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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240307BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/496
A61F13/49 413
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020009998
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021115217
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 景
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110635(JP,A)
【文献】特開平08-174744(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070171(WO,A1)
【文献】特開平10-001527(JP,A)
【文献】特開2004-010792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及びこれらの間に配置された吸収体を含む吸収性本体と、前記吸収性本体を支持し、着用者の腹部に主に当接する前側領域と、前記着用者の背部に主に当接する後側領域と、を含み、かつウエスト開口部、及び脚開口部を有する外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記前側領域と前記後側領域とは別体として設けられ、
前記前側領域及び前記後側領域は、それぞれの全域に亘って配設された、全方位に伸縮可能な軟質ポリウレタンフォームシートからなり、かつ糸状弾性伸縮部材を含まず、
前記軟質ポリウレタンフォームシートのMIUが0.3以上1.0以下であり、
前記軟質ポリウレタンフォームシートのMMDが0.01以上0.03以下であり、
前記軟質ポリウレタンフォームシートの60mm伸長したときの伸長応力が3.0N以上4.5N以下であり、
前記軟質ポリウレタンフォームシートは、一つの方向、前記一つの方向に対して略垂直な方向、及び前記一つの方向に対して45度傾いた方向の全ての方向において、10mm以上100mm以下の範囲で伸縮することを特徴とする、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記軟質ポリウレタンフォームシートの坪量が70g/m以上300g/m以下である、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記軟質ポリウレタンフォームシートの厚みが1.0mm以上4.0mm以下である、請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児、成人及び病人の排泄物を吸収するため、パンツタイプの紙おむつ(以下「パンツ型吸収性物品」ともいう)が使用されている。パンツ型吸収性物品は、前後から着用者の股間部を覆い、排泄物を吸収する吸収性本体と、吸収性本体を支持しつつ、ウエスト開口部と一対の脚開口部とを有する外装体と、を備える。着用者は、脚開口部に両足を通し、パンツ型吸収性物品のウエスト開口部の上端を胴回りからウエスト周りまでの領域に引っ張り上げて着用する。
【0003】
従来のパンツ型吸収性物品の外装体は、ウエスト開口部、胴回り部、股下部に区分され、ウエスト開口部、胴回り部には弾性伸縮部材が配置され、股下部には脚回り近傍に脚回りに沿って弾性伸縮部材が配置されている。各弾性伸縮部材は、外装体の幅方向のみに伸縮する。しかしながら、弾性伸縮部材が外装体の幅方向以外にも伸縮すれば、より身体にフィットし、良好な着用感を有するパンツ型吸収性物品が得られる。
【0004】
特許文献1には、ウエスト開口部と左右一対の脚開口部とを有する外装体と、吸収性本体と、を備え、外装体に、腹側部の右側縁部から股下領域を通って背側部の左側縁部に至る第一の弾性部材と、腹側部の左側縁部から股下領域を通って背側部の右縁部に至り、股下領域で第一の弾性部材と交差する第二の弾性部材と、左右の脚開口部と吸収性本体との間に位置し、両端部が第一及び第二の弾性部材と重なり合う第三の弾性部材と、を配置したパンツ型吸収性物品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、前側胴回り部と、後側胴回り部と、前側胴回り部から後側胴回り部に向かう長手方向に略直交する幅方向に沿って前側胴回り部に設けられ、前側胴回り部を伸縮させる複数の前側胴回り伸縮材と、後側胴回り部の前記幅方向に沿って設けられ、後側胴回り部を伸縮させる複数の後側胴回り伸縮材と、を備え、前側胴回り伸縮材の合計伸長応力と後側胴回り伸縮材の合計伸長応力とが略等しく、かつ前側胴回り伸縮材の本数が後側胴回り伸縮材の本数よりも多い、パンツ型吸収性物品が開示されている。特許文献2には、前側胴回り伸縮材の合計伸長応力と後側胴回り伸縮材の合計伸長応力とが略等しくなるように、前側胴回り伸縮材及び後側胴回り伸縮材を配置することにより、着用者の背側と腹側とを均等に締め付け、体液吸収によりパンツ型吸収性物品の重量が増加しても、前側胴回り部又は後側胴回り部のずり落ちを防止できると記載されている。
