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  • 特許-排便補助機能を有する便座 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】排便補助機能を有する便座
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/24 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A47K13/24
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023064206
(22)【出願日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513261691
【氏名又は名称】土佐エンタープライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 明徳
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-002099(JP,U)
【文献】国際公開第2017/191770(WO,A1)
【文献】実開平07-014997(JP,U)
【文献】特開2014-180479(JP,A)
【文献】特許第6236576(JP,B1)
【文献】特開2017-153880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-13/30
A47K 17/00ー17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器便座の座面の最後部の中央部分に隆起部が設けられており、この隆起部が幅10~50mm、高さ10~40mm、長さ30~100mmであり、
更にこの隆起部の前端部分が、前記座面を上方から平面視した際に該座面の最後部の中央部分の前端縁から5~30mmの範囲内で前方に突出している構成であり、
前記便座がダブルモールドにより成形されており、座面部分と隆起部とが異なる樹脂材料により成形され、隆起部が柔軟性を有する樹脂で成形された構成であること、
を特徴とする排便補助機能を有する便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排便補助機能を有する便座に関し、詳しくは、便座に着座することにより円滑な排便を促して痔疾の改善や予防を図ることができる痔対策に有効な排便補助機能を有する便座に関する。
【背景技術】
【0002】
肛門の疾病である痔疾は、その疾病箇所が肛門であるが故に排便時の苦痛が大きい。従って、排便時の肛門への負担を軽減することにより、苦痛を少しでも和らげる技術が種々提案されている(例えば、特許文献1~2等参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、便座の座面傾斜を前傾させることによって、踏ん張ることなく腹圧を高めることができ、外肛門括約筋が緩んだ状態で円滑に排便できるようにする技術である。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、便座の座面傾斜を後傾させることによって、無理の無い姿勢で長時間しゃがむことができ、排便時の肛門や腸への負担を減らすようにする技術である。
【0005】
特許文献1の技術では、便座を前傾させるには、便器本体を改造するか或いは便座の取付構成を大きく改造するかのいずれかの構造変更が必須であり、コスト高であるという問題点を有している。更に、普及率の高い洗浄機能を有する便器に適用した場合、利用者の着座位置が洗浄ノズルの調整範囲を超えた位置になってしまうという問題点を有している。
【0006】
特許文献2の技術では、便座を後傾させるには、便器本体を改造するか或いは便座の取付構成を大きく改造するかのいずれかの構造変更が必須であり、コスト高であるという問題点を有している。更に、普及率の高い洗浄機能を有する便器に適用した場合、利用者の着座位置が洗浄ノズルの調整範囲を超えた位置になってしまうという問題点を有している。
特に、便座の前方が上、後方が下という着座姿勢は足腰の弱った老人・病人には着座が困難であるという問題点を有している。即ち、座ろうとする際に高くなった便座前部を越えて跨らなければならないため後方へ倒れてしまうのではないかという不安や虞が生じ、更には、たとえ座れたとしても今度は自力では立ち上がれないのではないかという不安や虞を抱くという問題点を有している。
【0007】
そこで本発明者は、既存の便座の座面に補助具を取り付けることにより、使用者が便座に着座した際に肛門付近の外側から直腸上部の内括約筋への刺激を作用させることによって排便を促す機能を有する技術を先に提案した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平06-024600号公報
【文献】特開2000-104321号公報
【文献】特許第6236576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先提案の特許文献3の技術の排便補助具を用いれば、便器本体を改造したり或いは取付構成を大きく改造する等の構造変更を行うことなく既存の便器の便座の座面に取り付けるだけで円滑に排便を促すことができる。
