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特許7449652車両の乗員保護装置を起動させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】車両の乗員保護装置を起動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20240307BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240307BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20240307BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240307BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60R22/46
B60T13/74 G
B60T7/02 A
B60T17/18
B60T7/12 D
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019106809
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020097385
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10 2018 210 794.7
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ベールレ―ミラー,フランク
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047756(JP,A)
【文献】特開2018-065478(JP,A)
【文献】特開2018-069879(JP,A)
【文献】特開2009-166656(JP,A)
【文献】特開2004-149042(JP,A)
【文献】特開2006-131100(JP,A)
【文献】特開2004-142522(JP,A)
【文献】特開2016-117383(JP,A)
【文献】特開2005-035485(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103303278(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/013
B60T 13/74
B60T 7/02
B60T 17/18
B60T 7/12
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングブレーキを含むホイールブレーキ装置(9)と安全ベルト(30)を引き締めるベルトテンションシステム(31)を装備した車両において、前記ベルトテンションシステム(31)を起動させるための方法であって
走行中に前記パーキングブレーキの操作により車両の減速要される場合、自動的に前記ベルトテンションシステム(31)が起動され、
前記ベルトテンションシステム(31)の起動に伴って少なくとも一人の車両乗員(32)の前記安全ベルト(30)が引き締められることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記パーキングブレーキが、電気式のブレーキモータ(13)を有しており、前記ブレーキモータ(13)が、前記減速要求時にブレーキピストン(16)をブレーキディスク(20)に向かう方向に位置調節することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ブレーキピストン(16)が液圧式の車両ブレーキ(1)のホイールブレーキ装置(9)の一部であって、前記減速要求時に、前記ブレーキピストン(16)が前記車両ブレーキの液圧アクチュエータによって生ぜしめられる液圧式のブレーキ圧によって位置調節されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記減速要求の場合に前記ブレーキピストン(16)が前記電気式のブレーキモータ(13)によって位置調節されることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記ベルトテンションシステム(31)を、車両速度が速度限界値を上回るときにだけ起動させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
車両を減速させるために、前記パーキングブレーキが手動で起動されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記パーキングブレーキの操作の終了と共に、前記ベルトテンションシステム(31)が初期の状態へ戻されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実行するための、前記パーキングブレーキおよび前記ベルトテンションシステム(31)の調節可能な構成要素を制御する制御装置
