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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240307BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240307BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/12
A61K8/25
A61K8/55
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020040209
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021138670
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西本 昂平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝行
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129279(JP,A)
【文献】特開2021-063041(JP,A)
【文献】特開2018-188403(JP,A)
【文献】特開2013-023470(JP,A)
【文献】特開2013-023471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)球状粉体および平均粒子径50μm以上の板状粉体からなる群から選択される少なくとも1種、
(B)デキストリン脂肪酸エステル、
(C)ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル
を含有し、
前記成分(A)の含有量が、固形粉末化粧料全量に対して10~90質量%であり、前記成分(B)の含有量が、固形粉末化粧料全量に対して0.05~10質量%であり、前記成分(C)の含有量が、固形粉末化粧料全量に対して0.005~10質量%である、固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)の含有量が、固形粉末化粧料全量に対して25質量%以上である、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の含有質量比が10~200である、請求項1または2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(B)に対する前記成分(C)の含有質量比が0.01~20である、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)が球状粉体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)が炭素数4~26の分岐鎖飽和脂肪酸と炭素数12~22の直鎖飽和脂肪酸との含有モル比が0:100~50:50であるデキストリン脂肪酸エステルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項7】
粉末の含有量が60質量%を超える、請求項1~6のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項8】
さらに成分(D)シリコーン系皮膜形成剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項9】
前記成分(D)がトリメチルシロキシケイ酸である、請求項8に記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に粉体が配合された粉体含有化粧料は、ファンデーションや白粉、チーク、アイシャドウ、アイブロウなどのメイクアップ化粧料として広く用いられている。中でも、携帯性や感触の観点から固形状に成形された固形粉末化粧料が数多く上市されている。
【0003】
固形粉末化粧料においては、消費者の嗜好に合わせて様々な感触が求められている。例えば、肌上で化粧料が伸び広がることが要求される製品においては、このような感触を得るために、化粧料に球状粉体や粒子径の大きい板状粉体を配合する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-129279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形粉末化粧料は、化粧料を肌に塗布した後に、肌に粉体が付着することで、化粧膜が形成され、粉体による化粧効果が発現する。したがって、固形粉末化粧料において、肌に化粧料が付着すること(優れた付着性)は、化粧効果を発現させるために非常に重要である。しかしながら、上記のように肌上での伸び広がりを目的として配合される球状粉体や粒子径の大きい板状粉体は、その伸び広がりのよさゆえに、皮膚への付着性が悪く、化粧効果が発現しにくい。
【0006】
また、球状粉体や粒子径の大きい板状粉体はその形状から、固形粉末化粧料内で粉体同士が接着しにくく、化粧料に衝撃が与えられると、固形粉末化粧料の場合、ひびが入ったり、割れが生じたりする場合がある。
【0007】
ゆえに、固形粉末化粧料に球状粉体や粒子径の大きい板状粉体を配合した場合、塗布した場合の化粧料の伸び広がりと、肌への化粧料の付着性と、耐衝撃性の向上と、を満たすことは一般的に困難である。
【0008】
よって、本発明の目的は、塗布した場合の化粧料の伸び広がりに優れ、肌への化粧料の付着性が高く、耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、付着した化粧料の化粧効果が持続する、固形粉末化粧料を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、化粧料を肌に塗布して形成された化粧膜において粉浮き(粉感)が少ない固形粉末化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の成分(A)~(C);(A)球状粉体および平均粒子径50μm以上の板状粉体からなる群から選択される少なくとも1種、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルを含有する、固形粉末化粧料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固形粉末化粧料によれば、塗布した場合に化粧料の伸び広がりに優れ、肌への化粧料の付着性が向上し、耐衝撃性が向上したものとなる。さらに、本発明によれば、化粧料の化粧効果が持続しやすく、また、化粧膜を形成した後の粉末化粧料に起因する粉感を感じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。
【0014】
本発明の第一実施形態は、成分(A)~(C);(A)球状粉体および平均粒子径50μm以上の板状粉体からなる群から選択される少なくとも1種、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルを含有する、固形粉末化粧料である。
【0015】
上記実施形態により、塗布した場合に化粧料の伸び広がりに優れ、肌への化粧料の付着性が向上し、耐衝撃性が向上したものとなる。さらに、本実施形態によれば、化粧料の化粧効果が持続しやすく、また、化粧膜を形成した後の化粧料に起因する粉感を感じにくい。
【0016】
本実施形態の化粧料が、上記効果を奏する詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように考えられる。なお、以下のメカニズムは、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【0017】
上述したように、球状粉体や粒子径の大きい板状粉体(以下、球状粉体等とも称する)は、滑らかな伸び広がりを有するため、化粧料中に一定量以上配合される場合がある。配合された粉体が本来の化粧効果を発揮するためには、粉体が肌に付着することが重要であるが、球状粉体等の配合により、粉体の肌への付着性は低下しやすい。また、球状粉体等の配合により、固形粉末化粧料の耐衝撃性も低下しやすい。このような粉体に付着性を発現させ、さらに付着を維持させ(化粧持ちを向上させ)、さらに耐衝撃性を向上させるために、成分(C)が有効であることを本発明者らは知得した。成分(C)は、肌親和性が高いため、粉末化粧料の肌への付着性を向上させるとともに、粉体同士の結着性を向上させ、耐衝撃性が向上するものと考えられる。また、成分(C)は、比較的撥水・撥油性に優れ、汗や水などの水性成分、皮脂などの油性成分の双方と相溶性が悪いために、化粧持ち向上の効果も発揮されると考えられる。しかしながら、成分(C)を球状粉体等が配合された固形粉末化粧料に配合した場合、化粧料の肌付着性向上、付着性の維持(化粧持ち)および耐衝撃性、特に耐衝撃性の効果が期待されるほど発揮されなかった。この原因として、本発明者らは、成分(C)が球状粉体等内に均一に存在することが難しく、成分(C)の添加によっても適切に発揮されないためではないかと考察した。このような考察に基づいて、化粧料中に成分(C)に成分(B)を組み合わせて配合することで、球状粉体等へ成分(C)が均一に存在するようになり、粉体を肌に付着させること、その付着維持性(化粧持ち)が向上すること、および耐衝撃性が向上することを見出し、さらには、化粧料を肌に塗布して形成された化粧膜において粉浮き(粉感)が少ないことを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
