IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧

特許7449712ランキンサイクル装置およびその運転方法
<>
  • 特許-ランキンサイクル装置およびその運転方法 図1
  • 特許-ランキンサイクル装置およびその運転方法 図2
  • 特許-ランキンサイクル装置およびその運転方法 図3
  • 特許-ランキンサイクル装置およびその運転方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ランキンサイクル装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/10 20060101AFI20240307BHJP
   F01D 17/08 20060101ALI20240307BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F01D25/10 C
F01D17/08 A
F01D17/00 J
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020025944
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131049
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅也
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲英
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287433(JP,A)
【文献】特開2015-078685(JP,A)
【文献】特開2016-121665(JP,A)
【文献】特開2007-009897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D17/00-21/20
F01D25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体が流れ、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続し、弁が設けられたバイパス流路と、を備え、
前記作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加する、ランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記作動流体の温度が前記閾値温度を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加し、
前記閾値温度は、前記作動流体の分解温度未満の値である、請求項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記閾値温度と前記分解温度の差は、80℃以下である、請求項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記作動流体の圧力が前記閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加し、
前記作動流体の圧力が前記閾値圧力であるときの前記作動流体の飽和温度は、前記作動流体の分解温度未満である、請求項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記飽和温度と前記分解温度の差は、170℃以下である、請求項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項6】
前記主流路における前記蒸発器の入口よりも下流側かつ前記膨張機の入口よりも上流側の部分である特定部分における前記作動流体の温度が前記閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記特定部分における前記作動流体の圧力が前記閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加する、請求項からのいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項7】
前記作動流体の温度が前記閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が前記閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加するとともに、前記ポンプの回転数が増加する、請求項からのいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項8】
前記ランキンサイクル装置は、前記作動流体と熱交換するべき冷却媒体を前記凝縮器に送り込むファンをさらに備え、
前記作動流体の温度が前記閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が前記閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加するとともに、前記ファンの回転数が増加する、請求項からのいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項9】
ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体が流れ、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続し、弁が設けられたバイパス流路と、を備え、
前記作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記弁の開度が大きくなる、ランキンサイクル装置。
【請求項10】
前記バイパス流路は、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記膨張機よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続する、請求項1からのいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項11】
ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体が流れ、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続し、弁が設けられたバイパス流路と、を備え、
前記バイパス流路は、前記主流路における前記膨張機よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続する、ランキンサイクル装置。
【請求項12】
筐体と、
前記筐体内の空間を、前記膨張機を収容する第1空間と、前記凝縮器および前記弁を収容する第2空間と、に仕切る仕切りと、を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項13】
前記作動流体は、フッ素化合物である、請求項1から12のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項14】
前記ランキンサイクル装置は、前記ランキンサイクル装置の外部から前記蒸発器に排気ガスを導く排熱流路を備え、
前記排熱流路内に、前記蒸発器が設けられている、請求項1から13のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項15】
第1モードにおいて、主流路において、ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体を流すことと、