【0006】
特許文献3には、体液を吸収及び保持する吸収性本体と、吸収性本体を支持する外装シートとを備え、該外装シートは、着用者の背側に位置する背側胴回り部、幅方向両側に脚回り部を有する股下回り部及び着用者の腹側に位置する腹側胴回り部が長手方向に順次一体的に設けられたものであり、背側胴回り部の幅方向の両側部と、腹側胴回り部の幅方向の両側部との接合により形成され、着用者の胴回りに位置する胴回り開口部及び着用者の脚回りに位置する一対の脚回側り開口部と、胴回り開口部の縁部全周に亘って配設された胴回り用弾性部材と、幅方向に伸縮可能な複数の背側弾性部材と、幅方向に伸縮可能な複数の腹側弾性部材とを有し、背側胴回り部には長手方向に亘る背側弾性領域、及び腹側胴回り部には長手方向に亘る腹側弾性領域がそれぞれ形成され、背側弾性部材は腹側弾性部材よりも本数が多く、背側弾性部材とそれに最も近接する胴回り用弾性部材との間隔が、腹側弾性部材とそれに最も近接する胴回り用弾性部材との間隔と略等しい位置に背側弾性部材が配設され、背側弾性領域は腹側弾性領域よりも長手方向に幅広に形成され、吸収性本体が、腹側弾性領域と重ならずかつ背側弾性領域と重なる位置に配設されたパンツ型吸収性物品が開示されている。以上において、長手方向及び幅方向は、それぞれ、パンツ型吸収性物品の長手方向及び幅方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-313531号公報
【文献】特開2012-217553号公報
【文献】特許第4352003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、パンツ型吸収性物品の着用の際のずれ落ちの問題を、所定の弾性部材を配置することのみで解決しようとする発明である。しかしながら、特許文献1は、パンツ型吸収性物品のウエスト周りや胴回りのフィット性や着用感を改良しようとするものではない。
【0009】
特許文献2は、前側胴回り部及び後側胴回り部の幅方向の伸縮性を検討したものであるが、幅方向以外の伸縮性については、検討されていない。特許文献3も、特許文献2と同様に幅方向以外については検討されていない。
【0010】
本発明の目的は、着用者のウエスト領域及び胴回り領域に全方位的にフィットし、着用感の良好なパンツ型吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、着用者のウエスト領域及び胴回り領域の各外装体として、全方位に伸縮性を有する所定の素材を用いることにより、上記課題を解決したパンツ型吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(6)のパンツ型吸収性物品を提供する。
【0012】
(1)液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及びこれらの間に配置された吸収体を含む吸収性本体と、前記吸収性本体を支持し、着用者の腹部に主に当接する前側領域と、前記着用者の背部に主に当接する後側領域と、を含み、かつウエスト開口部、及び脚開口部を有する外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記前側領域と前記後側領域とは別体として設けられ、
前記前側領域及び前記後側領域は、それぞれの全域に亘って配設された、全方位に伸縮可能な軟質ポリウレタンフォームを含み、かつ糸状弾性伸縮部材を含まないことを特徴とする、パンツ型吸収性物品。
本明細書において、全方位に伸縮可能とは、一方向、一方向に対して略垂直な方向、及び一方向に対して45°傾いた方向のいずれの方向にも伸縮可能であり、好ましくは前記3つの方向のいずれの方向にも10mm以上100mm以下の範囲で伸縮可能であり、より好ましくは前記3つの方向のいずれの方向にも20mm以上80mm以下の範囲で伸縮可能であることを意味する。
(2)前記軟質ポリウレタンフォームの坪量が70g/m以上300g/m以下である、上記(1)のパンツ型吸収性物品。
(3)前記軟質ポリウレタンフォームの厚みが1.0mm以上4.0mm以下である、上記(1)又は(2)のパンツ型吸収性物品。
(4)前記軟質ポリウレタンフォームのMIUが0.3以上1.0以下である、上記(1)~(3)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(5)前記軟質ポリウレタンフォームのMMDが0.01以上0.03以下である、上記(1)~(4)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(6)前記軟質ポリウレタンフォームの60mm伸長したときの伸長応力が3.0N以上4.5N以下である、上記(1)~(5)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着用者のウエスト領域及び胴回り領域に全方位的にフィットし、着用感の良好なパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るパンツ型吸収性物品の外観構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すパンツ型吸収性物品の構成を模式的に示す展開平面図である。
