(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】昇降機構および記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/12 20060101AFI20240307BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B65H19/12 B
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2018143263
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕之
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】殿川 雅也
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153456(JP,A)
【文献】特開2012-166283(JP,A)
【文献】特開2002-213445(JP,A)
【文献】特開2007-261754(JP,A)
【文献】特開2017-109334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00 - 19/30
B65H 21/00 - 21/02
B41J 15/00 - 15/24
B23Q 1/00 - 1/76
B23Q 9/00 - 9/02
F16C 29/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状メディアを昇降させる昇降機構を備える記録装置であって、
前記昇降機構は、
装置高さ方向に昇降し、前記ロール状メディアが載置される昇降部と、
前記装置高さ方向において、前記昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、
前記昇降部と前記位置調整部とを支持する基部と、
前記基部を支持する軸部材から所定距離離間して設置され、当該軸部材と共に前記昇降機構を支持するガイド部材と、を備え、
前記基部は、
前
記軸部材が挿通され、当該軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部
と、前記ガイド部材が挿通され、当該ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部と、を有し、
前記挿通部の前記内周部には、複数の転動体が設置され、
前記軸部材が延設される軸方向から見て、複数の前記転動体は、前記挿通部の前記内周部から突出し、
複数の前記転動体の少なくとも1つは、前記装置高さ方向において、前記昇降部と前記軸部材との間の位置に設けられ、
前記位置調整部は、前記昇降部の位置を調整するための操作レバーを有し、
前記基部は、前記操作レバーを回動させるための回動部材が挿通される保持穴部を有し、
前記ガイド部材は、前記軸部材及び前記回動部材から所定距離離間して設置され
、
前記ガイド側挿通部の前記内周部には、前記装置高さ方向上側から前記ガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
複数の前記転動体は、
前記軸方向と前記装置高さ方向とに直交すると共に、前記軸部材の中心を通る直線に対して、前記直線よりも前記装置高さ方向上側における前記挿通部の前記内周部と、前記直線よりも前記装置高さ方向下側における前記挿通部の前記内周部と、に設置され、且つ、前記内周部において、少なくとも3つ設置されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置であって、
複数の前記転動体は、前記軸方向に並んで配置されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項
1~請求項3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記基部は、前記ガイド側挿通部の前記内周部において、前記装置高さ方向下側から前記ガイド部材に対向する突出部を有していることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
記録装置に備えられる昇降機構であって、
装置高さ方向に昇降し、ロール状メディアが載置される昇降部と、
前記装置高さ方向において、前記昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、
前記昇降部と前記位置調整部とを支持する基部と、
前記基部を支持する軸部材から所定距離離間して設置され、前記軸部材と共に前記基部を支持するガイド部材と、を備え、
前記基部は、
前
記軸部材が挿通され、当該軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部
と、前記ガイド部材が挿通され、当該ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部と、を有し、
前記挿通部の前記内周部には、複数の転動体が設置され、
前記軸部材が延設される軸方向から見て、複数の前記転動体は、前記挿通部の前記内周部から突出し、
複数の前記転動体の少なくとも1つは、前記装置高さ方向において、前記昇降部と前記軸部材との間の位置に設けられ
、
前記位置調整部は、前記昇降部の位置を調整するための操作レバーを有し、
前記基部は、前記操作レバーを回動させるための回動部材が挿通される保持穴部を有し、
前記ガイド部材は、前記軸部材及び前記回動部材から所定距離離間して設置され、
前記ガイド側挿通部の前記内周部には、前記装置高さ方向上側から前記ガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることを特徴とする昇降機構。
【請求項6】
請求項
5に記載の昇降機構であって、
複数の前記転動体は、
前記軸方向と前記装置高さ方向とに直交すると共に、前記軸部材の中心を通る直線に対して、前記直線よりも前記装置高さ方向上側における前記挿通部の前記内周部と、前記直線よりも前記装置高さ方向下側における前記挿通部の前記内周部と、に設置され、且つ、前記内周部において、少なくとも3つ設置されていることを特徴とする昇降機構。
【請求項7】
請求項
6に記載の昇降機構であって、
複数の前記転動体は、前記軸方向に並んで配置されていることを特徴とする昇降機構。
【請求項8】
請求項
5~請求項7のいずれか一項に記載の昇降機構であって、
前記基部は、前記ガイド側挿通部の前記内周部において、前記装置高さ方向下側から前記ガイド部材に対向する突出部を有していることを特徴とする昇降機構。
【請求項9】
請求項
4に記載の記録装置であって、
前記ガイド側挿通部には、前記ガイド部材の前記装置高さ方向における下側の外周面と前記突出部とが当接しないための隙間が設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の昇降機構であって、
前記ガイド側挿通部には、前記ガイド部材の前記装置高さ方向における下側の外周面と前記突出部とが当接しないための隙間が設けられていることを特徴とする昇降機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状メディアを昇降させる昇降機構、及び昇降機構を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙からメディアを引き出しながら画像・文字を記録する記録装置が周知である。このような記録装置では、繰出し部側の一対のフランジに、ロール紙の紙管を回転自在に取付けたり、外したりする。この際、ロール紙を持ち上げる機構(昇降機構)を用いて、フランジの高さに合わせてロール紙の紙管を昇降させる。
【0003】
特許文献1にはロール媒体持ち上げ装置が開示されている。詳細には、ロール媒体持ち上げ装置は、操作レバーとカム部と昇降部と基体部とを有し、基体部には二つの棒体が挿通されている。これにより、ロール媒体持ち上げ装置を、棒体が延設された幅方向に沿って移動させることで、ロール媒体持ち上げ装置に載置されたロール媒体を幅方向に移動させることができる。このような構成とすることで、例えば使用するロール媒体をフランジに設置しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のロール媒体持ち上げ装置では、例えば、昇降部に載置されたロール媒体の高重量化に伴い、基体部と二つの棒体との間の摩擦力が増加し、ロール媒体を幅方向に移動させることが難しくなるという課題があった。このような場合、一対のフランジをロール媒体の両端部にそれぞれ移動させることにより、ロール媒体をフランジに設置する。しかしながら、一対のフランジを両方ともロール媒体の両端部に移動させることにより、幅方向におけるロール紙の基準位置(メディア端位置)がずれてしまうことになる。また、この場合、ユーザーは再度フランジの位置を調整しなくてはならず、ユーザーへの負担を招くことにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の記録装置は、ロール状メディアを昇降させる昇降機構を備える記録装置であって、昇降機構は、装置高さ方向に昇降し、ロール状メディアが載置される昇降部と、装置高さ方向において、昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、昇降部と位置調整部とを支持する基部と、を備え、基部は、基部を支持する軸部材が挿通され、軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置され、軸部材が延設される軸方向から見て、複数の転動体は、挿通部の内周部から突出していることを特徴とする。
【0007】
