(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ロールインマーガリン、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240307BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240307BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240307BHJP
A21D 13/16 20170101ALI20240307BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/14
A21D13/80
A21D13/16
(21)【出願番号】P 2019205804
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋平
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-193610(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208597(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/159242(WO,A1)
【文献】特開2016-189751(JP,A)
【文献】特開2016-168001(JP,A)
【文献】特開2015-195751(JP,A)
【文献】特開2008-161176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
A21D 2/14
A21D 13/80
A21D 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールインマーガリン全体中の油相含有量/水相含有量(重量比)が50/50~97/3であり、
ロールインマーガリン中に含まれる油相全体中、油脂(A)を15~30重量%、油脂(B)を20~45重量%を含有し、
油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分をロールインマーガリン全体中5~50重量%含み、
前記粉末状の固形分を含み、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物が、0~25℃まで冷却されて該温度で10~300秒間保持され晶析された後、混和により軟化させられながら10~35℃に昇温されて、粘度が10~250Pa・sに調整された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物がピロー包装に充填され、該ピロー包装の口が閉じられてからシート状に圧延されて成型され、-30℃~30℃で24時間以上静置されたロールインマーガリン。
油脂(A):構成脂肪酸全体中、炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、飽和脂肪酸含有量が70重量%以上であり、三飽和トリグリセライド含有量が油脂(A)全体中15重量%以上である、エステル交換または極度硬化された油脂
油脂(B):飽和脂肪酸含有量が構成脂肪酸全体中20重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中50重量%以上である油脂
【請求項2】
ロールインマーガリン中に含まれる油脂全体中SSU含有量/SUS含有量(重量比)が、1.5~2.5である、請求項1に記載のロールインマーガリン。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
SSU:1,2位又は2,3位にS、1位又3位にUが結合しているトリグリセリド
SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド
【請求項3】
前記粉末状の固形分は最大粒径が300μm以下である、請求項1又は2に記載のロールインマーガリン。
【請求項4】
乳化剤を含まない、請求項1~3のいずれかに記載のロールインマーガリン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のロールインマーガリンを含む層状食品用生地。
【請求項6】
請求項5に記載の層状食品用生地が焼成された層状食品。
【請求項7】
油相全体中、油脂(A)を15~30重量%、油脂(B)を20~45重量%を含む油脂と必要に応じてその他の油溶性成分を混合して溶解した後、油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分を油中水型乳化油脂組成物全体中5~50重量%加えて分散させた後、該温度で保持して油相とし、水と必要に応じてその他の水溶性成分を混合して水相とした後、前記油相量/前記水相量(重量比)が50/50~97/3の範囲で前記水相を前記油相に加えながら攪拌して乳化させて、前記粉末状の固形分を含む油中水型乳化油脂組成物を得、該油中水型乳化油脂組成物を0~25℃まで冷却して該温度で10~300秒間保持して晶析せしめた後、混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整した流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、該ピロー包装の口を閉じてからシート状に圧延して成型し、-30℃~30℃で24時間以上静置することを特徴とする、ロールインマーガリンの製造方法。
油脂(A):構成脂肪酸全体中、炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、飽和脂肪酸含有量が70重量%以上であり、三飽和トリグリセライド含有量が油脂(A)全体中15重量%以上である、エステル交換または極度硬化された油脂
油脂(B):飽和脂肪酸含有量が構成脂肪酸全体中20重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中50重量%以上である油脂
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールインマーガリン、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート形状のロールインマーガリンは、デニッシュやクロワッサン等の層状食品を製造するにあたって使用され、ロールインマーガリンを生地に重ねて折り込み、伸展した後、焼成することで層状食品が製造される。
【0003】
ロールインマーガリンの製造方法としては、特許文献1に記載されているように、乳化物を急冷捏和した後、レスティングチューブで結晶の安定化を行い、その後、押出成型機において成型ノズルを使用し、流量に見合ったスピードのベルトコンベアー上にシート状に押し出した後、該シートを目的の長さで切断する方法が知られている。
【0004】
ロールインマーガリンが層状食品の風味に与える影響は大きい。近年、嗜好の多様化により、チョコレート風味や抹茶風味など、バター風味以外の風味を有する層状食品が増加しており、そのため、ロールインマーガリンに各種の呈味剤を配合することが検討されている。そのような呈味剤としては、ココアパウダーや抹茶粉末など、油にも水にも溶解しない固形粉末が挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献2では、無脂カカオ分を5~27重量%含有し、層状食品にチョコレート風味を付与できるロールインマーガリンが開示されている。ロールインマーガリンの製造方法としては、上述したような、乳化物を急冷捏和した後、成型機によって成型する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-45970号公報
