(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】車両用装置
(51)【国際特許分類】
G06F 11/20 20060101AFI20240307BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240307BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240307BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G06F11/20 620
B60K35/00
B60K35/23
B60R16/02 660T
(21)【出願番号】P 2019096783
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2021-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】堺 初穂
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲男
【合議体】
【審判長】吉田 美彦
【審判官】須田 勝巳
【審判官】林 毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-073386(JP,A)
【文献】特開2007-133603(JP,A)
【文献】特開2019-018844(JP,A)
【文献】特開2015-141324(JP,A)
【文献】特開2009-116699(JP,A)
【文献】特開2011-022934(JP,A)
【文献】特開2010-285001(JP,A)
【文献】国際公開第2011/087020(WO,A1)
【文献】特開2018-194887(JP,A)
【文献】特開2015-092407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F11/20
B60R16/02
B60K35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部(20)と、
不具合の監視と解消とを行う監視部(35)と、
前記制御部で行われる制御のうち少なくとも一部の制御を代行可能な代行部(36)と、を備え、
前記制御部上で、複数のヒューマンマシンインターフェースを分担して制御する複数のオペレーティングシステム(24)を動作させ、
前記監視部は、前記オペレーティングシステム上に実装されている複数の機能のうち前記ヒューマンマシンインターフェースを構成する表示機能に生じる不具合を監視し、不具合が検知された機能の不具合を解消するとともに、不具合を解消する際には前記代行部に代行させることにより、不具合が検知された機能の少なくとも一部を利用可能にする
か、あるいは不具合が検知された機能の不具合を解消している最中であることを、いずれかの前記ヒューマンマシンインターフェースに表示することによって通知する車両用装置。
【請求項2】
複数のオペレーティングシステムは、主として車両に関する情報を処理するものであって、相対的に安定性が高い第1のオペレーティングシステム(24A)と、主としてマルチメディア系の情報を処理するものであって、前記第1のオペレーティングシステムに比べると相対的に安定性が低い第2のオペレーティングシステム(24B)と、を含み、
前記制御部は、各オペレーティングシステムに機能を割り当てている請求項1に記載の車両用装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記第1のオペレーティングシステムに設けられており、前記第2のオペレーティングシステムに生じる不具合を検知する請求項2に記載の車両用装置。
【請求項4】
制御部(20)と、
不具合の監視と解消とを行う監視部(35)と、
前記制御部で行われる制御のうち少なくとも一部の制御を代行可能な代行部(36)と、を備え、
前記制御部上で、複数のヒューマンマシンインターフェースを分担して制御する複数のオペレーティングシステム(24)を動作させ、
複数のオペレーティングシステムは、主として車両に関する情報を処理するものであって、相対的に安定性が高い第1のオペレーティングシステム(24A)と、主としてマルチメディア系の情報を処理するものであって、前記第1のオペレーティングシステムに比べると相対的に安定性が低い第2のオペレーティングシステム(24B)と、を含み、
前記制御部は、各オペレーティングシステムに機能を割り当てており、
