IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シール部材 図1
  • 特許-シール部材 図2
  • 特許-シール部材 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20240307BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20240307BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/3232 201
F16C33/78 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045581
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148141
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】志津 慶剛
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131899(WO,A1)
【文献】実開平03-077863(JP,U)
【文献】特開2014-190515(JP,A)
【文献】特開平11-173239(JP,A)
【文献】実開昭57-109328(JP,U)
【文献】特開2004-286083(JP,A)
【文献】特開2018-040436(JP,A)
【文献】米国特許第04623153(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204
F16J 15/3232
F16C 33/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側部材と外側部材との間に配置されるシール部材であって、
第1シール体と、前記第1シール体と隣接して配置され前記第1シール体とは別体の第2シール体と、を有し、
前記第1シール体は、前記外側部材に内嵌される第1リング部と、前記内側部材に当接する第1リップ部と、前記第1リング部と前記第1リップ部を接続する第1接続部と、を有し、
前記第2シール体は、前記外側部材に内嵌される第2リング部と、前記内側部材に当接する第2リップ部と、前記第2リング部と前記第2リップ部を接続する第2接続部と、を有し、
前記第1リング部と前記第2リング部は径方向からみて重ならず、
前記第2シール体は、第2弾性部材と、前記第2弾性部材に固着された第2金属環と、を有し、
前記第2弾性部材は、前記第2リング部を構成し、前記第2金属環を覆う第2リング部弾性部を有し、
前記第2リング部の前記第2リング部弾性部は、径方向から見たときに、前記第1リップ部と重なることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記第1シール体は、前記第1リップ部を前記内側部材に付勢するばね部材を有し、前記第2リング部は、径方向から見たときに、前記ばね部材と重なることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第1リング部を軸方向から覆う第1弾性部材を有し、
前記第1弾性部材は、前記第2弾性部材の前記第2リング部を軸方向から覆う部分に軸方向に接することを特徴とする請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記第2シール体の前記第2リップ部および前記第2接続部は、前記第2シール体の反前記第1シール体側に隣接する軸受の外輪によって、軸方向に位置決めされることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項5】
前記第2金属環は、前記第2接続部に配置される第2接続部金属環と、前記第2接続部金属環の径方向外側端部から軸方向にて前記第1シール体側に曲折され前記第2リング部に配置される第2リング部金属環と、を有し、
前記第2リング部は、前記第2リング部金属環を軸方向に覆うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項6】
前記第1シール体と前記第2シール体は異なる素材により構成され
前記第1シール体に用いられる素材は、前記第2シール体に用いられる素材より油を通しにくい素材で構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
空間をシールするためのシール部材が知られている。例えば、特許文献1には、装置の外側の外部空間と装置の内側の内部空間との間での流体の流通を防ぐシール体が記載されている。特許文献1に記載のシール体は、装置の表面に圧接されるシール部を有するシール部材と、内部空間で発生した異物がシール部へ侵入することを防止する防止部とを備える。防止部は、装置の表面に圧接されるリップ部を含み、リップ部は、シール部を内部空間から隔離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-40436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシール体は、防止部が装置内周面に嵌め込まれており、防止部の装置内周面との当接幅が小さいため、防止部がつれ周りや移動などを生じやすく、適切な位置決めがなされず安定性に欠ける。