【請求項9】
前記ベルトテンションシステム(31)と、電気機械式のブレーキ装置として構成された前記パーキングブレーキと、前記パーキングブレーキ(9)および前記ベルトテンションシステム(31)の調節可能な構成要素を制御するための請求項8記載の制御装置(11)とを有する車両
【請求項10】
請求項8記載の制御装置(11)に、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法のステップを実行させるためのプログラムが記録されたプログラム製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキを装備した車両の乗員保護装置を起動するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員を保護するための方法が開示されており、この場合、目前に迫った衝突が検知され、乗員の安全ベルトを引き締めるためにベルトテンションシステムが作動される。安全ベルトを引き締めることによって、乗員はシートバックレストに押し付けられ、それによって負傷の危険性が低下されるようにするものである。
【0003】
この方法は、作動されたパーキングブレーキによって固定される、車両の停止状態において実行される。
【0004】
特許文献2には、起動条件が存在するときに自動的にロック位置に移行されるロック装置を備えた車両のベルトシステムが開示されている。ロック位置は、例えば車両の駐車ブレーキを操作するときに作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102012025269号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0231024号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明による方法は、パーキングブレーキ若しくは駐車ブレーキを装備した車両の乗員保護装置の起動に関し、このパーキングブレーキ若しくは駐車ブレーキを介して、車両の停止状態においてまたは運転中において、しかも運転速度よりも高い速度での走行時においても、制動力を生ぜしめることができる。
【0007】
車両の走行中に、パーキングブレーキの操作により減速が要求されると、自動的に乗員保護装置が起動され、初期位置から保護位置へ自動的に位置調節される。初期位置では保護装置が不作動機能または不使用機能にあり、これに対して保護位置では乗員保護装置がその保護作用を展開する。
【0008】
条件「車両の走行およびパーキングブレーキの操作」が存在するときに、乗員保護装置が自動的に起動されることによって、乗員の安全性が高められる。乗員保護装置の起動は、このために必要な前提条件が満たされている限り、自動的に行われ、それによって運転者の明白な行動を必要とすることなしに行われる。
【0009】
車両の走行中のパーキングブレーキの操作は、緊急なまたは危険な状況を示唆する。何故ならば、一般的に車両は走行中に液圧式の車両ブレーキを介して制動され、パーキングブレーキを介して制動されないからである。それにも拘わらず、走行中に液圧式の車両ブレーキに追加してまたは選択的にパーキングブレーキが操作され、さらに減速要求が出されると、これは緊急なまたは危険な状況が前提とされ、この場合、危険の可能性は乗員保護装置の作動によって低下される。この場合、実際に緊急状況が発生することは必ずしも必要ではない。乗員保護装置は、場合によっては発生する緊急状況のために予防的に作動若しくは起動される。実際に緊急状況が発生すると、車両乗員は、既に実行されている乗員保護装置の作動に基づいて、特に事故の場合、良好に保護されているので、一人または複数の車両乗員のための事故の結末は著しく軽減され得る。
【0010】
様々な型式の乗員保護装置が考慮される。好適な実施例によれば、乗員保護装置はベルトテンションシステムであって、このベルトテンションシステムが起動されると、少なくとも一人の車両乗員、例えば運転者の安全ベルトが引き締められる。車両乗員は、安全ベルトの引き締めによって車両シートに押し付けられるので、事故の際、例えば車両が障害物に衝突したときにまたは第3の車両による尾部衝突時に、車両乗員は背中がシートバックレストに直に接していて、頭がヘッドレストに接していて、負傷の危険性、特に投げ出しによる外傷の危険性が低下される。
【0011】
ベルトテンションシステムの作動のその他の利点は、安全ベルトの引き締めを感知する車両乗員の触覚的なフィードバックにあり、従って車両乗員は、危険状況の結果に対抗して作用する保護機能が作動されたことに気づかされる。
【0012】
