(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】水素ガス流通システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20240307BHJP
B60S 5/02 20060101ALI20240307BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
B60S5/02
F17C5/06
(21)【出願番号】P 2017060946
(22)【出願日】2017-03-27
【審査請求日】2020-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 顕嘉
(72)【発明者】
【氏名】神山 直彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】川邊 光則
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-236270(JP,A)
【文献】特開2016-196367(JP,A)
【文献】特開2015-197700(JP,A)
【文献】特開2006-173068(JP,A)
【文献】特開2016-270594(JP,A)
【文献】特許第4247192(JP,B2)
【文献】特許第4373941(JP,B2)
【文献】豊田通商株式会社、岩谷産業株式会社、太陽日酸株式会社、”日本初 商業用移動式水素ステーション開設へ”、[online]、2015年2月13日発表、News Release <URL:http://www.tn-sanso.co.jp/jp/file_download.php?id=pWX0h8sQyIA%3D&fileid=upyKjDAp%2B931EbjVkwh2AFhG8fdNRKDE&link.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス充填機能を有する水素ステーションと、
ディスペンサを有する複数の簡易ステーションと、
前記水素ステーションと前記簡易ステーションの間を移動し、前記ディスペンサに着脱可能に接続される複数の蓄圧ユニットを備え、
前記蓄圧ユニットが、前記水素ステーションにおいて水素ガスを供給対象に対して差圧で充填可能な高圧に充填されたのち前記簡易ステーションに輸送されるものであり、
前記水素ステーション、前記簡易ステーション及び前記蓄圧ユニットが通信部を有するとともに、ネットワークを介して通信可能に接続され、
少なくとも前記蓄圧ユニットの水素ガス残量情報と前記水素ステーション及び前記簡易ステーションの基本情報を含むガス消費情報に基づいて前記蓄圧ユニットの充填及び配送管理を行う制御管理部を備え、
前記制御管理部が、前記簡易ステーションにおける前記蓄圧ユニットの水素ガス残量に基づいて充填済みの前記蓄圧ユニットを前記水素ステーションから前記簡易ステーションに配送する制御と、
一の前記簡易ステーションにおける前記蓄圧ユニットの水素ガス残量
が更なる充填のできない最低残量値以下である場合に、その簡易ステーションにおいて、その簡易ステーションから最寄りの充填可能な簡易ステーションを案内する制御を行う
水素ガス流通システム。
【請求項2】
水素ガス充填機能を有する水素ステーションと、
ディスペンサを有する複数の簡易ステーションと、
前記水素ステーションと前記簡易ステーションの間を移動し、前記ディスペンサに着脱可能に接続される複数の蓄圧ユニットを備え、
前記蓄圧ユニットが、前記水素ステーションにおいて水素ガスを供給対象に対して差圧で充填可能な高圧に充填されたのち前記簡易ステーションに輸送されるものであり、
前記水素ステーション、前記簡易ステーション及び前記蓄圧ユニットが通信部を有するとともに、ネットワークを介して通信可能に接続されるとともに、
前記ネットワークには、前記水素ステーションを運営するとともに前記水素ステーションに水素ガスを供給するガス会社と、決済のための決済会社が接続され、
少なくとも前記蓄圧ユニットの水素ガス残量情報と前記水素ステーション及び前記簡易ステーションの基本情報を含むガス消費情報に基づいて前記蓄圧ユニットの充填及び配送管理を行う制御管理部を備え、
前記制御管理部が、前記簡易ステーションにおける前記蓄圧ユニットの水素ガス残量に基づいて充填済みの前記蓄圧ユニットを前記水素ステーションから前記簡易ステーションに配送する制御と、
一の前記簡易ステーションにおける前記蓄圧ユニットの水素ガス残量
が更なる充填のできない最低残量値以下である場合に、その簡易ステーションにおいて、その簡易ステーションから最寄りの充填可能な簡易ステーションを案内する制御を行うとともに、
前記制御管理部は前記蓄圧ユニットを通して前記簡易ステーションから取得した水素ガス充填量を含む決済に必要な決済情報を前記決済会社に対して提供し、前記決済情報に基づき前記決済会社が、前記ガス会社と前記簡易ステーションのうち少なくとも前記ガス会社に対して決済処理を行う
水素ガス流通決済システム。
【請求項3】
前記ガス会社が複数備えられ、
前記水素ステーションが、複数の前記ガス会社によって共同又は提携して運営されるものであり、
前記制御管理部は、前記ガス会社の前記蓄圧ユニットを通して前記簡易ステーションから取得した水素ガス充填量に基づいて前記ガス会社に対する支払額を前記ガス会社ごとに算出して前記決済会社に提供する
請求項2に記載の水素ガス流通決済システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば燃料電池自動車等へ水素ガスを供給するためのシステムに関し、より詳しくは、水素ガスの流通の活性化と更なる普及を実現できるような水素ガス流通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスは水素ステーションで充填される。水素ステーションでは水素ガスを高圧に圧縮して蓄圧器に貯めておき、必要時にディスペンサを介して充填を行う。