上記記録装置において、複数の転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に、軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部と、に設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されていることが好ましい。
【0008】
上記記録装置において、複数の転動体は、軸方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0009】
上記記録装置において、軸部材から所定距離離間して設置され、軸部材と共に昇降機構を支持するガイド部材を備え、基部は、ガイド部材が挿通され、ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部を有し、ガイド側挿通部の内周部には、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることが好ましい。
【0010】
上記記録装置において、基部は、ガイド側挿通部の内周部において、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有していることが好ましい。
【0011】
本願の昇降機構は、装置高さ方向に昇降し、ロール状メディアが載置される昇降部と、装置高さ方向において、昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、昇降部と位置調整部とを支持する基部と、を備え、基部は、基部を支持する軸部材が挿通され、軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置され、軸部材が延設される軸方向から見て、複数の転動体は、挿通部の内周部から突出していることを特徴とする。
【0012】
上記昇降機構において、複数の転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に、軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部と、に設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されていることが好ましい。
【0013】
上記昇降機構において、複数の転動体は、軸方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0014】
上記昇降機構において、軸部材から所定距離離間して設置され、軸部材と共に基部を支持するガイド部材を備え、基部は、ガイド部材が挿通され、ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部を有し、ガイド側挿通部の内周部には、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることが好ましい。
【0015】
上記昇降機構において、基部は、ガイド側挿通部の内周部において、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有していることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るプリンターの全体構成の概略を示す側断面図。
【
図3】媒体繰出し部における昇降機構と第1ホルダー部とガイド部とを示す斜視図。
【
図7】基部内部での軸側転動体とガイド側転動体の状態を示す側断面図。
【
図8】基部内部での操作レバーの状態を示す側断面図。
【
図9】ロール媒体を持ち上げる前の第1ホルダー部を示す正面図。
【
図10】ロール媒体の持ち上げ途中の動作を示す側断面図。
【
図11】ロール媒体を所定の高さまで持ち上げる動作を示す側断面図。
【
図12】嵌合部の高さまでロール媒体を持ち上げた状態を示す正面図。
【
図13】昇降機構を移動させて嵌合部に嵌合させた状態を示す正面図。
【
図14】昇降機構を幅方向に移動させた場合の基部の内部を示す概断面図。
【
図15】変形例に係る軸側転動体の設置位置を示す側断面図。
【
図16】変形例に係る軸側転動体の設置位置を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る記録装置について図面を参照して説明する。記録装置の一例として、大型のインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1と言う)を例に挙げる。
【0018】
以降に示す各図においては、XYZ座標系を用いて示している。X方向は、記録ヘッド25(
図1参照)の走査方向であり記録が行われる媒体の幅方向(以下、幅方向X、または軸方向とも言う)となる。Y方向は、プリンター1(
図1参照)の奥行き方向(以下、奥行き方向Yとも言う)であり媒体の長さ方向となる。Z方向は、重力方向、鉛直方向でありプリンター1の高さ方向(以下、高さ方向Zまたは装置高さ方向Zとも言う)となる。
【0019】
また、装置前面側を+Y方向とし、装置背面側を-Y方向とする。また、プリンター1を前面側から見た場合、装置左側を+X方向、装置右側を-X方向とする。また、装置上側(上方、上部、上面等を含む)を+Z方向、装置下側(下方、下部、下面等を含む)を-Z方向とする。
【0020】
図1は、本実施形態に係るプリンター1の全体構成の概略を示す側断面図である。
図2は、プリンター1の概略を示す正面図である。なお、
図2では、装置下部(キャスター15等)や媒体巻取り部37等は省略している。
図3は、媒体繰出し部26における昇降機構20と第1ホルダー部30とガイド部50とを示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、プリンター1は、媒体繰出し部26と、記録部28と、媒体巻取り部37と、を備えている。媒体繰出し部26は、ロール状に巻かれたロール状メディアとしてのロール媒体Rをほどいて搬送方向Qへ送出することができる。詳細には、媒体繰出し部26は、第1ホルダー部30と搬送ローラー対29とを備えている。
【0022】
このうち、第1ホルダー部30は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができる。第1ホルダー部30は、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌る嵌合部13を有している。嵌合部13は、回動自在な構成でも、図示省略するモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、搬送方向下流側の駆動する搬送ローラー対29によってロール媒体Rが引っ張られてほどかれる。
【0023】
また、嵌合部13が前記モーターの動力によって駆動する場合、媒体繰出し部26は搬送ローラー対29を有していない構成でもよい。なお、第1ホルダー部30は、幅方向Xで、向い合わせに一対設置されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部30が、ロール媒体Rの幅サイズの違いに対応させて、ガイド部50に対して幅方向Xに移動して取付け位置を調整することができる。
【0024】
本実施形態では、装置左側(+X方向)の第1ホルダー部30を基準として、装置右側(-X方向)の第1ホルダー部30を、ロール媒体Rの幅サイズの違いに対応させて、ガイド部50に対して幅方向Xに移動して取付け位置を調整する。この調整方法により、幅方向Xにおけるロール媒体Rの基準位置(メディア端位置)を維持することができる。このため、ロール媒体Rを交換した後、印字位置調整(余白調整)等を行うことなく交換前と同様に印字を行うことができる。
【0025】
一対の第1ホルダー部30の間には、ロール媒体Rを持ち上げるための昇降機構20が設置されている。昇降機構20は、基部60と操作レバー70と昇降部80とカム部9(
図4参照)とを備えている。そして、昇降機構20(基部60)は、ガイド部50により支持されている。ガイド部50は、軸部材としての第1部材51と、ガイド部材としての第2部材52とを備えている。本実施形態では、第1部材51は、棒状(円柱状)の管部材で形成されている。第2部材52は、角柱状の管部材で形成されている。また、第2部材52は、第1部材51から所定距離離間して設置されている。昇降機構20は、ガイド部50に対して幅方向Xに移動可能である。なお、第2部材52が設置される第1部材51からの所定距離とは、操作レバー70の基部60に対する設置位置や、載置されるロール媒体Rの重量による第1部材51との重量バランスを考慮して適宜決まる距離である。そして、第2部材52は、第1部材51と共に昇降機構20(基部60)を支持する。
【0026】
操作レバー70の自由端側をユーザーが把持して上方向に操作し、操作レバー70を一方向へ回動させることにより、昇降部80は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー70を反対方向へ回動させることにより、昇降部80は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。昇降機構20は、操作レバー70のレバー比の大きさを利用することで、比較的小さい力で、高重量のロール媒体Rを上げ下げすることができる。
なお、本実施形態では、操作レバー70とカム部9は、装置高さ方向Zにおいて、昇降部80の位置を調整可能とする位置調整部として機能する。
【0027】