前記監視部は、前記第1のオペレーティングシステムに設けられており、前記第2のオペレーティングシステム上で実行されるプログラムによってソフトウェアで実現された複数の機能のうち前記ヒューマンマシンインターフェースを構成する表示機能に生じる不具合を監視し、不具合が検知されていない機能の動作は継続したまま、不具合が検知された機能の不具合を解消し、
不具合を解消する際には、不具合が検知された機能を前記代行部によって代行させるか、あるいは不具合が検知された機能の不具合を解消している最中であることを、いずれかの前記ヒューマンマシンインターフェースに表示することによって通知する車両用装置。
【請求項5】
前記監視部は、複数のオペレーティングシステムのうち、相対的な安定性が最も高いオペレーティングシステムに設けられており、他のオペレーティングシステムに生じる不具合を検知する請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用装置。
【請求項6】
前記監視部は、複数のオペレーティングシステムにそれぞれ設けられており、他のオペレーティングシステムに生じる不具合を検知する請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用装置。
【請求項7】
前記制御部は、表示器(2、3、4)への表示を行うヒューマンマシンインターフェースを制御する請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用装置。
【請求項8】
前記制御部は、カメラ(5)で撮像した映像の表示器への表示を行うヒューマンマシンインターフェースを制御する請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用装置。
【請求項9】
前記制御部では、3つ以上のオペレーティングシステムが動作する請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メータパネル付近に表示器を設けて速度などの車両に関する情報を表示したり、メータパネル全体を表示器で構成して速度計などをグラフィック表示したりする車両用装置がある。また、例えばナビゲーション画面など、いわゆるマルチメディア系の情報を表示するための表示器を備えた車両用装置もある。そして、例えば特許文献1には、これら車両に関する情報やマルチメディア系の情報の表示などの複数の機能を統合した車両用装置が開示されている。以下、複数の機能を統合した車両用装置を、便宜的に統合型の車両用装置と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、統合型の車両用装置では、1つの制御部によって複数のヒューマンマシンインターフェースを制御している。以下、ヒューマンマシンインターフェースをHMIと称する。そのため、それら複数のHMIをシームレスに連係させることにより、例えばメータパネル側にナビゲーション画面を表示したり、マルチメディア系の情報を表示するための表示器に車両に関する情報を表示したりすることが可能になる。
【0005】
しかしながら、統合型の車両用装置は、従来のように個別の装置でHMIを制御する構成とは異なり、一部に不具合が生じた際、不具合が生じていないHMIの制御ができなくなるなど、装置全体に影響が出てしまうおそれがある。
本発明の目的は、装置全体に影響が出ることを抑制しつつ不具合を解消することができる車両用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、車両用装置(1)は、制御部(20)と、不具合の監視と解消とを行う監視部(35)と、を備えている。このとき、制御部上で、複数のヒューマンマシンインターフェースを分担して制御する複数のオペレーティングシステム(24)を動作させ、監視部は、オペレーティングシステム上で実行されるプログラムによってソフトウェアで実現された複数の機能に生じる不具合を監視し、当該複数の機能のうち不具合が検知されていない機能の動作は継続したまま、不具合が検知された機能の不具合を解消する。これにより、不具合が生じた際にその不具合が車両用装置の全体に影響を与えてしまうリスクを低減することができる。
【0007】
そして、監視部は、制御部が備える機能に生じた不具合を監視し、不具合が検知されていない機能の動作は継続したまま、不具合が検知された機能の不具合を解消する。これにより、不具合が生じていない機能についてはそのまま動作させることが可能となり、不具合が検知された機能についてはその不具合が解消される。したがって、装置全体に影響が出ることを抑制しつつ、不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による車両用装置の接続態様を模式的に示す図
