(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】配策材の結束構造
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20240307BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20240307BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16B2/08 U
F16B19/00 C
H02G3/32
(21)【出願番号】P 2018195427
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】徳永 睦
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大下 慎史
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】吉田 昌弘
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296694(JP,A)
【文献】特開2006-191727(JP,A)
【文献】特開2005-263004(JP,A)
【文献】特開2011-196445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16B 17/00- 19/14
H02G 3/22- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであ
り、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側を立ち上がる両側壁部と、を有した配置部が設けられ、
前記結束部は、前記両側壁部の一方から延び出す可撓性を有するベルト部と、前記両側壁部の他方に設けられ、前記ベルト部を係止して抜け止め状態とするバックル部と、を有し、
前記ベルト部には、その長手方向に沿って複数の係止爪部が設けられ、前記バックル部には、上方に開口する係止孔部の内部に、挿入された前記ベルト部が挿入方向の逆向きに抜けないよう前記係止爪部に係止する抜け止め係止部が設けられ、前記係止爪部が前記抜け止め係止部と係止することにより、前記底壁部の載置面に載置されている前記平型配策材の上に重なる前記可撓性配策材を前記載置面側に押し付ける形でそれら平型配策材及び可撓性配策材を結束保持することを特徴とする配策材の結束構造。
【請求項2】
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであ
り、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側を立ち上がる両側壁部と、を有した配置部が設けられ、
前記結束部は、前記両側壁部の一方に設けられたヒンジ部を支点として回転動作可能なクランプ部と、前記両側壁部の他方に設けられ、前記クランプ部を係止して抜け止め状態とするクランプ係合部と、を有し、
前記クランプ部は、断面コ字状に形成され、その先端部に複数の係止爪部が設けられ、前記クランプ係合部には、上方に開口する係止孔部の内部に、進入した前記クランプ部の先端部が進入方向の逆向きに抜けないよう前記係止爪部に係止する抜け止め係止部が設けられ、前記係止爪部が前記抜け止め係止部と係止することにより、前記底壁部の載置面に載置されている前記平型配策材の上に重なる前記可撓性配策材を前記載置面側に押し付ける形でそれら平型配策材及び可撓性配策材を結束保持することを特徴とする配策材の結束構造。
【請求項3】
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであ
り、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した配置部が設けられ、前記配置部は、板状をなしており、
前記結束部は、前記係合部及び前記配置部とは別体のテープ部材であり、前記配置部と前記平型配策材と前記可撓性配策材とがこの順に重なった状態で、前記結束部が少なくとも前記配置部の裏面及び前記平型配策材の上端縁の両部位に支えられる形で、前記配置部、前記平型配策材及び前記可撓性配策材の外周のそれぞれに巻き付いて接着することにより、前記配置部、前記平型配策材及び前記可撓性配策材が一体化されることを特徴とする配策材の結束構造。
【請求項4】
前記係合部は、前記配置部における前記載置面とは逆側の裏面、又は該配置部に載置されている前記平型配策材の側方側に位置する側面から突出形成されている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の配策材の結束構造。