記録部28は、幅方向Xに延設されたキャリッジガイド軸21とキャリッジ23と記録ヘッド25と媒体支持部27とを備えている。キャリッジ23は、キャリッジガイド軸21にガイドされながら幅方向Xへ移動可能に設置されている。記録ヘッド25は、キャリッジ23に載置されて媒体支持部27と対向する位置に設置され、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができる。媒体支持部27は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド25との間の距離を所定の距離にすることができる。搬送ローラー対29は、記録部28の内部に設置したが、外部でもよく、ロール媒体Rを搬送方向Qへ送ることができればよい。
【0028】
記録部28より搬送方向Qの上流側にはプレヒーター31が設置されている。プレヒーター31は、ロール媒体Rに対して記録が実行される前の段階で予めロール媒体Rを温めることで、記録が実行された際、ロール媒体Rに着弾したインクを乾燥しやすくしている。記録部28より搬送方向Qの下流側にはアフターヒーター33が設置されている。アフターヒーター33は、記録が実行された後から媒体巻取り部37によって巻き取られる前までの間に、ロール媒体Rに着弾したインクを確実に乾燥させている。
【0029】
媒体巻取り部37は、図示省略するモーターの動力によってロール媒体Rを巻き取ることができる。詳細には、媒体巻取り部37は、第2ホルダー部40を備えている。第2ホルダー部40は、ガイド部55としての二本の管状部材となる第3部材56、第4部材57に移動可能に取り付けられている。そして、第2ホルダー部40は、巻き取ったロール媒体Rを保持する。
【0030】
プリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を有する側面視逆T字形の支持フレーム17を備えている。また、支持フレーム17は、プリンター1の左右両端部に対向するように備えられている。支持フレーム17の上部には、記録部28が設置されている。支持フレーム17の中程には、サブフレーム35が設置されている。そして、サブフレーム35は、ガイド部50が備える第1部材51、第2部材52の端部を保持している。なお、ガイド部55が備える第3部材56、第4部材57の端部は、支持フレーム17に設置されるサブフレーム24によって保持される。また、ガイド部50としての第1部材51、第2部材52は、昇降機構20を構成する部材と言うこともできる。すなわち、第1部材51、第2部材52は、プリンター1が備える部材とも言えるし、昇降機構20が備える部材と言うこともできる。
【0031】
図2に示すように、プリンター1の支持フレーム17を基準とした装置前面側(+Y方向)には、第1ホルダー部30が設置されている。装置背面側(-Y方向)には、図示省略する第2ホルダー部40が設置されている。第1ホルダー部30は、上述したように、サブフレーム35によって両端が保持されたガイド部50としての第1部材51、第2部材52に対して、移動可能に設置されている。
【0032】
ここで、第3部材56、第4部材57に対する第2ホルダー部40の固定の仕方は、第1部材51、第2部材52に対する第1ホルダー部30の固定の仕方と同様である。以下、第1ホルダー部30を固定する構造について説明し、第2ホルダー部40を固定する構造についての説明は省略する。
【0033】
図3に示すように、媒体繰出し部26は、第1ホルダー部30とガイド部50と昇降機構20とを備えている。第1ホルダー部30は、上述したように、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌る嵌合部13を有して、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持する。ガイド部50は、第1部材51および第2部材52を備えている。第1ホルダー部30は、ガイド部50に移動可能に支持される。また、昇降機構20(基部60)も、ガイド部50に移動可能に支持される。
【0034】
第1ホルダー部30は、つまみ付きのねじで形成されるつまみ部36を備えている。そして、ねじを緩める方向へつまみ部36を回転させることにより、第1ホルダー部30を第1部材51、第2部材52に対して移動させることができる。詳細には、第1ホルダー部30の下方にはベース部4が設置されており、このベース部4が、第1部材51、第2部材52に対して移動する。一方、ねじを締める方向へつまみ部36を回転させることにより、第1ホルダー部30を第1部材51、第2部材52に対して固定することができる。従って、ロール媒体Rの幅サイズに応じて一対の第1ホルダー部30の位置を調整することができる。
【0035】
なお、昇降機構20は、一対の第1ホルダー部30の間において、第1部材51、第2部材52に対して移動可能に設けられている。なお、基部60のガイド部50(第1部材51、第2部材52)に対する移動に関しては後述する。昇降機構20(基部60)は、ロール媒体Rのサイズに応じてロール媒体Rの側端近傍の下方へ移動させ、ロール媒体Rの側端を昇降できればよいため、ガイド部50に対して移動可能な状態と固定された状態とを切り替え可能に構成する必要はない。
【0036】
昇降機構20は、上述したように、基部60と操作レバー70と昇降部80とカム部9(
図4参照)とを備えている。基部60は、ガイド部50を構成する第1部材51、第2部材52に対して移動可能に設置されている。昇降部80は、基部60に対して高さ方向Zに移動可能に設置されている。基部60の上面および昇降部80の上面には、ロール媒体Rが載置される載置部22が設けられている。本実施形態では、昇降部80が下がっている状態において、基部60の上面は、昇降部80の上面と略同じ高さである。なお、昇降部80の上面のみによって載置部22を構成しても、載置部22の機能を果たすことができる。
【0037】
載置部22は、第1部材51、第2部材52の軸方向(幅方向X)から見て、中央に対して両側が高く形成されている。言い換えると、ロール媒体Rと接触する上側の二つの辺部22a,22bがV字状に見えるように、載置部22の上面が形成されている。これにより、ロール媒体Rを載置部22に載置したとき、ロール媒体Rの転がりを防止して、ロール媒体Rの位置を安定させることができる。なお、第1部材51、第2部材52の軸方向(幅方向X)から見て、載置部22の上面がU字状に見えるように形成してもよい。言い換えると、載置部22は、V字状、U字状ではなくても、軸方向(幅方向X)から見て、上側の2つの辺部22a、22bが、下方に進むに従って互いの距離が短くなるように設けられ、この2つの辺部22a、22bがロール媒体Rの外周面と接触していればよい。
【0038】
操作レバー70は、回動部材90(
図4参照)を中心として、回動可能に設置されている。そして、詳しくは後述するように、テコの原理を利用して、操作レバー70は、小さい力で昇降部80を上方へ移動させることができる。
【0039】
昇降機構20の組立方法に関して説明する。
図4、
図5、
図6に示すのは、昇降機構20の組立方法を示す斜視図である。
図7は、基部60内部での軸側転動体96とガイド側転動体97の状態を示す側断面図である。
【0040】
図4に示すように、基部60は、操作レバー70を回動させるための回動部材90を固定する保持穴部61が幅方向Xに貫通している。また、基部60の装置前面側には、第1部材51を挿通する挿通部としての軸側挿通部62が設置されている。軸側挿通部62は、基部60の幅方向Xの両端部にそれぞれ設けられている。基部60の軸側挿通部62は、挿通部の上側半分を形成している。なお、装置前面側から見た場合の左側の軸側挿通部62を軸側挿通部62aとし、右側の軸側挿通部62を軸側挿通部62bとする。
【0041】
また、軸側挿通部62(62a,62b)には、幅方向Xに貫通する挿通穴63が形成されている。また、軸側挿通部62(62a,62b)は、内周部64をそれぞれ有する。なお、内周部64に対して、装置前面側から見た場合の左側の内周部64を内周部64aとし、右側の内周部64を内周部64bとする。
【0042】
挿通穴63は、幅方向Xから見た場合、8角形状の上側半分の形状を有して形成されている。内周部64は、軸側挿通部62(挿通穴63)に軸部材としての第1部材51を挿通した際に、第1部材51の外周部(外周面)と対向するように設置されている。詳細には、内周部64(64a,64b)は、挿通穴63が有する幅方向Xの両端部に形成される8角形状の各辺が、幅方向Xに平行な状態で、内部に延出している。
【0043】
また、基部60の装置背面側には、第2部材52を挿通する挿通部としてのガイド側挿通部65が設置されている。ガイド側挿通部65は、基部60の幅方向Xの両端部にそれぞれ設けられている。なお、装置背面側から見た場合の右側のガイド側挿通部65をガイド側挿通部65aとし、左側のガイド側挿通部65をガイド側挿通部65bとする。
【0044】
なお、ガイド側挿通部65において、下側となるガイド側挿通部65の部位を突出部68とする。突出部68は、上側のガイド側挿通部65と共に、基部60の背面側から突出した状態に構成されている。突出部68は、高さ方向Zの下側からガイド部50の第2部材52に対向する位置関係で構成されている。詳細には、突出部68は、第2部材52の下側の外周面と対向する。
【0045】
また、ガイド側挿通部65(65a,65b)は、幅方向Xに貫通する挿通穴66をそれぞれ有して構成されている。また、ガイド側挿通部65(65a,65b)は、内周部67をそれぞれ有して構成されている。なお、挿通穴66、内周部67に対して、装置背面側から見た場合の右側の挿通穴66、内周部67を挿通穴66a、内周部67aとし、左側の挿通穴66、内周部67を挿通穴66b、内周部67bとする。
【0046】
なお、挿通穴66(66a,66b)は、閉じた穴ではなく、一方(-Y方向)が開いた形状に形成されている。挿通穴66は、挿通する第2部材52が角柱状の管部材の為、外周に対応させて、一辺が開いた矩形状の挿通穴として形成されている。
【0047】
