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特許7449637泥水式シールド掘進機およびその掘進方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】泥水式シールド掘進機およびその掘進方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/13 20060101AFI20240307BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
E21D9/13 B
E21D9/06 301Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020050169
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147924
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】津村 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直利
(72)【発明者】
【氏名】大塚 努
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-070544(JP,A)
【文献】特開2002-180781(JP,A)
【文献】特開昭53-041027(JP,A)
【文献】米国特許第04165129(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/13
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、
前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、
前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、
泥水および圧縮空気が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、
レシーバタンクを介して圧縮空気を前記第2のチャンバに供給するコンプレッサと、
前記レシーバタンクと前記コンプレッサとの間の配管に設置され、前記コンプレッサで生成されて前記レシーバタンクに送り込まれる圧縮空気を前記第2のチャンバ内の圧力と略同一に減圧する調圧バルブと、
前記第2のチャンバに取り付けられ、当該第2のチャンバ内の圧力を設定値に保持する圧力制御弁と、
前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、
前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、
前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、
前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、
前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、
前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、
前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、
前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、上限水位、基準水位、下限水位の少なくとも3段階で検知する水位検知手段と、
前記水位検知手段の検知結果に応じて前記第1~第6のバルブを開閉制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記上限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、
前記基準水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、
下限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する制御を実行する、
ことを特徴とする泥水式シールド掘進機。
【請求項2】
前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、
前記制御手段は、
前記上限水位よりも高位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、
前記下限水位よりも下位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する制御を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の泥水式シールド掘進機。
【請求項3】
地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、
前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、
前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、
泥水および圧縮空気が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、
レシーバタンクを介して圧縮空気を前記第2のチャンバに供給するコンプレッサと、
前記レシーバタンクと前記コンプレッサとの間の配管に設置され、前記コンプレッサで生成されて前記レシーバタンクに送り込まれる圧縮空気を前記第2のチャンバ内の圧力と略同一に減圧する調圧バルブと、
前記第2のチャンバに取り付けられ、当該第2のチャンバ内の圧力を設定値に保持する圧力制御弁と、
前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、
前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、
前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、
前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、
前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、
前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、
前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、
前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、上限水位、基準水位、下限水位の少なくとも3段階で検知する水位検知手段とを備え、
前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、
前記水位検知手段の検知結果が前記基準水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、
