(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】金属条材およびその金属条材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240307BHJP
B21D 53/00 20060101ALI20240307BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20240307BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20240307BHJP
H01G 4/228 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
H01L23/50 K
B21D53/00 D
B21D28/00 B
H01L23/50 D
H01L23/48 F
H01L23/48 K
H01G4/228 E
(21)【出願番号】P 2019174981
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390024464
【氏名又は名称】株式会社KANZACC
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】一▲柳▼ 匡平
(72)【発明者】
【氏名】宇田 芳人
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-051577(JP,A)
【文献】特開2018-181894(JP,A)
【文献】特開2016-020001(JP,A)
【文献】特開昭63-192261(JP,A)
【文献】特開2017-055044(JP,A)
【文献】特開2010-267730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
B21D 53/00
B21D 28/00
H01L 23/48
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなし、リードフレームとなる部分とそれ以外の部分とが長さ方向に複数並ぶ金属基材と、
前記金属基材の長さ方向に延び、前記リードフレームとなる部分及び前記それ以外の部分それぞれに形成されためっき層と、
前記金属基材の長さ方向に延び、前記リードフレームとなる部分及び前記それ以外の部分それぞれにおける前記めっき層との境界領域に形成された粗面領域と、
を備えた金属条材。
【請求項2】
前記金属基材には、打ち抜き加工によって前記リードフレームとなる部分にリードおよび該リードにつながる端子が形成されており、
前記端子がめっき層のある部分である請求項1の金属条材。
【請求項3】
前記金属基材には、前記リードフレームとなる部分が長さ方向に間欠的に並んでいる請求項1または2の金属条材。
【請求項4】
前記リードにおける粗面領域以外の部分に電子素子の搭載領域を備える請求項
2の金属条材。
【請求項5】
帯状をなし、リードフレームとなる部分とそれ以外の部分とが長さ方向に複数並ぶ金属基材を走行させる工程と、
前記走行する金属基材の長手方向に沿ってマスキングテープを貼り付け、前記リードフレームとなる部分及び前記それ以外の部分それぞれをマスキングする工程と、
前記走行する金属基材のマスキングテープの貼り付けられていない位置にめっき層を形成する工程と、
前記走行する金属基材からマスキングテープをはがす工程と、
前記走行する金属基材におけるめっき層の形成されていない部分であってそのめっき層との境界領域にレーザーを照射し、前記リードフレームとなる部分及び前記それ以外の部分それぞれに粗面領域を形成する工程と、
を備えた金属条材の製造方法。
【請求項6】
前記金属
基材を打ち抜き加工し、前記リードフレームとなる部分にリードおよび該リードにつながる端子を形成する工程を備えた請求項5の金属条材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき層を有する金属条材およびその金属条材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から銅などの金属条材を打ち抜き加工し、残った金属条材の一部が電子装置のリードフレームとして使用されている。たとえば、下記特許文献1はリードフレームと樹脂との接合を良くするために、リードフレームにおける電子素子の周縁部をレーザーによって粗面にすることが開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1は温度などの環境要因によって、樹脂の外面付近においてリードフレームと樹脂との接合力が弱まるおそれがある。