(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】シャッター装置の防火構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20240307BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20240307BHJP
E06B 9/58 20060101ALI20240307BHJP
E05B 65/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
E06B9/17 M
E06B9/17 U
E06B5/16
E06B9/58 A
E05B65/02 E
(21)【出願番号】P 2020024440
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】本庄 俊章
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-96027(JP,A)
【文献】特開2000-27507(JP,A)
【文献】特開2010-163816(JP,A)
【文献】特開2013-72170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 - 9/92
E06B 5/00 - 5/20
E05B 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に開口する開口部を前記外壁の外側で昇降して覆い、下降先端に座板を有するシャッターカーテンと、
前記シャッターカーテンの側部を上下に延在するスリットに挿入して昇降を案内する一対のガイドレールと、
前
記一対のガイドレールの下端を連結し前傾底板を有する下枠と、
前記ガイドレールの下端の内方に設けられ前記ガイドレールにおける前記スリットに対向する外側垂直壁部の内面に固定される垂直板部とこの垂直板部に垂直に接続する支持片部とにより形成され、前記支持片部は前記下枠の前傾底板と平行となって該前
傾底板に密接する前傾角度を有しており、前記支持片部によって前記座板の延在方向両端を載置するとともに、前記シャッターカーテンの荷重を支持する支持部材と、
を具備し、
前記支持部材の前記垂直板部が、前記座板に設けられて施錠時に前記座板の側部から前記垂直板部に向かって突出する施解錠装置の鍵バーに係止し、前記シャッターカーテンの上昇を規制する鍵受けを有し、
前記座板に対向する前記支持部材の対向面に、所定温度に加熱されることにより膨張して前記座板と支持部材との間に断熱性を有して挟入状態となる加熱発泡材が設けられていることを特徴とするシャッター装置の防火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置の防火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
窓用シャッターは、建物躯体に開口する窓を覆って外壁に取り付けられる。窓用シャッターでは、防錆性や意匠性等を考慮して、アルミやアルミ合金を素材とする部品や、樹脂を素材とする部品が多用されている。例えば特許文献1に開示の窓用シャッターは、窓の上方にシャッター本体が取り付けられ、そのシャッター本体の両側から窓を挟むようにして外枠が左右に取り付けられる。それぞれの外枠の内側にはガイドレールが固定される。シャッター本体からは、シャッターカーテンがガイドレールに沿って引き出される。窓用シャッターは、左右の外枠下端部が窓の下方で水平に配置される下枠によって接続される。外枠と下枠は、シャッター枠部を構成している。シャッター枠部の下枠は、シャッターカーテンの下降先端に設けられた座板が載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、火災時に、火炎の熱で、各部が溶融、軟化、変形等し、シャッターカーテンの重みが下枠にかかってしまう。これは、シャッターが火炎を受けると、巻取り部のばねがトルクを失うことで降下方向に荷重がかかることによる。そして下枠も熱によって変形しやすくなる。そのため、シャッターカーテン全体の重みを下枠が支えきれなくなることで、脱落する虞が生じる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、火炎により下枠が変形しても座板を含むシャッターカーテンの脱落を抑制し、防火性能を向上させることができるシャッター枠部の防火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシャッター装置の防火構造は、外壁15に開口する開口部13を前記外壁15の外側で昇降して覆い、下降先端に座板29を有するシャッターカーテン21と、