【0003】
下記特許文献1には、顧客の利便性を考慮して水素ガスの充填が円滑に行えるように、充填のための予約を可能にする技術が開示されている。予約をしたうえで充填ができるので、顧客にとっては充填が確実にできるという利点がある。
【0004】
しかしながら、予約によって確実に充填ができるとしても、そもそも水素ステーションの数が少ないため、走行中に燃料残量計を気にしなければならないことに変わりはない。
【0005】
水素ステーションの数が増えれば残量を気にすることもなくなって顧客の利益になるわけであるが、水素ステーションの設置・建設には厳格な規定がある上に多額のコストもかかるので、これまでの様な構成の水素ステーションを増設することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、水素ガスを充填する充填拠点の増設を促して水素ガスの充填を行いやすくし、水素ガスの流通の活性化と更なる普及を実現できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、水素ガス充填機能を有する水素ステーションと、ディスペンサを有する複数の簡易ステーションと、前記水素ステーションと前記簡易ステーションの間を移動し、前記ディスペンサに着脱可能に接続される複数の蓄圧ユニットを備え、前記蓄圧ユニットが、前記水素ステーションにおいて水素ガスを供給対象に対して差圧で充填可能な高圧に充填されたのち前記簡易ステーションに輸送されるものであり、前記水素ステーション、前記簡易ステーション及び前記蓄圧ユニットが通信部を有するとともに、ネットワークを介して通信可能に接続され、少なくとも前記蓄圧ユニットの水素ガス残量情報と前記水素ステーション及び前記簡易ステーションの基本情報を含むガス消費情報に基づいて前記蓄圧ユニットの充填及び配送管理を行う制御管理部を備え、前記制御管理部が、前記簡易ステーションにおける前記蓄圧ユニットの水素ガス残量に基づいて充填済みの前記蓄圧ユニットを前記水素ステーションから前記簡易ステーションに配送する制御を行う水素ガス流通システムである。
【0009】
この水素ガス流通システムでは、通い箱のように使用できる蓄圧ユニットと、これが着脱可能に接続される簡易ステーションを新規に備えており、水素ステーションにおいて高圧の水素ガスを充填した蓄圧ユニットを簡易ステーションに輸送し、簡易ステーションにおいて蓄圧ユニット内の水素ガスを、ディスペンサを用いて供給対象に充填する。充填拠点ステーションとしての簡易ステーションは、水素ガスを高圧に圧縮するための設備が不要であり、これまでの水素ステーションと比べて設置にかかる投資やメンテナンス等の負担は少ない。このため簡易ステーションは水素ステーションに比して設置が容易である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、簡易ステーションは水素ステーションと比較し設置しやすいのでその設置を促すことができ、蓄圧ユニットを適切に移動させることにより、顧客にとって水素ガスを利用しやすいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】水素ガス流通システムの概略構成を示す構成図。
【
図3】水素ガス流通システムにおける基本の情報交換・支払体系を示した説明図。
【
図4】データ管理センターでの処理動作を示すフローチャート。
【
図5】簡易ステーションでの処理動作を示すフローチャート。
【
図6】水素ガス流通システムにおける他の情報交換・支払体系を示した説明図。
【
図7】水素ガス流通システムにおける他の情報交換・支払体系を示した説明図。
【
図8】水素ガス流通システムにおける他の情報交換・支払体系を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0013】
図1は水素ガス流通システム11の概略構成を示す構成図である。この水素ガス流通システム11は、水素ガスの供給対象(この例では燃料電池自動車FCVのタンクT)に充填する充填拠点を多数設置できるようにして水素ガスの利用促進を図る。このため、水素ガス流通システム11は、主に蓄圧ユニット14への水素ガス充填を行う水素ステーション12と、充填拠点として機能する複数の簡易ステーション13と、水素ステーション12と簡易ステーション13の間を移動し、水素ガスが高圧に充填されて簡易ステーション13が有するディスペンサ31に着脱可能に接続される単数又は複数の蓄圧ユニット14を備えている。
【0014】
図1において燃料電池自動車FCVと共に描かれた図中のMは、燃料電池自動車FCVを運転する顧客が持つ携帯通信機器である。
【0015】
この水素ガス流通システム11は、不特定多数の燃料電池自動車FCVが利用するシステムであるほか、たとえば運送会社やバス会社、タクシー会社、さらにはカーシェアリングを行う地域コミュニティなどの特定の燃料電池自動車FCVが利用するシステム、さらには工場・倉庫等で燃料電池フォークリフトが使用するシステムとすることもできる。
【0016】
水素ステーション12は、水素ガスを貯蔵する容器としての蓄圧ユニット14に水素ガスを充填する設備を備えている。設備としては、既存の水素ステーションが有する、少なくとも液体水素又は水素ガスを貯留する水素貯槽と、水素ガスを圧縮する圧縮機が必要である。水素貯槽中の水素が液体水素である場合には、気化器で気化してから圧縮機で圧縮したり、液体水素の状態で加圧した後で気化したりする。図示例の水素ステーション12は、液体水素を貯留する液体水素貯槽21と、液体水素を気化する気化器22と、気化した水素ガスを圧縮する圧縮機23を備えている。
【0017】