【
図3】センターディスプレイの構成を模式的に示す図
【
図4】ヘッドアップディスプレイの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する。
図1に示すように、車両用装置1は、例えばメータディスプレイ2やセンターディスプレイ3あるいはヘッドアップディスプレイ4などの複数の表示器、ならびに、カメラ5やスピーカ6などの機器に接続されている。この車両用装置1は、いわゆる車両インフォテイメントを実現するコックピットシステム7を各機器と共に構成している。また、車両用装置1は、車両に設けられているECU8にも接続されており、車速などの情報を受け取ることができる。なお、
図1に示す構成は一例であり、これに限定されない。
【0010】
メータディスプレイ2は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成されており、
図2に示すように、運転者の正面付近に位置するメータパネル9に設けられている。本実施形態の場合、メータパネル9全体が表示器で構成されてメータディスプレイ2となっている。このメータディスプレイ2には、例えば速度計10や回転数計11、各種の警告灯12、および、車両の後方画像13などがフルグラフィック表示される。
【0011】
つまり、メータディスプレイ2には、例えば速度、警告、法規により定められている情報、燃料の残量やシートベルト装着の有無など、車両の状態に関する情報や車両の走行あるいは安全に関する情報が主として表示される。以下、これらの情報を便宜的に車両情報と称する。また、メータディスプレイ2には、車両用装置1を起動する際の起動メッセージ、および、車両用装置1を停止させる際の停止メッセージなども表示される。これらの情報によって、メータディスプレイ2用のヒューマンマシンインターフェースが構成されている。以下、ヒューマンマシンインターフェースをHMIと称する。
【0012】
センターディスプレイ3は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成されており、いわゆるセンターコンソール付近に設けられている。このセンターディスプレイ3には、
図3に示すように、例えばナビゲーション画面14やメニュー画面15などが表示される。
【0013】
また、センターディスプレイ3は、テレビ放送や再生している楽曲の情報などを表示することもできる。つまり、センターディスプレイ3には、主として、ナビゲーション画面14やメニュー画面15等、いわゆるマルチメディア系の情報が表示される。これらの表示によって、センターディスプレイ3用のHMIが構成されている。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ4は、例えば生成した表示画像を凹面鏡やレンズなどの光学経路を経由してフロントウィンドやコンバイナなどの投影面に向けて投影し、運転者正面の空間上に虚像を結像させるものである。ヘッドアップディスプレイ4は、ダッシュボード上の運転者の正面付近に設けられるものを想定している。つまり、ヘッドアップディスプレイ4は、運転者が視認しやすい位置に設けられている
【0015】
換言すると、ヘッドアップディスプレイ4は、通常の運転時において運転者の視界に入る位置に設けられている。このヘッドアップディスプレイ4には、
図4に示すように、一例ではあるが、例えば車速表示16や曲がり角までの距離や曲がる方向を示す方向画像17あるいは現在時刻18などが表示される。これらの表示によって、ヘッドアップディスプレイ4用のHMIが構成されている。
【0016】
これらメータディスプレイ2、センターディスプレイ3およびヘッドアップディスプレイ4は、互いにシームレスに連係した表示が可能となっている。そのため、例えばナビゲーション画面14をメータディスプレイ2に表示したり、速度をセンターディスプレイ3に表示したりすることができる。
【0017】
カメラ5は、CCDセンサやCMOSセンサを備えており、車両の外部を動画および静止画で撮像する。本実施形態では、カメラ5は、車両の後方を撮像可能な位置に設けられている。このカメラ5で撮像された画像は、例えばメータディスプレイ2やセンターディスプレイ3などに表示される。スピーカ6は、ナビゲーション時の案内音声の出力や再生した楽曲の出力などを行う。