図3】軟質ポリウレタンフォームからなる外装体の引張試験結果を示すグラフである。
図4】軟質ポリウレタンフォームからなる外装体、及び市販品の外装体の引張サイクル試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、第一実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について、図面を参照しつつ説明する。パンツ型吸収性物品1の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、パンツ型吸収性物品1を身体に装着した状態をいう。本明細書において、長手方向とは、パンツ吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは長手方向及び幅方向を含む平面に対して直交する方向である。また、パンツ型吸収性物品1を身体に着用したときに、着用者の肌に当接するか又は該肌を臨む表面を肌側面、着用者の衣類に接触するか又は該衣類を臨む表面を非肌側面、とする。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<パンツ型吸収性物品>
図1は、パンツ型吸収性物品1の模式斜視図であり、図2はパンツ型吸収性物品1の模式展開平面図である。各図は、パンツ型吸収性物品1の外装体20や吸収性本体10等の各構成部材の寸法の大小関係を規定するものではない。各構成部材の寸法は、パンツ型吸収性物品1の用途、着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、その外形形状を構成する外装体20と、外装体20に支持され、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収性本体10と、を備える。外装体20は、着用者の腹部に主に当接する前側領域30と、着用者の背部に主に当接する後側領域31とを含む。前側領域30と後側領域31とは別体として設けられている。吸収性本体10は、前側領域30と後側領域31との間に位置してこれらに支持され、着用者の股間部に主に当接する。吸収性本体10は、股下領域に位置する。吸収性本体10は、長手方向の一端が前側領域30に接合され、長手方向の他端が後側領域31に接合され、前側領域30及び後側領域31により支持されている。
【0018】
弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の長手方向の寸法は600mm以上1000mm以下、幅方向の寸法は450mm以上900mm以下であることが好ましい。弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品1の展開時の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
以下、本実施形態のパンツ型吸収性物品1の各構成部材について、吸収性本体10、及び外装体20の順でさらに詳細に説明する。
【0019】
<吸収性本体>
図2に示すように、本実施形態の吸収性本体10は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート25と、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体26と、一対の立体ギャザー27と、を含む。すなわち、吸収性本体10は、トップシート24、吸収体26、及びバックシート25をこの順で厚み方向に積層した積層体の幅方向両端に立体ギャザー27が取り付けられたものである。各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供するためには、吸収性本体10の長手方向の寸法は300mm以上500mm以下、幅方向の寸法は100mm以上300mm以下であることが好ましい。
以下、吸収性本体10に含まれる各構成部材について詳細に説明する。
【0020】
(トップシート)
トップシート24は、体液が吸収体26へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布等の親水性の不織布材料、感触が柔らかで肌に刺激を与えない不織布以外の材料等から構成される。また、トップシート24には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。エンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート24には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の観点から、トップシート24の坪量は、好ましくは18g/m以上40g/m以下である。トップシート24の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体26へと誘導するために必要とされる、吸収体26を覆う形状であればよい。
