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特許7449723音波センサの製造方法および音波センサの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】音波センサの製造方法および音波センサの設置方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20240307BHJP
   G01N 29/28 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/28
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020036283
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139687
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 賢司
(72)【発明者】
【氏名】樋口 暢浩
(72)【発明者】
【氏名】森本 夏聖
(72)【発明者】
【氏名】井原 亮一
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112545(JP,A)
【文献】特開2003-130853(JP,A)
【文献】特開2013-231718(JP,A)
【文献】特開2013-205545(JP,A)
【文献】特開2015-100381(JP,A)
【文献】特開2003-130857(JP,A)
【文献】特開平10-234734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G01B17/00-G01B17/08
A61B 8/00-A61B 8/15
H04R 1/00-H04R31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波探触子からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される熱硬化性接着シートと、前記熱硬化性接着シートの一方に設けられる第1保護フィルムと、前記熱硬化性接着シートの他方に設けられる第2保護フィルムとを含む積層体から、前記第2保護フィルムを剥離するステップと、
前記音波探触子を前記熱硬化性接着シートの一方に配置するステップと、
前記音波探触子を前記熱硬化性接着シートに対して押圧するステップと、
前記熱硬化性接着シートを第1硬化温度にて仮硬化させるステップとを有する音波センサの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の製造方法により製造された音波センサから、前記第1保護フィルムを剥離するステップと、
前記音波センサを被計測体の被接着面に配置するステップと、
前記音波センサを前記被接着面に対して押圧するステップと、
前記熱硬化性接着シートを前記第1硬化温度より高い第2硬化温度にて本硬化させるステップとを有する音波センサの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音波センサ、音波センサの製造方法および音波センサの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等の設備で使用される配管は、流体の状態や配管の形状等によっては、内部を流通する流体により、経時的に配管の肉厚が減肉する可能性がある。このため配管の肉厚は、定期的に計測されることで、減肉量が管理される。配管の肉厚の計測は、例えば配管の外周面に配置した超音波センサにより行われる。
【0003】
特許文献1には、センサー本体をセラミック系接着剤でモールドして一体成型することによりブロック体を形成し、セラミック系接着剤を塗布することによりブロック体を測定対象物に取り付けるセンサーについての発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5669262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤を塗布しての配管への音波センサの設置作業は、作業者に一定の力量を要する。また、接着剤を塗布しての音波センサの設置作業は、塗布した接着剤が硬化するまでに時間を要していた。これにより接着剤を塗布しての音波センサの設置作業は、簡便に行えるものとはいえなかった。
【0006】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、配管への音波センサの設置作業を、簡便に行えるようにするための音波センサ、音波センサの製造方法および音波センサの設置方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための音波センサは、音波探触子と、前記音波探触子に設けられ、前記音波探触子からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される接着シートと、前記接着シートに設けられ、前記接着シートを保護する第1保護フィルムと、を有する。
【0008】
