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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】産業用ロボットの搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20240307BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B23K37/02 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020053899
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154395
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-083394(JP,A)
【文献】特開2011-004917(JP,A)
【文献】特開昭62-084982(JP,A)
【文献】特開平09-239540(JP,A)
【文献】特開2015-006683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車本体の上部に設置された第1の天板と、
前記第1の天板とヒンジで連結され、前記第1の天板の下面に折り畳み可能に設けられた第2の天板と、
前記第2の天板に設置されたマニピュレータと、
前記第1の天板の下面に設けられた第1の固定部材と、
前記第2の天板の前記ヒンジが設けられた一端と反射側の一端に設けられた第2の固定部材と、
を有し、
前記マニピュレータは、前記第2の天板が開かれたとき前記台車本体の上方に配置され、前記第2の天板が折り畳まれたとき、前記第1の天板と前記台車本体との間に収納され、
前記第2の天板が折り畳まれたとき、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材とによって前記第2の天板が折り畳まれた状態を保持する
ことを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
前記ヒンジが、前記第1の天板の下面の一端と前記第2の天板の下面の一端とに設けられている
請求項1に記載の搬送台車。
【請求項3】
前記台車本体に立設され、前記第1の天板を支持する支柱と、
前記台車本体または前記支柱に設けられ、前記第2の天板が開かれたとき、前記第2の天板を略水平に支持する支持部材と、
を有する
請求項1又は2に記載の搬送台車。
【請求項4】
台車本体の上部に設置された第1の天板と、
前記第1の天板とヒンジで連結され、前記第1の天板の上面側と前記第1の天板の下面側とに位置するように回動可能に設けられた第2の天板と、
前記第2の天板に設置されたマニピュレータと、
前記第1の天板の下面に設けられた第1の固定部材と、
前記第1の天板の上面に設けられた第2の固定部材と、
を有し、
前記第2の天板が前記第1の天板の上面側に配置されたとき前記マニピュレータが前記第1の天板の上方に配置され、前記第2の天板が前記第1の天板の下面側に配置されたとき前記マニピュレータが前記第1の天板と前記台車本体との間に収納され、
前記第2の天板が前記第1の天板の上方に配置されたとき、前記第2の固定部材により前記第2の天板が固定され、
前記第2の天板が前記第1の天板の下方に配置されたとき、前記第1の固定部材により前記第2の天板が固定される
ことを特徴とする搬送台車。
【請求項5】
前記ヒンジが、前記第1の天板の側面と前記第2の天板の下面とに設けられている
請求項に記載の搬送台車。
【請求項6】
前記第2の天板の前記下面における前記ヒンジの取り付け位置が、前記マニピュレータの重心と重なっている
請求項に記載の搬送台車。
【請求項7】
台車本体の上部に設置された第1の天板と、
前記台車本体に設置され上端の位置が前記第1の天板より低い架台と、
一端が前記架台に回動可能に固定された腕材と、
前記腕材の回動位置を固定するストッパと、
前記腕材の他端に取り付けられた第2の天板と、
前記第2の天板に設置されたマニピュレータと、
を有し、
前記第2の天板及び前記マニピュレータは、前記腕材の回動によって、前記台車本体の上で高さが調整される
ことを特徴とする搬送台車。
【請求項8】
前記第2の天板及び前記マニピュレータは、前記腕材の回動により、
前記架台に収納された第1の状態と、
前記第2の天板が前記第1の天板と略同じ高さに設置され、前記マニピュレータが前記第1の天板上に位置する第2の状態と、
前記第2の天板及び前記マニピュレータが、前記台車本体と前記第1の天板との間の高さに位置する第3の状態と、
を取り得る
請求項に記載の搬送台車。
【請求項9】
前記ストッパは、固定板と、ピンと、を有し、
前記固定板と前記腕材は前記ピンを挿通可能な貫通孔が設けられ、