前記シャッターカーテン21の側部35を上下に延在するスリット37に挿入して昇降を案内する一対のガイドレール23と、
前記一対のガイドレール23の下端を連結し前傾底板69を有する下枠31と、
前記ガイドレール23の下端の内方に設けられ、前記ガイドレール23における前記スリット37に対向する外側垂直壁部55の内面に固定される垂直板部51と、この垂直板部51に垂直に接続する支持片部53とにより形成され、前記支持片部53は前記下枠31の前傾底板69と平行となって該前傾底板69に密接する前傾角度θを有しており、前記支持片部53によって前記座板29の延在方向両端を載置するとともに、前記シャッターカーテン21の荷重を支持する支持部材25と、
を具備し、
前記支持部材25の前記垂直板部51が、前記座板29に設けられて施錠時に前記座板29の側部35から前記垂直板部51に向かって突出する施解錠装置47の鍵バー49に係止し、前記シャッターカーテン21の上昇を規制する鍵受け59を有し、
前記座板29に対向する前記支持部材25の対向面に、所定温度に加熱されることにより膨張して前記座板29と支持部材25との間に断熱性を有して挟入状態となる加熱発泡材75が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このシャッター装置の防火構造では、シャッターカーテン21の左右両側の側部35が、開口部13を挟んで両側の外壁15に設けられたガイドレール23に案内される。ガイドレール23は、例えばアルミ製となる。ガイドレール23は、略角筒状に形成され、対向する垂直な壁部にスリット37が上下方向に形成される。ガイドレール23は、このスリット37にシャッターカーテン21の側部35を挿入してシャッターカーテン21の昇降を案内する。従って、シャッターカーテン21は、下降先端に設けられた座板29の延在方向両端とともにシャッターカーテン21の側部35が、ガイドレール23の内方に挿入される。
ガイドレール23の下端の内方には、支持部材25が固定される。支持部材25は、例えば開口部13を屋外側から見た正面視において、略L字状・略逆L字状で形成される。この支持部材25は、アルミよりも耐火温度の高い鋼材により形成される。ガイドレール23は、スリット37に対向する面が、外側垂直壁部55の内面となる。支持部材25は、略L字状・略逆L字状に形成された直交二片のうち、垂直板部51が外側垂直壁部55の内面に固定される。従って、外側垂直壁部55の内面に垂直板部51が固定された支持部材25は、垂直板部51の下端で直交して曲げられる支持片部53が、ガイドレール23の内方においてスリット37に向かって水平に突出する。一対のガイドレール23の下端に固定された支持片部53は、スリット37に挿入されたシャッターカーテン21の側部35の座板29の延在方向両端を載置する。つまり、支持片部53は、シャッターカーテン21の荷重を支持することができる。
従来構造では、シャッターが火炎を受けると、巻取り部のばねが巻き上げ方向のトルクを失うこととなり降下方向に荷重がかかる。アルミ製の下枠31も熱によって変形しやすくなる。そのため、シャッターカーテン全体の重みを下枠31が支えきれなくなる虞があった。一方、特許文献1に開示される技術のように、座板と下枠とを引っ掛けてカーテンの脱落や落下を防ぐ構成では、シャッターカーテンが前方に膨らみ(倒れ)、それにより生じた側方の隙間から外部の火炎がシャッターカーテンの屋内側へ侵入する虞が生じた。
これに対し、このシャッター装置の防火構造では、シャッターカーテン21の下端が、ガイドレール23の内方において、支持部材25の支持片部53に載置されて荷重を垂直方向で受ける。すなわち、シャッターカーテン21の荷重を下枠31のみで支えることを軽減させることができる。これにより、火炎により軟化しやすい下枠31に比べ、高強度の支持部材25でシャッターカーテン21の荷重を支持できる。そして、シャッターカーテン21を垂直に支えることができるので、シャッターカーテン21が前方に膨らむことがなく、側方の隙間より火炎が侵入して延焼することがない。その結果、火炎により下枠31が変形しても、ガイドレール23の下端に設けられた支持部材25が支えることによって座板29の脱落を抑制し、シャッター装置11としての防火性能を向上させることができる。
