(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体群及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/56 20060101AFI20240307BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20240307BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C12N15/56
C12N9/24 ZNA
C12N1/19
(21)【出願番号】P 2022575276
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 CN2021113743
(87)【国際公開番号】W WO2023004901
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】202110854745.4
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522474077
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】666 Changhui Road,Dantu District,Zhenjiang,Jiangsu 212100, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遊 帥
(72)【発明者】
【氏名】陳 忠立
(72)【発明者】
【氏名】庄 愉
(72)【発明者】
【氏名】儲 呈平
(72)【発明者】
【氏名】葛 研
(72)【発明者】
【氏名】王 俊
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112708608(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体
タンパク質をコードする核酸であって
前記突然変異体
タンパク質は
、HwXyl10A-N318W
またはHwXyl10A-N318W/G363R/T324V突然変異体
タンパク質であり
、
前記HwXyl10A-N318W
突然変異体タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.3に示され、
前記HwXyl10A-N318W/G363R/T324V
突然変異体タンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.4に示される、ことを特徴とするGH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体
タンパク質をコードする核酸。
【請求項2】
GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体タンパク質であって
前記突然変異体タンパク質は、HwXyl10A-N318WまたはHwXyl10A-N318W/G363R/T324V突然変異体タンパク質であり、
前記HwXyl10A-N318W
突然変異体タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.7に示され、
前記HwXyl10A-N318W/G363R/T324V
突然変異体タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.8に示される、ことを特徴とする、GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体
タンパク質。
【請求項3】
請求項1に示すいずれか一つのヌクレオチド配列を含む、組換えベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の組換えベクターを含む、組換え菌株。
【請求項5】
請求項
1に記載のGH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体
タンパク質をコードする核酸、または請求項2に記載のGH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体タンパク質の、飼料添加剤の調製における使用。
【請求項6】
請求項4に記載の組換え菌株の、飼料添加剤の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学の分野に属し、具体的には、GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体群及びその構築方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の飼料は、一般的に、トウモロコシ、ふすま、コムギ又はもみなどを主原料としており、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどが含まれる非澱粉性多糖(non-starch polysaccharides)が多く含まれている。セルロースは、D-グルコピラノスをβ-1,4グリコシド結合で連結して得られた大分子ポリマーであり、植物細胞壁の主成分でもある。ヘミセルロースは、一般的に、自然界で、植物細胞壁においてペクチン及びセルロース類成分以外の他の糖鎖類物質を意味し、主に、キシラン、ガラクトマンナン及びガラクトグルコマンナンを含む。キシランの構造は、非常に複雑であり、主鎖は、キシロピラノースをβ-1,4-D-キシロシド結合で連結してなるものであり、重合度が150~200の間であり、側鎖は、複数の形式の置換基又は置換基グループを含み、一般的な置換基は、アラビノース、グルコン酸、ガラクトース、フェルラ酸、酢酸及びクマリン酸など(Kulkarni et al., 1999、Liab et al., 2000、Squina et al., 2009)を含む。しかし、非反芻動物は、非澱粉性多糖を分解する酵素が欠けるため、それ自体は、ヘミセルロースを消化することが非常に困難であり、粥状の食いもたれを容易に形成し、動物の腸管の内部環境に影響を与える。一方では、動物の腸内微生物集団の種類の変化を招く。他方では、粥状の食いもたれが動物の飼料吸収に影響を与え、飼料利用率を大幅に低下させ、飼料の給餌コストを増加させる。
