、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、硝酸フェニル水銀、チメロサル、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール 、ベンジルアルコールなどの微生物発育を阻止するための保存剤などの薬学的担体をさらに含んでもよい。
【0081】
本出願の薬学組成物は、使用された特定の有効成分の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変わることができ、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択でき、1日に0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与できる。投与は、1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
本出願の一実施例は、前記方法を用いて製造された間葉系幹細胞由来のエキソソームを有効成分として含む化粧料組成物を提供する。
【0083】
本出願による前記化粧料組成物は、スキンローション、スキンソフトナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、せっけん、クレジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、洗顔剤、トリートメント、美容液、美容パック、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、液剤、パッチおよび噴霧剤からなる群から選択されたいずれか一つの剤形でありうるが、特定の剤形に限定されるものではなく、通常の化粧料組成物の剤形を有することができる。
【0084】
前記それぞれの剤形への添加物も、限定されず、化粧料分野における一般的な添加物が添加できる。前記化粧料分野における一般的な添加物の例としては、抗生剤、結合剤、崩解剤、希釈剤、滑沢剤、安定剤、保存料、香料、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素および防腐剤からなる群から選択される一つ以上が挙げられる。
【0085】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記実施例および比較例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0086】
1.ヒト脂肪由来間葉系幹細胞の分離および培養
脂肪組織は、通常、脂肪吸入術で得ることができるが、これに限定されない。脂肪吸入により得られた脂肪組織から次のようにヒト脂肪由来間葉系幹細胞を分離した:
摘出した脂肪組織をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline,PBS)で洗浄した。洗浄した脂肪組織を小さい切片に作成した後、0.1%type II collagenaseを添加した。37℃で30分間処理した後、10%ウシ胎児血清(FBS)と低濃度グルコースDMEM(low-glucose Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(10% FBS low-glucose DMEM)を添加して酵素反応を不活性化し、300xgで10分間2回遠心分離を行った。上澄み液(supernatant)を捨てて、残ったペレットを10%FBS低濃度グルコースDMEMで浮遊した後、100μmのナイロンメンブレン(nylon membrane)を通過したろ液を300xgで10分間遠心分離して、ペレットを集めた。
【0087】
また、細胞ペレットにペニシリン(penicillin)およびストレプトマイシン(streptomycin)を添加した10%ウシ胎児血清(FBS)を含んだ低濃度グルコースDMEM(complete media)を浮遊した後、150mm細胞培養ペトリ皿(petri dish)に1×105cells/1ml培地の濃度で希釈し、37℃、5%CO2培養器で培養した。
【0088】
72時間ごとに新しいcomplete mediaに培地を交換し、細胞の濃度が80%を超える時点にTrypsin-EDTAで細胞を分離した後、新しい150mm細胞培養ペトリ皿に1×105cells/1ml培地の濃度で継代培養を実施した。
【0089】
2.間葉系幹細胞の増幅
前記培養した幹細胞からエキソソームの分離のために、4~10継代の間葉系幹細胞を継代培養時に、EGF 5ng/mlを添加した完全培地(complete media)で80%~100%コンフルエンシー(confluency)まで72時間ごとに培地を交換しながら培養して、分化能と増殖能を増加させた。
【0090】
3.基質培地に添加されたTNFaとcycloheximideの割合による幹細胞エキソソーム生産量の変化
100mmペトリ皿で培養した100%コンフルエンシーの間葉系幹細胞(5×106Cells)をPBSで3回洗浄し、低濃度グルコースDMEMに基質培地を交換した。前記基質培地にTNFαを50ng/mlの濃度で処理しつつ、シクロヘキシミド(cycloheximide)の濃度を増加させて共に処理した間葉系幹細胞から分離したエキソソームの濃度をNTAで測定した。
【0091】