前記腕材は、前記ピンにより回動された位置が固定される
請求項又はに記載の搬送台車。
【請求項10】
前記固定板は、前記腕材の回動半径上に沿って複数の貫通孔を有し、
前記腕材は、前記複数の貫通孔のいずれかによって回動の位置が固定される
請求項に記載の搬送台車。
【請求項11】
前記腕材は、前記架台の上部の少なくとも4箇所に設けられ、
前記第2の天板は、前記4箇所に設けられた腕材によって支持される
請求項9乃至10のいずれか一項に記載の搬送台車。
【請求項12】
前記台車本体と前記第1の天板との間に、前記マニピュレータの電源及びコントーラの一方又は両方が収納されている
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の搬送台車。
【請求項13】
前記マニピュレータが、前記第2の天板から着脱可能に設置されている
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の搬送台車。
【請求項14】
前記マニピュレータが、溶接ロボットである
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、産業用ロボットを搬送する台車に関する。本明細書で開示される発明の一実施形態は、産業用ロボットの一態様としての溶接ロボットを搬送する台車に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、自動車、電子部品、食料品等を製造する製造業、建物等を施工する建設業等、様々な産業において作業の自動化のために用いられている。産業用ロボットは、複数のアーム及び手首部が連結されたマニピュレータと、マニピュレータの動作を制御する制御機器とから構成されている。産業用ロボットは、マニピュレータの手首部分の先に取り付ける機材(「エフェクタ」とも呼ばれる)によって、特定の用途に特化して使用されるものが通常である。例えば、産業用ロボットの一態様として、溶接用ロボットが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-006683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用ロボットは、工場の中で所定の場所に設置されて稼働するものもあれば、建築現場におけるように作業現場を移動しながら使用する形態もある。産業用ロボットを移動させるには搬送用の台車を用いることが考えらえるが、搬送と現場での作業を両立させることが難しい場合がある。例えば、産業用ロボットを搬送台車の高い位置に載せると、上部に突出するため搬送中に梁や天井等に衝突するおそれがある。一方、産業用ロボットを搬送台車の低い位置に載せると、産業用ロボットの動作位置が低すぎて作業性が低下することが問題となる。
【0005】
本発明の一実施形態は、産業用ロボットの搬送の安全と、搬送先での作業性を損なわない搬送用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車は、台車本体の上部に設置された第1の天板と、第1の天板とヒンジで連結され、第1の天板の下面に折り畳み可能に設けられた第2の天板と、第2の天板に設置されたマニピュレータと、を有する。マニピュレータは、第2の天板が開かれたとき台車本体の上方に配置され、第2の天板が折り畳まれたとき、第1の天板と台車本体との間に収納される。
【0007】
本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車は、台車本体の上部に設置された第1の天板と、第1の天板とヒンジで連結され、第1の天板の上面側と第1の天板の下面側とに位置するように回動可能に設けられた第2の天板と、第2の天板に設置されたマニピュレータと、を有する。第2の天板が第1の天板の上面側に配置されたときマニピュレータが第1の天板の上方に配置され、第2の天板が第1の天板の下面側に配置されたときマニピュレータが第1の天板の台車本体との間に収納される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車は、台車本体の上部に設置された第1の天板と、台車本体に設置され上端の位置が第1の天板より低い架台と、一端が架台に回動可能に固定された腕材と、腕材の回動位置を固定するストッパと、腕材の他端に取り付けられた第2の天板と、第2の天板に設置されたマニピュレータと、を有する。第2の天板及び前記マニピュレータは、腕材の回動によって、台車本体の上で高さが調整される。
【発明の効果】
【0009】
本発明一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車によれば、高い位置に産業用ロボットを載せることができ、かつ搬送中は安全な高さに収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の断面図を示し、(A)は産業用ロボットを収納した状態、(B)は産業用ロボットを第1の天板の高さに設置した状態を示す。