ベルトテンションシステムに追加的にまたは選択的に、その他の乗員保護装置も本発明による方法の枠内で作動され得る。この場合、例えばウィンドガラスの自動的な閉鎖、車両ルーフの開いた天窓の自動的な閉鎖、車両乗員等への聴覚的または視覚的な警告である。追加的にまたは選択的に、場合によっては、乗員保護装置として車両の車両ダイナミックスに影響を及ぼす装置を作動させるかまたは変更する、例えばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の特性曲線をより高い安全レベルの方向に変更することも好適である。
【0013】
車両の駐車ブレーキ若しくはパーキングブレーキは、本発明による方法の枠内で好適には手動で起動される。この場合、運転者はパーキングブレーキを、パーキングブレーキの対応する起動機構を介して手動で作動させ、これによってパーキングブレーキは作動され、車両減速が生ぜしめられる。
【0014】
手動による作動に追加してまたは選択的に、本発明による方法の枠内でパーキングブレーキを自動的に作動させることも可能である。このようなケースは、例えば通常の液圧式の車両ブレーキの誤機能時、例えば液圧式の車両ブレーキを介して所望の制動力が提供され得ないことが検知された場合に、発生する。次いで、所望の制動力および所望の車両減速を調節するために、補足的にまたは選択的にパーキングブレーキが自動的に作動され得る。パーキングブレーキの自動的な作動は、車両の閉ループ制御若しくは開ループ制御装置の調整信号を介して行われ、またこれを介してパーキングブレーキおよび乗員保護装置の調節可能な構成要素が制御される。パーキングブレーキおよび乗員保護装置の構成要素を制御するための1つだけの閉ループ制御若しくは開ループ制御装置を装備した構成も、また調節可能な構成要素をそれぞれ制御するための、パーキングブレーキ若しくは乗員保護装置のためのそれぞれ1つの閉ループ制御装置若しくは開ループ制御装置を備えた構成も可能である。2つの閉ループ制御若しくは開ループ制御装置において、これらは互いに通信し、この場合、閉ループ制御若しくは開ループ制御装置間の通信は、信号ラインを介して直接に、または車両バスシステム例えばCANを介して行われる。
【0015】
別の好適な構成によれば、パーキングブレーキ若しくは駐車ブレーキは、電気式のブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置として構成されており、電気式のブレーキモータは、制動力を発生させるために、ブレーキライニングの支持体であるブレーキピストンをブレーキディスクの方向に位置調節する。好適な形式で、電気機械式のブレーキ装置は、液圧式の車両ブレーキの部分でもあるホイールブレーキ装置内に組み込まれている。この場合、ブレーキピストンは、車両ブレーキを操作する際に液圧式のブレーキ圧によって負荷されてブレーキディスクに押し付けられる。液圧式の車両ブレーキと電気機械式のブレーキ装置とが、車両内の1つの共通のブレーキシステムを形成する。
【0016】
パーキングブレーキの操作によって発生される減速要求において、ブレーキピストンをブレーキディスクの方向に位置調節するために、好適な形式で電気式のブレーキモータが操作される。追加的にまたは選択的に、パーキングブレーキの操作時に車両ブレーキの液圧アクチュエータを作動させることも可能であり、この液圧アクチュエータを介して、液圧のブレーキ圧が高められ、ブレーキピストンがブレーキ圧によってブレーキディスクに向かう方向に負荷される。
【0017】
別の好適な構成によれば、乗員保護装置は、車両速度が速度限界値を上回る場合にだけ起動される。速度限界値は、例えば10km/h、20km/hまたは30km/hである固定値としてプリセットされる。速度限界値は、好適には歩行速度よりも高い。車両速度が速度限界値を下回ると、場合によっては乗員保護装置の自動的な作動は断念されてよい。速度限界値の規定と共に同時に、パーキングブレーキの作動時に走行する車両においてのみ乗員保護装置が起動されることが保証され、これに対して、停止している車両、または例えば6km/hの最大歩行速度を有する低い速度での駐車操作若しくは操車中においては、パーキングブレーキが手動でまたは自動的に操作されても、乗員保護装置の作動と起動は断念されてよい。
【0018】
別の好適な構成によれば、乗員保護装置は、パーキングブレーキの操作終了後に再びその初期位置へ戻される。この場合、緊急の状況または危険な状況が長く続かないことが前提とされてよく、乗員保護装置をさらにその保護位置に留まらせておく必要もない。
【0019】
本発明はさらに、様々な方法を実行するための、乗員保護装置およびパーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するための閉ループ制御若しくは開ループ制御装置に関する。閉ループ制御若しくは開ループ制御装置は、場合によっては車両のブレーキシステムの一部であってよい。閉ループ制御若しくは開ループ制御装置内で、乗員保護装置およびパーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するための調整信号が生成され、この場合、電気機械式のブレーキ装置としてのパーキングブレーキの構成において、ブレーキモータが閉ループ制御若しくは開ループ制御装置の調整信号によって制御される。車両ブレーキの液圧アクチュエータも、場合によっては閉ループ制御若しくは開ループ制御装置の調整信号によって制御されてよい。同じことが乗員保護装置のためにもあてはまり、この場合、ベルトテンションシステムとしての構成の場合、ベルトテンションシステムのアクチュエータが調整信号によって制御される。