水素ステーション12では、内部の水素ガスが消費された蓄圧ユニット14や空の蓄圧ユニット14に対して、水素ガスが高圧で充填される。「高圧」とは、供給対象の一例である燃料電池自動車FCVのタンクTに対して差圧で充填可能な圧力である。例えば、燃料電池自動車FCVのタンクTに満タン時設定圧力として70MPaの圧力で水素ガスを充填する場合、蓄圧ユニット14の水素ガスは、82MPaや87MPaというように82MPa以上の高圧で蓄えられる。また、図示しない燃料電池フォークリフトのタンクに満タン時設定圧力として35MPaの圧力で水素ガスを充填する場合、蓄圧ユニット14の水素ガスは、40MPa以上の高圧で蓄えられる。
【0018】
簡易ステーション13は、燃料電池自動車FCVのタンクTに水素ガスを充填するための前述のディスペンサ31と、搬入された蓄圧ユニット14を置く蓄圧ユニット設置部(図示せず)を備えている。ディスペンサ31には、蓄圧ユニット14を着脱可能に接続する接続部32(
図2参照)が設けられている。また、水素ガス充填時の水素ガスの温度上昇を抑制するため、ディスペンサ31に入る前の水素ガスを冷却するプレクーラ(図示せず)が備えられている。
【0019】
蓄圧ユニット14は、水素ガスを高圧で蓄えることができる適宜容量の容器からなり、車両など、自動運転を含む適宜の移動体15で輸送可能に構成されている。また蓄圧ユニット14には、簡易ステーション13においてディスペンサ31に着脱可能に接続される接続部41が備えられている(
図2参照)。この蓄圧ユニット14は、水素ステーション12において水素ガスを前述の高圧に充填されたのち簡易ステーション13に輸送され、内部の水素ガスの消費後に回収されるものである。
【0020】
水素ステーション12と、蓄圧ユニット14又は簡易ステーション13のうち少なくとも一方は、ネットワークを介してデータ管理センター16と通信可能に接続されている。データ管理センター16は、
図2のブロック図に示したように、各部から入力された情報に基づいて少なくとも蓄圧ユニット14の充填及び配送管理を行う制御管理部61を備えている。
【0021】
ネットワークには、
図1に示したように、水素ガスを製造して供給するガス会社17と、決済のためのクレジット決済会社18も接続されている。もちろん決済は現金で行えるようにしても、請求書に基づく指定口座への振込処理等で行ってもよい。
【0022】
図3は水素ガス流通システム11における基本の情報交換・支払体系を示した説明図であり、この図に示したように、この例では水素ステーション12と蓄圧ユニット14がデータ管理センター16と通信できるように構成している。つまり、データ管理センター16に通信部62が備えられ、水素ステーション12及び蓄圧ユニット14にはデータ管理センター16と通信する通信部24,42が備えられている(
図2参照)。蓄圧ユニット14の通信部42にはGPS機能を持たせている。簡易ステーション13にも同様に備えられる通信部33は、蓄圧ユニット14の通信部42と情報のやり取りをしたり、データ管理センター16と直接情報のやり取りをしたりするためのものである。
【0023】
図2に示したように、水素ステーション12と蓄圧ユニット14が通信可能に接続されるデータ管理センター16は、各部から入力された情報に基づいて蓄圧ユニット14の充填及び配送管理や、水素ガス使用量等の料金管理、水素ガスの取り扱いに関する保安管理などを行う機能を有する。
【0024】
充填及び配送管理は、少なくとも蓄圧ユニット14の水素ガス残量情報と簡易ステーション13の基本情報を含むガス消費情報に基づき、データ管理センター16からの指示に基づいて行われる。配送については、具体的には、簡易ステーション13における蓄圧ユニット14の水素ガス残量に基づいて充填済みの蓄圧ユニット14を水素ステーション12から簡易ステーション13に配送する制御を行う。また充填及び配送管理においては、簡易ステーション13における不測のガス不足やメンテナンスに伴う営業休止などに際して、簡易ステーション13での水素ガス充填に支障をきたさないようにするため、一の簡易ステーション13における蓄圧ユニット14の水素ガス残量情報に基づいて別の簡易ステーション13を案内する制御を行う。
【0025】
このため、データ管理センター16は制御管理部61に対して接続される記憶部63、メモリ64、配送管理サーバ65、料金管理サーバ66、保安管理サーバ67を備えている。
【0026】
記憶部63には必要な情報を記憶する。記憶される情報としては、管理下又は提携関係にあるすべての水素ステーション12の基本情報(水素ステーション基本情報63a)、使用されるすべての蓄圧ユニット14の基本情報(蓄圧ユニット基本情報63b)、管理下又は提携関係にあるすべての簡易ステーション13の基本情報(簡易ステーション基本情報63c)がある。
【0027】
水素ステーション基本情報63aは、水素ステーション12の識別情報(水素ステーション名、識別コード等)と、位置情報と、その他の必要な情報である。蓄圧ユニット基本情報63bは、蓄圧ユニット14の識別情報(蓄圧ユニット名、識別コード等)、所有者情報(所有者名、識別コード等)、配送履歴と、その他の必要な情報である。簡易ステーション基本情報63cは、簡易ステーション13の識別情報(簡易ステーション名、識別コード等)と、位置情報と、その他の必要な情報である。
【0028】
この記憶部63に記憶された各基本情報63a,63b,63cは、予め記憶されたプログラムに従ってなされる制御管理部61の制御動作に際して適宜読み出されて、入力された必要な情報とともに所望の演算処理に利用される。制御管理部61に入力された情報や演算結果はメモリ64に記憶される。メモリ64に記憶された情報は制御管理部61によって必要に応じて読み出される。
【0029】