【0018】
このように、本実施形態の車両用装置1は、車両の状態に関する情報を表示する機能部とマルチメディア系の情報を表示する機能部とを含む複数の機能部が統合され、各種の情報を運転者に対して視覚的あるいは聴覚的に提示可能な統合型のものとなっている。
【0019】
そして、車両用装置1は、
図5に示すように、1つの制御部20によって制御されている。制御部20は、CPU21などを有するいわゆるマイクロコンピュータで構成されている。そして、制御部20は、eMMCなどの不揮発性メモリなどで構成された記憶部22に記憶されているプログラムを実行することにより、車両用装置1を制御する。このとき、各プログラムは、メインメモリ23上に展開されて実行される。
【0020】
制御部20上には、複数のオペレーティングシステム24が動作可能な仮想化環境が構築されている。以下、オペレーティングスシステム24をOS24と称する。本実施形態の場合、制御部20上ではOS24AとOS24Bの2つが動作している。つまり、車両用装置1には、1つのハードウェア上で複数のシステムが動作しており、それぞれ処理を分担している。
【0021】
換言すると、車両用装置1は、複数のシステムを動作させることにより、不具合が生じるリスクを分散させている。このとき、OS24AとOS24Bとの間は、通信可能に接続されている。また、車両用装置1に設けられているデバイスは、OS24AとOS24Bとによって共有されている。
【0022】
より詳細には、制御部20は、例えば4つのコアをそれぞれCPUモジュール21AとCPUモジュール21Bとに区分けされ、CPUモジュール21A上でOS24Aが動作し、CPUモジュール21B上でOS24Bが動作している。このとき、OS24Bは、OS24Aが機能として備えるハイパーバイザ25上で動作している。なお、ハイパーバイザ25を個別に設け、そのハイパーバイザ25上でOS24AおよびOS24Bを動作させる構成とすることもできる。
【0023】
OS24Aは、いわゆるリアルタイムOSであり、OS24Bに比べてリアルタイム性が要求される処理、例えば、車両の走行あるいは安全に関係する処理などを主に実行する機能部が設けられている。このようなリアルタイムOSは、一般的に、OS24A自体に不具合が起きにくく、また、アプリケーションプログラムの実行時間などを予測あるいは制限できる等、汎用OSに比べて相対的に安定性が高い設計となっている。このOS24Aは、第1のオペレーティングシステムに相当する。
【0024】
OS24Bは、いわゆる汎用OSであり、OS24Aに比べるとリアルタイム性能や安定性は相対的に低いことが多いものの、マルチメディア機能のような汎用的な処理を容易に実行できるというメリットがある。このOS24Bは、第2のオペレーティングシステムに相当する。
【0025】
各OS24は、それぞれアプリケーションプログラムを実行することにより、各種の機能部をソフトウェアで実現している。以下、アプリケーションプログラムを便宜的にアプリと称する。制御部20が備える機能部としては、例えばメータアプリ30、カメラアプリ31、ナビアプリ32、HUDアプリ33、通信アプリ34、監視アプリ35、および代行アプリ36などがある。これらの機能部は、制御部20上で実行されるプログラムによって実装されている。また、
図5に示す機能部の数や種類あるいは機能部を実装するOS24は一例であり、これらに限定されない。
【0026】
メータアプリ30は、ECU8などから取得した車両情報を主としてメータディスプレイ2への表示を行うものである。つまり、メータアプリ30は、メータディスプレイ2用のHMIを制御する機能部として設けられている。このメータアプリ30は、速度計10のように車両の走行に必要な情報を表示するものであるとともに、例えば1/60秒程度の比較的短い周期で表示を更新する必要がある。そのため、メータアプリ30は、OS24Aに設けられている。このメータアプリ30が制御するHMIは、例えばメータ表示回路37を経由して、例えばLVDS形式の描画データとしてメータディスプレイ2に送信される。
【0027】
カメラアプリ31は、カメラ5から例えばNTSC信号で入力回路38に入力された画像を表示器に表示する処理、および、撮像した画像に含まれる障害物やその障害物までの距離などを表示する処理を行うものである。このとき、カメラアプリ31は、汎用的な画像処理を行うことになる。そのため、カメラアプリ31は、OS24Bに設けられている。このカメラアプリ31が表示する画像は、メータ表示回路37を経由してメータディスプレイ2に送信されて表示される。なお、カメラアプリ31が表示する画像は、例えばセンター表示回路39を経由して、例えばLVDS形式の描画データとしてセンターディスプレイ3に送信して表示することもできる。
