(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/12 20060101AFI20240307BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20240307BHJP
H02K 15/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H02K3/12
H02K1/16
H02K15/06
(21)【出願番号】P 2019157089
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土方 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貞一郎
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112513(JP,A)
【文献】特開2017-022797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/12
H02K 1/16
H02K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアのスロットに配置されるコイルと、
前記ステータコアに対向するロータと、を備え、
前記ロータの極数をP、前記ステータコアのスロット数をS、自然数をNとしたとき、
P=7×N、
S=12×N、
の条件を満足し、
前記ステータコアは、隣り合う前記スロットの間に配置されるティースを有し、
前記コイルは、第1相コイルと第2相コイルと第3相コイルとを含み、
前記ティースは、前記第1相コイルの開口及び前記第2相コイルの開口の両方に配置される第1ティースと、前記第1相コイルの開口及び前記第2相コイルの開口の一方に配置される第2ティースと、前記第1相コイルの開口及び前記第2相コイルの開口のいずれにも配置されない第3ティースとを含み、
周方向において、前記第1ティースの寸法が最も小さく、前記第1ティースに次いで前記第2ティースの寸法が小さく、前記第3ティースの寸法が最も大きい、
モータ。
【請求項2】
前記コイルは、2スロットピッチで前記ティースの周囲に配置される、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1相コイルの間に前記第2相コイルの一部が配置され、前記第2相コイルの間に前記第1相コイルの一部が配置されることにより、前記第1相コイルと前記第2相コイルとのコイルセットが形成され、
前記第2相コイルの間に前記第3相コイルの一部が配置され、前記第3相コイルの間に前記第2相コイルの一部が配置されることにより、前記第2相コイルと前記第3相コイルとのコイルセットが形成され、
前記第3相コイルの間に前記第1相コイルの一部が配置され、前記第1相コイルの間に前記第3相コイルの一部が配置されることにより、前記第3相コイルと前記第1相コイルとのコイルセットが形成され、
前記ステータコアは、前記コイルセットを支持する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記コイルは、前記スロットに配置される2つのコイルセンター部と、前記ステータコアから軸方向に突出するコイルエンド部とを有し、
前記スロットは、前記第1相コイルの一方のコイルセンター部が配置される第1スロットと、前記第1スロットの隣に配置され前記第2相コイルの一方のコイルセンター部が配置される第2スロットと、前記第2スロットの隣に配置され前記第1相コイルの他方のコイルセンター部が配置される第3スロットと、前記第3スロットの隣に配置され前記第2相コイルの他方のコイルセンター部が配置される第4スロットとを含む、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記ロータの回転において、前記第1相コイルの2つの前記コイルセンター部と、隣り合う2つの前記
ロータの極とが対向する、
請求項4に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、ステータとロータとを備える。ステータは、ステータコアとコイルとを有する。ステータ構造の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルの巻回方式として全節巻及び短節巻が知られている。全節巻とは、ロータの極ピッチとステータのコイルピッチとが等しい巻回方式をいう。短節巻とは、ロータの極ピッチよりもステータのコイルピッチの方が小さい巻回方式をいう。例えばスイッチトリラクタンスモータのコイルが全節巻で巻回される場合、全節巻のモータは、短節巻のモータよりもステータの単位体積あたりのトルクは大きくなる。しかし、全節巻のモータは、短節巻のモータよりもコイルエンドが大きくなり、モータのトルク密度の著しい改善が見込めない。また、ステータの構造によっては、分割ステータコアを採用しないと、成形済のコイルをステータコアのスロットに挿入することが困難となる可能性がある。