本明細書において、「固形粉末化粧料」とは、粉末(粉体)を主成分とする固形状の化粧料を指す。ここで、主成分とは、粉末(粉体)が50質量%以上であることを指す。本実施形態において、粉末(粉体)の含有量は、60質量%を超えることが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらにより好ましい。なお、粉末(粉体)の含有量の上限は、100質量%であるが、化粧料に配合される他の成分を考慮すると、通常99.9質量%以下であり、99.5質量%以下であってもよく、99質量%以下であってもよい。
【0019】
以下、第一実施形態の化粧料に含有される各成分について説明する。
【0020】
(成分(A):球状粉体および平均粒子径50μm以上の板状粉体からなる群から選択される少なくとも1種)
球状粉体および/または平均粒子径50μm以上の板状粉体は、滑らかな伸びなどの感触調整として固形粉末化粧料に配合される。
【0021】
球状粉体における球状とは、真球状のみを意味するものではなく、楕円や略球状、表面に微細な穴や凹凸があるものでもよい。短径と長径との比率が1:1~1:2であれば球状として好ましい。
【0022】
球状粉体は、具体的には、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(シリカ、無水ケイ酸)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等の無機粉体類、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリウレタン、(HDI/PPG/ポリカプロラクトン)クロスポリマー、セルロース等の有機粉体類、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
球状粉体の平均粒子径は1~30μmが好ましい。球状粉体の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱式粒度分布計(HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定した値を採用する。
【0024】
球状粉体は市販品を用いてもよい。
【0025】
また、成分(A)として平均粒子径50μm以上の板状粉体を用いてもよい。なお、平均粒子径は、卓上走査型電子顕微鏡(proX PREMIUM、ジャスコインタナショナル社製)を用いて、加速電圧5~15kV、拡大率1000~25000倍にて100個の粒子を測定した画像データから算出することができる。また、板状粉体の粒子径は長径(最大径)を用いる。なお、板状粉体の平均粒子径の上限は特に限定されるものではないが、通常1000μm以下である。
【0026】
板状粉体としては、具体的にはマイカ、セリサイト、タルク、板状硫酸バリウム、板状硫酸カルシウム、合成金雲母、ホウケイ酸(Ca/Al)、ホウケイ酸(Ca/Na)、(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート、(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)等の無機板状粉体、およびこれらの板状粉体に被覆処理を施した複合粉体(酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)、酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)、酸化チタン被覆ガラス末、二酸化珪素・酸化チタン被覆マイカ、二酸化珪素・酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Na)など)などが好ましい。板状粉体はその形状に依存して層状に粉体が重なり合う構造をとるため、耐衝撃性が低下する傾向にあるが、本実施形態の構成によれば、板状粉体を含有することによるなめらかな使用感を維持したまま、耐衝撃性を向上させることができる。中でも耐衝撃性の観点から、板状粉体は、酸化チタン被覆粉体(より好ましくは酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al))、二酸化珪素・酸化チタン被覆粉体(より好ましくは二酸化珪素・酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)であることが好ましい。
【0027】
なお、板状粉体には、板状の他、薄片状、鱗片状等の形状の粉体も含まれる。
【0028】
本明細書において、板状粉体とは、平均粒子径が平均厚みよりも大きい粉体を指し、具体的にはアスペクト比が3以上であることが好ましい。アスペクト比は、平均粒子径と粒子の平均厚さとの比により計算されるものであり、アスペクト比=(平均粒子径/平均厚さ)で定義される。厚さは、原子間力顕微鏡により基準面との差を測定し、相加平均したものを平均厚さとする。
【0029】
また、球状粉体および/または板状粉体は、表面処理を施したものを用いても良い。表面処理としては、公知の粉体の表面処理方法を用いることができ、フッ素化合物処理、シリカ処理、アルミナ処理、水酸化アルミニウム処理、シリコーン処理(メチコン処理、ハイドロゲンジメチコン処理など)、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、シラン処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アクリル樹脂処理などが挙げられる。これらの表面処理は、単独であっても2種以上を併用してもよい。
【0030】
表面処理に用いられる表面処理剤の処理量は未処理粉体に対して0.1~30質量%が好ましく、より好ましくは0.5~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0031】
表面処理の方法は従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶媒に表面処理剤と処理を施される粉体粒子を添加し、ボールミル等で撹拌処理した後、必要に応じて乾燥し、水洗、濾過を繰返し、夾雑物を除去した後、乾燥、粉砕することにより、目的の表面処理粉体を得ることができる。また、表面処理剤である数種類の化合物を同時に表面処理することもでき、何れか一つの化合物で予め表面処理をしてから、更に他の化合物を表面処理することもできる。
【0032】
成分(A)は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。具体的には、球状粉体と、平均粒子径50μm以上の板状粉体とを併用してもよいし、2種以上の球状粉体を用いてもよいし、2種以上の平均粒子径50μm以上の板状粉体を用いてもよい。中でも、肌上での伸び広がり、仕上がりの粉感のなさが一層向上することから、固形粉末化粧料は球状粉体を含有することが好ましい。本発明の好適な一実施形態は、成分(A)が球状粉体である。さらに、肌への付着性の観点から、成分(A)は、水酸基を有する球状粉体(例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、セルロース等)であることが好ましく、耐衝撃性の観点から、成分(A)は、二酸化ケイ素(シリカ)の球状粉体であることがより好ましく、化粧持ちの観点から、多孔質二酸化ケイ素(シリカ)であることがさらにより好ましい。水酸基を有する球状粉体は、成分(C)のベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルと結合または相互作用しやすい性質があると考えられる。
【0033】
成分(A)の含有量は、固形粉末化粧料における感触(特に、肌上での化粧料の伸び広がり)の観点から、10質量%以上であることが好ましい。さらには、成分(A)の含有量は、固形粉末化粧料全量に対して25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。成分(A)の固形粉末化粧料中の含有量が25質量%以上であることで、滑らかな伸びなどの感触が得られやすいととともに、25質量%以上と成分(A)の含有量が多いにもかかわらず、粉体の肌への付着性、その付着維持性(化粧持ち)が向上する、耐衝撃性が向上する、化粧料を肌に塗布して形成された化粧膜において粉浮き(粉感)が少ないといった本発明の効果が得られやすいという点で好ましい。成分(A)の固形粉末化粧料中の含有量の上限は特に限定されるものではないが、耐衝撃性を考慮すると、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらにより好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
なお、後述のように成分(C)を成分(A)の表面処理剤として用いた場合、成分(A)の含有量は、成分(A)の含有量から成分(C)の含有量を除いたものとする。また、ここでいう、成分(A)の含有量とは、表面処理粉体の場合、表面処理剤を含む表面処理粉体全体の量である(ただし、成分(C)を成分(A)の表面処理剤として用いた場合を除く)。
【0035】