【文献】国際公開第2016/159242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した成型ノズルを使用するロールインマーガリンの製造方法では、成型機内で乳化物に数МPaという高い圧力がかかる。そのため、乳化物が上述した固形粉末を含有していると、乳化や結晶化が不安定になったり、また、成型機のシール部が損傷したりする場合がある。添加する固形粉末の量が多くなると、製造中や使用時にロールインマーガリンからの離水量が多くなり、ロールインマーガリンの品質が低下する問題が生じた。そのため、ロールインマーガリンに固形粉末を多く添加することで層状食品に十分な風味を付与することが困難であった。
【0008】
また、このような従来の製造方法では、捏和機内での結晶化が必要となるため、流動状態で容器に入れるだけで製造可能なマーガリンと比べて、生産性が低いという問題がある。
【0009】
更に、ロールインマーガリンには、これを用いて層状食品を作製する際に、生地上で均一に伸びて生地に折り込む作業が短時間で済み、作業性が良好であることや、作製した層状食品は、各層の間に隙間があって浮きが良好であることが求められる。
【0010】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、生産性が良好で、油にも水にも溶解しない固形粉末を含有しながらも離水が抑制されており、かつ、ロールインマーガリンを用いた層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品で良好な浮きと良好な風味を達成できるロールインマーガリン、及び、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油相と水相の比率が特定範囲にあり、少なくとも2種類の特定の油脂と粉末状の固形分をそれぞれ特定の含有量で含み、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物を、特定温度まで冷却した後、特定時間保持して晶析せしめ、その後、混和により軟化させながら特定温度に昇温させて、粘度を特定値に調整して流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、該ピロー包装の口を閉じてからシート状に圧延して成型した後、特定温度で特定時間以上静置することでロールインマーガリンを製造すると、ロールインマーガリンの生産性が良好で、従来法のような成型ノズルを使用せず高い圧力が付加されないため、粉末状の固形分を含有するにも関わらず離水が抑制され、かつ、ロールインマーガリンを用いた層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品で良好な浮きと良好な風味を達成できるロールインマーガリンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ロールインマーガリン全体中の油相含有量/水相含有量(重量比)が50/50~97/3であり、ロールインマーガリン中に含まれる油相全体中、油脂(A)を15~30重量%、油脂(B)を20~45重量%を含有し、油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分をロールインマーガリン全体中5~50重量%含み、前記粉末状の固形分を含み、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物が、0~25℃まで冷却されて該温度で10~300秒間保持され晶析された後、混和により軟化させられながら10~35℃に昇温されて、粘度が10~250Pa・sに調整された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物がピロー包装に充填され、該ピロー包装の口が閉じられてからシート状に圧延されて成型され、-30℃~30℃で24時間以上静置されたロールインマーガリンにも関する。
油脂(A):構成脂肪酸全体中、炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、飽和脂肪酸含有量が70重量%以上であり、三飽和トリグリセライド含有量が油脂(A)全体中15重量%以上である、エステル交換または極度硬化された油脂
油脂(B):飽和脂肪酸含有量が構成脂肪酸全体中20重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中50重量%以上である油脂
好ましくは、ロールインマーガリン中に含まれる油脂全体中SSU含有量/SUS含有量(重量比)が、1.5~2.5である。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
SSU:1,2位又は2,3位にS、1位又3位にUが結合しているトリグリセリド
SUS:1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリド
好ましくは、前記粉末状の固形分は最大粒径が300μm以下である。好ましくは、前記ロールインマーガリンは乳化剤を含まない。
また本発明は、前記ロールインマーガリンを含む層状食品用生地にも関し、また、前記層状食品用生地が焼成された層状食品にも関する。
さらに本発明は、油相全体中、油脂(A)を15~30重量%、油脂(B)を20~45重量%を含む油脂と必要に応じてその他の油溶性成分を混合して溶解した後、油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分を油中水型乳化油脂組成物全体中5~50重量%加えて分散させた後、該温度で保持して油相とし、水と必要に応じてその他の水溶性成分を混合して水相とした後、前記油相量/前記水相量(重量比)が50/50~97/3の範囲で前記水相を前記油相に加えながら攪拌して乳化させて、前記粉末状の固形分を含む油中水型乳化油脂組成物を得、該油中水型乳化油脂組成物を0~25℃まで冷却して該温度で10~300秒間保持して晶析せしめた後、混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整した流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、該ピロー包装の口を閉じてからシート状に圧延して成型し、-30℃~30℃で24時間以上静置することを特徴とする、ロールインマーガリンの製造方法にも関する。
油脂(A):構成脂肪酸全体中、炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、飽和脂肪酸含有量が70重量%以上であり、三飽和トリグリセライド含有量が油脂(A)全体中15重量%以上である、エステル交換または極度硬化された油脂
油脂(B):飽和脂肪酸含有量が構成脂肪酸全体中20重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中50重量%以上である油脂
【発明の効果】
【0013】
