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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】フォトマスクの検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20240307BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240307BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240307BHJP
【FI】
G03F1/84
G01N21/956 A
G06T7/00 610
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020086358
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021179584
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
【審査官】大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-249037(JP,A)
【文献】特開平04-069777(JP,A)
【文献】特開平05-060534(JP,A)
【文献】特開2007-255959(JP,A)
【文献】特開2011-191296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G01N 21/84-21/958
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの画像データを記憶する記憶部と、
フォトマスクの画像データから検査画像データを作成する検査画像データ作成部と、
検査画像データに係る検査画像を表示可能とする画像表示部とを備え、
検査画像データ作成部は、
フォトマスクの画像データをマトリクス状に分割する画像データ分割部と、
各分割画像データから、各分割画像に含まれるパターンの1つのエッジラインに対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む単位検査画像データを作成する単位検査画像データ作成部と、
各単位検査画像データを統合して検査画像データを作成する単位検査画像データ統合部とを備える
フォトマスクの検査装置。
【請求項2】
単位検査画像データ作成部は、分割画像データから作成される第1中間データ、第1中間データにおけるパターンのエッジラインを第1オフセット量でパターンの外側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データを含む第2中間データ、及び、第1中間データにおけるパターンのエッジラインを第2オフセット量でパターンの内側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データを含む第3中間データ、の少なくとも2つの中間データを合成処理して単位検査画像データを作成する
請求項1に記載のフォトマスクの検査装置。
【請求項3】
単位検査画像データ作成部は、第1中間データ、第2中間データ及び第3中間データの3つの中間データを合成処理して単位検査画像データを作成する
請求項2に記載のフォトマスクの検査装置。
【請求項4】
第2オフセット量は、対象となるパターンの設計上の線幅の1/2より小さい量である
請求項2又は請求項3に記載のフォトマスクの検査装置。
【請求項5】
第2オフセット量は、対象となるパターンの設計上の線幅の1/2以上の量である
請求項2又は請求項3に記載のフォトマスクの検査装置。
【請求項6】
フォトマスクの画像データをマトリクス状に分割し、各分割画像データから、各分割画像に含まれるパターンの1つのエッジラインに対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む単位検査画像データを作成し、各単位検査画像データを統合して作成される検査画像データを用意し、
検査画像データに係る検査画像を表示し、パターンのエッジ部における誤差の有無を検査する
フォトマスクの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクは、i)表面に遮光膜が形成されたガラス基板等の透明基板(フォトマスクブランクス)を用意する工程、ii)フォトマスクブランクスの表面にレジストを均一に塗布する工程、iii)描画装置の電子ビーム又はレーザを用いてフォトマスクブランクスの表面に所定のパターンを描画する工程、iv)電子ビーム又はレーザによって露光されたレジストを除去する工程(ポジ型のレジストでなく、ネガ型のレジストであれば、露光されなかったレジストを除去する工程)、v)レジストが除去されて遮光膜が露出した部分をエッチングして除去する工程、vi)遮光膜を覆っているレジストを除去する工程、を経て製造される。これにより、フォトマスクは、遮光膜が残存する部分である所定のパターンの遮光部と、透明基板が露出する部分である透過部とを備える。