【0021】
(バックシート)
バックシート25は、吸収体26が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材、例えば通気性又は非通気性である液不透過性の樹脂フィルムから形成される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート25の坪量は、好ましくは15g/m以上40g/m以下である。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート25として使用することが好ましい。バックシート25に通気性を付与するために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート25にエンボス加工を施してもよい。フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、樹脂フィルムへのフィラーの配合には公知の方法を利用できる。例えば、溶融した樹脂にフィラーを混合し、得られた混合物をフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去すると、通気性の多孔質樹脂フィルムが得られる。
【0022】
(吸収体)
吸収性本体10は、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体26を有する。吸収体26は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては特に限定されないが、例えば、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等の、綿状の解繊物等が挙げられる。吸収体26の吸収性繊維の坪量は、吸収性能及び肌触りの観点から、好ましくは50g/m以上800g/m以下である。吸収性繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収及び保持できるものを特に制限はなく使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当りの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。吸収体26において、SAPの坪量は、吸収性能及び肌触りの観点から、好ましくは10g/m以上500g/m以下、SPAの含有量は好ましくは15質量%以上50質量%以下である。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
吸収体26における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。繊維形態に成形したSAPも使用できる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体26の形状の安定化の観点から、吸収体26をキャリアシート(不図示)に包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布等が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一でも異なるものでもよい。
【0025】
吸収体26は、2層以上の吸収体を含むものでもよい。例えば、上層吸収体と下層吸収体との積層体が挙げられる。該積層体では、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体が下層吸収体より大きくても小さくてもよく、上層吸収体と下層吸収体とが略同寸でもよい。
【0026】
(立体ギャザー)
一対の立体ギャザー27は、着用者が排泄した体液の横漏れを防止するため、トップシート24の肌側面の両側端部付近に長手方向に沿って設けられる(図1)。立体ギャザー27は、例えば、幅方向一端をバックシート25の肌側面の両側端部付近(又は非肌側面の両側端部付近)に固定し、幅方向途中部をトップシート24の肌側面の両側端部付近に固定し、幅方向他端が自由端となる立体ギャザーシート(不図示)と、立体ギャザーシートの自由端付近に長手方向に沿って設けられ、該自由端に起立性を付与する弾性伸縮部材(不図示)と、含む。立体ギャザーシートの幅方向一端は、トップシート24とバックシート25とを部分的又は全体的に接合し、吸収体26を内包する袋体の幅方向両端付近、トップシート24の肌側面の幅方向両端付近等にも固定できる。
【0027】
立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドの3層の積層複合不織布等が使用される。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用される。本実施形態の吸収性本体10は、立体ギャザー27を含まない実施形態をも包含する。
【0028】
<外装体>
