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特許7449634泥水式シールド掘進機およびその掘進方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】泥水式シールド掘進機およびその掘進方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/13 20060101AFI20240307BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
E21D9/13 B
E21D9/06 301Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020050166
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147921
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】津村 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直利
(72)【発明者】
【氏名】大塚 努
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-070544(JP,A)
【文献】特開2002-180781(JP,A)
【文献】特開昭53-041027(JP,A)
【文献】実開昭55-131396(JP,U)
【文献】特開2007-247200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/13
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、
前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、
前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、
圧縮空気および泥水が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、
前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、
前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、
前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、
前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、
前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、
前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、
前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、
前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、前記第2のチャンバ内の泥水の排出が必要な上限水位、前記第2のチャンバ内の泥水の給排が不要な上端の基準水位および下端の基準水位、前記第2のチャンバ内への泥水の供給が必要な下限水位で検知する水位検知手段と、
前記水位検知手段の検知結果に応じて前記第1~第6のバルブを開閉制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記上限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上端の基準水位になるまで排泥しながら掘進を実行し、
前記上端の基準水位から前記下端の基準水位の範囲内の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、
前記下限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下端の基準水位になるまで給泥しながら掘進を実行する制御を実行する、
ことを特徴とする泥水式シールド掘進機。
【請求項2】
前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、
前記制御手段は、
前記上限水位よりも高位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上限水位になるまで排泥してから掘進を開始して前記上端の基準水位になるまで排泥を継続し、
前記下限水位よりも下位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下限水位になるまで給泥してから掘進を開始して前記下端の基準水位になるまで給泥を継続する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記水位検知手段の検知結果による制御に先立って、
前記第3のバルブのみを開放し、次に、前記第3のバルブを開放したままで前記第6のバルブを開放し、次に、第1のバルブ、第2のバルブおよび第6のバルブのみを開放して掘進を開始する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項4】
前記水位検知手段は、前記第2のチャンバの側壁において上下方向の複数箇所に設置され、泥水による通電の有無で水位を検知する複数の電極センサである、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項5】
地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、
前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、
前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、
圧縮空気および泥水が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、
前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、
前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、
前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、
前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、
前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、
前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、
前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、
前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、前記第2のチャンバ内の泥水の排出が必要な上限水位、前記第2のチャンバ内の泥水の給排が不要な上端の基準水位および下端の基準水位、前記第2のチャンバ内への泥水の供給が必要な下限水位で検知する水位検知手段とを備え、
前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上端の基準水位になるまで排泥しながら掘進を実行し、
前記水位検知手段の検知結果が前記上端の基準水位から前記下端の基準水位の範囲内の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、
前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下端の基準水位になるまで給泥しながら掘進を実行する制御を実行する、
ことを特徴とする泥水式シールド掘進機の掘進方法。
【請求項6】
前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、