【0003】
これらの工程における諸々の原因により、パターンのエッジ部(遮光部のエッジ部)には、歪み、ムラ等の誤差が生じることがある。もちろん、この誤差が存在するフォトマスクを用いて製造したフラットパネルディスプレイ(FPD:flat panel display)にも、同様の表示誤差が生じることがある。FPDは、人間の視覚に訴えるため、誤差の存在は、FPDの品位を損なうことになる。近年は、高集積化技術の発達により回路パターンが微細化し、これに伴い、フォトマスクのパターンについても、高精度化の要求が高まっている。
【0004】
そこで、従来より、フォトマスクに許容できない誤差が存在するか否かの検査が行われている。フォトマスクの検査装置には、主に、ダイ・ツー・データベース(Die To Database)方式と、ダイ・ツー・ダイ(Die To Die)方式とがある。ダイ・ツー・データベース方式は、フォトマスクの画像データとフォトマスクの描画データとを比較して誤差の有無を検査する方法である。ダイ・ツー・ダイ方式は、フォトマスクの異なる位置にある同じパターンの画像データを比較して誤差の有無を検査する方法である。
【0005】
また、これらの方法の代わりに、あるいはこれらの方法に加え、フォトマスクの画像を拡大表示し、誤差の有無を目視で検査する方法がある。目視検査の場合、表示倍率が小さいと、検査時間は短くなるが、誤差の見落としが生じやすいという問題がある。このため、目視検査は、ある程度大きな表示倍率で拡大表示して行う必要がある。しかし、表示倍率が大きくなるほど、スループットが低下し、検査時間が長くなるという問題がある(たとえば、表示倍率が2倍によれば、スループットは1/4となる。)。特に、経験値や習熟度が低い検査者の場合、検査時間が長くなる傾向にある。
【0006】
なお、特許文献1は、ダイ・ツー・ダイ方式を用い、一方の画像データに誤差(線幅欠陥)が存在する場合、一方の画像データと他方の画像データとで隣接する複数の画素の輝度が変化することを利用し、輪郭画素の輝度データの和を比較することによって、誤差を検出する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-255959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、フォトマスクのパターンのエッジ部における誤差の有無を検査するにあたり、スループットを向上して検査時間を短くすることができ、かつ、検査精度を向上することができるフォトマスクの検査装置及び検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフォトマスクの検査装置は、
フォトマスクの画像データを記憶する記憶部と、
フォトマスクの画像データから検査画像データを作成する検査画像データ作成部と、
検査画像データに係る検査画像を表示可能とする画像表示部とを備え、
検査画像データ作成部は、
フォトマスクの画像データをマトリクス状に分割する画像データ分割部と、
各分割画像データから、各分割画像に含まれるパターンの1つのエッジラインに対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む単位検査画像データを作成する単位検査画像データ作成部と、
各単位検査画像データを統合して検査画像データを作成する単位検査画像データ統合部とを備える
フォトマスクの検査装置である。
【0010】
また、本発明に係るフォトマスクの検査方法は、
フォトマスクの画像データをマトリクス状に分割し、各分割画像データから、各分割画像に含まれるパターンの1つのエッジラインに対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む単位検査画像データを作成し、各単位検査画像データを統合して作成される検査画像データを用意し、
検査画像データに係る検査画像を表示し、パターンのエッジ部における誤差の有無を(目視又は装置で)検査する
フォトマスクの検査方法である。
【0011】
ここで、本発明に係るフォトマスクの検査装置の一態様として、
単位検査画像データ作成部は、分割画像データから作成される第1中間データ、第1中間データにおけるパターンのエッジラインを第1オフセット量でパターンの外側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データを含む第2中間データ、及び、第1中間データにおけるパターンのエッジラインを第2オフセット量でパターンの内側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データを含む第3中間データ、の少なくとも2つの中間データを合成処理して単位検査画像データを作成する
との構成を採用することができる。
【0012】
また、この場合、
単位検査画像データ作成部は、第1中間データ、第2中間データ及び第3中間データの3つの中間データを合成処理して単位検査画像データを作成する
との構成を採用することができる。
【0013】
また、
第2オフセット量は、対象となるパターンの設計上の線幅の1/2より小さい量である