【0020】
本発明はさらに、乗員保護装置と、特に電気機械式のブレーキ装置として構成されたパーキングブレーキと、乗員保護装置およびパーキングブレーキの調節可能な構成要素を制御するためのおよび場合によっては車両ブレーキのその他の構成要素を制御するための前記閉ループ制御若しくは開ループ制御装置とを備えた車両に関する。
【0021】
本発明はさらに、前記方法ステップを実行するために設計されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品に関する。このコンピュータプログラム製品は、前記閉ループ制御若しくは開ループ制御装置で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】液圧式の車両ブレーキの概略図であって、この場合、車両ブレーキのホイールブレーキ装置は、それぞれ1つの電気式ブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置を装備している。
図2】電気式ブレーキモータを備えた電気機械式のブレーキ装置の断面図である。
図3】ベルトテンションシステムおよびパーキングブレーキを備えた車両の概略図である。
図4】走行中にパーキングブレーキを操作する際にベルトテンションシステムを起動するための方法ステップを有するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
その他の利点および好適な構成は、その他の請求項、図面の説明および図面から明らかである。
【0024】
図面中、同じ構成部分には同じ符号が付けられている。
【0025】
図1に示された、車両のためのブレーキシステムは、液圧下にあるブレーキ液を車両の各ホイールのホイールブレーキ装置9に供給しかつ制御するために、第1の液圧式のブレーキ回路2および第2の液圧式のブレーキ回路3を備えた液圧式の2回路式の車両ブレーキ1を有している。2つのブレーキ回路2,3は、共通のマスタブレーキシリンダ4に接続されていて、このマスタブレーキシリンダ4に、ブレーキ液リザーブタンク5を介してブレーキ液が供給される。マスタブレーキシリンダ4内のマスタブレーキシリンダピストンは、運転者によってブレーキペダル6を介して操作され、運転者によって実行されたペダルストロークは、ペダルストロークセンサ7を介して測定される。ブレーキペダル6とマスタブレーキシリンダ4との間にブレーキ倍力装置10が配置されており、このブレーキ倍力装置10は例えば電動機を有していて、この電動機は好適には伝動装置を介してマスタブレーキシリンダ4を操作する(iBooster)。
【0026】
液圧式の車両ブレーキ1は、iBoosterに追加してまたは選択的に、電動機式に駆動されるプランジャを備えた一体的な電気油圧式のブレーキユニットを有している。車両ブレーキ1は、好適な形式で“Brake-By-Wire-System”「ブレーキバイワイヤシステム」として構成されており、この場合、ブレーキペダル操作は、ペダルストロークシミュレータ内での液圧容積の変位を生ぜしめる。ブレーキ圧上昇は、プランジャの電動機式の操作を介してペダル操作に相応に行われる。電気油圧式のブレーキユニットが故障すると、ブレーキ回路をマスタブレーキシリンダ4に接続するセパレートバルブが開放され、それによって、運転者は、ブレーキペダルの操作時に、ホイールブレーキ装置9に直接液圧的に介入する。
【0027】
ペダルストロークセンサ7によって測定された、ブレーキペダル6の調整運動は、センサ信号として閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11に伝送され、この閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11内で、ブレーキ倍力装置10を制御するための調整信号が生成される。ホイールブレーキ装置9へのブレーキ液の供給は、各ブレーキ回路2,3内で、別の装置と共にブレーキ油圧装置8の一部である様々な切換弁を介して行われる。ブレーキ油圧装置8には、さらに、エレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)の構成部分である油圧ポンプが所属する。
【0028】
2回路式の車両ブレーキ1の2つの液圧式のブレーキ回路2,3は、例えばダイアゴナル式に分割されているので、第1のブレーキ回路2は、例えば左の前車輪および右の後車輪の2つのホイールブレーキ装置9にブレーキ液を供給し、第2のブレーキ回路3は、右の前車輪および左の後車輪の2つのホイールブレーキ装置9にブレーキ液を供給する。選択的に、2回路式の車両ブレーキ1の2つの液圧式のブレーキ回路2,3を、前車軸のホイールブレーキ装置および後車軸のホイールブレーキ装置に分割することも可能である。