前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位よりも高位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上限水位になるまで排泥してから掘進を開始して前記上端の基準水位になるまで排泥を継続し、
前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位よりも下位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下限水位になるまで給泥してから掘進を開始して前記下端の基準水位になるまで給泥を継続する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項5記載の泥水式シールド掘進機の掘進方法。
【請求項7】
前記水位検知手段の検知結果による掘進開始に先立って、
前記第3のバルブのみを開放し、次に、前記第3のバルブを開放したままで前記第6のバルブを開放し、次に、第1のバルブ、第2のバルブおよび第6のバルブのみを開放して掘進を開始する、
ことを特徴とする請求項5または6記載の泥水式シールド掘進機の掘進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタチャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることで切羽を安定させながら地山を掘削してトンネルを形成する泥水式シールド掘進機およびその掘進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤中にトンネルを構築するシールド工法では、発進立坑内でシールド掘進機を組み立てて発進させ、地中を掘進させる。そして、到達立坑に到達したならば、到達立坑内でシールド掘進機を分解して地上に搬出する。
【0003】
また、シールド工法に用いられるシールド掘進機には、掘削土を泥土化して所定の圧力を与えることにより切羽を安定させながら地山を掘削する泥土圧シールド掘進機や、カッタチャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることで切羽を安定させながら地山を掘削する泥水式シールド掘進機などがある。
【0004】
ここで、泥水式シールド掘進機では、泥水が送泥管からカッタチャンバ内に常時供給されており、切羽前方の圧力(土圧および水圧)にカッタチャンバ内の泥水圧で対抗することで切羽を安定させている。そして、掘削時には、カッタチャンバ内に溜められた泥水がカッタチャンバに取り込まれた掘削土とともに排泥管から外部に排出される(掘削モード)。また、セグメント組立時など掘削を休止する際には、送泥管と排泥管とを連通するバイパス配管に設けられたバルブ(バイパス用バルブ)を開放するとともに、送泥管および排泥管のバイパス配管よりもカッタヘッド側に設けられたバルブ(送泥用バルブ・排泥用バルブ)を閉鎖して、カッタチャンバを切り離した状態で泥水を循環させる(バイパスモード)。さらに、セグメントの組み立てが完了して掘削を再開する際には、バイパス用バルブを閉鎖するとともに、送泥用バルブおよび排泥用バルブを開放する。
【0005】
カッタヘッドには、掘削した土砂をカッタチャンバ内に取り込むための隙間があり、カッタチャンバ内の泥水は切羽の地山を押さえる。カッタチャンバ内に供給される泥水には、泥分にベントナイトや高分子添加剤などが混入されており、これによって切羽面に膜(泥膜)を形成して、切羽前方の圧力に対抗している。そして、砂質土で水が抜けやすい地盤などの場合は泥水の流入量が大きくなる(逸泥状態)ので、泥水中の泥分や高分子添加剤を多くするとともに泥水の供給量を増やし、泥水の排出量を増やしてカッタチャンバ内の圧力を安定させる操作を行っている。また、粘質土で水が抜けにくい地盤などの場合は、これとは逆の操作を行っている。
【0006】
ここで、泥水式シールド掘進機での掘削においては、地盤の土質によるカッタチャンバ内の泥水圧の変化に応じて当該カッタチャンバ内に供給する泥水の濃度を調整するとともに、送泥管および排泥管の流量を調節する必要がある。しかしながら、複雑な地盤や高水圧下ではカッタチャンバ内の泥水圧が急激に変化することがあり、このような濃度調整や流量調整が間に合わない場合には、地山への悪影響が生じて崩落の可能性もある。
【0007】
また、バイパスモードから掘削モードに移行する際には、各バルブの閉鎖や開放が瞬時に行なわれるためにカッタチャンバ内の泥水圧が大きく変動し、これに伴って、切羽地山やカッタヘッド、送泥管、排泥管などに悪影響が出る可能性がある。
【0008】
そこで、特許文献1(特開2013-083110号公報)や特許文献2(特開2002-180781号公報)には、カッタチャンバとは別に、圧縮空気の弾力性を利用したチャンバを設け、カッタチャンバ内の泥水の水面の変化に対応することで泥水圧の急激な変化を緩和する技術が提案されている。
【0009】
具体的には、特許文献1に記載の技術は、第1のチャンバであるカッタチャンバの後方に第2のチャンバであるエアチャンバを設けてチャンバ全体を縦割りの2槽にした構造である。後方のエアチャンバは、下方でカッタチャンバと接続されて泥水が供給され、上方はコンプレッサに接続されて圧縮空気が供給されるようになっている。そして、カッタチャンバにかかる圧力が変化した場合、エアチャンバ内の水面が上下するが、それに伴って圧縮空気が供給もしくは排出されてカッタチャンバ内の泥水の圧力変動が緩和される。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、第1のチャンバであるカッタチャンバとは離れたトンネル内に第2のチャンバである圧力調整タンクを設けた構造である。圧力調整タンクは下方がカッタチャンバと接続されて泥水が供給され、上方が圧縮空気を封入したダンパタンクと接続されて圧縮空気が供給される。そして、カッタチャンバにかかる圧力が変化した場合に圧力調整タンク内の水面が上下するが、それに伴って圧縮空気が供給もしくは排出されてカッタチャンバ内の泥水の圧力変動が緩和される。
【0011】
ここで、特許文献3(特開2003-120175号公報)や特許文献4(特開2008-248509号公報)には、特許文献1のように、第1のチャンバであるカッタチャンバの後方に第2のチャンバであるエアチャンバを設けてチャンバ全体を縦割りの2槽にした構造が開示されている。そして、特許文献3は、カッタチャンバに接続するエアチャンバの底板を泥水の供給口に向けて斜めに形成する発明が記載されており、特許文献4には、エアチャンバ内に設けられた水位検知装置を内側から洗浄する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-083110号公報
【文献】特開2002-180781号公報
【文献】特開2003-120175号公報
【文献】特開2008-248509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1や特許文献2に記載の技術では、泥水が第1のチャンバ(カッタチャンバ)から別途設けられた第2のチャンバ(エアチャンバ・圧力調整タンク)に供給される構造となっている。そのため、カッタヘッドから逸泥が生じて多量の泥水が第2のチャンバから第1のチャンバ内に供給される、第2のチャンバ内の泥水が空になって第1のチャンバ内の泥水の圧力変動を十分に緩和できなくなるおそれが発生する。
【0014】
ここで、特許文献3や特許文献4には、第2のチャンバ(エアチャンバ7・圧力調整室6)に水位検知装置(検出器14・レベルスイッチ22)を設けて泥水量を検出しておき、所定圧の泥水面となるように泥水を第2のチャンバ内に供給する技術が開示されている。
【0015】
しかしながら、これらの特許文献に記載の技術は、単に第2のチャンバ内に泥水を供給するにとどまるものであって、第2のチャンバ内の泥水の量と泥水式シールド掘進機の掘進との関係についての配慮はなされていない。