第2モードにおいて、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分から、バイパス流路を経由して、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分へと、前記作動流体を流すことと、を含み、
前記主流路において、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられており、
前記作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記バイパス流路における前記作動流体の流量が増加する、ランキンサイクル装置の運転方法。
【請求項16】
第1モードにおいて、主流路において、ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体を流すことと、
第2モードにおいて、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分から、弁が設けられたバイパス流路を経由して、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分へと、前記作動流体を流すことと、を含み、
前記主流路において、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられており、
前記作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または前記作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、前記弁の開度が大きくなる、ランキンサイクル装置の運転方法。
【請求項17】
第1モードにおいて、主流路において、ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体を流すことと、
第2モードにおいて、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分から、バイパス流路を経由して、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分へと、前記作動流体を流すことと、を含み、
前記主流路において、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられており、
前記バイパス流路は、前記主流路における前記膨張機よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続する、ランキンサイクル装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランキンサイクル装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置に関する種々の検討がなされている。特許文献1および2には、ランキンサイクル装置が開示されている。
【0003】
特許文献1のランキンサイクル装置は、膨張機、凝縮器、ポンプおよび蒸発器を備えている。作動流体は、これらの構成要素を上記の順番で循環する。
【0004】
特許文献1のランキンサイクル装置は、さらに、再熱器を備えている。再熱器において、膨張機から吐出された作動流体の熱エネルギーが、ポンプから吐出された作動流体に伝えられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-78685号公報
【文献】特開2007-9897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、再熱器を備えたランキンサイクル装置において、信頼性を確保するのに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるランキンサイクル装置は、
ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体が流れ、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分と、を接続し、弁が設けられたバイパス流路と、を備える。
【0008】
本開示のランキンサイクル装置の運転方法は、
第1モードにおいて、主流路において、ポンプと、第1部分と、蒸発器と、膨張機と、第2部分と、凝縮器と、をこの順に作動流体を流すことと、ここで、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている、
第2モードにおいて、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記第2部分よりも上流側の部分から、バイパス流路を経由して、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分へと、前記作動流体を流すことと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、再熱器を備えたランキンサイクル装置において、信頼性を確保するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるランキンサイクル装置を示す図
図2】実施の形態1における空冷ユニットの構成図
図3】実施の形態2におけるランキンサイクル装置を示す図
図4】実施の形態3におけるランキンサイクル装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、膨張機、凝縮器、ポンプおよび蒸発器がこの順に接続されているとともに、再熱器が設けられたランキンサイクル装置があった。特許文献1には、そのようなランキンサイクル装置が開示されている。
【0012】
蒸発器において、熱源からの熱源流体と、作動流体とが熱交換する。これにより、作動流体が加熱される。そして、蒸発器から高温の作動流体が流出する。
【0013】
再熱器において、膨張機から吐出された作動流体の熱エネルギーが、ポンプから吐出された作動流体に伝えられ得る。このようにすれは、蒸発器に流入する作動流体の温度を高めることができる。このことは、ランキンサイクル装置の運転効率を向上させ得る。
【0014】
しかしながら、蒸発器に流入する作動流体の温度が高いと、蒸発器から流出する高温作動流体の温度も高くなり易い。定常運転における高温作動流体の温度を高めると、安全性が低下し得る。具体的には、熱源の過渡変動により熱源流体の温度が過渡的に上昇し、蒸発器から流出する高温作動流体の温度が高い温度を基準にさらに上昇し得る。このようにして作動流体の温度が過度に上昇すると、作動流体は分解し得る。また、作動流体の温度が上昇すると、作動流体の圧力も上昇する傾向にある。作動流体の圧力が過度に上昇することもまた、ランキンサイクル装置の安全性を低下させ得る。
【0015】
このように、再熱器は、ランキンサイクル装置の運転効率を向上させるというメリットをもたらし得る。一方で、再熱器は、ランキンサイクル装置の信頼性を低下させるというデメリットももたらし得る。
【0016】
再熱器を用いる技術に、作動流体の温度を高めるための他の技術が組み合わされることがある。例えば、特許文献1のランキンサイクル装置では、工場の排気ダクトに蒸発器が配置されている。そのため、排気ガスの熱が作動流体に直接的に与えられる。一方、特許文献2のランキンサイクル装置では、廃熱が冷却水を介して作動流体に間接的に与えられる。作動流体に熱を直接的に与える場合は、作動流体に熱を間接的に与える場合に比べ、作動流体の温度を高め易い。再熱器を用いる技術と作動流体に熱を直接的に与える技術とを組み合わせると、蒸発器から流出する高温作動流体の温度を高め易い。この組み合わせを行うと、上記のメリットのみならずデメリットも大きくなり得る。
【0017】