との構成を採用することができる。
【0014】
あるいは、
第2オフセット量は、対象となるパターンの設計上の線幅の1/2以上の量である
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、検査画像においてパターンのエッジラインが少なくとも2本以上のラインに増えることにより、パターンのエッジ部に誤差がある場合、誤差は、強調され、見つけやすくなる。このため、本発明によれば、表示倍率を抑えての検査が可能となり、スループットを向上して検査時間を短くすることができる。また、本発明によれば、誤差が見つけやすくなるため、検査精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るフォトマスクの検査装置の概要図である。
図2図2は、同検査装置のブロック図である。
図3図3(a)は、フォトマスクの第1例に係る描画データの一部拡大図である。図3(b)は、同描画データに基づいて製造されたフォトマスクの画像データの一部拡大図である。図3(c)は、同画像データから作成された検査画像データの一部拡大図である。
図4図4(a)は、フォトマスクの第2例に係る描画データの一部拡大図である。図4(b)は、同描画データに基づいて製造されたフォトマスクの画像データの一部拡大図である。図4(c)は、同画像データから作成された検査画像データの一部拡大図である。
図5図5は、検査画像データ作成工程のフローチャートである。
図6図6(a)及び(b)は、第1例についての、図5のフローチャートのステップ1に関する説明図である。図6(c1)ないし(c3)は、同フローチャートのステップ2に関する説明図である。
図7図7(a1)ないし(a3)は、同フローチャートのステップ3及び4に関する説明図である。図7(b1)ないし(b3)は、同フローチャートのステップ5に関する説明図である。図7(c1)ないし(c3)は、同フローチャートのステップ6に関する説明図である。
図8図8(a1)ないし(a3)は、同フローチャートのステップ7に関する説明図である。図8(b1)ないし(b3)は、同フローチャートのステップ8に関する説明図である。
図9図9(a)及び(b)は、第2例についての、図5のフローチャートのステップ1に関する説明図である。図9(c1)ないし(c3)は、同フローチャートのステップ2に関する説明図である。
図10図10(a1)ないし(a3)は、同フローチャートのステップ3及び4に関する説明図である。図10(b1)ないし(b3)は、同フローチャートのステップ5に関する説明図である。図10(c1)ないし(c3)は、同フローチャートのステップ6に関する説明図である。
図11図11(a1)ないし(a3)は、同フローチャートのステップ7に関する説明図である。図11(b1)ないし(b3)は、同フローチャートのステップ8に関する説明図である。
図12図12(a)ないし(d)は、それぞれ別例に係る検査画像データの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るフォトマスクの検査装置及び検査方法の一実施形態について、図面を参酌して説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、主デバイス10と、撮像デバイス20とを備える。
【0019】
主デバイス10は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成される。主デバイス10は、制御部11と、記憶部13と、I/F(インターフェイス)部14,15と、画像表示部16と、入力部17とを備える。制御部11は、CPUで構成され、演算部12を含む。記憶部13は、画像解析ソフト等の各種ソフトウェアや、フォトマスクMの画像データ、この加工データ及び加工データから作成された検査画像データ等の画像データを含む各種データを記憶する。画像表示部16は、モニタであり、I/F部15を介して制御部11と接続される。入力部17は、キーボード、マウス等であり、I/F部15を介して制御部11と接続される。
【0020】
撮像デバイス20は、制御部21と、ステージ22と、コラム23と、キャリッジ24と、撮像部25と、XY駆動部26とを備える。制御部21は、CPUで構成される。ステージ22上には、検査対象のフォトマスクMが載置される。コラム23は、Y方向に移動可能にしてステージ22に設けられる。キャリッジ24は、X方向に移動可能にしてコラム23に設けられる。撮像部25は、たとえばCCDイメージセンサを備える撮像ユニットである。撮像部25は、光軸を上下方向にしてキャリッジ24に取り付けられる。XY駆動部26は、コラム23及びキャリッジ24を駆動する。これにより、撮像部25は、ステージ22上のフォトマスクMの全域を網羅するようにXY方向に移動し、フォトマスクMをXY方向マトリクス状の単位領域に分割して各単位領域を撮像することにより、フォトマスクM全面を撮像することができる。なお、撮像部25は、単眼レンズにより画像の取り込みができればよいが、マルチレンズ化してもよい。マルチ化することにより、画像データ取り込みを高速化することが可能となる。