配送管理サーバ65は、入力部と、各水素ステーション12で蓄圧ユニット14に対して水素ガスを充填する充填予定表や水素ステーション12から簡易ステーション13へ蓄圧ユニット14を配送する配送予定表など必要な情報を記憶する記憶部と、入力された情報に基づいて判定等を行い充填予定表や配送予定表に対する書き込みや書き換えを行う処理部と、処理に必要な入力情報や演算結果を記憶するメモリと、処理部での処理に基づいて指示を出す出力部と、その他の必要な構成を備えている。
【0030】
充填予定表には、充填を行う日付、時間、蓄圧ユニット14の識別情報、その蓄圧ユニット14の容量、充填予定の変更記録、その他の必要な情報が示される。配送予定表には、配送を行う日付、発送時間、到着予定時間、発送元水素ステーション12の識別情報、発送先簡易ステーション12の識別情報、配送を行う移動体15の識別情報、回収する蓄圧ユニット14の識別情報、配送予定の変更記録、その他の必要な情報が示される。
【0031】
料金管理サーバ66には、入力部と、ディスペンサ31から燃料電池自動車FCVのタンクTに充填された水素ガス量、その他必要な情報を記憶する記憶部と、入力された情報に基づいて演算処理を行う処理部と、処理に必要な入力情報や演算結果を記憶するメモリと、出力部などその他必要な構成を備えている。記憶部に記憶する情報には、ガス料金情報と、料金調整のための演算情報と、簡易ステーション13の事業形態区分情報と、その他の必要な情報がある。前述の料金調整とは、たとえば水素ガスを他社から融通してもらった場合の収入の分配や、利用頻度や量に応じた割引等によって必要となる調整のことである。前述の事業形態区分とは、たとえば直営か、フランチャイズか、代理店・特約店か、他社かといった事業形態に関わる区分のことである。
【0032】
保安管理サーバ67には、入力部と、蓄圧ユニット14のガス圧情報、ガス温度情報及び位置情報と、水素ステーション12と簡易ステーション13と蓄圧ユニット14の火災発生情報と、その他必要な情報を記憶する記憶部と、入力された情報に基づいて演算処理を行う処理部と、処理に必要な入力情報や演算結果を記憶するメモリと、出力部などその他必要な構成を備えている。
【0033】
水素ステーション12には、前述の通信部24のほか、記憶部25と、検知部26と、メモリ27を備えており、記憶部25には、その水素ステーション12の識別情報と、充填設備の数や液体水素貯槽21の容量、圧縮機23の能力などの充填設備基本情報と、その他の必要な情報が記憶されている。
【0034】
検知部26は、水素ステーション12内での水素ガスの漏れを検知するガス漏れ検知センサと、火災の発生を検知する火災検知センサで構成されている。メモリ27は、検知部26やデータ管理センター16などから入力された必要な情報や演算結果などを記憶する。メモリ27に記憶される情報には、少なくとも液体水素の貯蔵量、充填を行った水素ガスの量、蓄圧ユニット14に対する充填数、充填した蓄圧ユニット14の識別情報、ガス漏れや火災に関する保安情報がある。
【0035】
蓄圧ユニット14には、前述の通信部42と接続部41のほか、記憶部43と、検知部44と、メモリ45を備えており、記憶部43には、その蓄圧ユニット14の識別情報と、容量や最適ガス温度、交換準備のための基準となる基準残量値、充填不可とするための最低残量値などの蓄圧ユニット運用情報と、その他の必要な情報が記憶されている。
【0036】
検知部44は蓄圧ユニット14での水素ガスの漏れを検知するガス漏れ検知センサと、蓄圧ユニット14内のガス圧を検知するガス圧センサと、蓄圧ユニット14内のガス温度を検知するガス温度センサで構成されている。メモリ45は、入力された必要な情報や演算結果などを記憶する。メモリ45に記憶される情報には、少なくともガス圧(水素ガス残量)、ガス温度、簡易ステーションから取得した情報、位置情報、ガス漏れや火災に関する保安情報がある。
【0037】
簡易ステーション13には、前述の通信部33と接続部32のほか、記憶部34と、入力部35と、出力部36と、検知部37と、表示部38と、メモリ39を備えている。記憶部34には、その簡易ステーション13の識別情報と、ディスペンサ31の数など設備の基本情報と、その簡易ステーション13を運用するために必要な運用情報と、その他の必要な情報が記憶されている。
【0038】
入力部35はディスペンサ31に対し充填指示などの必要な操作ができるようにタッチパネルやカードリーダ等の適宜の手段で構成される。入力部35からは顧客情報も入力されるのが好ましいので、入力部35から手入力やカードを介して入力されるように構成するほか、燃料電池自動車FCVに対するディスペンサ31の接続口の接続で、たとえばRFIDタグなどを介して自動的に入力させるように構成してもよい。出力部36はモニタや帳票作成機等の適宜手段で構成される。検知部37は簡易ステーション13内での水素ガスの漏れを検知するガス漏れ検知センサと、火災の発生を検知する火災検知センサで構成されている。表示部38は、画像表示装置等の適宜の表示装置で構成されており、簡易ステーション13の設備内、たとえばディスペンサ31等に設けられ、顧客に対する宣伝広告や案内が表示される。表示部38は前述の出力部36と共用にしてもよい。
【0039】
メモリ39は、入力された必要な情報や演算結果などを記憶する。メモリ39に記憶される情報には、少なくとも接続された蓄圧ユニット14の識別情報や水素ガス充填量、充填台数とそれらの車種又はタンク容量、充填日時などのガス消費情報のほか、顧客情報、運転中であるかメンテナンスなどで運転休止中であるかの運転情報、ガス漏れや火災に関する保安情報、特定車のみが充填を行う簡易ステーションである場合には、それら保有車両情報がある。
【0040】
以上のように構成された水素ガス流通システム11は、水素ガス充填の利便性を高められるように充填拠点を広範囲に多数配置し、各充填拠点に対して水素ガスが不足することがないように適切に供給する。
【0041】