【0010】
本発明者は、かかる技術について更に鋭意研究を続けたところ、より安定した状態で排便補助機能を作用させることが望ましい等、改善の余地があることが判った。
【0011】
そこで本発明の課題は、排便を効果的に促す作用をより安定した状態で発揮することによって痔疾の改善や予防に効果的な痔対策に適する排便補助機能を有する便座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0013】
1.便器便座の座面の最後部の中央部分に隆起部が設けられており、この隆起部の頂部が幅10~50mm、高さ10~40mm、長さ30~100mmであり、
更にこの隆起部の頂部の前端部分が、前記座面を上方から平面視した際に該座面の最後部の中央部分の前端縁から5~30mmの範囲内で前方に突出している構成であること、
を特徴とする排便補助機能を有する便座。
【0014】
2.前記隆起部が前記座面と一体成形により設けられた構成であることを特徴とする上記1に記載の排便補助機能を有する便座。
【0015】
3.前記隆起部が、着座する使用者の皮膚と接触する表面部分に角部分や折れ線部分の無い滑からな面構成で形成された構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の排便補助機能を有する便座。
【0016】
4.前記便座がダブルモールドにより成形されており、座面部分と隆起部とが異なる樹脂材料により成形された構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の排便補助機能を有する便座。
【0017】
5.前記隆起部が柔軟性を有する樹脂で成形された構成であることを特徴とする上記4に記載の排便補助機能を有する便座。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に示す発明によれば、排便を効果的に促す作用をより安定した状態で発揮することによって痔疾の改善や予防に効果的な痔対策に適する排便補助機能を有する便座を提供することができる。
【0019】
特に、座面に設けられている隆起部の頂部の前端部分が、座面の最後部の中央部分の前端縁から5~30mmの範囲内で前方に突出していることにより、使用者が便座に着座した際、着座した使用者の尾骨を下方から圧接することになる。この圧接が、前記隆起部が使用者の肛門付近の外側から直腸上部の内括約筋を刺激し、この刺激によって息んだり踏ん張ったり等の強い腹圧をかけることなく円滑に排便を行うことができる。従って、この円滑な排便により、苦痛を伴うことなく排便を行うことができ、痔疾の改善又は予防が可能となる。
【0020】
請求項2に示す発明によれば、隆起部が座面と一体成形である構成によって、着座した使用者の体重による過重負荷が隆起部に対して斜め方向や横方向に強く掛かった場合であっても、座面に別部材から成る隆起部を後付けした物のように取付位置がズレたり或いは脱落してしまうおそれがない。従って、より安定した状態で内括約筋への刺激を効果的に発揮させることができる。
【0021】
請求項3に示す発明によれば、使用者の尾骨に隆起部を強く圧接させても尾骨付近に生じる痛みが生じることがないだけでなく、尾骨部分の皮膚が傷付いてしまうことも著しく抑制することができるため、隆起部に対して不安なく安心して体重を掛けることができる。従って、内括約筋への刺激を効果的に発揮させることが可能である。
【0022】
請求項4に示す発明によれば、ダブルモールドによって座面と隆起部とを異なる材料で一体成形することができる。即ち、座面を従来品と同じ一般的な樹脂で形成し、隆起部を尾骨への圧接に適した材料で形成することができる。
【0023】
請求項5に示す発明によれば、隆起部が柔軟性を有するため、該隆起部に対して使用者が強く体重を掛けた場合であっても尾骨付近の皮膚を傷めることなく尾骨を圧接することができる。従って、安心した状態で不安なく内括約筋への刺激を効果的に発揮させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る排便補助機能を有する便座の一実施例、及び該便座を使用する便器の一例を示す平面図
図2図1に示す便座の隆起部付近及び隆起部を示す要部拡大平面図
図3図2のIII方向から見た要部拡大側面図
図4図2のIV方向から見た要部拡大正面図
図5】座面と隆起部との関係を説明する要部拡大説明側面図
図6図5のVI方向から見た要部拡大説明平面図
図7】本発明に係る排便補助機能を有する便座の他の実施例を示す要部拡大断面図
図8】本発明に係る排便補助機能を有する便座の他の実施例を示す要部拡大断面図
図9】本発明に係る排便補助機能を有する便座の他の実施例を示す要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る排便補助機能を有する便座は、図1図6に示すように、
便器1の便座2の座面20の最後部の中央部分に隆起部3が設けられており、この隆起部3の頂部31が幅10~50mm、高さ10~40mm、長さ30~100mmであり、
更にこの隆起部3の頂部30の前端部分31が、前記座面20を上方から平面視した際に該座面20の最後部の中央部分の前端縁21から5~30mmの範囲内で前方に突出している構成であること、