【0003】
飼料に適切なキシラナーゼを添加することで、植物細胞の細胞壁を破砕でき、ヘミセルロースの加水分解を引き起こし、細胞の内容物を放出して、粥状の食いもたれの粘度を低下させる目的を実現し、飼料利用率を大幅に高め、飼料コストを低減させる。キシランの加水分解生成物は、オリゴ糖であり、そのうちのキシロビオースは、1)虫歯を予防し、2)血中脂肪、血圧、血糖を下げ、3)ミネラル吸収を促進し、4)細菌を抑制し、免疫力を高め、ビタミン代謝を改善する効果を有するビフィドバクテリウムを増殖させるような、優れたヘルスケア機能がある。
【0004】
しかしながら、飼料の工業生産調製では、その作業環境温度が比較的高いとともに、飼料の高圧ペレット化工程では、瞬間的な高温を伴うため、キシラナーゼが、優れた熱安定性を具備し、極端の高温の環境でも優れた熱安定性を具備することが求められる。キシラナーゼは、自然界に広く分布しているが、耐高温性を有するキシラナーゼは、多くない。そのうち微生物由来のキシラナーゼは、現在の実際の使用及び研究に最も多く利用されている材料である。しかし、それらの多くは、熱安定性や触媒活性を両立できず、そして、それらは、天然微生物の特性により、キシラナーゼを大量に発現できないことが多い。
【0005】
天然由来のキシラナーゼをスクリーニングすることの難しさとそれらの悪い特性を考慮して、自然界の酵素について、理性的、半理性的又はランダムな標的進化、突然変異、セグメント組換え、ハイブリッド体の構築及び活性サイト突然変異技術などの方法を用いて研究するとともに、高発現工程菌株を構築することは、現在、改造して優れたキシラナーゼを取得する主な方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体群及びその使用を提供する。この突然変異体群は、真菌Hortaea werneckiiのキシラナーゼHwXyl10aから由来するものであり、産業生産に使用するように、相同配列の比較と構造分析により、キシラナーゼHwXyl10Aの熱安定性に対して理性的な設計及び標的改良を行う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体群であって、前記突然変異体は、HwXyl10A-G363R、HwXyl10A-T324V、HwXyl10A-N318W及びHwXyl10A-N318W/G363R/T324V突然変異体であり、前記HwXyl10A-G363Rのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.1に示され、HwXyl10A-T324Vのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.2に示され、HwXyl10A-N318Wのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.3に示され、HwXyl10A-N318W/G363R/T324Vのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.4に示される。
【0008】
上記HwXyl10A-G363Rのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.5に示され、HwXyl10A-T324Vのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.6に示され、HwXyl10A-N318Wのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.7に示され、HwXyl10A-N318W/G363R/T324Vのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.8に示される。
【0009】
上記いずれか一つのヌクレオチド配列を含む、組換えベクター。
【0010】
上記の組換えベクターを含む、組換え菌株。
【0011】
上記GH10ファミリーの耐高温キシラナーゼ突然変異体の、飼料添加剤の調製における使用。
【0012】
上記組換え菌株の、飼料添加剤の調製における使用。
【0013】
耐高温キシラナーゼ突然変異体の構築方法は、HwXyl10Aを出発材料として選択し、マルチ配列の比較及び構造分析により単一サイト突然変異を設計し、その熱安定性に影響を与える可能性のあるキーアミノ酸サイトを仮スクリーニングするステップと、スクリーニングによって得られたキーサイトに対して、標的突然変異プライマーを設計するステップと、over-lap PCRの方法を採用して各突然変異サイトを組み合わせるステップと、キシラナーゼ突然変異体の配列断片を、発現ベクターpPIC9rのEcoR IとNot I制限酵素認識サイトの間にクローンし、組換えプラスミドを取得するステップと、突然変異体の組換えプラスミドをピキア・パストリス(pichia pastoris)GS115の受容体状態に形質転換し、発現を誘導して、組換え菌を取得するステップと、組換え菌を培養し、キシラナーゼ突然変異体を発現させるように誘導し、キシラナーゼ突然変異体を回収して精製するステップとを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、熱安定性に優れ、飼料添加に適するキシラナーゼ突然変異体群を提供する。