前記水位検知手段の検知結果が下限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する、
ことを特徴とする泥水式シールド掘進機の掘進方法。
【請求項4】
前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、
前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位よりも高位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、
前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位よりも下位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する、
ことを特徴とする請求項3記載の泥水式シールド掘進機の掘進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタチャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることで切羽を安定させながら地山を掘削してトンネルを形成する泥水式シールド掘進機およびその掘進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤中にトンネルを構築するシールド工法では、発進立坑内でシールド掘進機を組み立てて発進させ、地中を掘進させる。そして、到達立坑に到達したならば、到達立坑内でシールド掘進機を分解して地上に搬出する。
【0003】
また、シールド工法に用いられるシールド掘進機には、掘削土を泥土化して所定の圧力を与えることにより切羽を安定させながら地山を掘削する泥土圧シールド掘進機や、カッタチャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることで切羽を安定させながら地山を掘削する泥水式シールド掘進機などがある。
【0004】
ここで、泥水式シールド掘進機では、泥水が送泥管からカッタチャンバ内に常時供給されており、切羽前方の圧力(土圧および水圧)にカッタチャンバ内の泥水圧で対抗することで切羽を安定させている。そして、掘削時には、カッタチャンバ内に溜められた泥水がカッタチャンバに取り込まれた掘削土とともに排泥管から外部に排出される(掘削モード)。また、セグメント組立時など掘削を休止する際には、送泥管と排泥管とを連通するバイパス配管に設けられたバルブ(バイパス用バルブ)を開放するとともに、送泥管および排泥管のバイパス配管よりもカッタヘッド側に設けられたバルブ(送泥用バルブ・排泥用バルブ)を閉鎖して、カッタチャンバを切り離した状態で泥水を循環させる(バイパスモード)。さらに、セグメントの組み立てが完了して掘削を再開する際には、バイパス用バルブを閉鎖するとともに、送泥用バルブおよび排泥用バルブを開放する。
【0005】
カッタヘッドには、掘削した土砂をカッタチャンバ内に取り込むための隙間があり、カッタチャンバ内の泥水は切羽の地山を押さえる。カッタチャンバ内に供給される泥水には、泥分にベントナイトや高分子添加剤などが混入されており、これによって切羽面に膜(泥膜)を形成して、切羽前方の圧力に対抗している。そして、砂質土で水が抜けやすい地盤などの場合は泥水の流入量が大きくなる(逸泥状態)ので、泥水中の泥分や高分子添加剤を多くするとともに泥水の供給量を増やし、泥水の排出量を増やしてカッタチャンバ内の圧力を安定させる操作を行っている。また、粘質土で水が抜けにくい地盤などの場合は、これとは逆の操作を行っている。
【0006】
ここで、泥水式シールド掘進機での掘削においては、地盤の土質によるカッタチャンバ内の泥水圧の変化に応じて当該カッタチャンバ内に供給する泥水の濃度を調整するとともに、送泥管および排泥管の流量を調節する必要がある。しかしながら、複雑な地盤や高水圧下ではカッタチャンバ内の泥水圧が急激に変化することがあり、このような濃度調整や流量調整が間に合わない場合には、地山への悪影響が生じて崩落の可能性もある。
【0007】
また、バイパスモードから掘削モードに移行する際には、各バルブの閉鎖や開放が瞬時に行なわれるためにカッタチャンバ内の泥水圧が大きく変動し、これに伴って、切羽地山やカッタヘッド、送泥管、排泥管などに悪影響が出る可能性がある。
【0008】
そこで、特許文献1(特開2013-083110号公報)には、カッタチャンバとは別に、圧縮空気の弾力性を利用したチャンバを設け、カッタチャンバ内の泥水の水面の変化に対応することで泥水圧の急激な変化を緩和する技術が提案されている。
【0009】
具体的には、第1のチャンバであるカッタチャンバとは離れたトンネル内に第2のチャンバである圧力調整タンクを設けた構造である。圧力調整タンクは下方がカッタチャンバと接続されて泥水が供給され、上方が圧縮空気を封入したダンパタンクと接続されて圧縮空気が供給される。そして、カッタチャンバにかかる圧力が変化した場合に圧力調整タンク内の水面が上下するが、それに伴って圧縮空気が供給もしくは排出されてカッタチャンバ内の泥水の圧力変動が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-180781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の技術では、泥水が第1のチャンバ(カッタチャンバ)から別途設けられた第2のチャンバ(圧力調整タンク:所定量の水が入った第1および第2タンクと、エアのみが収容されたダンパタンクとからなる)に供給される構造となっている。ダンパタンクには接続管を通してコンプレッサから圧縮空気が供給されるようになっており、接続管には開閉弁と電磁弁とが設置されている。このような構造において、第1および第2タンク内の水位調整終了後に開閉弁を開いて電磁弁を制御してコンプレッサからダンパタンクを介して第1および第2タンク内に圧縮空気を入れて目的とする空圧にしている。そして、その後は、開閉弁を閉じて電磁弁の作動を停止させている。したがって、シールド掘進機が動作を開始した後では、コンプレッサからの空気導入はない。
【0012】
ここで、所定量の水が入った第1および第2タンクでは、内部の水の増減に伴うタンク内の空圧を一定に保つために、リリーフ弁が必要になる。すると、水の増減で第1および第2タンク内の空気がリリーフ弁から排出され、且つダンパタンクの圧縮空気も使い切ってしまう状態が想定される。
【0013】
すると、第1および第2タンクつまり第2のチャンバ内の圧力が低下して、第1のチャンバ内の泥水の圧力変動を緩和できなくなるおそれが発生する。
【0014】
また、第2のチャンバ内の水が基準水位を逸脱して掘進が停止した場合、あらためて水量を調整した後に圧縮空気を導入するのでは、掘進再開までの時間的なロスが大きくなる。