【請求項5】
前記配置部には、前記平型配策材が載置される前記載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側又は両側方のうちの一方側を立ち上がる側壁部と、が設けられ、
前記係合部は、前記底壁部と前記側壁部のいずれか一方から突出形成されている
請求項3に記載の配策材の結束構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配策材の結束構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、信号線や電源線を有した配線群からなるワイヤーハーネスを結束状態で車体に保持するために、特許文献1等のようなクランプが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、信号線をなすワイヤーハーネスと、電源線をなす平型配策材をそれぞれ別に用意して車体に配策されることがある。
【0005】
しかしながら、現状では、ワイヤーハーネスと平型配策材という異種の配策材を車体に配策するにあたって、2つの凹状の収容部が長手状に延出するガイド部材を用いることが検討されている。具体的にいえば、
図10に示すように、ガイド部材1000の2つの凹部1001にワイヤーハーネス1002と平型配策材1003をそれぞれ振り分けて配置し、それらをガイド部材1000ごとベルト部材1004で結束した上で、ガイド部材1000を車体側に固定する手法である。この場合、ガイド部材1000が大型であるためコスト高となり、また、大型の部品を車体に組み付けなければならないため車体への組み付けも難しくなる。
【0006】
本発明の課題は、ワイヤーハーネスと平型配策材といった異なる形状の配策材を車体側に配策するにあたって、低コストで、かつ車体側への組み付け作業性にも優れる配策材の結束構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するための第一の配策材の結束構造は、
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであり、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側を立ち上がる両側壁部と、を有した配置部が設けられ、
前記結束部は、前記両側壁部の一方から延び出す可撓性を有するベルト部と、前記両側壁部の他方に設けられ、前記ベルト部を係止して抜け止め状態とするバックル部と、を有し、
前記ベルト部には、その長手方向に沿って複数の係止爪部が設けられ、前記バックル部には、上方に開口する係止孔部の内部に、挿入された前記ベルト部が挿入方向の逆向きに抜けないよう前記係止爪部に係止する抜け止め係止部が設けられ、前記係止爪部が前記抜け止め係止部と係止することにより、前記底壁部の載置面に載置されている前記平型配策材の上に重なる前記可撓性配策材を前記載置面側に押し付ける形でそれら平型配策材及び可撓性配策材を結束保持することを特徴とする。
また、上記課題を解決するための第二の配策材の結束構造は、
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであり、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側を立ち上がる両側壁部と、を有した配置部が設けられ、
前記結束部は、前記両側壁部の一方に設けられたヒンジ部を支点として回転動作可能なクランプ部と、前記両側壁部の他方に設けられ、前記クランプ部を係止して抜け止め状態とするクランプ係合部と、を有し、
前記クランプ部は、断面コ字状に形成され、その先端部に複数の係止爪部が設けられ、前記クランプ係合部には、上方に開口する係止孔部の内部に、進入した前記クランプ部の先端部が進入方向の逆向きに抜けないよう前記係止爪部に係止する抜け止め係止部が設けられ、前記係止爪部が前記抜け止め係止部と係止することにより、前記底壁部の載置面に載置されている前記平型配策材の上に重なる前記可撓性配策材を前記載置面側に押し付ける形でそれら平型配策材及び可撓性配策材を結束保持することを特徴とする。
また、上記課題を解決するための第三の配策材の結束構造は、
可撓性配策材と、
平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材と前記平型配策材とを結束している結束部と、を有した係合部材と、を備え、
前記平型配策材は、前記可撓性配策材よりも高剛性を有する、電源線を形成する金属製のバスバーであり、
前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した配置部が設けられ、前記配置部は、板状をなしており、