本発明に従えば、生産性が良好で、油にも水にも溶解しない固形粉末を含有しながらも離水が抑制されており、かつ、ロールインマーガリンを用いた層状食品の作製時に作業性が良好で、作製された層状食品で良好な浮きと良好な風味を達成できるロールインマーガリン、及び、その製造方法を提供することができる。本発明に係るロールインマーガリンは粉末状の呈味剤を多く含有することができ、離水が抑制され品質も良好で、良好な浮きと良好な風味を有する層状食品を、作業性よく作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、さらに詳細に説明する。本実施形態に係るロールインマーガリンの好適な態様は、ロールインマーガリン全体中の油相含有量/水相含有量(重量比)が50/50~97/3であり、ロールインマーガリン中に含まれる油相全体中、油脂(A)を15~30重量%、油脂(B)を20~45重量%を含有し、油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分をロールインマーガリン全体中5~50重量%含み、前記粉末状の固形分を含み、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物が、0~25℃まで冷却されて該温度で10~300秒間保持され晶析された後、混和により軟化させられながら10~35℃に昇温されて、粘度が10~250Pa・sに調整された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物がピロー包装に充填され、該ピロー包装の口が閉じられてからシート状に圧延されて成型され、-30℃~30℃で24時間以上静置されたロールインマーガリンである。
【0015】
本発明における油中水型乳化油脂組成物とは、水相が油相に分散するタイプの乳化物を指す。ロールインマーガリンにおける離水の低減、ロールインマーガリンを用いて層状食品を作製する際の作業性、作製された層状食品の浮きや風味といった観点から、油中水型乳化油脂組成物全体中の油相含有量/水相含有量(重量比)は50/50~97/3であることが好ましい。また、本発明のロールインマーガリンは、前記油中水型乳化油脂組成物を固体状に晶析せしめたものであり、前記油中水型乳化油脂組成物と同様、ロールインマーガリン中の油相含有量/水相含有量(重量比)は50/50~97/3であることが好ましい。油中水型乳化油脂組成物全体又はロールインマーガリン中の油相含有量/水相含有量(重量比)は、60/40~95/5であることがより好ましく、70/30~93/7であることがさらに好ましく、75/25~90/10であることが特に好ましい。よって、本発明でいうロールインマーガリンには、油分が80%を超えるマーガリンの他、油分が80%未満のファットスプレッドも包含される。
【0016】
前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンに含まれる油脂は、少なくとも油脂(A)及び油脂(B)を含む。
【0017】
油脂(A)は、構成脂肪酸全体中、炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量が15重量%以上、飽和脂肪酸含有量が70重量%以上であり、三飽和トリグリセライド含有量が油脂(A)全体中15重量%以上である、エステル交換または極度硬化された油脂である。ここで、三飽和トリグリセライドとは、トリグリセライドに結合している3個の脂肪酸がいずれも飽和脂肪酸であるトリグリセライドを指す。なお、油脂中の各トリグリセライド含有量は、HPLCを用いて、AOCS Official Method Ce5c-93に準拠して測定し、各ピークのリテンションタイムおよびエリア比から算出した。以下に、分析の条件を記す。
溶離液 :アセトニトリル:アセトン(70:30、体積比)
流速 :0.9ml/分
カラム :ODS
カラム温度:36℃
検出器 :示差屈折計
【0018】
油脂(A)としては、上記要件を満足する油脂である限り特に限定されないが、例えば、パーム核分別高融点部極度硬化油、パーム核分別低融点部極度硬化油、ハイエルシンナタネ極度硬化油とヤシ油のエステル交換油、パーム核極度硬化油、ナタネ極度硬化油とヤシ油のエステル交換油、パーム核油とラードとナタネ極度硬化油のエステル交換油、ナタネ極度硬化油とMCTのエステル交換油等が挙げられる。油脂(A)としては1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、ハイエルシンナタネ極度硬化油とヤシ油のエステル交換油が好ましい。
【0019】
油脂(A)の含有量は、油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、15~30重量%であることが好ましく、20~25重量%であることがより好ましい。油脂(A)の含有量が15重量%より少ないと、ロールインマーガリンを用いて作製された層状食品の浮きが悪くなる場合がある。また、油脂(A)の含有量が30重量%を超えると、層状食品の風味が悪くなる場合がある。
【0020】
油脂(B)は、飽和脂肪酸含有量が構成脂肪酸全体中20重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中50重量%以上の油脂である。飽和脂肪酸含有量が10重量%以下であり、三不飽和トリグリセライド含有量が油脂(B)全体中70重量%以上の油脂であることが好ましい。ここで、三不飽和トリグリセライドとは、トリグリセライドに結合している3個の脂肪酸がいずれも不飽和脂肪酸であるトリグリセライドを指す。
【0021】
油脂(B)としては上記要件を満足する油脂である限り特に限定されないが、常温で液状の油脂が挙げられ、具体的には、菜種油、大豆油、コーン油等の植物油が挙げられる。エステル交換や分別処理を行っていない植物油が好ましい。油脂(B)としては1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、菜種油が好ましい。
【0022】
油脂(B)の含有量は、油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、20~45重量%であることが好ましく、25~40重量%であることがより好ましい。油脂(B)の含有量が20重量%より少ないと、層状食品作製時にロールインマーガリンが均一に伸展せず作業性が悪い場合がある。また、油脂(B)の含有量が45重量%を超えると、層状食品作製時の作業性が悪く、また、層状食品の浮きが悪くなる場合がある。
【0023】
前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンに含まれる油脂は、前述した油脂(A)及び油脂(B)の他に、油脂(A)及び油脂(B)のいずれにも該当しない他の油脂(C)を含有する。そのような油脂(C)としては、例えば、パームランダムエステル交換油、パーム極度硬化油、カカオバター、ラード、パームステアリンとパーム核のエステル交換油、ハイエルシン菜種極度硬化油と菜種油のエステル交換油等が挙げられる。当該他の油脂(C)の含有量は、油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、25~65重量%であることが好ましく、30~55重量%であることがより好ましく、35~50重量%であることがさらに好ましい。
【0024】
前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンは、そこに含まれる油脂全体においてSSU含有量/SUS含有量(重量比)が1.5~2.5を満足することが好ましく、1.8~2.2がより好ましい。ここで、Sは、炭素数16以上の飽和脂肪酸であり、Uは、炭素数16以上の不飽和脂肪酸であり、SSUは、1,2位又は2,3位にS、1位又3位にUが結合しているトリグリセリドであり、SUSは、1,3位にS、2位にUが結合しているトリグリセリドである。
【0025】
前記SSU含有量/SUS含有量が1.5未満であると、SSUに対するSUSの相対量が多く油脂全体の結晶化速度が遅いため、ロールインマーガリンで離水が生じやすく、また、保管中に硬く脆い物性に変化し易くなる。前記SSU含量/SUS含量(重量比)が2.5を超えると、SUSに対するSSUの相対量が多くなり、作製された層状食品の食感が硬く口溶けが悪くなりやすい。