成分(B)に対する成分(A)の含有質量比は、10~200であることが好ましい。成分(B)に対する成分(A)の含有質量比がこのような範囲にあることで、各効果に対するバランスに優れたものとなる。成分(B)に対する成分(A)の含有質量比は、仕上がりの粉感のなさが一層向上することから、15以上であることがより好ましく、30以上であることがさらにより好ましく、肌上での伸び広がりが一層向上することから、40以上であることが特に好ましい。また、成分(B)に対する成分(A)の含有質量比は、190以下であってもよく、150以下であってもよく、140以下であってもよい。
【0036】
(成分(B):デキストリン脂肪酸エステル)
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステルである。
【0037】
デキストリンは、グルコース平均重合度が3~150であるのが好ましく、さらに10~100であるのがより好ましい。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0038】
デキストリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、炭素数4~26の脂肪酸であることが好ましく、さらに、炭素数4~26の直鎖または分岐鎖を有する飽和脂肪酸であることがより好ましい。より好ましい態様は、肌への付着性、耐衝撃性の点で、成分(B)が、炭素数4~26の分岐鎖飽和脂肪酸と炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸との含有モル比が0:100~50:50であるデキストリン脂肪酸エステルである。
【0039】
炭素数4~26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸(2-ヘキシルデカン酸)、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、炭素数8~24のものがより好ましい。
【0040】
また、炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数8~22のものが好ましく、特に炭素数12~22のものが好ましい。
【0041】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、具体的には、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン等が挙げられる。このうち、肌への付着性、耐衝撃性、仕上がりの粉感のなさが一層向上することから、成分(B)がパルミチン酸デキストリンであることが最も好ましい。これらのデキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、千葉製粉社製の「レオパールKL2」「レオパールKS2」「レオパールTT2」「レオパールTL2」「レオパールMKL2」「レオパールWX」等が挙げられる。
【0042】
デキストリン脂肪酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0043】
成分(B)の含有量は、例えば、固形粉末化粧料中0.05~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。この範囲であれば、本願発明の効果が発揮されやすい。
【0044】
(成分(C):ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル)
ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルは、下記構造を有する化合物である。
【0045】
【化1】
【0046】
ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルは、リン酸エステルに窒素含有アルコールが付加したリン脂質様化合物である。かような構造を有するために、肌への親和性が非常に高い一方、比較的分子量が小さいために、粉体と相互作用して粉体表面に結合しやすくなり、粉体が肌に均一に付着することを助ける役割を担うと考えられる。ゆえに、成分(C)を固形粉末化粧料に配合することで、粉体が肌に付着しやすく(化粧膜が形成しやすく)、また、粉感のなさ(化粧膜の均一性)といった効果が得られやすい。また、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルは、親油性、親水性のバランスがよく、撥水・撥油性に優れるため、化粧持ちの向上といった効果を付与することができる。
【0047】
成分(C)の含有量は、成分(C)の効果を発現させるために、好ましい順に、固形粉末化粧料に対して0.0001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上であり、肌への化粧料の付着、化粧持ち、化粧料塗布時の粉感のなさが一層向上することから、0.05質量%以上、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、成分(C)の含有量は、固形粉末化粧料に対して、肌上での化粧料の伸びの観点から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0048】
なお、成分(C)を成分(A)や他の粉体の表面処理剤として用いてもよい。この場合、成分(A)の含有量に成分(C)の含有量は含めない。
【0049】
成分(C)の成分(A)(または他の粉体)への表面処理の方法は従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶媒(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール、イソパラフィン(例えば、IPソルベント(出光興産社製))に成分(C)と処理を施される粉体を添加し、ボールミル等で撹拌処理した後、必要に応じて乾燥し、水洗、濾過を繰返し、夾雑物を除去した後、乾燥、粉砕することにより、目的の表面処理粉体を得ることができる。また、成分(C)と表面処理剤である他の化合物とを同時に表面処理してもよい。
【0050】
成分(B)に対する成分(C)の含有質量比は、0.01~20であることが好ましい。成分(B)に対する成分(C)の含有質量比がこのような範囲にあることで、各効果に対するバランスに優れたものとなる。成分(B)に対する成分(C)の含有質量比は、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらにより好ましく、肌上での伸び広がりの観点からは8以下であることが特に好ましい。また、成分(B)に対する成分(C)の含有質量比は、0.02以上であることが好ましく、肌への化粧料の付着、化粧持ち、化粧料塗布時の粉感のなさ、耐衝撃性が一層向上することから、0.1以上であることがより好ましい。
【0051】
(成分(D):シリコーン系皮膜形成剤)
本実施形態の固形粉末化粧料は、さらに成分(D)シリコーン系皮膜形成剤を含むことが好ましい。成分(D)を含有することで化粧持ちおよび耐衝撃性が一層向上する。シリコーン系皮膜形成剤は、オルガノポリシロキサン構造を主鎖とし、直鎖状または分岐状の構造が連続しているものであり、架橋していてもよい。また、シリコーン系皮膜形成剤における「皮膜形成」とは、シリコーン系皮膜形成剤が可溶な溶媒に40質量%溶解した溶液を、ガラス板に400μm厚のアプリケーターで塗布し、室温24時間乾燥後に皮膜が形成されていることを指す。
【0052】
成分(D)として、具体的には、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー等が挙げられる。トリメチルシロキシケイ酸は、(CHSiO1/2(Mユニット)およびSiO(Qユニット)からなる構造を有し、例えば、[(CHSiO1/2[SiOで表されるもの(Xは1~3、Yは0.5~8)等である。ポリメチルシルセスキオキサンは、RSiO1.5単位(Tユニット)(式中Rはメチル基を表す)からなる構造を有しているものである。市販品としては、トリメチルシロキシケイ酸としては、シリコンX-21-5250(50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KF-7312T(60%メチルトリメチコン溶液)、KF-7312J(50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)、KF-7312K(60%ジメチコン溶液)、KF-9021(50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)(何れも信越化学工業社製)、SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製))、ポリメチルシルセスキオキサンとしては、SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0053】
中でも、成分(D)としては、化粧持ちが一層向上することから、TユニットまたはQユニットを有するシリコーンレジンであることが好ましく、トリメチルシロキシケイ酸であることがより好ましい。
【0054】