【0015】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、泥水式シールド掘進機に設けられた第2のチャンバ内の水位変動の影響を受けることなく第1のチャンバ内の泥水圧力変動を確実に緩和することのできる技術を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、泥水式シールド掘進機に設けられた第2のチャンバ内の水が基準水位を逸脱して掘進が停止した際、基準水位になったときに速やかに掘進を再開させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、泥水および圧縮空気が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、レシーバタンクを介して圧縮空気を前記第2のチャンバに供給するコンプレッサと、前記レシーバタンクと前記コンプレッサとの間の配管に設置され、前記コンプレッサで生成されて前記レシーバタンクに送り込まれる圧縮空気を前記第2のチャンバ内の圧力と略同一に減圧する調圧バルブと、前記第2のチャンバに取り付けられ、当該第2のチャンバ内の圧力を設定値に保持する圧力制御弁と、前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、上限水位、基準水位、下限水位の少なくとも3段階で検知する水位検知手段と、前記水位検知手段の検知結果に応じて前記第1~第6のバルブを開閉制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記上限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、前記基準水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、下限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の本発明の泥水式シールド掘進機は、上記請求項1記載の発明において、前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、前記制御手段は、前記上限水位よりも高位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、前記下限水位よりも下位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する制御を実行する、ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項3に記載の本発明の泥水式シールド掘進機の掘進方法は、地山を掘削するカッタヘッドの背面に形成された第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内に泥水を送り込む送泥管と、前記第1のチャンバ内に溜められた泥水を前記第1のチャンバに取り込まれた掘削土とともに外部に排出する排泥管と、泥水および圧縮空気が収容されるとともに調圧配管により前記第1のチャンバと連通され、前記調圧配管を介して前記第1のチャンバとの間を泥水が往来して当該第1のチャンバ内の泥水圧の変化を緩和する第2のチャンバと、レシーバタンクを介して圧縮空気を前記第2のチャンバに供給するコンプレッサと、前記レシーバタンクと前記コンプレッサとの間の配管に設置され、前記コンプレッサで生成されて前記レシーバタンクに送り込まれる圧縮空気を前記第2のチャンバ内の圧力と略同一に減圧する調圧バルブと、前記第2のチャンバに取り付けられ、当該第2のチャンバ内の圧力を設定値に保持する圧力制御弁と、前記送泥管と前記排泥管とを連通するバイパス配管と、前記送泥管から分岐して前記第2のチャンバに接続された供給配管と、前記第2のチャンバから延びて前記排泥管に接続された排出配管と、前記送泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第1のバルブ、および前記排泥管における前記バイパス配管との分岐接続点よりも前記第1のチャンバ側の管路を開閉する第2のバルブと、前記バイパス配管の管路を開閉する第3のバルブと、前記供給配管の管路を開閉する第4のバルブ、および前記排出配管の管路を開閉する第5のバルブと、前記調圧配管の管路を開閉する第6のバルブと、前記第2のチャンバに設置され、当該第2のチャンバの水位を、上限水位、基準水位、下限水位の少なくとも3段階で検知する水位検知手段とを備え、前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第5のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、前記水位検知手段の検知結果が前記基準水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバでの給排泥を行わずに掘進を実行し、前記水位検知手段の検知結果が下限水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第1のバルブ、前記第2のバルブ、前記第4のバルブおよび前記第6のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の本発明の泥水式シールド掘進機の掘進方法は、上記請求項3記載の発明において、前記水位検知手段は、前記上限水位よりも高位の水位である掘進停止水位、および前記下限水位よりも低位の水位である掘進停止水位をさらに検知し、前記水位検知手段の検知結果が前記上限水位よりも高位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第5のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで排泥して掘進を開始し、前記水位検知手段の検知結果が前記下限水位よりも下位の掘進停止水位の場合には、前記レシーバタンクから前記第2のチャンバへ圧縮空気を常時供給の状態にして前記圧力制御弁で前記第2のチャンバ内の空圧を設定値に保持しつつ、前記第3のバルブおよび前記第4のバルブのみを開放して前記第2のチャンバ内が基準水位になるまで給泥して掘進を開始する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第2のチャンバ内にはレシーバタンクから圧縮空気が常に供給されているので、調圧配管に設けられた第6のバルブが開放位置となって第2のチャンバに給排泥が行われている間も第2のチャンバ内の空圧は常に設定圧に維持されることになる。これにより、第2のチャンバ内の泥水圧が調圧配管を介して第1のチャンバ内の泥水に継続的に作用するようになる。よって、第1のチャンバが第2のチャンバ内の水位変動の影響を受けることがなくなり、当該第1のチャンバ内の泥水圧力変動を確実に緩和することが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、第2のチャンバ内にはレシーバタンクから圧縮空気が常に供給されているので、緊急停止時や作業終了後に調圧配管に設けられた第6のバルブが閉鎖位置となって第2のチャンバに給排泥が行われている間も第2のチャンバ内の空圧は常に設定圧に維持されることになる。よって、第2のチャンバ内の泥水が基準水位を逸脱して掘進が停止した際、基準水位になったときに速やかに掘進を再開させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態における泥水式のシールド掘進機の内部を側面から見た概略図である。
図2図1のシールド掘進機における地山掘削時の泥水の流れを示す説明図である。
図3図1のシールド掘進機における地山掘削停止時の泥水の流れを示す説明図である。
図4図1のシールド掘進機に設けられた補助チャンバを側面から示す説明図である。
