(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】易開封性フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240307BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240307BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240307BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240307BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240307BHJP
C09J 123/10 20060101ALI20240307BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240307BHJP
【FI】
B65D77/20 H
B32B27/32 E
C08L23/04
C08L23/10
B65D65/40 D
C09J123/10
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2019226610
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591143951
【氏名又は名称】ジェイフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】和田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 一也
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/005279(WO,A1)
【文献】特開2019-034549(JP,A)
【文献】特開2000-355358(JP,A)
【文献】特開平01-157847(JP,A)
【文献】特開2009-083926(JP,A)
【文献】特開2012-076796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B32B 27/32
C08L 23/04
C08L 23/10
B65D 65/40
C09J 123/10
C09J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の
高圧重合法による低密度ポリエチレン樹脂(b)とMFR5.0g/10分超、密度が910kg/m
3以上の
高圧重合法による低密度ポリエチレン樹脂(c)とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性フィルム。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上20g/10分以下である請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂(a)、前記低密度ポリエチレン樹脂(b)および前記低密度ポリエチレン樹脂(c)の合計量を100質量%とした場合、前記ポリプロピレン系樹脂(a)が90~50質量%、前記低密度ポリエチレ
ン樹脂(b)が5~25質量%であり、前記低密度ポリエチレ
ン樹脂(c)が5~25質量%である請求項1または2に記載の易開封性フィルム。
【請求項4】
前記シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有する請求項1~3のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【請求項5】
前記シール層の厚みが1~10μmである請求項1~4のいずれかに記載の易開封性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いてなる包装体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の易開封性フィルムを用いた蓋材と、ポリプロピレン系樹脂からなる底材とをヒートシールしてなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール機能を有する易開封性フィルムおよび該フィルムを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー、茶わん蒸し、惣菜などを収容した個包装カップ状商品や、深絞り包装体、使い捨て注射器などの医療品や日用品、文房具を収容するブリスターパックには、従来、ポリオレフィン系樹脂製の容器底材が用いられ、蓋材には容器底材と同程度の融点を有するポリオレフィン系樹脂からなるシール層を含むフィルムが用いられてきた。例えば、蓋材フィルムのシール層には、市場の拡大や消費者のニーズの多様化に伴い、食品包装用フィルム、容器として保存時に内容物の視認が可能な透明性、酸素バリア性や水蒸気バリア性、耐衝撃性、耐熱性など様々な特性が要求される。
中でも食品包装容器の蓋材フィルムのシール層には内容物を密封するためのヒートシール性の他に開封性が必要であり、容易に開封できる軽剥離(イージーピール)であること、剥離面の膜引き、糸引きがないこと、幅広いヒートシール温度における剥離力が一定であることなど、その要求レベルは非常に高いものとなっている。
【0003】