を主構成とする。
尚、図1において、符号4は便器1のフタ、符号5は水タンクを示す。
【0027】
即ち、本発明にかかる排便補助機能を有する便座は、便器1の便座2に着座した使用者の尾骨が位置する便座2の座面20の最後部中央部分に設けられている隆起部3が、排便時に使用者の尾骨を下方から圧接する構成と成る。係る構成によって、使用者は、便器1の使用に際して隆起部3が設けられている便座2に着座することにより、隆起部3が使用者の尾骨を下方から圧接することになる。この圧接が、前記隆起部3が使用者の肛門付近の外側から直腸上部の内括約筋を刺激し、この刺激によって息んだり踏ん張ったり等の強い腹圧をかけることなく円滑に排便を行うことができる。従って、この円滑な排便により、苦痛を伴うことなく排便を行うことができ、痔疾の改善又は予防が可能となる。
【0028】
図5及び図6に示すように、便座2の座面20の最後部中央部分に設けられている隆起部3は、頂部31の幅が10~50mmの範囲内、好ましくは13~20mmの範囲内、より好ましくは約15mm程度であり、高さが10~40mmの範囲内、好ましくは20~35mmの範囲内、より好ましくは約30mm程度であり、長さは30~100mmの範囲内、好ましくは50~80mmの範囲内であり、更にこの隆起部3の頂部30の前端部分31が、前記座面20を上方から平面視した際に該座面20の最後部の中央部分の前端縁21から前方に突出する長さが5~30mmの範囲内、好ましくは10~20mmの範囲内、より好ましくは約15mm程度である。尚、隆起部3の頂部30は、便座2の座面20の最後部分の高い部分を超えない高さであることが好ましい。
【0029】
隆起部3は、便座2の座面20と一体成形により設けられた構成であることが好ましい。即ち、座面20を構成するパーツ部材と一体構成の一つのパーツ部材であることが好ましい。かかる構成によれば、着座した使用者の体重による過重負荷が隆起部3に対して斜め方向や横方向に強く掛かった場合であっても、座面20に別部材から成る隆起部を後付けした物のように取付位置がズレたり或いは脱落してしまうおそれがない。従って、より安定した状態で内括約筋への刺激を効果的に発揮させることができる。
【0030】
また隆起部3は、着座する使用者の皮膚と接触する表面部分に角部分や折れ線部分の無い滑からな面構成で形成された構成であることが好ましい。かかる構成によれば、使用者の尾骨に隆起部3を強く圧接させても尾骨付近に生じる痛みが生じることがないだけでなく、尾骨部分の皮膚が傷付いてしまうことも著しく抑制することができるため、隆起部3に対して不安なく安心して体重を掛けることができる。従って、内括約筋への刺激を効果的に発揮させることが可能である。
【0031】
以上、本発明に係る排便補助機能を有する便座について図1図6に示す実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において種々の態様を採ることができる。
【0032】
例えば、図7に示すように、便座2がダブルモールドにより成形されており、座面20部分と隆起部3とが異なる樹脂材料により成形された構成とすることもできる。 座面20を従来品と同じ一般的な樹脂で形成し、隆起部3を尾骨への圧接に適した材料、好ましくは柔軟性を有する樹脂で形成することができる。かかる構成によれば、隆起部3が柔軟性を有するため、該隆起部3に対して使用者が強く体重を掛けた場合であっても尾骨付近の皮膚を傷めることなく尾骨を圧接することができる。従って、安心した状態で不安なく内括約筋への刺激を効果的に発揮させることが可能である。
【0033】
また、図8に示すように、便座2の座面20と隆起部3とを別体構成で形成し、隆起部3に形成された凸部33を座面20に形成された凹部22に嵌合や接着等の固定方法で取り付ける構成とすることもできる。尚、凸部を座面20側に形成し、凹部を隆起部3側に形成する構成であってもよい。
【0034】
また、図9に示すように、シリコーン樹脂・ゴム材・発泡樹脂等の柔軟性を有する材料で形成したカバー部材34によって隆起部3の表面を被覆した構成とすることもできる。カバー部材34の柔軟性やクッション性等を適宜選定することにより、尾骨への圧接具合を使用者の好みに応じた条件に設定することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 便器
2 便座
20 座面
21 最後部の中央部分の前端縁
22 凹部
3 隆起部
31 頂部
32 前端部分
33 凸部
34 カバー部材
4 フタ
5 水タンク
【要約】
【目的】排便を効果的に促す作用をより安定した状態で発揮することによって痔疾の改善や予防に効果的な痔対策に適する排便補助機能を有する便座を提供する。
【構成】便器便座の座面の最後部の中央部分に隆起部が設けられており、この隆起部の頂部が幅10~50mm、高さ10~40mm、長さ30~100mmであり、
更にこの隆起部の頂部の前端部分が、前記座面を上方から平面視した際に該座面の最後部の中央部分の前端縁から5~30mmの範囲内で前方に突出している構成であること、
を特徴とする排便補助機能を有する便座。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9