本発明者らは、上記のように、再熱器が設けられたランキンサイクル装置には、運転効率の向上と信頼性の確保との間にトレードオフの関係があることを見出した。このトレードオフの関係は、再熱器が設けられているとともに蒸発器において作動流体に熱が直接的に与えられるランキンサイクル装置においては、顕在化し得る。そこで、本発明者らは、運転効率の向上と信頼性の確保とを高いレベルで両立させ得る技術を検討した。
【0018】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0019】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0021】
[1-1.構成]
図1において、ランキンサイクル装置50は、主流路F1と、バイパス流路F2と、熱源流路9と、制御器12と、ファン6と、を備えている。主流路F1およびバイパス流路F2には、作動流体が流れる。熱源流路9には、熱源Sからの熱源流体Gが流れる。
【0022】
主流路F1は、ポンプ1と、再熱器2と、蒸発器3と、膨張機4と、凝縮器5と、を有している。再熱器2は、第1部分2aと、第2部分2bと、を含んでいる。再熱器2において、第1部分2aおよび第2部分2bは、互いを流れる作動流体の間で熱交換がなされるように構成されている。
【0023】
主流路F1において、ポンプ1と、第1部分2aと、蒸発器3と、膨張機4と、第2部分2bと、凝縮器5とを、この順に作動流体が流れる。再熱器2において、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体とが熱交換する。主流路F1において、ポンプ1と、第1部分2aと、蒸発器3と、膨張機4と、第2部分2bと、凝縮器5とは、配管によって環状にこの順で接続されている。
【0024】
バイパス流路F2は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ第2部分2bよりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続している。具体的には、バイパス流路F2は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続している。
【0025】
バイパス流路F2は、弁8を有している。
【0026】
熱源流路9は、熱源Sから蒸発器3に熱源流体Gを導く。熱源Sは、ランキンサイクル装置50の外部に設けられている。図1の例では、熱源流路9内に、蒸発器3が設けられている。
【0027】
具体的には、熱源Sは、工場、焼却炉等の施設である。熱源流体Gは、排気ガスである。熱源流路9は、排熱流路であり、具体的には排気ダクトである。蒸発器3は、排熱エネルギーを回収する熱交換器である。
【0028】
以下、ランキンサイクル装置50の各構成要素について説明する。
【0029】
ポンプ1は、作動流体を吸い込んで圧送する。本実施の形態では、ポンプ1は、容積型のギヤポンプである。
【0030】
蒸発器3は、熱源流体Gの熱エネルギーを回収する熱交換器である。作動流体は、蒸発器3において、熱源流体Gによって加熱され、蒸発する。蒸発器3は、本実施の形態では、フィンチューブ式熱交換器である。
【0031】
膨張機4は、作動流体を膨張させて減圧させる。膨張機4は、作動流体を膨張させることによって、作動流体の膨張エネルギーを回転動力に変換する。膨張機4の回転軸には、発電機25(図2参照)が接続されている。膨張機4の回転によって発電機25が駆動される。こうして、発電が行われる。本実施の形態では、膨張機4は、容積型のレシプロ式の膨張機である。なお、図1では、発電機25の図示は省略されている。
【0032】
再熱器2は、ポンプ1から吐出された作動流体と膨張機4から吐出された作動流体を熱交換させる。これにより、ポンプ1から吐出された作動流体は加熱され、膨張機4から吐出された作動流体は冷却される。本実施の形態では、再熱器2は、プレート式熱交換器である。プレート式熱交換器の一具体例では、金属プレートが複数枚積層されている。
【0033】
凝縮器5は、作動流体と外気を熱交換させることによって、作動流体を冷却して凝縮し、外気へ熱を放出する。外気はファン6によって凝縮器5へ送り込まれる。本実施の形態では、凝縮器5は、空冷式のフィンチューブ熱交換器である。
【0034】
弁8の開度に応じて、膨張機4へ流れる作動流体の流量とバイパス流路F2へ流れる作動流体の流量とが制御される。弁8は、作動流体の温度に基づき開閉する開閉弁である。
【0035】
本実施の形態では、弁8は、弁8における作動流体の温度に基づいて開閉する機械的な弁である。弁8は、センサレスで動作し得る。
【0036】
本実施の形態では、弁8は、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇したときに、その開度が大きくなる。ここで、閾値温度をTthとし、作動流体の分解温度をTdとする。このとき、本実施の形態ではTth≦Tdであり、具体的にはTth<Tdであり、より具体的にはTd-80℃≦Tth<Tdである。一具体例では、閾値温度Tthは、200℃である。ただし、閾値温度は特に限定されない。
【0037】
本実施の形態の変形例では、弁8は、作動流体の圧力に基づき開閉する開閉弁である。この変形例において、弁8は、弁8における作動流体の圧力に基づいて開閉する機械的な弁であってもよい。
【0038】
上記の変形例において、弁8は、作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、その開度が大きくなるものであってもよい。ここで、閾値圧力をPthとし、作動流体の圧力が閾値圧力Pthであるときの作動流体の飽和温度をTsatとし、作動流体の分解温度をTdとする。このとき、この変形例では、Tsat≦Tdであってもよく、Tsat<Tdであってもよく、Td-170℃≦Tsat<Tdであってもよい。一具体例では、閾値圧力は3MPaである。ただし、閾値圧力は特に限定されない。
【0039】
制御器12は、ポンプ1の回転数、ファン6の回転数等の、ランキンサイクル装置50の要素を制御する。
【0040】
本実施の形態では、作動流体は、フッ素化合物である。本実施の形態では、具体的には、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。HFO1336mzz(E)の分解温度は、250℃である。
【0041】
本実施の形態では、ランキンサイクル装置50において、図2に示す空冷ユニット35が構成されている。空冷ユニット35は、膨張機4、発電機25、凝縮器5、ファン6、ポンプ1、再熱器2、制御器12および筐体30を備えている。膨張機4、発電機25、凝縮器5、ポンプ1、再熱器2および制御器12は、筐体30に収納されている。蒸発器3は、空冷ユニット35の外部に設けられている。
【0042】
空冷ユニット35は、第1仕切り13と、第2仕切り14と、を有している。第1仕切り13は、筐体30内の空間を、第1空間15と、第2空間16と、に仕切っている。第1仕切り13は、筐体30内の空間を、第3空間17と、第2空間16と、に仕切っている。第2仕切り14は、筐体30内の空間を、第1空間15と、第3空間17と、に仕切っている。このように、第1仕切り13および第2仕切り14により、筐体30内の空間が、第1空間15と、第2空間16と、第3空間17と、に仕切られている。
【0043】
第1空間15には、膨張機4、発電機25および再熱器2が収容されている。第2空間16には、凝縮器5および弁8が収容されている。第3空間17には、ポンプ1および制御器12が収容されている。
【0044】