イージーピールの形態には、ヒートシール層と容器などの被着体との界面で剥離する界面剥離機構、多層フィルム中のシール層と剥離層の界面で剥離する層間剥離機構、シール層が凝集破壊することで軽剥離となる凝集破壊機構が挙げられる。この中で凝集破壊タイプは、構成が比較的簡素であり、また水分を含んだ内容物の包装容器に対して良好な夾雑物シール性を示すことから、特にポリプロピレン容器に対する凝集破壊タイプの蓋材として、これまでに様々な検討がなされている。
【0004】
特許文献1には、低温シール性、耐熱性、易開封性を両立するため、ポリオレフィン系樹脂からなる支持層と、例えばメルトフローレート(MFR)1.0g/10分以上のポリプロピレン系樹脂30~90重量%と、例えばMFR0.5~2.0g/10分のポリエチレン系樹脂10~70重量%との混合物からなるシート層とからなり、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂のMFRの比を特定した包装用複合多層シートが開示されている。
【0005】
特許文献2には、密封性と易開封性のため、第1層がメルトフローレート(MFR)1~7g/10分の高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂20~60重量部と、MFR1~15g/10分のポリプロピレン-エチレンのランダムコポリマー40~80重量部からなり、第2層がシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、第2層の面に基材フィルムを積層する蓋材が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ヒートシール性、密封性と易開封性のため、基材層が中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物で構成され、シール層がメルトフローレート(MFR)10~40g/10分のポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物を主成分とする樹脂組成物で構成されるイージーピールシーラントが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のシール層の開示技術は、多種類のポリプロピレン系樹脂と多種類のポリエチレン系樹脂を列挙した構成であり、両者の樹脂種類の組合せではその多くが透明性の悪いヘイジーとなるものであった。
また、特許文献2で開示されている高圧重合法低密度ポリエチレン樹脂とポリプロピレン-エチレンランダムコポリマーとの組合せの第1層(シール層)は、非相溶のポリマーブレンドにおけるマトリックス中のドメインが比較的大きいため、良好な易開封性を得るためのドメイン数量、即ち両者樹脂の配合比にすると、製膜されたフィルムのシール層表面は外部ヘーズが大きくなり、十分な透明性が得られないものであった。
また、特許文献3で開示されているシール層は、ポリプロピレンのMFRが10~40g/10分と高いため、フィルム製膜時の押出温度を高くできず、そのためシール層が結晶化しやすい。また、同じくポリプロピレンのMFRが高いため、ポリプロピレンのマトリックス中におけるポリエチレンのドメインが大きくなる。それら要因から、透明性が不十分であった。
【0008】
また、プラスチック包装体の製造分野のポリプロピレン系樹脂からなる包装材料を用いた包装体においては、一般にシール温度140~180℃条件でヒートシールが為されているため、シール温度140~180℃のいずれの温度においても凝集破壊タイプのイージーピールを起こすことのできるフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-272064号公報
【文献】特開2006-256637号公報
【文献】特開2007-168257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実状を鑑み、本発明の課題は、被着体のポリプロピレン系樹脂からなる包装材料に対して、比較的低温のシール温度(140~180℃)でヒートシールした場合に、凝集破壊タイプのイージーピール性を示し、および透明性を有する易開封性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つ特定のメルトフローレート(MFR)を有する低密度ポリエチレン樹脂(b)、(c)を含む樹脂組成物で構成されるフィルムによって上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
【0012】
第1の本発明は、少なくともシール層を有するフィルムにおいて、該シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン樹脂(b)とMFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン樹脂(c)とを含む樹脂組成物で構成されることを特徴とする易開封性フィルムである。
【0013】
第1の本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上20g/10分以下であることが好ましい。
【0014】