上記課題を解決するための音波センサの製造方法は、音波探触子からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される熱硬化型接着シートと、前記熱硬化性接着シートの一方に設けられる第1保護フィルムと、前記熱硬化性接着シートの他方に設けられる第2保護フィルムとを含む積層体から、前記第2保護フィルムを剥離するステップと、前記音波探触子を前記熱硬化性接着シートの前記一方に配置するステップと、前記音波探触子を前記熱硬化性接着シートに対して押圧するステップと、前記熱硬化性接着シートを第1硬化温度に加熱して仮硬化させることにより、前記熱硬化性接着シートと前記音波探触子とを接着させるステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、音波センサは、前記音波探触子からの音波を伝播し、熱硬化性を有する材料により構成される接着シートおよび接着シートを保護する第1保護フィルムを有しているため、前記第1保護フィルムを剥離させた前記音波センサを被計測体の被接着面に配置し、前記音波センサを接着シートに対して押圧して加熱硬化させることにより接着し、前記被計測体に設置することが可能となる。これにより、音波センサは、接着シートを加熱して高い温度で硬化させて接着するため、常温下で接着剤を硬化させる場合よりも短時間で設置することができる。また、音波センサは、音波の伝播性を有する接着シートを介して被接着面の肉厚を計測することが可能となる。また、音波センサは、前記音波探触子に積層される前にシート状に形成された接着シートにより接着されるため、作業者に一定の力量を要することなく、簡便に音波センサの設置作業を行うことができる。さらに、前記接着シートは、前記第1保護フィルムにより保護されているため、異物が付着することがなく、また、常温下での熱硬化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係る配管に設置された音波センサを示した図である。
図2図2は、本開示に係る音波センサの概略図である。
図3図3は、本開示に係る接着シートを含む積層体の概略図である。
図4図4は、本開示に係る音波センサの製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、本開示に係る音波センサの製造方法における説明図である。
図6図6は、本開示に係る音波センサの設置方法を示すフローチャートである。
図7図7は、本開示に係る音波センサの設置方法における説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施例について、図1から図7を参照して詳細に説明する。図1は、本開示に係る配管に設置された音波センサを示した図である。図2は、本開示に係る音波センサの概略図である。図3は、本開示に係る音波センサを被接着部に接着した状態を示す概略図である。図4は、本開示に係る音波センサの製造方法を示すフローチャートである。図5は、本開示に係る音波センサの製造方法における説明図である。図6は、本開示に係る音波センサの設置方法を示すフローチャートである。図7は、本開示に係る音波センサの設置方法における説明図である。本実施の形態で説明するのは、本開示の一実施例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0012】
本実施例に係る配管10の内部には、例えば50℃以上の温度の流体が流通する(図1)。配管10の材料は、例えば炭素鋼により構成される。配管10は外周面12を断熱材16により覆われる。配管10は、例えばプラントの設備に備えられる。また、以下の説明では、配管10の断面形状が円筒形状をなす場合について説明するが、配管10の断面形状は、円筒形状に限らない。
【0013】
<音波センサ>
音波センサ20は、図2に示すように、音波探触子100、接着シート200および第1保護フィルム300を有する。音波探触子100、接着シート200および第1保護フィルム300は積層構造をなす。音波センサ20の厚さは1mm以内に構成される。音波センサ20は、曲率半径10mm以上の可撓性を有する。音波センサ20は、200℃までの耐熱性を有する。音波センサ20は、図1に示すように、配管10の外周面12に設置される。設置された音波センサ20は、配管10と断熱材16との間に常設される。
【0014】
<音波探触子>
音波探触子100は、図1に示すように、音波を送受信することにより、配管10の肉厚tを取得可能とする。具体的には、音波探触子100は、音波を発信してから、発信された音波が計測対象である配管10の内周面14に反射して検出されるまでの時間差を計測することにより、配管10の肉厚tを取得可能とする。
【0015】
音波探触子100は、図2に示すように、音波を送受信する振動子110を有する。振動子110は20kHzより高い周波数の音波を送受信する機能を備えている。音波探触子100は、音波を送信するための振動子110とは別に、送信した音波を受信するための図示しない振動子を有してもよい。
【0016】
振動子110は、図2に示すように、上部電極112と圧電体114と下部電極116とを有し、積層構造を構成する。圧電体114は、上部電極112および下部電極116から、所定の周波数の交流電圧が印加されることにより、印加された電圧の周波数に応じた音波を発する。圧電体114が生じた音波は、上部電極112および下部電極116から発信される。圧電体114は、例えば圧電性を有するセラミック系材料により構成される。上部電極112および下部電極116の材料は例えばステンレスにより構成される。