【0008】
また、このシャッター装置の防火構造では、支持部材25の垂直板部51に、鍵受け59がスリット37に向かって突設される。座板29には、施解錠装置47が設けられる。施解錠装置47は、座板29の側部35から垂直板部51に向かって鍵バー49を進退させる。鍵受け59は、シャッターカーテン21の閉鎖時、施解錠装置47から進出した鍵バー49の直上に配置される。従って、施解錠装置47により施錠されたシャッターカーテン21は、座板29から突出した鍵バー49が、直上の鍵受け59に衝接することにより、上昇、すなわち、開放が規制される。
シャッター装置の防火構造では、この鍵受け59が、支持部材25の垂直板部51に一体的に形成される。鍵受け59は、具体的には、垂直板部51に、下面が係止面61となる三角形状の楔状曲げ部を曲げ加工することにより支持部材25と一体に設けられる。従って、支持部材25は、支持片部53によるシャッターカーテン21の荷重受け機能と、鍵受け59による鍵バー49の係止機能との双方を有することとなる。この構成は、従来の鍵受け金具の下端に、支持片部53を形成した構成とも言える。
このシャッター装置の防火構造では、支持部材25が鍵受け59を有するので、上記した作用のように、火炎により下枠31が変形しても、ガイドレール23の下端に設けられた支持部材25が支えることによって座板29の脱落を抑制できるとともに、通常時には、支持部材25が鍵バー49の係止部としても機能する。つまり、支持部材25は、シャッターカーテン21の荷重受け部材になるとともに、施解錠装置47の鍵受け部材ともなる。
【0009】
さらに、このシャッター装置の防火構造では、座板29に対向する支持部材25の対向面に、加熱発泡材75が設けられる。加熱発泡材75は、ガイドレール23の内方に配置される。加熱発泡材75は、火炎等により所定温度に加熱されると、膨張して座板29と支持部材25との間に断熱性を有して挟入状態となる。ガイドレール23の内方に収容された加熱発泡材75は、所定温度に達すると、体積が5~40倍に膨張する。加熱発泡材75は、膨張することによりガイドレール23の下端の内方に断熱層を形成する。
ガイドレール23の下端の内方には、空間が形成されている。ガイドレール23の内方は、本来、空気層により断熱されているが、火災等の高温においては、加熱された座板29からの熱伝達及び輻射により空気を介した熱の移動量は増大する。シャッター装置の防火構造では、この空間に加熱発泡材75による断熱層が充填されることにより、空気による断熱よりも熱伝達及び輻射による熱の移動を抑制できる。これにより、シャッター装置の防火構造は、空気層のみが介在する場合に比べ、座板29よりも屋内側に配置される部材の温度の上昇を遅延させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載のシャッター装置の防火構造によれば、火炎など火災による熱により下枠が変形しても、ガイドレールの下端内方に設けられた支持部材が支えることによって座板の脱落を抑制し、シャッターカーテンを垂直に支えてシャッター装置としての防火性能を向上させることができる。また、下枠の前傾底板と支持部材の支持片部とが前傾角度を有して密接し積層状態となり高い強度が確保されシャッターカーテンの荷重を支持する。
【0011】
また、本発明のシャッター装置の防火構造によれば、支持部材を鍵受けと兼用させ、この鍵受けが、支持部材の垂直板部に一体的に形成された部材にでき、部品点数、作業工数を減らし、コストを増やさず、取付作業を簡略化することができる。
【0012】
さらに、本発明のシャッター装置の防火構造によれば、火炎により加熱発泡材を膨張させ、屋外と屋内とを貫通するような座板とガイドレールとの隙間を塞ぎ、防火性能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るシャッター装置の防火構造を備えたシャッター装置の外観を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示した座板の一方の端における一部分を切り欠いた要部拡大正面図である。