第1の本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂(a)、前記低密度ポリエチレン樹脂(b)および前記低密度ポリエチレン樹脂(c)の合計量を100質量%とした場合、前記ポリプロピレン系樹脂(a)が90~50質量%、前記低密度ポリエチレン系樹脂(b)が5~25質量%であり、前記低密度ポリエチレン系樹脂(c)が5~25質量%であることが好ましい。
【0015】
第1の本発明において、前記シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有することが好ましい。
【0016】
第1の本発明において、前記シール層の厚みが1~10μmであることが好ましい。
【0017】
第2の本発明は、第1の本発明の易開封性フィルムを用いてなる包装体である。
【0018】
第3の本発明は、第1の本発明の易開封性フィルムを用いた蓋材と、ポリプロピレン系樹脂からなる底材とをヒートシールしてなる包装体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム(以下、本フィルムと称することがある)は、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体、例えば容器やカップ、トレー等の底材とヒートシールして包装体を作製し、それを開封させる際に、フィルムのシール層が凝集破壊して軽い力で容易に開封できると共に、その際に毛羽立ちや糸引きが発生し難く、食品衛生性および食の安全性に秀でる。従って、ポリプロピレン系樹脂底材用の易開封性シーラントフィルムとして有用である。
また、本発明のフィルムは透明性を有するので、本発明の包装体は内容物の視認性が良好となり、包装体の製造・輸送・保管・販売等の際に内容物状態の確認のし易さに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のフィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本願において、イージーピール性は易開封性、易剥離性と同義である。また、シーラントフィルムは、ヒートシールフィルム、ヒートシール性フィルムと呼称する場合がある。剥離強度は、シール強度、開封強度と同義であり、易開封性、密封シール性の尺度となる。
また、「ポリプロピレン系樹脂底材用」とは、ポリプロピレン系樹脂からなる、特に形状は限定されないが例えば容器、カップ、トレー等の底材や、底材の内容物側の内面がポリプロピレン系樹脂からなる底材に対し、その底材のフランジ部に、本発明のフィルムをヒートシールして蓋材として用い得ることを意味する。
「主成分として含む」とは、構成する全量に対して50質量%以上を意味し、50質量%超が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。数値範囲を「~」で示した場合は、以上以下を意味する。
【0021】
<易開封性フィルム>
本フィルムはシール層を有するフィルムであり、シール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン系樹脂(b)とMFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン系樹脂(c)とを含む樹脂組成物で構成される。本フィルムの形態は、当該シール層を有すればよく、シール層のみからなる単層フィルムでも、他の層も設けた多層フィルムでもよい。
【0022】
(ポリプロピレン系樹脂(a))
本フィルムのシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(a)は、シングルサイト触媒を用いて製造される。特に制限なく、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等を用いることができる。柔軟性、透明性の観点からプロピレン-エチレンランダム共重合体であることが好ましい。シングルサイト触媒を用いて重合されるポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒を用いた場合よりも、分子量分布が狭く、組成分布が狭く、低規則性成分が少ない。そのため、製膜されたフィルムは、低温シール性に優れ、剛性が強く、引張強度、耐衝撃強度が高く、また空冷インフレーション製膜法においても高い透明性を現す特徴を有する。さらに耐ブロッキング性に優れる特徴も有する。
【0023】
シングルサイト触媒の種類は特に限定されないが、代表的な例としてメタロセン触媒が挙げられる。メタロセン系ポリプロピレンの製造には一般的に、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒を用いる。この助触媒は必要により、有機アルミニウム化合物などで反応処理されていてもよい。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソタクチック規則性を有する重合が可能となる架橋メタロセン化合物である。
【0024】
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂(a)の製造方法は、特に制限はなく、公知のスラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等を用いることができる。また、多段重合法を利用して製造することも可能である。
【0025】