また、走行する金属条材に特許文献1のように方形にレーザー照射するために、金属条材の走行方向に対して垂直にレーザーを照射する必要があり、金属条材を走行させながらレーザー照射することは難しく、生産性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生産性が良く、樹脂との接合力を高めた金属条材およびその金属条材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の金属条材は、帯状になった金属基材と、前記金属基材の長さ方向を向いて形成されためっき層と、前記金属基材におけるめっき層との境界領域に形成された粗面領域とを備える。
【0007】
本発明の金属条材の製造方法は、帯状の金属基材を走行させる工程と、走行する帯状の金属基材にマスキングテープを貼り付ける工程と、前記金属基材のマスキングテープの貼り付けられていない位置にめっき層を形成する工程と、前記めっき層が形成された金属基材からマスキングテープをはがす工程と、前記金属基材におけるめっき層の形成されていない部分において、めっき層との境界領域にレーザーを照射し、金属基材の表面に粗面領域を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、金属基材におけるめっき層との境界領域に粗面領域を設けることで、金属条材に電子素子を搭載して樹脂封止した場合に、粗面領域と樹脂との接合が良くなる。
【0009】
金属基材を走行させながらレーザー照射して粗面領域を形成しており、従来のように金属基材を停止させる必要が無く、金属条材の生産性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】打ち抜き加工された金属基材の上面図である。
【
図6】金属基材にマスキングテープを貼り付けた上面図である。
【
図7】打ち抜き加工されていない金属基材にめっき層と粗面領域を形成した斜視図である。
【
図8】打ち抜き加工されていない金属基材にめっき層と粗面領域を形成した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の金属条材および金属条材の製造方法について図面を用いて説明する。
【0012】
図1、
図2に示す本願の金属条材10は、帯状の金属基材12、金属基材12の表面に形成されためっき層14、金属基材12に形成された粗面領域16を備える。
【0013】
金属基材12は、たとえば幅が約8~80mm、厚みが約0.08~0.8mmの条(帯状体)である。金属基材12は銅系金属で構成される。銅系金属は純銅またはリン青銅、アルミニウム青銅、黄銅、洋白、ベリリウム銅、チタン銅、コルソン合金、白銅、赤銅などの銅合金を含む。また、金属基材12は鉄または鉄合金などの任意の金属の表面に銅めっきしたものでもよい。
【0014】
金属基材12は打ち抜き加工されており、金属基材12に複数の開口18が形成されている。この開口18によって、金属基材12はリード20、リード20につながる端子22、リード20および端子22を支持するための支持部24a、24b、24cを備える。支持部24a、24b、24cは金属基材12におけるリード20および端子22以外の部分であり、金属基材12の両側の支持部24a、金属基材12の中心の支持部24b、金属基材12の両側の支持部24aと中心の支持部24bをつなげる支持部24cを有する。
【0015】
リード20は電子素子26の搭載領域28を備え、樹脂30で封止される(
図3)。リード20同士の間に空間32があり、その空間32を介して2つのリード20に電子素子26が搭載される(
図3)。電子素子26はリード20に銀ペーストなどの導電性接着剤で接続、半田付け、またはボンディングワイヤーでの接続など種々の方法によって接続されてもよい。端子22は樹脂30で封止されず、プリント基板などの回路に半田付けされる部分である。リード20と端子22は金属基材12の幅方向を向いている。本説明で電子素子26はモールドされる前の状態のコンデンサー、ダイオード、半導体素子などである。
【0016】
めっき層14は金属基材12の表面の一部に形成されている。金属基材12に開口18があるため、めっき層14は金属基材12の長さ方向に間欠的に形成されている。金属基材12のめっき層14が形成された部分を端子22にする。
図1、