【0026】
前記SSU含有量/SUS含有量は、HPLCを用いて硝酸銀カラムにより分析することができる。分析条件は「Journal of the American Oil Chemists Society,68,289-293,1991」記載の方法に準拠することができる。
【0027】
前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンは、油相と水相のいずれにも溶解しない粉末状の固形分を含有する。このような粉末状の固形分としては、層状食品に風味を付与することができる呈味剤が好ましく、特に限定されないが、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、ココアパウダー、きな粉、抹茶粉末、コーヒー豆粉末、小豆粉末、粉チーズ、野菜粉末、果物粉末等が挙げられる。
【0028】
粉末状の固形分の粒径は特に限定されないが、粒径が大きくなりすぎると、ロールインマーガリンを用いて作製された層状食品の浮きが悪くなる場合があるので、粉末状の固形分の最大粒径は300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0029】
前記粉末状の固形分の含有量は、前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリン全体中5~50重量%であることが好ましく、7~40重量%であることがより好ましく、10~30重量%であることがさらに好ましく、10~25重量%であることが特に好ましい。粉末状の固形分の含有量が5重量%より少ないと、層状食品に十分な風味を付与することができない場合がある。また、粉末状の固形分の含有量が50重量%を超えると、ロールインマーガリンに離水が多くなり、層状食品作製時の作業性が悪く、また、層状食品の浮きも悪くなる場合がある。
【0030】
前記油中水型乳化油脂組成物及びロールインマーガリンは、前記油脂、水、前記粉末状の固形分として用いる材料以外に、通常ロールインマーガリンに配合できる成分を適宜含有することができる。そのような成分としては、例えば、乳化剤、香料、酸化防止剤、着色料、糖類、食塩、増粘安定剤、甘味料、酸味料、呈味素材等を挙げることができる。本発明では、乳化剤を使用すると、前記粉末状の固形分をより多く配合することが可能になる。しかし、乳化剤を使用しなくとも、良好な特性を有する本発明のロールインマーガリンを得ることができる。
【0031】
前記乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0032】
前記香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等を挙げることができる。
【0033】
前記酸化防止剤としては、トコフェロール、β-カロテン、茶抽出物(カテキン等)等を挙げることができる。
【0034】
前記着色料としては、β-カロテン、カラメル、紅麹色素等を挙げることができる。
【0035】
前記糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖、トレハロース、糖アルコール等を挙げることができる。
【0036】
前記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉等を挙げることができる。
【0037】
前記甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア粉末等を挙げることができる。
【0038】
前記酸味料としては、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。
【0039】
前記呈味素材としては、前記糖類、前記甘味料、前記酸味料は除かれ、乳製品、風味エキス類、その他呈味を有する原料等を挙げることができる。前記乳製品としては、乳脂の加熱処理物や酵素処理物、牛乳、加糖練乳、発酵乳、生クリーム等を挙げることができる。前記風味エキス類としては、昆布エキス、発酵調味料等を挙げることができる。前記その他呈味を有する原料としては、卵黄、全卵、コーヒー抽出物、果汁等を挙げることができる。
【0040】
以下に、本実施形態に係るロールインマーガリンの製造方法を具体的に説明する。まず、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物を特定温度まで冷却する。ここで油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物とは、油脂を加熱融解し、粉末状の固形分と、必要に応じて乳化剤などの油溶性成分を添加して油相を調製し、該油相に、水や、必要に応じて食塩、香料や呈味素材などの水溶性成分を加えて攪拌した水相を加え、油脂の融解状態を維持しつつ乳化させることで調製され、その油脂の融解状態が維持されている油中水型乳化油脂組成物のことをいう。
【0041】
油相と水相を混合してから、乳化する前後何れかで殺菌処理を行なうことが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でもよい。
【0042】
前記冷却に用いる装置としては、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機である密閉型連続式チューブ冷却機、プレート型熱交換機、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せ等の冷却機器または冷却捏和装置が挙げられる。
【0043】
前記冷却時の油中水型乳化油脂組成物の最低温度は、0~25℃が好ましく、1~20℃がより好ましく、5~15℃が更に好ましい。0℃未満まで冷却すると、油中水型乳化油脂組成物中の水分が凍結して設備を傷める場合があり、冷却時の最低温度が25℃を超えると油脂が十分に結晶化せず、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。冷却する際の冷却速度は特に限定されないが、-10~-100℃/分の冷却速度が好ましい。
【0044】
以上のように冷却された油中水型乳化油脂組成物を、前記冷却に用いる装置内で所定の温度帯に保持して晶析させる。保持する温度帯は0~25℃が好ましく、1~20℃がより好ましく、5~15℃が更に好ましい。晶析のために前記温度帯で保持する時間(以下、冷却保持時間ともいう)は、前記冷却に用いる装置内で油中水型乳化油脂組成物の温度が25℃になった時点から、前記冷却に用いる装置から油中水型乳化油脂組成物を搬出する(後述する混和昇温装置に移送する)までの時間を意味し、10~300秒間が好ましく、20~200秒間がより好ましく、30~150秒間が更に好ましい。冷却保持時間が10秒間未満であると油脂が十分に結晶化せず、層状食品作製時にロールインマーガリンが均一に伸展せず作業性が悪く、また、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、300秒間を超えると、前記冷却に用いる装置による油中水型乳化油脂組成物の練りが過剰になり、得られるロールインマーガリンの硬さやコシが劣る場合がある。
【0045】
次いで、前記冷却によって晶析された油中水型乳化油脂組成物を、混和昇温装置を用いて混和により軟化させながら特定温度に昇温させる。前記混和昇温装置としては、オンレーターなどの掻き取り式熱交換機、多管円筒式熱交換機、スタティックミキサー内蔵式熱交換器、ピンマシン等が挙げられる。また、前記混和昇温装置を通した後に、密閉型連続式チューブ冷却機や、冷却機器または冷却捏和装置を用いて再度冷却を行なっても良いが、その場合も、後述する油中水型乳化油脂組成物の粘度を満足する範囲で該再冷却を行なう。