充填拠点、すなわち簡易ステーション13は、前述のようにディスペンサ31を備えていればよく、水素ガスを高圧に圧縮するための設備は不要である。このため、簡易ステーション13の設置には水素ステーション12の場合のような厳格さは不要である。圧縮機も不要であるので、簡易ステーション13を設置するためのコストもランニングコストも、水素ステーション12に比べて廉価である。運用におけるメンテナンスの負担も少ない。したがって、独立した存在としてはもちろんのこと、たとえばガソリンスタンドや各種の店舗に併設するなどの様々な形態で簡易ステーションの設置が可能であり、設置促進をはかることができる。
【0042】
簡易ステーション13に対する水素ガスの供給は、水素ステーション12で水素ガスを高圧に充填した蓄圧ユニット14を用いて行い、水素ガスの適切な供給のために、データ管理センター16では水素ステーション12、蓄圧ユニット14及び簡易ステーション13の監視を行い、必要な情報を取得する。簡易ステーション13の情報は蓄圧ユニット14を介して取得する。
【0043】
データ管理センター16では、すべての水素ステーションに対して、少なくとも液体水素の貯蔵量、蓄圧ユニット14に対して行った水素ガス充填量、充填がなされた蓄圧ユニット14の容量、数、識別情報など充填した蓄圧ユニット14に関する情報、水素ステーション12でのガス漏れや火災に関する保安情報を常時監視している。
【0044】
データ管理センター16は、すべての蓄圧ユニット14に対して、少なくともその蓄圧ユニット14のガス圧(水素ガス残量)、ガス温度、その蓄圧ユニット14が接続された簡易ステーション13から取得した情報、その蓄圧ユニット14の位置情報、蓄圧ユニット14におけるガス漏れや火災に関する保安情報を常時監視している。
【0045】
蓄圧ユニット14が簡易ステーション13から取得する情報には、少なくとも燃料電池自動車FCVのタンクTに対する水素ガス充填量、充填したタンクTの台数とタンクTを搭載する車種又はタンクTの容量、水素ガス充填を行った顧客の顧客情報、簡易ステーション13でのガス漏れや火災に関する保安情報があり、これらがデータ管理センター16によって常時監視されている。
【0046】
このようにデータ管理センター16では、水素ステーション12、簡易ステーション13及び蓄圧ユニット14について常に監視を行い必要な情報を取得する一方、クレジット決済会社18に対して決済に必要な決済情報を提供する。決済情報には、たとえば顧客情報やその顧客が行ったガス充填量、算出されたガス料金、水素ガスの提供元会社の情報、顧客が利用した簡易ステーション13の情報などがある。
【0047】
そしてデータ管理センター16は、すべての簡易ステーション13に対する蓄圧ユニット14の供給、つまり、水素ステーション12での蓄圧ユニット14の準備から配送、回収、交換指示のために次のような処理を行う。
【0048】
図4はその処理動作を示すフロー図であり、
図3も参照して説明すると、データ管理センター16では、充填前と充填後の蓄圧ユニット14をはじめ、配送中、簡易ステーション13に対する接続中、回収中にあるすべての蓄圧ユニット14を監視して必要な情報を取得する(ステップn1)。
【0049】
取得された情報のうち、主として簡易ステーション13に接続されている蓄圧ユニット14からのガス圧情報や位置情報、それに簡易ステーション13から取得した水素ガス充填量、充填台数とそれらの車種又はタンク容量と、記憶部63から読み出した水素ステーション基本情報63a、蓄圧ユニット基本情報63b、及び簡易ステーション基本情報63cに基づいて、制御管理部61は、配送管理サーバ65内の配送予定表を編集する(ステップn2)。編集では、例えば蓄圧ユニット14のガス圧(水素ガス残量)が少なく、水素ステーション12から遠い位置にある蓄圧ユニット14に対して優先的に交換が行えるように、入力した情報を基に演算処理をして序列化する。このような編集はたとえば1日に数回など、一定時間ごとに行うように設定するとよい。
【0050】
制御管理部61は、監視情報から、最低残量値以下の蓄圧ユニット14があるか否かを判断する(ステップn3)。つまり、蓄圧ユニット14から入力されたガス圧と蓄圧ユニット14の運用情報のうちの最低残量値とを対比する。最低残量値は充填が不可能なガス残量値であるので、そのような蓄圧ユニット14がある場合には、制御管理部61は、その蓄圧ユニット14に対して最低残量値以下である旨の充填不可信号を出力して、これを通じて簡易ステーション13の表示部38に充填不可表示を行う(ステップn4)。
【0051】
この処理を行うとともに、制御管理部61はすべての蓄圧ユニット14から取得したガス圧や位置情報、簡易ステーション13から取得した水素ガス充填量、充填台数、充填日時の情報、記憶部63内の簡易ステーション基本情報63cのうちの位置情報に基づいて演算を行って、充填が可能な最寄りの簡易ステーション13を検索する。蓄圧ユニット14の位置情報と簡易ステーション13の位置情報の対比と蓄圧ユニット14のガス圧から、即座に充填が可能か否か判定でき、最低残量値以下の蓄圧ユニット14の位置情報と、この蓄圧ユニット14が接続されている簡易ステーション13以外の簡易ステーション13、またはこれに接続された蓄圧ユニット14の位置情報から、いずれの簡易ステーション13が最寄りであるかを判定できる。水素ガス充填量、充填台数、充填日時の情報は、その簡易ステーション13の利用頻度と利用予測の判定に利用され、充填可能か否かの判定結果に加味される。
【0052】
制御管理部61は、検索結果を、最低残量値以下を示している蓄圧ユニット14に対して、最寄りの簡易ステーション13の情報として送信し、簡易ステーション13の表示部38に表示させる。顧客が、受信可能な携帯通信機器Mを保有する場合、あるいは通信機能を有する燃料電池自動車FCVを保有する場合にも、同じ情報を送信する(ステップn5)。
【0053】