図2では金属基材12の一面にめっき層14が配置されているが、他面にめっき層14が配置されてもよいし、一面と他面の両方にめっき層14が配置されていてもよい。めっき層14の厚みは約15μm以下である。めっき層14として錫めっき層または銀めっき層が挙げられる。複数種類のめっき層14が積層されてもよい。
【0017】
粗面領域16は金属基材12における粗面領域16以外の領域(電子素子の搭載領域28)よりも表面粗さを高めた領域である。粗面領域16は金属基材12におけるリード20の部分であり、かつ、めっき層14に隣接する領域に形成されている。粗面領域16は複数の円形の窪みによって形成されている。円形の窪みはたとえば直径約50~100μm、深さ約0.1~5μmである。円形の窪み同士が一部重なり合ってもよい。
【0018】
粗面領域16の端部はリード20と端子22との境界まで形成されているのが好ましいが、粗面領域16の端部がリード20と端子22の境界から0.5mm以下の範囲にあればよい。
【0019】
金属条材10の製造装置34は、
図4に示すように、金属基材12にマスキングテープ36を貼り付ける装置38、金属基材12にめっき層14を形成するめっき装置40、金属基材12からマスキングテープ38をはぎ取る装置42、金属基材12にレーザーLを照射するレーザー装置44を備える。
【0020】
マスキングテープ36を金属基材12に貼り付けるための貼り付け装置38は、マスキングテープ36を巻回したロール46、および金属基材12とマスキングテープ36を一緒に挟み込むロール48を備える。
【0021】
マスキングテープ36として、たとえばポリエステル系樹脂やフッ素系樹脂が用いられる。マスキングテープ36における金属基材12の貼り付け部分にシリコン系の粘着層を備える。マスキングテープ36の厚みはたとえば約0.05~0.1mmである。
【0022】
マスキングテープ36をロール46から引き出しながら、走行する金属基材12と同期をとる。金属基材12とマスキングテープ36をロール48で一緒に挟み込むことで、マスキングテープ36の粘着層によって、マスキングテープ36が金属基材12に貼り付けられる。
【0023】
めっき装置40は、金属基材12の露出した位置にめっき層14を形成する。めっき装置40は、めっき液50の溜められためっき槽52、めっき槽52の上流と下流の陰極54、およびめっき液50の中の陽極56を備える。
【0024】
陰極54はロール状であり、金属基材12に接しながら回転する。金属基材12の表面にマスキングテープ36が貼られているが、走行時の振動等で金属基材12の露出部分が陰極54に接する。陽極56は金属基材12等に非接触の板状の電極である。金属基材12を走行させながら、その金属基材12とめっき液50を通電させ、めっき層14を電析させる。
【0025】
マスキングテープ36をはぎ取る装置42は、金属基材12からマスキングテープ36をはぎ取るロール58およびマスキングテープ58を巻き取るロール60を備える。マスキングテープ36をロール60に向けて走行させ、ロール60に巻き取る。
【0026】
レーザー装置44は光ファイバの中心にあるコアに希土類元素Yb(イッテルビウム)などがドープされたファイバレーザー、紫外(UV)レーザー、YVO4(ネオジウム:イットリウム・四酸化バナジューム)レーザー、YAG(イットリウム:アルミニウム:ガーネット)レーザーなどのレーザー装置を使用する。走行する金属基材12に照射する。金属基材12に複数のレーザー痕が形成されるように、高周波のパルスをレーザー装置44に印加し、レーザー発光させる。金属基材12の両面に粗面領域16を形成するため、レーザー装置44を2つ備える。2つのレーザー装置44は一方のレーザー装置44で発光したレーザーLが他方のレーザー装置44に照射されないように、金属基材12の走行方向においてずれるようにする。
【0027】
金属基材12に対してレーザー装置44の反対側にレーザーLの吸収手段を備えてもよい。金属基材12は開口18を備えており、レーザー装置44で連続してレーザーLを発光した場合、開口18を通過してしまう。そのため、レーザーLを吸収する液体や液体を含んだスポンジなどを配置しておいても良い。
【0028】
金属条材12の製造装置34は、金属基材12を巻きまわしたロール62、製造された金属条材10を巻き取るロール64、金属基材12に所定のテンションを与えるロール66を備える。少なくとも金属条材10を巻き取るロール64が回転することで、金属基材12が走行し、その走行している途中でめっき層14および粗面領域16が形成される。
【0029】
金属条材10の製造方法について説明する。(1)帯状の金属基材12を準備する。金属基材12が銅系材料で無ければ、銅メッキを施す。金属基材12は