内周部67は、ガイド側挿通部65(挿通穴66)に第2部材52を挿通した際に、第2部材52の外周部(外周面)と対向するように設置されている。詳細には、内周部67aは、挿通穴66aが有する幅方向Xの両端部に形成される矩形状の各辺が、幅方向Xに平行な状態で、内部に延出してつながる状態で形成されている。なお、内周部67bも内周部67aと同様の為、説明を省略する。
【0048】
基部60の軸側挿通部62には、軸側挿通部62(62a,62b)の下側半分を構成する基部支持部91が固定される。
【0049】
基部支持部91は、基部60の2つの軸側挿通部62a,62bに対応させて、2つで構成されている。基部支持部91は、2つとも同様に構成されている。また、基部支持部91には、第1部材51を挿通する挿通部として軸側挿通部92が設置されている。軸側挿通部92は、挿通部の下側半分を形成している。
【0050】
また、軸側挿通部92には、幅方向Xに貫通する挿通穴93が形成されている。また、軸側挿通部92は、内周部94を有する。挿通穴93は、幅方向Xから見た場合、8角形状の下側半分の形状を有して形成されている。内周部94は、軸側挿通部92(挿通穴93)に軸部材としての第1部材51を挿通した際に、第1部材51の外周面と対向するように設置されている。詳細には、内周部94は、挿通穴93が有する幅方向Xの両端部に形成される8角形状の各辺が、幅方向Xに平行な状態で、内部に延出してつながる状態で形成されている。
【0051】
2つの基部支持部91は、それぞれ、基部60の軸側挿通部62(62a,62b)の挿通穴63に合わせて、軸側挿通部62(62a,62b)の下側に固定される。この組立てにより、基部60の軸側挿通部62と、基部支持部91の軸側挿通部92とが一体となる。この状態では、幅方向Xから見た場合、挿通穴63と挿通穴93とが合わさり、8角形状の穴形状となる。
【0052】
図4、
図5、
図7に示すように、軸側挿通部62aの内周部64aと軸側挿通部92の内周部94とには、転動体としての複数の軸側転動体96が設置されている。詳細には、軸側挿通部62の上方向の内周部64には、回転軸を幅方向X及び高さ方向Zに直交させた軸側転動体96が幅方向Xの両端部にそれぞれ設置されている。なお、軸側転動体96は、回転軸を有するいわゆるローラーを用いている。
【0053】
図7に示すように、軸側転動体96は、軸方向(幅方向X)と装置の高さ方向Zとに直交すると共に、第1部材51の中心Oを通る直線A(仮想直線)に対して、軸方向から見て直線Aよりも装置の高さ方向Z上側における軸側挿通部62aの内周部64aに設置されている。詳細には、内周部64aの鉛直方向の上部に、回転軸を幅方向Xと高さ方向Zとに直交させて軸側転動体96が設置されている。また、軸側転動体96は、軸方向から見て直線Aよりも高さ方向Z下側における軸側挿通部92の内周部94に設置されている。詳細には、直線Aを中心とする水平面から下方向で両側に30度傾いた位置に相対する2つの内周部94に、回転軸を幅方向Xと直交(直線Aと直交)させて、それぞれ軸側転動体96が設置されている。
【0054】
本実施形態では、一方の内周部64a及び内周部94において軸側転動体96は3つ設置されている。更に、他方の内周部64b及び内周部94において軸側転動体96は3つ設置されている。言い換えると、軸側転動体96は、軸方向(幅方向X)に並んで配置されている。
【0055】
図7に示すように、軸部材としての第1部材51が延設される軸方向から見て、複数の軸側転動体96は、軸側挿通部62の内周部64、および軸側挿通部92の内周部94から第1部材51の軸方向に向かって突出して設置されている。これにより、内周部64,94と第1部材51の外周面との間に所定のギャップを形成している。この3つの軸側転動体96が、第1部材51の外周面の3方向を支持する構成となる。そして、軸側転動体96は、第1部材51の外周面を軸方向に転がることができる。
【0056】
ガイド側挿通部65aの内周部67aには、転動体としてのガイド側転動体97が設置されている。詳細には、ガイド側挿通部65aの上方向の内周部67aには、回転軸を幅方向X及び高さ方向Zに直交させた(言い換えると、奥行き方向Yと平行にさせた)ガイド側転動体97が1つ設置されている。
【0057】
図7に示すように、ガイド部材としての第2部材52が延設される軸方向から見て、ガイド側転動体97は、ガイド側挿通部65(65a,65b)の上側の内周部67(67a,67b)から突出して設置されている。これにより、内周部67(67a,67b)と第2部材52の外周面との間に所定のギャップを形成している。なお、ガイド側転動体97は、回転軸を有するいわゆるローラーを用いている。この1つのガイド側転動体97が、第2部材52の外周面の1方向を支持する構成となる。そして、ガイド側転動体97は、第2部材52の外周面を軸方向に転がることができる。なお、昇降機構20(基部60)は、ガイド側転動体97を介して第1部材51、第2部材52に支持されている。
【0058】
図8に示すように、操作レバー70は、把持部71と穴部72とカム部9とを備えている。そして、カム部9が基部60の内部に収納されるように、操作レバー70を基部60の内部に位置させる。そして、基部60に備える保持穴部61に操作レバー70の穴部72を合わせる。次に、円柱状の管部材で形成される回動軸としての回動部材90を、基部60の外側から保持穴部61に挿通し、回動部材90を基部60(保持穴部61)に固定する。なお、この状態では、操作レバー70の穴部72の内周面と、回動部材90の外周面とは摺動可能に構成されている。この構成により、操作レバー70は回動部材90を中心(支点)として回動することが可能となる。
【0059】
図5に示すように、操作レバー70は、基部60に支持される。そして、操作レバー70に対して、幅方向X(左右方向)の一方側と他方側とに軸側挿通部62,92が位置する。また、同様に、操作レバー70に対して、幅方向X(左右方向)の一方側と他方側とにガイド側挿通部65が位置する。また、幅方向Xに分かれた軸側挿通部62,92の内周部64,94には3つの軸側転動体96がそれぞれ設置されている。また、幅方向Xに分かれたガイド側挿通部65の上側の内周部67には1つのガイド側転動体97がそれぞれ設置されている。
【0060】
本実施形態では、カム部9は、操作レバー70と連結されて一体に構成されている。そして、カム部9は、操作レバー70の回動運動を昇降部80の高さ方向Zの運動に変換する。
なお、カム部9は、操作レバー70の回転運動を昇降部80の高さ方向Zへの運動に変換できれば、操作レバー70と分割されて構成されて、動作する場合には操作レバー70と連結されることでもよい。
【0061】
図4に示すように、昇降部80にカバー部材85を上方から被せる。そして、カバー部材85および昇降部80を、昇降部80に備えるカム受け部81が基部60の内部に収納され、カム受け部81がカム部9と接触(
図8参照)するようにして、上方から基部60に取り付ける。
【0062】
次に、
図6に示すように、基部60の挿通部としての軸側挿通部62に軸部材としての第1部材51を挿通させる。また、同じく挿通部としてのガイド側挿通部65にガイド部材としての第2部材52をそれぞれ挿通させる。この状態で、基部60を、第1部材51、第2部材52に対して移動させることで、昇降機構20を第1部材51、第2部材52が延設されたロール媒体Rの幅方向Xへ移動させることができる。
上述したように、容易に昇降機構20を組立てることができる。
【0063】
なお、
図7に示すように、基部60(昇降機構20)は、第1部材51に対して移動する場合、軸側挿通部62a,92、及び軸側挿通部62b,92に備えたそれぞれ3つの軸側転動体96が第1部材51と当接して回動することにより幅方向Xに移動する。この場合、常に3つの軸側転動体96が第1部材51と当接するわけではなく、いずれかの軸側転動体96が第1部材51と当接して回動することでよい。
【0064】
また、
図7に示すように、基部60(昇降機構20)は、第2部材52に対して移動する場合、ガイド側挿通部65a及びガイド側挿通部65bの上側に備えた、それぞれ1つのガイド側転動体97が第2部材52に当接して回動することにより幅方向Xに移動する。
上述したように、基部60(昇降機構20)は、第1部材51、第2部材52に対して移動する。
【0065】
図8は、基部60内部での操作レバー70の状態を示す側断面図である。
図8は、ロール媒体Rを載置部22に載置した状態であり、また、操作レバー70を動作させる前の状態(ロール媒体Rを持ち上げる前の状態)を示しており、操作レバー70のカム部9と、昇降部80(カム受け部81)との位置関係を示している。
【0066】
図8に示すように、昇降部80は、基部60の内側に組み込まれており、操作レバー70により鉛直方向(高さ方向Z)に案内される。また、昇降部80の上方は、ロール媒体Rが載置される載置部22が設けられている。昇降部80の下方に備えるカム受け部81は、操作レバー70のカム部9と接触している。カバー部材85は、昇降部80が上昇したとき、昇降部80と基部60との隙間を覆う。
【0067】
昇降機構20の動作を説明し、併せて、昇降機構20を用いて第1ホルダー部30にロール媒体Rを取付ける手順(方法)を説明する。
【0068】
ロール媒体Rは、2つの昇降機構20の載置部22に載置されていることを前提とする。本実施形態での第1ホルダー部30にロール媒体Rを取付ける手順を簡単に説明する。
最初に、基準となる一方の第1ホルダー部30側の昇降機構20に対して操作レバー70を把持して回動させて一端側のロール媒体Rの位置を一方の第1ホルダー部30の嵌合部13の高さ位置に合わせる。次に、回動させた操作レバー70を把持したまま、ガイド部50に沿って基準となる一方の第1ホルダー部30側に移動させ、嵌合部13に芯口12を嵌合させる。
【0069】
次に、他方の昇降機構20に対して操作レバー70を把持して回動させ、他端側のロール媒体Rの位置を他方の第1ホルダー部30の嵌合部13の高さ位置に合わせる。次に、他方の第1ホルダー部30を移動させて、芯口12に嵌合部13を嵌合させる。この手順により、第1ホルダー部30にロール媒体Rを取付けることができる。