【0017】
振動子110が受信器として機能する場合、振動子110は、送信して反射した音波を受けることにより圧電体114が加圧されることにより電荷を生じ、電圧を出力する。圧電体114が生じた電圧は、振動子110の上部電極112および下部電極116から出力される。
【0018】
<接着シート>
接着シート200は、図2に示すように、音波探触子100の下部電極116に設けられる。接着シート200は、音波探触子100と、被計測体である配管10の被接着面である外周面12との接着を可能とする。また、接着シート200は、音波センサ20が接着シート200により被接着面である外周面12に接着した状態において、音波センサ20と外周面12との間で、音波センサ20からの音波を伝播する。接着シート200は、常温では接着性を有さないが、所定の温度以上に加熱されることで硬化し、被接着体である配管10の被接着面である外周面12との接着性を発現する。接着シート200は、いわゆる熱硬化性接着シートである。
【0019】
接着シート200は、図3に示すように、予め所定の一様な厚さを有するシート状に成形される。接着シート200は、第1面210と第2面220とを有している。接着シート200の第1面210と第2面220との面間距離である厚さは、音波探触子から発信される音波の伝播性、第1保護フィルム300および第2保護フィルム400の剥離のし易さ、および被計測体である配管10の、被接着面である外周面12の表面粗さに基づいて決定することができる。ここで、表面粗さとは、例えば被計測体である配管10の被接着面である外周面12の最大高さ粗さである。また、表面粗さは、例えば算術平均粗さを用いても良い。接着シート200の厚さは100μm以下であることが望ましく、より望ましくは25μm以上80μm以下であり、好ましくは接着シート200の厚さは40μmである。接着シート200は複数層から構成されてもよい。接着シート200は、例えば振動子110の大きさに対応した大きさを有する。接着シート200は、例えばハサミにより、所定の大きさにカットすることができる。
【0020】
接着シート200は、熱硬化性を有するエポキシ系樹脂材料から構成される。接着シート200は、エポキシ樹脂系材料に限られず、例えばフェノール樹脂系材料が用いられてもよい。接着シートの材料は、熱硬化性を有する樹脂単体で組成されてもよく、また、硬化剤その他添加物混合して組成されてもよい。接着シート200は、例えば東亜合成株式会社製アロンマイティAF-60(アロンマイティは、東亜合成株式会社の登録商標)を使用することができる。
【0021】
接着シート200は、第1硬化温度T1に加熱されると、接着シート200を構成する分子が架橋を開始することにより仮硬化する。第1硬化温度T1は、例えば100℃~130℃である。
【0022】
また、接着シート200は、第1硬化温度T1より高い第2硬化温度T2以上に加熱され、分子の架橋が完了することにより本硬化する。第2硬化温度T2は、例えば150℃~160℃である。
【0023】
接着シート200は、本硬化後の音響インピーダンスが、1.0×10kg/ms以上で、かつ鋼の音響インピーダンス以下の音響インピーダンスを有している。また、接着シート200は、本硬化後において、グリセリンペーストの音響インピーダンス以上で、かつ10.0×10kg/ms以下の音響インピーダンスであることが望ましい。グリセリンペーストの音響インピーダンスは、例えば2.42×10kg/msである。また、鋼の音響インピーダンスは、例えば46.02×10kg/msである。接着シート200は、本硬化後において、板厚10mmの炭素鋼試験片に対して音波センサを接着した場合の受信された側における80%感度が、60dB以下であり、かつ中心周波数が8.5MHz±10%である。接着シート200は、本硬化の状態において、厚さ0.3mmのステンレス板に対して、JIS K 6850「剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」において、18N/cmのせん断強度を有する。接着シート200は、本硬化の状態において、電解銅箔(35μm)の面に対して、JIS K 6854「はく離接着強さ試験方法」において、43N/25mmの180°剥離強度を有する。接着シート200は、本硬化の状態において、IPC-FC-232において、260℃/60secのはんだ耐熱性を有する。接着シート200のガラス転移温度は、DMSにおいて、40℃である。
【0024】
接着シート200は、本硬化後において、音波探触子100を構成する下部電極116と接着シート200との音圧反射率r1(下記の式1)、および接着シート200と配管10との音圧反射率r2(下記の式2)が、それぞれ所定の音圧反射率以下となる材料により構成される。音圧反射率r1および音圧反射率r2は、0.9以下であることが望ましい。ここで、音圧反射率r1および音圧反射率r2は、材料における音波の反射や透過の量を算出するためのパラメータである音響インピーダンスZを用いて以下式1および式2で与えられる。音響インピーダンスZは以下式3で与えられる。
r1=|(Z2-Z1)/(Z2+Z1)|・・・(式1)
r2=|(Z3-Z2)/(Z3+Z2)|・・・(式2)