【0016】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、泥水式シールド掘進機に設けられた第2のチャンバ内の泥水量を調整しながら掘進を行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、圧縮空気および泥水が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、前記第2のチャンバ内の泥水の排出が必要な上限水位、前記第2のチャンバ内の泥水の給排が不要な上端の基準水位および下端の基準水位、前記第2のチャンバ内への泥水の供給が必要な下限水位で検知する水位検知手段と、前記水位検知手段の検知結果に応じて前記第1~第6のバルブを開閉制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記上限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上端の基準水位になるまで排泥しながら掘進を実行し、前記上端の基準水位から前記下端の基準水位の範囲内の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、前記下限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下端の基準水位になるまで給泥しながら掘進を実行する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、上記請求項1記載の発明において、前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、前記制御手段は、前記上限水位よりも高位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上限水位になるまで排泥してから掘進を開始して前記上端の基準水位になるまで排泥を継続し、前記下限水位よりも下位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下限水位になるまで給泥してから掘進を開始して前記下端の基準水位になるまで給泥を継続する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、上記請求項1または2記載の発明において、前記制御手段は、前記水位検知手段の検知結果による制御に先立って、前記第3のバルブのみを開放し、次に、前記第3のバルブを開放したままで前記第6のバルブを開放し、次に、第1のバルブ、第2のバルブおよび第6のバルブのみを開放して掘進を開始する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記水位検知手段は、前記第2のチャンバの側壁において上下方向の複数箇所に設置され、泥水による通電の有無で水位を検知する複数の電極センサである、ことを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するため、請求項5に記載の本発明の泥水式シールド掘進機の掘進方法は、地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、圧縮空気および泥水が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、前記第2のチャンバ内の泥水の排出が必要な上限水位、前記第2のチャンバ内の泥水の給排が不要な上端の基準水位および下端の基準水位、前記第2のチャンバ内への泥水の供給が必要な下限水位で検知する水位検知手段とを備え、前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上端の基準水位になるまで排泥しながら掘進を実行し、前記水位検知手段の検知結果が前記上端の基準水位から前記下端の基準水位の範囲内の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位の場合には、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを開放するとともに前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下端の基準水位になるまで給泥しながら掘進を実行する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の本発明の泥水式シールド掘進機の掘進方法は、上記請求項5記載の発明において、前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位よりも高位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記上限水位になるまで排泥してから掘進を開始して前記上端の基準水位になるまで排泥を継続し、前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位よりも下位の前記掘進停止水位の場合には、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブを開放するとともに前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブを閉鎖して前記第2のチャンバ内が前記下限水位になるまで給泥してから掘進を開始して前記下端の基準水位になるまで給泥を継続する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の本発明の泥水式シールド掘進機の掘進方法は、上記請求項5または6記載の発明において、前記水位検知手段の検知結果による掘進開始に先立って、前記第3のバルブのみを開放し、次に、前記第3のバルブを開放したままで前記第6のバルブを開放し、次に、第1のバルブ、第2のバルブおよび第6のバルブのみを開放して掘進を開始する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水位検知手段の検知結果が上限水位の場合には、第1のバルブ、第2のバルブ、第5のバルブおよび第6のバルブのみを開放して第2のチャンバ内が上端の基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、水位検知手段の検知結果が上端の基準水位から下端の基準水位の範囲内の場合には、第1のバルブ、第2のバルブおよび第6のバルブのみを開放して第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、水位検知手段の検知結果が下限水位の場合には、第1のバルブ、第2のバルブ、第4のバルブおよび第6のバルブのみを開放して第2のチャンバ内が下端の基準水位になるまで給泥して掘進を開始するようにしている。
【0025】
これにより、泥水式のシールド掘進機に設けられた第2のチャンバ内の泥水量を調整しながら掘進を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態における泥水式のシールド掘進機の内部を側面から見た概略図である。
図2図1のシールド掘進機における地山掘削時の泥水の流れを示す説明図である。
図3図1のシールド掘進機における地山掘削停止時の泥水の流れを示す説明図である。
図4図1のシールド掘進機に設けられた補助チャンバを側面から示す説明図である。
図5図1のシールド掘進機に設けられた補助チャンバにおける水位レベルとそれに対応した第1~第6のバルブの開閉状態および動作内容を示す図である。
図6図1のシールド掘進機における地山掘削時の補助チャンバ内の泥水の量に対応した制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
図1は本発明の一実施の形態である泥水式シールド掘進機の構成を側面から示す概念図である。
【0029】
図1において、本実施の形態の泥水式シールド掘進機(以下、単に「シールド掘進機」という。)1は、カッタヘッド2を切羽(掘削面)Fに押し当てて回転させることにより地山を掘削する際に、カッタヘッド2の背面のスキンプレート3内に設けられたカッタチャンバ(第1のチャンバ)4に送泥管5を通じて泥水を供給し、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fの安定を図るとともに、カッタチャンバ4内に溜められた泥水をカッタチャンバ4内に取り込まれた掘削土とともに排泥管6によってトンネルの外部に排出しながら地山にトンネルを形成する。なお、カッタチャンバ4に送り込まれる泥水は坑外に設置された泥水プラント7に貯留されており、送泥ポンプ8により圧送される。また、泥水には、泥分にベントナイトや高分子添加剤などが混入されており、これにより切羽Fに膜(泥膜)を形成して前方の地山の隙間に泥水が流れ込むことを防いでいる。