【0070】
図9は、ロール媒体Rを持ち上げる前の第1ホルダー部30を示す正面図である。なお、
図9では、一対の第1ホルダー部30の内、幅方向Xにおけるロール媒体Rの基準位置を決めるための基準となる一方の第1ホルダー部30を示している。本実施形態では、基準となる一方の第1ホルダー部30とは、装置左側(+X方向)の第1ホルダー部30となる。他方の装置右側(-X方向)の第1ホルダー部30も構成は同様であるため、一方の第1ホルダー部30について説明し、他方についての説明は省略する。
【0071】
本実施形態の嵌合部13は、第1支持部13aと第2支持部13bと傾斜部13cと段差13dとを有している。第1支持部13aは、芯口のサイズが第1のサイズのロール媒体(R)のロール芯(11)の芯口(12)に嵌り、第1のサイズのロール媒体(R)を支持する。一方、第2支持部13bは、第1のサイズより芯口が大きい第2のサイズのロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌り、第2のサイズのロール媒体Rを支持する。
【0072】
第1支持部13a及び第2支持部13bは、嵌合部13の先端側(ロール媒体R側)へ向かって徐々に細くなるように幅方向Xに対して若干傾いている。つまり、円錐の外周面のように若干傾斜している。また、第1支持部13aと第2支持部13bとの間には段差13dが形成されている。そして、第1支持部13aと第2支持部13bとを繋ぐように傾斜部13cが形成されている。傾斜部13cにより、第2のサイズのロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌合部13の第2支持部13bをスムーズに嵌め込むことができる。なお、本実施形態では、第2のサイズのロール媒体Rとして説明する。
【0073】
図10は、ロール媒体Rの持ち上げ途中の動作を示す側断面図である。
図11は、ロール媒体Rを所定の高さまで持ち上げる動作を示す側断面図である。
【0074】
図8、
図9に示すように、ロール媒体Rを載置部22に載置した状態から、
図10に示すように、操作レバー70の把持部71を把持して、回動部材90を中心に図中の反時計回り方向に回動させる。この場合、テコの原理に基づいて、操作レバー70の回動中心である支点Bから、操作レバー70に力を加える力点Cまでの距離は、操作レバー70の回動中心(支点B)からカム部9におけるカム受け部81と当接する箇所9aである作用点Dまでの距離と比較して、十分に長いものとする。また、作用点Dは、支点Bに対して力点C側にあるものとする。
【0075】
図10に示すように、操作レバー70の回動に伴い、カム部9が反時計回り方向に回動する。そして、作用点Dが支点Bに対して力点C側にあるので、操作レバー70を反時計回り方向に回動させた場合において、カム部9は、昇降部80のカム受け部81に対して上方へ押し上げる力を作用させる。これにより、昇降部80は上方へ移動する。そして、昇降部80はロール媒体Rを上方へ移動させる。この場合、昇降機構20は、テコの原理により、ユーザーの比較的小さい力を大きな力に変換し、高重量のロール媒体Rを上方へ持ち上げることができる。
【0076】
カム部9がカム受け部81と当接する箇所9aは、昇降部80の移動方向(高さ方向Z)を向いている。従って、カム部9がカム受け部81に対して作用する力の向きは、昇降部80の移動方向である。言い換えると、昇降部80の移動方向に対して横方向の力が作用しない。従って、昇降部80と基部60との間の摩擦抵抗を限りなく小さくすることができる。その結果、力のロスを最小にすることができ、その分容易にロール媒体Rを持ち上げることができる。
【0077】
なお、カム部9が回転運動することに対して、カム受け部81は直線運動をする。そのため、カム部9とカム受け部81との間に摩擦が生じるが、当接する箇所9aを滑らかにすることにより、殆ど影響がないようにすることができる。
【0078】
図10の状態から操作レバー70を図中の反時計回り方向へさらに回動させる。すると、カム部9がさらに回動する。これにより、昇降部80はさらに上方へ移動する。そして、昇降部80はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。この場合、昇降部80と基部60との間に取り付けられたカバー部材85は、所定の位置で昇降部80と当接する。本実施形態では、昇降部80の外側面とカバー部材85の内側面とが当接する。
【0079】
そして、操作レバー70を反時計回り方向へさらに回動させる。すると、
図11に示すように、カム部9がさらに回動し、昇降部80はさらに上方へ移動し、昇降部80はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。このようにして、ロール媒体Rの芯口12が、所定の高さとしての第1ホルダー部30の嵌合部13の高さに略位置するまで移動させる。
【0080】
このとき、カバー部材85は、昇降部80と一体となって上方へ移動する。そして、カバー部材85は、昇降部80が上方へ移動することによって生じる昇降部80と基部60との間の隙間を塞ぐ。従って、隙間に物が入り込むことや、誤って隙間に手を挟んでしまうこと等を防止することができる。特に、昇降部80の移動する距離が比較的長い場合に隙間が生じるため、カバー部材85を有する構成は有効となる。
【0081】
図12は、嵌合部13の高さまでロール媒体Rを持ち上げた状態を示す正面図である。
図13は、昇降機構20を移動させて嵌合部13に嵌合させた状態を示す正面図である。
図12に示すように、操作レバー70を回動させて、基準となる一方の第1ホルダー部30の嵌合部13の高さと、基準となる一方の第1ホルダー部30に相対する一端側のロール媒体Rのロール芯11の芯口12の高さとを略同じにする。
【0082】
次に、ロール媒体Rの高さを維持しながら、操作レバー70を把持した状態で、一端側のロール媒体Rを載置する一方の昇降機構20を、基準となる一方の第1ホルダー部30側へ移動させる。なお、この時、他端側のロール媒体Rを載置している他方の昇降機構20は、操作レバー70を把持していなくても、ロール媒体Rと載置部22との間に働く摩擦力により、一方の昇降機構20の移動に伴って移動する。そして、一端側のロール芯11の芯口12に、基準となる一方の第1ホルダー部30の嵌合部13を簡易的に嵌めこむ。
【0083】
さらに、ユーザーが所定の大きさの力で、一方の昇降機構20を、操作レバー70を把持した状態で、基準となる一方の第1ホルダー部30側へ押す。すると、
図13に示すように、一端側のロール媒体Rのロール芯11の芯口12に、嵌合部13の第2支持部13bが嵌め込まれる。
【0084】
なお、基準となる一方の第1ホルダー部30に、一端側のロール媒体Rを取り付けた場合、操作レバー70の把持を止めてもよい。止めた場合には、操作レバー70は元の姿勢(
図7参照)に戻り、昇降部80が下がる。
【0085】
上述したように、ロール媒体Rを移動させた場合、詳細には、ロール媒体Rは、一端側のロール媒体Rの高さと他端側のロール媒体Rの高さとが異なる。言い換えると、ロール媒体Rは、軸方向に対して傾いている。しかし、本実施形態では、ロール媒体Rの芯口12と嵌合部13との嵌合に関し、嵌合部13の第1支持部13a、第2支持部13bの外周面に傾斜を有すること等により、嵌合の度合いをある程度許容する構造となっている。そのため、芯口12の中心位置と嵌合部13の中心位置とが多少ずれていても(ロール媒体Rが傾いていても)嵌合することには影響を与えない。
【0086】
次に、他端側のロール媒体Rに対して、他方の昇降機構20を前述と同様に動作させ、他端側のロール媒体Rの芯口12の位置を、他方の第1ホルダー部30の嵌合部13の位置に合わせる。そして、他方の第1ホルダー部30のつまみ部36を回動して緩め、今度は、他方の第1ホルダー部30を他端側のロール媒体Rの側に移動させる。そして、他方の第1ホルダー部30の嵌合部13を、他端側のロール媒体Rの芯口12に嵌め込む。
【0087】
その後、つまみ部36を回動して締め付けて、第1部材51に対して他方の第1ホルダー部30を固定する。その後、他方の昇降機構20の操作レバー70の把持を止め、操作レバー70を元の姿勢(
図7参照)に戻して、昇降部80を下げる。
以上の動作により、ロール媒体Rを第1ホルダー部30に取付けることができる。
【0088】
なお、上述した取付け方法によれば、一人で片側ずつ嵌合部13と芯口12とを嵌め込んで、ロール媒体Rを第1ホルダー部30に取付けることができる。また、この取付け方法により、ロール媒体Rの幅サイズの違いに対応させると共に、幅方向Xにおけるロール媒体Rの基準位置(メディア端位置)をずらさないように取付けることができる。
【0089】
なお、二人で協働することにより、基準となる一方の第1ホルダー部30の嵌合部13に一端側のロール媒体Rの芯口12を嵌合させることと、他端側のロール媒体Rの芯口12に他方の第1ホルダー部30の嵌合部13を嵌合させることとを、略同じタイミングで行う事でもよい。
【0090】
次に、第1ホルダー部30に取付けられたロール媒体Rを下ろす動作について説明する。
一度取付けたロール媒体Rを使い切る場合は、ロール芯11だけ残ることになるが、ロール芯11は比較的軽いので、そのまま取り外しても問題はない。しかし、例えば、一度取付けたロール媒体Rを使い切る前に、他のサイズのロール媒体Rや他の種類のロール媒体Rに取付け直したい場合がある。このような場合には、既に取付けてある重量が重いロール媒体Rを第1ホルダー部30から取り外して下ろす必要がある。
【0091】