第1仕切り13は、第1空間15と、第2空間16との間の熱移動を抑制する。これにより、膨張機4が凝縮器5あるいはその周辺雰囲気により冷やされ難くなり、膨張機4で回収される熱エネルギーが減少し難くなり、発電量が減少し難くなる。このことは、ランキンサイクル装置50の運転効率を向上させ得る。また、上記熱移動が抑制されることにより、凝縮器5に供給される外気温度が上昇し難くなり、凝縮器5が作動流体を冷却する能力を確保し易くなる。これにより、凝縮器5における作動流体の圧力が上昇し難くなり、すなわちランキンサイクル装置50の低圧側の圧力が上昇し難くなる。これにより、高圧側の圧力も上昇し難くなり、圧力制御の必要性に伴う制約が小さくなって制御の自由度が高まり、ランキンサイクル装置50を高効率に運転し易くなる。
【0045】
弁8は、第1空間15ではなく第2空間16に配置されている。このため、弁8は、相対的に高温の膨張機4あるいはその周辺雰囲気からよりも、相対的に低温の凝縮器5あるいはその周辺雰囲気からの影響を受け易い。このため、弁8の温度は、上昇し難く、弁8の耐熱温度を超え難い。
【0046】
第2仕切り14は、第1空間15と、第3空間17との間の熱移動を抑制する。これにより、膨張機4がポンプ1あるいはその周辺雰囲気により冷やされ難くなる。また、上記熱移動が抑制されることにより、ポンプ1の入口の作動流体の過冷却度が低下し難くなる。これにより、ポンプ1の入口で作動流体が液相状態から気液二相状態に変化し難くなり、ポンプ1の入口でキャビテーションが発生したりポンプ1の動作が不安定になったりし難くなる。
【0047】
第1仕切り13は、例えば、板状の部材である。第1仕切り13の材料は、金属、樹脂、セラミック等の公知の材料である。第1仕切り13を構成し得る金属として、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。これらの点は、第2仕切り14についても同様である。
【0048】
第1仕切り13は、望ましくは、第1空間15と第2空間16の間および第3空間17と第2空間16の間を連通する穴、隙間等の通路が存在しないように、筐体30の内部空間を完全に仕切っている。しかし、部品の配置等の設計上の都合により、第1空間15と第2空間16とが第1仕切り13によって完全に隔てられていなくてもよく、第3空間17と第2空間16とが第1仕切り13によって完全に隔てられていなくてもよい。これらの点は、第2仕切り14についても同様である。
【0049】
[1-2.動作]
以上のように構成されたランキンサイクル装置50について、以下、その動作および作用を、図1を用いて説明する。
【0050】
弁8が閉口している状態において、作動流体は、以下のように振舞う。ポンプ1により、作動流体は、吸い込まれ、加圧される。ポンプ1から吐出された作動流体は、再熱器2の第1部分2aに流入する。第1部分2aから流出した作動流体は、蒸発器3に流入する。蒸発器3において、作動流体は、熱源流体Gから熱を受け取って蒸発し、過熱状態の気相の作動流体へと変化する。高温かつ気相の作動流体は、膨張機4へと送られる。膨張機4において、作動流体の圧力エネルギーが機械エネルギーに変換され、発電機25(図2参照)において電力が生成される。膨張機4から吐出され低圧となった作動流体は、再熱器2の第2部分2bに流入する。再熱器2の第2部分2bから流出した作動流体は凝縮器5に流入する。作動流体は、凝縮器5おいて、外気によって冷却され、凝縮する。凝縮した作動流体はポンプ1によって加圧され、再び蒸発器3に送られる。
【0051】
弁8が閉口している状態において、再熱器2では、ポンプ1から吐出された作動流体と膨張機4から吐出された作動流体の熱交換が行われる。ポンプ1から吐出された作動流体は、膨張機4から吐出された作動流体によって加熱され、膨張機4から吐出された作動流体はポンプ1から吐出された作動流体によって冷却される。
【0052】
主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分における作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇したときに、弁8が開口される。これにより、作動流体が、バイパス流路F2を流れ、これにより膨張機4および第2部分2bをバイパスするようになる。本実施の形態では、閾値温度は、作動流体の分解温度よりも低い。
【0053】
弁8が開口している状態において、膨張機4へ流れた一部の作動流体は、再熱器2の第2部分2bで冷却され、その後、バイパス流路F2を流れた作動流体と合流する。合流後、作動流体は、凝縮器5で冷却され、ポンプ1で圧送され、再熱器2の第1部分2aで加熱され、その後、蒸発器3へ流れる。
【0054】
ただし、弁8が閉口している状態に比べ、弁8が開口している状態においては、第2部分2bを流れる作動流体の流量は小さい。そのため、弁8が閉口している状態に比べ、弁8が開口している状態においては、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量は小さい。そのため、弁8が開口している状態において、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅は抑制される。このため、蒸発器3に温度が低い作動流体を供給し易い。
【0055】
典型例では、弁8が開口している状態において、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量に比べて小さい。一具体例では、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量の0%以上30%以下であり、0%以上20%以下であってもよく、0%以上10%以下であってもよい。第2部分2bを流れる作動流体の流量は、実質的にゼロであってもよく、ゼロであってもよい。
【0056】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態では、作動流体の温度が閾値温度未満である場合、弁8が閉口している。この場合、バイパス流路F2に作動流体は流れない。つまり、蒸発器3から流出した作動流体は、膨張機4および再熱器2を経由して凝縮器5に導かれる。これにより、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量が確保される。このことは、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅を稼ぎ易く、蒸発器3に供給される作動流体の温度を高め易いことを意味する。このようにすることは、ランキンサイクル装置50の運転効率を向上させる観点から有利である。
【0057】
一方、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇した場合、弁8が開口される。これにより、バイパス流路F2に作動流体が流れるようになる。つまり、蒸発器3から流出した作動流体が、膨張機4および再熱器2を経由せず凝縮器5に導かれる経路が形成される。これにより、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量が抑制される。このことは、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅が抑制され易く、蒸発器3に温度が低い作動流体を供給し易くなることを意味する。
【0058】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態によれば、再熱器2における熱交換により、ランキンサイクル装置50の運転効率が向上し得る。一方、バイパス流路F2によれば、作動流体の温度が過度に上昇した場合あるいは過度に上昇しつつある場合において、再熱器2による作動流体の温度上昇作用を抑制し、作動流体温度を速やかに低下させることができる。そのため、バイパス流路F2により、信頼性が向上し得る。
【0059】