外装体20は、パンツ型吸収性物品1の外形形状を構成する部材であり、前述のように、前側領域30と、前側領域30とは別体として設けられた後側領域31と、を含み、前側領域30及び後側領域31は、それぞれ、幅方向両端部に一対の前側サイドシール部302及び一対の後側サイドシール部312を有する。すなわち、図2のように展開したパンツ型吸収性物品1を、吸収性本体10を内側にして前側領域30と後側領域31とが重なるように折り曲げ、対面する前側、後側サイドシール部302、312をそれぞれ接合することにより、ウエスト開口部11及び一対の脚開口部12を有し、着用者が着用可能な、図1に示すパンツ型吸収性物品1が得られる。
【0029】
前側領域30及び後側領域31は、それぞれの全領域に、後述する所定の軟質ポリウレタンフォームを含むシート、好ましくは該軟質ポリウレタンフォームからなるシートが外装体301、311として配設された領域であり、かつ糸状弾性伸縮部材が配置されておらず、糸状弾性伸縮部材を含まない領域である。前側領域30と後側領域31との間には、吸収性本体10が介在し、股下領域32を形成している。吸収性本体10は、長手方向の一端が前側領域30の外装体301に接合され、長手方向の他端が後側領域31の外装体311に接合される。股下領域32には、吸収性本体10のバックシート25の非肌側面と前側領域外装体301及び後側領域外装体311の肌側面とが接するように吸収性本体10が配置される。
【0030】
また、股下領域32における、一対の脚開口部12の周縁には、弾性伸縮部材を配置してもよい。弾性伸縮部材としては、立体ギャザー27に用いられるのと同様に、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。弾性伸縮部材は、例えば、ホットメルト系接着剤を用いて所定の位置に固定される。
【0031】
本実施形態では、前側領域30及び後側領域31の外装体301、311として、所定の特性を有する軟質ポリウレタンフォームを含むシートを使用し、好ましくは所定の特性を有する軟質ポリウレタンフォームからなるシートを使用する。軟質ポリウレタンフォームを含むシートとしては、軟質ポリウレタンフォームからなるシート、軟質ポリウレタンフォームからなる粒子、繊維等を他の合成樹脂中に分散させてシート状に成形したもの、繊維から構成される布(不織布、編物、織物等)に軟質ポリウレタンフォームの粒子や繊維を混在させたもの等が挙げられる。以下、これらを、「軟質ポリウレタンフォームシート」と総称することがある。なお、本実施形態では、前側領域30及び後側領域31には、弾性伸縮部材は配置されていない。
【0032】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、全方位に伸縮可能であり、一方向だけでなく、一方向に対して略垂直な方向、及び一方向に対して45°傾斜した方向にも伸縮する。これは、例えば、図3に示す引張試験の結果から自明である。図3によれば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、一つの方向(タテ)、一つの方向に対して略垂直な方向(ヨコ)、及び一つの方向に対して所定角度傾いた方向(45°)の全ての方向において、好ましくは10mm以上100mm以下、より好ましくは20mm以上80mm以下の範囲で伸縮する。このように、少なくとも3つ以上の複数の異なる方向に伸縮可能なことを、全方位に伸縮可能であるという。なお、引張試験の詳細は後述する。このような軟質ポリウレタンフォームは、例えば、特開2019-127537号公報に記載されている。
【0033】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームとして、シート状に成形したときに、例えば図3及び図4に示すような全方位に伸縮可能な特性を有する軟質ポリウレタンフォームを使用できるが、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、伸縮性以外にも種々の特性を有している。例えば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは好ましくは連続気泡体である。連続気泡体に代えて独立気泡体を用いると、着用者の股間部へのフィット性が低下する傾向がある。なお、連続気泡体であることは、軟質ポリウレタンフォームを切断し、切断面を顕微鏡観察することにより容易に確認できる。
【0034】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームの見掛け密度は好ましくは0.01g/cm以上0.3g/cmである。発泡倍率は好ましくは10倍以上60倍以下である。見掛け密度及び/又は発泡倍率を前記範囲内にすることにより、全方位に伸縮可能な材料となり易い。発泡倍率が10倍未満及び/又は見掛け密度が0.3g/cmを超えると、伸縮性が不十分になり、前側領域30及び後側領域31の全域が着用者のウエスト部及び胴部にフィットし難くなる傾向がある。発泡倍率が60倍を超えるか及び/又は見掛け密度が0.01g/cm未満では、軟質ポリウレタンフォームの強度が低下し、体液を吸収した後の吸収性本体10のずり落ちが起こりやすくなる傾向がある。また、軟質ポリウレタンフォームは、例えば原料化合物を適宜選択することにより、その骨格表面を疎水性にも親水性にも調整可能であるが、本実施形態では疎水性であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、公知の製造方法に従って、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、加圧下に気体系発泡剤を注入し、次いで減圧又は大気中に放出して発泡させてもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率、見掛け密度、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、MIU、MMDといった各特性を調整できる。