なお、簡易ステーション13がメンテナンスなどで運転休止中である場合には、その運転情報がデータ管理センター16に入力されることになるので、この運転情報の有無に基づいて前述と同様に簡易ステーション13に対する最寄りステーションの照会処理がなされる。
【0054】
続いて、データ管理センター16の制御管理部61は、最低残量値以下を示している蓄圧ユニット14が接続されている簡易ステーション13が属する特定エリア内の水素ステーション12に対して、蓄圧ユニット14の交換指示を送信し(ステップn6)、充填済みの新しい蓄圧ユニット14との速やかな交換をはかる。
【0055】
つぎにデータ管理センター16の制御管理部61は、この指示によって配送管理サーバ65内の配送予定表の変更が必要になるか否かを判断する(ステップn7)。判断は、最低残量値以下を示している蓄圧ユニット14の配送順位が上にあるか否かでなされる。制御管理部61が、変更が必要であると判断した場合には、最低残量値以下を示している蓄圧ユニット14の情報を付加して演算処理を行い、序列をつけ直して配送予定の変更を行い、配送予定表を更新する(ステップn8)。変更が必要ないと判断された場合には、配送予定編集の処理動作を終了する。
【0056】
最低残量値以下の蓄圧ユニット14の有無を判断するステップn3で、そのような蓄圧ユニット14がないと判断された場合には、制御管理部61は次に、基準残量値以下の蓄圧ユニット14があるか否かを判断する(ステップn9)。つまり、蓄圧ユニット14から入力されたガス圧と蓄圧ユニット14の運用情報のうちの基準残量値とを対比する。基準残量値は、交換準備のための基準であり、例えばあと数回充填を行うと最低残量値を下回る値に設定されている。
【0057】
基準残量値以下か否かのステップn9における判断で、そのような蓄圧ユニット14がないと判断された場合には、配送予定編集の処理動作を終了する。その一方で、基準残量値以下か否かのステップn9において基準残量値以下の蓄圧ユニット14があると判断された場合には、制御管理部61は、基準残量値以下を示している蓄圧ユニット14が接続されている簡易ステーション13と、この簡易ステーション13が属する特定エリア内の水素ステーション12に対して、基準残量値以下である旨の充填許容信号を送信して、その水素ステーション12には交換する蓄圧ユニット14を準備するように準備指示を送信して(ステップn10)、充填済みの蓄圧ユニット14を用意させる。
【0058】
そしてデータ管理センター16は、この準備指示によって配送管理サーバ65内の配送予定表の変更が必要になるか否かを判断する(ステップn11)。判断は、基準残量値以下を示している蓄圧ユニット14の配送順位が一定基準より上にあるか否かでなされる。変更が必要であると判断した場合には、基準残量値以下を示している蓄圧ユニットの情報を付加して演算処理を行い、序列をつけ直して配送予定の変更を行い、配送予定表を更新する(ステップn8)。変更が必要ないと判断された場合には、配送予定編集の処理動作を終了する。
【0059】
このような処理に伴う必要な情報は各部のメモリ27,45,39,64に記憶される。
【0060】
データ管理センター16から指示を受けた水素ステーション12では、指示に応じた処理がなされて、水素ガスが高圧充填された蓄圧ユニット14は水素ステーション12から簡易ステーション13に配送され、残量の少なくなった、又は空になった蓄圧ユニット14は回収されて水素ステーション12に移送される。水素ガス充填がなされた蓄圧ユニット14や回収された蓄圧ユニット14の情報や充填量、充填日時などの情報はメモリ27に記憶されるとともに、水素ステーション12からデータ管理センター16へ送信される。
【0061】
このようにしてデータ管理センター16は配送予定を管理し、各蓄圧ユニット14の水素ガス消費に対応して必要に応じて柔軟に配送予定を変更して、簡易ステーション13に接続されている蓄圧ユニット14において水素ガスが不足することを防止し、確実に充填が行える環境をつくる。しかも万が一、簡易ステーション13において突発的な水素ガス不足が起きた場合には、最寄りの簡易ステーション13を照会できるようにして、顧客の水素ガス充填の利便性低下を回避する。
【0062】
水素ガスが高圧で充填された蓄圧ユニット14が不足することなく供給される簡易ステーション13では、燃料電池自動車FCVのタンクTに対して、
図5のフロー図に示したように充填処理がなされる。
【0063】
図3も参照して説明する。簡易ステーション13のディスペンサ31の入力部35から充填開始要求が入力されると(ステップn21)、データ管理センター16から基準残量値以下である旨の充填許容信号の入力があったか否かが、接続している蓄圧ユニット14のメモリ45に記憶した情報に照らし合わせて判断される(ステップn22)。有りの判断の場合には続いて、データ管理センター16から最低残量値以下である旨の充填不可信号の入力があったか否かが、接続している蓄圧ユニット14のメモリ45に記憶した情報に照らし合わせて判断される(ステップn23)。
【0064】
充填不可信号の入力有りの場合には、その旨、つまり充填開始要求があったものの充填不可能であることをデータ管理センター16へ連絡し(ステップn24)、続いて、充填不可能である旨を表示部38に表示するなどの必要な充填不能処理をする(ステップn25)。この場合には、
図4に示したように、データ管理センター16が簡易ステーション13に対して最寄りステーションの照会処理(ステップn5)を行う。
【0065】
基準残量値以下の信号(充填許容信号)入力も最低残量以下の信号(充填不可信号)入力もない場合には、充填開始処理が行われる(ステップn26)。
【0066】