【0029】
図2には、車両の後車軸のホイールに配置されたホイールブレーキ装置9の詳細が示されている。ホイールブレーキ装置9は、液圧式の車両ブレーキ1の一部であって、ブレーキ回路2,3からブレーキ液22が供給される。ホイールブレーキ装置9はさらに、電気機械式のブレーキ装置を有しており、このブレーキ装置は、車両を停止状態で固定するためのパーキングブレーキ若しくは駐車ブレーキとして使用され、また車両が動いているときに制動させるためにも使用され得る。
【0030】
電気機械式のブレーキ装置は、ブレーキディスク20を把持するキャリパ19を備えたブレーキキャリパ12を有している。調整部材として、ブレーキ装置は、ブレーキモータ13としての直流電動機を有しており、このブレーキモータ13のロータ軸はスピンドル14を回転駆動し、このスピンドル14にスピンドルナット15が相対回動不能に支承されている。スピンドル14が回転すると、スピンドルナット15が軸方向に位置調節される。スピンドルナット15は、ブレーキライニング17の支持体であるブレーキピストン16内で移動し、ブレーキライニング17は、ブレーキピストン16によってブレーキディスク20に押し付けられる。ブレーキディスク20の反対側に、別のブレーキライニング18が配置されており、この別のブレーキライニング18はキャリパ19に定置に保持されている。ブレーキピストン16はその外側が、この外側を把持するシールリング23を介して気密に、このブレーキピストン16を収容するハウジングに対してシールされている。
【0031】
ブレーキピストン16の内側で、スピンドルナット15は、スピンドル14の回転運動時に、軸方向で前方にブレーキディスク20に向かう方向に移動し、若しくはこれとは逆のスピンドル14の回転運動時に、軸方向で後方にストッパ21に達するまで移動する。締付力を発生させるために、スピンドルナット15はブレーキピストン16の内側の端面を負荷し、それによって、ブレーキ装置内で軸方向にしゅう動可能に支承されたブレーキピストン16はブレーキライニング17と共に、ブレーキディスク20の、ブレーキピストン16に対面する端面に向かって押し付けられる。
【0032】
液圧式の制動力のために、ブレーキピストン16に、液圧式の車両ブレーキ1からブレーキ液22の液圧が作用する。液圧は、車両停止状態においても電気機械式のブレーキ装置の操作によって支援されて有効であり、従って、全制動力は、電動機式に提供された部分と液圧式の部分とから構成されている。車両の走行中に、ブレーキ操作を実行して制動力を生ぜしめるために、液圧式の車両ブレーキだけが作動するか、または液圧式の車両ブレーキも電気機械式のブレーキ装置も作動するか、または電気機械式のブレーキ装置だけが作動する。液圧式の車両ブレーキ1の調整可能な構成要素を制御するための調整信号も、また電気機械式のホイールブレーキ装置9の調整可能な構成要素を制御するための調整信号も閉ループ制御若しくは開ループ装制御置11で生成される。
【0033】
ブレーキモータ13を備えた電気機械式のブレーキ装置を追加的に装備する、図2に示されたホイールブレーキ装置9は、好適には車両の後車軸に設けられている。後車軸の2つのホイールブレーキ装置9内に設けられた電気式のブレーキモータ13は、互いに独立して制御され得る。
【0034】
図3は、それ自体公知の形式で車両シートに安全ベルトが装備されている車両の概略図を示す。図3には、車両シート上の車両乗員32(運転者)を保護するために用いられる安全ベルト30が示されている。安全ベルト30にはベルトテンションシステム31が対応配設されており、このベルトテンションシステム31は、機能しない初期位置と保護位置との間で調節可能なアクティブな乗員保護装置を形成する。ベルトテンションシステム31が作動され、それによって初期位置から保護位置へ位置調節されると、ベルトテンションシステム31は安全ベルト30を引き締めるように作用するので、運転者32はシートバックレスト33に押し付けられる。これによって、特に車両の衝突時若しくは他の車両と自車との衝突時に負傷が避けられるか、または負傷の程度が少なくとも軽減され得る。
【0035】
ベルトテンションシステム31は、保護位置から初期位置に再び戻って位置調節もされ、この初期位置でベルトテンションシステム31は安全ベルト30に引き締め力を作用させることはない。
【0036】