図5図1のシールド掘進機に設けられた補助チャンバにおける水位レベルとそれに対応した第1~第6のバルブの開閉状態および動作内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
図1は本発明の一実施の形態である泥水式シールド掘進機の構成を側面から示す概念図である。
【0026】
図1において、本実施の形態の泥水式シールド掘進機(以下、単に「シールド掘進機」という。)1は、カッタヘッド2を切羽(掘削面)Fに押し当てて回転させることにより地山を掘削する際に、カッタヘッド2の背面のスキンプレート3内に設けられたカッタチャンバ(第1のチャンバ)4に送泥管5を通じて泥水を供給し、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fの安定を図るとともに、カッタチャンバ4内に溜められた泥水をカッタチャンバ4内に取り込まれた掘削土とともに排泥管6によってトンネルの外部に排出しながら地山にトンネルを形成する。なお、カッタチャンバ4に送り込まれる泥水は坑外に設置された泥水プラント7に貯留されており、送泥ポンプ8により圧送される。また、泥水には、泥分にベントナイトや高分子添加剤などが混入されており、これにより切羽Fに膜(泥膜)を形成して前方の地山の隙間に泥水が流れ込むことを防いでいる。
【0027】
泥水式のシールド掘進機1は泥水の浸透による切羽Fの安定効果があるため、水圧の高い地盤での施工に適している。一方、透水性の高い地盤、巨石地盤では、地盤からの泥水の流入量が大きくなる逸泥が発生するおそれがあることから、泥水中の泥分や高分子添加剤を多くするとともに泥水の供給量を増やし、泥膜を補強してカッタチャンバ内の圧力を安定させるようにする。
【0028】
シールド掘進機1を構成するカッタヘッド2は、地山の切羽Fを掘削する正面視円形状の掘削部材であり、スキンプレート3の前面にスキンプレート3の周方向に沿って正逆方向に回転自在の状態で設置されている。
【0029】
本実施の形態において、カッタヘッド2には面板タイプが採用されており、前面(切羽Fに対向する面)には、玉石等の破砕や地山の掘削を行う複数のビットやスクレーパツース(何れも図示せず)が装着されている。また、カッタヘッド2には、当該カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等をカッタチャンバ4内に取り込むための土砂取込口(図示せず)が形成されている。
【0030】
カッタヘッド2の後方に位置するスキンプレート3は、例えば径方向の断面が円筒状になった鋼製板により形成されている。このスキンプレート3の前面(カッタヘッド2が設置された位置)から内方に後退した位置には、当該スキンプレート3内を切羽側と機内側とに区画する隔壁9が設置されている。そして、スキンプレート3の切羽側すなわちカッタヘッド2と隔壁9との間に、カッタチャンバ4が設けられている。
【0031】
カッタチャンバ4は、カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等を取り込み、送泥管5を通じて供給された泥水と混合する空間(チャンバ)であり、前述のように、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fを押さえて安定化させる。
【0032】
一方、スキンプレート3の機内には、カッタヘッド2を正逆方向に回転させるカッタ駆動部、前後に分割されて屈曲可能となったスキンプレート3(前胴プレート・後胴プレート)を相互に連結するとともにシールド掘進機1の推進方向を修正する中折れジャッキ、スキンプレート3の後方に敷設されたセグメントに反力をとってシールド掘進機1を前進させるシールドジャッキ、スキンプレート3の後端付近において複数のピースを環状に組み立ててトンネルの内周にセグメントを構築するエレクタなどが設置されている。
【0033】
さらに、スキンプレート3の機内から坑外に延びるようにして、前述の送泥管5と排泥管6とが設置されている。
【0034】
送泥管5は、カッタチャンバ4内に泥水を供給する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。送泥管5の先端部(放泥口)は、隔壁9の正面内上部を貫通してカッタチャンバ4に達している。これにより、送泥管5を通じて圧送された泥水は、シールド掘進機1の正面内上部からカッタチャンバ4内に供給される。この送泥管5はトンネルの抗口に向かって延び、途中に配置された前述の送泥ポンプ8を介してトンネルの外部の泥水プラント7に接続されている。なお、泥水プラント7は、トンネルの外部の泥水処理装置(図示せず)に接続されている。
【0035】
排泥管6は、カッタチャンバ4内の排泥水(掘削土と泥水との混合泥水)をトンネルの外部に排出する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。排泥管6の先端部(吸泥口)は、隔壁9の正面内下部を貫通してカッタチャンバ4に達している。これにより、カッタチャンバ4内の排泥水は、シールド掘進機1の正面内下部から排出される。排泥管6はトンネルの抗口に向かって延び、途中に配置された排泥ポンプ10を介してトンネルの外部の泥水処理装置に接続されている。
【0036】
すなわち、カッタチャンバ4内の排泥水は、排泥管6を通じてトンネルの外部の泥水処理装置に送られ、そこで土砂と泥水とに分離され比重や粘性等が調整された後、泥水プラント7に送られて再び送泥管5を通じてカッタチャンバ4へ送られる。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態のシールド掘進機1には、カッタチャンバ4の後方に補助チャンバ(第2のチャンバ)11が設置されている。補助チャンバ11は調圧配管13によりカッタチャンバ4と連通しており、カッタチャンバ4との間を泥水が往来するようになった小型の圧力容器である。
【0038】
なお、補助チャンバ11内には、図4に示すハイドパルス式のレベルチェッカ22が設置されている。レベルチェッカ22は、補助チャンバ11内の水位の増減を計測することにより、補助チャンバ11とカッタチャンバ4との間を往来する泥水の流向(泥水がどちらの方向に流れているか)を検知するためのものである。
【0039】
補助チャンバ11は調圧配管13でカッタチャンバ4と連結されているために、チャンバ内の下層は泥水層(貯留泥水)となっている。本実施の形態において、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置は、カッタチャンバ4の中央よりも上部の位置となっている。これは、補助チャンバ11の役目は圧力の調整であるから、泥水の濃度は機能に影響しないため、チャンバ内の泥水の濃度が薄いことが望ましいからである。すなわち、カッタチャンバ4内の泥水は底部付近が濃く、上部になるにつれて薄くなっているため、調圧配管13をカッタチャンバ4の底部付近に接続すると、濃度が高い泥水、つまり土砂を多く含んだ泥水が補助チャンバ11に流入しやすくなるため、濃度の薄い泥水を取り込む必要から、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置を前述のようにしたものである。但し、泥水濃度の条件などによっては、調圧配管13のカッタチャンバ4の接続位置は、カッタチャンバ4の中央よりも下部となっていてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では、調圧配管13は補助チャンバ11の底部を含む位置に接続されている。これは、調圧配管13が確実に補助チャンバ11内の泥水層に面するようにするためである。但し、必ずしもこのような接続形態になってなくてもよい。