【
図3】
図2に示した座板の一方の端における平断面図である。
【
図4】
図2に示した座板の一方の端における側断面図である。
【
図5】(a)は加熱発泡材が支持片部に設けられた支持部材の正面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図6】(a)は加熱発泡材が垂直板部に設けられた支持部材の正面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図7】(a)は加熱発泡材が支持片部及び垂直板部に設けられた支持部材の正面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図8】(a)は加熱発泡材が挟まれた戸当たり部材と座板の正面図、(b)は(a)の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るシャッター装置の防火構造を備えたシャッター装置11の外観を表す斜視図である。
本実施の形態に係るシャッター装置の防火構造は、例えば住宅の窓部分となる開口部13を覆うシャッター装置11に好適に用いることができる。住宅の外壁15には、開口部13が設けられる。この開口部13には、サッシ窓17が取り付けられる。シャッター装置11は、サッシ窓17の屋外側である外側に取り付けられる。サッシ窓17の取り付けられた開口部13の上方には、シャッター装置11の収納部19が取り付けられる。
【0015】
収納部19は、巻取装置(図示略)を収納している。巻取装置は、例えば巻胴を有し、この巻胴は、両端に設けられる支持軸によって回動自在に支持される。巻胴には、シャッターカーテン21の繰出方向後端である吊元が固定される。巻胴の一端には、開閉機(駆動モータ)が接続される。巻胴は、開閉機が駆動されると、その回転が減速され、巻取り・繰り出し方向へ回転駆動される。収納部19には、シャッターカーテン21を巻き取り方向に付勢するばねが設けられている。シャッターカーテン21は、開口部13を閉鎖した状態で吊り持ち支持される重量の一部分が、このばねにより軽減される。
【0016】
本実施の形態に係るシャッター装置の防火構造は、シャッターカーテン21と、ガイドレール23と、支持部材25と、を主要な構成として有する。
【0017】
シャッターカーテン21は、外壁15に開口する開口部13を外壁15の外側で昇降して覆う。つまり、シャッターカーテン21は、サッシ窓17を外壁15の外側から覆う。シャッターカーテン21は、アルミニウムなどの金属製のスラット27を複数連結して構成される。
【0018】
シャッターカーテン21は、複数のスラット27が、隣接する長手方向に沿う上下両端縁同士を係合することにより、巻回可能な面状に連結構成される。シャッターカーテン21は、繰り出し方向の先端である下降先端に、座板29(幅木とも称す。)が取り付けられる。座板29は、シャッターカーテン21が下降した際、下枠31に、後述の支持部材25を介して着座する。この座板29の近傍には、巻き上げられたシャッターカーテン21の収納部19への引き込みを規制するための戸当たり部材33(
図2)が設けられてもよい。
【0019】
ガイドレール23は、シャッターカーテン21を挟んで、開口部13の左右に一対が設けられる。ガイドレール23は、シャッターカーテン21の昇降方向に延在するとともに、シャッターカーテン21のそれぞれの側部35をスリット37(
図3)に挿入することにより表裏面から挟んで案内する。
【0020】
図2は、
図1に示した座板29の一方の端における一部分を切り欠いた要部拡大正面図である。
それぞれのガイドレール23は、ガイドレール23に沿って上下に延在するアルミ製の外枠39により支持される。一対の外枠39の下端は、アルミ製の下枠31によって連結される。外枠39,ガイドレール23,下枠31は、シャッター枠部41を構成する。シャッター枠部41は、下枠31の端と、外枠39の下端との交わる角部である外隅部分が樹脂製等のキャップ43により覆われる。
【0021】