Z=ρ・c・・・(式3)
Z1:下部電極の材料の音響インピーダンス
Z2:接着シートの材料の音響インピーダンス
Z3:配管の材料の音響インピーダンス
ρ:材料の密度(kg/m
c:材料の音速(m/s)
【0025】
接着シート200は、本硬化することにより被計測体である配管10の被接着面である外周面12に本接着した状態における音圧反射率r2は、配管10の材料が鋼である場合、約0.90となる。ここで、鋼の音響インピーダンスは、上述の通り46.02×10kg/msである。また、接着シート200は、上部電極112および下部電極116の材料がステンレスである場合、本硬化することにより下部電極116に本接着した状態における接着シート200の音圧反射率r1は、約0.90となる。ここで、ステンレスの音響インピーダンスは、44.2×10kg/msである。
【0026】
<第1保護フィルム>
第1保護フィルム300は、図2および3に示すように、接着シート200の第1面210を保護する。第1保護フィルム300は、接着シート200の第1面210の全面を覆っている。第1保護フィルム300は、接着シート200の第1面210に外力が加わるのを防止するほか、異物の付着を防止する。また、第1保護フィルム300は、接着シート200の第1面210の常温下での架橋反応を抑制する。第1保護フィルム300は、原材料を延伸させて製膜することにより形成されており、極めて平滑な表面を有している。第1保護フィルム300は、接着シート200の第1面210から剥離可能となっている。第1保護フィルム300は、200℃までの耐熱性を有している。第1保護フィルム300は、ガスバリア性を有している。第1保護フィルム300の材料は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂により構成される。第1保護フィルム300は、透明である。また、第2保護フィルムは300、有無の識別のため、透明以外に着色されていてもよい。
【0027】
<第2保護フィルム>
第2保護フィルム400は、図3に示すように、接着シート200の第2面220を保護する。第2保護フィルム400は、接着シート200の第2面220の全面を覆っている。第2保護フィルムは、接着シート200の第2面220に外力が加わるのを防止するほか、異物の付着を防止する。また、接着シート200の第2面220の常温下での架橋反応を抑制する。第2保護フィルム400は、材料を延伸させて製膜することにより形成されており、極めて平滑な表面を有している。第2保護フィルム400は、接着シート200の第2面220から剥離可能となっている。第2保護フィルム400の材料は、例えばPP(ポリプロピレン)系樹脂により構成される。第2保護フィルム400は透明である。また、第2保護フィルム400は、有無の識別のため、透明以外に着色されていてもよい。
【0028】
<音波センサの製造方法>
以下に、音波センサの製造方法について、図3から図5を参照して説明する。音波センサの製造方法は、図4に示すように、音波探触子100からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される熱硬化性接着シート200と、熱硬化性接着シート200の一方に設けられる第1保護フィルム300と、熱硬化性接着シート200の第1保護フィルム300の設けられる他方に設けられる第2保護フィルム400とを含む積層体30から、第2保護フィルムを剥離するステップ(S10)と、音波探触子を配置するステップ(S20)と、音波探触子を接着シートに押圧するステップ(S30)と、接着シートを第1硬化温度に加熱して仮硬化させるステップ(S40)とを有する。
【0029】
第1保護フィルムを剥離するステップ(S10)により、接着シート200は、第2保護フィルム400が剥離され、接着シート200の第2面220が露出される(図3)。
【0030】
音波探触子を配置するステップ(S20)により、音波探触子100は、接着シート200の第2面220に配置される。ここで、音波探触子100は、下部電極116と接着シート200の第2面220との間に空気等が入らないよう配置される。
【0031】
音波探触子を接着シートに押圧するステップ(S30)により、図5に示すように、音波探触子100は、所定の時間、接着シート200に対して第1押圧力F1で押圧される。所定の時間とは、例えば1分である。また、第1押圧力F1は、例えば2.5MPa~5.0MPaである。第1押圧力F1は、例えば音波探触子100をクランプすることにより付加される。
【0032】
接着シートを第1硬化温度に加熱して仮硬化させるステップ(S40)により、図5に示すように、接着シート200は、第1加熱時間、第1硬化温度T1に加熱され、第2面220の全体において仮硬化する。これにより、押圧された音波センサ20と接着シート200とは、接触する面同士が微視的に結合した状態で仮硬化することにより、接着された状態となる。第1加熱時間とは、例えば15分である。第1硬化温度T1は、例えば100℃~130℃である。第1硬化温度T1は、例えば電気炉18Aに設置されることにより付加される。なお、音波探触子を接着シートに押圧するステップ(S30)と接着シートを第1硬化温度に加熱して仮硬化させるステップ(S40)とは、同時に行われてもよい。
【0033】
<音波センサの設置方法>