このキシラナーゼ突然変異体群の最適なpH値は、3.5~5.5であり、野生型に比べて変化が大きくなく、pH安定性も野生型と類似しており、pHが2~9である範囲内においていずれも高い酵素活性を維持する。このキシラナーゼ突然変異体群の最適な温度は、75℃であり、75℃での熱安定性は、いずれも野生酵素に比べて、異なる程度の向上があり、主に、突然変異体HwXyl10A-G363Rの半衰期が野生型に比べて12min延長し、HwXyl10A-T324Vの半衰期が野生型に比べて20min延長し、HwXyl10A-N318Wの半衰期が野生型に比べて24min延長し、HwXyl10A-N318W/G363R/T324Vの半衰期が野生型に比べて38min延長する点に反映されている。飼料のペレット化には、瞬間的な高温工程(80~90℃、3~5s)があり、酵素の熱安定性が高まられたから、酵素耐性の高温ペレット化工程により有利となり、最後に非活性化を回避する。このような、酸性pH環境及び動物体温条件で比較的高い酵素活性を有し且つ高温条件で安定したキシラナーゼは、飼料産業において性質に優れた飼料添加用酵素であると考えられており、適用の見通しが非常に広い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型のタンパク質精製である。
【
図2】耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適なpHである。
【
図3】耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型のpH安定性である。
【
図4】耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適な温度である。
【
図5】75℃での耐高温キシラナーゼ酵素突然変異体及び野生型の熱安定性である。
【
図6】耐高温キシラナーゼ酵素突然変異体及び野生型のT
50値である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面及び具体的な実施例を結び付けながら本発明について記述する。
【0017】
1、菌株及びベクター:発現宿主Pichia pastoris GS115、発現プラスミドベクターpPIC9rは、実験室で調製されたものである。
【0018】
2、酵素類及び他の生化学試薬:Pfu酵素は、全式金会社(TransGen Biotech)から購入され、エンドヌクレアーゼは、Fermentas会社から購入され、リガーゼは、Promaga会社から購入され、ビーチウッドキシランは、Sigma会社から購入され、他は、いずれも、中国産分析用試薬から購入される(いずれも国薬集団から購入される)。
【0019】
3、培地:
(1)LB培地:0.5%の酵母抽出物、1%のペプトン、1%のNaCl、pH 7.0。
(2)YPD培地:1%の酵母抽出物、2%のペプトン、2%のグルコース
(3)MD固体培地:2%のグルコース、1.5%のアガロース、1.34%のYNB、0.00004%のBiotin。
(4)MM固体培地:1.5%のアガロース、1.34%のYNB、0.00004%のBiotin、0.5%のメタノール。
(5)BMGY培地:1%の酵母抽出物、2%のペプトン、1%のグリセリン(V/V)、1.34%のYNB、0.00004%のBiotin。
(6)BMMY培地:1%の酵母抽出物、2%のペプトン、1.34%YNB、0.00004%のBiotin、0.5%メタノール(V/V)。
【0020】
実施例1 耐高温キシラナーゼ突然変異体をコードする遺伝子のクローン
GH10ファミリーから由来する耐高温キシラナーゼ遺伝子HwXyl10Aを親として、キシラナーゼのloop領域で突然変異プライマーを設計し、over-lap PCRの方法を採用して高い触媒効率のキシラナーゼ突然変異体をコードする遺伝子SEQ ID NO.1(HwXyl10a-G363R)、SEQ ID NO.2(HwXyl10a-T324V)、SEQ ID NO.3(HwXyl10a-N318W)、SEQ ID NO.4(HwXyl10a-N318W/G363R/T324V)を増幅し、突然変異方法及びクローン方法について文献(You、et al., 2016)を参照した。
【0021】
用いられたプライマー配列は、表1に示した。
【0022】
【0023】
実施例2 耐高温キシラナーゼ突然変異体の調製
発現ベクターpPIC9rを二重消化(EcoR I+Not I)するとともに、耐高温キシラナーゼ突然変異体をコードする遺伝子を二重消化(EcoR I+Not I)し、そして消化後に成熟した耐高温キシラナーゼ突然変異体をコードする遺伝子断片を発現ベクターpPIC9rに連結し、耐高温キシラナーゼ突然変異体遺伝子を含む組換えプラスミドを取得し、ピキア・パストリスGS115に形質転換して、組換え酵母菌株を取得した。
【0024】
組換えプラスミドを含むGS115菌株をBMGY培地が300mLの1L三角フラスコに接種し、30℃且つ220rpmのシェーカーに置いて48h培養し、その後、3000gの培養液を5min遠心し、上清を捨て、沈殿物を0.5%のメタノールを含む100mLのBMMY培地で再懸濁し、再び30℃且つ220rpmの条件で培養を誘導した。菌液中のメタノール濃度を0.5%に維持するように、12hおきに0.5mLのメタノールを補充するとともに、上清を取って酵素活性検出に使用した。
【0025】
実施例3 耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の活性分析