シャッターカーテン21は、側部35がガイドレール23のスリット37に挿入される。シャッターカーテン21は、下降先端に座板29を有する。従って、シャッターカーテン21は、この座板29の端もスリット37に挿入される。シャッターカーテン21の側部35は、スリット37の開口内面に設けられるモヘア等の緩衝部材45により接触音や摺動音の発生が抑制される。
【0022】
座板29には、延在方向の略中央部に施解錠装置47(
図4)が設けられる。施解錠装置47は、屋内側に設けられた操作部が操作されることにより、座板29の両端から鍵バー49を進退させて施解錠を可能とする。
【0023】
それぞれのガイドレール23における下端の内方には、支持部材25が設けられる。支持部材25は、垂直板部51とこの垂直板部51に垂直に接続する支持片部53とにより形成される。左右のガイドレール23に固定されたそれぞれの支持部材25は、開口部13を屋外側から見た正面視において、略L字状・略逆L字状となる。
【0024】
支持部材25は、ガイドレール23におけるスリット37に対向する外側垂直壁部55の内面に、垂直板部51が固定される。固定は、例えばリベット57等により行うことができる。支持片部53は、垂直板部51の下端で垂直に接続することにより、座板29の延在方向両端を載置する。つまり、支持片部53は、座板29と下枠31との間に介在して座板29を支持する。換言すれば、座板29の両端は、下枠31と支持片部53との積層板構造により支持される。
【0025】
本実施の形態において、支持部材25は、垂直板部51に鍵受け59を有する。鍵受け59は、底辺部が係止面61となる三角形状の楔状曲げ部として垂直板部51に形成することができる。鍵受け59は、施錠時に座板29の端から進出する施解錠装置47における鍵バー49の直上に配置される。これにより、鍵受け59は、シャッターカーテン21の上昇を規制して、シャッターカーテン21を閉鎖状態に施錠することができる。
【0026】
図3は、
図2に示した座板29の一方の端における平断面図である。
外壁15の開口部13には、例えばサッシ枠63が取り付けられる。このサッシ枠63には、外枠39がねじ65により固定される。外枠39には、ねじ65によりガイドレール23が固定される。ここで、ガイドレール23の外面には、補強用鋼板67が重ねられている。アルミ製のガイドレール23は、補強用鋼板67により外面の一部が覆われることにより強度が高められている。支持部材25の垂直板部51が固定されるガイドレール23の外側垂直壁部55も、外面に補強用鋼板67が配置される。支持部材25の垂直板部51は、この補強用鋼板67と外側垂直壁部55を貫通するリベット57により固定される。
【0027】
図4は、
図2に示した座板29の一方の端における側断面図である。
開口部13に固定されるサッシ枠63には、下枠31が連結される。下枠31は、サッシ枠63と反対側に延出して座板29の延在方向に沿う前傾底板69を有する。前傾底板69の延出先端には、起立片部71が設けられる。ガイドレール23の外側垂直壁部55の内面に垂直板部51が固定された支持部材25は、支持片部53が前傾底板69と平行となってこの前傾底板69に密接する。つまり、支持片部53は、水平面に対して前傾角度θ(
図5参照)を有して前傾底板69と同一の前傾角度で傾斜している。座板29は、この前傾した支持片部53の上面に、垂下片部73が載置される。従って、座板29の両端は、積層されて高い強度が確保された下枠31と支持片部53とにより支持される。
【0028】
図5(a)は、加熱発泡材75が支持片部53に設けられた支持部材25の正面図、(b)は(a)の側面図である。
シャッター装置の防火構造は、座板29に対向する支持部材25の対向面に、加熱発泡材75が設けられてもよい。支持部材25は、垂直板部51に上記した鍵受け59が突設される。鍵受け59を挟む垂直板部51の上下には、垂直板部51をガイドレール23の外側垂直壁部55にリベット固定するための固定穴77が穿設される。加熱発泡材75は、例えば垂直板部51の下端で垂直に折り曲げられた支持片部53の上面に、この支持片部53と略同面積で貼着される。加熱発泡材75は、火炎等により所定温度、例えば300~400℃に加熱されることで膨張して座板29と支持部材25との間に断熱性を有して挟入状態となる。なお、挟入状態とは、膨張した加熱発泡材75が、座板29と支持片部53との間、及び座板29と垂直板部51との間に挟まれて、充満して入った状態をいう。
【0029】
