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特許7449739検査システム、学習装置、学習プログラム、学習方法、検査装置、検査プログラム、検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】検査システム、学習装置、学習プログラム、学習方法、検査装置、検査プログラム、検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240307BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 350B
G06T7/00 610
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020051136
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148720
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】梅田 学
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159981(JP,A)
【文献】特開2015-087949(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1926561(KR,B1)
【文献】特許第6294529(JP,B1)
【文献】特開2017-053819(JP,A)
【文献】特開2002-328096(JP,A)
【文献】KUMRU, Mesut,Assessing the visual quality of sanitary ware by fuzzy logic,Applied Soft Computing,2013年,Volume 13, Issue 8,pp.3646-3656
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01C 11/00 - G01C 11/36
G06T 1/00 - G06T 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習装置と、
前記学習装置により学習された前記検出器を用いて、検査対象の検出対象部位を検出する検査装置と、
を備え、
前記学習装置は、
検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、
前記学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施す画像処理部と、
前記画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データ生成部により生成された学習データを使用して前記検出器を学習する学習部と、
を備え、
前記検査装置は、
検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、
前記検出器を用いて、前記検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布を取得し、それぞれの輝度の分布に基づいて、前記画像処理の種類又はカーネルサイズを決定する
検査システム。
【請求項2】
検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、
前記学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施す画像処理部と、
前記画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データ生成部により生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布を取得し、それぞれの輝度の分布に基づいて、前記画像処理の種類又はカーネルサイズを決定する
学習装置。
【請求項3】
前記検査対象は衛生陶器であり、前記検出対象部位は前記衛生陶器の表面に生じた欠陥である請求項に記載の学習装置。
【請求項4】
前記欠陥はクラックである請求項に記載の学習装置。
【請求項5】
コンピュータを、
検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、
前記学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施す画像処理部と、
前記画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データ生成部により生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習部と、
として機能させ、
前記画像処理部は、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布を取得し、それぞれの輝度の分布に基づいて、前記画像処理の種類又はカーネルサイズを決定する
学習プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得するステップと、
取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施すステップと、
処理された検出対象部位の画像から学習データを生成するステップと、
生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習するステップと、
を実行させ、
前記画像処理を施すステップにおいて、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布を取得し、それぞれの輝度の分布に基づいて、前記画像処理の種類又はカーネルサイズを決定する
学習方法。
【請求項7】
検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、
前記検査用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施す画像処理部と、
検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、前記検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、