【0028】
ナビアプリ32は、主としてセンターディスプレイ3への表示を行うものである。つまり、ナビアプリ32は、センターディスプレイ3用のHMIを制御する機能部として設けられている。このナビアプリ32は、例えばナビゲーション画面14の生成および表示や、案内音声を出力する処理などのマルチメディア系の処理を行っている。そのため、ナビアプリ32は、OS24Bに設けられている。このナビアプリ32が表示する画像は、例えばセンター表示回路39を経由して、例えばLVDS形式の描画データとしてセンターディスプレイ3に送信される。また、案内音声は、アンプ41を介してスピーカ6に信号を送信することにより出力される。
【0029】
HUDアプリ33は、主としてヘッドアップディスプレイ4への表示を行うものである。つまり、HUDアプリ33は、ヘッドアップディスプレイ4用のHMIを制御する機能部として設けられている。このHUDアプリ33は、車両の走行時の補助的な役割を果たすものであるとともに、方向画像17などのマルチメディア系の処理を行っている。そのため、HUDアプリ33は、OS24Bに設けられている。このHUDアプリ33が表示する画像は、例えばHUD表示回路40を経由して、例えばLVDS形式の描画データとしてヘッドアップディスプレイ4に送信される。
【0030】
通信アプリ34は、通信回路42を介して、車両用装置1以外の外部の装置との間で通信を行う機能部として設けられている。通信回路42は、
図5では1つを示しているが、複数の通信方式に対応したものを用いることができるし、通信回路42自体を複数個設ける構成とすることができる。つまり、車両用装置1は、自身とは異なる多種多様な装置に接続される可能性がある。
【0031】
通信回路42が対応する通信方式は、USB、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fiなど、既知のものを採用することができる。外部の装置としては、運転者が所持する携帯端末やタブレット、USBメモリ、あるいはインターネット上のサーバなどを対象とすることができる。
【0032】
監視アプリ35は、制御部20に生じる不具合の監視と、検知した不具合の解消とを行う。より詳細には、監視アプリ35は、OS24に生じた不具合を検知するとともに、不具合が検知されていないOS24の動作は継続したまま、不具合が検知されたOS24の不具合を解消する。本実施形態の場合、監視アプリ35は、本実施形態では相対的に安定性が高いOS24Aに設けられており、相対的に安定性が低いOS24Bを監視しており、不具合を検知した場合には、OS24Aの動作は継続したまま、OS24BをリセットすることによりOS24Bに生じた不具合を解消する。この監視アプリ35は、監視部に相当する
【0033】
代行アプリ36は、OS24が行う制御のうち少なくとも一部の制御を代行可能なものであり、監視アプリ35が不具合を解消する際、対象となるOS24Bが行っていた制御のうち、少なくとも一部の制御を代行する。例えば、代行アプリ36は、カメラアプリ31、ナビアプリ32あるいはHUDアプリ33による表示器への表示の制御の少なくとも一部を代行する。この代行アプリ36は、代行部に相当する
【0034】
これらを備える車両用装置1は、車両に搭載されているバッテリに接続されている第1電源回路43と第2電源回路44とから電源が供給される。これら第1電源回路43および第2電源回路44は、制御部20とは別体に設けられている電源制御部45によって電源供給の開始および停止が制御される。
【0035】
第1電源回路43は、例えばクランキングによってバッテリからの電源電圧が一時的に低下した場合であっても電源供給が可能となるように、低電圧対応の回路構成となっている。本実施形態の場合、クランキング時のバッテリの電圧低下を考慮して、一例ではあるがバッテリの電圧が例えば4V程度まで低下しても電源供給が可能となっている。この第1電源回路43は、電圧低下が生じた場合でも動作を維持したい機能部によって利用されるデバイス、例えば例えば制御部20、記憶部22、メインメモリ23あるいはメータ表示回路37などに電源を供給する。以下、それらのデバイスを便宜的に制御系デバイスと称する。
【0036】