図6(a)は、加熱発泡材75が垂直板部51に設けられた支持部材25の正面図、(b)は(a)の側面図である。
また、加熱発泡材75は、支持部材25の垂直板部51のみに貼着されてもよい、この場合、加熱発泡材75は、鍵受け59よりも下方に設けられる。
【0030】
図7(a)は、加熱発泡材75が支持片部53及び垂直板部51に設けられた支持部材25の正面図、(b)は(a)の側面図である。
また、加熱発泡材75は、支持部材25の支持片部53と垂直板部51との双方に貼着されてもよい。この例では、加熱発泡材75は、L字形状となって貼着される。支持片部53と垂直板部51との双方に貼着された加熱発泡材75は、十分な膨張容積が得られ、ガイドレール23の下端の内方で、座板29の周囲を埋入することが可能となる。
【0031】
図8(a)は、加熱発泡材75が挟まれた戸当たり部材33と座板29の正面図、(b)は(a)の側断面図である。
さらに、加熱発泡材75は、戸当たり部材33と座板29との間に設けられてもよい。戸当たり部材33は、樹脂材料からなる。戸当たり部材33は、屋外側に取り付けられるため、外部からの火炎により溶融或いは燃えやすい。つまり、戸当たり部材33は、熱により脱落するおそれがある。そして、この戸当り部材33は、座板29に対してネジ79にて固定される。ネジ79は、座板29を貫通するネジ穴に螺着され、すなわちネジ穴が座板29を挟んだ内外で貫通することとなる。このような樹脂部材と座板29の間に、加熱発泡材75を挟入することにより、延焼時の火炎で戸当たり部材33を座板29から脱落するようなことがある場合に、ネジ穴が表出しないように加熱発泡材75が穴を閉塞して、耐火性能を低下させない。
【0032】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施の形態に係るシャッター装置の防火構造では、シャッターカーテン21の左右両側の側部35が、開口部13を挟んで両側の外壁15に設けられたガイドレール23に案内される。ガイドレール23は、例えばアルミ製となる。ガイドレール23は、略角筒状に形成され、対向する垂直な壁部にスリット37が上下方向に形成される。ガイドレール23は、このスリット37にシャッターカーテン21の側部35を挿入してシャッターカーテン21の昇降を案内する。従って、シャッターカーテン21は、下降先端に設けられた座板29の延在方向両端とともにシャッターカーテン21の側部35が、ガイドレール23の内方に挿入される。
【0033】
ガイドレール23の下端の内方には、支持部材25が固定される。左右の支持部材25は、例えば開口部13を屋外側から見た正面視において、略L字状・略逆L字状で形成される。この支持部材25は、ガイドレール23などを構成するアルミニウムよりも耐火温度の高い鋼材により形成される。ガイドレール23は、スリット37に対向する面が、外側垂直壁部55の内面となる。支持部材25は、略L字状・略逆L字状に形成された直交二片のうち、垂直板部51が外側垂直壁部55の内面に固定される。従って、外側垂直壁部55の内面に垂直板部51が固定された支持部材25は、垂直板部51の下端で直交して曲げられる支持片部53が、ガイドレール23の内方においてスリット37に向かって水平に突出する。一対のガイドレール23の下端に固定された支持片部53は、スリット37に挿入されたシャッターカーテン21の座板29の延在方向両端を載置する。つまり、支持片部53は、シャッターカーテン21の荷重を座板29の延在方向両端で支持することができる。
【0034】
従来構造では、シャッターが火炎を受けると、巻取り部のばねが巻き上げ方向のトルクを失うことで降下方向に荷重がかかる。アルミ製の下枠31も熱によって変形しやすくなる。そのため、シャッターカーテン全体の重みを下枠31が支えきれなくなる虞があった。一方、特許文献1に開示される技術のように、座板29と下枠31とを引っ掛けてカーテンの脱落や落下を防ぐ構成では、シャッターカーテン21が前方に膨らみ(倒れ)、それにより生じた側方の隙間から外部の火炎がシャッターカーテン21の屋内側へ侵入する虞が生じた。
【0035】