を備え、
前記画像処理の種類又はカーネルサイズは、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布に基づいて決定される
検査装置。
【請求項8】
前記検出部により検出された複数の検出対象部位が近接している場合、それらの検出対象部位をまとめて1つの検出対象部位として検出する請求項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記検査対象は衛生陶器であり、前記検出対象部位は前記衛生陶器の表面に生じた欠陥である請求項7又は8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記欠陥はクラックである請求項に記載の検査装置。
【請求項11】
コンピュータを、
検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、
前記検査用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施す画像処理部と、
検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、前記検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、
として機能させ、
前記画像処理の種類又はカーネルサイズは、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布に基づいて決定される
検査プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
検査対象の撮像画像を取得するステップと、
取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、前記撮像画像の全体にぼかしフィルタをかける画像処理を施すステップと、
検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、取得された撮像画像から検出対象部位を検出するステップと、
を実行させ、
前記画像処理の種類又はカーネルサイズは、前記検査対象の撮像画像の前記検出対象部位における輝度の分布と、前記検出対象部位ではない背景における輝度の分布に基づいて決定される
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査対象を検査するための技術に関し、とくに、検査対象を検査するための検査システム、検査システムに利用可能な学習装置、学習プログラム、学習方法、検査システムに利用可能な検査装置、検査プログラム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便器装置の貯水タンクなどの衛生陶器を製造する際に、施釉や焼成などの工程において、釉薬のはげや亀裂(クラック)などの不具合が生じうる。従来は、熟練した検査員が目視で外観を検査していたが、人材を確保するのが困難で、教育負荷も高いため、属人化の解消が大きな課題となっていた。
【0003】
このような不具合を自動的に検出するために、検査対象物の撮像画像から表面状態を判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-047098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不具合を検出できずに、不具合のあるままで製品を出荷してしまうと、回収、代品出荷、再加工などの手間が生じるとともに、製品の信頼性が低下してしまう。したがって、不具合を自動的に検出する精度を更に高める必要がある。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、検査対象を検査する精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の検査システムは、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習装置と、学習装置により学習された検出器を用いて、検査対象の検出対象部位を検出する検査装置と、を備える。学習装置は、検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、撮像画像に画像処理を施す画像処理部と、画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、学習データ生成部により生成された学習データを使用して検出器を学習する学習部と、を備える。検査装置は、検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、検出器を用いて、検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様は、学習装置である。この装置は、検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、撮像画像に画像処理を施す画像処理部と、画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、学習データ生成部により生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習部と、を備える。
【0009】
本開示の別の態様は、学習プログラムである。このプログラムは、コンピュータを、検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得する学習用画像取得部と、学習用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、撮像画像に画像処理を施す画像処理部と、画像処理部により処理された検出対象部位の画像から学習データを生成する学習データ生成部と、学習データ生成部により生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習する学習部と、として機能させる。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、学習方法である。