前記結束部は、前記係合部及び前記配置部とは別体のテープ部材であり、前記配置部と前記平型配策材と前記可撓性配策材とがこの順に重なった状態で、前記結束部が少なくとも前記配置部の裏面及び前記平型配策材の上端縁の両部位に支えられる形で、前記配置部、前記平型配策材及び前記可撓性配策材の外周のそれぞれに巻き付いて接着することにより、前記配置部、前記平型配策材及び前記可撓性配策材が一体化されることを特徴とする。
【0008】
上記本発明によれば、可撓性配策材と平型配策材とを重ね合わせた状態とした上で、それらを係合部材の結束部により環状に取り囲めば、容易に結束保持状態とすることができる。このとき、平型配策材を可撓性配策材よりも高剛性の配策材としたならば、撓みやすい可撓性配策材が存在していても、高剛性の平型配策材が支柱となる形で双方を安定して結束できる利点が生まれる。また、結束部は、従来のような配策材の配策方向に沿って延出するガイド部材とは違って、配策材の長手方向の極短い区間においてそれら可撓性配策材や平型配策材を取り囲めばよいため、係合部材は小型で済む。そして、この小型の係合部材は係合部を有しているから、その係合部によって車体側に容易に組み付けることができる。
【0009】
上記本発明における前記係合部は、前記可撓性配策材と前記平型配策材とが前記結束部によって結束された結束状態において、前記可撓性配策材側ではなく前記平型配策材側から突出するように形成できる。この場合、高剛性である平型配策材側に車体側への組み付けのための係合部が存在するため、車体に組み付ける際に係合部がふらつかず安定し、組み付けが容易となる。例えば、上記本発明における前記係合部材は、前記平型配策材がその主裏面を対面させる形で載置される配置部を有し、前記係合部は、前記配置部において当該平型配策材と対向する壁部の当該平型配策材側とは逆側の面から突出形成することができる。
【0010】
上記本発明における前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した配置部が設けられ、前記係合部は、前記配置部における前記載置面とは逆側の裏面、又は該配置部に載置されている前記平型配策材の側方側に位置する側面から突出形成することができる。また、この場合、前記配置部には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側又は両側方のうちの一方側を立ち上がる側壁部と、が設けられ、前記係合部は、前記底壁部と前記側壁部のいずれか一方から突出形成することができる。これらの構成によれば、配策材を確実に避けて係合部を形成できる。
【0011】
上記本発明における前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した配置部が設けられ、前記配置部は、板状をなしており、その板幅が前記平型配策材の幅よりも広く形成することができる。この構成によれば、平型配策材が可撓性を有する薄いフラット電線等であっても、板状の配置部がこれを支持することができ、フラット電線を撓ませることなく安定して結束保持できる。
【0012】
上記本発明における前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した底壁部と、前記底壁部から前記平型配策材の両側方側を立ち上がる側壁部と、を有した配置部が設けられ、それら側壁部の対向幅は、その対向方向における前記平型配策材の幅よりも広く形成できる。平型配策材は可撓性配策材に比べて柔軟性に欠くため、係合部材に結束された状態で車体側に組み付ける際に、車体側の固定孔に対しわずかにずれて、固定孔に挿入係合できない可能性がある。しかしながら上記本発明の構成の場合、両側壁部の対向方向に平型配策材が移動できるから、固定孔に対する位置がずれていても、両側壁部の対向方向に平型配策材をずらすことで、そのずれを吸収することが可能になる。
【0013】
上記本発明における前記係合部材には、前記平型配策材が載置される載置面を有した配置部が設けられ、前記結束部は、前記配置部に載置されている前記平型配策材の上に重なる前記可撓性配策材を前記載置面側に押し付ける形でそれら平型配策材及び可撓性配策材を結束するよう、前記配置部と一体又は別体に形成できる。平型配策材は、その厚み(主表面及びその裏の主裏面の対向幅)が薄い場合、その薄さに起因した変形が生じる可能性があるが、底壁部に主裏面が対面する形で載置され、さらにその主表面が可撓性配策材によって底壁部側に押し付けられることにより、変形を生じることなく安定した配置状態となる。また、この場合、前記係合部は、前記底壁部と前記側壁部のいずれか一方から突出形成させることで、車体に組み付ける際に係合部がふらつかず安定し、組み付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施例をなす配策材の結束構造を、車体に組み付けられた状態で示した正面図。