成分(D)の固形粉末化粧料中の含有量は、特に限定されるものではないが、0.01~10質量%であることが好ましく、0.02~8質量%であることがより好ましく、0.03~5質量%であることがさらにより好ましく、1~4質量%であることがさらにより好ましい。
【0055】
(成分(A)以外の粉体(その他の粉体))
本実施形態においては、成分(A)以外の粉体(球状粉体および平均粒子径50μm以上の板状粉体以外の粉体)を用いてもよい。
【0056】
その他の粉体の粉体種としては、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、有色顔料類、複合粉体類、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末などが挙げられる。
【0057】
また、その他の粉体は、表面処理を施したものを用いても良い。
【0058】
(油剤)
本実施形態においては、粉体の結合剤として油剤を用いてもよい。
【0059】
油剤としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質イソパラフィン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、スクワラン、スクワレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ポリイソブチレン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;アブラナ種子油、アボカド油、アーモンド油、アンズ核油、エゴマ油、オレンジ油、オリーブ油、キウイ種子油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、セージ油、大豆油、チャ種子油、トウモロコシ油、ナタネ油、月見草油、ツバキ油、パーシック油、ハトムギ油、ピーナッツ油、ひまわり油、ブドウ種子油、メドウフォーム油、ローズマリー油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ラベンダー油、ローズヒップ油、ミンク油等の動植物油;トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル(デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10)、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット(テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル)、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリトリット、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、炭酸ジアルキル、トリメリト酸トリトリデシル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、モノステアリン酸硬化ヒマシ油、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、トリベヘン酸グリセリル等の脂肪酸エステル油;オレイン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸;オレイルアルコール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラデカノール、イソステアリルアルコール、2-ヘキシルデカノール等の高級アルコール;ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラトリフロロプロピルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルペンタトリフロロプロピルシクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、オレイル変性ジメチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性ジメチルポリシロキサン、アルキル変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤;酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体;パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル等の液状の紫外線吸収剤;香料等の液状油;カカオ脂、シアバター、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、ワセリン等のペースト状の油剤;パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、(エチレン/プロピレン)コポリマー、コレステロール、フィトステロール、ステアリル変性ポリシロキサン、硬化油、ワセリン、パーム油等の固形状の油剤が挙げられる。
【0060】
油剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、固形粉末化粧料の成形性の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、固形粉末化粧料の伸び広がりの観点からは、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
【0061】
(その他の成分)
上記成分の他、通常化粧料に使用される、アルコール、防腐剤、酸化防止剤、美容成分、抗菌剤、香料、キレート剤(EDTAなど)、紫外線吸収剤、成分(D)以外の皮膜形成剤等を本発明の効果を妨げない範囲で適宜含有することができる。
【0062】
なお、本願の固形粉末化粧料においては、水の含有量は3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないほうが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは不純物程度の含有は許容するものであり、例えば、0.1質量%以下であることを指す。
【0063】
本実施形態の化粧料は、ファンデーション、フェイスパウダー、おしろい(白粉)、コンシーラー、アイカラー(アイシャドウ)、アイライナー、アイブロウ、マスカラ、チーク、口紅、日焼け止め化粧料、化粧用下地などのメイクアップ化粧料;ボディパウダーなどのスキンケア化粧料などに適用可能であり、好ましくは、化粧料が、本願効果の発揮が一層期待される、ファンデーション、フェイスパウダー、おしろい、アイカラー、化粧用下地、日焼け止め化粧料、チークなどのメイクアップ化粧料であり、より好ましくは使用面積の多い、ファンデーションまたはフェイスパウダー、おしろいである。またその使用法は、手や指で使用する方法、パフやスポンジ等に含浸させて使用する方法などが挙げられる。
【0064】
本実施形態の固形粉末化粧料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、金皿等の容器に粉末状の化粧料を充填した後、加圧する乾式プレス方法や、上記成分を混合した組成物に揮発性化合物等の溶媒を添加してスラリー状にして、金皿等の容器に充填した後、加圧して溶媒の一部を除去し、さらに溶媒を完全に除去する湿式充填方法で製造することができる。
【0065】
充填方法は、乾式プレス方法でも湿式充填方法でも何れでもよいが、成分(A)~(C)を含有する化粧料基材と揮発性溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該揮発性溶剤を除去する湿式充填方法が、成分(A)~(C)の均質な分散による落下強度の向上等により優れる点からより好ましい。
【0066】
すなわち、本発明の他の実施形態は、(i)成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合し、化粧料基材を調製する工程と、
(ii)前記化粧料基材と揮発性溶剤とを混合してスラリーとする工程と、
(iii)前記スラリーを容器に充填した後、前記揮発性溶剤を除去する工程と、
を含む固形粉末化粧料の製造方法である。
【0067】
湿式充填方法に用いられる揮発性溶剤としては、水性溶剤として、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低沸点アルコールなどが挙げられ、有機溶剤として、水添ポリイソブテン、イソドデカンなどが挙げられる。本発明の効果が一層発揮されやすいことから、揮発性溶剤としては有機溶剤がより好ましい。有機溶剤としては、水添ポリイソブテン単独、あるいは、低沸点アルコールを水添ポリイソブテンに溶解した有機溶剤溶液が好ましい。有機溶剤溶液中の低沸点アルコール濃度は、50質量%以下であるのが好ましい。有機溶剤溶液中のアルコール濃度が高いほど、スラリー調製時に成分(A)~(C)の分散が良好となり、使用感に優れ、十分な落下強度を持った固形粉末化粧料が得られる。
【0068】
揮発性溶剤の混合量は、成型前の混合物を容器又は中皿に充填するために、流動性を付与する程度に任意に選択されるが、化粧料基材100質量部に対して揮発性溶剤10~200質量部を用いることが好ましい。この範囲であれば、揮発性溶剤の除去が良好である。
【0069】