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、安定性を改善可能なシール部材を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のシール部材は、内側部材と外側部材との間に配置されるシール部材であって、第1シール体と、第1シール体と隣接して配置され第1シール体とは別体の第2シール体と、を有する。第1シール体は、外側部材に内嵌される第1リング部と、内側部材に当接する第1リップ部と、第1リング部と第1リップ部を接続する第1接続部と、を有する。第2シール体は、外側部材に内嵌される第2リング部と、内側部材に当接する第2リップ部と、第2リング部と第2リップ部を接続する第2接続部と、を有する。第2リング部は、径方向から見たときに、第1リップ部と重なる。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性を改善可能なシール部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るシール部材を備えた回転装置の一例を概略的に示す側断面図である。
図2】実施形態に係るシール部材の第1の例を示す側断面図である。
図3】実施形態に係るシール部材の第2の例を示す側断面図である。
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
以下、図面を参照して、実施形態に係るシール部材100の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシール部材100が適用された回転装置1を示す側断面図である。回転装置1は、内側部材32と、外側部材34と、軸受40とを備える。一例として、回転装置1は、減速機であってもよいし、偏心揺動型減速機であってもよい。この場合、内側部材32はキャリアに対応し、外側部材34はキャリアの外周を覆う筒状のケーシングに対応し、軸受40は主軸受に対応する。
【0013】
以下、回転装置1の内側部材32の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、その中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。この例における中心軸線Laは内側部材32の回転軸線に一致している。内側部材32と外側部材34との間には、軸受40が設けられる。内側部材32は、外側部材34内に配置され外側部材34に対して相対回転可能に支持される。
【0014】
軸受40は、外側部材34と内側部材32の軸方向の一方側と他方側とに配置されている。軸受40は、周方向に間隔を空けて並ぶ複数の転動体42を有している。図1の例では、軸受40の内輪軌道面は内側部材32の外周面に形成されており、外輪軌道面は外側部材34の内周面に嵌め込まれた外輪41に形成されている。つまり、軸受40の外輪41は、外側部材34とは別体に形成されている。軸受40には、潤滑剤が保持されている。なお、回転装置1が減速機の場合、軸受40だけでなく、外側部材34と内側部材32で区画される内部空間(減速機構が配置される空間)にも潤滑剤が封入される。
【0015】
内側部材32と外側部材34との間の空間において、潤滑剤を保持する軸受40が配置されてシール部材100によってシールされている領域を「潤滑剤保持空間J」という。また、潤滑剤保持空間Jから回転装置1の外部空間に至る通気路において、潤滑剤保持空間Jに接近する側を「内部側」といい、その反対側を「外部側」という。
【0016】
図2は、本実施形態のシール部材100の第1の例を示す断面図である。この図は、径方向(軸方向)に沿って切断された側断面を示している。シール部材100は、内側部材32と外側部材34との間において、潤滑剤保持空間Jの外部側に配置される。シール部材100は、内側部材32と、内側部材32と相対回転可能に配置される外側部材34との間をシールする。内側部材32と外側部材34とが相対回転するとき、シール部材100は、内側部材32に対して外側部材34と一体的に相対回転する。
【0017】
シール部材100は、第1シール体10と、第1シール体10と隣接して配置され第1シール体10とは別体の第2シール体20と、を有する。第1シール体10および第2シール体20は、内側部材32を環囲する環状体である。第1シール体10は、周方向にほぼ同じ断面を有する。第2シール体20は、周方向にほぼ同じ断面を有する。第1シール体10および第2シール体20の配置に制限はないが、この例では、第1シール体10は、第2シール体20の外部側に配置されている。
【0018】
第1シール体10は、外側部材34に内嵌される第1リング部11と、内側部材32に当接する第1リップ部12と、第1リング部11と第1リップ部12を接続する第1接続部14とを有する。第1シール体10は、第1リップ部12が内側部材32に当接することにより、外側部材34と内側部材32との間の隙間をシールしている。第1リップ部12は、潤滑剤保持空間Jの潤滑剤の外部への漏出を抑制可能なメインリップとして機能する。また、第1リップ部12は、外部からの異物の侵入を抑制するダストリップを軸方向外側端に有している。
【0019】
第2シール体20は、外側部材34に内嵌される第2リング部21と、内側部材32に当接する第2リップ部22と、第2リング部21と第2リップ部22を接続する第2接続部24とを有する。第2シール体20は、第2リップ部22が内側部材32に当接することにより、内側部材32と外側部材34との間の隙間をシールしている。第2リップ部22は、潤滑剤保持空間Jの潤滑剤の外部への漏出を抑制するとともに、潤滑剤保持空間Jに存在する異物が第1リップ部12へ侵入するのを抑制可能なダストリップとして機能する。
【0020】