【
図3】本発明の第二実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。
【
図4】本発明の第三実施例をなす配策材の結束構造を示した側面図。
【
図6】
図1の第一実施例の第一変形例を示した係合部材の正面図。
【
図7】
図1の第一実施例の第二変形例を、
図1と同様の正面図で示した図。
【
図8】
図3の第二実施例の第一変形例を正面図で示した図。
【
図9】
図3の第一実施例の第二変形例を正面図で示した図。
【
図10】従来の異種配策材の結束構造を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施例を、図面を参照して説明する。
【0016】
第一実施例では、
図1に示すように、第一の配策材をなす可撓性配策材2と、第二の配策材をなし、可撓性配策材2よりも高剛性で平板状の平型配策材3と、それらを結束するとともに車体100の所定の固定部101の固定孔101Hに組み付けるための係合部40を有した係合部材4と、を備えた配策材の結束構造1が形成される。
【0017】
可撓性配策材2は、長手状に延出する複数の配線が束をなした可撓性を有する部材である。ここでの可撓性配策材2は、信号線を形成するワイヤーハーネスである。なお、本発明の可撓性配策材2は、ワイヤーハーネスに限るものではない。
【0018】
平型配策材3は、平板状をなして長手状に延出し、可撓性配策材2よりも高剛性かつ低撓性を有する部材である。ここでの平型配策材3は、電源線を形成する金属製のバスバーである。平型配策材3は、外周面を形成する四面がそれぞれ平型配策材3自身の長手方向に延びる平面として形成されている。平型配策材3の主面は、それら外周の四面のうち、最も広面積をなす表裏面3a、3b(主表面3a及び主裏面3b)のことをいうものとする。なお、本発明の平型配策材3は、
図9のようなフラット電線をなすFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)でもよく、バスバーに限るものではない。
【0019】
係合部材4は、
図1及び
図2に示すように、車体100側に組み付けるための係合部40を有する。
【0020】
係合部40は、車体100側に設けられた固定部101の所定の固定孔101Hに挿入されることにより、その固定孔101Hに対し、抜け止め状態となるよう係合して組み付くアンカー部である。ここでの係合部40は、固定孔101Hに挿入される柱部40Bと、柱部40Bと共に固定孔101Hに挿入され、挿入した先で固定孔101Hの周辺部101Rに対し抜け止め状態となるよう係合する弾性係止片40Aと、その抜け止め状態において固定孔101Hの周辺部101Rを弾性係止片40Aとの間で挟み込む当接部40Cと、を有する。
【0021】
弾性係止片40Aは、柱部40Bの先端側(
図1下側)からその基端側(
図1上側)に向かうほど柱部40Bから離れる側に拡がる形状をなし、その基端側が柱部40Bに接近する弾性変形が可能とされている。弾性係止片40Aは、固定孔101Hに対し所定の挿入方向Zに向けて挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rによって孔内向き(矢印R側)に押し込まれ、柱部40Bに接近する弾性変形が生じるが、所定位置まで挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの奥側(
図1下側)から係止し、挿入方向Zの逆向きへの抜けが阻止された抜け止め状態となる。当接部40Cは、その抜け止め状態において、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの手前側(
図1上側)から当接し、弾性係止片40Aとの間で当該周辺部101Rを挟み込む。これにより、係合部40は、固定孔101Hに対し抜け止め状態となって組み付く。
【0022】
また、当接部40Cは、柱部40Bの基端側から挿入方向Zに向けて皿状に広がる形状をなしており、固定孔101Hの周辺部101Rに対し環状をなして当接する。これにより、当接部40Cは、固定孔101Hの挿入方向Zの奥側(
図1下側)から手前側(
図1上側)へと固定孔101Hを通って進入する異物(埃等)を防ぐ役割も果たしている。
【0023】
また、係合部材4は、
図1及び
図2に示すように、平型配策材3を配置するための配置部41と、配置された平型配策材3と可撓性配策材2とを結束して保持する結束部45と、を有する。ここでの係合部材4は、係合部40と配置部41と結束部45とを一体に有し、可撓性配策材2と平型配策材3とを重ね合わせて配置部41に配置して、それらを配置部41側に押し付ける形で結束部45によって結束保持させることで、結束構造1を形成している。