図5に示すように開口18およびリード20間の空間32が形成されている。金属基材12を準備する段階で、必要に応じて金属基材12を洗浄する。洗浄方法として陰極電解脱脂および酸浸漬があげられる。陰極電解脱脂は水酸化ナトリウム水溶液を使用し、酸浸漬は硫酸を使用する。
【0030】
(2)金属基材12にマスキングテープ36を貼り付ける。
図6に示すように、金属基材12の長さ方向に帯状のマスキングテープ36を貼り付ける。貼り付ける部分は端子22になる部分以外である。端子22になる部分のみを露出し、めっき層14を形成するためである。
【0031】
(3)金属基材12にマスキングテープ36が貼り付けられた状態でめっき層14を形成する。マスキングテープ36の貼られた金属基材12をめっき槽52に溜められためっき液50の中を走行させる。走行する際に金属基材12を陰極54に接触させ、金属基材12とめっき液50を通電させ、めっき層14を電析させる。めっき層14は金属基材12にマスキングテープ36が貼られていず、露出された部分に形成される。開口18によって金属基材12の露出した部分が金属基材12の長さ方向に間欠的に存在するため、めっき層14は金属基材12の長さ方向において間欠的に形成される。
【0032】
(4)金属基材12からマスキングテープ36をはがす。金属基材12は直進するのに対し、マスキングテープ36は金属基材12から離れる方向に走行する。そのため、金属基材12からマスキングテープ36が剥がれる。マスキングテープ36がはがされた金属基材12を洗浄および乾燥させる。
【0033】
(5)金属基材12において、めっき層14の無い領域、かつ、めっき層14に隣接した領域に粗面領域16を形成する。粗面領域16はレーザー照射することで形成する。複数のレーザーLを金属基材12の幅方向に並べ、同時に照射することで、金属基材12を走行させながら粗面領域16を形成する。粗面領域16は金属基材12の長さ方向において間欠的に形成されている。
【0034】
なお、めっき層14および粗面領域16は金属基材12を走行させながら形成されるため、支持部24cにもめっき層14および粗面領域16が形成される。
【0035】
(6)めっき層14および粗面領域16を形成することで金属条材10が製造でき、その金属条材10をロール64に巻き取る。
【0036】
完成した金属条材10は、空間32をまたぐようにしてリード20の上にコンデンサーやダイオードなどの電子素子26を搭載し、電子素子26およびリード20を樹脂封止する(
図3)。樹脂30はリード20と端子22の境界まで設ける。リード20における端子22と隣接した領域は粗面領域16であり、リード20と樹脂30との接合性が高くなっている。最後に端子22と金属基材12の両側の支持部24aの境界を切断することで、電子装置70が製造される。
【0037】
以上のように、本願はリード20における端子22と隣接した領域を粗面領域16にすることで、その領域16は樹脂30との接合性が高められている。粗面領域16は樹脂30の外面付近であるため、温度等の外的影響を受けやすい部分であるが、粗面領域16によってリード20と樹脂30の接合性が高められたことで、外的影響によってリード20から樹脂30が外れにくくなっている。
【0038】
リード20と端子22は金属基材12の幅方向を向いているため、粗面領域16を金属基材12の長さ方向に向けて形成できる。金属基材12を走行させながら粗面領域16を形成することができ、金属条材10の生産性が良い。
【0039】
以上、本願の一実施形態を説明したが、本願は上記の実施形態に限定されない。たとえば、
図7、
図8のように、打ち抜き加工していない金属基材80に対してめっき層14と粗面領域16を形成し、その後に打ち抜き加工してもよい。金属基材80の長さ方向と同方向に帯状のめっき層14と粗面領域16が形成されている。
【0040】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0041】
10:金属条材
12、80:金属基材
14:めっき層
16:粗面領域
18:開口
20:リード
22:端子
24a、24b、24c:支持部
26:電子素子
28:電子素子の搭載領域
30:樹脂
32:空間
34:金属条材の製造装置
36:マスキングテープ
38:マスキングテープの貼り付け装置
40:めっき装置
42:マスキングテープをはがす装置
44:レーザー装置
46、48、58、60、62、64、66:ロール
50:めっき液
52:めっき槽
54:陰極
56:陽極
70:電子装置