第2電源回路44は、最低動作電圧がバッテリの定格電圧よりも低くなっているものの、第1電源回路43のような低電圧に対応した回路構成にはなっていない。そのため、電圧低下が生じた場合には、電源供給が不安定になる可能性がある。この第2電源回路44は、電圧低下が生じた場合に動作を維持する必要性が相対的に低いと考えられる機能部によって利用されるデバイス、例えばセンター表示回路39やアンプ41あるいは通信回路42などに電源を供給する。以下、それらのデバイスを便宜的にMM系デバイスと称する。
【0037】
次に、上記した構成の車両用装置1の作用について説明する。
前述のように、統合型の車両用装置1では、1つの制御部20によって複数のHMIを制御している。そのため、複数のHMIをシームレスに連係させることが可能になる一方、一部に不具合が生じた際、その不具合が車両用装置1の全体に影響を及ぼすおそれがある。そこで、車両用装置1では、以下のようにして装置全体に影響が出ることを抑制しつつ不具合を解消する。
【0038】
車両用装置1の監視アプリ35は、
図6に示す処理を実行してOS24Bを監視している。具体的には、監視アプリ35は、ステップS1において、OS24Bの不具合が検知したかを判定している。監視アプリ35は、不具合を検知していないと判定した場合には、ステップS1においてNOとなることから、待機する。
【0039】
一方、監視アプリ35は、不具合を検知したと判定した場合には、ステップS1においてYESとなることから、ステップS2において、不具合が生じた対象、ここではOS24Bの制御を代行可能であるかを判定する。この場合、代行可能であるかは、今まで行われていた制御をそのまま引き継ぐことも含まれるが、必ずしも今まで行われていた制御の全体を引き継ぐ必要はなく、制御の一部を引き継ぐことができる。
【0040】
例えば、カメラアプリ31によって、メータディスプレイ2への後方画像13の表示と、障害物やその障害物までの距離の表示とが行われている場合を想定する。このとき、カメラアプリ31に不具合が検知され、その不具合を解消するためにOS24Bをリセットするとする。その場合、代行アプリ36は、メータディスプレイ2に後方画像13を表示する制御を引き継ぎ、障害物やその障害物までの距離を表示する制御は引き継がない構成とすることができる。勿論、障害物やその障害物までの距離を表示する制御も引き継ぐ構成とすることもできる。これにより、不具合によって後方画像13が全く表示されなくなるといった状況を回避することが可能になる。
【0041】
あるいは、例えばナビアプリ32やHUDアプリ33に不具合が生じた場合であれば、代行アプリ36により、センターディスプレイ3の表示をグレーアウトしたり多少ぼやかした画像を表示したりするなど、不具合が生じていることを報知する画像を表示する構成とすることができる。つまり、ナビゲーション画面14やメニュー画面15を表示する制御をそのまま引き継ぐのでは無く、HMIを表示するという機能的な部分を引き継ぐことにより、不意にセンターディスプレイ3が消えて車両用装置1が故障したと判断されるような状況を回避することができる。
【0042】
そして、監視アプリ35は、代行可能であると判定した場合には、ステップS2においてYESとなることから、ステップS3において、対象の制御を代行アプリ36に代行させる。なお、監視アプリ35は、代行可能ではないと判定した場合には、ステップS2においてNOとなることから、ステップS3を省略してステップS4に移行する。
【0043】
続いて、監視アプリ35は、ステップS4において、対象の不具合を解消する。本実施形態では、監視アプリ35は、対象となるOS24Bをリセットすることにより、対象の不具合を解消する。なお、OS24Bがリセットされている最中は、代行アプリ36によって表示が代行される状態、あるいは、代行できない場合にはOS24A側から例えば「リセット中」といったメッセージを表示する状態になる。
【0044】
さて、車両用装置1が備えるデバイスは、上記したようにOS24AおよびOS24Bによって共有されている。そのため、OS24Bで検知された不具合によっては、デバイスの再起動が必要になることがある。これは、例えばあるデバイスが停止したことに起因してOS24Bに不具合が生じた場合、OS24A側にもそのデバイスが停止したことの影響が出る可能性があるためである。その一方で、不具合がプログラム上のものであった場合には、デバイスはそのまま継続して使用できる場合も想定される。
【0045】