【0030】
泥水式のシールド掘進機1は泥水の浸透による切羽Fの安定効果があるため、水圧の高い地盤での施工に適している。一方、透水性の高い地盤、巨石地盤では、地盤からの泥水の流入量が大きくなる逸泥が発生するおそれがあることから、泥水中の泥分や高分子添加剤を多くするとともに泥水の供給量を増やし、泥膜を補強してカッタチャンバ内の圧力を安定させるようにする。
【0031】
シールド掘進機1を構成するカッタヘッド2は、地山の切羽Fを掘削する正面視円形状の掘削部材であり、スキンプレート3の前面にスキンプレート3の周方向に沿って正逆方向に回転自在の状態で設置されている。
【0032】
本実施の形態において、カッタヘッド2には面板タイプが採用されており、前面(切羽Fに対向する面)には、玉石等の破砕や地山の掘削を行う複数のビットやスクレーパツース(何れも図示せず)が装着されている。また、カッタヘッド2には、当該カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等をカッタチャンバ4内に取り込むための土砂取込口(図示せず)が形成されている。
【0033】
カッタヘッド2の後方に位置するスキンプレート3は、例えば径方向の断面が円筒状になった鋼製板により形成されている。このスキンプレート3の前面(カッタヘッド2が設置された位置)から内方に後退した位置には、当該スキンプレート3内を切羽側と機内側とに区画する隔壁9が設置されている。そして、スキンプレート3の切羽側すなわちカッタヘッド2と隔壁9との間に、カッタチャンバ4が設けられている。
【0034】
カッタチャンバ4は、カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等を取り込み、送泥管5を通じて供給された泥水と混合する空間(チャンバ)であり、前述のように、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fを押さえて安定化させる。
【0035】
一方、スキンプレート3の機内には、カッタヘッド2を正逆方向に回転させるカッタ駆動部、前後に分割されて屈曲可能となったスキンプレート3(前胴プレート・後胴プレート)を相互に連結するとともにシールド掘進機1の推進方向を修正する中折れジャッキ、スキンプレート3の後方に敷設されたセグメントに反力をとってシールド掘進機1を前進させるシールドジャッキ、スキンプレート3の後端付近において複数のピースを環状に組み立ててトンネルの内周にセグメントを構築するエレクタなどが設置されている。
【0036】
さらに、スキンプレート3の機内から坑外に延びるようにして、前述の送泥管5と排泥管6とが設置されている。
【0037】
送泥管5は、カッタチャンバ4内に泥水を供給する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。送泥管5の先端部(放泥口)は、隔壁9の正面内上部を貫通してカッタチャンバ4に達している。これにより、送泥管5を通じて圧送された泥水は、シールド掘進機1の正面内上部からカッタチャンバ4内に供給される。この送泥管5はトンネルの抗口に向かって延び、途中に配置された前述の送泥ポンプ8を介してトンネルの外部の泥水プラント7に接続されている。なお、泥水プラント7は、トンネルの外部の泥水処理装置(図示せず)に接続されている。
【0038】
排泥管6は、カッタチャンバ4内の排泥水(掘削土と泥水との混合泥水)をトンネルの外部に排出する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。排泥管6の先端部(吸泥口)は、隔壁9の正面内下部を貫通してカッタチャンバ4に達している。これにより、カッタチャンバ4内の排泥水は、シールド掘進機1の正面内下部から排出される。排泥管6はトンネルの抗口に向かって延び、途中に配置された排泥ポンプ10を介してトンネルの外部の泥水処理装置に接続されている。
【0039】
すなわち、カッタチャンバ4内の排泥水は、排泥管6を通じてトンネルの外部の泥水処理装置に送られ、そこで土砂と泥水とに分離され比重や粘性等が調整された後、泥水プラント7に送られて再び送泥管5を通じてカッタチャンバ4へ送られる。
【0040】
図1に示すように、本実施の形態のシールド掘進機1には、カッタチャンバ4の後方に補助チャンバ(第2のチャンバ)11が設置されている。補助チャンバ11は調圧配管13によりカッタチャンバ4と連通しており、カッタチャンバ4との間を泥水が往来するようになった小型の圧力容器である。
【0041】
補助チャンバ11は調圧配管13でカッタチャンバ4と連結されているために、チャンバ内の下層は泥水層(貯留泥水)となっている。本実施の形態において、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置は、カッタチャンバ4の中央よりも上部の位置となっている。これは、補助チャンバ11の役目は圧力の調整であるから、泥水の濃度は機能に影響しないため、チャンバ内の泥水の濃度が薄いことが望ましいからである。すなわち、カッタチャンバ4内の泥水は底部付近が濃く、上部になるにつれて薄くなっているため、調圧配管13をカッタチャンバ4の底部付近に接続すると、濃度が高い泥水、つまり土砂を多く含んだ泥水が補助チャンバ11に流入しやすくなるため、濃度の薄い泥水を取り込む必要から、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置を前述のようにしたものである。但し、泥水濃度の条件などによっては、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置は、カッタチャンバ4の中央よりも下部となっていてもよい。
【0042】
なお、本実施の形態では、調圧配管13は補助チャンバ11の底部を含む位置に接続されている。これは、調圧配管13が確実に補助チャンバ11内の泥水層に面するようにするためである。但し、必ずしもこのような接続形態になってなくてもよい。
【0043】
また、図示するように、コンプレッサ16から圧縮空気の供給を受けるレシーバタンク14が設置され、このレシーバタンク14は空圧配管15を介して補助チャンバ11と常時接続されている。よって、補助チャンバ11内の上部は圧縮空気層となっている。さらに、補助チャンバ11の上面には、チャンバ内の空圧を設定値に保持するリリーフ弁(圧力制御弁)17が取り付けられている。本実施の形態では、コンプレッサ16で生成される圧縮空気は0.75MPa(MAX)であり、コンプレッサ16とレシーバタンク14との間に設置された図示しない調圧バルブにより0.31~0.35MPa程度に減圧されてレシーバタンク14内に送り込まれる。減圧された圧縮空気はレシーバタンク14から補助チャンバ11内に送り込まれ、補助チャンバ11の内部が0.3MPaになるようにリリーフ弁17で制御されるようになっている。なお、リリーフ弁17の開度は、制御のし易さの見地から10%程度にするのが望ましい。
【0044】
また、レシーバタンク14内の圧力が0.31MPaより低くなるとコンプレッサ16が稼働し、0.35MPaより高くなると停止する。そして、レシーバタンク16からは常に補助チャンバ11に圧縮空気が供給されている。その上で、補助チャンバ11のリリーフ弁17から常に空気を排出し続けることで、安定した気圧を保つことができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、補助チャンバ11の容量5.0mに対し、レシーバタンク14の容量2.26mとなっている。なお、コンプレッサ16は最大出力で使用するものとし、出力の大きいものが望ましい。
【0046】
そして、このようにして補助チャンバ11の内部圧力が一定に保たれているため、カッタチャンバ4の圧力の変化に応じて調圧配管13から泥水が流入して泥水層の水面高さが変化しても、上層の圧縮空気が空気圧ダンパとして切羽圧の変化を吸収することで、カッタヘッド2の切羽Fに対する圧力を一定に保つことができることになる。
【0047】
なお、レシーバタンク14はコンプレッサ16と常時接続されているが、レシーバタンク14内の圧縮空気の圧力が一定値を超えるとコンプレッサ16が停止し、レシーバタンク14内の圧力が所定以上に上昇することが防止されている。
【0048】