一、DNS法:具体的な方法は次のとおりであった。特定のpH及び温度の条件で、1mLの反応系は、100μLの酵素液、及び900μLの基質を含み、10min反応させ、1.5mLのDNSを加えて反応を停止させ、沸騰水で5min茹でた。冷却後、540nmでOD値を測定した。酵素活性の1単位(U)は、所定の条件で、1分あたりにキシランを分解させて1μmolの還元糖を生成するに必要な酵素量と定義された。
【0026】
二、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の性質測定
1、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適なpHの測定は、以下のとおりであった。
【0027】
実施例2で精製された組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型を異なるpHで酵素反応させてその最適なpHを測定した。異なるpHの0.1mol/Lのクエン酸-リン酸水素二ナトリウムの緩衝液で基質(ビーチウッドキシラン)を希釈し、75℃でキシラナーゼの活性を測定した。
【0028】
その結果(
図2)として、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適な反応pH値は、3.5~5.5であり、pH2.0~9.0の範囲内において同様な作用傾向を有した(
図3)。最適なpHを変えずに酵素の熱安定性を高める目的を満たした。
【0029】
2、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適な温度の測定は、以下のとおりであった。
【0030】
組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の最適な温度の測定は、0.1mol/Lのクエン酸-リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pHは3.5)の緩衝液系及び異なる温度で酵素反応を行うことであった。酵素反応の最適な温度の測定結果(
図4)として、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体と野生型の最適な温度は、70~80℃であり、それらの差は、明らかではなかった。
【0031】
3、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の75℃での熱安定性の測定は、以下のとおりであった。
【0032】
耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型を75℃でそれぞれ一定時間処理し、また処理時の全ての突然変異体及び野生型の濃度が100μg/mLで、体積が100μLであることを確保し、異なる時点にサンプリングした後、すばやく氷に置き、75℃且つpH 4.0の条件で酵素活性を測定し、突然変異体及び野生型の熱安定性状況を評価した。
【0033】
全ての突然変異体の熱安定性は、いずれも野生型よりも優れ、70℃で26min処理した後、野生型キシラナーゼの残留酵素活性は、50%に低減し(
図5)、38minまで処理を継続したとき、突然変異体G363Rの残留酵素活性は、50%に低減するが、同じ条件で、突然変異体T324Vの半衰期は、野生型よりも20min延長し、46minになった。全ての突然変異体のうち、熱安定性の点で最高のパフォーマンスを示したのは、組み合わせ突然変異N318W/G363R/T324Vであり、64分間に達した。
【0034】
4、組換え耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型のT50値の測定は、以下のとおりであった。
【0035】
75℃での熱安定性は、酵素の耐熱性を示すことができるほか、T50値も、酵素の耐熱性を反映することができた。4種の突然変異体及び野生型を異なる温度(60℃~85℃)で30min処理した後、フィッティングした結果、野生型酵素のT50値は、74℃であるが、G363RのT50値は、76℃であり、T324VのT50値は、77.5℃に達し、N318WのT50値は、さらに高くなり、78.5℃になった。T50値が最も高いのは、組み合わせ突然変異体N318W/G363R/T324Vであり、80℃になった。
【0036】
実施例4 耐高温キシラナーゼ突然変異体及び野生型の動力学分析
最適な条件で、ビーチウッドキシラン基質を用いて4種のキシラナーゼ突然変異体と野生型の動力学パラメータと比活性を測定し、結果は、それぞれ表2に示された。
【0037】
【0038】
4種のキシラナーゼ突然変異体及び野生型のKm値は、それぞれ0.88mg/mL、1.03mg/mL、0.96mg/mL、1.27mg/mL及び1.04mg/mLであるが、4種のキシラナーゼ突然変異体及び野生型のkcat値は、それぞれ2100s-1、2300s-1、1900s-1、2700s-1及び2400s-1であり、4種のキシラナーゼ突然変異体及び野生型の触媒効率(kcat/Km)は、それぞれ2400mL/s・mg、2200mL/s・mg、2000mL/s・mg、2100mL/s・mg及び1700mL/s・mgであった。4種のキシラナーゼ突然変異体の比活性は、野生型酵素に比べて、異なる程度の向上があり、G363Rは、野生型に比べて1.32倍まで高まり、T324Vは、野生型に比べて1.06倍まで高まり、N318Wは、野生型に比べて1.5倍まで高まり、比活性の高まりは、最も明らかであるが、組み合わせ突然変異は、野生型に比べて1.21倍まで高まった。
【0039】
全体として、突然変異後に4種の突然変異体の酵素活性が失われることはなく、熱安定性は、野生型に比べて大幅に高まり、飼料ペレット化時の瞬間的な高温に耐えることができる。加えて、酵素活性が失われず、安定性が高められた場合、この耐高温キシラナーゼ突然変異体群がより長い時間活性を維持し、ヘミセルロースの加水分解を触媒することができることを意味し、産業用途の良好な材料であった。
【配列表】