ベルトテンションシステム31は、電気配線を介して車両の閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11に接続されており、この閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11を介して車両ホイール内のホイールブレーキ装置9も制御される。閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11とホイールブレーキ装置9若しくはベルトテンションシステム31との間の接続配線を介して、それぞれ当該のアクティブなユニットを制御するための調整信号が伝送され、並びに好適には逆方向で、アクティブなユニットのそれぞれ最新の状態を示す信号も伝送され得る。この構成は、同じ閉ループ制御若しくは開ループ制御装置11によりホイールブレーキ装置9もベルトテンションシステム31も制御することを可能にする。電気機械式のパーキングブレーキの部分でもありまた液圧式の車両ブレーキの部分でもあるホイールブレーキ装置9を制御する際に、減速要求および制動力の発生を実行するために、電気式のブレーキモータおよび/または車両ブレーキの液圧アクチュエータを制御することができる。
【0037】
制動力要求は、本発明の方法の枠内で、パーキングブレーキを操作することによって行われ、これは例えばパーキングブレーキの操作スイッチ34を介して手動で車両乗員32によって実行され得る。これが走行中に行われると、制動力の発生と同時にベルトテンションシステム31も操作され、初期位置から保護位置へ移行せしめられる。
【0038】
図4には、走行中にパーキングブレーキを操作する際にベルトテンションシステムを起動するための方法ステップを有する典型的なフローチャートが示されている。第1の方法ステップ40でのこの方法の開始後に、次の方法ステップ41で、車両速度が、特に歩行速度より高い例えば少なくとも10km/hの値である速度限界値を上回るかどうかの問い合わせが行われる。これによって、ベルトテンションシステムの作動が、停止した車両または車庫入れ若しくは車庫出し中には行われないことが保証されている。
【0039】
ステップ41での問い合わせにより、車両速度が速度限界値よりも大きくないことが分かると、ノー分岐(“N”)に続いて再び方法ステップ41の開始に戻され、次いで規則的な間隔を保って新たに、ステップ41に従って問い合わせが実行される。
【0040】
これに対してステップ41の問い合わせにより、車両速度が速度限界値より大きいことが分かると、イエス分岐(“Y”)に続いて次のステップ42に進められる、このステップ42でさらなる問い合わせが実行される。ステップ42に従って、車両減速を要求するためにパーキングブレーキが運転者により手動で操作されたかどうかの問い合わせが行われる。そうでなければ、ノー分岐に続いて再び方法ステップ41の開始に戻される。さもなければ、実際にパーキングブレーキの手動操作による減速要求が存在し、イエス分岐に続いて次の方法ステップ43に進められる。
【0041】
方法ステップ43で、ベルトテンションシステムが作動され、それによって初期位置から保護位置へ位置調節され、この保護位置で、安全ベルトに力が加えられ、車両乗員はそのシートのシートバックレストに押し付けられる。次のステップ44で、規則的な間隔を保って、パーキングブレーキがまだ作動されているかどうかの問い合わせが行われる。そうであれば、イエス分岐に続いて再び方法ステップ44の開始に戻され、規則的な間隔を保って新たにステップ44で問い合わせが実行される。パーキングブレーキがまだ作動されている限りは、ベルトテンションシステムも作動維持されている。
【0042】
これに対してステップ44での問い合わせにより、パーキングブレーキがもはや作動されていない、つまり運転者がパーキングブレーキのための操作をもはや行っていないことが分かると、ノー分岐に続いてステップ45に進められ、このステップ45で、ベルトテンションシステム31は作動停止され、これによって保護位置から初期位置へ戻される。次いでこの方法は終了される。
【0043】
選択的にステップ44で、車両が停止状態にあり、この停止状態が最短時間に亘って持続するかどうかの問い合わせも行われ得る。これが満たされていれば、ベルトテンションシステム31は作動停止され、この方法は終了される。
【0044】
さらに別の可能性により、ステップ44で、停止された車両においてパーキングブレーキが作動され、それによって車両が停止状態で固定されているかどうかが問い合わせられ得る。これが満たされていれば、ベルトテンションシステム31は作動停止され、この方法は終了される。
【符号の説明】
【0045】
1 車両ブレーキ装置
2 第1の液圧式のブレーキ回路
3 第2の液圧式のブレーキ回路、電気式のブレーキモータ
4 マスタブレーキシリンダ
5 ブレーキ液リザーブタンク
8 ブレーキ油圧装置
9 パーキングブレーキ、ホイールブレーキ装置
10 ブレーキ倍力装置
11 閉ループ制御若しくは開ループ制御装置
12 ブレーキキャリパ
13 ブレーキモータ
14 スピンドル
15 スピンドルナット
16 ブレーキピストン
17 ブレーキライニング
19 キャリパ
20 ブレーキディスク
23 シールリング
30 安全ベルト
31 乗員保護装置、ベルトテンションシステム
32 運転者、車両乗員
33 シートバックレスト
34 操作スイッチ
40 第1の方法ステップ
41,42,43,44,45 方法ステップ、ステップ
N ノー分岐
図1
図2
図3
図4