【0046】
混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の温度は、10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましく、20~25℃が更に好ましい。また、前記混和昇温装置を通した後に、密閉型連続式チューブ冷却機や、冷却機器または冷却捏和装置を用いて再度冷却を行なう場合も、冷却後の油中水型乳化油脂組成物の温度は、10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましく、20~25℃が更に好ましい。昇温後または再冷却後の油中水型乳化油脂組成物の温度が10℃未満であると、充填時の粘度が高すぎたり充填中に硬化して粘度が上がることで、充填後にシート状に成形加工する際に割れたり空気穴が空いたりする場合がある。一方、35℃を超えると、大部分の結晶が溶けて充填後に水相部が分離したり、ロールインマーガリンに不適な物性となる場合がある。
【0047】
混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の粘度は、10~250Pa・sが好ましく、20~200Pa・sがより好ましく、50~150Pa・sが更に好ましい。10Pa・s未満であると、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、250Pa・sを超えると、圧延時に油中水型乳化油脂組成物が均一に広がりにくく、作製されたロールインマーガリンを生地に折り込む際にひび割れが入る場合がある。前記粘度は、混和昇温装置による剪断を変更することでコントロールすることができる。なお、粘度は、振動式粘度計、回転式粘度計、落球式粘度計、細管式粘度計等を用いて定法に従い測定することができる。
【0048】
また、混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の粘度が上記範囲内にあれば、後述するピロー包装への充填時の油中水型乳化油脂組成物のペネ値が140~460になることから、相関的に、折り込み時のロールインマーガリンのペネ値を50~130にコントロールしやすく好ましい。
【0049】
次に、粘度が上記範囲内にある流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填する。ここで、ピロー包装とは、包装フィルムを、開口部を有する袋状に加工した後、内容物を充填し、前記開口部を閉じて該内容物を包装するものをいう。前記ピロー包装は、密封性と開封作業性を両立するため、イージーピール性を有する方が好ましい。
【0050】
流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装の開口部から投入してピロー包装に充填した直後に、ピロー包装の開口部を閉じることが衛生面から好ましい。ピロー包装の開口部を閉じる方法としては、ヒートシール、チャック、クリップで挟む等の方法が挙げられるが、密封する方法が好ましい。
【0051】
本発明では、生産プロセスでの異物混入など衛生上の問題を考慮して、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物を冷却して晶析せしめた後、混和により軟化させながら昇温するまでの一連の工程を閉鎖系のラインで行なうことが好ましい。さらに、流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、該ピロー包装の開口部を閉じる工程を、前記ラインから流動状の前記組成物が出た直後に実施することが好ましく、具体的には、前記ラインを出てからピロー包装が密封されるまでの時間を60秒以下に設定することが好ましく、30秒以下がより好ましく、10秒以下がさらに好ましい。
【0052】
ピロー包装の開口部を閉じた後、流動状の油中水型乳化油脂組成物を、ピロー包装と共に、シート状に圧延成形する。当該圧延成形方法によると、流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填してから、ピロー包装ごと圧延するので、作製されるロールインマーガリンでは、ピロー包装を構成する包装フィルムの内面と、ピロー包装内のロールインマーガリンの表面が密接することになる。
【0053】
ピロー包装に充填された流動状の油中水型乳化油脂組成物をシート状に圧延成形するには、当該乳化油脂組成物を、(1)適切なクリアランスを保持した2枚の平板で挟む、(2)適切なクリアランスを保持した2つのローラー間に通す、(3)袋容量に対する内容量を調整した上で、振動させ自然に厚みを揃える、などの方法が挙げられる。
【0054】
次いで、ピロー包装されたシート状の油中水型乳化油脂組成物を、特定温度で特定時間以上静置することで、本発明のピロー包装されたロールインマーガリンが製造される。このように特定条件で静置することで、油中水型乳化油脂組成物中の油脂の結晶化を進行させ、結晶を安定化させて、ロールインマーガリンの製造を実現できる。
【0055】
静置する際の温度は、-30~30℃が好ましく、-20~25℃がより好ましく、0~10℃が更に好ましい。-30℃より低いと保管コストの点で不利であり、30℃を超えると、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、また、ロールインマーガリンに油浸や変形が発生する場合がある。
【0056】
静置する時間は、24時間以上であることが好ましい。24時間未満であると、油脂の結晶が十分に析出せず、または安定しておらず、製造されたロールインマーガリンの物性が不十分となり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置時間の上限としては、保管コストの観点から2年が好ましいが、特にこれに限定されない。
【0057】
本発明の好適な実施態様では、上記のように流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、シート状に圧延して成型した後、特定温度で特定時間テンパリング処理してから、テンパリング処理温度より低い特定温度で特定時間以上静置する。
【0058】
前記好適な実施態様では、前記冷却時の最低温度は、0~25℃の範囲内であって、かつ油相部の融点から20~40℃低い温度が好ましく、油相部の融点から25~40℃低い温度がより好ましく、油相部の融点から25~35℃低い温度が更に好ましい。0℃未満まで冷却すると、油中水型乳化油脂組成物中の水分が凍結して設備を傷める場合がある。また、油相部の融点から20℃低い温度より高い温度までしか冷却しないと、油脂が十分に結晶化しない場合があり、該油脂の融点から40℃を超える温度まで冷却すると、冷却のためのコストがかかりすぎる場合がある。また冷却の際の冷却速度は、-20~-110℃/分が好ましい。
【0059】
前記テンパリング処理は、15~30℃で10~100時間行うことが好ましい。テンパリング処理温度は18~27℃がより好ましく、更に好ましくは20~25℃である。テンパリング時の温度が15℃未満であるとテンパリング効果が十分に得られないため、テンパリング処理によるロールインマーガリンの物性改善が不十分となる場合があり、30℃を超えると、ロールインマーガリンが必要以上に軟化したり、油浸を起こすため、ロールインマーガリンの品質が悪くなる場合がある。テンパリング処理時間は18~72時間がより好ましく、24~48時間が更に好ましい。10時間未満であるとテンパリング効果が十分に得られない場合があり、一方、100時間を超えてテンパリングしても効果が頭打ちとなり、生産性が落ちる場合がある。
【0060】