また、本明細書における流動性とは、粉体を主成分とする化粧料基材を、揮発性溶剤と混合した混合物を、内口径2.47cm、胴径4.05cm、全高7.4cmの容器(第一硝子株式会社製「薬ビンPS-6K」)に30g入れ、付属の蓋で栓をした後、25℃、1気圧の環境下で90°傾け、1分間静置すると混合物の一部が蓋の内側に付着する状態のことを意味する。
【0070】
固形粉末化粧料の調製方法において、揮発性溶剤を除去する方法は、特に限定されず、通常公知の方法を用いることができ、そのまま乾燥したり、化粧料基材と揮発性溶剤を混合して充填後に加圧し、揮発性溶剤を吸収体あるいは排出孔を通して除去したりする方法を採用することが好ましい。例えば、化粧料基材と揮発性溶剤との混合物を容器または中皿に充填する際、表面を平滑にするために、パッド等を用いて弱くプレスすることが好ましいが、そのプレス時に、多孔質プレスヘッドや吸収体を用いて、揮発性溶剤を吸収させることもできる。また、乾燥により揮発性溶剤を除去することも可能であり、そのための条件は、揮発性溶剤の沸点や比熱に応じて適宜設定されるが、例えば、軽質流動イソパラフィンの場合、50~70℃にて10~20時間程度である。
【実施例
【0071】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0072】
(実施例1~28、および比較例1~3)
下記表1に示す処方の固形粉末化粧料(フェイスパウダー)を調製した。
【0073】
(製造方法)
1.成分(A)、(E)を混合して、混合物を得た。
2.成分(B)、(C)(または成分(C’))、(D)(または成分(D’))および(F)を80℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
3.1で得られた混合物に2を加え、混合物を得た。
4.3で得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
5.4で得られた粉末状の化粧料を揮発性溶剤(水添ポリイソブテン)と混合し、スラリーを得た。
6.5で得られたスラリーを容器に充填成型した後、前記揮発性溶剤を除去することで固形粉末状化粧料を得た。
【0074】
評価1:肌上での化粧料の伸び広がり
各試料について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。具体的には、各試料を肌上にウレタン製化粧塗布用マットを用いて塗布し、化粧料が肌上で伸び広がるか(化粧料によるひっかかりを感じないか)を評価した。
【0075】
(絶対基準)
(評点):(評価結果)
3 :非常に伸び広がる
2 :伸び広がる
1 :やや伸び広がりに欠ける
0 :伸び広がりが不十分である
<判定基準>
(評点平均値) :(判定)
2点以上 : ◎
1点以上2点未満: ○
1点未満 : ×。
【0076】
評価2:肌への付着力の高さ(肌への付着性)
各試料について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。具体的には、各試料を肌上にウレタン製化粧塗布用マットを用いて1回伸び広げた際に、化粧料の肌への付着力の高さ(化粧膜の形成性の高さ)を評価した。
(絶対基準)
(評点):(評価結果)
3 :非常に感じる
2 :感じる
1 :やや感じる
0 :感じない
<判定基準>
(評点平均値) :(判定)
(評点の平均点) :(判定)
2.7点以上 : ◎
2点以上2.7点未満: ○
1点以上2点未満 : △
1点未満 : ×。
【0077】
評価3:化粧持ち
各試料について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。具体的には各試料を肌に適量塗布し、塗布後8時間後にその化粧持ち(=化粧効果の持続)が充分であるかどうかを評価した。
【0078】
(絶対基準)
(評点):(評価)
3 :化粧持ちが良く、化粧効果が長く持続して感じられる
2 :化粧持ちが良く化粧効果も十分感じられるが、僅かに不十分である
1 :化粧持ちがやや悪く化粧効果の持続性がやや不十分である
0 :化粧持ちが非常に悪く化粧効果の持続性が不十分である
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
2.7点以上 : ◎
2点以上2.7点未満: ○
1点以上2点未満 : △
1点未満 : ×。
【0079】
評価4:耐衝撃性
各試料についてプラスティック製タイルに45cmの高さから2度落下させた後、その状態を判定した(N=5)。評価は落下後、崩壊の程度を確認し以下の評価基準に従って評価し、各5サンプルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
(評価基準)
(評点):(評価結果)
3 :変化なし
2 :欠けや隙間が僅かに観察される
1 :欠けや隙間がはっきり観察される
0 :抜け、割れが発生
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
2.5点以上 : ◎
2点以上2.5点未満: ○
1点以上2点未満 : △
1点未満 : ×。
【0080】
評価5:仕上がりの粉感のなさ
各試料について、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対基準にて4段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により判定した。具体的には、各試料を肌上にウレタン製化粧塗布用マットを用いて塗布し、化粧膜を形成した後、化粧膜を鏡により外観から目視し、粉体が肌上から浮いて見えないかを評価した。
【0081】
(絶対基準)
(評点):(評価結果)
3 :全く感じない
2 :あまり感じない
1 :やや感じる
0 :感じる
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
2.5点以上 : ◎
2点以上2.5点未満: ○
1点以上2点未満 : △
1点未満 : ×。
【0082】
各評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1-1】
【0084】
【表1-2】
【0085】
【表1-3】
【0086】
【表1-4】
【0087】
以上の結果より、実施例の固形粉末化粧料(フェイスパウダー)は、固形粉末化粧料の肌への伸び広がりを有しながら、肌上への化粧料の付着性の高いものであった。また、化粧効果の持続性も良好であった。さらには、耐衝撃性、仕上がりの粉感のなさも良好であった。一方、成分(B)を配合しない比較例1は、耐衝撃性が劣る結果となった。また、成分(C)を配合しない比較例2または成分(C)の代わりにレシチンを配合した比較例3は、肌上での伸び広がりは良好であるものの、その他の評価において実施例に劣るものであった。
【0088】
・実施例29:固形粉末化粧料(白粉)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*a) 20.0%
2.シリカ(球状粉体)(成分A)(*1) 10.0%
3.シリカ(球状粉体)(成分A)(*2) 10.0%
4.シリカ(球状粉体)(成分A)(*3) 10.0%
5.シリカ(球状粉体)(成分A)(*4) 10.0%
6.ポリメタクリル酸メチル(球状粉体)(成分A)(*5) 3.0%
7.(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(球状粉体)(成分A)(*6) 2.0%
8.ナイロン-12(球状粉体)(成分A)(*7) 0.5%
9.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)(平均粒子径80μmの板状粉体)(成分A)(*8)
0.5%
10.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*b) 0.5%
11.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)
0.1%
12.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 1.5%
13.(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー(成分D)(*9)
0.5%
14.ポリエチレンテレフタラート粉末 0.5%
15.(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)(*10)2.0%
16.(フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)(*11)3.0%
17.タルク(*12) 5.0%
18.ラウリン酸亜鉛処理タルク(*13) 5.0%
19.ハイドロゲンジメチコン(0.25%処理)処理酸化亜鉛(平均粒子径1μm)
1.0%
20.メチコン・水酸化Al・含水シリカ処理酸化チタン(平均粒子径0.030μm)(*14) 5.0%
21.合成金雲母(平均粒子径20μm) 5.0%
22.マイカ(平均粒子径19μm) 残量
23.ベンガラ(*15) 0.03%
24.黄酸化鉄(*16) 0.2%
25.黒酸化鉄(*17) 0.01%
26.ヒアルロン酸Na 0.01%
27.グリシン 0.05%
28.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 5.0%