以下に、音波センサの設置方法について、図2図6および7を参照して説明する。音波センサの設置方法は、図6に示すように、音波センサの熱硬化性接着シートから第1保護フィルムを剥離するステップ(S110)と、音波センサを配置するステップ(S120)と、音波センサを被接着面に押圧するステップ(S130)と、接着シートを第2硬化温度にて仮硬化させるステップ(S140)とを有する。
【0034】
第1保護フィルムを剥離するステップ(S110)により、音波センサ20は、第1保護フィルム300が剥離され、接着シート200の第1面210が露出される(図2)。
【0035】
音波センサを配置するステップ(S120)により、音波センサ20は、被計測体である配管10の被接着面である外周面12に配置される。ここで、音波センサ20は、接着シート200の第1面210と配管10の外周面12との間に空気等が入らないように配置される。
【0036】
音波センサを被接着面に押圧するステップ(S130)により、音波センサ20は、図7に示すように、所定の時間、配管10の外周面12に対して第2押圧力F2で押圧される。所定の時間とは例えば1分である。第2押圧力F2は、例えば0.1MPaである。
【0037】
接着シートを第2硬化温度にて本効果させるステップ(S140)により、接着シート200は、図7に示すように、第2加熱時間、第2硬化温度T2に加熱され、所定の時間経過後、接着シート200は、第1面210および第2面220の全体において、本硬化する。これにより、音波探触子100と、接着シート200と、配管10の外周面12とが微視的に結合した状態で本硬化することにより、本接着された状態となる。音波センサを被接着面に押圧するステップ(S130)と接着シートを第2硬化温度にて本硬化させるステップ(S140)とは、同時に行われてもよい。
【0038】
第2加熱時間は、例えば30分~60分であり、第1加熱時間よりも長い時間となっている。第2押圧力F2は、例えば0.1MPaである。第2硬化温度T2は、例えば130℃から200℃であり、第1硬化温度T1よりも高い温度となっている。第2硬化温度T2とは、望ましくは、160℃から200℃である。第2硬化温度T2が高いほど接着シート200が本硬化するまでの時間が早くなり、配管10の外周面12と本接着するまでの時間を短くすることができる。第2硬化温度T2は、接着シート200を、図7で示すように、例えばランプヒータ18Bで照射されることにより付加される。第2押圧力F2は、音波センサ20を配管10とともに、例えばバンドにより巻き付けられることにより付加される。
【0039】
<効果の説明>
以下に本開示に係る効果について態様ごとに示す。以下に本開示に係る効果について態様ごとに示す。本開示の第1の態様に係る音波センサ20は、図2に示すように、音波探触子100と、音波探触子100に設けられ、音波探触子100からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される接着シート200と、接着シート200に設けられ、接着シート200を保護する第1保護フィルム300とを有する。
【0040】
第1の態様によれば、音波センサ20は、音波探触子100からの音波を伝播し、熱硬化性を有する材料により構成される接着シート200および接着シート200を保護する第1保護フィルム300を有しているため、第1保護フィルム300を剥離させた音波センサ20を、被計測体である例えば配管10の被接着面である外周面12に配置し、接着シート200を加熱により硬化させて接着して設置することが可能となる。これにより、音波センサ20は、音波の伝播性を有する接着シート200を介して被計測体である配管10の肉厚tを計測することが可能となる。また、音波センサ20は、音波探触子100に積層される前にシート状に形成された接着シート200により接着されるため、作業者に一定の力量を要する接着剤の塗布作業の必要がなく、簡便に音波センサ20の設置を行うことができる。また、音波センサ20は、熱硬化性を有する接着シート200を加熱されて硬化して接着するため、常温下で硬化させる場合よりも短時間で設置することができる。さらに、接着シート200は、第1保護フィルム300により第1面210が保護されているため、第1面210に異物が付着することがなく、また、常温下での硬化を抑制することができる。
【0041】
本開示の第2の態様に係る音波センサ20は、第1の態様において、接着シート200は、第1硬化温度T1にて仮硬化し、第1硬化温度T1より高い第2硬化温度T2にて本硬化する熱硬化性接着シートである。
【0042】
第2の態様によれば、接着シート200は、第1硬化温度T1にて仮硬化し、第1硬化温度T1より高い第2硬化温度T2にて本硬化する熱硬化性接着シートであるので、第1硬化温度T1に加熱されることにより音波探触子100と仮硬化することができ、第1硬化温度T1より高い第2硬化温度T2に加熱されることにより本硬化して被接着面である配管10の外周面12と接着することができる。
【0043】
本開示の第3の態様に係る音波センサ20は、第2の態様において、接着シート200は、本硬化後の音響インピーダンスが、1.0×10kg/ms以上10.0×10kg/ms以下である。
【0044】