この場合、最初に、他方の昇降機構20の操作レバー70を回動させて、昇降部80を上方へ移動させ、他端側のロール媒体Rに接近させる。具体的には、取付けられているロール媒体Rに昇降部80の載置部22が当接するように、昇降部80を移動(上昇)させる。そして、他端側のロール媒体Rに載置部22を当接させた状態で、他方の第1ホルダー部30を幅方向Xに沿って外側へ移動させ、他方の第1ホルダー部30の嵌合部13を他端側のロール媒体Rの芯口12から取り外す。そして、他方の昇降機構20の操作レバー70を下げることで、昇降部80を下方へ移動させる。
【0092】
その後、一方の昇降機構20の操作レバー70を回動させて、一端側のロール媒体Rに昇降部80の載置部22が当接するように昇降部80を移動(上昇)させる。併せて、一方の昇降機構20を幅方向Xに沿って移動させることにより、一端側のロール媒体Rの芯口12を基準となる一方の第1ホルダー部30の嵌合部13から取り外す。そして、一方の昇降機構20の操作レバー70を下げることで、昇降部80を下方へ移動させる。
以上の動作により、第1ホルダー部30に取付けられたロール媒体Rを下ろすことができる。
【0093】
なお、上記では、基準となる一方の第1ホルダー部30を基準にして、相対する一端側のロール媒体Rを載置する一方の昇降機構20により移動させ、嵌合部13にロール媒体Rの芯口12を嵌合させている。しかし、一方の第1ホルダー部30を基準としなくてもよい場合には、他方の第1ホルダー部30と同様に、一方の昇降機構20に載置した一端側のロール媒体R側に一方の第1ホルダー部30を移動させて、芯口12に嵌合部13を嵌合させてもよい。
【0094】
図14は、昇降機構20を幅方向Xに移動させた場合の基部60の内部を示す概断面図である。
図14、
図7を参照して、基部60が移動する場合の詳細を説明する。
【0095】
本実施形態では、上述したように、基準となる一方の第1ホルダー部30の嵌合部13に向けて、一方の昇降機構20を第1部材51、第2部材52に対して移動させている。この場合、詳細には、操作レバー70を把持して、支点Bを中心に回動させてロール媒体Rの高さを嵌合部13の高さに合わせ、その状態で、操作レバー70を第1部材51に沿って嵌合部13に向けて移動させる。このような移動を行う場合、
図14に示すように、基部60は、操作レバー70の操作により、X,Y,Z軸周りにそれぞれ回転する力が働くことで傾いた状態(いわゆる、こじれた状態)で移動することになる。
【0096】
本実施形態では、
図7に示すように、3つの軸側転動体96が第1部材51の外周面の3方向を支持する構成となっている。また、この3つの軸側転動体96を有する軸側挿通部62(92)が、軸方向に2組設置される形態となっている。このため、こじれた状態で移動する場合にも、そのこじれ(傾き)を小さくすることができる。従って、軸側転動体96を用いない場合(従来の場合)に比べて、摩擦抵抗を極力小さくでき、小さい力で移動させることができる。
【0097】
発明者が実施したシミュレーション結果では、例えば、荷重が60kgのロール媒体Rを用いる場合、言い換えると、片側の昇降機構20には30kgの荷重が掛かる場合、従来のように、軸側転動体96を用いずにガイド部を摺動させる昇降機構の構成では、12kg(摩擦係数は0.4)のスラスト荷重となる。言い換えると、ガイド部を移動(摺動)させるには12kgfの力が必要となる。従って、従来の構成では、到底摺動させることができないことが考えられる。
【0098】
これに対し、本実施形態の軸側転動体96を用いる昇降機構20の構成の場合には、1.5kg(摩擦抵抗は0.05)のスラスト荷重となる。言い換えると、1.5kgfの力で移動させることができる。従って、高重量のロール媒体Rであっても軽い力で移動させるこが可能となる。
【0099】
なお、軸側転動体96は、一方の内周部64aと他方の内周部64bとのいずれか一方に設けられてもよい。すなわち、軸側転動体96は、一方の内周部64aと他方の内周部64bとの少なくとも一方に設けられていればよい。また、少なくとも高さ方向Zと平行な鉛直線方向において、第1部材51と重なる位置に、少なくとも一つの軸側転動体96が設けられることが好ましい。これは、昇降機構20に掛かる荷重がロール媒体Rの重さに起因し、当該荷重が鉛直線方向において第1部材51と重なる位置に作用するからである。従って、鉛直線方向において第1部材51と重なる位置に少なくとも一つの軸側転動体96が設けられていれば、昇降機構20に掛かる荷重を抑制することができる。
【0100】
また、
図7に示すように、本実施形態では、軸側挿通部62,92の内周部64,94と、第1部材51との間には、隙間が形成される構成としている。なお、この隙間は、基部60が移動する際に、基部60が第1部材51に対して傾いた(こじれた)場合にも、軸側挿通部62,92の内周部64,94と、第1部材51の外周面とが当接しない隙間となるように設定されている。すなわち、複数の軸側転動体96の少なくとも一部が軸側挿通部62,92の内周部64,94から突出することにより、軸側挿通部62,92の内周部64,94と第1部材51との間に所定のギャップを形成することができる。これにより、第1部材51の軸方向(幅方向X)に昇降機構20を移動させる際に、軸側挿通部62,92の内周部64,94と第1部材51とが直接接触して摺動することを防止でき、摩擦抵抗を低減することができる。従って、基部60が移動する際に基部60が第1部材51に対して傾いても、摺動による摩擦抵抗が抑制され、移動しやすくなる。
【0101】
また、従来は、操作レバー70の支点Bとなる回動部材90が、幅方向Xに移動する際のガイド部になっていた。しかし、本実施形態では、回動部材90は操作レバー70の支点Bとして用いるのみであり、移動する際のガイド部50は、回動部材90とは別部材となる第1部材51、第2部材52を用いて構成している。
【0102】
従来のように、回動部材90が、回動の支点として機能すると共に、移動する際のガイド部として機能する場合には、ロール媒体Rの荷重が重くなった場合、操作レバー70(昇降機構20)がこの回動部材90に対して傾いた(こじれた)状態となる。なお、この構成の場合、操作レバー70が回動部材90に対して回動することで、操作レバー70が回動部材90に巻きつくように作用し、さらに傾いた(こじれた)状態となる。そのため、摩擦抵抗がさらに大きくなり、操作レバー70(昇降機構20)を移動(摺動)させることは困難となる。
【0103】
これに対し、本実施形態では、操作レバー70の支点Bをガイド部50とは別の部材(回動部材90)として構成している。言い換えると、ガイド部50を構成する第1部材51、第2部材52は、操作レバー70の支点Bとなる軸部材として用いない構成としている。
【0104】
図7に示すように、ガイド側転動体97は、ガイド側挿通部65(65a,65b)において、上側の内周部67に1つずつ設置されている。この構成によれば、ロール媒体Rの荷重を受けるガイド側転動体97が上方に設置される構成により、ロール媒体Rの荷重を効率的に受けることができ、基部60を移動しやすくしている。
【0105】
また、
図7に示すように、本実施形態では、ガイド側挿通部65の下側の内周部67(突出部68の内周部67)と、第2部材52の下側の外周面とには、隙間が形成される構成としている。なお、この隙間は、基部60が移動する際に、第2部材52に対して傾いた(こじれた)場合にも、第2部材52の下側の外周面と、突出部68の内周部67とが当接しない隙間となるように設定されている。従って、基部60が移動する際に基部60が第2部材52に対して傾いても、摺動による摩擦抵抗が抑制され、移動しやすくなる。
【0106】
図15、
図16は、変形例に係る軸側転動体96の設置位置を示す側断面図である。詳細には、
図15、
図16は、ガイド部50の第1部材51の外周面を受ける軸側転動体96の配置関係を示している。
【0107】
本実施形態では、
図7に示すように、3つの軸側転動体96が第1部材51の外周面の3方向を支持する構成となっている。しかし、軸側転動体96の設置の仕方はこれには限られない。
図15に示すように、軸側転動体96は、第1部材51を中心として、鉛直方向となる上方向に1つ設置すると共に、水平方向となる左右方向と、重力方向となる下方向とに、略90度の角度で、それぞれ1つずつ設置することで、合計4つ設置することでもよい。このような構造でも、ロール媒体Rの重量を効率的に受けることができ、昇降機構20を幅方向Xに容易に移動させることができる。
【0108】
また、
図16に示すように、
図15に示す軸側転動体96に対して、45度それぞれ傾けて設置することでもよい。言い換えると、軸側転動体96は、鉛直方向と水平方向との中間の方向、及び重力方向と水平方向との中間の方向にそれぞれ2つずつ設置することで、合計4つ設置することでもよい。このような構造でも、ロール媒体Rの重量を効率的に受けることができ、昇降機構20を幅方向Xに容易に移動させることができる。
【0109】
本実施形態では、軸側転動体96は、第1部材51を中心として、鉛直方向となる上方向に1つ設置し、水平方向から重力方向となる下方向に、略30度傾いた位置にそれぞれ1つ設置している。しかし、これに限られず、軸側転動体96は、第1部材51を中心として、重力方向となる下方向に1つ設置し、水平方向から鉛直方向となる上方向に、略30度傾いた位置にそれぞれ1つ設置してもよい。また、軸側転動体96は、第1部材51を中心として、水平方向から鉛直方向となる上方向に、略30度傾いた位置にそれぞれ1つ設置し、重力方向となる下方向には設置しないことで、合計2つ設置することでもよい。
【0110】
本実施形態では、装置左側(+X方向)の第1ホルダー部30を基準としてロール媒体Rを取付けているが、これには限られない。双方の第1ホルダー部30を移動してロール媒体Rを取付けてもよい。
【0111】
本実施形態の昇降機構20は、媒体繰出し部26に適用しているが、媒体巻取り部37に適用することでもよい。
【0112】