【0021】
撮像デバイス20は、記憶部27と、I/F(インターフェイス)部28とを備える。記憶部27は、撮像したフォトマスクMの画像データを含む各種データを記憶する。主デバイス10及び撮像デバイス20は、I/F部14,28を介して接続され、双方向通信される。通信方法としては、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、IrDA、Zigbee(登録商標)、特定小電力無線等の無線通信や、USBケーブル等の通信ケーブルを介する有線通信が用いられる。これにより、記憶部27に記憶されるフォトマスクMの画像データは、主デバイス10に送信され、記憶部13に記憶される。
【0022】
主デバイス10は、検査画像データ作成部を備える。検査画像データ作成部は、フォトマスクの画像データから検査画像データを作成する。本実施形態においては、制御部11が検査画像データ作成部の機能を担う。検査画像データに係る検査画像は、任意に変更可能な表示倍率で画像表示部16に表示される。
【0023】
図3(a)は、フォトマスクの第1例に係る描画データの一部拡大図である。図3(b)は、同描画データに基づいて製造されたフォトマスクの画像データの一部拡大図である。図3(c)は、同画像データから作成された検査画像データの一部拡大図である。図4(a)は、フォトマスクの第2例に係る描画データの一部拡大図である。図4(b)は、同描画データに基づいて製造されたフォトマスクの画像データの一部拡大図である。図4(c)は、同画像データから作成された検査画像データの一部拡大図である。
【0024】
検査画像データは、パターンPの1つのエッジライン(パターン(遮光部)Pの透過部Tとの境界線)に対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む。
【0025】
図3の第1例においては、検査画像データは、一対の第1の図形F1,F1と、第2の図形F2とを含む。第1の図形F1は、パターンPの1つの直線状のエッジラインと、このエッジラインの外側へのオフセットラインとをエッジラインとする図形である。第2の図形F2は、隙間Sを有して第1の図形F1,F1間に配置される。第2の図形F2は、パターンPの各直線状のエッジラインの内側へのオフセットラインをエッジラインとする図形である。したがって、図3の第1例においては、パターンPの1つのエッジラインに対し、当該エッジライン、当該エッジラインの外側へのオフセットライン及び内側へのオフセットラインの3本のラインが用いられる。
【0026】
図4の第2例においては、検査画像データは、第1の図形F1を含み、一部は、第1の図形F1と、第2の図形F2とを含む。第1の図形F1は、パターンPの矩形状のエッジラインと、このエッジラインの外側へのオフセットラインとをエッジラインとする図形である。第2の図形F2は、隙間Sを有して第1の図形F1内に配置される。第2の図形F2は、パターンPの矩形状のエッジラインの内側へのオフセットラインをエッジラインとする図形である。したがって、図4の第2例においては、パターンPのエッジラインに対し、当該エッジライン及び当該エッジラインの外側へのオフセットラインの2本のラインが用いられ、一部では、パターンPのエッジラインに対し、当該エッジライン、当該エッジラインの外側へのオフセットライン及び内側へのオフセットラインの3本のラインが用いられる。
【0027】
これにより、パターンPのエッジ部に誤差E1,E2がある場合、検査画像において、誤差E1,E2は、強調され、見つけやすくなる。具体的には、図3の第1例においては、誤差E1,E2は、ラインが増えること、そして、図形F1と図形F2とが隙間Sを介在して並列することにより、パターンPのエッジラインの非直線性が強調され、見つけやすくなる。図4の第2例においては、誤差E1は、ラインが増えること、そして、図形F2が現出すること、図形F1と図形F2とが隙間Sを介在して並列すること、他のパターンPに係る図形F1との幅の違いが増幅されることにより、パターンPの線幅の違いが強調され、見つけやすくなり、誤差E2は、ラインが増えること、そして、他のパターンPに係る図形F1との幅の違いが増幅されることにより、パターンPの線幅の違いが強調され、見つけやすくなる。このため、表示倍率を抑えての検査が可能となり、スループットを向上して検査時間を短くすることができる。また、誤差が見つけやすくなるため、検査精度を向上することができる。
【0028】
なお、図3(b)の誤差E1及び図4(b)の誤差E1は、描画データよりもパターンPの線幅が太くなる誤差である。図3(b)の誤差E2及び図4(b)の誤差E2は、描画データよりもパターンPの線幅が細くなる誤差である。
【0029】
検査画像データ作成部は、画像データ分割部と、単位検査画像データ作成部と、単位検査画像データ統合部とを備える。画像データ分割部は、フォトマスクの画像データをマトリクス状に分割する。単位検査画像データ作成部は、各分割画像データから、各分割画像に含まれるパターンの1つのエッジラインに対して当該エッジライン又はこのオフセットラインであって少なくとも2本以上のラインが用いられる図形データを含む単位検査画像データを作成する。単位検査画像データ統合部は、各単位検査画像データを統合して検査画像データを作成する。