29.スクワラン 0.5%
30.ジメチコン 5.0%
31.テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 0.01%
32.香料 0.1%
(*1)ゴッドボールE2-824C(鈴木油脂工業社製)
(*2)ゴッドボールD11-796C(鈴木油脂工業社製)
(*3)サンスフェアNP-200(AGCエスアイテック社製)
(*4)コスメシリカCQ4(富士シリシア社製)
(*5)ケミスノ-MR-5C(綜研化学社製)
(*6)KSP-300(信越化学工業社製)
(*7)ガンツパールGPA-550(アイカ工業社製)
(*8)マイクログラスメタシャインMT1080RY(日本板硝子社製)
(*9)シリコン KP-545(信越化学工業社製)
(*10)ミクロマイカ MK-200K(コープケミカル社製)
(*11)ミクロマイカ KS(コープケミカル社製)
(*12)ハイフィラーK-5(松村産業社製)
(*13)タルクZL-6(東色ピグメント社製)
(*14)微粒子酸化チタンSMT-500SAM(テイカ社製)
(*15)R-516P(チタン工業社製)
(*16)YP1200P(チタン工業社製)
(*17)BL-100P(チタン工業社製)
(*18)サラコス913(日清オイリオグループ社製)。
【0089】
(製造方法)
A.成分1~9、14~27を混合して、混合物を得た。
B.成分10~13、28~30を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
C.Aで得られた混合物にB、成分31、32を加え、混合物を得た。
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
E.Dで得られた粉末状の化粧料を揮発性溶剤(水添ポリイソブテン)と混合し、スラリーを得た。
F.Eで得られたスラリーを容器に充填成型した後、揮発性溶剤を除去することで固形粉末状化粧料を得た。
【0090】
実施例29では、成分(A)の含有量:66%、成分(B)の含有量:0.5%、(A)/(B)=132(質量比)、成分(C)の含有量:0.1%、(C)/(B)=0.2(質量比)、成分(D)の配合量:2.0%である。実施例29の固形粉末化粧料(白粉)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0091】
・実施例30:固形粉末化粧料(ファンデーション)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*19) 7.0%
2.シリカ(球状粉体)(成分A)(*20) 3.0%
3.ポリメタクリル酸メチル(球状粉体)(成分A)(*5) 15.0%
4.(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(球状粉体) (成分A)(*6) 5.0%
5.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*9) 0.2%
6.ミリスチン酸デキストリン(成分B)(*21) 0.2%
7.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)2.0%
8.トリメチルシロキシケイ酸(成分D) 5.0%
9.水添エステルガム (*22) 0.5%
10.ポリエチレンテレフタラート粉末 0.5%
11.タルク(*12) 10.0%
12.窒化ホウ素(*23) 5.0%
13.ハイドロゲンジメチコン(0.25%処理)処理酸化亜鉛(平均粒子径1μm)
2.0%
14.水酸化Al・トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理酸化チタン
(平均粒子径0.25μm)(*24) 5.0%
15.メチコン・水酸化Al・含水シリカ処理酸化チタン
(平均粒子径0.030μm)(*14) 5.0%
16.合成金雲母(平均粒子径20μm) 5.0%
17.マイカ(平均粒子径19μm) 残量
18.ベンガラ(*15) 0.03%
19.黄酸化鉄(*16) 0.2%
20.黒酸化鉄(*17) 0.01%
21.グリシン 0.1%
22.マツリカ花エキス、ブドウ葉エキス、セイヨウハッカ葉エキス、ビフィズス菌培養溶解質、サトザクラ花エキス、ポリクオタニウム-51、ノイバラ果実エキス、ハマナス花エキス、イザヨイバラエキス、酢酸トコフェロール、水溶性コラーゲン、ローヤルゼリーエキス、トウキ根エキス、センチフォリアバラ花エキス、ダマスクバラ花水、ローズマリー葉エキス、アセロラ果実エキスの混合物(美容成分の混合物)
1.0%
23.トリ2-エチルへキサン酸グリセリル 5.0%
24.ジカプリン酸プロピレングリコール 0.5%
25.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(1)(*25) 0.5%
26.ジメチコン 5.0%
27.テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 0.01%
28.香料 0.1%
(*19)シリカマイクロビードN-1505(日揮触媒化成社製)
(*20)サンスフェアNP-100(AGCエスアイテック工業社製)
(*21)レオパールMKL(千葉製粉社製)
(*22)パインクリスタルKE-311(荒川化学工業社製)
(*23)SHP-6(水島合金鉄社製)
(*24)ITT-2 TiO2 CR-50(大東化成工業社製)
(*25)コスモール168ARNV(日清オイリオグループ社製)。
【0092】
(製造方法)
A.成分1~4、10~21を混合して、混合物を得た。
B.成分5~9、23~26を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
C.Aで得られた混合物にB、成分22、27、28を加え、混合物を得た。
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
E.Dで得られた粉末状の化粧料を揮発性溶剤(水添ポリイソブテン)と混合し、スラリーを得た。
F.Eで得られたスラリーを容器に充填成型した後、前記揮発性溶剤を除去することで固形粉末状化粧料を得た。
【0093】
実施例30では、成分(A)の含有量:30%、成分(B)の含有量:0.4%、(A)/(B)=75(質量比)、成分(C)の含有量:2.0%、(C)/(B)=5(質量比)、成分(D)の配合量:5.0%である。実施例30の固形粉末化粧料(ファンデーション)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0094】
・実施例31:固形粉末化粧料(ファンデーション)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*2) 11.0%
2.メタクリル酸メチルクロスポリマー(球状粉体)(成分A)(*26)(純分)
3.0%
3.(HDI/PPG/ポリカプロラクトン)クロスポリマー(98%)/
シリカ(2%)(球状粉体)(成分A)(*27) 1.0%
4.ポリメチルシルセスキオキサン(球状粉体)(成分A)(*28)
2.0%
5.セルロース(球状粉体)(成分A)(*29) 3.0%
6.ナイロン-12(球状粉体)(成分A)(*7) 9.0%
7.アルミナ・ステアリン酸処理酸化チタン(70.0%)被覆ナイロン-12(30.0%)(球状粉体)(成分A)(*30) 3.0%
8.ミリスチン酸デキストリン(成分B)(*21) 1.0%
9.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン(成分B)(*31)
1.0%
10.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)
0.4%
11.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 1.0%
12.ポリメチルシルセスキオキサン(成分D)(*o) 1.0%
13.ジメチコン処理タルク(平均粒子径9μm)(*32) 10.0%
14.水酸化Al処理酸化チタン(平均粒子径0.25μm)(*33)
10.0%
15.ジプロピレングリコール 4.5%
16.グリセリン 0.5%
17.セリサイト(平均粒子径12.5μm) 10.0%
18.マイカ(平均粒子径18μm) 残量
19.ベンガラ(*15) 0.3%
20.黄酸化鉄(*16) 2.0%
21.黒酸化鉄(*17) 0.2%
22.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 2.0%
23.ジメチコン 4.5%
24.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 2.0%
25.ワセリン 0.5%
26.水添ポリイソブテン(*34) 0.5%
27.トリエチルヘキサノイン 2.5%
28.フェニルトリメチコン 0.5%
29.フェノキシエタノール 0.2%
30.香料 0.1%
(*26)ガンツパールGMI-0804(アイカ工業社製、メタクリル酸メチルクロスポリマーとポリイソブチレンの混合物、上記含有量はメタクリル酸メチルクロスポリマーの含有量)
(*27)CS-400(東色ピグメント社製)