充填中は、データ管理センター16の監視のもとで、蓄圧ユニット14のガス圧が最低残量値以下になった旨の充填不可信号が蓄圧ユニット14を介して簡易ステーション13に入力されるか否かが判断される(ステップn27)。充填不可信号の入力が有りの場合には、充填途中に充填不可能になった旨をデータ管理センター16へ連絡し(ステップn28)、続いて、充填不可能である旨を表示部38に表示するなどの必要な充填未完処理をする(ステップn29)。この場合にも、
図4に示したようにデータ管理センター16が簡易ステーション13に対して最寄りステーションの照会処理(ステップn5)を行う。
【0067】
充填が完了するまでに充填不可信号を入力しなければ充填完了と判断され(ステップn30)、充填完了である旨を表示部38に表示するなどの必要な充填完了処理をする(ステップn31)。水素ガス充填量や車種(タンク容量)、顧客情報、蓄圧ユニット14の識別情報などの情報はメモリ39に記憶されるとともに、蓄圧ユニット14を介してデータ管理センター16に送信される。また充填に伴い変動する蓄圧ユニット14のガス圧やガス温度などの情報はメモリ45に記憶され、データ管理センター16に送信される。
【0068】
データ管理センター16と簡易ステーション13において前述のような処理がなされるとともに、水素ステーション12や移動体15で指示に基づいた所定の処理がなされる。そしてデータ管理センター16は顧客情報やその顧客が行ったガス充填量、ガス充填量とガス料金情報、料金調整のための演算情報から演算して求められる請求額(ガス料金)情報などの必要な決済情報をクレジット決済会社18に出力し、クレジット決済会社18を介して決済処理がなされる。
【0069】
水素ガス流通システム11における基本の情報交換・支払の体系を示した説明図である
図3は、水素ガスの供給元であるガス会社17が水素ステーション12と簡易ステーション13を運営している例を示している。蓄圧ユニット14もガス会社17の所有に係るものである。
【0070】
この場合、データ管理センター16から請求額情報などの必要な情報を受け取ったクレジット決済会社18は、顧客ごとのガス充填量に応じたガス料金を顧客に請求するとともに必要な金額をガス会社17に支払いを行う。簡易ステーション13に手数料など適宜の名目の対価を支払うように設定した場合には、破線の矢印で示したように簡易ステーション13にも代金が支払われる。つまりデータ管理センター16からは、簡易ステーション13の識別情報とともに、各簡易ステーション13の稼働状況に応じて配分された支払金額情報が提供され、この支払金額情報に応じた額が簡易ステーション13に支払われる。
【0071】
図6、
図7、
図8に、水素ガス流通システム11における情報交換・支払の体系の他の例を示す。
【0072】
図6に示した例では、水素ガスの供給元であるガス会社17が水素ステーション12を運営するが、簡易ステーション13はガス会社17の直営店や加盟店など、適宜の契約に基づいて水素ガス充填を行わせるものであり、手数料が支払われるように設定されている。蓄圧ユニット14は、すべての簡易ステーション13で共通に使用できるもの、または簡易ステーション13ごとに使用できるものである。
【0073】
このような水素ガス流通システム11においても前述と同様にしてデータ管理センター16と簡易ステーション13で処理がなされる。
【0074】
そして、クレジット決済会社18は、顧客ごとのガス充填量に応じたガス料金を顧客に請求するとともに、ガス会社17と各簡易ステーション13に対して支払いを行う。簡易ステーション13に対する支払金額は、データ管理センター16において簡易ステーション13から取得した水素ガス充填量などに基づいて算出され、その支払金額情報がデータ管理センター16からクレジット決済会社18に提供される。
【0075】
図7に示した例では、水素ガスを供給する複数のガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)が共同で又は提携して水素ステーション12を運営している。簡易ステーション13はAガス会社17aに関係する簡易ステーション13aと、Bガス会社に関係する簡易ステーション13bがあり、それぞれ独自の蓄圧ユニット14(A社蓄圧ユニット14aとB社蓄圧ユニット14b)を用いている。
【0076】
このような水素ガス流通システム11においても前述と同様にしてデータ管理センター16と簡易ステーション13で処理がなされるが、データ管理センター16からの蓄圧ユニット14についての充填、配送、回収作業に関わる指示では、蓄圧ユニット14に対応する簡易ステーション13でのみ使用されるように設定される。
【0077】
クレジット決済会社18は顧客ごとのガス充填量に応じたガス料金を顧客に請求するとともに、各ガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)に対してそれぞれ分配して支払う。破線で示したように、各簡易ステーション13(簡易ステーション13aと簡易ステーション13b)に対しても支払いがなされるように設定してもよい。
【0078】
各ガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)に対する支払額と各簡易ステーション(簡易ステーション13aと簡易ステーション13b)に対する支払額は、データ管理センター16において各蓄圧ユニット14(A社蓄圧ユニット14aとB社蓄圧ユニット14b)を通して各簡易ステーション13(簡易ステーション13aと簡易ステーション13b)から取得した水素ガス充填量などに基づいて算出され、配分されたその支払金額情報がデータ管理センター16からクレジット決済会社18に提供される。
【0079】
図8に示した例では、水素ガスを供給する複数のガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)がそれぞれ水素ステーション12a,12bを運営しており、それぞれ独自の蓄圧ユニット14(A社蓄圧ユニット14aとB社蓄圧ユニット14b)を用いているが、これらは共通して使用できるものである。