【0041】
また、図示するように、コンプレッサ(圧縮空気供給手段の構成要素)16から圧縮空気の供給を受けるレシーバタンク(圧縮空気供給手段の構成要素)14が設置され、このレシーバタンク14は空圧配管15を介して補助チャンバ11と常時接続されている。よって、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されており、当該チャンバ内の上部は圧縮空気層となっている。さらに、補助チャンバ11の上面には、チャンバ内の空圧を設定値に保持するリリーフ弁(圧力制御弁)17が取り付けられている。本実施の形態では、コンプレッサ16で生成される圧縮空気は0.75MPa(MAX)であり、コンプレッサ16とレシーバタンク14との間に設置された図示しない調圧バルブにより0.31~0.35MPa程度に減圧されてレシーバタンク14内に送り込まれる。減圧された圧縮空気はレシーバタンク14から補助チャンバ11内に送り込まれ、補助チャンバ11の内部が0.3MPaになるようにリリーフ弁17で制御されるようになっている。なお、リリーフ弁17の開度は、制御のし易さの見地から10%程度にするのが望ましい。
【0042】
また、レシーバタンク14内の圧力が0.31MPaより低くなるとコンプレッサ16が稼働し、0.35MPaより高くなると停止する。そして、レシーバタンク16からは常に補助チャンバ11に圧縮空気が供給されている。その上で、補助チャンバ11のリリーフ弁17から常に空気を排出し続けることで、安定した気圧を保つことができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、補助チャンバ11の容量5.0mに対し、レシーバタンク14の容量2.26mとなっている。なお、コンプレッサ16は最大出力で使用するものとし、出力の大きいものが望ましい。
【0044】
そして、このようにして補助チャンバ11の内部圧力が一定に保たれているため、カッタチャンバ4の圧力の変化に応じて調圧配管13から泥水が流入して泥水層の水面高さが変化しても、上層の圧縮空気が空気圧ダンパとして切羽圧の変化を吸収することで、カッタヘッド2の切羽Fに対する圧力を一定に保つことができることになる。
【0045】
なお、レシーバタンク14はコンプレッサ16と常時接続されているが、レシーバタンク14内の圧縮空気の圧力が一定値を超えるとコンプレッサ16が停止し、レシーバタンク14内の圧力が所定以上に上昇することが防止されている。
【0046】
ここで、本実施の形態において、空圧配管15は1本だけになっている。しかしながら、空圧配管15を複数本設けておき、通常は1本の空圧配管15だけでレシーバタンク14から補助チャンバ11内に圧縮空気を供給するようにしておき、補助チャンバ11内の圧力が急激に低下した場合には他の空圧配管15も使用して同時に多量の圧縮空気を補助チャンバ11内に供給するようにして、当該補助チャンバ11内の圧力を速やか所定のレベルに戻すようにしてもよい。また、空圧配管15を複数本設けておけば、一方の空圧配管15に不具合があった場合でもすぐに対応が可能になる。
【0047】
なお、レシーバタンク14とコンプレッサ16とで構成される圧縮空気供給手段は、シールド掘進機1の前進に追随して前進する後続台車に搭載されている。
【0048】
さらに、補助チャンバ11には送泥管5から分岐した供給配管12が接続されており、送泥管5を流れる泥水は、補助チャンバ11にも流入可能になっている。また、補助チャンバ11の底面から延びるようにして、排出配管18が排泥管6に接続されている。さらに、送泥管5と排泥管6とは、バイパス配管19により直接(つまり、カッタチャンバ4を介することなく)接続されている。
【0049】
ここで、補助チャンバ11から延びる排出配管18を排泥管6に接続したのは、排泥管6内の流水の圧力で補助チャンバ11内に溜まった砂分を排出配管18を介して吸引することができるからである。なお、補助チャンバ11内の土砂を効率的に排出するためには、排出配管18は補助チャンバ11の底面から延びるように接続されているのがよい。
【0050】
また、図示するように、排出配管18の排泥管6との合流接続点Pmは、前述した排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向上流側となっている。これは、合流接続点Pmを排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向下流側にすると、排泥管6内の圧力が大きい場合に、補助チャンバ11内に対する吸引力が強すぎて補助チャンバ11内の水位が下がりすぎることが考えられるからである。但し、補助チャンバ11内の土砂の沈下量が多い場合は、合流接続点Pmを排泥ポンプ10よりも泥水の流動方向下流側にしてもよく、さらに、合流接続点Pmの上流側および下流側に排泥ポンプ10を接続して、状況に応じて選択的に稼働させるようにしてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態において、補助チャンバ11の底面にはドレイン管21を介して排泥タンク20が接続されている。そして、補助チャンバ11内の泥水が土砂を多く含んだ場合には、ドレイン管21に設けられた第7のバルブV7を開いて補助チャンバ11内の土砂を排泥タンク20に排出するようになっている。したがって、補助チャンバ11内の泥水をドレイン管21から排出しても、泥水でトンネル内が汚染されることがない。なお、排泥タンク20内の泥水は、図示しないバキューム掃除機で負圧吸引して機外に排出される。
【0052】
このように、本実施の形態のシールド掘進機1では、補助チャンバ11からの泥水の排出経路として、排出配管18から排泥管6に排出する第1の経路、およびドレイン管21から排泥タンク20に排出する第2の経路の2経路が設けられている。これは、補助チャンバ11内の泥水を排出する必要が生じたにもかかわらず、排泥管6内の水圧が高いために第1の経路での排出ができなくなったときを想定したものである。但し、第1の経路による泥水の排出が可能な状態であっても、第2の経路で、あるいは第1の経路と第2の経路とを併用して排出してもよい。さらに、第1の経路および第2の経路の何れか一方の経路だけが設けられていてもよい。
【0053】
図1図3に示すように、送泥管5におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb1よりもカッタチャンバ4側には第1のバルブV1が、排泥管6におけるバイパス配管19との分岐接続点Pb2よりもカッタチャンバ4側には第2のバルブV2が取り付けられている。また、バイパス配管19には第3のバルブV3が、供給配管12には第4のバルブV4が、排出配管18には第5のバルブV5が、調圧配管13には第6のバルブV6が取り付けられている。さらに、前述のように、補助チャンバ11と排泥タンク20とを連結するドレイン管21には第7のバルブV7が取り付けられている。
【0054】