本実施形態では、昇降機構20は、位置調整部として、操作レバー70とカム部9とを備えている。しかし、この構成には限られず、昇降機構20は、位置調整部として、ボールネジを備えることで、装置高さ方向Zにおいて、昇降部80の位置を昇降させることでもよく、位置調整部として、ジャッキを備えることで、昇降部80の位置を昇降させることでもよい。
【0113】
以上、本実施形態に係るプリンター1(記録装置)によれば、以下の効果を得ることができる。
【0114】
本実施形態のプリンター1によれば、昇降機構20は、昇降部80と、回動部材90を中心として回動する操作レバー70と、カム部9と、昇降部80と回動部材90とを支持する基部60と、を備えている。なお、操作レバー70とカム部9とは位置調整部を構成している。また、基部60は、基部60を支持する第1部材51が挿通され、軸側挿通部62,92を有し、軸側挿通部62,92の内周部64,94には、3つの軸側転動体96が設置されている。軸側転動体96は、第1部材51の軸方向から見て、内周部64,94から突出している。
この構成により、ユーザーがロール媒体Rを昇降部80に載置した状態で、操作レバー70を把持して第1部材51の軸方向に昇降機構20を移動させる際に、内周部64,94と第1部材51とは直接接触せずに、第1部材51と軸側転動体96とが接触することになるため、直接接触する場合に比べて摩擦抵抗を低減することができる。
また、3つの軸側転動体96の少なくとも一部が内周部64,94から突出することにより、内周部64,94と第1部材51との間に所定のギャップを形成することができる。これにより、第1部材51の軸方向に昇降機構20を移動させる際に、内周部64,94と第1部材51とが直接接触して摺動することを防止でき、摩擦抵抗を低減することができる。
【0115】
従って、ロール媒体Rが高重量化した場合であっても、摩擦抵抗を低減することができるため、ロール媒体Rを第1部材51の軸方向(幅方向X)に移動させることが容易となる。また、ロール媒体Rを第1部材51の幅方向に移動させることが容易となるため、本実施形態では、基準位置となる装置左側(+X方向)の第1ホルダー部30にロール媒体Rを移動させることができることで、ロール媒体Rの基準位置(メディア端位置)を容易に合わせることができる。これにより、従来のように、ロール媒体Rの基準位置がずれることによるユーザーの第1ホルダー部30位置の再設定は必要なくなり、ユーザーの負担を無くすることができる。
【0116】
本実施形態のプリンター1によれば、軸側転動体96は、軸方向(幅方向X)と装置の高さ方向Zとに直交すると共に、第1部材51の中心Oを通る直線A(仮想直線)に対して、直線Aよりも高さ方向Z上側における軸側挿通部62aの内周部64aに設置されている。また、軸側転動体96は、直線Aよりも高さ方向Z下側における軸側挿通部92の内周部94に設置されている。詳細には、直線Aを中心とする水平面から下方向で両側に30度傾いた位置に相対する2つの内周部94に、回転軸を幅方向Xと直交(直線Aと直交)させて、それぞれ軸側転動体96が設置されている。このように軸側転動体96は、3つで構成されている。この構成により、軸側挿通部62,92の内周部64,94と、第1部材51との摺動に起因する摺動抵抗をさらに抑制しつつ、高さ方向Zに働く負荷を効果的に分散することができる。
【0117】
本実施形態のプリンター1によれば、軸側挿通部62a,92の内周部64a,94に設置される3つの軸側転動体96と、軸側挿通部62b,92の内周部64b,94に設置される3つの軸側転動体96とは、軸方向に並んで配置されている。この構成により、昇降機構20を軸方向に移動させる際に、昇降機構20が第1部材51に対して傾いても、軸方向に並んだ3つの軸側転動体96により、それぞれの当接箇所で力を受けるため、こじれが生じ難くなる。
【0118】
本実施形態のプリンター1によれば、基部60は、第1部材51と共に第2部材52が挿通されて支持される。なお、第2部材52は、第1部材51から所定距離離間して設置されている。そして、基部60は、ガイド側挿通部65を有し、ガイド側挿通部65の内周部67には、高さ方向Z上側から第2部材52に当接可能なガイド側転動体97が設置されている。この構成によれば。昇降機構20が第2部材52と直接接触することによる摺動抵抗を抑制することができる。
【0119】
本実施形態のプリンター1によれば、基部60は、ガイド側挿通部65の内周部67において、高さ方向Z下側から第2部材52に対向する突出部68を有している。なお、突出部68を有さない場合には、回動部材90を中心として操作レバー70を回転させた場合、基部60が回動部材90を中心に回転してしまう可能性がある。しかし、この構成により、基部60は、回動部材90を中心として操作レバー70を回転させた場合であっても、回動部材90の回りに基部60(昇降機構20)が回動することを規制することができる。
【0120】
また、本実施形態に係る昇降機構20によれば、以下の効果を得ることができる。
【0121】
本実施形態の昇降機構20によれば、昇降部80と、回動部材90を中心として回動する操作レバー70と、カム部9と、昇降部80と回動部材90とを支持する基部60と、を備えている。なお、操作レバー70とカム部9とは位置調整部を構成している。また、基部60は、基部60を支持する第1部材51が挿通され、軸側挿通部62,92を有し、軸側挿通部62,92の内周部64,94には、3つの軸側転動体96が設置されている。軸側転動体96は、第1部材51の軸方向から見て、内周部64,94から突出している。
この構成により、ユーザーがロール媒体Rを昇降部80に載置した状態で、操作レバー70を把持して第1部材51の軸方向に昇降機構20を移動させる際に、内周部64,94と第1部材51とは直接接触せずに、第1部材51と軸側転動体96とが接触することになるため、直接接触する場合に比べて摩擦抵抗を低減することができる。
また、3つの軸側転動体96の少なくとも一部が内周部64,94から突出することにより、内周部64,94と第1部材51との間に所定のギャップを形成することができる。これにより、第1部材51の軸方向に昇降機構20を移動させる際に、内周部64,94と第1部材51とが直接接触して摺動することを防止でき、摩擦抵抗を低減することができる。
【0122】
従って、ロール媒体Rが高重量化した場合であっても、摩擦抵抗を低減することができるため、ロール媒体Rを第1部材51の軸方向(幅方向X)に移動させることが容易となる。また、ロール媒体Rを第1部材51の幅方向に移動させることが容易となるため、本実施形態では、基準位置となる装置左側(+X方向)の第1ホルダー部30にロール媒体Rを移動させることができることで、ロール媒体Rの基準位置(メディア端位置)を容易に合わせることができる。これにより、従来のように、ロール媒体Rの基準位置がずれることによるユーザーの第1ホルダー部30位置の再設定は必要なくなり、ユーザーの負担を無くすることができる。
【0123】
本実施形態の昇降機構20によれば、軸側転動体96は、軸方向(幅方向X)と装置の高さ方向Zとに直交すると共に、第1部材51の中心Oを通る直線A(仮想直線)に対して、直線Aよりも高さ方向Z上側における軸側挿通部62aの内周部64aに設置されている。また、軸側転動体96は、直線Aよりも高さ方向Z下側における軸側挿通部92の内周部94に設置されている。詳細には、直線Aを中心とする水平面から下方向で両側に30度傾いた位置に相対する2つの内周部94に、回転軸を幅方向Xと直交(直線Aと直交)させて、それぞれ軸側転動体96が設置されている。このように軸側転動体96は、3つで構成されている。この構成により、軸側挿通部62,92の内周部64,94と、第1部材51との摺動に起因する摺動抵抗をさらに抑制しつつ、高さ方向Zに働く負荷を効果的に分散することができる。
【0124】
本実施形態の昇降機構20によれば、軸側挿通部62a,92の内周部64a,94に設置される3つの軸側転動体96と、軸側挿通部62b,92の内周部64b,94に設置される3つの軸側転動体96とは、軸方向に並んで配置されている。この構成により、昇降機構20を軸方向に移動させる際に、昇降機構20が第1部材51に対して傾いても、軸方向に並んだ3つの軸側転動体96により、それぞれの当接箇所で力を受けるため、こじれが生じ難くなる。
【0125】
本実施形態の昇降機構20によれば、基部60は、第1部材51と共に第2部材52が挿通されて支持される。なお、第2部材52は、第1部材51から所定距離離間して設置されている。そして、基部60は、ガイド側挿通部65を有し、ガイド側挿通部65の内周部67には、高さ方向Z上側から第2部材52に当接可能なガイド側転動体97が設置されている。この構成によれば。昇降機構20が第2部材52と直接接触することによる摺動抵抗を抑制することができる。
【0126】
本実施形態の昇降機構20によれば、基部60は、ガイド側挿通部65の内周部67において、高さ方向Z下側から第2部材52に対向する突出部68を有している。なお、突出部68を有さない場合には、回動部材90を中心として操作レバー70を回転させた場合、基部60が回動部材90を中心に回転してしまう可能性がある。しかし、この構成により、基部60は、回動部材90を中心として操作レバー70を回転させた場合であっても、回動部材90の回りに基部60が回動することを規制することができる。
【0127】
以下に、上述した実施形態から導き出される内容を記載する。
【0128】
記録装置は、ロール状メディアを昇降させる昇降機構を備える記録装置であって、昇降機構は、装置高さ方向に昇降し、ロール状メディアが載置される昇降部と、装置高さ方向において、昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、昇降部と位置調整部とを支持する基部と、を備え、基部は、基部を支持する軸部材が挿通され、軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置され、軸部材が延設される軸方向から見て、複数の転動体は、挿通部の内周部から突出していることを特徴とする。