この方法は、コンピュータに、検出対象部位を含む検査対象の撮像画像を取得するステップと、取得された検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、撮像画像に画像処理を施すステップと、処理された検出対象部位の画像から学習データを生成するステップと、生成された学習データを使用して、検査対象の検出対象部位を検出するための検出器を学習するステップと、を実行させる。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、検査装置である。この装置は、検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、検査用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、撮像画像に画像処理を施す画像処理部と、検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、を備える。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、検査プログラムである。このプログラムは、コンピュータを、検査対象の撮像画像を取得する検査用画像取得部と、検査用画像取得部により取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、撮像画像に画像処理を施す画像処理部と、検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、検査用画像取得部により取得された撮像画像から検出対象部位を検出する検出部と、として機能させる。
【0013】
本開示のさらに別の態様は、検査方法である。この方法は、コンピュータに、検査対象の撮像画像を取得するステップと、取得された検査対象の撮像画像から検出対象部位を検出する前に、撮像画像に画像処理を施すステップと、検査対象の撮像画像に含まれる検出対象部位の画像から生成された学習データを使用して学習された検出器を用いて、取得された撮像画像から検出対象部位を検出するステップと、を実行させる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る検査システムの構成を示す図である。
図2】タンクの表面の撮像画像の例を示す図である。
図3】タンクの表面の撮像画像の例を示す図である。
図4】実施の形態に係る学習方法の手順を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る検査方法の手順を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係る学習装置の構成を示す図である。
図7】実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施の形態として、衛生陶器の一例であるタンクの外観を検査する技術について説明する。実施の形態に係る学習装置は、タンクの表面に生じたクラックなどの欠陥を検出するための欠陥検出器を学習する。実施の形態に係る検査装置は、学習装置により学習された欠陥検出器を使用してタンクの撮像画像から欠陥を検出する。これにより、検査の効率及び精度を向上させることができるので、検査員の負担を大幅に軽減させることができる。また、合格品を不合格品と判定する割合を低減させることができるので、不合格品の見直しなどの手間を軽減させることができる。また、検査員の経験や技量などによらず、精確な検査を実施することができるので、検査の属人化を解消し、検査員の人員不足を軽減させることができるとともに、製品の品質を良好に安定させることができる。
【0017】
図1は、実施の形態に係る検査システムの構成を示す。検査システム1は、検査対象であるタンク2と、タンク2の外観を撮像するための撮像装置3と、タンク2の表面に生じた欠陥を検出するための欠陥検出器を学習する学習装置100と、欠陥検出器を用いてタンク2の表面を検査する検査装置200と、それらの装置を接続する通信網の一例であるインターネット4とを備える。
【0018】
図2は、タンク2の表面の撮像画像の例を示す。図2(a)は、タンク2の表面に生じたクラックの画像を示す。撮像画像10には、4つのクラック11a、11b、11c、11dの画像が含まれている。学習装置100は、撮像画像10に含まれるクラックに対して、クラックであることを示すアノテーション(教師ラベル)を付与し、教師あり学習によって欠陥検出器を学習する。
【0019】
欠陥検出器の汎化性能(未知データに対する検出性能)を向上せるためには、多種多様な欠陥の画像を学習データとして欠陥検出器を学習する必要があるが、タンク2を製造する際にタンク2の表面に欠陥が発生する割合は非常に低いので、実際にタンク2の表面に欠陥が生じている画像を大量に収集して学習データを生成するのは困難である。このような課題を解決するために、本実施の形態では、1つの欠陥の画像を複数に分割し、分割された欠陥の画像のそれぞれから学習データを生成する。これにより、大量の学習データを効率良く生成して欠陥検出器を学習することができるので、欠陥検出器の汎化性能及び精度を向上させることができる。このようにして学習された欠陥検出器により欠陥を検出する場合、1つの欠陥が存在する場合であっても、細分化された欠陥の一部ずつが複数個に分けて検出される可能性があるが、検出後に近接している欠陥同士をまとめればよい。この手法は、クラックなど、1つの欠陥においても位置によって形状などの特徴が異なりうる欠陥の検出器を学習する際にとくに効果的である。
【0020】
学習装置100は、図2(a)に示すように、4つのクラック11a、11b、11c、11dの画像のそれぞれにアノテーション12a、12b、12c、12dを付与してもよいが、本実施の形態では、図2(b)に示すように、4つのクラック11a、11b、11c、11dの画像のうち11a、11b、11cの3つの画像をそれぞれ複数に分割し、分割された複数のクラックの画像のそれぞれにアノテーションを付与して、別々の学習データを生成する。例えば、クラック11aの画像を3つに分割し、それぞれにアノテーション12a1、12a2、12a3を付与して、3つの学習データを生成する。これにより、アノテーションが付与された学習データの数を増やすことができるので、欠陥検出器の汎化性能及び精度を向上させることができる。
【0021】