前記テンパリング処理後には、テンパリング処理温度より低い特定温度で特定時間以上静置する。具体的には、静置時の温度は-30~25℃が好ましく、-20~25℃がより好ましく、0~10℃が更に好ましい。-30℃より低いと保管コストの点で不利であり、25℃を超えると、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置する時間は24時間以上であることが好ましい。24時間未満であると、油脂の結晶が十分に析出せず、または安定しておらず、製造されたロールインマーガリンの物性が不十分となり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置時間の上限としては、保管コストの観点から2年が好ましいが、特にこれに限定されない。
【0061】
本発明により製造されたロールインマーガリンは、従来の製造方法で製造したロールインマーガリンと同様に、生地に包み込んで伸展し、その後、焼成することにより、層状食品の作製に用いることができる。
【0062】
該層状食品としては、例えばデニッシュ、クロワッサン、パイ等が挙げられるが、特に限定されない。
【0063】
また、該層状食品におけるロールインマーガリンの配合量は、製造する層状食品の種類によって異なり、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、層状食品全体中15~40重量%が好ましい。
【0064】
層状食品の製造方法は、特に限定されず、本発明により製造されたロールインマーガリンを用いること以外は、公知の原料を使用し、公知の配合および公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0066】
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
1)ハイエルシン菜種極度硬化油とヤシ油のランダムエステル交換油脂(製造例1)(炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量:23.9重量%、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量:46.2重量%、飽和脂肪酸量:93.6重量%、三飽和トリグリセライド含有量:72.6重量%)
2)(株)カネカ製「パーム核極度硬化油(炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量:53.1重量%、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量:20.9重量%、飽和脂肪酸量:99.1重量%、三飽和トリグリセライド含有量:95.6重量%)」
3)(株)カネカ製「菜種油(飽和脂肪酸含有量:6.8重量%、三不飽和トリグリセライド含有量:78.3重量%)」
4)パームランダムエステル交換油(製造例2)(炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量:1.0重量%、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量:4.8重量%、飽和脂肪酸量:50.3重量%、三飽和トリグリセライド含有量:13.7重量%、三不飽和トリグリセライド含有量:11.4重量%)
5)(株)カネカ製「パーム極度硬化油(炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量:0.2重量%、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量:55.6重量%、飽和脂肪酸量:90.8重量%、三飽和トリグリセライド含有量:93.9重量%、三不飽和トリグリセライド含有量:0.0重量%)」
6)(株)カネカ製「カカオバター(炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量:0.1重量%、炭素数18以上の飽和脂肪酸含有量:33.7重量%、飽和脂肪酸量:63.4重量%、三飽和トリグリセライド含有量:1.2重量%、三不飽和トリグリセライド含有量:0.0重量%)」
7)理研ビタミン(株)製「エマルジーMS」
8)J-オイルミルズ(株)製「大豆レシチン」
9)雪印メグミルク(株)製「脱脂粉乳」
10)辻利兵衛本店製「宇治抹茶」
11)ユニオン商事(株)製「アーモンド粉末」(60メッシュに通したものを使用)
12)日清製粉(株)製「ミリオン」
13)日清製粉(株)製「バイオレット」
14)(株)カネカ製「GK」
15)日新製糖(株)製「上白糖P」
16)財団法人塩事業センター製「精製塩」
17)(株)赤城鶏卵GPセンター製「卵」
18)(株)カネカ製「エバーライトG」
19)(株)カネカ製「ニューフードC」
【0067】
<生産性>
ロールインマーガリンの生産性は、油脂が融解した状態にある油中水型乳化油脂組成物200kgが密閉型連続式チューブ冷却機に投入されてから、その内の100kgが混和昇温装置または成型ノズルより外に排出されるまでの時間(以下、生産性に関する時間という)によって、以下の基準で評価した。
○:生産性に関する時間が90分未満である。
△:生産性に関する時間が90~120分である。
×:生産性に関する時間が120分を超える。
【0068】
<離水量>
離水量は、ピロー包装から開封したロールインマーガリンの表面を、生産時、及び、生地への折り込み時に目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:生産時にも折り込み時にも離水がない。
△:生産時に離水はないものの、折り込み時に僅かに離水が見られる。
×:生産時から離水が見られ、微生物の繁殖が懸念される。
【0069】
<デニッシュ作製時の作業性>
デニッシュの作製において、15℃で3時間温調したロールインマーガリンを、それぞれ生地に折り込んだ際の作業性を以下の基準で総合的に評価した。
5点:生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業時間が非常に短い。
4点:ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られず、作業時間は短い。
3点:ロールインマーガリンの伸び方に少し偏りが見られるが、作業時間は短い。
2点:ロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業時間が長い。
1点:ロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、作業時間が非常に長い。
【0070】
<デニッシュの浮き>
作製したデニッシュを切断し、熟練した10名のパネラーがその断面を観察して、以下の基準で評価した。各人の評価値の平均値を示した。
5点:非常に浮きが良く、各層の間に十分な隙間がある。
4点:浮きが良く、ほとんどの層の間に十分な隙間がある。
3点:浮きが良く、各層の間に十分な隙間のない部分がある。
2点:浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多い。
1点:非常に浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がない。
【0071】
<デニッシュの風味>
作製したデニッシュを、熟練した10名のパネラーが食して、以下の基準で評価した。各人の評価値の平均値を示した。
5点:風味を非常に強く感じる。
4点:風味を強く感じる。
3点:風味を感じる。
2点:風味をあまり感じない。
1点:風味を感じない。
【0072】
<総合評価>