ここで、本実施の形態において、空圧配管15は1本だけになっている。しかしながら、空圧配管15を複数本設けておき、通常は1本の空圧配管15だけでレシーバタンク14から補助チャンバ11内に圧縮空気を供給するようにしておき、補助チャンバ11内の圧力が急激に低下した場合には他の空圧配管15も使用して同時に多量の圧縮空気を補助チャンバ11内に供給するようにして、当該補助チャンバ11内の圧力を速やか所定のレベルに戻すようにしてもよい。また、空圧配管15を複数本設けておけば、一方の空圧配管15に不具合があった場合でもすぐに対応が可能になる。
【0049】
なお、レシーバタンク14とコンプレッサ16とで構成される圧縮空気供給手段は、シールド掘進機1の前進に追随して前進する後続台車に搭載されている。
【0050】
さらに、補助チャンバ11には送泥管5から分岐した供給配管12が接続されており、送泥管5を流れる泥水は、補助チャンバ11にも流入可能になっている。また、補助チャンバ11の底面から延びるようにして、排出配管18が排泥管6に接続されている。さらに、送泥管5と排泥管6とは、バイパス配管19により直接(つまり、カッタチャンバ4を介することなく)接続されている。
【0051】
ここで、補助チャンバ11から延びる排出配管18を排泥管6に接続したのは、排泥管6内の流水の圧力で補助チャンバ11内に溜まった砂分を排出配管18を介して吸引することができるからである。なお、補助チャンバ11内の土砂を効率的に排出するためには、排出配管18は補助チャンバ11の底面から延びるように接続されているのがよい。
【0052】
また、図示するように、排出配管18の排泥管6との合流接続点Pmは、前述した排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向上流側となっている。これは、合流接続点Pmを排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向下流側にすると、排泥管6内の圧力が大きい場合に、補助チャンバ11内に対する吸引力が強すぎて補助チャンバ11内の水位が下がりすぎることが考えられるからである。但し、補助チャンバ11内の土砂の沈下量が多い場合は、合流接続点Pmを排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向下流側にしてもよく、さらに、合流接続点Pmの上流側および下流側に排泥ポンプ10を接続して、状況に応じて選択的に稼働させるようにしてもよい。
【0053】
図示するように、送泥管5におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb1よりもカッタチャンバ4側には第1のバルブV1が、排泥管6におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb2よりもカッタチャンバ4側には第2のバルブV2が取り付けられている。また、バイパス配管19には第3のバルブV3が、供給配管12には第4のバルブV4が、排出配管18には第5のバルブV5が、調圧配管13には第6のバルブV6が取り付けられている。さらに、補助チャンバ11と排泥タンク20とを連結するドレイン管21には第7のバルブV7が取り付けられている。
【0054】
これら第1のバルブV1~第7のバルブV7は何れもそれぞれの管路を開閉するためのものであり、本実施の形態においては、シールド掘進機1の作業状態(地山掘削作業中・地山掘削作業停止中)を示すデータ、カッタチャンバ4内の泥水の圧力計および濃度計による計測値、補助チャンバ11内のレベルチェッカ22および電極センサSおよび圧力計による計測値などが収集され、これらに基づいて図示しない制御部(制御手段)に制御されるモータなどのアクチュエータによって自動的に開閉操作されるようになっている。
【0055】
但し、制御部を設けることなく、オペレータがアクチュエータを介して第1のバルブV1~第7のバルブV7を開閉操作するようにしてもよい。また、これら第1のバルブV1~第7のバルブV7には開度調整バルブを用いて、より緻密な操作ができるようにしてもよい。
【0056】
なお、排出配管18に取り付けられた第5のバルブV5の排泥管6側には、逆止弁(第8のバルブ)V8が設置されている。これは、排泥管6内の水圧の方が排出配管18内の水圧よりも高くなっている場合に、泥水が排泥管6から排出配管18を通って補助チャンバ11内に逆流する事態を阻止するためである。
【0057】
なお、前述のように、本実施の形態において、補助チャンバ11の底面にはドレイン管21を介して排泥タンク20が接続されている。そして、補助チャンバ11内の泥水が土砂を多く含んだ場合には、ドレイン管21に設けられた第7のバルブV7を開いて補助チャンバ11内の土砂を排泥タンク20に排出するようになっている。したがって、補助チャンバ11内の泥水をドレイン管21から排出しても、泥水でトンネル内が汚染されることがない。なお、排泥タンク20内の泥水は、図示しないバキューム掃除機で負圧吸引して機外に排出される。
【0058】
このように、本実施の形態のシールド掘進機1では、補助チャンバ11からの泥水の排出経路として、排出配管18から排泥管6に排出する第1の経路、およびドレイン管21から排泥タンク20に排出する第2の経路の2経路が設けられている。これは、補助チャンバ11内の泥水を排出する必要が生じたにもかかわらず、排泥管6内の水圧が高いために第1の経路での排出ができなくなったときを想定したものである。但し、第1の経路による泥水の排出が可能な状態であっても、第2の経路で、あるいは第1の経路と第2の経路とを併用して排出してもよい。さらに、第1の経路および第2の経路の何れか一方の経路だけが設けられていてもよい。
【0059】
図4に示すように、補助チャンバ11内には、電極センサ(水位検知手段)Sが補助チャンバ11の側壁において上下方向の7箇所(電極センサS1~S7)に設置されている。なお、ここでは、最上部の電極センサを符号S1とし、そこから下方に向かって符号S2,S3,S4,S5,S6,S7の電極センサとする。
【0060】
さて、この電極センサSは、絶縁体を介して離間されて先端が補助チャンバ11の内部に面している2本の電極を備えており、これらの電極間の通電の有無を検知することで、当該センサSにまで泥水が存在しているか否か(通電すれば泥水が存在している)が検知される。そして、前述のように、電極センサSは補助チャンバ11の側壁において上下方向の7箇所に設置されているので、どの電極センサSまでが通電しているかによって補助チャンバ11内の水位(H)を検知することができる。
【0061】
図4に示すように、水位(H)を測定するためのそれぞれの電極センサS1~S7の位置が補助チャンバ11内のレベルL1~レベルL7に対応している。たとえば、電極センサS3~S7が通電していれば、補助チャンバ11内の水位は電極センサS3の位置に対応したレベルL3となる。なお、複数の電極センサ(電極センサS1~S7)の間隔は均等ではなくてもよい。
【0062】
ここで、図5に示すように、補助チャンバ11内の水位に対応したレベルL1~レベルL7は、次のような内容になっている。
【0063】
すなわち、レベルL1は、掘進停止水位(異常高位)のレベルであり、泥水がバイパス配管19を通って(つまり、カッタチャンバ4を通らずに)環流するバイパス環流モードにするとともに第6のバルブV6を閉鎖して、レベルL2まで泥水を排出する動作内容である。なお、レベルL1はバイパス環流モードであるために、レベルL1を脱出するまで掘進は停止(緊急停止)される。レベルL2は、上限水位のレベルであり、ここまで水位が低下したら泥水がカッタチャンバ4を通って(つまり、バイパス配管19を通らずに)環流するカッタチャンバ環流モードにしてレベルL3まで泥水の排出を継続しながら掘進を実行する動作内容である。レベルL3は、基準水位(上端)のレベルであり、カッタチャンバ環流モードにしておいて、補助チャンバ11への給排泥(供給配管12からの給泥、排出配管18からの排泥)は行わずに掘進を実行する動作内容である。レベルL4は基準水位のレベル、レベルL5は基準水位(下端)のレベルであり、動作内容はレベルL3と同じである。レベルL6は、下限水位のレベルであり、カッタチャンバ環流モードにしてレベルL5まで泥水を供給して掘進を実行する動作内容である。そして、レベルL7は、掘進停止水位(異常高位)のレベルであり、バイパス環流モードにするとともに第6のバルブV6を閉鎖して、レベルL6まで泥水を供給する動作内容である。なお、レベルL7もバイパス環流モードであるために、レベルL7を脱出するまで掘進は停止(緊急停止)される。なお、レベルL6は、下限水位のレベルであり、ここまで水位が上昇したらカッタチャンバ環流モードにしてレベルL5まで泥水の供給を継続しながら掘進を実行する動作内容である。