そのため、監視アプリ35は、ステップS5において、デバイスを初期化する必要があるかを判定する。監視アプリ35は、デバイスを初期化する必要があると判定した場合には、ステップS5においてYESとなることから、ステップS6において、対象となるデバイスを初期化する。一方、監視アプリ35は、デバイスを初期化する必要がないと判定した場合には、ステップS5においてNOとなることから、ステップS6を省略してステップS7に移行する。
【0046】
続いて、監視アプリ35は、ステップS7において、再接続が必要であるかを判定する。この場合、監視アプリ35は、OS24AとOS24Bとの間の再接続が必要であるかを判定している。OS24Bをリセットした場合には一般的には再接続が必要であると考えられるため、監視アプリ35は、ステップS7においてYESとなることから、ステップS8において再接続処理を実行する。これにより、リセットが完了した後においてOS24AとOS24Bとが通信可能に再接続される。なお、再接続が不要な場合の例については後述する。
【0047】
そして、監視アプリ35は、処理を終了する。なお、ここでは便宜的に処理を終了するとしているが、実際には、監視アプリ35はステップS1に移行して不具合の監視を引き続き行うことになる。
【0048】
このように、車両用装置1は、不具合が検知された場合、対象となるOS24Bをリセットすることにより不具合を解消するとともに、OS24Aについてはその動作を継続させることにより、装置全体に影響が出ることを抑制しつつ不具合を解消している。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
車両用装置1は、制御部20と、不具合の監視と解消とを行う監視部としての監視アプリ35と、を備えている。このとき、車両用装置1は、制御部20上で複数のHMIを分担して制御する複数のOS24を動作させている。これにより、不具合が生じた際にその不具合が車両用装置1の全体に影響を与えてしまうリスクを低減できる。
【0050】
そして、監視アプリ35は、制御部が備える機能としてのOS24に生じた不具合を監視し、不具合が検知されていないOS24の動作は継続したまま、不具合が検知されたOS24の不具合を解消する。これにより、不具合が生じていないOS24はそのまま動作し続けることが可能となり、装置全体に影響が出ることを抑制しつつ、不具合を解消することができる。
【0051】
車両用装置1は、OS24が行う制御のうち少なくとも一部の制御を代行可能な代行部としての代行アプリ36を備えている。そして、監視アプリ35は、不具合を解消する際、対象となるOS24が行っていた制御のうち少なくとも一部の制御を代行アプリ36に代行させる。
【0052】
これにより今まで行われていた制御が突然停止して例えば表示器への表示が全く行われなくなるといった状況を回避することができる。したがって、運転者に車両用装置1が故障したといった不安を与えるおそれを低減することができる。
【0053】
車両用装置1では、複数のOS24は、主として車両に関する情報を処理するものであって、相対的に安定性が高い第1のOS24Aと、主としてマルチメディア系の情報を処理するものであって、第1のOS24Aに比べると相対的に安定性が低い第2のOS24Bとを含んでいる。
【0054】
これにより、以下、複数の機能を統合した車両用装置1において、各機能を効率的に動作させることが可能になる。すなわち、安定して動作させたい機能部をOS24Aに設け、汎用的な処理を行う機能部をOS24Bに設けることにより、1つの制御部20により、表示する情報の種類やその情報を表示する際に必要となる処理が異なる複数のHMIを効率よく生成することができる。また、処理を分散させることにより、不具合が影響を与える範囲をより小さくすることができ、車両用装置1の全体への影響を抑えることができる。
【0055】
また、監視アプリ35は、第1のOS24Aに設けられており、第2のOS24Bに生じる不具合を検知する。OS24Aは、上記したように相対的且つ一般的に安定性が高いため、監視アプリ35を安定して動作させることができる。その一方で、各種の汎用的な処理を実行できるものの相対的に安定性が低く、また、多種多様な外部の装置に接続される。つまり、OS24B側では、OS24B自身が要因となる以外に、外部の装置が要因となる不具合が生じる可能性がある。
【0056】
そのため、OS24Aに監視アプリ35を設けてマスターとし、スレーブとしてのOS24Bを監視する構成とすることにより、車両用装置1に適した態様で不具合の監視と解消とを行うことができる。つまり、監視アプリ35は、複数のSO24のうち、相対的な安定性が最も高いOS24Aに設けられており、他のOS24Bに生じる不具合を検知する構成により、監視アプリ35そのものを安定して動作させることができ、車両用装置1に適した態様での不具合の監視とその不具合の解消とを行うことができる。