前記固定された濃度50ng/mlのTNFαに対して、シクロヘキシミドの濃度を1:1の割合である50ng/mlのcycloheximide、1:5の割合である250ng/mlのcycloheximide、1:20の割合である1,000ng/mlのcycloheximide、1:100の割合である5,000ng/mlのcycloheximide、1:500の割合である25,000ng/mlのcycloheximide、1:1000の割合である50,000ng/mlのcycloheximide、1:2000の割合である100,000ng/mlのcycloheximideで処理した。48時間培養後、幹細胞培養液を集めた後、次のようにエキソソームを純粋分離した。間葉系幹細胞培養液を集めた後、300xgで10分間遠心分離し、上澄み液を分離した後、分離した上澄み液を2,000xgで20分間遠心分離した後、上澄み液を分離した。分離した上澄み液をさらに100,000xgで70分間超遠心分離した後、上澄み液を除去したペレット(エキソソーム)をPBSに浮遊し、ソニケーション(sonication)して、エキソソーム粒子を分離し、分離したエキソソームの濃度をNanoparticle-Tracking Analysis(NTA)で測定した。前記NTAで測定した結果を表1に示した。
【0092】
下記表1を参照すると、細胞培養液1ml当たり1.58×109±3.2×109~1.26×1011±2.8×109の粒子を分離できることを確認できた。
【0093】
【表1】
【0094】
4.基質培地内添加されたTNFaとcycloheximideの処理時間に伴う幹細胞エキソソームの分離
実施例3の基質培地にTNFα(50ng/ml)とCycloheximide(5,000ng/ml)を処理した後、所定の時間の間37℃、5%CO2培養器で培養した培養液から幹細胞エキソソームを分離し、エキソソームの濃度をNanoparticle-Tracking Analysis(NTA)で測定して、表2に示した。下記表2を参照すると、30時間~100時間の間TNFα(50ng/ml)とCycloheximide(5,000ng/ml)を処理した場合、細胞培養液1ml当たり1.1×1011以上のエキソソームが分離されることを確認できた。
【0095】
【表2】
【0096】
5.基質培地の添加物の種類による幹細胞エキソソームの分離
150mmペトリ皿で培養した100%コンフルエンシー(1.5×107Cells)の間葉系幹細胞をPBSで3回洗浄した。低濃度グルコースDMEMに交換した間葉系幹細胞にTNFα(50ng/ml)とcycloheximide(5ug/ml)の併用添加(実施例14)、cycloheximide(5ug/ml)の添加(実施例15)、TNFα(50ng/ml)の添加(比較例1)、1uMのStaurosporineの添加(比較例2)、2uMのStaurosporineの添加(比較例3)、Thapsigargin(5uM)の添加(比較例4)、アミノ酸欠乏培地(HBSS:Hank’s balanced salt solution)(比較例5)、ブドウ糖欠乏培地[Gluc(-):Glucose-depleted media](比較例6)、基質培地(10%PBS low-glucose-DMEM)(比較例7)で48時間培養した。その後、上述した分離方法によって培養液からエキソソームを分離した。
【0097】
分離したエキソソームは、Nanoparticle-Tracking Analysis(NTA)により粒子数と粒子サイズを定量し、Bradford Assayによりタンパク質を定量した。また、Western blotを用いてエキソソームマーカーを測定した。分離したエキソソームの粒子数を図3および図4に示し、下記表3に示した。エキソソームのタンパク質量と粒子サイズは、図5図7および表4に示した。また、エキソソームマーカーCD63、S1PR1(Sphingosine-1-phosphate receptor 1)、そして、S1PR3(Sphingosine-1-phosphate receptor 3)の発現を図8に示した。
【0098】
実施例14のTNFα(50ng/ml)とcycloheximide(5ug/ml)の処理条件は、最頻値(mode value)141.6±58.4nmサイズの粒子を間葉系幹細胞から誘導して、表4と図5(a)に示した。図9を参照すると、エキソソーム粒子が二重脂質膜で包まれており、エキソソームのマーカーであるCD63の発現をtransmission electron microscopy(TEM)で確認した。図10を参照すると、Exoviewを用いたエキソソームの表面マーカー発現テストにおいて間葉系幹細胞由来エキソソームは、CD63(Cluster of Differentiation 63)、CD9(Cluster of Differentiation 9)およびCD81(Cluster of Differentiation 81)のエキソソームマーカーを示した。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
以上、本出願の特定の部分を詳細に記述したところ、当該分野における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な技術は、単に好ましい具現例に過ぎず、これに本出願の範囲が制限されるものではない点は明白である。したがって、本出願の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10