【0024】
配置部41は、平型配策材3がその主裏面3bを対面させる形で載置される底壁部41Aと、底壁部41Aから平型配策材3の両側方側を立ち上がる側壁部41B、41Bと、を有する。ここでの配置部41は、それら側壁部41B、41Bの先端側(
図1上側)の対向間が開放された略U字状(コの字状)をなす。
【0025】
結束部45は、配置部41の開放側(
図1上側:配置部41の収容口側)を覆う位置に配置され、可撓性配策材2及び平型配策材3を載置面41a側に押し付ける形で結束保持する。ここでの結束部45は、配置部41と一体に形成されており、配置部41の底壁部41A上に載置される平型配策材3のその主表面3a上に重なって配置された可撓性配策材2の、さらに上に重なるように配置され、それら平型配策材3及び可撓性配策材2を底壁部41A側(矢印P側)に押し付ける形で結束保持している。
【0026】
結束部45は、側壁部41B、41Bの一方から延び出す可撓性を有したベルト部45Bと、側壁部41B、41Bの他方に設けられ、ベルト部45Bを係止して抜け止め状態とする抜け止め部としてのバックル部45Aと、を有する。バックル部45Aは、側壁部41B、41Bの他方として形成され、上方に開口する係止孔部45Hを有し、ベルト部45Bは、その先端側から係止孔部45Hに挿入される。
【0027】
具体的にいえば、ベルト部45Bには、その長手方向に沿って複数の係止爪部45BKが設けられ、他方、係止孔部45Hには、その内部に、挿入されてきたベルト部45Bが挿入方向Zの逆向きに抜けないよう上記係止爪部45BKに対し係止する抜け止め係止部45AKが設けられている。係止孔部45Hにベルト部45Bが挿入されると、係止爪部45BKは、抜け止め係止部45AKが設けられた弾性片45AJを外向き(
図1左側)に押し出す形で弾性変形させる。そして、係止爪部45BKは、抜け止め係止部45AKを通過するに伴い弾性復帰する弾性片45AJの抜け止め係止部45AKに対し、挿入方向Iの逆向きに係止した状態となり、抜け止めされる。ベルト部45Bは、より基端側の係止爪部45BKが抜け止め係止部45AKと係止することにより、平型配策材3及び可撓性配策材2をより強く結束保持できる。
【0028】
なお、ここでのベルト部45Bは、底壁部41Aよりも薄く、長手状に延出する部位であるが(
図2参照)、バックル部45Aに抜け止めされた後には、バックル部45Aから突き抜けた先端側が切断される(
図1参照)。
【0029】
ここでの結束部45は、配置部41と共に、係合部材4に可撓性配策材2や平型配策材3といった配策材を取り付けるための配策材取付部として機能している。
【0030】
また、係合部材4の係合部40は、可撓性配策材2と平型配策材3とが結束部45によって係合部材4に結束保持された状態において、可撓性配策材2側ではなく平型配策材3側(
図1の破線Qよりも下側の領域)から突出して形成されている。ここでの係合部40は、底壁部41Aから突出形成されている。具体的にいえば、係合部40は、可撓性配策材2と平型配策材3とが係合部材4に結束保持された状態において底壁部41Aの載置面41aの裏面41b側に形成されており、柱部40Bが当該裏面41bから突出形成されている。
【0031】
また、側壁部41B、41Bは、底壁部41Aから、該底壁部41Aに載置されている平型配策材3の両側方側を立ち上がる対向壁部であり、その対向幅w0は、その対向方向Yにおいて底壁部41Aに載置される平型配策材3の幅w3よりも広く形成され、平型配策材3との間に幅w1、w2の隙間を有している。これにより、平型配策材3は、対向方向Yにおいて移動(スライド)可能となるから、車体100に組み付ける際に、係合部材4と平型配策材3とを、方向Yにおいてわずかに相対移動させたいときに、その隙間を利用した相対移動が可能となる。
【0032】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0033】
以下、上記した実施例とは別の実施例やそれら実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0034】
上記実施例の結束部45は、係合部材4の配置部41と一体となる形で、ベルト部45Bとバックル部45Aとを有しているが、配置部41や係合部40と別体に設けられていてもよい。ただし、可撓性配策材2と平型配策材3とを結束保持した状態においては、係合部40を有した係合部材4と一体化される必要がある。
【0035】
【0036】
第二実施例の配策材の結束構造1では、