ロールインマーガリンの生産性、離水量、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュの浮き、及びデニッシュの風味の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:生産性及び離水量は〇で、デニッシュ作製時の作業性は4~5点、デニッシュの浮き及びデニッシュの風味はそれぞれ4.0~5.0点を満たすもの。
B:生産性及び離水量は〇又は△で、デニッシュ作製時の作業性は4~5点、デニッシュの浮き及びデニッシュの風味はそれぞれ3.5~5.0点であって、且つ3.5点以上4.0点未満が少なくとも一つあるもの。
C:生産性及び離水量は〇又は△で、デニッシュ作製時の作業性は3~5点、デニッシュの浮き及びデニッシュの風味はそれぞれ3.0~5.0点であって、且つ3点又は3.0点以上3.5点未満が少なくとも一つあるもの。
D:生産性及び離水量は〇又は△で、デニッシュ作製時の作業性は2~5点、デニッシュの浮き及びデニッシュの風味はそれぞれ2.0~5.0点であって、且つ2点又は2.0点以上3.0点未満が少なくとも一つあるもの。
E:生産性及び/又は離水量は×で、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュの浮き及びデニッシュの風味において、1点又は2.0点未満が少なくとも一つある、又はデニッシュの評価ができなかったもの。
【0073】
(製造例1)ハイエルシン菜種極度硬化油とヤシ油のランダムエステル交換油A1
ハイエルシン菜種極度硬化油:50重量部、ヤシ油:50重量部の混合油脂を500Paの減圧下90℃に加熱し、ナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0. 2重量部を加えて30分攪拌してランダムエステル交換を行った。水洗した後、500Paの減圧下、90℃で白土(水澤化学工業株式会社製):2重量部を加えて脱色し、240℃、200Paの条件で1時間脱臭して、ハイエルシン菜種極度硬化油とヤシ油のランダムエステル交換油脂A1を得た。
【0074】
(製造例2)パームランダムエステル交換油C1
パーム油(IV=53):100重量部を500Paの減圧下で90℃に加熱し、ナトリウムメチラート:0.2重量部を加えて30分攪拌してランダムエステル交換した。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において白土(水澤化学工業株式会社製):2重量部を加えて脱色し、ろ過して白土を除き、得られた油脂を減圧下、250℃で1時間脱臭して、パームランダムエステル交換油脂C1を得た。
【0075】
(実施例1)
表1に示す配合に従って、ハイエルシン菜種極度硬化油とヤシ油のランダムエステル交換油(油脂A1)16.3重量部、菜種油(油脂B1)24.4重量部、パームランダムエステル交換油(油脂C1)31.1重量部、パーム極度硬化油(油脂C2)2.2重量部を混合した。このとき、油脂全体中に油脂(A)が22重量%、油脂(B)が30重量%、油脂(C)が48重量%であった。この油脂混合物75.0重量部にモノグリセライド0.5重量部、大豆レシチン0.5重量部を加え、70℃で融解後、脱脂粉乳15.0重量部を加えて分散させ、65~70℃に保持して油相とした。また、水10.0重量部を80~85℃で20分間殺菌後、65~70℃に保持して水相とした。水相を油相に加えて20分以上乳化させて乳化物を得た。
【0076】
得られた油脂が融解状態の乳化物を密閉型連続式チューブ冷却機(コンビネーター:1.3L容量)に投入し、-30~-50℃/分の冷却速度で捏和しながら最終到達温度10℃まで急冷した。この冷却過程で、ロールインマーガリンの製造装置のライン中における密閉型連続式チューブ冷却機内で25℃の品温に達してから、10℃に達温して混和昇温装置(ピンマシン:2.0L容量)に移送するまで94秒間、前記乳化物を該冷却機内に保持した後、混和昇温装置に移送し、該混和昇温装置で軟化させて23℃に昇温させ、その後ピロー包装に充填した。
【0077】
充填10秒後に乳化物の粘度を測定してから、厚さ10mmのシート状の容量となるようにピロー包装を速やかにヒートシーリングしてから2枚の平板で挟んで圧延し、厚さ10mmのブロックマーガリンを得た。このブロックマーガリンを20℃で24時間テンパリング処理した後、4℃で240時間静置して、シート厚10mmのロールインマーガリンを得た。なお、乳化物の粘度は充填10秒後に測定したが、当該粘度の値は、充填直前の乳化物が示す粘度の値と実質的に同じものである。表1に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表1に示した。表2には、実施例1におけるロールインマーガリンの製造条件をまとめた。
【0078】
【0079】
【0080】
次に、得られたロールインマーガリンを用いてデニッシュを作製した。即ち、表3に示す配合に従って、ロールインマーガリンとショートニングを除いた原料をミキサーにて低速3分間、中高速3分間ミキシングした後、ショートニングを混合し、更に低速3分間、中高速3分間ミキシングし、捏ね上げ温度を25℃とした。室温で30分間生地を発酵させた後、生地を1℃で5時間冷却した。
【0081】
【0082】
冷却後の生地191.6重量部を成形してから、15℃に温調したロールインマーガリン50重量部を静置し、包み込んだ。このとき、ロールインマーガリンを包んだ伸展前の生地のサイズは、36cm(縦)×14.4cm(横)×5cm(厚)であった。この生地を、リバースシーターを用いて10mm厚になるまでは5mmごとに段階的に伸展し、その後は2mmごとに段階的に伸展し、最後は4mm厚に調整したリバースシーターを用いて、生地を4mm厚に伸展した。続けて生地を3つ折りした後、3mm厚に調整したリバースシーターを用い、生地を3mm厚に伸展した。得られた生地を1℃で10時間冷却後、更に3つ折りした後、2.5mm厚に調整したリバースシーターを用いて生地を2.5mm厚に伸展した。生地を成形後、35℃、湿度70%のホイロで1時間最終発酵した後、200℃のオーブンで15分間焼成し、デニッシュを得た。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表1に示した。
【0083】
(実施例2~12及び比較例1~5)
表1に示す配合に従って油相、水相、固形分の配合を変更した以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表1に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表1に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表1に示した。
【0084】
表1より、実施例1~12のロールインマーガリンはいずれも、生産性及び離水量が良好な評価となり、また、これらのロールインマーガリンを使用して作製されたデニッシュはいずれも、デニッシュ作製時の作業時間が短く、作業性が良好で、作製されたデニッシュの浮き及び風味も良好で、総合評価はC以上であった。
【0085】
一方、比較例1のロールインマーガリンは、油脂(A)の含有量が少なかったものであり、これを使用して作製されたデニッシュの浮きが低い評価となり、総合評価はDであった。比較例2のロールインマーガリンは、油脂(A)の含有量が多かったものであり、デニッシュの風味が低い評価となり、総合評価はDであった。比較例3のロールインマーガリンは、油脂(B)の含有量が少なかったものであり、デニッシュ作製時の作業性が低い評価となり、総合評価はDであった。比較例4のロールインマーガリンは、油脂(B)の含有量が多かったものであり、デニッシュ作製時の作業性が低く、また、デニッシュの浮きも低い評価となり、総合評価はDであった。比較例5のロールインマーガリンは、粉末状の固形分の含有量が多かったものであり、離水量が悪い評価となり、また、デニッシュ作製時の作業性が低く、デニッシュの浮きも低い評価となり、総合評価はEであった。