シングルサイト触媒を用いて製造されるポリプロピレン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)は、1.0~20g/10分が好ましく、2.0~15g/10分がより好ましく、5.0~10g/10分が更に好ましく、上限は10g/10分未満が特に好ましい。MFRが1.0g/10分未満の場合は、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体とヒートシールした場合に密着が強大となり、易開封性が得難い。またフィルムの成形面においても流動性が乏しく、薄膜層の形成が難しい。
140~180℃の幅広い温度範囲において短時間のヒートシール工程で十分密着するシール性を得るためには、ポリプロピレン系樹脂(a)の融点は120~160℃が好ましく、上限は150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)の密度は、一般に880~920kg/m3が好ましく、890~910kg/m3がより好ましい。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRは、JIS K7210-1:2014法に基づき、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
融点は、JIS K7121:2012法に基づき測定する。
密度は、JIS K7112:1999法に基づき測定する。
【0027】
本フィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる底材に対し易開封性シーラントフィルムとして用いるため、本フィルムのシール層を構成する樹脂全体量に対してポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として配合され、配合量は好ましくは50質量%超であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0028】
(低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン樹脂(c))
本フィルムのシール層を構成するポリエチレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン系樹脂(b)と、MFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン系樹脂(c)とを含む。
低密度ポリエチレン樹脂は、密度910~930kg/m3のポリエチレン樹脂であればよく、密度915~925kg/m3が好ましい。この範囲であれば良好なイージーピール性が得られる。また、石油由来原料から製造されたものでも、植物由来原料から製造されたものでもよい。また、重合法や分岐構造は特に限定されず、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はメタロセン触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法で製造された低密度ポリエチレン樹脂を用いることができる。中でも、フィルム製膜時のフィッシュアイが少ない点で、高圧重合法により得られた低密度ポリエチレンが好ましい。高圧重合法による低密度ポリエチレンは、側鎖の分岐が長いことから、前記ポリプロピレン系樹脂(a)との非相溶性が強く、ドメインを形成することができる。
【0029】
本フィルムの易開封性は、シール層のポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の非相溶性に起因する海/島(マトリックス/ドメイン)分散構造の海相と島相の相界面解離がフィルム水平方向に伝播して凝集破壊することによって生じる。そのため、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の分子構造による非相溶性や、樹脂溶融粘度により、ドメイン径(分散粒子径)を制御し、凝集破壊性を発現させることができる。本フィルムのシール層は、ポリプロピレン系樹脂(a)が主成分であるので、ポリプロピレン系樹脂(a)の海相に、ポリエチレン系樹脂の島相がドメインとして分散する形態を有する。
本発明は、構成樹脂の構造と機能発現機構を検討した結果、特定のメルトフローレート(MFR)の範囲で表される、溶融粘度の大きい低密度ポリエチレン樹脂と、溶融粘度の小さい低密度ポリエチレン樹脂との2種を用いることにより、透明性と、比較的低温のシール温度でヒートシールした場合に良好な凝集破壊イージーピール性が得られることを見出したものである。具体的には、MFR1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン系樹脂(b)と、MFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン系樹脂(c)の2種を用いる。
【0030】
低密度ポリエチレン樹脂(b)のメルトフローレート(MFR)は、1.0g/10分未満であり、好ましくは0.9g/10分以下、より好ましくは0.8g/10分以下である。また、下限は0.2g/10分以上が好ましく、0.3g/10分以上がより好ましい。溶融粘度の大きい、MFRの小さいポリエチレン樹脂(b)を用いることにより、μmオーダーの大きな分散粒子径が生成し、シール層の凝集破壊が起きやすくなり、糸引きのないイージーピール性を得ることができる。また、このMFRの範囲であれば製膜性が著しく悪化することなくフィルム製膜できる。