【0030】
単位検査画像データ作成部は、第1画像処理部と、第2画像処理部と、第3画像処理部と、第4画像処理部と、第5画像処理部とを備える。第1画像処理部は、分割画像データをグレースケール画像データに変換した上で、黒のデータをグレースケールの画素数の半値に変換して中間グレーのデータに変換した第1中間データを作成する。第2画像処理部は、第1中間データをプラスサイジングして第2中間データを作成する。第3画像処理部は、第1中間データをマイナスサイジングして第3中間データを作成する。第4画像処理部は、第1中間データの画素と第2中間データの画素とを加算して第4中間データを作成する。第5画像処理部は、第4中間データの画素から第1中間データの画素を減算して単位検査画像データを作成する。
【0031】
本実施形態に係るフォトマスクの検査装置1は、以上の構成からなる。次に、検査画像データ作成部による検査画像データ作成工程について説明する。
【0032】
図5は、検査画像データ作成工程のフローチャートである。まず、フォトマスクの画像データは、マトリクス状に分割され、分割画像データが作成される(ステップ1、図6(a)及び(b)、図9(a)及び(b))。分割画像データは、たとえば1辺が10μmないし100μmの大きさの矩形状の画像データである。しかし、これに限定されることはなく、それ以下の大きさでも、それ以上の大きさでも可能である。要は、同一寸法で繰り返されるデザインであれば、画像を取り込むことは可能である。次に、複数の分割画像データの中から、1つの分割画像データが選択される(ステップ2、図6(c1)ないし(c3)、図9(c1)ないし(c3))。以下、この分割画像データに対し、第1画像処理部ないし第5画像処理部による画像処理が行われる。
【0033】
第1画像処理部において、分割画像データは、グレースケール画像データに変換される(ステップ3)。そして、黒のデータがグレースケールの画素数の半値に変換されて中間グレーのデータに変換された第1中間データが作成される(ステップ4、図7(a1)ないし(a3)、図10(a1)ないし(a3))。本実施形態においては、分割画像データは、256階調(8bit)のカラー画像であり、グレースケール画像データは、256階調(8bit)のグレースケール画像である。グレースケール画像データにおいて、パターン(遮光部)Pは、黒のデータ(画素値0)であり、透過部Tは、白のデータ(画素値255)である。したがって、第1中間データにおいて、パターンPは、中間グレーのデータ(画素値127)となる。
【0034】
次に、第2画像処理部において、第1中間データのプラスサイジング処理が行われ、第2中間データが作成される(ステップ5、図7(b1)ないし(b3)、図10(b1)ないし(b3))。プラスサイジングとは、パターンPのエッジラインを所定のオフセット量(第1オフセット量)でパターンPの外側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データに変換することである。第1例(図7(b1)ないし(b3))では、オフセット量は、パターンPの設計上の線幅(すなわち、フォトマスクの描画データにおけるパターンPの線幅)の1/2よりも小さい量である。第2例(図10(b1)ないし(b3))では、オフセット量は、パターンPの設計上の線幅の1/2の量又はこれよりも僅かに大きい量である。
【0035】
次に、第3画像処理部において、第1中間データのマイナスサイジング処理が行われ、第3中間データが作成される(ステップ6、図7(c1)ないし(c3)、図10(c1)ないし(c3))。マイナスサイジングとは、パターンPのエッジラインを所定のオフセット量(第2オフセット量)でパターンPの内側にオフセットしたオフセットラインをエッジラインとする図形データに変換することである。第1例(図7(c1)ないし(c3))では、オフセット量は、プラスサイジングのときと同じ量であり、パターンPの設計上の線幅の1/2よりも小さい量である。第2例(図10(c1)ないし(c3))では、オフセット量は、プラスサイジングのときと同じ量であり、パターンPの設計上の線幅の1/2の量又はこれよりも僅かに大きい量である。このため、第2例では、プラスの誤差がない限り、図形は消失する。
【0036】
次に、第4画像処理部において、第2中間データと第3中間データの合成処理が行われ、第4中間データが作成される(ステップ7、図8(a1)ないし(a3)、図11(a1)ないし(a3))。すなわち、第2中間データ及び第3中間データの対応する各画素が加算され(画素値でいえば、減算)、第4中間データが作成される。第2中間データの図形データの画素値と第3中間データの図形データの画素値は同じである。このため、第2中間データと第3中間データとが重ねられた第4中間データにおいて、第3中間データの図形データに相当する部分は、全体的に第2中間データの図形データに相当する部分とラップし、黒のデータ(画素値0)となる。
【0037】