第1シール体10をさらに説明する。図2に示すように、第1シール体10は、全体として角張ったC字状の断面を有する。第1シール体10は、第1弾性部材17と、第1金属環18と、ばね部材15とを有する。第1金属環18は、第1弾性部材17に固着される。
【0021】
第1弾性部材17は、第1金属環18を覆う。第1弾性部材17は、第1接続部弾性部17pと、第1リング部弾性部17sと、第1リップ部弾性部17qとを含む。第1接続部弾性部17pは、第1接続部14に配置される中空円板状の部分であり、後述する第1接続部金属環18pを覆う。第1リング部弾性部17sは、第1リング部11に配置される円筒状の部分であり、後述する第1リング部金属環18sを覆う。第1リップ部弾性部17qは、第1リップ部12を構成する円筒状の部分である。つまり、第1弾性部材17は、角張ったC字状の断面を有する。第1弾性部材17は、ゴムなどの柔らかい樹脂材料で形成されており、第1金属環18よりも弾性が大きい。
【0022】
第1金属環18は、それ自身では内側部材32および外側部材34に接触しない部分である。第1金属環18は、第1弾性部材17の形状を一定の範囲で維持する芯材として機能する。第1金属環18は、第1弾性部材17よりも剛性が大きく、特に第1リップ部12よりも剛性が大きい。なお、本明細書において、「剛性」は外部からの力に対する変形のし難さであり、例えばヤング率で示すことができる。つまり、ヤング率が大きい場合は剛性も大きいといえる。
【0023】
第1金属環18は、第1接続部金属環18pと、第1リング部金属環18sとを含む。第1接続部金属環18pは、第1接続部14に配置される中空円板状の部分である。第1リング部金属環18sは、第1リング部11に配置される中空円筒状の部分である。第1リング部金属環18sは、第1接続部金属環18pの径方向外側端部から軸方向にて第2シール体20側に曲折され軸方向に延びる。つまり、第1金属環18はL字状の側断面を有する。第1金属環18は、鉄系金属などの金属材料で構成できる。
【0024】
ばね部材15は、第1リップ部12を内側部材32に付勢する。換言すると、第1リップ部12は、ばね部材15によって内側部材32の外周面に押しつけられる。第1リップ部12が、内側部材32に押しつけられることで、これらの間に良好なシール構造が形成される。ばね部材15は、第1リップ部12の外周面に形成された周状溝に嵌め込まれる。ばね部材15は、鉄系金属などの金属材料で構成できる。
【0025】
第2シール体20をさらに説明する。図2に示すように、第2シール体20は、全体としてL字状の側断面を有する。第2シール体20は、第2弾性部材27と、第2金属環28とを有する。第2金属環28は、第2弾性部材27に固着される。
【0026】
第2弾性部材27は、第2金属環28を覆う。第2弾性部材27は、第2接続部弾性部27pと、第2リング部弾性部27sと、第2リップ部弾性部27qとを含む。第2接続部弾性部27pは、第2接続部24に配置される中空円板状の部分であり、後述する第2接続部金属環28pを覆う。第2リング部弾性部27sは、第2リング部21に配置される円筒状の部分であり、後述する第2リング部金属環28sを覆う。第2リップ部弾性部27qは、第2リップ部22を構成する。第2弾性部材27は、L字状の側断面を有する。第2弾性部材27は、比較的柔らかい材料で形成されており、第2金属環28よりも弾性が大きい。
【0027】
第2金属環28は、それ自身では内側部材32および外側部材34に接触しない部分である。第2金属環28は、第2弾性部材27の形状を一定の範囲で維持する芯材として機能する。第2金属環28は、第2弾性部材27よりも剛性が大きく、特に第2リップ部22よりも剛性が大きい。
【0028】
第2金属環28は、第2接続部金属環28pと、第2リング部金属環28sとを含む。第2接続部金属環28pは第2接続部24に配置され、第2リング部金属環28sは第2リング部21に配置される。この例では、第2金属環28は、第2接続部金属環28pおよび第2リング部金属環28sが一体化された中空円板状の部材であり、I字状の側断面を有する。第2金属環28は、鉄系金属などの金属材料で構成できる。
【0029】
この例では、第2金属環28の第1シール体10とは反対側の面が第2弾性部材27に全面的に覆われ、第1シール体10側の面は一部が覆われている。
【0030】
図2の例では、第1リング部11と第2リング部21が軸方向に接しており、第1リップ部12と第2リップ部22とは、軸方向に離間して相互に変形可能になっている。なお、第1リング部11と第2リング部21は接していなくてもよいし、スペーサ等を介して接していてもよい。
【0031】
さらに、本実施形態の構成を説明する。
【0032】
ロボットの関節駆動用など一般的な減速機では、内部に封入された潤滑剤の漏洩を減らすためにリップを有するオイルシールが用いられる。このリップは、減速機の歯車や軸受の摩耗粉の影響により信頼性が低下することがある。そこで、本実施形態のシール部材100は、第1シール体10と、第1シール体10と隣接して配置され第1シール体10とは別体の第2シール体20とを有する。第2シール体20を有することにより、第1シール体10への摩耗粉の到達量を低減できる。
【0033】
上述したように、第1シール体10は、第1リング部11、第1リップ部12および第1接続部14を有し、第2シール体20は、第2リング部21、第2リップ部22および第2接続部24を有する。第2リング部21と外側部材34との嵌合範囲を拡大することが考えられる。本実施形態の第2リング部21は、径方向から見たときに、第1リップ部12と重なる。図2に示すように、第2リング部21は、第1リップ部12と重複する重複部分23を有することにより、第2リング部21と外側部材34との嵌合範囲を拡大できるので、外側部材34に対する第2シール体20の位置が安定する。