図2】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の平面図を示し、(A)はマニピュレータを収納した状態、(B)はマニピュレータを第1の天板の高さに設置した状態を示す。
図3】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の断面図を示し、(A)はマニピュレータを収納した状態、(B)はマニピュレータを第1の天板の上面側に設置した状態を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の平面図を示し、(A)はマニピュレータを収納した状態、(B)はマニピュレータを第1の天板の上面側に設置した状態を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の構成を示し、(A)はマニピュレータを収納した状態の断面図を示し、(B)はその平面図を示す。
図6】本発明の一実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車の構成を示し、(A)及び(B)はマニピュレータが所定の高さに設置された状態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0012】
以下に示すいくつかの実施形態においては、産業用ロボットの一態様として溶接ロボットを用いる場合を例示する。しかしながら、本発明の一実施形態は、溶接ロボットに限定されず、様々な産業用ロボットに適用することができる。本発明の一実施形態は、複数のアーム、関節(「ジョイント」とも呼ばれる)及び手首部が連結されたマニピュレータを備えた各種の産業用ロボットに適用することができる。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態係る搬送台車を詳細に説明する。本実施形態に係る搬送台車は、台車本体に折り畳み式の天板を有し、産業用ロボットを収納し、また産業用ロボットを作動させることができる状態に設置することができる機能を有する。本実施形態にかかる搬送台車によって搬送可能な産業用ロボットとしては、アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボット、ねじ止めロボット、レーザ切断ロボット、プラズマ切断ロボット等がある。
【0014】
図1(A)及び図1(B)は、本実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車100の側面図を示す。また、図2(A)及び図2(B)本実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車100の平面図を示す。図1(A)及び図2(A)は、産業用ロボットに含まれるマニピュレータ200が搬送台車100に収納された第1の状態を示し、図1(B)及び図2(B)は、産業用ロボットに含まれるマニピュレータ200が搬送台車100の上に配置された第2の状態を示す。以下の説明においては、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0015】
図1(A)及び図1(B)、並びに図2(A)及び図2(B)に示すように、搬送台車100は、台車本体102、支柱108、第1の天板110、第2の天板112、支持部材120を含む。台車本体102は、基台104と、基台104に取り付けられたキャスター106を含む。搬送台車100は、キャスター106は取り付け軸が回転式であり、搬送台車100は、人力で、又はモーター等の動力が付されている場合には動力で、前後、斜め、及び左右方向に自在に動くことができる。また、キャスター106には、図示されないストッパが付されていてもよい。
【0016】
第1の天板110は、基台104の上部に立てられた支柱108によって支持される。第1の天板110は基台104の上方で、かつ基台104と重なるように配置される。基台104と第1の天板110とは、両者の間にマニピュレータ200が収納可能な間隔を有するように離隔して配置される。支柱108は、基台104の4隅に対応して配置されることが好ましいが、さらに本数を増やして基台104の中央部や、両端の支柱の間の領域に立てられてもよい。基台104に4本の支柱108を配置することで、第1の天板110を安定して支持することができ、基台104と第1の天板110との間の空間を有効利用することができる。また、支柱108の本数を増やすことで、第1の天板110の耐荷重を高めることができる。
【0017】