(*28)トスパール2000B*(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)
(*29)CELLULOBEADS D-10(大東化成工業社製)
(*30)MTXO70-NL(ハヤテマテリアル社製)
(*31)レオパールTT2(千葉製粉社製)
(*32)SA-タルクJA-46R(三好化成社製)
(*33)TIPAQUE CR-50(石原産業社製)
(*34)パールリーム6(日油社製)。
【0095】
(製造方法)
A.成分1~7、13、14、17~21を混合して、混合物を得た。
B.成分8~12、15、16、22~28を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
C.Aで得られた混合物にB、成分29、30を加え、混合物を得た。
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
E.Dで得られた粉末状の化粧料を水性溶剤(精製水)と混合し、スラリーを得た。
F.Eで得られたスラリーを容器に充填成型した後、前記水性溶剤を除去することで固形粉末状化粧料を得た。
【0096】
実施例31では、成分(A)の含有量:32%、成分(B)の含有量:2.0%、(A)/(B)=16(質量比)、成分(C)の含有量:0.4%、(C)/(B)=0.2(質量比)、成分(D)の配合量:2.0%である。実施例32の固形粉末化粧料(ファンデーション)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0097】
・実施例32:固形粉末型化粧料(ファンデーション)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*1) 14.0%
2.ポリメタクリル酸メチル(球状粉体)(成分A)(*5) 26.0%
3.酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径95μmの板状粉体)(成分A)(*35)
2.0%
4.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*9) 1.0%
5.(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン(成分B)(*36)
0.2%
6.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)
5.0%
7.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 0.02%
8.ポリメチルシルセスキオキサン(成分D)(*o) 0.01%
9.水酸化Al・トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理酸化チタン
(平均粒子径0.25μm)(*24) 4.0%
10.メチコン・水酸化Al・含水シリカ処理酸化チタン
(平均粒子径:0.030μm)(*14) 5.0%
11.ラウリン酸亜鉛処理タルク(平均粒子径15μm)(*13)
3.0%
12.合成金雲母(平均粒子径12.5μm) 5.0%
13.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(*37)
2.0%
14.ジメチコン処理酸化鉄被覆マイカ(*38) 2.0%
15.ジメチコン処理タルク(平均粒子径9μm)(*32) 3.0%
16.マイカ(平均粒子径19μm) 残量
17.ベンガラ(*15) 0.3%
18.黄酸化鉄(*16) 2.0%
19.黒酸化鉄(*17) 0.2%
20.グリシン 0.1%
21.メチルパラベン 0.2%
22.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3.0%
23.セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.3%
24.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 7.0%
25.香料 0.1%
(*35)HELIOS R100Y(トピー工業社製)
(*36)レオパールWX(千葉製粉社製)
(*37)SE-MA-23(三好化成社製)
(*38)SA-BLONIDEE SUPER BRONZE N-2220S(三好化成社製)。
【0098】
(製造方法)
A.成分1~3、9~21を混合して、混合物を得た。
【0099】
B.成分4~8、22~24を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
【0100】
C.Aで得られた混合物にB、成分25を加え、混合物を得た。
【0101】
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
【0102】
E.Dで得られた粉末状の化粧料を充填成型することで固形粉末状化粧料を得た。
【0103】
実施例32では、成分(A)の含有量:42%、成分(B)の含有量:1.2%、(A)/(B)=33.33(質量比)、成分(C)の含有量:5.0%、(C)/(B)=4.2(質量比)、成分(D)の配合量:0.03%である。実施例32の固形粉末化粧料(ファンデーション)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0104】
・実施例33:固形粉末化粧料(チーク)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*2) 33.0%
2.シリカ(球状粉体)(成分A)(*3) 17.0%
3.ナイロン-12(成分A)(*7) 10.0%
4.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
(成分A)(*39)5.5%
5.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*9) 0.35%
6.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)
1.0%
7.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 2.0%
8.ロジン酸デキストリン(*40) 0.2%
9.ラウロイルリシン(*41) 5.0%
10.1、3-ブチレングリコール 3.0%
11.マイカ(平均粒子径23μm) 残量
12.酸化チタン被覆マイカ(*42) 5.0%
13.ベンガラ(*15) 3.0%
14.赤色226号 5.0%
15.黄色4号 1.0%
16.グリシン 0.05%
17.セラミド2 0.01%
18.セラミド3 0.01%
19.メチルパラベン 0.2%
20.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 5.0%
21.2-エチルヘキサン酸セチル 2.0%
22.ミネラルオイル 2.0%
23.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.0%
24.ポリヒドロキシステアリン酸 0.5%
25.甘草フラボノイド、ローズマリー葉エキス、アンズ核油、カニナバラ果実エキス、アーモンド油、コーン油の混合物(美容成分の混合物) 0.3%
26.香料 0.1%
(*39)KSP-102(信越化学工業社製)
(*40)エステルガムHP(荒川化学工業社製)
(*41)アミホープLL(味の素社製)
(*42)FLAMENCO GOLD 220C(BASF社製)。
【0105】
(製造方法)
A.成分1~4、9、11~19を混合して、混合物を得た。
B.成分5~8、10、20~24を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
C.Aで得られた混合物にB、成分25、26を加え、混合物を得た。
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
E.Dで得られた粉末状の化粧料を充填成型することで固形粉末状化粧料を得た。
【0106】
実施例33では、成分(A)の含有量:65.5%、成分(B)の含有量:0.35%、(A)/(B)=187.1(質量比)、成分(C)の含有量:1.0%、(C)/(B)=2.9(質量比)、成分(D)の配合量:2.0%である。実施例33の固形粉末化粧料(チーク)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0107】
・実施例34:固形粉末化粧料(アイシャドウ)
(成分) (含有量)
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*2) 10.0%
2.(HDI/PPG/ポリカプロラクトン)クロスポリマー(98%)/シリカ(2%)(成分A)(*27)(球状粉体) 15.0%
3.酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径95μmの板状粉体)(成分A)(*43)
6.0%
4.(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート(平均粒子径150μmの板状粉体)(成分A)(*44) 3.0%
5.酸化チタン被覆粉体(平均粒子径120μmの板状粉体)(成分A)(*45)
3.0%