学習装置100は、担当者からアノテーションの指定を受け付けてもよいし、自動的又は半自動的にアノテーションを付与してもよい。学習装置100は、撮像画像10に含まれる欠陥の位置、大きさ、種類の指定を担当者から受け付け、指定された欠陥の大きさ、種類、数などに応じて、欠陥の画像を分割してから学習データを生成するのか分割せずに学習データを生成するのかや、分割する場合は分割数や分割したそれぞれの領域の大きさや形状などを決定してもよい。例えば、図2(a)に示したクラック11dは、位置によらず単調な形状を有しているので、分割せずに全体にアノテーション12dを付与してもよい。クラック11a、11b、11cは、変化に富んだ形状を有しているので、クラックの大きさや形状の変化などに応じた数に分割して、それぞれにアノテーションを付与してもよい。
【0022】
図3は、タンク2の表面の撮像画像の例を示す。図3(a)は、タンク2の表面に生じたクラックの画像を示す。タンク2の表面の撮像画像には、クラックなどの欠陥に起因する輝度のコントラストの他に、タンク2の表面の凹凸や撮像時の環境光などに起因する輝度のコントラストが含まれうる。このような検出すべきでない背景画像の特徴を欠陥検出器が誤学習すると、検出精度が低下しうる。このような課題を解決するために、本実施の形態では、検査対象の撮像画像から学習データを生成する前に、撮像画像に画像処理を施す。この前処理は、欠陥などの検出対象部位ではない部位の画像のコントラストを低下させて輝度を平滑化することが可能な画像処理であってもよい。例えば、画像全体にぼかし(ブラー)フィルタをかけてもよい。ぼかしフィルタは、例えば、カーネルの範囲内の画素値の平均を取る箱形フィルタ、注目画素との距離に応じて重みを変えるガウシアンフィルタ、カーネルの範囲内の全画素の中央値を採用する中央値フィルタ、正規分布の重みを付けたガウシアンフィルタであるバイラテラルフィルタなどであってもよい。前処理は、画像の解像度を下げる画像処理であってもよい。これにより、簡易な画像処理によって学習効率を向上させることができるので、高精度な欠陥検出器を短期間で生成することができる。
【0023】
図3(b)は、図3(a)に示した画像にぼかしフィルターをかけた画像を示す。背景はぼかされてコントラストが低下しているので、背景の特徴を誤学習するのを低減させることができる。欠陥のコントラストも若干低下するが、特徴は保たれているので、欠陥の特徴を欠陥検出器に学習させることができる。
【0024】
画像処理は、検出対象部位におけるコントラストの特徴が失われず、検出対象部位ではない部位におけるコントラストが十分に平滑化されるような条件で実行されればよい。学習装置100は、検出対象部位における輝度の分布と、検出対象部位ではない背景における輝度の分布を取得し、それぞれの輝度の分布に基づいて、画像処理の種類やカーネルサイズなどの条件を決定してもよい。学習装置100は、同種の検査対象を同様の環境で撮像した複数の撮像画像を検査する場合は、同じ条件で画像処理を施してもよい。
【0025】
撮像装置3により検査対象のタンク2の表面を撮像する際に、欠陥ではない部位のコントラストが十分に低くなるような撮像環境で撮像を実行してもよい。例えば、タンク2の表面の色や反射率などに応じた照度でタンク2に光を照射してもよい。また、撮像装置3の焦点距離、解像度、絞りなどを調整してもよい。
【0026】
図4は、実施の形態に係る学習方法の手順を示すフローチャートである。学習装置100は、欠陥を有する検査対象の撮像画像を取得し(S10)、取得した撮像画像に対してぼかしなどの前処理を実施する(S12)。学習装置100は、撮像画像に含まれる欠陥の画像の少なくとも一部を複数に分割し(S14)、分割した複数の欠陥画像のそれぞれにアノテーションを付与して学習データを生成する(S16)。学習装置100は、欠陥の種類ごとに異なるアノテーションを付与してもよい。これにより、欠陥の種類ごとに特徴を欠陥検出器に学習させることができるので、欠陥検出器を用いて検査対象の撮像画像から欠陥を検出すると同時に欠陥の種類を判定することができる。学習装置100は、生成した学習データを使用して教師あり学習により欠陥検出器を学習する。学習装置100は、欠陥検出器を学習する際に、既知の任意の学習アルゴリズムを適用してもよい。
【0027】
図5は、実施の形態に係る検査方法の手順を示すフローチャートである。検査装置200は、検査対象の撮像画像を取得し(S30)、学習装置100が学習データを生成する際に実施したのと同様の画像処理を撮像画像に対して実施する(S32)。検査装置200は、学習済みの欠陥検出器を用いて撮像画像から欠陥を検出し(S34)、検出結果を出力する(S36)。
【0028】
本発明者は、上記の方法により、欠陥を含むタンク2の不合格品212点の撮像画像を使用して欠陥検出器を学習し、学習した欠陥検出器を使用してタンク2の合格品500点と不合格品23点の検査を実施した。不合格品を合格品と誤判定した件数は0件であった。これにより、本実施の形態の技術によって、不合格品を誤って出荷してしまう可能性を最小限に抑えることができることが示された。また、合格品を不合格品と誤判定した件数は7件であり、正解率は98.6%であった。これにより、不合格品を検査員が確認する手間を大幅に軽減させることができるとともに、合格品を出荷できずにロスしてしまう割合を大幅に低減させることができることが示された。
【0029】
図6は、実施の形態に係る学習装置100の構成を示す。学習装置100は、表示装置112、入力装置113、通信装置114、処理装置120、及び記憶装置130を備える。学習装置100は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピューターなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0030】
表示装置112は、処理装置120により生成される画面を表示する。表示装置112は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置113は、学習装置100の使用者による指示入力を処理装置120に伝達する。入力装置113は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置112及び入力装置113は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0031】
通信装置114は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置114は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。通信装置114は、インターネット4を介して撮像装置3及び検査装置200との間で通信を行う。