低密度ポリエチレン樹脂(c)のメルトフローレート(MFR)は、5.0g/10分超であり、好ましくは6.0g/10分以上、より好ましくは7.0g/10分以上、さらに好ましくは7.0g/10分超である。溶融粘度の小さい、MFRの大きいポリエチレン樹脂(c)を用いることにより、より微細な分散粒子が生成し、透明性を増すことができる。
【0031】
分散粒子は、粒子径の大きい方が凝集破壊は起きやすいが、非相溶性によるヘーズやシール層表面の凹凸粗大化によるヘーズによって不透明度が高まるという関係にある。よって、大きい分散粒子だけが存在する形態に比べ、分散粒子径大のポリエチレン樹脂(b)の島の間に分散粒子径小のポリエチレン樹脂(c)の島が多数存在する形態を作り出すことにより、凝集破壊の伝播は効率的に行われ、且つ透明性も兼ね備えることができる。更に、分散粒子径小のポリエチレン樹脂(c)の島が多数存在することにより、剥離方向に依らず凝集破壊が起きやすくなり、易開封性の等方性向上に寄与する。
【0032】
低密度ポリエチレン樹脂(b)および低密度ポリエチレン樹脂(c)の融点は、90~140℃が好ましく、100~130℃がより好ましい。融点140℃以下により、良好なフィルム製膜や二次成形ができ、90℃以上により耐熱性が得られやすく好ましい。
【0033】
低密度ポリエチレン樹脂(b)およびて密度ポリエチレン(c)のMFRは、JIS K7210-1:2014法に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
融点は、JIS K7121:2012法に基づき測定する。
密度は、JIS K7112:1999法に基づき測定する。
【0034】
また、ポリプロピレン系樹脂(a)の海相に低密度ポリエチレン樹脂(b)と低密度ポリエチレン樹脂(c)の島相が分散することから、両者のメルトフローレート(MFR)比が凝集破壊性に影響する。
ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRに対するポリエチレン樹脂(b)のMFRの比(b/a)は、0.01~1.0が好ましい。下限は0.05以上がより好ましく、0.08以上が更により好ましい。この範囲により凝集破壊タイプのイージーピール性が発現しやすい。また、フィルムの易開封性(凝集破壊性)の点からは、MFRの比(b/a)は0.2以下が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(a)のMFRに対するポリエチレン樹脂(c)のMFRの比(c/a)は、0.25~20が好ましい。下限は0.5以上がより好ましく、上限は10以下がより好ましい。フィルムの透明性の点からは、MFRの比(c/a)は1.0以上が好ましい。
本フィルムのシール層に2種類のMFR比が存在する構成であることから、透明性とイージーピール性を両立できる。
【0035】
(組成比)
本フィルムのシール層は、シングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、メルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン樹脂(b)とMFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン樹脂(c)とを含む樹脂組成物で構成される。
シール層を構成する樹脂全量を100質量%とした場合、ポリプロピレン系樹脂(a)と、ポリエチレン樹脂(b)およびポリエチレン樹脂(c)の合計量との質量比は、(a):(b+c)=50:50~90:10が好ましく、60:40~80:20がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)が50質量%以上とすることにより、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対し十分な密着性が得られ、耐熱性も付与できる。また、ポリプロピレン系樹脂(a)が90質量%以下とすることにより、良好なイージーピール性を得やすい。
ポリエチレン樹脂(b)とポリエチレン樹脂(c)との質量比は、(b):(c)=1:5~5:1が好ましく、1:3~3:1がより好ましく、1:2~2:1がさらに好ましい。この範囲とすることにより、イージーピール性と透明性の両立が得やすい。
更に好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(a)と低密度ポリエチレン樹脂(b)と低密度ポリエチレン系樹脂(c)との質量比は、a:b:c=(80~60):(5~20):(5~20)である。
【0036】
各樹脂の組成比は、1H-NMR法、FT-IR法、DSC法、高温GPC法、クロス分別クロマトグラフ(CFC)、昇温溶出分別法(TREF)、結晶化溶出分別法(CEF)などを組み合わせることで分析される。
中でもポリオレフィン系樹脂を分析する手法としてはTREFが好適に用いられる。溶媒に溶解させた樹脂を所定の温度に温められたTREFカラムへ注入した後、一定の速度で降温してカラム担体に結晶化させる。この時、結晶性の高い分岐の少ない成分が最初に結晶化され、温度の低下に伴って結晶性の低い分岐の多い成分が結晶化される。その後、昇温させることで結晶性の低い成分から高い成分へ順に溶出し、短鎖分岐度による分別が行われる。更にサイズ排除クロマトグラフ(GPC)の特徴を持ち合わせたCFCにTREFカラムを用いることで、ポリオレフィン系樹脂の結晶性と分子量の二次元の分布を決定することができ、結晶性や溶融粘度の異なるポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂の分離が可能となる。また、測定温度領域を-20℃まで拡張することで、結晶性の低い熱可塑性エラストマーも分離することができる。