熱源Sの過渡変動により、熱源流体Gの温度が過渡的に上昇し得る。熱源流体Gの温度が過渡的に上昇すると、これに追随して蒸発器3から流出する作動流体の温度も過渡的に上昇し得る。例えば、熱源Sが工場、焼却炉等の施設である場合、ファン等の不具合によって、上記のような過渡変動が生じ得る。熱源Sにおいて、熱源Sの過渡変動を抑える制御を行うことは可能である。しかしながら、制御遅れ等を考慮すると、熱源Sにおける制御により熱源Sの過渡変動を完全に抑えるのは必ずしも容易ではない。この点、本実施の形態によれば、熱源流体Gの温度が過渡的に上昇しこれに追随して蒸発器3から流出する作動流体の温度が上昇しても、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0060】
本実施の形態では、作動流体の温度が作動流体の分解温度未満のときに、弁8が開口する。このようにすれば、作動流体の温度が作動流体の分解温度以上になり難く、そのため作動流体が分解し難い。
【0061】
以上のように、本実施の形態のランキンサイクル装置50は、主流路F1と、バイパス流路F2と、を備えている。主流路F1では、ポンプ1と、第1部分2aと、蒸発器3と、膨張機4と、第2部分2bと、凝縮器5と、をこの順に作動流体が流れる。主流路F1では、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体とが熱交換する再熱器2が設けられている。バイパス流路F2は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ第2部分2bよりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続している。バイパス流路F2には、弁8が設けられている。本実施の形態に係る技術は、再熱器2を備えたランキンサイクル装置50において、信頼性を確保するのに適している。
【0062】
上述の「バイパス流路F2には、弁8が設けられている」という表現について説明する。この表現において、弁8は、開閉弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。また、この表現において、弁8は、バイパス流路F2の入口に設けられた三方弁であってもよく、バイパス流路F2の出口に設けられた三方弁であってもよい。弁8が流量調整弁である形態および三方弁である形態の詳細は、後述する。
【0063】
また、本実施の形態において、バイパス流路F2は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続していてもよい。このようにすれば、弁8の開度が非ゼロであるときに、第2部分2bに作動流体が流れることを膨張機4により制限しながら、バイパス流路F2に作動流体を流すことができる。このようにすれば、第2部分2bにおける作動流体の流量を小さい値またはゼロにし易い。また、このようにすれば、凝縮器5から流出した作動流体の温度が高まっているときに、その作動流体の全てが膨張機4に流れることを回避でき、膨張機4の熱による損傷およびこれに伴う発電機25の発電電力の低下が生じ難くなる。
【0064】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加してもよい。このような構成によれば、作動流体の温度および/または圧力が過度に上昇することを防止できる。
【0065】
作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇し「かつ」作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときという表現について説明する。この表現は、作動流体の温度および圧力が、作動流体の温度が閾値温度よりも高いという条件と作動流体の圧力が閾値圧力よりも高いという条件の両方が成立するに至るまで上昇したとき、ということを意味する。この表現は、前者の条件が成立するに至るタイミングと後者の条件が成立するに至るタイミングとが同じ場合のみならず異なる場合も包含することを意図したものである。これらのタイミングが異なる場合には、これらのタイミングのうち先ではなく後のタイミングが、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇し「かつ」作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに該当する。
【0066】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなってもよい。このような構成によれば、作動流体の温度および/または圧力が過度に上昇することを防止できる。
【0067】
上述の「弁8の開度が大きくなってもよい」という表現について説明する。弁8の開度が大きくなるとは、弁8が開閉弁である場合おいて弁8の状態が全閉状態から全開状態に遷移することを包含することを意図した表現である。弁8の開度が大きくなるとは、弁8が流量調整弁である場合おいて弁8の開度の増加幅が0%よりも大きく100%よりも小さい態様を包含することを意図した表現である。弁8の開度が大きくなるとは、弁8が流量調整弁である場合おいて大きくなる前の弁8の開度がゼロである態様のみならず非ゼロである態様を包含することを意図した表現である。また、弁8の開度が大きくなるとは、弁8が流量調整弁である場合おいて大きくなった後の弁8の開度が100%である態様のみならず100%未満である態様を包含することを意図した表現である。
【0068】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加してもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0069】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなってもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0070】
また、本実施の形態において、閾値温度と分解温度の差は、80℃以下であってもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が分解温度よりも十分に低いにも関わらずバイパス流路F2における作動流体の流量が増加することを防止し易く、再熱器2に基づく運転効率向上作用を享受し易い。
【0071】
閾値温度と分解温度の差は、70℃以下であってもよく、60℃以下であってもよい。閾値温度と分解温度の差は、20℃以上80℃以下であってもよく、30℃以上70℃以下であってもよく、40℃以上60℃以下であってもよい。一例では、閾値温度と分解温度の差は、50℃である。
【0072】
一具体例では、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。HFO1336mzz(E)の分解温度は、250℃である。ただし、HFO1336mzz(E)の特性変化は温度が220から230℃であるときから徐々に起こり始めるという報告がある。そこで、少し余裕をみて閾値温度を200℃とする。このようにすれば、HFO1336mzz(E)の分解のみならず特性変化が生じ難い。
【0073】
念のため断っておくが、閾値温度と分解温度の差が80℃以下である構成は、作動流体がHFO1336mzz(E)である場合以外においても採用され得る。この差が70℃以下である構成、この差が60℃以下である構成、この差が20℃以上80℃以下である構成、この差が30℃以上70℃以下である構成、この差が40℃以上60℃以下である構成、この差が50℃である構成についても、同様である。
【0074】
また、本実施の形態において、作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加してもよい。作動流体の圧力が閾値圧力であるときの作動流体の飽和温度は、作動流体の分解温度未満であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0075】