【0005】
本開示は、コイルエンド部の大きさを抑制でき、分割ステータコアを採用しなくても容易に組み立て可能なモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、ステータコアと、前記ステータコアのスロットに配置されるコイルと、前記ステータコアに対向するロータと、を備え、前記ロータの極数をP、前記ステータコアのスロット数をS、自然数をNとしたとき、P=7×N、S=12×N、の条件を満足する、モータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コイルエンド部の大きさを抑制でき、分割ステータコアを採用しなくても容易に組み立て可能なモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るモータを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るステータの一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るステータ及びロータを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るティース及びコイルを模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るステータの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るスロットを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[モータ]
図1は、本実施形態に係るモータ1を模式的に示す図である。本実施形態において、モータ1は、セグメント型スイッチトリラクタンスモータである。
図1に示すように、モータ1は、ステータ2と、ロータ3とを備える。
【0011】
ステータ2は、実質的に円筒状である。ステータ2の内周面とロータ3の外周面とは間隙を介して対向する。ロータ3は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ3の回転軸AXとステータ2の中心軸とは実質的に一致する。
【0012】
本実施形態においては、回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0013】
また、軸方向においてモータ1の中心から規定の方向に離れる方向又は位置を適宜、軸方向一方側、と称し、軸方向において軸方向一方側の反対側を適宜、軸方向他方側、と称する。また、周方向において規定の回転方向を適宜、周方向一方側、と称し、周方向において周方向一方側の反対側を適宜、周方向他方側、と称する。また、径方向において中心軸AXから離れる方向又は位置を適宜、径方向外側、と称し、径方向において径方向外側の反対側を適宜、径方向内側、と称する。
【0014】
ステータ2は、ステータコア4と、ステータコア4に支持されるコイル5とを有する。ロータ3は、ステータコア4と対向するように配置される。本実施形態において、ロータ3は、ステータコア4の内側に配置される。ロータ3は、ロータホルダ6と、ロータホルダ6に保持されるロータコアピース7とを有する。ロータホルダ6は、非磁性体である。ロータコアピース7は、磁性体である。ロータコアピース7は、ロータ3の極として機能する。
【0015】
モータ1は、3相モータである。コイル5は、U相コイル5Uと、V相コイル5Vと、W相コイル5Wとを含む。
【0016】
ロータ3は、シャフト8を介して対象物RSに接続される。対象物RSとして、建設機械の一種であるハイブリッドショベルに搭載されるエンジンが例示される。モータ1は、エンジンにより駆動される発電機として機能する。
【0017】
[ステータ]
図2は、本実施形態に係るステータ2の一部を示す斜視図である。
図2に示すように、ステータ2は、ステータコア4と、ステータコア4のスロット9に配置されるコイル5とを有する。
【0018】
ステータコア4は、内周面4Sと、外周面4Tと、第1端面4Aと、第2端面4Bとを有する。内周面4Sは、径方向内側を向く。外周面4Tは、径方向外側を向く。第1端面4Aは、軸方向一方側を向く。第2端面4Bは、軸方向他方側を向く。第1端面4Aは、内周面4Sの軸方向一方側の端部と外周面4Tの軸方向一方側の端部とを結ぶ。第2端面4Bは、内周面4Sの軸方向他方側の端部と外周面4Tの軸方向他方側の端部とを結ぶ。
【0019】
スロット9は、内周面4Sにおいて周方向に複数設けられる。スロット9は、内周面4Sから径方向外側に凹む。スロット9は、軸方向に延伸する。スロット9は、内周面4Sに設けられ径方向内側を向く開口部9Mと、第1端面4Aに設けられ軸方向一方側を向く開口部9Aと、第2端面4Bに設けられ軸方向他方側を向く開口部9Bとを有する。
【0020】
また、ステータコア4は、周方向において隣り合うスロット9の間に配置されるティース10を有する。
【0021】