図8の例は、他社から水素ガスを融通してもらう場合、換言すれば他社から水素ガスを購入する場合を説明している。
【0080】
これは、たとえばAガス会社17aのエリア(簡易ステーション網)とBガス会社17bのエリア(簡易ステーション網)があり、Aガス会社17aが統括するエリアの辺境地域にある簡易ステーション13で水素ガスの欠乏が生じたり、欠乏が起きそうになったりしたときであって、その簡易ステーション13の比較的近隣地域にBガス会社17bの水素ステーション12bが存在しており、Aガス会社17aの簡易ステーション13がそれよりも遠い場合である。つまり、Aガス会社17aにとってはBガス会社17bの水素ステーション12bから水素ガス(充填済みのB社蓄圧ユニット14b)を融通してもらう方が自社の水素ステーション12からA社蓄圧ユニット14aを配送するよりも効率がよく、特に緊急性を要する場合に都合がよいからである。
【0081】
このような水素ガス流通システムにおいても前述と同様にしてデータ管理センター16と簡易ステーション13で処理がなされる。データ管理センター16からの蓄圧ユニット14についての充填、配送、回収作業に関わる指示では、すべての簡易ステーション13においてA社蓄圧ユニット14aもB社蓄圧ユニット14bも使用できるように設定される。
【0082】
クレジット決済会社18は顧客ごとのガス充填量に応じたガス料金を顧客に請求するとともに、各ガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)に対してそれぞれ分配して支払う。また簡易ステーション13に対しても稼働に応じて分配される手数料の支払いがなされる。
【0083】
各ガス会社17(Aガス会社17aとBガス会社17b)に対する支払額は、データ管理センター16において各蓄圧ユニット14(A社蓄圧ユニット14aとB社蓄圧ユニット14b)を通して各簡易ステーション13から取得した水素ガス充填量などに蓄圧ユニット14の識別情報を紐付けして算出され、配分されたその支払金額情報がデータ管理センター16からクレジット決済会社18に提供される。各簡易ステーションに対する支払額は、データ管理センター16において各蓄圧ユニット14(A社蓄圧ユニット14aとB社蓄圧ユニット14b)を通して各簡易ステーション13から取得した水素ガス充填量などに簡易ステーション13の識別情報を紐付けして算出され、配分されたその支払金額情報がデータ管理センター16からクレジット決済会社18に提供される。
【0084】
以上の説明ように、この水素ガス流通システム11では、水素ステーション12の周りに、圧縮機を保有せず水素ガスの差圧のみを利用して充填する複数の簡易ステーション13を設置し、水素ステーション12から各簡易ステーション13に、水素ガスを高圧に充填した蓄圧ユニット14を配送されるように構成している。簡易ステーション13は、水素ステーションのような設備が必要でなく圧縮機も不要であるので、水素ステーション12に比べて設置が容易で、設備投資も低く抑えられる。メンテナンスの手間や期間についても負担が少ない。このため、広範囲にわたって多くの簡易ステーション13を設置させることができる。
【0085】
しかも、データ管理センター16と簡易ステーション13において、偶発的な欠乏が生じた場合でも常に水素ガスが行き届き補えるよう柔軟な処理がなされるので、水素ステーション12の数は少なくても、不自由を生じさせない水素ガス流通システムを構築することができる。
【0086】
つまり、いつどこの簡易ステーション13に行っても充填ができる状態、換言すれば、燃料電池自動車FCVの走行中に燃料残量計が半分以下を示すようになっても、ガス欠を気にすることなく走行できる環境をつくり出すことができる。
【0087】
このため、水素ガスが顧客にとって利用しやすいものとなり、この結果、水素ガスの流通の活性化をはかり、更なる普及を実現できる。
【0088】
簡易ステーション13の設置に関して付言すれば、
図6に示したように加盟店を募ったり、
図7に示したように複数のガス会社17が共同して水素ステーション12を運営したり、
図8に示したように他のガス会社17の水素ガスを融通できるようにしたり、様々なビジネスモデルを創出することによって、より多くの簡易ステーション13の設置を促せる。
【0089】
また、データ管理センター16で行う配送管理は、蓄圧ユニット14の水素ガス残量(ガス圧)情報と簡易ステーション13の基本情報を含むガス消費情報に基づいて行うので、自動で適切に行える。
【0090】
蓄圧ユニット14には通信部42を備え、移動端末として機能させているので、簡易ステーション13の構成を簡素にすることができる。この点からも、簡易ステーション13の設置促進をはかることができる。
【0091】
この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0092】
たとえば、データ管理センター16の制御によらず、一部に人手を介して行ってもよい。
【0093】
ネットワークを介してのデータ管理センター16との通信可能な接続は、水素ステーション12と、蓄圧ユニット14と、簡易ステーション13のすべてについて行ってもよい。
【0094】
また、顧客の利便性をさらに向上するため、充填可能な簡易ステーション13を顧客に紹介するナビゲーションシステムを組み合わせてもよい。この場合、蓄圧ユニット14の通信部42にGPS機能を持たせているので、簡易ステーション3に接続された最低残量値未満のガス圧を有する蓄圧器を照会すれば、充填可能な簡易ステーション13の照会になる。
【符号の説明】
【0095】
11…水素ガス流通システム
12…水素ステーション
13…簡易ステーション
14…蓄圧ユニット
15…移動体
31…ディスペンサ
33…通信部
61…制御管理部