また、本実施の形態において、作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなってもよい。作動流体の圧力が閾値圧力であるときの作動流体の飽和温度は、作動流体の分解温度未満であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0076】
また、本実施の形態において、飽和温度と分解温度の差は、170℃以下であってもよい。このような構成によれば、作動流体の圧力が十分に低いにも関わらずバイパス流路F2における作動流体の流量が増加することを防止し易く、再熱器2に基づく運転効率向上作用を享受し易い。
【0077】
飽和温度と分解温度の差は、160℃以下であってもよく、150℃以下であってもよい。飽和温度と分解温度の差は、110℃以上170℃以下であってもよく、120℃以上160℃以下であってもよく、130℃以上150℃以下であってもよい。一例では、飽和温度と分解温度の差は、137℃である。
【0078】
一具体例では、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。HFO1336mzz(E)の分解温度は、250℃である。HFO1336mzz(E)の2MPaにおける飽和温度は、約113℃である。そこで、飽和温度と分解温度の差を250-113=137℃とする。このようにすると、作動流体の圧力が約2MPaであるときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加する。そのため、作動流体の圧力が約2MPaであるときに、高圧保護機能が発揮される。
【0079】
念のため断っておくが、飽和温度と分解温度の差が170℃以下である構成は、作動流体がHFO1336mzz(E)である場合以外においても採用され得る。この差が160℃以下である構成、この差が150℃以下である構成、この差が110℃以上170℃以下である構成、この差が120℃以上160℃以下である構成、この差が130℃以上150℃以下である構成、この差が137℃である構成についても、同様である。
【0080】
また、本実施の形態において、主流路F1における蒸発器3の入口よりも下流側かつ膨張機4の入口よりも上流側の部分である特定部分における作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または特定部分における作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加してもよい。特定部分における作動流体の温度および圧力は、高くなり易い。上記構成によれば、その温度および圧力が高くなり易い部分における作動流体の温度および/または圧力が過度に上昇することを防止できる。このことは、ランキンサイクル装置50の信頼性を確保するのに適している。
【0081】
また、本実施の形態において主流路F1における蒸発器3の入口よりも下流側かつ膨張機4の入口よりも上流側の部分である特定部分における作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または特定部分における作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなってもよい。特定部分における作動流体の温度および圧力は、高くなり易い。上記構成によれば、その温度および圧力が高くなり易い部分における作動流体の温度および/または圧力が過度に上昇することを防止できる。このことは、ランキンサイクル装置50の信頼性を確保するのに適している。
【0082】
上記の文脈における特定部分における温度について説明する。特定部分における温度は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4の入口よりも上流側の部分における作動流体の温度を含む概念である。特定部分における温度は、蒸発器3の内部に存し熱源流体Gと熱交換した後の作動流体の温度を含む概念である。特定部分における圧力についても同様である。
【0083】
上記の文脈における特定部分における温度についてさらに説明する。特定部分における温度は、特定部分に配置された弁、センサ等の機器で把握される作動流体の温度であってもよい。特定部分における温度は、特定部分の作動流体と同じ温度を有する作動流体が存する別の部分に配置された弁、センサ等の機器で把握される温度であってもよい。例えば、弁8で把握される作動流体の温度は、特定部分における温度に該当し得る。特定部分における圧力についても同様である。
【0084】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加するとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、作動流体の温度および/または圧力を速やかに低下させることができる。
【0085】
また、本実施の形態において、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなるとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、作動流体の温度および/または圧力を速やかに低下させることができる。
【0086】
また、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、作動流体と熱交換するべき冷却媒体を凝縮器5に送り込むファン6を有していてもよい。作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路F2における作動流体の流量が増加するとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、作動流体の温度および/または圧力を速やかに低下させることができる。
【0087】
また、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、作動流体と熱交換するべき冷却媒体を凝縮器5に送り込むファン6を備えていてもよい。作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなるとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、作動流体の温度および/または圧力を速やかに低下させることができる。
【0088】
図1の例では、冷却媒体は、外気である。
【0089】
また、本実施の形態において、バイパス流路F2は、主流路F1から弁8まで延びる上流部分F2aと、弁8から主流路F1まで延びる下流部分F2bとを含んでいてもよい。上流部分F2aは下流部分F2bよりも長くてもよい。このような構成によれば、上流部分F2aを流れている間に作動流体の温度が下がり易い。このため、弁8の温度は、上昇し難く、弁8の耐熱温度を超え難い。
【0090】
念のためにさらに説明すると、上流部分F2aでは、主流路F1から弁8まで作動流体が流れる。下流部分F2bでは、弁8から主流路F1まで作動流体が流れる。
【0091】
また、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、筐体30と、仕切り13と、を備えていてもよい。仕切り13は、筐体30内の空間を、第1空間15と、第2空間16と、に仕切っていてもよい。第1空間15は、膨張機4を収容していてもよい。第2空間16は、凝縮器5および弁8を収容していてもよい。このような構成によれば、弁23は、相対的に高温の膨張機4あるいはその周辺雰囲気からよりも、相対的に低温の凝縮器5あるいはその周辺雰囲気からの影響を受け易い。このため、弁8の温度は、上昇し難く、弁8の耐熱温度を超え難い。
【0092】