ティース10は、コイル5を支持する。ティース10は、軸方向一方側を向く端面10Aと、軸方向他方側を向く端面10Bとを有する。第1端面4Aは、端面10Aを含む。第2端面4Bは、端面10Bを含む。
【0022】
コイル5は、ティース10に支持される。コイル5は、開口11を有する。ティース10は、コイル5の開口11に挿入される。コイル5の一部は、スロット9の内側に配置される。コイル5の一部は、ステータコア4から軸方向に突出する。
【0023】
以下の説明においては、コイル5のうちスロット9の内側に配置される部分を適宜、コイルセンター部51、と称し、コイル5のうちステータコア4から軸方向に突出する部分を適宜、コイルエンド部52、と称する。
【0024】
コイル5は、コイルセンター部51を2つ有する。コイル5は、コイルエンド部52を2つ有する。一方のコイルセンター部51が所定のスロット9に配置された場合、他方のコイルセンター部51は、一方のコイルセンター部51が配置されているスロット9とは別のスロット9に配置される。コイルエンド部52は、ステータコア4の第1端面4Aから軸方向一方側に突出する第1のコイルエンド部52と、ステータコア4の第2端面4Bから軸方向他方側に突出する第2のコイルエンド部52とを含む。
【0025】
上述のように、コイル5は、U相コイル5Uと、V相コイル5Vと、W相コイル5Wとを含む。
図2には、U相コイル5UとV相コイル5Vとが示されている。
【0026】
図2に示すように、U相コイル5UとV相コイル5Vとは重ね合わせられる。U相コイル5Uの間にV相コイル5Vの一部が配置され、V相コイル5Vの間にU相コイル5Uの一部が配置されるように、U相コイル5UとV相コイル5Vとが重ね合わせられることにより、U相コイル5UとV相コイル5Vとのコイルセット31が形成される。
【0027】
コイルセット31と同様に、V相コイル5Vの間にW相コイル5Wの一部が配置され、W相コイル5Wの間にV相コイル5Vの一部が配置されるように、V相コイル5VとW相コイル5Wとが重ね合わせられることにより、V相コイル5VとW相コイル5Wとのコイルセット32が形成される。W相コイル5Wの間にU相コイル5Uの一部が配置され、U相コイル5Uの間にW相コイル5Wの一部が配置されるように、W相コイル5WとU相コイル5Uとが重ね合わせられることにより、W相コイル5WとU相コイル5Uとのコイルセット33が形成される。ステータコア4は、コイルセット31、コイルセット32、及びコイルセット33のそれぞれを支持する。
【0028】
コイル5は、2スロットピッチでティース10の周囲に配置される。すなわち、コイル5の一方のコイルセンター部51が所定のスロット9に配置された場合、他方のコイルセンター部51は、周方向において一方のコイルセンター部51が配置されているスロット9から2つ隣のスロット9に配置される。
【0029】
図2に示す例において、スロット9は、第1スロット91と、第1スロット91の周方向一方側の隣に配置される第2スロット92と、第2スロット92の周方向一方側の隣に配置される第3スロット93と、第3スロット93の周方向一方側の隣に配置される第4スロット94を含む。
【0030】
U相コイル5Uの他方のコイルセンター部51は、第1スロット91に配置される。V相コイル5Vの他方のコイルセンター部51は、第2スロット92に配置される。U相コイル5Uの一方のコイルセンター部51は、第3スロット93に配置される。V相コイル5Vの一方のコイルセンター部51は、第4スロット94に配置される。
【0031】
コイルセット32のV相コイル5V及びW相コイル5Wと複数のスロット9との関係、及びコイルセット33のW相コイル5W及びU相コイル5Uと複数のスロット9との関係は、コイルセット31のU相コイル5U及びV相コイル5Vと複数のスロット9との関係と同様である。
【0032】
[極数とスロット数との関係]
図3は、本実施形態に係るステータ2及びロータ3を模式的に示す図である。
図3は、半分に分割されたステータ2及びロータ3を示す。なお、
図3に示す巻線の極性は一例である。巻線の極性は、
図3に示す向きでも成立し、
図3に示す向きとは逆向きでも成立する。
【0033】
図3に示すように、U相コイル5UとV相コイル5Vとのコイルセット31、V相コイル5VとW相コイル5Wとのコイルセット32、及びW相コイル5WとU相コイル5Uとのコイルセット33のそれぞれが、ステータコア4に支持される。U相コイル5U、V相コイル5V、及びW相コイル5Wのそれぞれは、2スロットピッチでティース10の周囲に配置される。
【0034】
ロータ3は、複数のロータコアピース7を有する。複数のロータコアピース7の形状及び寸法は同一である。複数のロータコアピース7は、周方向に等間隔で配置される。ロータコアピース7は、ロータ3の極として機能する。ロータ3の極数は、ロータコアピース7の数を意味する。
【0035】
本実施形態において、ロータ3の極数をP、ステータコア4のスロット数をS、自然数をNとしたとき、モータ1は、以下の(1)式及び(2)式の条件を満足する。
【0036】
P=7×N …(1)
S=12×N …(2)
【0037】