【0086】
(実施例13)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を1℃に変更し、冷却保持時間を20秒間にし、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0087】
【0088】
(実施例14)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を1℃に変更し、冷却保持時間を200秒間にし、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0089】
(実施例15)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を20℃に変更し、冷却保持時間を20秒間にし、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0090】
(実施例16)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を20℃に変更し、冷却保持時間を200秒間にし、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0091】
(比較例6)
表4の製造条件に従って、実施例1と同様にして得た油脂が融解状態の乳化物を密閉型連続式チューブ冷却機内(コンビネーター:1.3L容量)で最終到達温度10℃まで急冷した。この冷却過程で、ロールインマーガリンの製造装置のライン中における密閉型連続式チューブ冷却機内で25℃の品温に達してから、10℃に達温してレスティングチューブ(17.0L容量、20℃)に移送するまで94秒間、該乳化物を該冷却機内で保持した後、レスティングチューブに移送し、成型ノズルを通して厚さ10mmのブロックマーガリンを得た。
【0092】
成型ノズルから排出10秒後に粘度を測定した。このブロックマーガリンを4℃で240時間静置して、シート厚10mmのロールインマーガリンを得た。表4に、排出10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
【0093】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0094】
(比較例7)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を20℃に変更し、冷却保持時間を20秒間にした以外は、比較例6と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、排出10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0095】
(比較例8)
表4の製造条件に従って、冷却時の最終到達温度を20℃に変更し、冷却保持時間を200秒間にした以外は、比較例6と同様にしてロールインマーガリンを得た。表4に、排出10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表4に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表4に示した。
【0096】
表4より、実施例1、13~16のロールインマーガリンはいずれも、生産性及び離水量が良好な評価となり、また、これらのロールインマーガリンを使用して作製されたデニッシュはいずれも、デニッシュ作製時の作業時間が短く、作業性が良好で、作製されたデニッシュの浮き及び風味も良好で、総合評価はC以上であった。
【0097】
一方、比較例6~8のロールインマーガリンは、ピロー包装への充填を行わず、レスティングチューブと成型ノズルを使用して製造したものである。比較例6では、離水量が悪い評価となり、また、デニッシュ作製時の作業性が低く、デニッシュの浮きも低い評価となり、総合評価はEであった。比較例7では、離水量が悪い評価となり、また、デニッシュ作製時の作業性も低い評価となり、総合評価はEであった。比較例8では、生産性及び離水量が悪い評価となり、また、デニッシュ作製時の作業性が低く、デニッシュの風味も低い評価となり、総合評価はEであった。
【0098】
(実施例17)
表5の製造条件に従って、混和昇温装置で軟化させて昇温させた時の温度を13℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0099】
【0100】
(実施例18)
表5の製造条件に従って、混和昇温装置で軟化させて昇温させた時の温度を32℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0101】
(実施例19)
表5の製造条件に従って、テンパリング処理後に静置する際の温度を-20℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0102】
(実施例20)
表5の製造条件に従って、テンパリング処理後に静置する際の温度を27℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0103】
(実施例21)
表5の製造条件に従って、テンパリング処理後に静置する際の時間を36時間に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0104】
(比較例9)
表5の製造条件に従って、混和昇温装置で軟化させて昇温させた時の温度を37℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に乳化物はほぼ融解した状態にあり、粘度を測定できなかった。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0105】
(比較例10)
表5の製造条件に従って、テンパリング処理後に静置する際の温度を35℃に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0106】
(比較例11)
表5の製造条件に従って、テンパリング処理後に静置する際の時間を20時間に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。表5に、充填10秒後に測定した粘度の値を記載した。また、ロールインマーガリンの生産性及び離水量について評価し、その結果を表5に示した。
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮き及び風味について評価し、その結果を表5に示した。
【0107】
表5より、実施例1、17~21のロールインマーガリンはいずれも、生産性及び離水量が良好な評価となり、また、これらのロールインマーガリンを使用して作製されたデニッシュはいずれも、デニッシュ作製時の作業時間が短く、作業性が良好で、作製されたデニッシュの浮き及び風味も良好で、総合評価はC以上であった。
【0108】
一方、比較例9のロールインマーガリンは、昇温時の温度が高かったものであり、デニッシュ作製時の作業性が低く、また、デニッシュの浮き及び風味も低い評価となり、総合評価はEであった。比較例10のロールインマーガリンは、静置時の温度が高かったものであり、デニッシュ作製時の作業性が低く、また、デニッシュの浮き及び風味も低い評価となり、総合評価はEであった。比較例11のロールインマーガリンは、静置時間が短かったものであり、デニッシュの浮きが低い評価となり、総合評価はDであった。