【0032】
記憶装置130は、処理装置120により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置130は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置130には、学習用画像保持部131、学習データ保持部132、及び欠陥検出器133が格納される。
【0033】
処理装置120は、学習用画像取得部121、画像処理部122、学習データ生成部123、学習部124、及び欠陥検出器提供部125を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
学習用画像取得部121は、欠陥を有する検査対象の撮像画像を撮像装置3から取得して学習用画像保持部131に格納する。画像処理部122は、学習用画像保持部131に格納された学習用画像に対して、ぼかしなどの画像処理を施す。学習データ生成部123は、学習用画像に含まれる欠陥にアノテーションを付与する。学習データ生成部123は、少なくとも一部の欠陥画像を複数に分割し、分割されたそれぞれの欠陥画像にアノテーションを付与する。学習データ生成部123は、学習用画像を表示装置112に表示し、入力装置113を介して担当者からアノテーションの指定を受け付けてもよい。学習データ生成部123は、欠陥にアノテーションを自動的に付与してもよい。学習データ生成部123は、学習データを生成して学習データ保持部132に格納する。
【0035】
学習部124は、学習データ保持部132に格納された学習データを使用して、欠陥検出器133を学習する。欠陥検出器提供部125は、学習済みの欠陥検出器133を検査装置200に提供する。
【0036】
図7は、実施の形態に係る検査装置200の構成を示す。検査装置200は、表示装置212、入力装置213、通信装置214、処理装置220、及び記憶装置230を備える。検査装置200は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピューターなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0037】
表示装置212は、処理装置220により生成される画面を表示する。表示装置212は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置213は、検査装置200の使用者による指示入力を処理装置220に伝達する。入力装置213は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置212及び入力装置213は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0038】
通信装置214は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置214は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。通信装置214は、インターネット4を介して撮像装置3及び学習装置100との間で通信を行う。
【0039】
記憶装置230は、処理装置220により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置230は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置230には、検査用画像保持部231、検出結果保持部232、及び欠陥検出器233が格納される。
【0040】
処理装置220は、検査用画像取得部221、画像処理部222、欠陥検出部223、検出結果生成部224、及び検出結果出力部225を備える。これらの構成も、ハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できる。
【0041】
検査用画像取得部221は、撮像装置3により撮像された検査対象の画像を撮像装置3から取得して検査用画像保持部231に格納する。画像処理部222は、学習装置100が学習用画像に対して実施したのと同じ画像処理を検査用画像に対して実施する。
【0042】
欠陥検出部223は、学習装置100から取得した学習済みの欠陥検出器233を用いて、検査用画像保持部231に格納された検査用画像から欠陥を検出し、検出結果を検出結果保持部232に格納する。検出結果生成部224は、検出された欠陥に関する情報を生成する。検出結果生成部224は、欠陥検出部223により検出された複数の欠陥が近接している場合、それらの欠陥をまとめて1つの欠陥とする。検出結果生成部224は、検出された欠陥の位置、大きさ、数、種類などの情報を生成する。検出結果出力部225は、検出結果生成部224により生成された検出結果を表示装置212などに出力する。
【0043】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0044】
上記の実施の形態では、主に衛生陶器の表面に生じたクラックを検出する技術について説明したが、本実施の形態の技術は、衛生陶器の表面に生じた別の種類の不具合、例えば、鉄、銅、素地、異物などの付着、釉薬や色などの異常、気泡、割れ、欠けなどの発生などを検出する場合にも適用可能である。また、衛生陶器以外の任意の製品を検査対象としてもよいし、欠陥以外の任意の検出対象部位を検出対象としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 検査システム、2 タンク、3 撮像装置、4 インターネット、10 撮像画像、11 クラック、12 アノテーション、100 学習装置、121 学習用画像取得部、122 画像処理部、123 学習データ生成部、124 学習部、125 欠陥検出器提供部、131 学習用画像保持部、132 学習データ保持部、133 欠陥検出器、200 検査装置、221 検査用画像取得部、222 画像処理部、223 欠陥検出部、224 検出結果生成部、225 検出結果出力部、231 検査用画像保持部、232 検出結果保持部、233 欠陥検出器。
図1
図2
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図7