【0036】
軟質ポリウレタンフォームシートは、軟質ポリウレタンフォームの坪量が70g/m以上300g/m以下であることが好ましく、100g/m以上250g/m以下であることがより好ましい。坪量が70g/m未満では、体液の漏れが発生し易くなる傾向があり、300g/mを超えると通気性が低下し、蒸れ等が発生し易くなる傾向がある。また、軟質ポリウレタンフォームシートの厚みは1.0mm以上4.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上3.2mm以下であることがより好ましい。1.0mm未満では該シートが破断し易くなる傾向があり、4.0mmを超えると、該シートが嵩高になり、また、硬くなる傾向があり、パンツ型吸収性物品1の着用感を低下させるおそれがある。厚みはハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて、無荷重条件下で測定する。
【0037】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートは、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、MIU、MMDの少なくとも1つを、以下に示す範囲内で有することが好ましい。
【0038】
(引張強度)
10.N以上15.0N以下であることが好ましい。10.0N未満では、パンツ型吸収性物品1を着用したときの締め付けが弱くなり、ずり落ちてしまう傾向がある。15.0Nを超えると、着用するときに伸びにくくなり、履きづらくなる傾向がある。引張強度、及び後述の引張破断伸びは、JIS P 8113、及びJIS P 8111(温湿度条件)に基づき、23±1℃、50±2%RHの温湿度条件下で平衡状態に保持した後に、長さ70mm、幅25mmの試料を、未伸長時のテンシロン引張試験機のチャック間距離50mmに設定し、クロスヘッド移動速度300mm/minの条件で250%伸長させ、250%伸長したときの値として求めた。
(引張破断伸び)
200mm以上300mm以下であることが好ましい。引張破断伸びが200mm未満では、着用するときに破れ易くなる傾向があり、300mmを超えると、履きにくくなり、かつ通気性が低下して蒸れ易くなる傾向がある。
【0039】
(60mm伸長したときの伸長応力)
3.0N以上4.5N以下であることが好ましく、3.5N以上4.2N以下であることがより好ましい。伸長応力が3.0N未満では、パンツ型吸収性物品1を着用したときの締め付けが弱くなり、ずり落ちてしまう傾向がある。伸長応力が4.5Nを超えると、着用するときに伸びにくくなり、履きづらくなる傾向がある。この伸長応力は、伸長長さを250%から220%に変更する以外は、前述の引張強度及び引張破断伸びの測定方法と同様にして測定した。そして、60mm(220%)伸長させたあとに、元の状態に戻るまでの、1サイクルのSS曲線(横軸は伸びmm、縦軸は荷重N)を作成する。無伸長状態の試料を60mm伸長させた後に、無伸長状態の寸法のチャック間距離50mmまで戻した時点の、SS曲線上の数値を伸長応力とする。図4には、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートの1サイクルのSS曲線とともに、比較のために、パンツ型吸収性物品の、不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体からなる胴回り領域の外装体から70mm×25mmの試料(糸状弾性伸縮部材の伸縮方向に長い)を切り出して用い、1サイクルのSS曲線を示した。図4によれば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームシートの方が、不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体に比べて、伸縮性に富むことが明らかである。
【0040】
(平均摩擦係数 MIU)
0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.6以下であることがより好ましい。MIUが0.3未満では、着用するときに滑り易くなり、また、ずれ落ちる傾向がある。MIUが1.0を超えると、滑りにくく、履き心地が悪くなる傾向がある。平均摩擦係数MIUは、数値が高いほど、すべりにくいことを示す。平均摩擦係数MIU及び平均摩擦係数の平均偏差MMDは、摩擦感テスターKES-SE(カトーテック(株)製)を用い、試料を平滑な金属平面上に置き、試料上の幅0.5cm、長さ2cmの領域に対して、速度0.1cm/秒の一定速度で接触子を水平に移動させながら測定される。接触子には0.5mmのピアノワイヤを10本並べたものを使用し、接触子に加える荷重は、50gfとする。