【0064】
なお、カッタチャンバ環流モードでは、送泥管5を通じて泥水プラント7に貯留されている泥水を送泥ポンプ8によりカッタチャンバ4内に供給し、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fの安定を図るとともに、カッタチャンバ4内に溜められた泥水をカッタチャンバ4内に取り込まれた掘削土とともに排泥管6によってトンネルの外部の泥水プラント7を介して環流させながら地山にトンネルを形成する。また、カッタチャンバ4内の泥水圧力の変動に応じて、調圧配管13を介してカッタチャンバ4と補助チャンバ11との間で泥水が往来して、カッタチャンバ4内の圧力変動が緩和される。
【0065】
ここで、図5において、第1のバルブV1~第6のバルブV6の開閉は図示するようになっているが、詳細については後述するフローチャートと併せて説明する。
【0066】
なお、本実施の形態では、電極センサS1~S7により水位をレベルLl~レベルL7の7段階で検知することとしているが、これ以上あるいはこれ以下としてもよい。すなわち、少なくとも電極センサSを3台設けて、上限水位、基準水位および下限水位の3種類の水位を検知できるようにしてもよい。本実施の形態に示すように、基準水位には、レベルL3:基準水位(上端)、レベルL4:基準水位およびレベルL5:基準水位(下端)を設けて基準水位となる水位幅を広くしているように、単一の基準水位とする場合には、同様に水位幅を広くするのが望ましい。また、掘進停止水位(異常高位)および掘進停止水位(異常高位)は検知しなくてもよい。これは、上限水位および下限水位を例えば基準水位の上下端レベルにしておけば、掘進停止水位(異常高位)や掘進停止水位(異常高位)に至るリスクがほとんど無視できるからである。
【0067】
また、例えば、逸泥が極端に大きい地層を掘削する場合には、9段階として補助チャンバ11内の水位がレベルL8まで下がったら緊急停止のための作業を開始するようにしてもよい。特に、補助チャンバ11の形状が上下に細長く、容量が小さい場合に、水位を多段階で検知することが有効である。
【0068】
補助チャンバ11内には、レベルチェッカ(流向検知手段)22が設置されている。本実施の形態において、送信されてから水面で反射して受信されるまでのガイドプロープ上を伝達するパルス信号の時間から水面高さを測定するガイドパルス式のレベルチェッカ22が用いられている。このレベルチェッカ22は、補助チャンバ11内の水位の増減を計測することにより、補助チャンバ11とカッタチャンバ4との間を往来する泥水の流向(泥水がどちらの方向に流れているか)を検知するためのものである。
【0069】
以上のような構成を有するシールド掘進機1において、補助チャンバ11の水位に応じた第1のバルブV1~第7のバルブV7の開閉による泥水の流れについて、図2図6を用いて説明する。なお、管路を開閉して泥水の流れを制御する第1のバルブV1~第7のバルブV7は、前述のように制御部によって制御されている。また、第7のバルブV7は補助チャンバ11からの泥水の排出のために開閉されるものであって第5のバルブV5と同様の機能を有するものであるが、説明の煩雑化を回避するために、第7のバルブV7についての動作説明は簡略化する。
【0070】
すなわち、補助チャンバ11からの排泥停止では、第5のバルブV5および第7のバルブV7が何れも閉鎖されるのに対して、補助チャンバ11からの排泥では、第5のバルブV5および第7のバルブV7の何れか一方、あるいは両方を開放して行われる。よって、補助チャンバ11から排泥しないときには、第5のバルブV5も第7のバルブV7も閉鎖位置になっているが、補助チャンバ11から排泥するときには、第5のバルブV5が開放位置で第7のバルブV7が閉鎖位置、第5のバルブV5が閉鎖位置で第7のバルブV7が開放位置、第5のバルブV5も第7のバルブV7も開放位置の3パターンがある。
【0071】
しがたって、排出配管18の第5のバルブV5、およびドレイン管21の第7のバルブV7の何れか一方あるいは両方を備えている場合、後述する図5および図6ならびにこれらの説明において、第5のバルブV5が閉鎖位置(CL(Close))であるとは第7のバルブV7も閉鎖位置であることを意味し、第5のバルブV5が開放位置(OP(Open))であるとは第5のバルブV5および第7のバルブV7の何れか一方あるいは両方ともが開放位置であることを意味する。
【0072】
ここで、図2および図3において、泥水の流れる管路は太い実線で、泥水が流れたり流れなかったりする管路は太い破線で、それぞれ示している。また、図2は、泥水がカッタチャンバ4を通って(つまり、バイパス配管19を通らずに)環流するカッタチャンバ環流モードであり、図3は、泥水がバイパス配管19を通って(つまり、カッタチャンバ4を通らずに)環流するバイパス環流モードを示している。
【0073】
また、図6のフローチャートにおいて、図中にも記載したように、V1~V6は第1のバルブ~第6のバルブを、OP(Open)はバルブVが開放位置であることを、CL(Close)はバルブVが閉鎖位置であることを、バイパス環流モードとは、第1のバルブV1がCL、第2のバルブV2がCL、第3のバルブV3がOPとなるモード(つまり、泥水がバイパス配管19を通って環流するモード)を、カッタチャンバ環流モードとは、第1のバルブV1がOP、第2のバルブV2がOP、第3のバルブV3がCLとなるモード(つまり、泥水がカッタチャンバ4を通って環流するモード)を、Hは電極センサS1~S7による補助チャンバ11内の水位を、L1~L7は補助チャンバ11内の水位Hについてのレベルを、それぞれ意味している。
【0074】
さて、図6において、先ず、泥水式シールド掘進機1をバイパス環流モード(図3)にして第3のバルブV3のみを開放し(ステップSt01)、次に、第3のバルブV3を開放したままで第6のバルブV6を開放し(ステップSt02)、続いて、カッタチャンバ環流モード(図2)に移行して第1のバルブV1および第2のバルブV2のみを開放し(ステップSt03)、掘進を開始する(ステップSt04)。このとき、ステップSt02において調圧配管13に設けられた第6のバルブV6が開放されているので、ステップSt03のカッタチャンバ環流モードで第1のバルブV1が開放されて送泥管5からカッタチャンバ4内に一気に泥水が流入したとき、泥水が調圧配管13を介して補助チャンバ11に流入し、圧縮空気が供給されている補助チャンバ11内の水面上昇によりカッタチャンバ4内の水圧の上昇が緩和されてカッタヘッド2に対する急激な負荷が低減される。
【0075】
ステップSt04において掘進を開始したならば、次に、水位計測を行う(ステップSt05)を行う。
【0076】
また、本実施の形態においては、ステップSt01~ステップSt04を経てステップSt05を実行しているが、補助チャンバ11内に既にある程度の泥水が入っているので、ステップSt01~ステップSt04を省略してもよい。但し、シールド掘進機1のスムーズなオペレーションのためには、ステップSt01~ステップSt04を実行するのが望ましい。
【0077】
さて、図6に戻り、ステップSt05での水位計測の結果、補助チャンバ11の水位HがレベルL7より少ないか否かが判断される(ステップSt06)。そして、ステップSt06において補助チャンバ11の水位HがレベルL7より少なくない(多い)と判断された場合には、次に、補助チャンバ11の水位HがレベルL1より多いか否かが判断される(ステップSt07)。
【0078】
このように、ステップSt06とステップSt07とにおいては、補助チャンバ11の水位Hが掘進停止水位(レベルL7:異常低位、レベルL1:異常高位)を超えた状態であるか否かが判断される。そして、ステップSt06およびステップSt07において、何れも「NO(否)」と判断されたということは、補助チャンバ11の水位Hが掘進停止水位を超えていないことを意味する。
【0079】