図3に示すように、結束部45として、係合部40及び配置部41とは別体のテープ部材45Tが用いられている。この場合、テープ部材45Tは、配置部41と平型配策材3と可撓性配策材2とがこの順に重なった状態でそれらの外周に接着する形で巻き付く。具体的にいえば、配置部41の底壁部41Aは、配置される平型配策材3及び可撓性配策材2の長手方向Xの両側に延出する袖部41L、41R(底壁延長部ともいう)を有し、それら袖部41L、41R上にも平型配策材3が載置されている。なお、袖部41L、41Rの形成区間には、両側壁部41B、41Bが非形成とされているが、延長して形成されていてもよい。テープ部材45Tは、袖部41L、41Rと平型配策材3と可撓性配策材2とがこの順に重なった状態でその外周に巻き付いて接着することにより、平型配策材3と可撓性配策材2とを結束保持し、かつそれら平型配策材3と可撓性配策材2と係合部材4とを一体化する。
【0037】
図3の結束部45は、係合部材4と別体のテープ部材45Tと、係合部材4の袖部41L、41Rと、を有して構成されている。さらにいえば、袖部41L、41Rは、係合部40を挟んだ上記長手方向Xの第一側とその逆の第二側との双方において形成されており、それら双方においてテープ部材45Tによる結束保持がなされている。係合部材4は、係合部40と共に、テープ部材45Tを含んだ結束部45を有して構成されている。
【0038】
本発明の第三実施例を、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0039】
第三実施例の配策材の結束構造1では、
図4及び
図5に示すように、結束部45として、ヒンジ部41D(
図4参照)を支点にして屈曲動作するクランプ部45Dが用いられている。この場合、クランプ部45Dは、側壁部41B、41Bの一方に対しヒンジ部41Dを介して連結する。そして、クランプ部45Dは、側壁部41B、41Bの他方との間に形成される対向間を平型配策材3及び可撓性配策材2を通過可能に開放する開放状態(
図5参照)と、側壁部41B、41Bの他方に向けて屈曲して抜け止め固定される抜け止め状態(
図4参照)と、の間で屈曲動作可能となる。この抜け止め状態(
図4参照)において、クランプ部45Dは、その先端側の係止爪部45DKが、クランプ係合部45Eをなす側壁部41B、41Bの他方に対し係合固定する。クランプ係合部45Eをなす側壁部41Bは、上方に開口する係止孔部45Fを有しており、クランプ部45Dの先端部が係止孔部45Fに進入すると、当該先端部の係止爪部45DKが、係止孔部45F内に設けられた抜け止め係止部45EKに対し係止して抜け止めされる。
【0040】
図4及び
図5の結束部45は、係合部材4と一体のクランプ部45Dと、同じく係合部材4と一体のクランプ係合部45E(41B)とを有して構成されている。係合部材4は、係合部40と共に、クランプ部45Dを含む結束部45を有して構成されている。
【0041】
以下、上述した各実施例の変形例について説明する。
【0042】
係合部40は、
図1の第一実施例とは異なり、配置部41における載置面41aとは逆側の裏面41b、又は該配置部41に載置されている平型配策材3の側方側に位置する側面41cから突出形成することができる。例えば、
図6に示すように、側壁部41B、41Bに係合部40を形成してもよい。
図6の係合部40は、側壁部41B、41Bのうちの少なくとも一方の、平型配策材3と対向する内側面とは逆の外側面(側面41c)側に形成されている。また、配置部41に側壁部41B、41Bが形成されていない場合、係合部40は、底壁部41Aにおいて平型配策材3の載置面41aとは異なる面に形成することができる。具体的にいえば、
図3の第二実施例とは異なり、
図7に示すように、底壁部41Aにおける載置面41aとは逆側の裏面41bから係合部40を突出形成してもよいし、
図8に示すように、底壁部41Aの側面41c(平型配策材3の側方側に位置する面)から係合部40を突出形成してもよい。
【0043】
なお、配置部41は、側壁部41B、41Bを一方のみとしてもよいし、
図7及び
図8に示すように側壁部41Bを非形成で、底壁部41Aのみとしてもよい。後者の場合の配置部41は、
図7に示すように、底壁部41Aのみからなる板状をなす。そして、その板状の配置部41(底壁部41A)の板幅が平型配策材3よりも幅広に形成されている。平型配策材3が可撓性を有する薄いフラット電線等の場合、板状の配置部41(底壁部41A)が支持板の役割を果たし、フラット電線を撓ませることなく安定して結束保持できる。
【符号の説明】
【0044】
1 配策材の結束構造
2 可撓性配策材
3 平型配策材
4 係合部材
40 係合部
41 配置部
41A 底壁部
41B 側壁部
45 結束部
45A バックル部
45B ベルト部
45T テープ部材
45D クランプ部
45F 係合孔部