なお、搬送台車100は、支柱108に代えて、基台104の上に立てられた側板によって第1の天板110を支持してもよい。また、搬送台車100は、支柱108と側板とを組み合わせて第1の天板110を支持する構造を有していてもよい。
【0018】
第1の天板110には、第2の天板112が取り付けられる。第2の天板112は可動式であり、図1(A)及び図2(A)に示すように、第1の天板110の裏面側(第2面側、又は台車本体側の面側)に畳まれた第1の状態と、図1(B)及び図2(B)に示すように、第1の天板110の外側に設置された第2の状態との少なくとも2つの状態をとり得るように設けられる。例えば、第2の天板112は、ヒンジ114によって第1の天板110に取り付けられる。ヒンジ114は、第1の天板110の裏面側(第2面側、又は台車本体側の面側)の一辺に沿った端部と、第2の天板112の裏面側(第2面側、又は台車本体側の面側)の一辺に沿った端部とに取り付けられる。このような取り付け構造により、搬送台車100は、第2の天板112を、第1の天板110の裏面側(第2面側、台車本体側の面側)に畳まれた第1の状態と、第1の天板110の外側に設置された第2の状態の2つの状態をとることができる。
【0019】
図1(B)及び図2(B)に示すように、第2の天板112が第1の天板110の外側に設置されたとき、支持部材120によって支えられてもよい。支持部材120は、台車本体102に設けられてもよいし、図示されるように支柱108に取り付けられてもよい。例えば、支持部材120は棒状又は板状の部材が用いられ、先端が上下に可動するように他端が支柱108にピン等で取り付けられる。支持部材120は、支柱108にピン止めされる他端が第2の天板112より低い位置に取り付けられることにより(好ましくは支柱108の中央付近)、第2の天板112が設置されたとき、裏面側(第2面側、又は台車本体側の面側)から第2の天板112を支えることができる。搬送台車100は、支持部材120が設けられることにより、第2の天板112を設置されたとき、水平状態を維持することができる。
【0020】
図1(A)及び図2(A)に示すように第2の天板112が収納されたとき、支持部材120は、先端が台車本体102の側に下ろされて、収納されてもよい。また、支持部材120は伸縮式又は折り畳み式の部材で構成されてもよい。例えば、支持部材120は、多段式の伸縮アーム部材、又は関節によってアームが折り畳まれる折り畳み式のアーム部材が用いられてもよい。このような部材を用いることで、支持部材120を搬送台車100にコンパクトに収納することができる。
【0021】
第1の天板110は、裏面側(第2面側、又は台車本体側)に第1の固定部材116が設けられる。第2の天板112には、ヒンジ114が設けられた一辺に対向する一辺の側に第2の固定部材118が設けられる。第1の固定部材116は、第2の天板112が畳まれたとき、第2の固定部材118と整合する位置に設けられる。図1(A)及び図2(A)に示すように、第2の天板112は、第1の天板110の裏面側(第2面側、又は台車側)に畳まれたとき、第1の固定部材116及び第2の固定部材118によって畳まれた第1の状態が保持される。第1の固定部材116及び第2の固定部材118は、ピンを通して固定する形式であってもよいし、ネジ止め式であってもよい。搬送台車100は、第1の固定部材116及び第2の固定部材118を有することで、第2の天板112を安定した状態で収納することができる。
【0022】
第2の天板112は、第1面側にマニピュレータ200が設置される。マニピュレータ200は、第2の天板112に固定されていてもよいし、着脱可能に設置されていてもよい。第2の天板112は可動式であるため、第2の天板112を折り畳むことで、図1(A)及び図2(A)に示すようにマニピュレータ200を第1の天板110と基台104との間に収納することができ、第2の天板112を開くことで、図1(B)図2(B)に示すようにマニピュレータ200を第1の天板110の外側に設置することができる。
【0023】
産業用ロボットは精密機械であるため、取り扱いには慎重を要する。例えば、一般にロボットアームは1mm以下の精度で動作が制御される。そのため産業用ロボットを移動させる場合には、ロボットアームに衝撃がかからないようにする必要がある。本実施形態において産業用ロボットを搬送する場合には、図1(A)及び図2(A)に示すように、搬送台車100に収納した第1の状態とする。建築現場、工場等の作業現場において、産業用ロボットを搬送する場合でも、マニピュレータト200は搬送台車100の内側の空間に収納されているため、梁、柱、壁等の障害物に衝突することなく安全に搬送することができる。この場合において、第2の天板112は、第1の固定部材116及び第2の固定部材118により固定されているので、マニピュレータ200が搬送の際にがたつくことを防止することができる。また、搬送台車100は重心の位置が低くなることにより、キャスター106で走行する際に安定して曲がることができる。