これら第1のバルブV1~第7のバルブV7は何れもそれぞれの管路を開閉するためのものであり、本実施の形態においては、シールド掘進機1の作業状態(地山掘削作業中・地山掘削作業停止中)を示すデータ、カッタチャンバ4内の泥水の圧力計および濃度計による計測値、補助チャンバ11内のレベルチェッカ(後述する)および電極センサS(図4)および圧力計による計測値などが収集され、これらに基づいて図示しない制御部(制御手段)に制御されるモータなどのアクチュエータによって自動的に開閉操作されるようになっている。
【0055】
但し、制御部を設けることなく、オペレータがアクチュエータを介して第1のバルブV1~第7のバルブV7を開閉操作するようにしてもよい。
【0056】
なお、排出配管18に取り付けられた第5のバルブV5の排泥管6側には、逆止弁(第8のバルブ)V8が設置されている。これは、排泥管6内の水圧の方が排出配管18内の水圧よりも高くなっている場合に、泥水が排泥管6から排出配管18を通って補助チャンバ11内に逆流する事態を阻止するためである。
【0057】
図4に示すように、補助チャンバ11内には、電極センサ(水位検知手段)Sが補助チャンバ11の側壁において上下方向の7箇所(電極センサS1~S7)に設置されている。なお、ここでは、最上部の電極センサを符号S1とし、そこから下方に向かって符号S2,S3,S4,S5,S6,S7の電極センサとする。
【0058】
さて、この電極センサSは、絶縁体を介して離間されて先端が補助チャンバ11の内部に面している2本の電極を備えており、これらの電極間の通電の有無を検知することで、当該センサSにまで泥水が存在しているか否か(通電すれば泥水が存在している)が検知される。そして、前述のように、電極センサSは補助チャンバ11の側壁において上下方向の7箇所に設置されているので、どの電極センサSまでが通電しているかによって補助チャンバ11内の水位を検知することができる。
【0059】
図4においては、水位(H)を測定するためのそれぞれの電極センサS1~S7の位置が補助チャンバ11内のレベルL1~レベルL7に対応している。たとえば、電極センサS3~S7が通電していれば、補助チャンバ11内の水位は電極センサS3の位置に対応したレベルL3となる。なお、複数の電極センサ(電極センサS1~S7)の間隔は均等ではなくてもよい。
【0060】
ここで、図5に示す補助チャンバ11内の水位に対応したレベルL1~レベルL7の内容について、第1のバルブV1~第6のバルブV6の開閉による図2および図3に示す泥水の流れに関連して説明する。なお、第7のバルブV7は補助チャンバ11からの泥水の排出のために開閉されるものであって第5のバルブV5と同様の機能を有するものであるが、説明の煩雑化を回避するために、第7のバルブV7についての動作説明は簡略化する。
【0061】
すなわち、補助チャンバ11からの排泥停止では、第5のバルブV5および第7のバルブV7が何れも閉鎖されるのに対して、補助チャンバ11からの排泥では、第5のバルブV5および第7のバルブV7の何れか一方、あるいは両方を開放して行われる。よって、補助チャンバ11から排泥しないときには、第5のバルブV5も第7のバルブV7も閉鎖位置になっているが、補助チャンバ11から排泥するときには、第5のバルブV5が開放位置で第7のバルブV7が閉鎖位置、第5のバルブV5が閉鎖位置で第7のバルブV7が開放位置、第5のバルブV5も第7のバルブV7も開放位置の3パターンがある。
【0062】
しがたって、排出配管18の第5のバルブV5、およびドレイン管21の第7のバルブV7の何れか一方あるいは両方を備えている場合、後述する図5およびその説明において、第5のバルブV5が閉鎖位置(CL(Close))であるとは第7のバルブV7も閉鎖位置であることを意味し、第5のバルブV5が開放位置(OP(Open))であるとは第5のバルブV5および第7のバルブV7の何れか一方あるいは両方ともが開放位置であることを意味する。
【0063】
図2および図3において、泥水の流れる管路は太い実線で、泥水が流れたり流れなかったりする管路は太い破線で、それぞれ示している。また、図2は、泥水がカッタチャンバ4を通って(つまり、バイパス配管19を通らずに)環流するカッタチャンバ環流モードであり、図3は、泥水がバイパス配管19を通って(つまり、カッタチャンバ4を通らずに)環流するバイパス環流モードを示している。
【0064】
但し、同じパイパス環流モードであっても、後述するレベルL1やレベルL7の掘進停止水位の場合には、第6のバルブV6が閉鎖位置となり(つまり、調圧配管13が閉鎖され)、後述するセグメントを組み立てる場合のような地山掘削停止時の場合には、第6のバルブV6が開放位置となる。そして、図3は後者の場合のバイパス環流モードを示している。したがって、以下において、レベルL1やレベルL7を説明するときには、図3の第6のバルブV6は閉鎖位置となって調圧配管13は閉鎖されているものとする。
【0065】
なお、図2に示すカッタチャンバ環流モードでは、送泥管5を通じて泥水プラント7に貯留されている泥水を送泥ポンプ8によりカッタチャンバ4内に供給し、カッタチャンバ4内の泥水圧力を切羽Fの土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽Fの安定を図るとともに、カッタチャンバ4内に溜められた泥水をカッタチャンバ4内に取り込まれた掘削土とともに排泥管6によってトンネルの外部の泥水プラント7を介して環流させながら地山にトンネルを形成する。また、カッタチャンバ4内の泥水圧力の変動に応じて、調圧配管13を介してカッタチャンバ4と補助チャンバ11との間で泥水が往来して、カッタチャンバ4内の圧力変動が緩和される。
【0066】
さて、図5において、レベルL1は、掘進停止水位(異常高位)のレベルであり、泥水がバイパス配管19を通って環流するバイパス環流モード(図3)にしてレベルL3まで泥水を排出して掘進を開始する動作内容である。なお、レベルL1はバイパス環流モードであるために、レベルL1を脱出するまで掘進は停止(緊急停止)される。このレベルL1では、第1のバルブV1が閉鎖位置、第2のバルブV2が閉鎖位置、第3のバルブV3が開放位置となってバイパス環流モードとなり、これに加えて第6のバルブV6が閉鎖位置となって掘進停止水位にある補助チャンバ11内の泥水をレベルL3まで排出するために、第4のバルブV4が閉鎖位置、第5のバルブV3が開放位置となる。つまり、レベルL1では、第2のバルブV2および第5のバルブV5のみが開放位置となる。
【0067】
ここで、前述のように、レシーバタンク14は空圧配管15を介して補助チャンバ11と常時接続されており、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されている。また、緊急停止状態のために、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は閉鎖位置となっている。すると、補助チャンバ11内の泥水がレベルL3になるまでの間、補助チャンバ11内の空圧は、リリーフ弁17に制御されて常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持されることになる。よって、泥水がレベルL3になるまで補助チャンバ11内への圧縮空気の供給を遮断しておき、レベルL3になったならば圧縮空気を供給する場合と異なり、補助チャンバ11内の泥水がレベルL3になったならば、直ちに装置を立ち上げてシールド掘進機1による掘進を開始することができる。
【0068】