これに対し、このシャッター装置の防火構造では、シャッターカーテン21の下端が、ガイドレール23の内方において、支持部材25の支持片部53に載置されて荷重を垂直方向で受ける。シャッターカーテン21の荷重を下枠31のみで支えることを軽減させることができる。これにより、火炎により軟化しやすい下枠31に比べ、高強度の支持部材25でシャッターカーテン21の荷重を支持できる。そして、シャッターカーテン21を垂直に支えることができるので、シャッターカーテン21が前方に倒れ、屋外方向に膨らむことがなく、側方に生じてしまう隙間より火炎が侵入して延焼することがない。その結果、火炎により下枠31が変形しても、ガイドレール23の下端に設けられた支持部材25が支えることによって座板29の脱落を抑制し、シャッター装置11としての防火性能を向上させることができる。
【0036】
また、このシャッター装置の防火構造では、支持部材25の垂直板部51に、鍵受け59がスリット37に向かって突設される。座板29には、施解錠装置47が設けられる。施解錠装置47は、座板29の側部35から垂直板部51に向かって鍵バー49を進退させる。鍵受け59は、シャッターカーテン21の閉鎖時、施解錠装置47から進出した鍵バー49の直上に配置される。従って、施解錠装置47により施錠されたシャッターカーテン21は、座板29から突出した鍵バー49が、直上の鍵受け59に衝接することにより、上昇、すなわち、開放が規制される。
【0037】
そして、このシャッター装置の防火構造では、この鍵受け59が、支持部材25の垂直板部51に一体的に形成される。鍵受け59は、具体的には、垂直板部51に、下面が係止面61となる三角形状の楔状曲げ部を曲げ加工することにより支持部材25と一体に設けられる。従って、支持部材25は、支持片部53によるシャッターカーテン21の荷重受け機能と、鍵受け59による鍵バー49の係止機能との双方を有することとなる。
【0038】
このシャッター装置の防火構造では、支持部材25が鍵受け59を有するので、上記した作用のように、火炎により下枠31が変形しても、ガイドレール23の下端に設けられた支持部材25が支えることによって座板29を含むシャッターカーテン21の脱落を抑制できるとともに、通常時には、支持部材25が鍵バー49の係止部としても機能する。つまり、支持部材25は、シャッターカーテン21の荷重受け部材になるとともに、施解錠装置47の鍵受け部材ともなる。その結果、支持部材25を鍵受け59と兼用させた部材にでき、部品点数、作業工数を減らし、取付作業を簡略化できる。
【0039】
また、このシャッター装置の防火構造では、座板29に対向する支持部材25の対向面に、加熱発泡材75が設けられる。加熱発泡材75は、ガイドレール23の内方に配置される。加熱発泡材75は、火炎等により所定温度に加熱されると、膨張して座板29と支持部材25との間に断熱性を有して挟入状態となる。ガイドレール23の内方に収容された加熱発泡材75は、所定温度(例えば300~400℃)に達すると、体積が5~40倍に膨張する。加熱発泡材75は、膨張することによりガイドレール23の下端の内方に断熱層を形成する。
【0040】
ガイドレール23の下端の内方には、空間が形成されている。ガイドレール23の内方は、本来、空気層により断熱されているが、火災等の高温においては、加熱された座板29からの熱伝達及び輻射により空気を介した熱の移動量は増大する。本発明のシャッター装置の防火構造では、この空間に加熱発泡材75による断熱層が設けられることにより、空気による断熱よりも熱伝達及び輻射による熱の移動を抑制できる。これにより、シャッター装置の防火構造は、空気層のみが介在する場合に比べ、座板29よりも屋内側に配置される部材の温度の上昇を遅延させることができる。その結果、火炎により加熱発泡材75を膨張させ、屋外と屋内とを貫通するような座板29とガイドレール23との隙間を塞ぎ、防火性能をさらに向上させることができる。
【0041】
従って、本実施の形態に係るシャッター装置の防火構造によれば、火炎により下枠31が変形しても、ガイドレール23の下端に設けられた支持部材25が支えることによって座板29の脱落を抑制し、シャッター装置11としての防火性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
11…シャッター装置
13…開口部
15…外壁
21…シャッターカーテン
23…ガイドレール
25…支持部材
29…座板
35…側部
37…スリット
47…施解錠装置
49…鍵バー
51…垂直板部
53…支持片部
55…外側垂直壁部
59…鍵受け
75…加熱発泡材