さて、ステップSt07において補助チャンバ11の水位HがレベルL1より多くない(少ない)と判断された場合には、次に、補助チャンバ11の水位HがレベルL6より少ないか否かが判断される(ステップSt08)。そして、ステップSt08において補助チャンバ11の水位HがレベルL6より少なくない(多い)と判断された場合には、次に、補助チャンバ11の水位HがレベルL2より多いか否かが判断される(ステップSt09)。
【0080】
このように、ステップSt08とステップSt09とにおいては、補助チャンバ11の水位Hが上下限水位(レベルL2:上限水位、レベルL6:下限水位)を超えた状態であるか否かが判断される。そして、ステップSt08およびステップSt09において、何れも「NO(否)」と判断されたということは、補助チャンバ11の水位Hが上下限水位をも超えていないことを意味する。
【0081】
したがって、これらのステップSt06~ステップSt09で「NO(否)」と判断されたことから、補助チャンバ11の水位Hは標準水位内となっている、つまりレベルL3(標準水位(上限))~レベルL4(標準水位))、あるいはレベルL4(標準水位)~レベルL5(標準水位(下限)))となっていることになる。したがって、カッタチャンバ環流モード(ステップSt03)の下で開始されたシールド掘進機1による掘進(ステップSt04)が実行され続ける。すなわち、カッタチャンバ4内の泥水圧力の変動に応じて、調圧配管13を介してカッタチャンバ4と補助チャンバ11との間で泥水が往来して、カッタチャンバ4内の圧力変動が緩和されながら地山が掘削されていく。
【0082】
そして、ステップSt10において、推進ジャッキが伸びきったかどうかが判断され、伸びきったと判断された場合には、バイパス環流モードにし(ステップSt11)、シールド掘進機1の掘進を停止させる(ステップSt12)。そして、トンネルを構築するために、図示しないセグメントをリング状に組み立てる(ステップSt13)。
【0083】
なお、ステップSt10において、推進ジャッキが伸びきっていないと判断された場合には、シールド掘進機1をさらに前進させる必要があることから、前述したステップSt05に戻る。
【0084】
そして、ステップSt13においてセグメントの組み立てが完了すると、ステップSt44において、1日の作業が終了したかどうかが判断され、終了したと判断された場合には、第4のバルブV4、第5のバルブV5および第6のバルブV6を閉鎖する(ステップSt45)。また、ステップSt44において、1日の作業が終了していないと判断された場合には、前述したステップSt03に戻る。
【0085】
さて、補助チャンバ11の水位Hが常に標準水位内であれば、以上のようなステップSt01からステップSt13に至るステップを順次経由することができてスムーズな掘進が行われる。しかしながら、地盤の状態によってはカッタチャンバ4への掘削泥水の流入量が変動することから、補助チャンバ11内の泥水をカッタチャンバ4との間で往来させてカッタチャンバ4内の泥水圧の急激な変化を緩和している。そのため、補助チャンバ11内の水位Hは必ずしも常に標準水位内にあるとは限らない。
【0086】
そのようなことから、本フローチャートに示すように、補助チャンバ11の水位Hが適宜チェックされて、チェック結果に応じた処理が実行されることになっている。
【0087】
さて、このような補助チャンバ11の水位Hのチェックとして、前述のステップSt06において、補助チャンバ11の水位HがレベルL7(掘進停止水位(異常低位))より少ないと判断された場合には、図5のレベルL7に従って、シールド掘進機1の掘進を停止し(ステップSt14)、第1のバルブV1~第6のバルブV6をレベルL7に対応した状態にする。すなわち、第4のバルブV4を開放するとともに第5のバルブV5および第6のバルブV6を閉鎖してから(ステップSt15)、バイパス環流モードにする(ステップSt16)。これにより、送泥管5から供給配管12を通って泥水が補助チャンバ11へと供給が開始される(ステップSt17)。
【0088】
なお、バイパス環流モードにおいては、補助チャンバ11内に泥水の供給(ステップSt17や後述するステップSt33)または泥水の排出(後述するステップSt26やステップSt39)を行う。このため、供給配管12の送泥管5との分流接続点Psや排出配管18の排泥管6との合流接続点Pmは、送泥管5におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb1や排泥管6におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb2よりも発進坑口側に設置されることが望ましい(図1図3参照)。
【0089】
そして、ステップSt05と同様の水位計測を行い(ステップSt18)、補助チャンバ11の水位HがレベルL6(下限水位)より多いか否かが判断される(ステップSt19)。そして、レベルL6より多いと判断された場合には、第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL6に従った状態にする。すなわち、第4のバルブV4および第6のバルブV6を開放するとともに第5のバルブV5を閉鎖してから(ステップSt20)、カッタチャンバ環流モードにする(ステップSt21)。これにより、送泥管5から供給配管12を通って泥水が補助チャンバ11に供給されるとともに調圧配管13が開放され、シールド掘進機1の掘進が開始する(ステップSt22)。なお、掘進開始後は、後述するステップSt34に移行する。
【0090】
なお、ステップSt19において、補助チャンバ11の水位HがレベルL6より多くなっていない(少ない)と判断された場合には、多くなるまで給泥が実行される。
【0091】
次に、前述のステップSt07において補助チャンバ11の水位HがレベルL1(掘進停止水位(異常高位))より多いと判断された場合には、図5のレベルL1に従って、シールド掘進機1の掘進を停止し(ステップSt23)、第1のバルブV1~第6のバルブV6をレベルL1に対応した状態にする。すなわち、第4のバルブV4および第6のバルブV6を閉鎖するとともに第5のバルブV5を開放してから(ステップSt24)、バイパス環流モードにする(ステップSt25)。これにより、補助チャンバ11への給泥が停止されるとともに、補助チャンバ11内の泥水が排出配管18を介して排泥管6へと排出が開始される(ステップSt26)。
【0092】
そして、ステップSt05と同様の水位計測を行い(ステップSt27)、補助チャンバ11の水位HがレベルL2(上限水位)より低くなったか否かが判断される(ステップSt28)。そして、レベルL2より低くなったと判断された場合には、第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL2に従った状態にする。すなわち、第4のバルブV4を閉鎖するとともに第5のバルブV5および第6のバルブV6を開放してから(ステップSt29)、カッタチャンバ環流モードにする(ステップSt30)。これにより、泥水が補助チャンバ11から排出配管18から排泥管6へと排出されるとともに調圧配管13が開放され、シールド掘進機1の掘進が開始する(ステップSt31)。なお、掘進開始後は、後述するステップSt40に移行する。
【0093】
なお、ステップSt28において、補助チャンバ11の水位HがレベルL2より少なくなっていない(多い)と判断された場合には、少なくなるまで排泥が実行される。
【0094】
次に、ステップSt08において、水位HがレベルL6(下限水位)より少ないと判断された場合には、図5のレベルL6に従って、第1のバルブV1~第6のバルブV6をレベルL6に対応した状態にする。すなわち、第4のバルブV4および第6のバルブV6を開放するとともに第5のバルブV5を閉鎖し(ステップSt32)、補助チャンバ11内に給泥を開始する(ステップSt33)。
【0095】
そして、ステップSt05と同様の水位計測を行い(ステップSt34)、補助チャンバ11の水位HがレベルL5(基準水位(下端))より高くなったか否かが判断される(ステップSt35)。そして、レベルL5より高くなったと判断された場合には、第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL5に従った状態にする。すなわち、第4のバルブV4および第5のバルブV5を閉鎖するとともに第6のバルブV6を開放してから(ステップSt36)、補助チャンバ11への給泥を停止する(ステップSt37)。なお、補助チャンバ11への給泥を停止するのは、補助チャンバ11内が基準水位となっているからである。また、ステップSt37で給泥を停止したならば、前述したステップSt05に戻る。