【0057】
車両用装置1は、表示器への表示を含むHMIを制御している。表示器は、運転者に情報を提示するものであり、運転者の視野内に設置されると考えられる。そして、その表示器への表示に不具合が生じると、不具合が運転者に視認されることになる。このため、表示器への表示は、不具合の監視および解消の重要な対象になると考えられる。そのため、表示器への表示を含むHMIを不具合の監視および解消の対象とすることにより、運転者に不安感や不信感を抱かせるおそれを低減することができる。
【0058】
車両用装置1は、カメラ5で撮像した映像の表示器への表示を含むHMIを制御している。車両の後方は運転者の死角となるため、障害物や人などの存在を運転者が把握しづらい位置である。このため、車両の後方をカメラ5で撮像して表示器に表示することにより、運転者の補助を行うことができると考えられる。そのため、カメラ5で撮像した映像の表示器への表示を含むHMIを不具合の監視および解消の対象とすることにより、運転者の利便性の向上と事故の抑制とを行うことができる。
【0059】
実施形態ではOS24Aをマスターとし、OS24Bをスレーブとして監視する例を示したが、
図7に示すように、各OS24にそれぞれ監視アプリ35を設け、他のOS24を相互に監視する構成とすることができる。この場合、代行アプリ36は、例えば安定性が相対的に高いOS24Aに設け、他のOS24の制御を一義的に代行する構成とすることができる。また、
図7に破線にて模式的に示すように、各OS24に代行アプリ36を設ける構成とすることもできる。
【0060】
このような構成によっても、不具合が検知されていないOS24の動作は継続したまま、不具合が検知されたOS24の不具合を解消することができ、装置全体に影響が出ることを抑制しつつ不具合を解消することができる。
【0061】
また、車両用装置1には、OS24A、OS24BおよびOS24Cのように、3つ以上のOS24を動作させることができる。この場合、各OS24は、実施形態のようにハイパーバイザ25上で動作させることができる。また、例えばOS24CをOS24B上の仮想化環境として動作させることもできる。
【0062】
このような構成によっても、複数のOS24で処理が分担されることから、不具合が生じるリスクを分散させることができるとともに、不具合が影響を及ぼす範囲を限定できるなど、車両用装置1の全体に不具合が影響するおそれを低減することができる。
【0063】
実施形態では監視アプリ35によりOS24の機能を監視する例を示したが、監視アプリ35により制御部20が備える機能部としての各アプリを監視し、不具合が検知されたアプリを例えばリセットすることにより、機能部の不具合を解消する構成とすることができる。このような構成によっても、正常に動作している機能部の動作を維持したまま不具合を解消することが可能となる。したがって、車両用装置1の全体に影響が出ることを抑制しつつ、不具合を解消することができる。
【0064】
実施形態では速度計10や回転数計11あるいは警告灯12をフルグラフィック表示させる構成例を示したが、メータパネル9の例えば中央部分にメータディスプレイ2を設け、速度計10や回転数計11あるいは警告灯12をいわゆるアナログ式で設ける構成とすることもできる。
【0065】
実施形態ではカメラアプリ31をOS24Bに設ける構成を例示したが、迅速且つ安定した状態でカメラ5からの映像を表示するために、カメラアプリ31をOS24Aに設ける構成とすることができる。
【0066】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に含まれるものである。
【0067】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
図面中、1は車両用装置、2はメータディスプレイ(表示器)、3はセンターディスプレイ(表示器)、4はヘッドアップディスプレイ(表示器)、5はカメラ、6はスピーカ、10は速度計(HMI)、11は回転数計(HMI)、12は警告灯(HMI)、13は後方画像(HMI)、14はナビゲーション画面(HMI)、15はメニュー画面(HMI)、16は車速表示(HMI)、17は方向画像(HMI)、18は現在時刻(HMI)、20は制御部、24はOS(オペレーティングスシステム)、24AはOS(第1のOS)、24BはOS(第2のOS)、35は監視アプリ(監視部)、36は代行アプリ(代行部)を示す。