【0129】
この構成によれば、記録装置は、ロール状メディアを昇降させる昇降機構を備える記録装置であって、昇降機構を備えている。昇降機構は、昇降部と位置調整部と基部と軸部材とを備えている。基部は挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置されている。また、複数の転動体は、軸部材が延設される軸方向から見て、挿通部の内周部から突出している。
このように構成される記録装置において、挿通部の内周部に設置される複数の転動体により、ユーザーがロール状メディアを昇降部に載置した状態で、位置調整部(例えば操作レバー)を把持して軸部材の軸方向に昇降機構を移動させる際に、挿通部の内周部と軸部材とが直接接触して摺動する場合に比べて摩擦抵抗が小さくなる。
また、複数の転動体の少なくとも一部が挿通部の内周部から突出することにより、挿通部の内周部と軸部材との間に所定のギャップを形成することができる。これにより、軸部材の軸方向に昇降機構を移動させる際に、挿通部の内周部と軸部材とが直接接触して摺動することを防止でき、摩擦抵抗を低減することができる。
従って、ロール状メディアが高重量化した場合であっても、摩擦抵抗を低減することができるため、ロール状メディアを軸部材の軸方向(幅方向)に移動させることが容易となる。
【0130】
上記の記録装置において、複数の転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に、軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部と、に設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されていることが好ましい。
【0131】
この構成によれば、昇降部にロール状メディアが載置された場合、重量による負荷は装置高さ方向に働くことになる。転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部とに設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されている。従って、挿通部の内周部と軸部材との摺動に起因する摺動抵抗をさらに抑制しつつ、装置高さ方向に働く負荷を効果的に分散することができる。
【0132】
上記の記録装置において、複数の転動体は、軸方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0133】
この構成によれば、複数の転動体が、軸方向に並んで配置されることにより、昇降機構を軸方向に移動させる際に、昇降機構が軸部材に対して傾いても、軸方向に並んだ複数の転動体により、複数の当接箇所で力を受けるため、こじれが生じにくくなる。
【0134】
上記の記録装置において、軸部材から所定距離離間して設置され、軸部材と共に昇降機構を支持するガイド部材を備え、基部は、ガイド部材が挿通され、ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部を有し、ガイド側挿通部の内周部には、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることが好ましい。
【0135】
この構成によれば、軸部材から所定距離離間して設置され、軸方向と平行に設置されたガイド部材により、昇降機構の軸方向への移動をガイドすることができる。さらに、基部(昇降機構)は、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体を有する。これにより、昇降機構がガイド部材と直接接触することによる摺動抵抗を抑制することができる。
【0136】
上記の記録装置において、基部は、ガイド側挿通部の内周部において、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有していることが好ましい。
【0137】
この構成によれば、昇降機構は、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体を有し、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有する。これにより、回動軸を中心として操作レバーを回転させた場合であっても、回動軸回りに昇降機構が回動することを規制することができる。
【0138】
昇降機構は、装置高さ方向に昇降し、ロール状メディアが載置される昇降部と、装置高さ方向において、昇降部の位置を調整可能な位置調整部と、昇降部と位置調整部とを支持する基部と、を備え、基部は、基部を支持する軸部材が挿通され、軸部材の外周部と対向する内周部を有する挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置され、軸部材が延設される軸方向から見て、複数の転動体は、挿通部の内周部から突出していることを特徴とする。
【0139】
この構成によれば、昇降機構は、ロール状メディアを昇降させる昇降機構であって、昇降部と位置調整部と基部と軸部材とを備えている。基部は挿通部を有し、挿通部の内周部には、複数の転動体が設置されている。また、複数の転動体は、軸部材が延設される軸方向から見て、挿通部の内周部から突出している。
このように構成される昇降機構において、挿通部の内周部に設置される複数の転動体により、ユーザーがロール状メディアを昇降部に載置した状態で、位置調整部(例えば操作レバー)を把持して軸部材の軸方向に昇降機構を移動させる際に、挿通部の内周部と軸部材とが直接接触して摺動する場合に比べて摩擦抵抗が小さくなる。
また、複数の転動体の少なくとも一部が挿通部の内周部から突出することにより、挿通部の内周部と軸部材との間に所定のギャップを形成することができる。これにより、軸部材の軸方向に昇降機構を移動させる際に、挿通部の内周部と軸部材とが直接接触して摺動することを防止でき、摩擦抵抗を低減することができる。
従って、ロール状メディアが高重量化した場合であっても、摩擦抵抗を低減することができるため、ロール状メディアを軸部材の軸方向(幅方向)に移動させることが容易となる。
【0140】
上記の昇降機構において、複数の転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に、軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部と、に設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されていることが好ましい。
【0141】
この構成によれば、昇降部にロール状メディアが載置された場合、重量による負荷は装置高さ方向に働くことになる。転動体は、軸方向と装置高さ方向とに直交すると共に軸部材の中心を通る直線に対して、直線よりも装置高さ方向上側における挿通部の内周部と、直線よりも装置高さ方向下側における挿通部の内周部とに設置され、且つ、内周部において、少なくとも3つ設置されている。従って、挿通部の内周部と軸部材との摺動に起因する摺動抵抗をさらに抑制しつつ、装置高さ方向に働く負荷を効果的に分散することができる。
【0142】
上記の昇降機構において、複数の転動体は、軸方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0143】
この構成によれば、複数の転動体が、軸方向に並んで配置されることにより、昇降機構を軸方向に移動させる際に、昇降機構が軸部材に対して傾いても、軸方向に並んだ複数の転動体により、複数の当接箇所で力を受けるため、こじれが生じにくくなる。
【0144】
上記の昇降機構において、軸部材から所定距離離間して設置され、軸部材と共に基部を支持するガイド部材を備え、基部は、ガイド部材が挿通され、ガイド部材の外周部と対向する内周部を有するガイド側挿通部を有し、ガイド側挿通部の内周部には、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体が設置されていることが好ましい。
【0145】
この構成によれば、軸部材から所定距離離間して設置され、軸方向と平行に設置されたガイド部材により、昇降機構の軸方向への移動をガイドすることができる。さらに、基部は、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体を有する。これにより、昇降機構がガイド部材と直接接触することによる摺動抵抗を抑制することができる。
【0146】
上記の昇降機構において、基部は、ガイド側挿通部の内周部において、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有していることが好ましい。
【0147】
この構成によれば、基部は、装置高さ方向上側からガイド部材に当接可能なガイド側転動体を有し、装置高さ方向下側からガイド部材に対向する突出部を有する。これにより、回動軸を中心として操作レバーを回転させた場合であっても、回動軸回りに昇降機構が回動することを規制することができる。
【符号の説明】
【0148】
1…記録装置としてのプリンター、9…位置調整部としてのカム部、13…嵌合部、20…昇降機構、22…載置部、30…第1ホルダー部、51…軸部材としての第1部材、52…ガイド部材としての第2部材、60…基部、62…挿通部としての軸側挿通部、64…挿通部の内周部、65…ガイド側挿通部、67…ガイド側挿通部の内周部、68…突出部、70…位置調整部としての操作レバー、80…昇降部、90…回動軸としての回動部材、92…挿通部としての軸側挿通部、94…挿通部の内周部、96…転動体としての軸側転動体、97…ガイド側転動体、A…軸部材の中心を通る直線、R…ロール状メディアとしてのロール媒体、Z…装置の高さ方向。