また、本実施の形態において、作動流体は、フッ素化合物であってもよい。フッ素化合物である作動流体は、地球温暖化係数が低く、環境負荷が低い傾向にある。一方、フッ素化合物である作動流体は、分解温度が低い傾向にある。しかしながら、バイパス流路F2によれば、作動流体の温度上昇を抑制でき、作動流体の分解を抑制できる。このため、本実施の形態によれば、作動流体の環境負荷が低いというメリットを、作動流体が熱により分解し易いというデメリットを抑制しつつ享受できる。
【0093】
なお、フッ素化合物は、フッ素原子を含む化合物である。
【0094】
また、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、ランキンサイクル装置50の外部から蒸発器3に排気ガスGを導く排熱流路9を備えていてもよい。排熱流路9内に、蒸発器3が設けられていてもよい。このような構成によれば、蒸発器3において、排気ガスGと作動流体とを直接的に熱交換させ易く、蒸発器3で作動流体を加熱し易く、ランキンサイクル50の運転効率を向上させ易い。また、この構成では、作動流体の温度が、定常運転において高い値を取り、排気ガスの過渡的な温度上昇によりさらに上昇し得る。そのため、この構成は、バイパス流路F2に作動流体を流すことで作動流体の温度上昇を抑制するという上記のメリットを享受し易い構成でもある。
【0095】
また、本実施の形態は、ランキンサイクル装置50の運転方法を開示していると捉えることもできる。運転方法は、第1モードにおいて、主流路F1において、ポンプ1と、第1部分2aと、蒸発器3と、膨張機4と、第2部分2bと、凝縮器5と、をこの順に作動流体を流すことを含む。ここで、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体とが熱交換する再熱器2が設けられている。また、運転方法は、第2モードにおいて、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ第2部分2bよりも上流側の部分から、バイパス流路F2を経由して、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分へと、作動流体を流すことを含む。
【0096】
なお、第1モードにおいて、第2部分2bのみならずバイパス流路F2にも作動流体が流れてもよい。第1モードにおいて、第2部分2bに作動流体が流れ、一方、バイパス流路F2に作動流体が流れなくてもよい。第2モードにおいて、バイパス流路F2のみならず第2部分2bにも作動流体が流れてもよい。第2モードにおいて、バイパス流路F2に作動流体が流れ、一方、第2部分2bに作動流体が流れなくてもよい。
【0097】
以下、他の実施の形態を例示する。以下では、先に説明した実施の形態と同一の機能を有する構成要素には同一番号を付して詳細な説明は省略することがある。
【0098】
(実施の形態2)
以下、図3を用いて、実施の形態2を説明する。
【0099】
[2-1.構成]
図3において、ランキンサイクル装置60は、温度センサ10と、圧力センサ11と、を備えている。温度センサ10および圧力センサ11は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分に設けられている。制御器12は、温度センサ10および/または圧力センサ11の検出値を表す検知信号を受け取る。制御器12は、検知信号に基づいて、制御信号を弁8へ送る。弁8の開度は、制御信号によって制御される。
【0100】
[2-2.動作]
実施の形態2に係るランキンサイクル装置60では、実施の形態1に係るランキンサイクル装置50と同様に、作動流体が流れる。
【0101】
[2-3.効果等]
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0102】
本実施の形態において、温度センサ10および圧力センサ11の両方を用いることは必須ではない。温度センサ10および圧力センサ11の一方のみを用いて弁8の開度を制御してもよい。
【0103】
温度センサ10を用いて弁8の開度を制御する場合、実施の形態2に係るランキンサイクル装置60は、実施の形態1において弁8が弁8における作動流体の温度に基づいて開閉する機械的な弁である場合のランキンサイクル装置50と同様に動作し得る。具体的には、温度センサ10の検出値が閾値温度を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなる構成を採用できる。
【0104】
圧力センサ11を用いて弁8の開度を制御する場合、実施の形態2に係るランキンサイクル装置60は、実施の形態1において弁8が弁8における作動流体の圧力に基づいて開閉する機械的な弁である場合のランキンサイクル装置50と同様に動作し得る。具体的には、圧力センサ11の検出値が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなる構成を採用できる。
【0105】
温度センサ10および圧力センサ11の両方を用いて弁8の開度を制御する場合、例えば、温度センサ10の検出値が閾値温度を跨いで上昇しかつ圧力センサ11の検出値が閾値圧力を跨いで上昇したときに、弁8の開度が大きくなる構成を採用できる。
【0106】
以上のように、本実施の形態において、ランキンサイクル装置60は、作動流体の温度を検出する温度センサ10および/または作動流体の圧力を検出する圧力センサ11を備えていてもよい。温度センサ10の検出値が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または圧力センサ11の検出値が閾値圧力を跨いで上昇したときに、バイパス流路における作動流体の流量が増加してもよい。
【0107】
また、本実施の形態において、温度センサ10は、特定部分における作動流体の温度を検出してもよい。
【0108】
また、本実施の形態において、圧力センサ11は、特定部分における作動流体の圧力を検出してもよい。
【0109】
特定部分における温度および圧力の解釈については、上述と同様である。例えば、上述
の説明から理解されるように、温度センサ10の位置は、特定部分に限定されず、特定部分の作動流体と同じ温度を有する作動流体が存する別の部分であってもよい。圧力センサ11の位置についても同様である。
【0110】
(実施の形態3)
以下、図4を用いて、実施の形態3を説明する。
【0111】
[3-1.構成]
図4において、ランキンサイクル装置70では、バイパス流路F2は、主流路F1における膨張機4よりも下流側かつ第2部分2bよりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続している。
【0112】
[3-2.動作]
主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分における作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇したときに、弁8が開口される。これにより、作動流体が、バイパス流路F2を流れ、これにより第2部分2bをバイパスするようになる。本実施の形態では、閾値温度は、作動流体の分解温度よりも低い。
【0113】
弁8が開口している状態において、膨張機4から流出した作動流体の一部は、再熱器2の第2部分2bで冷却され、その後、バイパス流路F2を流れた作動流体と合流する。合流後、作動流体は、凝縮器5で冷却され、ポンプ1で圧送され、再熱器2の第1部分2aで加熱され、その後、蒸発器3へ流れる。
【0114】
ただし、弁8が閉口している状態に比べ、弁8が開口している状態においては、第2部分2bを流れる作動流体の流量は小さい。そのため、弁8が閉口している状態に比べ、弁8が開口している状態においては、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量は小さい。そのため、弁8が開口している状態において、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅は抑制される。このため、蒸発器3に温度が低い作動流体を供給し易い。