すなわち、本実施形態に係るモータ1として、7極12スロットのモータ、14極24スロットのモータ、及び21極36スロットのモータが例示される。
【0038】
本実施形態においては、ロータ3の回転において、U相コイル5U、V相コイル5V、及びW相コイル5Wの少なくとも2つのコイルセンター部51と、周方向において隣り合う2つのロータコアピース7とが対向するように、極数P及びスロット数Sが定められる。
図3に示す例においては、V相コイル5Vの2つのコイルセンター部51と、周方向において隣り合う2つのロータコアピース7とが、同時に対向する。ロータ3が回転すると、U相コイル5Uの2つのコイルセンター部51と周方向において隣り合う2つのロータコアピース7とが同時に対向する状態が発生する。更に、ロータ3が回転すると、W相コイル5Wの2つのコイルセンター部51と周方向において隣り合う2つのロータコアピース7とが同時に対向する状態が発生する。
【0039】
このように、本実施形態において、U相コイル5UのコイルピッチIc、V相コイル5VのコイルピッチIc、及びW相コイル5WのコイルピッチIcと、ロータ3の極ピッチIpとが実質的に等しくなるように、極数P及びスロット数Sが定められている。
【0040】
本実施形態において、コイルピッチIcとは、回転軸AXを基準として1つのコイル5の一方のコイルセンター部51と他方のコイルセンター部51とがなす角度をいう。極ピッチIpとは、回転軸AXを基準として周方向に隣り合う2つのロータコアピース7がなす角度をいう。
【0041】
[ティース]
図4は、本実施形態に係るティース10及びコイル5を模式的に示す図である。
図4は、径方向内側からステータコア4を見た図に相当する。
図3及び
図4に示すように、ティース10は、コイルセット31のU相コイル5Uの開口11及びV相コイル5Vの開口11の両方に配置される第1ティース101と、U相コイル5Uの開口11及びV相コイル5Vの開口11の一方に配置される第2ティース102と、U相コイル5Uの開口11及びV相コイル5Vの開口11の両方に配置されない第3ティース103とを含む。
【0042】
すなわち、第1ティース101は、2つのコイル5の開口11の内側に配置されるティース10である。第2ティース102は、1つのコイル5の開口11の内側に配置されるティース10である。第3ティース103は、コイル5の開口11の内側に配置されないティース10である。
【0043】
第1ティース101は、コイルセット32のV相コイル5Vの開口11及びW相コイル5Wの開口11の両方に配置されるティース10と、コイルセット33のW相コイル5Wの開口11及びU相コイル5Uの開口11の両方に配置されるティース10とを含む。
【0044】
第2ティース102は、コイルセット32のV相コイル5Vの開口11及びW相コイル5Wの開口11の一方に配置されるティース10と、コイルセット33のW相コイル5Wの開口11及びU相コイル5Uの開口11の一方に配置されるティース10とを含む。
【0045】
第3ティース103は、コイルセット32のV相コイル5Vの開口11及びW相コイル5Wの開口11のいずれにも配置されないティース10と、コイルセット33のW相コイル5Wの開口11及びU相コイル5Uの開口11の両方に配置されないティース10とを含む。
【0046】
換言すれば、第1ティース101は、端面10A及び端面10Bが2つのコイル5に対向するティース10である。第2ティース102は、端面10A及び端面10Bが1つのコイル5に対向するティース10である。第3ティース103は、端面10A及び端面10Bがコイル5に対向しないティース10である。
【0047】
図4に示すように、周方向において、第1ティース101、第2ティース102、及び第3ティース103のうち、第1ティース101の寸法R1が最も小さく、第1ティース101に次いで第2ティース102の寸法R2が小さく、第3ティース103の寸法R3が最も大きい。
【0048】
[コイル]
本実施形態において、コイル5は、板状のセグメント導体により構成される。セグメント導体は、U相コイル5Uを構成するセグメント導体と、V相コイル5Vを構成するセグメント導体と、W相コイル5Wを構成するセグメント導体とを含む。
【0049】
複数のセグメント導体が螺旋状に接続されることにより、コイル5が形成される。U相コイル5Uは、螺旋状に接続された複数のセグメント導体により構成される。V相コイル5Vは、螺旋状に接続された複数のセグメント導体により構成される。U相コイル5Uのセグメント導体の間に、V相コイル5Vのセグメント導体の一部が配置される。U相コイル5Uのセグメント導体とV相コイル5Vのセグメント導体とは径方向に交互に配置される。U相コイル5Uの間にV相コイル5Vの一部が配置されることにより、U相コイル5UとV相コイル5Vとが重ね合わせられ、U相コイル5UとV相コイル5Vとのコイルセット31が形成される。
【0050】