次に、レベルL2は、上限水位のレベルであり、泥水がカッタチャンバ4を通って環流するカッタチャンバ環流モード(図2)にしてレベルL3まで泥水を排出して掘進を実行する動作内容である。このレベルL2では、第1のバルブV1が開放位置、第2のバルブV2が開放位置、第3のバルブV3が閉鎖位置、第6のバルブV6が開放位置となってカッタチャンバ環流モードとなり、上限水位にある補助チャンバ11内の泥水をレベルL3まで排出するために、第4のバルブV4が閉鎖位置、第5のバルブV3が開放位置となる。つまり、レベルL2では、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第5のバルブV5および第6のバルブVのみが開放位置となる。
【0069】
ここで、レベルL2においても、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されている。補助チャンバ11内の泥水がレベルL3になるまでの間、補助チャンバ11内の空圧は、リリーフ弁17に制御されて常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持されることになる。また、カッタチャンバ環流モードのために、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は開放位置となっている。したがって、補助チャンバ11内の泥水圧が調圧配管13を介してカッタチャンバ4内の泥水に継続的に作用するようになることから、切羽Fの土圧および地下水圧に対抗するカッタチャンバ4内の泥水圧力が低下することがなくなり、確実に切羽Fの安定化を図ることが可能になる。
【0070】
次に、レベルL3は、基準水位(上端)のレベルであり、カッタチャンバ環流モード(図2)にしておいて、補助チャンバ11への給排泥(供給配管12からの給泥、排出配管18からの排泥)は行わずに掘進を実行する動作内容である。このレベルL3では、第1のバルブV1が開放位置、第2のバルブV2が開放位置、第3のバルブV3が閉鎖位置、第6のバルブV6が開放位置となってカッタチャンバ環流モードとなり、基準水位にある補助チャンバ11内の泥水の給排泥は行わないために、第4のバルブV4が閉鎖位置、第5のバルブV3も閉鎖位置となる。つまり、レベルL3では、第1のバルブV1、第2のバルブV2および第6のバルブVのみが開放位置となる。
【0071】
ここで、レベルL3においても、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されている。補助チャンバ11内の空圧は、リリーフ弁17に制御されて常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持されることになる。また、同様に、カッタチャンバ環流モードのために、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は開放位置となっている。したがって、前述のように、補助チャンバ11内の泥水圧が調圧配管13を介してカッタチャンバ4内の泥水に継続的に作用するようになることから、切羽Fの土圧および地下水圧に対抗するカッタチャンバ4内の泥水圧力が低下することがなくなり、確実に切羽Fの安定化を図ることが可能になる。
【0072】
次に、レベルL4は基準水位のレベル、レベルL5は基準水位(下端)のレベルであり、動作内容はレベルL3と同じである。つまり、レベルL3の場合と同様に、第1のバルブV1が開放位置、第2のバルブV2が開放位置、第3のバルブV3が閉鎖位置、第6のバルブV6が開放位置となってカッタチャンバ環流モードとなり、基準水位にある補助チャンバ11内の泥水の給排泥は行わないために、第4のバルブV4が閉鎖位置、第5のバルブV3も閉鎖位置となる。つまり、レベルL4およびレベルL5でも、第1のバルブV1、第2のバルブV2および第6のバルブVのみが開放位置となる。
【0073】
したがって、レベルL4およびレベルL5においても、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されて、補助チャンバ11内の空圧は常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持される。また、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は開放位置となっている。したがって、補助チャンバ11内の泥水圧が調圧配管13を介してカッタチャンバ4内の泥水に継続的に作用するようになることから、切羽Fの土圧および地下水圧に対抗するカッタチャンバ4内の泥水圧力が低下することがなくなり、確実に切羽Fの安定化を図ることが可能になる。
【0074】
次に、レベルL6は、下限水位のレベルであり、カッタチャンバ環流モード(図2)にしてレベルL5まで泥水を供給して掘進を実行する動作内容である。このレベルL6では、第1のバルブV1が開放位置、第2のバルブV2が開放位置、第3のバルブV3が閉鎖位置、第6のバルブV6が開放位置となってカッタチャンバ環流モードとなり、下限水位にある補助チャンバ11内の泥水をレベルL3まで供給するために、第4のバルブV4が開放位置、第5のバルブV3が閉鎖位置となる。つまり、レベルL6では、第1のバルブV1、第2のバルブV2、第4のバルブV4および第6のバルブVのみが開放位置となっている。
【0075】
ここで、レベルL6においても、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されて、補助チャンバ11内の泥水がレベルL3になるまでの間、補助チャンバ11内の空圧は常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持される。また、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は開放位置となっている。したがって、補助チャンバ11内の泥水圧が調圧配管13を介してカッタチャンバ4内の泥水に継続的に作用するようになることから、切羽Fの土圧および地下水圧に対抗するカッタチャンバ4内の泥水圧力が低下することがなくなり、確実に切羽Fの安定化を図ることが可能になる。
【0076】
そして、レベルL7は、掘進停止水位(異常高位)のレベルであり、バイパス環流モード(図3)にしてレベルL5まで泥水を供給して掘進を開始する動作内容である。なお、レベルL7もバイパス環流モードであるために、レベルL7を脱出するまで掘進は停止(緊急停止)される。このレベルL7では、第1のバルブV1が閉鎖位置、第2のバルブV2が閉鎖位置、第3のバルブV3が開放位置となってバイパス環流モードとなり、これに加えて第6のバルブV6が閉鎖位置となって掘進停止水位にある補助チャンバ11内の泥水をレベルL5まで供給するために、第4のバルブV4が開放位置、第5のバルブV3が閉鎖位置となる。つまり、レベルL7では、第3のバルブV3および第4のバルブV4のみが開放位置となっている。
【0077】
ここで、レベルL7においても、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されており、バイパス環流モードのために、調圧配管13に設けられた第6のバルブV6は閉鎖位置となっている。よって、補助チャンバ11内の泥水がレベルL5になるまでの間、補助チャンバ11内の空圧は、リリーフ弁17に制御されて常に設定圧(ここでは、0.3MPa)に維持されることになる。よって、泥水がレベルL5になるまで補助チャンバ11内への圧縮空気の供給を遮断しておき、レベルL5になったならば圧縮空気を供給する場合と異なり、補助チャンバ11内の泥水がレベルL5になったならば、直ちに装置を立ち上げてシールド掘進機1による掘進を開始することができる。