【0037】
(隣接層(ポリオレフィン系樹脂層))
本フィルムは、シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層を有することで、シール層の強度を保持したり、凝集破壊を効果的に発現させたりすることができる。
隣接層に用いるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、上述のシール層を構成するポリプロピレン系樹脂(a)、低密度ポリエチレン樹脂(b)、低密度ポリエチレン樹脂(c)、または、これら樹脂(b)、樹脂(c)以外の低密度ポリエチレン樹脂を用いると、シール層と隣接層との層間密着力が高まり好ましい。中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンとαオレフィンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が共押出フィルム製膜性の観点から好ましい。例えば、インフレーション法により共押出フィルムを成形する場合に、バブルが安定し、任意のブローアップを行いやすい。
【0038】
また、隣接層のポリオレフィン系樹脂には、変性された接着性樹脂を用いることができる。例えば不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等を用いることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記の不飽和カルボン酸のエステルや無水物等を用いることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。その他、酢酸ビニル等も用いることができる。隣接層を接着性樹脂で構成すると、隣接層のシール層側と逆側に他の層を有する場合に、フィルム各層間の密着性を向上させることができる。
【0039】
(その他の層)
本発明のフィルムは、少なくともシール層と、該シール層に隣接して上述の隣接層を有すればよいが、該隣接層のシール層側とは反対側に、さらに他の層を有していてもよい。
他の層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物や芳香族ポリアミドに代表されるガスバリア性樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、粘着性樹脂等をフィルム要求機能に応じて用いることができる。またその他の層は複数設けてもよい。
【0040】
(その他の成分)
本発明のフィルムの各層は、その特性を阻害しない範囲であれば、適宜、添加剤を含有することができる。例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
【0041】
<易開封性フィルムの製造方法>
本発明のフィルムの製造方法は、特に限定されず、公知のTダイ法やインフレーション法などにより製造することができる。
シール層に隣接してポリオレフィン系樹脂層(隣接層)を設けてフィルムを製造する方法は、特に限定されないが、公知のフィードブロック方式、マルチマニホールド方式、或いはそれらの組み合わせを用いた共押出法を好適に用いることができる。
該隣接層のシール層側とは反対側に他の層を設けてフィルムを製造する方法は、同様に共押出法を用いたり、熱ラミネート法、押出ラミネート法、ドライラミネート法で形成することもできる。
本発明のフィルムは、無延伸でもよく、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸でもよい。
また、本発明のフィルムは必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理や表面加工を行うこともできる。
【0042】
本フィルムがシール層のみの単層フィルムの場合、その厚みは1~30μmが好ましい。
本フィルムが共押出フィルム等に代表される、隣接層等の他の層を含む多層フィルムの場合は、ヒートシール性と、糸引き、膜引きのない良好な易剥離性との両立、透明性の点から、シール層の厚みは1~10μmが好ましく、2~8μmがより好ましく、凝集破壊がフィルム水平方向に伝播しやすく易開封性がより良好となる点から、2~5μmが更に好ましい。
また、隣接層は、フィルム全体の強度や取扱い性の点から、1~30μmが好ましい。
隣接層、その他の層を含めた多層フィルムの総厚は、フィルム強度、ハンドリング性、二次加工性の点から、下限は3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
単層フィルムの厚み、および、多層フィルムの総厚や各層厚は、触針式厚み系計、フィルム断面観察から計測することができる。
【0043】
<フィルム特性>
本発明のフィルムおよび多層フィルム(以下、これらをまとめて、「本フィルム」という場合がある。)は、以下の特性を有することが好ましい。
(ヒートシール性、易開封性)
本フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂からなる被着体に対して優れたヒートシール密着性と、開封剥離時に優れた凝集破壊タイプの易開封性とを有することが好ましい。すなわちポリプロピレン系樹脂からなる被着体とシール温度140~180℃でヒートシールし剥離させた場合に凝集破壊する特徴を有する。更に、シール温度140~180℃でヒートシールし剥離させた場合に、何れのシール温度条件においても凝集破壊すること、剥離面において糸引き等がなく美麗になることがより好ましい。被着体のポリプロピレン系樹脂には、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンが挙げられる。本フィルムは、被着体が高融点であるホモポリプロピレンであっても、良好なヒートシール性と易開封性を発現することができる。
【0044】
評価方法としては、例えば、以下が採用できる。被着体として300μm厚のホモポリプロピレンシートを用いて、これに本フィルムを重ね合わせ(共押出フィルムについては、シール層側を重ね合わせる)、シール温度140~180℃、シール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件で、ヒートシールし評価用サンプルを作製する。ヒートシール密着性と易開封性の測定は、ヒートシールしたサンプルを15mm幅の短冊状にカットして試験片を作製し、JIS Z0238:1998に基づき、ヒートシール部を中央にし、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、剥離強度(単位:N/15mm幅)を測定する。
【0045】
剥離強度の下限は、8N/15mm幅以上が好ましく、10N/15mm幅以上がより好ましい。上限は20N/15mm幅以下が好ましく、18N/15mm幅以下がより好ましい。係る範囲の剥離強度を有していれば、被着体に対して十分な強度で密着しており、また、手で容易に剥離開封できる。また、本フィルムは、シール層内部が凝集破壊して剥離開封でき、糸引きや膜引きが起きずに易剥離すること、剥離後の両剥離面に樹脂が不定形に残る毛羽立ちや樹脂千切れが生じずに美麗な剥離外観になることがより好ましい。
【0046】
更に、本発明のフィルムを用いた包装体は、開封の際に、開封方向による剥離強度の差が小さく、等方性の優れた易開封性が得られる。該等方性を示すTD/MDは、1.5未満が好ましく、1.4未満がより好ましい。等方性に優れることにより、フィルムおよび包装体の生産効率やユニバーサルデザインの設計に優位である。
【0047】
(透明性)
本フィルムの透明性は、内容物の視認性、美観性、意匠性等の観点から、全ヘーズと外部ヘーズは15%以下が好ましく、下限は特に限定されず、値がより小さいと透明性が良好であり好ましい。
ヘーズは、JIS K7136:2000に基づき測定される。
【0048】
<包装体>
本フィルムは、良好なヒートシール性、易剥離性を有するので、収容物に応じた形状で被着体とヒートシールし包装体を為すことができる。特に、本フィルムから構成される蓋材と、ポリプロピレン系樹脂から構成される底材(被着体)とをヒートシールした包装体が有用である。
なお、多層フィルムを用いる場合は、シール層側を、被着体(例えば、底材)側にして、底材とヒートシールして、包装体が作製される。底材を構成するポリプロピレン系樹脂には、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンが挙げられる。本フィルムでは、被着体が高融点であるホモポリプロピレンであっても、良好なヒートシール性と易開封性を発現することができる。また、本フィルムは、他のプラスチックフィルム及びシート、金属箔、紙などと、例えばドライラミネート等の公知の方法で積層し、包装材料とすることもでき、それらからなる蓋材を用いて包装体を作製できる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等によって制限を受けるものではない。
下記の原材料を用いて、各実施例および比較例に記載の方法によりフィルムを作製し、該フィルムを用いて試験、評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0050】
<原材料(シール層)>
(ポリプロピレン系樹脂)
PP1: メタロセン触媒で重合したプロピレン-エチレン共重合体 ポリプロピレン樹脂(MFR:7.0g/10分、融点:124℃、密度900kg/m3)
(ポリエチレン樹脂)
PE1: 高圧重合法で重合したポリエチレン樹脂(MFR:0.7g/10分、融点:112℃、密度924kg/m3)
PE2: 高圧重合法で重合したポリエチレン樹脂(MFR:2.2g/10分、融点:115℃、密度925kg/m3)
PE3: 高圧重合法で重合したポリエチレン樹脂(MFR:4.0g/10分、融点:111℃、密度923kg/m3)
PE4: 高圧重合法で重合したポリエチレン樹脂(MFR:8.4g/10分、融点:107℃、密度919kg/m3)
PE5: 高圧重合法で重合したポリエチレン樹脂(MFR:12g/10分、融点:110℃、密度925kg/m3)
【0051】
<原材料(隣接層)>
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(MFR:1.5g/10分、融点:121℃、密度923kg/m3)
【0052】
<実施例1~3、比較例1~5>
上記原材料を用い、シール層は表1に示した配合で、各層用の各押出機に原材料を供給し、Tダイ共押出法により押出温度200℃の条件で、シール層、隣接層を共押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、シール層5μm厚/隣接層25μm厚の共押出フィルムを得た。