6、パルミチン酸デキストリン(成分B)(*9) 1.5%
7.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c) 2.0%
8.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 1.5%
9.タルク(*12) 15.0%
10.トリエトキシカプリリルシラン処理タルク(平均粒子径9μm)(*46)
5.0%
11.ジメチコン(3%)処理合成金雲母(平均粒子径12.5μm)
10.0%
12.ハイドロゲンジメチコン(0.25%処理)処理酸化亜鉛(平均粒子径1μm)
1.0%
13.マイカ 残量
14.ベンガラ(*15) 3.0%
15.赤色226号 2.0%
16.クロルフェネシン 0.1%
17.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 5.0%
18.1.3-ブチレングリコール 5.0%
19.ジカプリン酸PG 1.0%
20.リンゴ酸ジイソステアリル 0.5%
21.水溶性コラーゲン、センチフォリアバラ花エキス、ローヤルゼリーエキス、オレンジ花水の混合物(美容成分の混合物) 0.5%
22.フェノキシエタノール 0.1%
23.エチルヘキシルグリセリン(*47) 0.1%
24.香料 0.1%
(*43)HELIOS R100S(トピー工業社製)
(*44)オーロラフレークレッド0.01(角八魚鱗箔社製)
(*45)マイクログラスメタシャインMT1120RS(日本板硝子社製)
(*46)OTS-2タルクJA-46R(大東化成工業社製)
(*47)アデカノールGE-RF(アデカ社製)。
【0108】
(製造方法)
A.成分1~5、9~16を混合して、混合物を得た。
B.成分6~8、17~20を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
C.Aで得られた混合物にB、成分21~24を加え、混合物を得た。
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
E.Dで得られた粉末状の化粧料を水性溶剤(精製水:エタノール=95:5)と混合し、スラリーを得た。
F.Eで得られたスラリーを容器に充填成型した後、前記水性溶剤を除去する。
【0109】
実施例34では、成分(A)の含有量:37%、成分(B)の含有量:1.5%、(A)/(B)=24.66(質量比)、成分(C)の含有量:2.0%、(C)/(B)=1.3(質量比)、成分(D)の配合量:1.5%である。実施例34の固形粉末化粧料(アイシャドウ)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0110】
・実施例35:固形粉末化粧料(白粉)
(成分) (含有量(質量%))
1.シリカ(球状粉体)(成分A)(*a) 20.0%
2.セルロース(球状粉体)(成分A)(*g) 5.0%
3.酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径95μmの板状粉体)(成分A)(*35)
2.0%
4.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*b) 0.5%
5.ミリスチン酸デキストリン(成分B)(*21) 0.5%
6.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(成分C)(*c)
4.0%
7.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 1.5%
8.タルク(*13) 15.0%
9.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(*37)
15.0%
10.ハイドロゲンジメチコン(0.25%処理)処理酸化亜鉛(平均粒子径1μm)
3.0%
11.水酸化Al・トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理酸化チタン
(平均粒子径0.25μm)(*24) 2.0%
12.マイカ(平均粒子径19μm) 残量
13. (フッ化/水酸化/酸化)/(Mg/K/ケイ素)(*10)8.0%
14.ジメチコン処理赤酸化鉄(*48) 0.2%
15.ジメチコン処理黄酸化鉄(*49) 0.3%
16.グリシン 0.05%
(*48)SA-レッドR-516PS(100%)(三好化成社製)
(*49)SA-イエローLL-100P(100%)(三好化成社製)。
【0111】
(製造方法)
A.成分1~16を混合して、混合物を得た。
B.Aで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
C.Bで得られた粉末状の化粧料を充填成型することで固形粉末状化粧料を得た。
【0112】
実施例35では、成分(A)の含有量:27%、成分(B)の含有量:1.0%、(A)/(B)=27(質量比)、成分(C)の含有量:4.0%、(C)/(B)=4.0(質量比)、成分(D)の配合量:1.5%である。実施例35の固形粉末化粧料(白粉)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。
【0113】
・実施例36:固形粉末型化粧料(ファンデーション)
(成分) (含有量(質量%))
1.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(*c)3%処理シリカ(*1)(球状粉体)(成分A)(成分C) 30.0%
(上記原料中、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル含有量0.9%)
2.ポリメタクリル酸メチル(球状粉体)(成分A)(*5) 5.0%
3.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)(平均粒子径80μmの板状粉体)(成分A)(*8) 2.6%
4.パルミチン酸デキストリン(成分B)(*9) 2.0%
5.トリメチルシロキシケイ酸(成分D)(*d) 1.5%
6.ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(*c)1%処理・水酸化Al処理酸化チタン(平均粒子径0.25μm)(*50) 10.0%
(上記原料中、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル含有量0.1%)
7.ジメチコノール・アミノプロピルトリエトキシシラン処理マイカ(*37)
10.0%
8.マイカ(平均粒子径19μm) 残量
9.ベンガラ(*15) 0.5%
10.黄酸化鉄(*16) 2.0%
11.黒酸化鉄(*17) 0.3%
12.グリシン 0.1%
13.セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.3%
14.フェニルトリメチコン 0.5%
15.イソノナン酸イソトリデシル(*18) 7.0%
16.マツリカ花エキス、ブドウ葉エキス、セイヨウハッカ葉エキス、ビフィズス菌培養溶解質、サトザクラ花エキス、ポリクオタニウム-51、ノイバラ果実エキス、ハマナス花エキス、イザヨイバラエキス、酢酸トコフェロール、水溶性コラーゲン、ローヤルゼリーエキス、トウキ根エキス、センチフォリアバラ花エキス、ダマスクバラ花水、ローズマリー葉エキス、アセロラ果実エキスの混合物(美容成分の混合物) 0.1%
17.香料 0.1%
(*50)MP-1133(テイカ社製)。
【0114】
(ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルの粉体への表面処理方法:成分1、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(*c)処理シリカ(*1)および成分6、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル(*c)処理・水酸化Al処理酸化チタン)
成分(C)をイソプロピルアルコールに加温溶解させた溶解物(または分散物)を、粉体に添加し、ボールミルで攪拌処理した。その後、乾燥、粉砕処理を行って、成分(C)を表面処理した成分1または成分6を得た。
【0115】
(製造方法)
A.成分1~3、6~12を混合して、混合物を得た。
【0116】
B.成分4~5、13~15を85℃で加温し、溶解物(または分散物)を得た。
【0117】
C.Aで得られた混合物にB、成分16、17を加え、混合物を得た。
【0118】
D.Cで得られた混合物を粉砕処理し、粉末状の化粧料を得た。
【0119】
E.Dで得られた粉末状の化粧料を揮発性溶剤(水添ポリイソブテン)と混合し、スラリーを得た。
【0120】
F.Eで得られたスラリーを容器に充填成型した後、前記揮発性溶剤を除去することで固形粉末状化粧料を得た。
【0121】
実施例36では、成分(A)の含有量:37%、成分(B)の含有量:2.0%、(A)/(B)=18.5(質量比)、成分(C)の含有量:1.0%、(C)/(B)=0.5(質量比)、成分(D)の配合量:0.35%である。実施例36の固形粉末化粧料(ファンデーション)は、化粧料の肌上での伸び広がりを有する一方で、化粧料の肌への付着性が高く、粉感をほとんど感じなかった。また、化粧持ち及び耐衝撃性も良好であった。