【0034】
重複部分23を広くすることが考えられる。本実施形態では、第1シール体10は、第1リップ部12を内側部材32に付勢するばね部材15を有し、第2リング部21は、径方向から見たときに、ばね部材15と重なる。この場合、重複部分23を一層広くできる。図2に示すように、第2リング部21は、軸方向にて、ばね部材15の第2シール体20側の端部15jを超えてばね部材15と重なる範囲まで延びている。
【0035】
本実施形態では、第2リング部21は、軸方向で、ばね部材15の第2シール体20から遠い側(反第2シール体20側)の端部15hには達しない。図2に示すように、第2リング部21は、軸方向にて、端部15hの手前まで延びている。この場合、第1リング部11の外側部材34との嵌合範囲を大きくできる。なお、第2リング部21は、第1リップ部12と内側部材の接触点(ばね部材15の中央)まで達していてもよいし、ばね部材の端部15hを超えてもよい。
【0036】
第2シール体20の軸方向位置を安定化することが考えられる。本実施形態では、第2シール体20は、第2シール体20の反第1シール体10側(図中右側)に隣接する軸受40の外輪41によって、軸方向に位置決めされる。この場合、第2シール体20が外輪41によって軸方向に支持されるので、第2シール体20の軸方向位置を安定化できる。図2に示すように、第2リング部21は、外輪41の端面に接することにより位置決めされ、第1リング部11は、第2リング部21の端面に接することにより位置決めされる。この場合、シール部材100を組み込むときの位置決め作業が容易になる。第2シール体20の径方向の中間部が外輪41の端面に支持されるので、第2シール体20の姿勢が安定する。
【0037】
本実施形態では、第1シール体10と第2シール体20とは異なる素材により構成されている。例えば、第1シール体10は、潤滑剤を遮るために油を通しにくい素材で形成できる。このような素材の一例としてゴムなどの樹脂が挙げられる。第2シール体20は、油は通すが摩耗粉などの異物を通しにくい素材で形成できる。このような素材の一例としてフェルトが挙げられる。この場合、それぞれの機能に適した素材を選択できる。また、例えば、第1シール体10は合成ゴムとし、第2シール体20はPTFEやポリウレタンなどのプラスチック系樹脂としてもよい。
【0038】
次に、図3を参照してシール部材100の第2の例を説明する。図3は、本実施形態のシール部材100の第2の例を示す側断面図であり、図2に対応する。第2の例は、第1の例に対して第2金属環28の形状が相違し、他の構成は同様である。よって、重複する説明を省き、主に第2金属環28を説明する。
【0039】
第2の例では、第2金属環28は、第2接続部24に配置される第2接続部金属環28pと、第2接続部金属環28pの径方向外側端部から軸方向にて第1シール体10側(図中左側)に曲折され第2リング部21に配置される第2リング部金属環28sとを有する。第2金属環28は、第2リング部金属環28sが円筒形であるため、全体としてL字状の側断面を有する点で、図2の第1の例と異なる。この場合、第2リング部21の剛性を高めることができ、外側部材34に対する第2シール体20の位置がより安定する。
【0040】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0041】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0042】
実施形態の説明では、第2リング部21が、径方向から見たときに、ばね部材15と重なる例を示したが、これらが重なることは必須ではなく、第2リング部21がばね部材15と重ならない構成であってもよい。
【0043】
実施形態の説明では、第1シール体10と第2シール体20とが異なる素材により構成される例を示したが、第1シール体10と第2シール体20とは同じ素材により構成されてもよい。
【0044】
実施形態の説明では、シール部材100が、第1シール体10と第2シール体20の2つのシール体を含む例を示したが、シール部材は、3以上のシール体を含んでもよい。
【0045】
実施形態の説明では、第2リング部21が外輪41の端面に接する例を示したが、第2リング部21が外輪41に接することは必須ではなく、これらは非接触であってもよい。例えば、第2リング部は、外側部材に設けられた段部に接することにより位置決めされてもよい。
【0046】
実施形態の説明では、第1シール体10および第2シール体20は、弾性部材と金属環を有する構成とされていたが、これに限定されるものではなく、金属環を有さず弾性部材により構成されてもよい。一般的にこの場合には、リング部の径方向厚みが実施形態よりも大きくなり、接続部の径方向厚みが相対的に小さくなる。
【0047】
上述の各変形例は実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0048】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0049】
1 回転装置、 10 第1シール体、 11 第1リング部、 12 第1リップ部、 14 第1接続部、 15 ばね部材、17 第1弾性部材、 18 第1金属環、 20 第2シール体、 21 第2リング部、 22 第2リップ部、 24 第2接続部、 27 第2弾性部材、 28 第2金属環、 28p 第2接続部金属環、 28s 第2リング部金属環、 32 内側部材、 34 外側部材、 40 軸受、 41 外輪、 100 シール部材。
図1
図2
図3