次いで、共押出フィルムの隣接層表面をコロナ放電処理し、エーテル系ポリウレタン接着剤を用いて、12μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとドライラミネートして積層フィルムを得た。
【0053】
<評価方法>
(1)ヒートシール試験、剥離試験
被着体として300μm厚のホモポリプロピレンシートと、実施例および比較例で得られた積層フィルムのシール層面を対向させて重ね、その一端を、ヒートシール機を用いてシール幅5mm、シール圧0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールした。設定シール温度は140℃、150、160℃、180℃の4通りで試験した。
その後、長さ50mm、幅15mmの短冊片に切り出し、JIS Z0238:1998に準拠して、ヒートシール部を中央にして2枚のフィルムの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度300mm/分の条件で、短冊片の長さ方向に剥離又は破断するまで引張り、測定された最大応力をヒートシール強度(単位:N/15mm幅)として測定し、ヒートシール強度が8N/15mm幅以上、20N/15mm幅以下の場合を密着性と易剥離性が良好と評価した。
【0054】
次いで、剥離試験後の剥離面を下記の基準で観察し、シール層が凝集破壊した場合(○と△)を易剥離性良好と評価した。
○:凝集破壊していて、糸引き等がない
△:凝集破壊しているが、糸引き、膜引き、毛羽立ち、樹脂千切れがある
▲:凝集破壊不十分で、顕著な糸引き等がある
■:剥離せず、フィルムが破れる
×:フィルムと被着体で密着していない
これらのヒートシール試験、剥離試験を、実施例および比較例で得た共押出フィルムのフィルム流れ方向(MD)と、その垂直方向(TD)の両方向について行い、剥離強度の比(TD/MD)を算出した。剥離強度の比(TD/MD)は、1.5未満であれば、易開封性の等方性が高いといえる。
【0055】
(2)透明性
実施例および比較例で得られた共押出フィルムについて、JIS K7136:2000に準拠して全ヘーズを、また内部ヘーズはJIS K7105に準拠して測定を行った。測定器としては、日本電飾工業製のヘーズメーターNDH5000を使用した。内部ヘーズはフィルムの凹凸の影響を除外するために、フィルムの両面に純度99.5%のエタノールを滴下し、スライドガラスでフィルムを挟み、内部ヘーズを測定した。外部ヘーズは全ヘーズと内部ヘーズの値から算出した。
全ヘーズが15%以下であるものを良好と判断とした。
【0056】
【0057】
実施例1~3は、シール層がシングルサイト触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含み、且つメルトフローレート(MFR)1.0g/10分未満の低密度ポリエチレン樹脂(b)とMFR5.0g/10分超の低密度ポリエチレン樹脂(c)とを含む樹脂組成物で構成され、そのフィルムは、いずれも全ヘーズが15.0%以下であり、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体用のイージーピール性シーラントフィルムとして、従来のフィルムに比べ透明性が優れるものであった。また、ヒートシール140~180℃の幅広い温度において、十分な密着性と易開封性とを兼ね備え、更に凝集破壊した面に糸引き等がなく美麗な剥離面が得られた。更には、MDとTDの剥離方向の剥離強度の比が1.5未満と同等レベルであり、易開封性の等方性が高いことから、フィルムおよび包装体を形成する際の生産効率が格段に向上する利点を有し、ユニバーサルデザインの設計にも優れるものと云える。
【0058】
比較例1は、シール層がポリプロピレン系樹脂(a)のみで構成され、剥離強度が強くイージーピール性が不十分であった。
比較例2は、シール層がポリエチレン樹脂(b)のみで構成され、シール層表面の外部ヘーズが高い影響で全ヘーズが高く、透明性不良であった。
比較例3は、全ヘーズが高く透明性が不良であった。また、シール温度140℃、150℃および160℃において、剥離強度比(TD/MD)が1.5以上で易開封性の等方性が不十分であった。
比較例4は、シール温度140℃、160℃および180℃において凝集破壊が不十分で糸引き等の発生があり、またシール温度180℃で剥離強度が大きく、易開封性が不良であった。
比較例5は、シール温度140℃の低い温度領域から剥離強度が大きく、易開封性が不良であった。また、シール温度140℃、150℃および160℃において、易開封性の等方性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のフィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる被着体とのヒートシールによって十分な密着強度をもち、夾雑物シール性が得られる。また、包装体を作製し開封させる際に、何れの方向に開封させても、シール層が凝集破壊し軽い力で剥離開封することができると共に、毛羽立ちや糸引きが発生し難いので食の安全性や衛生性に秀でる。更に、透明性を有するので、包装体の内容物視認性に有効である。以上より、本発明のフィルムは、食品包装、医療品、日用品、文房具を収容するブリスターパックとして好適に用いることができる。