【0078】
なお、セグメントを組み立てる場合のような地山掘削停止時には、カッタヘッド2による掘削が停止されてカッタチャンバ4内の泥水圧力で切羽Fを押さえる必要がないことから、図3に示すように、第6のバルブV6は開放位置にしたままで第1のバルブV1および第2のバルブV2を閉鎖して第3のバルブV3を開放する(バイパス環流モード)。これにより、泥水はカッタチャンバ4内には供給されることがなく、送泥管5からバイパス配管19を経由して排泥管6に流れ込み、トンネルの外部で掘削土砂が除去された後、泥水プラント7を介して送泥ポンプ8により環流される。
【0079】
このように、本実施の形態によれば、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されているので、カッタチャンバ環流モード下において調圧配管13に設けられた第6のバルブV6が開放位置となって補助チャンバ11に給排泥が行われている間も補助チャンバ11内の空圧は常に設定圧に維持されることになる。これにより、補助チャンバ11内の泥水圧が調圧配管13を介してカッタチャンバ4内の泥水に継続的に作用するようになる。よって、カッタチャンバ4が補助チャンバ11内の水位変動の影響を受けることがなくなり、当該カッタチャンバ4内の泥水圧力変動を確実に緩和することが可能になる。したがって、切羽Fの土圧および地下水圧に対抗するカッタチャンバ4内の泥水圧力が低下することがなくなるので、確実に切羽Fの安定化を図ることが可能になる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、補助チャンバ11内にはレシーバタンク14から圧縮空気が常に供給されているので、バイパス環流モード下に加えて、緊急停止時や作業終了後に調圧配管13に設けられた第6のバルブV6が閉鎖位置となって補助チャンバ11に給排泥が行われている間も補助チャンバ11内の空圧は常に設定圧に維持されることになる。よって、補助チャンバ11内の泥水が基準水位(レベルL3~レベルL5)を逸脱して掘進が停止した際、基準水位になったときに速やかに掘進を再開させることが可能になる。
【0081】
本実施の形態では、電極センサS1~S7により水位をレベルLl~レベルL7の7段階で検知することとしているが、これ以上あるいはこれ以下としてもよい。すなわち、少なくとも電極センサSを3台設けて、上限水位、基準水位および下限水位の3種類の水位を検知できるようにしてもよい。本実施の形態に示すように、基準水位には、レベルL3:基準水位(上端)、レベルL4:基準水位およびレベルL5:基準水位(下端)を設けて基準水位となる水位幅を広くしているように、単一の基準水位とする場合には、同様に水位幅を広くするのが望ましい。
【0082】
また、例えば、逸泥が極端に大きい地層を掘削する場合には、9段階として補助チャンバ11内の水位がレベルL8まで下がったら緊急停止のための作業を開始するようにしてもよい。特に、補助チャンバ11の形状が上下に細長く、容量が小さい場合に、水位を多段階で検知することが有効である。
【0083】
なお、本実施の形態において、カッタチャンバ4内の逸泥状態での泥水の濃度の調整については次にようにしている。すなわち、逸泥状態かどうかは逸泥量の算定結果から判断しており、補助チャンバ11の水位変動時以外でも行われる。具体的には、1日の逸泥量(=(送泥量+掘削土量)-排泥量)が全体量の10%以上のときを逸泥状態としている。泥水濃度は比重で管理しており、標準が1.2として、逸泥状態の場合は1.25まで上げるようにしている。また、泥水の比重は最大で1.3程度とし、逸泥量が大きくない場合は標準を1.22とするなど小刻みに調整している。
【0084】
また、1日の逸泥量が全体量の1%以下になったら逸泥が収まったと判断し、泥水の濃度を1.2まで戻す可能性を検討する。ここで、泥水の濃度を1.2まで戻さない余地を残したのは、泥水の濃度を変更する場合には、地上の振動ふるいやシックナーバックフィルタなどについて変更するなど大掛かりな調整が必要なためであり、泥水の濃度を上げた状態で掘削することに問題がない場合は、そのまま続けることが望ましいからである。
【0085】
また、逸水とは逆に、切羽Fの水圧が高くなり、地下水がカッタチャンバ4に流入して水位が上昇する場合がある。本実施の形態において、このときの許容値はプラスマイナス3%としており、水位の上昇が3%以上の状態が丸1日続いた場合には、カッタチャンバ4の泥土圧を漸増させて切羽Fとのバランスを取る。カッタチャンバ4内の泥土圧は図示しない土圧計により管理値(地盤の主働土圧と受働土圧の間)の範囲内で調整し、許容値内に戻ったら泥土圧を戻す。なお、この間は、補助チャンバ11内の空気圧も泥土圧に合わせて標準値よりも高くなるように調整する。
【0086】
なお、補助チャンバ11内の泥水が例えばレベルL6まで下がった場合、泥水濃度を濃くしたうえで補助チャンバ11に泥水を供給するが、それでも補助チャンバ11の水位がレベルL6とレベルL5を往復する状態が数日(たとえば、2、3日)続く場合には、管理者が基準水位(下端)をレベルL4、下限水位をレベルL5、掘進停止水位(異常低位)をレベルL6に変更し、補助チャンバ11内の水位を高くして逸水傾向に備えるといった措置を取ることができる。
【0087】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0088】
たとえば、水位検知手段は、本実施の形態のように泥水による通電の有無で水位を検知する電極センサSに限定されるものではなく、補助チャンバ11内の水位を検知する機能を備えた様々なものを適用することができる。したがって、設置箇所は補助チャンバ11の側壁ではなく、内部であってもよい。
【0089】
また、補助チャンバ11やレシーバタンク14やコンプレッサ16における設定圧力は一例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上の説明では、本発明を泥水式のシールド掘進機に適用した場合について説明したが、カッタヘッドの形状や構造等、本発明にかかわらない点については、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0091】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 スキンプレート
4 カッタチャンバ(第1のチャンバ)
5 送泥管
6 排泥管
7 泥水プラント
8 送泥ポンプ
9 隔壁
10 排泥ポンプ
11 補助チャンバ(第2のチャンバ)
12 供給配管
13 調圧配管
14 レシーバタンク(圧縮空気供給手段)
15 空圧配管
16 コンプレッサ(圧縮空気供給手段)
17 リリーフ弁(圧力制御弁)
18 排出配管
19 バイパス配管
20 排泥タンク
21 ドレイン管
F 切羽
H 補助チャンバ内の水位
Pb1,Pb2 分岐接続点
Pm 合流接続点
S、S1~S7 電極センサ(水位検知手段)
L1~L7 補助チャンバ内の水位についてのレベル
V1~V7 第1のバルブ~第7のバルブ
V8 逆止弁(第8のバルブ)
図1
図2
図3
図4
図5