同様に、V相コイル5Vの間にW相コイル5Wの一部が配置されることにより、V相コイル5VとW相コイル5Wとが重ね合わせられ、V相コイル5VとW相コイル5Wとのコイルセット32が形成される。W相コイル5Wの間にU相コイル5Uの一部が配置されることにより、W相コイル5WとU相コイル5Uとが重ね合わせられ、W相コイル5WとU相コイル5Uとのコイルセット33が形成される。ステータコア4は、コイルセット31、コイルセット32、及びコイルセット33のそれぞれを支持する。
【0051】
なお、本実施形態において、コイル5は、板状のセグメント導体20により構成されることとするが、丸線により構成されてもよいし、平角線により構成されてもよい。
【0052】
[製造方法]
図5は、本実施形態に係るステータ2の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、ステータ2は、コイルセットを製造する工程PR1と、コイルセットをスロット9に挿入する工程PR2と、複数のコイルセットを結線する工程PR3とを含む製造方法により製造される。
【0053】
コイルセット31を製造する場合、まず、U相コイル5U及びV相コイル5Vのそれぞれが製造される。U相コイル5Uは、複数のセグメント導体を螺旋状に接続することにより製造される。V相コイル5Vは、複数のセグメント導体を螺旋状に接続することにより製造される。
【0054】
複数のセグメント導体20は、溶接により接続されてもよいし、セグメント導体の端面を圧接することによって接続してもよい。
【0055】
U相コイル5U及びV相コイル5Vのそれぞれが製造された後、U相コイル5Uのセグメント導体の間に、V相コイル5Vのセグメント導体の一部が配置される。U相コイル5Uのセグメント導体とV相コイル5Vのセグメント導体とが径方向に交互に配置されるように、U相コイル5UとV相コイル5Vとが重ね合わせられることにより、U相コイル5UとV相コイル5Vとのコイルセット31が製造される。同様に、V相コイル5VとW相コイル5Wとのコイルセット32、及びW相コイル5WとU相コイル5Uとのコイルセット33が製造される(工程PR1)。
【0056】
コイルセット31、コイルセット32、及びコイルセット33が製造された後、コイルセット31、コイルセット32、及びコイルセット33のそれぞれが、径方向内側からスロット9に挿入される。
図3に示したように、コイルセット33はコイルセット32の周方向一方側に配置され、コイルセット32はコイルセット31の周方向一方側に配置される。複数のスロット9のそれぞれにコイルセンター部51が1つずつ配置される(工程PR2)。
【0057】
コイルセット31、コイルセット32、及びコイルセット33のそれぞれがスロット9に挿入された後、複数のコイル5が結線部材により接続される(工程PR3)。
【0058】
以上により、ステータ2が製造される。
【0059】
なお、上述したステータ2の製造方法は一例である。コイル5が丸線又は平角線により構成される場合、丸線又は平角線を送出するノズルを用いて、ティース10の周囲に丸線又は平角線を巻き付けてもよい。
【0060】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、モータ1は、(1)式及び(2)式の条件を満足する。7極12スロットのモータ1においては、2スロットピッチでコイル5を配置することができる。そのため、コイルエンド部52の大きさを抑制することができる。
【0061】
例えば3スロットピッチでコイルが配置される場合、特許文献1に記載されているように、コイルエンド部において3つのコイルが重複することとなる。その結果、コイルエンド部が大きくなってしまう。コイルエンド部は、モータ1のトルクの発生に寄与しない。そのため、コイルエンド部が大きくなると、モータ1が発生するトルクが大きくならないにもかかわらず、モータ1が大型化してしまう。その結果、モータ1のトルク密度が低下してしまう。トルク密度とは、モータが発生可能なトルクをモータの質量又は体積で除した値をいう。トルク密度は大きい方が好ましい。
【0062】
本実施形態によれば、コイルエンド部52において重複するコイル5は2つである。また、
図2に示したように、一部のコイルエンド部52は、他のコイルエンド部52と重複しない。そのため、コイルエンド部52が大きくなってしまうことが抑制される。したがって、モータ1の大型化が抑制される。
【0063】
また、例えば1スロットピッチで配置されるコイルを有するモータよりも、2スロットピッチで配置されるコイル5を有するモータ1の方が、大きいトルクを発生できる。すなわち、2スロットピッチでコイルが配置されることにより、モータ1は十分なトルクを発生することができる。そのため、モータ1のトルク密度の低下が抑制される。
【0064】
また、3スロットピッチのコイルピッチよりも2スロットピッチのコイルピッチIcの方が小さい。そのため、本実施形態によれば、3スロットピッチに比べて、コイル5の相抵抗が低減される。そのため、モータ1の性能の低下が抑制される。
【0065】