【0096】
なお、ステップSt35において、補助チャンバ11の水位HがレベルL5より多くなっていない(少ない)と判断された場合には、多くなるまで給泥が実行される。
【0097】
次に、ステップSt09において、水位HがレベルL2(上限水位)より多いと判断された場合には、図5のレベルL2に従って、第1のバルブV1~第6のバルブV6をレベルL2に対応した状態にする。すなわち、第4のバルブV4のバルブを閉鎖するとともに第5のバルブV5および第6のバルブV6を開放し(ステップSt38)、補助チャンバ11から排泥を開始する(ステップSt39)。
【0098】
そして、ステップSt05と同様の水位計測を行い(ステップSt40)、補助チャンバ11の水位HがレベルL3(基準水位(上端))より低くなったか否かが判断される(ステップSt41)。そして、レベルL3より低くなったと判断された場合には、第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL3に従った状態にする。すなわち、第4のバルブV4および第5のバルブV5を閉鎖するとともに第6のバルブV6を開放してから(ステップSt42)、補助チャンバ11の排泥を停止する(ステップSt43)。なお、補助チャンバ11の排泥を停止するのは、補助チャンバ11内が基準水位なっているからである。また、ステップSt43で排泥を停止したならば、前述したステップSt05に戻る。
【0099】
なお、ステップSt41において、補助チャンバ11の水位HがレベルL3より多いと判断された場合には、少なくなるまで排泥が実行される。
【0100】
ここで、図5に示すように、レベルL3(基準水位(上端))、レベルL4(基準水位)およびレベルL5(基準水位(下端))における第1のバルブV1~第6のバルブV6の開閉位置は全て同一になっている。そして、以上の図6における説明では、「第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL4(基準水位)に従った状態にする」との処理は存在しない。これは、補助チャンバ11内の水位が、ステップSt08においてレベルL6(下限水位)よりも多く、ステップSt09においてレベルL2(上限水位)よりも少ないと判断されれば、つまり、補助チャンバ11内の水位がレベルL3~レベルL5(基準水位(上端)~基準水位(下端))の間にあれば第1のバルブV1~第6のバルブV6の開閉位置を変更する必要がないため、あえて「水位HがレベルL4(基準水位)より多い(あるいは少ない)」との判断、および「第1のバルブV1~第6のバルブV6を図5のレベルL4(基準水位)に従った状態にする」との処理を実行する必要がないからである。但し、水位HがレベルL4より多いか少ないかに係わる処理を実行するようにしても差し支えない。
【0101】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電極センサSの検知結果が上限水位のレベルL2の場合には、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第5のバルブV5および第6のバルブV6のみを開放して補助チャンバ11内が基準水位のレベルL3になるまで排泥して掘進を開始し、電極センサSの検知結果が基準水位のレベルL3~L5の場合には、第1のバルブV1、第2のバルブV2および第6のバルブV6のみを開放して補助チャンバ11での給排泥を行わずに掘進を実行し、電極センサSの検知結果が下限水位のレベルL6の場合には、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第4のバルブV4および第6のバルブV6のみを開放して補助のチャンバ11内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始するようにしている。
【0102】
したがって、泥水式のシールド掘進機1に設けられた補助チャンバ11内の泥水量を調整しながら掘進を行うことが可能になる。
【0103】
なお、本実施の形態においては、前述のように、カッタチャンバ4が逸泥状態かどうかは逸泥量の算定結果から判断される。
【0104】
具体的に、カッタチャンバ4内の逸泥状態での泥水の濃度の調整については次にようにしている。すなわち、1日の逸泥量(=(送泥量+掘削土量)-排泥量)が全体量の10%以上のときを逸泥状態としている。泥水濃度は比重で管理しており、標準が1.2として、逸泥状態の場合は1.25まで上げるようにしている。また、泥水の比重は最大で1.3程度とし、逸泥量が大きくない場合は標準を1.22としている。
【0105】
また、1日の逸泥量が全体量の1%以下になったら逸泥が収まったと判断し、泥水の濃度を1.2まで戻す可能性を検討する。ここで、泥水の濃度を1.2まで戻さない余地を残したのは、泥水の濃度を変更する場合には、地上の振動ふるいやシックナーバックフィルタなどについて変更するなど大掛かりな調整が必要なためであり、泥水の濃度を上げた状態で掘削することに問題がない場合は、そのまま続けることが望ましいからである。
【0106】
また、逸泥とは逆に、切羽Fの水圧が高くなり、地下水がカッタチャンバ4に流入して水位が上昇する場合がある。本実施の形態において、このときの許容値はプラスマイナス3%としており、水位の上昇が3%以上の状態が丸1日続いた場合には、カッタチャンバ4の泥土圧を漸増させて切羽Fとのバランスを取る。カッタチャンバ4内の泥土圧は図示しない土圧計により管理値(地盤の主働土圧と受働土圧の間)の範囲内で調整し、許容値内に戻ったら泥土圧を戻す。なお、この間は、補助チャンバ11内の空気圧も泥土圧に合わせて標準値よりも高くなるように調整する。
【0107】
なお、補助チャンバ11内の泥水が例えばレベルL6まで下がった場合、泥水濃度を濃くしたうえで補助チャンバ11に泥水を供給するが、それでも補助チャンバ11の水位がレベルL6とレベルL5を往復する状態が数日(たとえば、2、3日)続く場合には、管理者が基準水位(下端)をレベルL4に変更するといった措置を取ることができる。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0109】
たとえば、水位検知手段は、本実施の形態のように泥水による通電の有無で水位を検知する電極センサSに限定されるものではなく、補助チャンバ11内の水位を検知する機能を備えた様々なものを適用することができる。したがって、設置箇所は補助チャンバ11の側壁ではなく、内部であってもよい。
【0110】
また、流向検知手段は、本実施の形態のようにガイドパルス式のレベルチェッカ22は限定されるものではなく、水圧式、超音波式、電波式、フロート式、光学式などであってもよい。さらに、レベルチェッカ22に代えて、調圧配管13に流向計(流向検知手段)を設置し、補助チャンバ11とカッタチャンバ4との間を往来する泥水の流向を検知するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上の説明では、本発明を泥水式のシールド掘進機に適用した場合について説明したが、カッタヘッドの形状や構造等、本発明にかかわらない点については、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0112】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 スキンプレート
4 カッタチャンバ(第1のチャンバ)
5 送泥管
6 排泥管
7 泥水プラント
8 送泥ポンプ
9 隔壁
10 排泥ポンプ
11 補助チャンバ(第2のチャンバ)
12 供給配管
13 調圧配管
14 レシーバタンク
15 空圧配管
16 コンプレッサ
17 リリーフ弁(圧力制御弁)
18 排出配管
19 バイパス配管
20 排泥タンク
21 ドレイン管
22 レベルチェッカ(流向検知手段)
F 切羽
H 補助チャンバ内の水位
Pb1,Pb2 分岐接続点
Pm 合流接続点
S、S1~S7 電極センサ(水位検知手段)
L1~L7 補助チャンバ内の水位についてのレベル
V1~V7 第1のバルブ~第7のバルブ
V8 逆止弁(第8のバルブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6