(平均摩擦係数の平均偏差 MMD)
0.01以上0.03以下であることが好ましい。MMDが0.01未満では、平滑すぎてずり落ち易くなる傾向があり、0.03を超えると表面がざらついて、着用感が悪くなる傾向がある。平均摩擦係数の平均偏差MMDは、数値が高いほど、滑らかさが低く、ざらつきが大きいことを示す。
【0041】
本実施形態の軟質ポリウレタンシートの一例、及び図4に示す試験で用いた外装体(不織布と糸状弾性伸縮部材と不織布との積層体)の、MIU、及びMMDを表1に示す。表1から、本実施形態の軟質ポリウレタンシートは滑り難く、かつざらつきが比較的小さく、実用上支障のない素材であることがわかる。
【0042】
【表1】
【0043】
本実施形態では、前側領域30及び後側領域31に糸状弾性伸縮部材が配されていないにもかかわらず、軟質ポリウレタンフォームシートの自在の伸縮力により、前側領域30及び後側領域31の身体にフィットしつつの可動範囲が大きくなる。その結果、前側領域30及び後側領域31が着用者のウエスト領域及び胴回り領域を適度に締め付けつつ、吸収性本体10による体液吸収の前後を問わず、また、着用者の体型に関係なく、着用者のウエスト領域及び胴回り領域の体型に応じて良好にフィットして着用者の下腹部の圧迫感を緩和しつつ、着用感が著しく向上する。また、前側領域30及び後側領域31が着用者のウエスト領域及び胴回り領域を適度に締め付けつつフィットしているので、吸収性本体10が体液を吸収して重くなった後でも、パンツ型吸収性物品1のずれ落ちが防止される。
【0044】
[パンツ型吸収性物品の製造方法]
パンツ型吸収性物品1の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、吸収体26をトップシート24とバックシート25との間に挟持し、トップシート24とバックシート25を接合して吸収性本体10を作製する工程と、前側領域30及び後側領域31の外装体(軟質ポリウレタンフォームシート)301、311と吸収性本体10の長手方向両端とを接合する工程と、吸収性本体10を内側にして前側領域30と後側領域31とが重なるように2つ折りにし、前側サイドシール部302及び後側サイドシール部312を接合する工程と、を含む製造方法により、本実施形態のパンツ型吸収性物品1を得ることができる。また、製品化する場合には、図2に示す展開した状態のパンツ型吸収性物品1を所定の形状に折り畳んで袋詰めすればよい。
【0045】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0046】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
まず、フラッフパルプ及びSAPを混合して、吸収体を準備し、吸収体をトップシート(サーマルボンド不織布)とバックシート(通気性ポリエチレンフィルム)との間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、吸収性本体を作製した。
【0048】
前側領域及び後側領域の外装体として、見掛け密度0.06g/cmで、厚み2.26mm、坪量138.8g/m、引張強度12.5N、引張破断伸び245.4mm、60mm伸長したときの伸長応力4.1N、MIUが0.524、及びMMDが0.021であり、図3及び図4に示す伸縮挙動を示す、発泡ポリウレタンフォームからなるシートを用意した。また、該シートを切断し、切断面を顕微鏡観察し、該シートが連続気泡体であることを確認した。開口部の周縁に沿って糸状合成ゴム(糸状弾性伸縮部材、太さ940dtex)を3本(7mm間隔)ずつ配置した。
【0049】
次いで、吸収性本体に、前側領域及び後側領域の外装体を長手方向に接合し、パンツ型吸収性物品を作製した。その後、前側領域及び後側領域の両側縁部を、サイドシール部を介して接続し、各弾性伸縮部材を配設する前のパンツ型吸収性物品の展開時の長手方向の寸法を780mm、幅方向の寸法を560mm(成人用のMサイズに相当)になるように調整し、パンツ型吸収性物品を作製した。
【0050】
得られたパンツ型吸収性物品は、特に前側領域及び後側領域の外装体として伸縮性に富む発泡ポリウレタンフォームシートを用いることにより、着用者のウエスト周り及び胴回りの全体に良好にフィット(密着)し、良好な着用感が得られ、長時間着用していても全く違和感のない履き心地であった。また、体液を吸収した後でも、ずれ落ち等が起こらなかった。
【符号の説明】
【0051】
1 パンツ型吸収性物品
10 吸収性本体
11 ウエスト開口部
12 脚開口部
20 外装体
24 トップシート
25 バックシート
26 吸収体
27 立体ギャザー
30 前側領域
31 後側領域
32 股下領域
301 前側領域外装体
302 前側サイドシール部
311 後側領域外装体
312 後側サイドシール部
図1
図2
図3
図4