【0115】
典型例では、弁8が開口している状態において、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量に比べて小さい。一具体例では、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量の0%以上30%以下であり、0%以上20%以下であってもよく、0%以上10%以下であってもよい。
【0116】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、バイパス流路F2は、主流路F1における膨張機4よりも下流側かつ第2部分2bよりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分と、を接続していてもよい。このようにすれば、バイパス流路F2の配管長が短くなり、配管の取り回しを簡素化できる。
【0117】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1から3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。
【0118】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0119】
実施の形態1から3では、弁8は、開閉弁である。だたし、弁8は、開閉弁に限定されない。弁8は、流量調整弁であってもよい。弁8は、三方弁であってもよい。ここで、開閉弁とは、開度が0%および100%の2値のいずれかに設定される弁を指す。流量調整弁は、0%および100%のみならず、0%よりも大きく100%よりも小さい開度を採り得る弁である。
【0120】
弁8が開閉弁であれば、弁8を短時間で全開にできる。このことは、作動流体を素早く凝縮器5へ流し、信頼性を向上させる観点から有利である。弁8が流量調整弁であれば、膨張機4へ流れる作動流体の流量を細かく制御可能である。そのため、ランキンサイクル装置を安定して起動させることができる。
【0121】
弁8が三方弁である場合の一例では、三方弁8は、バイパス流路F2の上流端Ueおよび主流路F1の接続点に設けられる。三方弁8は、第1状態および第2状態を取る。第1状態において、三方弁8は、主流路F1において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1を流れ続けることを許可しバイパス流路F2に流入することを禁止する。第2状態において、三方弁8は、主流路F1において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1を流れ続けることを禁止しバイパス流路F2に流入することを許可する。作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、三方弁8は第1状態から第2状態に切り替わる。このような切り替わりにより、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量が増加する。
【0122】
弁8が三方弁である場合の一例では、三方弁8は、バイパス流路F2の下流端Deおよび主流路F1の接続点に設けられる。三方弁8は、第3状態および第4状態を取る。第3状態において、三方弁8は、主流路F1において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1を流れ続けることを許可しバイパス流路F2において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1に流入することを禁止する。第4状態において、三方弁8は、主流路F1において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1を流れ続けることを禁止しバイパス流路F2において三方弁8に流入した作動流体が主流路F1に流入することを許可する。作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇しかつ/または作動流体の圧力が閾値圧力を跨いで上昇したときに、三方弁8は第3状態から第4状態に切り替わる。このような切り替わりにより、バイパス流路F2を流れる作動流体の流量が増加する。
【0123】
実施の形態1から3では、膨張機4は、容積型のレシプロ式の膨張機である。ただし、膨張機4は、容積型のレシプロ式の膨張機に限定されない。膨張機4は、容積型のスクロール式の膨張機であってもよい。膨張機4は、速度型のタービンであってもよい。
【0124】
膨張機4が容積型のレシプロ式の膨張機であれば、膨張比を大きくすることができる。このため、サイクル条件に適した仕様を採用し易い。このことは、ランキンサイクル装置の運転効率を向上させる観点から有利である。膨張機4が容積型のスクロール式の膨張機であれば、膨張機の振動を低減し易い。膨張機4が速度型のタービンであれば、大流量に対応し易い。
【0125】
実施の形態1から3では、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。ただし、作動流体は、その他HFO系、またはHFC系、イソペンタン等の炭化水素であってもよい。用途に応じて作動流体の選択が可能である。
【0126】
HFO1336mzz(E)は、地球温暖化係数が小さい。そのため、作動流体がHFO1336mzz(E)であれば、環境負荷を低減し易い。一例に係る排熱利用のランキンサイクルでは、作動流体の温度、排気ガスGの温度、外気温等を考慮すると、HFO1336mzz(E)を使用することにより、発電効率向上、信頼性向上、環境負荷低減等がバランスよく実現されることが期待される。
【0127】
上述の通り、各実施の形態の技術は、特に矛盾のない限り、組み合わせ可能である。例えば、実施の形態1に倣い、実施の形態2および3においても、空冷ユニット35の第2空間16に、弁8を凝縮器5とともに収容することが可能である。実施の形態3において、実施の形態1および2と同様、作動流体の圧力が閾値圧力になったときにバイパス流路F2における作動流体の流量が増加する構成を採用してもよい。実施の形態3において、実施の形態1および2と同様、作動流体の圧力が閾値圧力になったときに弁8の開度が大きくなる構成を採用してもよい。また、実施の形態3において、実施の形態2に倣い、温度センサ10および/または圧力センサ11を設け、温度センサ10および/または圧力センサ11の検出値に基づいて弁8を制御してもよい。
【0128】
上述の通り、各実施の形態の構成の一部を省略可能である。例えば、熱源流路9内に蒸発器3を配置したり、熱源流体Gと作動流体とを直接的に熱交換させたりすることは、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示に係る技術は、工場、温泉、焼却炉等の施設あるいは自動車等の排熱から熱を回収して発電を行うランキンサイクル装置に有用である。また、本開示に係る技術は、CHP(Combined Heat and Power)、燃料電池等のコジェネレーションシステムの排熱を回収して発電を行うランキンサイクル装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 ポンプ
2 再熱器
2a 第1部分
2b 第2部分
3 蒸発器
4 膨張機
5 凝縮器
6 ファン
8 弁
9 熱源流路
10 温度センサ
11 圧力センサ
12 制御器
13 第1仕切り
14 第2仕切り
15 第1空間
16 第2空間
17 第3空間
25 発電機
30 筐体
35 空冷ユニット
50、60、70 ランキンサイクル装置
Ue 上流端
De 下流端
F1 主流路
F2 バイパス流路
F2a 上流部分
F2b 下流部分
G 熱源流体
S 熱源
図1
図2
図3
図4