次に、第5画像処理部において、第1中間データと第4中間データの合成処理が行われ、単位検査画像データが作成される(ステップ8、図8(b1)ないし(b3)、図11(b1)ないし(b3))。すなわち、第4中間データの画素から第1中間データの対応する画素が減算され(画素値でいえば、加算)、単位検査画像データが作成される。単位検査画像データにおいて、第3中間データの図形データに相当する部分は、黒のデータ(画素値0)から中間グレーのデータ(画素値127)に変換される。また、単位検査画像データにおいて、第1中間データの図形データに相当する部分のうち、第3中間データの図形データに相当する部分を除く部分は、中間グレーのデータ(画素値127)から白のデータ(画素値255)に変換される。
【0038】
そして、ステップ3からステップ8までの一連の処理がすべての分割画像データに対して行われ、各分割画像データに対応する各単位検査画像データが作成されると(ステップ9がYES)、各単位検査画像データが統合され、検査画像データが作成される(ステップ10、図3(c)、図4(c))。これで、検査画像データ作成工程が終了する。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
上記実施形態においては、第2中間データ、第3中間データ、第4中間データの順に作成する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、第3中間データを第2中間データよりも先に作成するようにしてもよい。また、第4中間データを作成せず、第1中間データから第3中間データの3つの中間データを同時的に合成処理して単位検査画像データを作成するようにしてもよい。また、第1中間データと第2中間データを合成処理した後、これと第3中間データを合成処理して単位検査画像データを作成したり、あるいは、第1中間データと第3中間データを合成処理した後、これと第2中間データを合成処理して単位検査画像データを作成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、第1オフセット量と第2オフセット量は同じである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。第1オフセット量は、第2オフセット量よりも大きい量であってもよく、あるいは、第2オフセット量よりも小さい量であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、画像表示部16に検査画像データに係る検査画像が表示される。これ以外の表示態様としては、検査画像及びこれに対応するフォトマスクの画像データに係る画像の両方を並べて表示することも可能である。
【0043】
また、検査画像データは、上記実施形態に記載されたものに限定されるものではなく、各種の形態を採用することができる。たとえば、図12(a)に示す検査画像データは、上記実施形態に係る検査画像データの中間グレーのデータ(画素値127)を黒のデータ(画素値0)に変換したものである。図12(b)に示す検査画像データは、第4中間データ、すなわち、第2中間データ及び第3中間データの2つの中間データを合成処理して形成した画像データを単位検査画像データとするものである。図12(c)に示す検査画像データは、第1中間データ及び第2中間データの2つの中間データを合成処理して形成した画像データ(中間グレーのデータのままにしておくか、黒のデータに変換するかは任意)を単位検査画像データとするものである。図12(d)に示す検査画像データは、第1中間データ及び第3中間データの2つの中間データを合成処理して形成した画像データ(中間グレーのデータのままにしておくか、黒のデータに変換するかは任意)を単位検査画像データとするものである。
【0044】
なお、図12(a)、図12(c)及び図12(d)に示す検査画像データであって、黒のデータとする検査画像データについては、図5のフローチャートのステップ4の半値化処理は必須ではない。また、上記実施形態に係る検査画像データは、図12(a)に示す検査画像データを作成した後、これを半値化処理して形成するようにしてもよい。
【0045】
また、グレーの画素値が画素数の半値であることも必須ではない。要は、グレーを用いる場合、白、黒、そして、グレーの3値があればよく、この限りにおいて、グレーの画素値は特に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明は、FPD用のフォトマスクに限らず、半導体用のフォトマスク等、各種のフォトマスクに適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1…検査装置、10…主デバイス、11…制御部、12…演算部、13…記憶部、14,15…I/F部、16…画像表示部、17…入力部、20…撮像デバイス、21…制御部、22…ステージ、23…コラム、24…キャリッジ、25…撮像部、26…XY駆動部、27…記憶部、28…I/F部、E1,E2…誤差、F1,F2…図形、M…フォトマスク、P…パターン(遮光部)、S…隙間、T…透過部
図1
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図12