第3の態様によれば、接着シート200の本硬化後の音響インピーダンスが、1.0×10kg/ms以上10.0×10kg/ms以下であるので、接着シート200自体の内部を音波が伝播することができる。また、接着シート200は、本硬化後の音響インピーダンスが、1.0×10kg/ms以上10.0×10kg/ms以下であるので、ステンレスと接着シート200との間および接着シート200と鋼と間における音圧反射率を一定値以下とすることができる。これにより、音波探触子100が生じた音波は、音波探触子100の下部電極116と接着シート200との間および接着シート200と配管10との間で伝播することができる。
【0045】
本開示の第4の態様に係る音波センサ20は、第2の態様または第3の態様のいずれかにおいて、接着シート200は、音波探触子100と仮硬化することにより接着している。
【0046】
本開示の第4の態様に係る音波センサ20は、音波探触子100と接着シート200とが、第1硬化温度T1に加熱されることにより仮硬化して接着しているので、音波センサ20を被接着面である例えば配管10の外周面12に設置の際に、音波探触子100と接着シート200とを接着する必要がない。これにより、音波センサ20を設置するのに要する時間を短縮することができる。
【0047】
本開示の第5の態様に係る音波センサ20は、第1の態様から第4の態様のいずれかにおいて、接着シート200の厚さは、接着シート200が接着する被計測体の被接着面の面粗さ以上である。
【0048】
第5の態様によれば、音波センサ20の接着シート200の厚さは、接着シート200が接着する被計測体である例えば配管10の被接着面である外周面12の面粗さ以上であるので、加熱された接着シート200が流動して被接着面である配管10の外周面12の面粗さによる起伏を埋めるため、接着シート200と被接着面との間に隙間を生じることなく接着することができる。
【0049】
本開示の第6の態様に係る音波センサ20は、第1の態様から第5の態様のいずれかにおいて、接着シート200の厚さは25μm以上80μm以下に構成される。
【0050】
第6の態様によれば、接着シート200の厚さは25μm以上80μm以下に構成されるので、接着シート200は一定の弾力性を有する。このため、接着シート200からの第1保護フィルム300および第2保護フィルム400の剥離が容易となる。
【0051】
本開示の第7の態様に係る音波センサの製造方法は、図4および図5に示すように、音波探触子100からの音波を伝播し、かつ熱硬化性を有する樹脂系材料により構成される熱硬化性接着シート200と、熱硬化性接着シート200の一方に設けられる第1保護フィルム300と、熱硬化性接着シート200の他方に設けられる第2保護フィルム400とを含む積層体30から、第1保護フィルムを剥離するステップ(S10)と、音波探触子を熱硬化性接着シートに配置するステップ(S20)と、音波探触子を熱硬化性接着シートに対して押圧するステップ(S30)と、熱硬化性接着シートを第1硬化温度に加熱して仮硬化させるステップ(S40)とを有する。
【0052】
第7の態様によれば、音波センサの製造方法により、第1の態様の効果を奏する音波センサ20を製造することができる。
【0053】
本開示の第8の態様に係る音波センサの設置方法は、図6および図7に示すように、第7の態様の製造方法により製造された音波センサ20から、第2保護フィルムを剥離するステップ(S110)と、音波センサを被計測体の被接着面に配置するステップ(S120)と、音波センサを被接着面に対して押圧するステップ(S130)と、接着シートを第1硬化温度より高い第2硬化温度にて本硬化させるステップ(S140)とを有する。
【0054】
第8の態様によれば、音波センサ20を被計測体である例えば配管10の被接着面である外周面12へ設置する際に、音波センサ20の第1保護フィルム300を剥離させて露出させた第1面210を配管10の外周面12に対して配置し、音波センサ20を配管10の外周面12に対して押圧し、接着シート200を第2硬化温度T2に加熱することで本硬化させて接着することができる。これにより、接着材の塗布作業がないため作業者に一定の力量を要せず、また常温で接着剤を硬化させる場合よりも短時間で接着シート200を硬化させて接着することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 配管
12 外周面
14 内周面
16 断熱材
18A 電気炉
18B ランプヒータ
20 音波センサ
30 積層体
100 音波探触子
110 振動子
112 上部電極
114 圧電体
116 下部電極
200 接着シート、熱硬化性接着シート
210 第1面
220 第2面
300 第1保護フィルム
400 第2保護フィルム
S10 第2保護フィルムを剥離するステップ
S20 音波探触子を配置するステップ
S30 音波探触子を接着シートに押圧するステップ
S40 接着シートを第1硬化温度にて仮硬化させるステップ
S110 第1保護フィルムを剥離するステップ
S120 音波センサを配置するステップ
S130 音波センサを被接着面に押圧するステップ
S140 接着シートを第2硬化温度にて本硬化させるステップ
r、r1、r2 音圧反射率
F1 第1押圧力
F2 第2押圧力
T1 第1硬化温度
T2 第2硬化温度
Z、Z1、Z2、Z3 音響インピーダンス
t 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7