また、本実施形態においては、7極12スロットが採用されることにより、2つのコイル5を組み合わせたコイルセットを成形した後、コイルセットを径方向内側からスロット9に挿入することができる。本実施形態によれば、例えば分割ステータコアを採用しなくても、ボビン状に巻かれた成形済のコイル5(コイルセット)をステータコア4のスロット9に挿入することができる。したがって、モータ1を容易に製造することができる。
【0066】
本実施形態において、ティース10は、2つのコイル5の開口11に配置される第1ティース101と、1つのコイル5の開口11に配置される第2ティース102と、コイル5の開口11に配置されない第3ティース103とを含む。周方向において、第1ティース101の寸法R1が最も小さく、第1ティース101に次いで第2ティース102の寸法R2が小さく、第3ティース103の寸法R3が最も大きい。本発明者は、第1ティース101と第2ティース102と第3ティース103とが[R1<R2<R3]の条件を満足することにより、モータ1が発生するトルクが向上することを見出した。これは、[R1<R2<R3]の条件を満足するようにステータ2を設計すると、漏れ磁束が少なくなり、磁束が適切に流通することができると考えられる。[R1<R2<R3]の条件を満足することにより、モータ1は、大きいトルクを発生することができる。
【0067】
ロータ3の回転において、コイル5の2つのコイルセンター部51と、隣り合う2つのロータコアピース7とが対向するように、コイルピッチIcと極ピッチIpとが定められることにより、モータ1は適正にトルクを発生することができる。
【0068】
[その他の実施形態]
図6は、本実施形態に係るスロット9を模式的に示す図である。
図6に示すように、回転軸AXと直交する断面において、第1スロット91の内面91Aと第2スロット92の内面92Aと第3スロット93の内面93Aと第4スロット94の内面94Aとは平行である。スロット9の内面とは、軸方向及び径方向のそれぞれに延伸し、コイル5の開口11の内周面と対向する面をいう。
【0069】
上述のように、例えばスロット9にコイルセット31を挿入する場合、第1スロット91は、U相コイル5Uの他方のコイルセンター部51が配置され、第2スロット92には、V相コイル5Vの他方のコイルセンター部51が配置され、第3スロット93には、U相コイル5Uの一方のコイルセンター部51が配置され、第4スロットには、V相コイル5Vの一方のコイルセンター部51が配置される。第1スロット91の内面91Aと第2スロット92の内面92Aと第3スロット93の内面93Aと第4スロット94の内面94Aとが平行に近い形状のため、コイルセット31はスロット9に円滑に挿入される。
【0070】
上述の実施形態において、ロータ3がステータコア4の内側(内周側)に配置され、モータ1がインナロータ側モータであることとした。ロータ3はステータコア4に対向する位置に配置されていればよい。モータ1は、ロータ3がステータコア4の外周側に配置されるアウタロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の内周側及び外周側の両方に配置されるデュアルロータ型モータでもよいし、ロータ3がステータコア4の軸方向側に配置されるアキシャルギャップ型モータでもよい。
【0071】
なお、上述の実施形態においては、モータ1がセグメント型スイッチトリラクタンスモータであることとした。モータ1は極歯が設けられたスイッチトリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor)でもよいし、シンクロナスリラクタンスモータ(Synchronous Reluctance Motor)でもよいし、フラックススイッチングモータ(Flux Switching Motor)でもよいし、永久磁石モータモータ(Permanent Magnet Motor)でもよいし、誘導モータ(Induction Motor)でもよいし、アキシャルギャップモータでもよいし、リニアアクチュエータでもよい。
【0072】
上述の実施形態においては、モータ1は3相モータであることとした。モータ1は4相モータでもよい。その場合は、ロータの極数をP、ステータコアのスロット数をS、自然数をNとしたとき、
P=5×N、
S=8×N、
の条件を満足する。
【符号の説明】
【0073】
1…モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…ステータコア、4A…第1端面、4B…第2端面、4S…内周面、4T…外周面、5…コイル、5U…U相コイル、5V…V相コイル、5W…W相コイル、6…ロータホルダ、7…ロータコアピース、8…シャフト、9…スロット、9A…開口部、9B…開口部、9M…開口部、10…ティース、10A…端面、10B…端面、11…開口、31…コイルセット、32…コイルセット、33…コイルセット、51…コイルセンター部、52…コイルエンド部、91…第1スロット、91A…内面、92…第2スロット、92A…内面、93…第3スロット、93A…内面、94…第4スロット、94A…内面、101…第1ティース、102…第2ティース、103…第3ティース、AX…回転軸、Ic…コイルピッチ、Ip…極ピッチ、R1…寸法、R2…寸法、R3…寸法、RS…対象物。