【0024】
産業用ロボットを駆動させる場合には、図1(B)及び図2(B)に示すように、第2の天板112を開いた第2の状態とする。マニピュレータ200は、第1の天板110の外側に配置され、ワークエリアが確保される。マニピュレータ200は、高い位置に設置されるため、作業性を高めることができる。また、第2の天板112は支持部材120で支持されるため、マニピュレータ200の水平を維持し、振動によりばたつくことを防止することができる。なお、基台104、支柱108、第1の天板110、及び第2の天板112は、マニピュレータ200を支持するため、剛性を有する必要があり、金属材料で形成されていることが好ましい。
【0025】
本実施形態では、産業用ロボットの一例としてアーク溶接ロボットを示す。アーク溶接ロボットは、マニピュレータ200、マニピュレータ200の動作を制御するコントローラ214、溶接用電源212、マニピュレータの先端に設けられた溶接トーチ211、溶接トーチ211にワイヤを供給するワイヤ供給装置216、溶接トーチ211にシールドガスを供給するガス供給装置(図示しない)を有する。マニピュレータは、ベース202、ベース202に取り付けられた第1アーム部204a、第2アーム部204b、第1アーム部204aと第2アーム部204bを繋ぐ関節部206、第2アーム部204bの先端に設けられた手首部208、手首部208に取り付けられたエフェクタ210を含む。アーク溶接ロボットは、エフェクタ210として溶接トーチ211が取り付けられる。アーク溶接ロボットは、溶接用電源212から溶接トーチ211に電力が供給され、ガス供給装置から溶接トーチ211にシールドガスが供給され、コントローラ214によってマニピュレータ200を動作させ、溶接トーチ211の位置を制御することにより、溶接を行う。
【0026】
なお、マニピュレータ200は、第2の天板112に着脱可能に設置され、搬送先で取り外し、別の作業台、スライダ等に設置するように構成されてもよい。搬送台車100は、マニピュレータ200を高い位置(例えば、作業者の腰よりも高い位置)に設置可能であるため、第2の天板112から他の場所に移設する場合でも、容易に作業することができる。
【0027】
搬送台車100は、基台104と第1の天板110との間の空間に、溶接用電源212、コントローラ214が搭載されていてもよい。また、産業用ロボットが溶接ロボットである場合には溶接ワイヤ供給装置216が搭載されていてもよい。搬送台車100は、第2の天板112の取り付け位置と反対側の位置に電源212、コントローラ214等を搭載することで、重心のバランスを取ることができる。
【0028】
本実施形態によれば、第1の天板110に折り畳み式の第2の天板112を設け、第2の天板112にマニピュレータ200を設置することで、搬送台車100の移動時にはマニピュレータ200を安全な高さに収納した第1の状態で移動することができ、作業時にはマニピュレータ200を高い位置に設置することができる。それにより、マニピュレータ200が搬送時に梁、柱、壁等と衝突することを防ぎ、搬送台車100の高い位置にマニピュレータ200を設置することができ、作業性を向上させることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に示す搬送台車に対し、天板の構成が異なる一例を示す。以下の説明においては、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
図3(A)及び図3(B)は、本実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車100の側面図を示す。また、図4(A)及び図4(B)本実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車100の平面図を示す。図3(A)及び図4(A)は、産業用ロボットに含まれるマニピュレータ200が搬送台車100に収納された第1の状態を示し、図3(B)及び図4(B)は、産業用ロボットに含まれるマニピュレータ200が搬送台車100の上に設置された第2の状態を示す。以下の説明においては、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0031】
図3(A)及び図4(A)に示すように、第1の天板110の端部E1にヒンジ114が取り付けられる。ヒンジ114は、また、第2の天板112の中央部に取り付けられる。このようなヒンジ114の取り付け構造により、第2の天板112は、第1の天板110の端部E1で、半円の円弧を描くように回転することが可能となる。
【0032】
第1の天板110には、表面側(第1面側)に第1の固定部材116が設けられ、裏面側(第2面側)に第2の固定部材118が設けられる。第1の固定部材116及び第2の固定部材118は、それぞれが第2の天板112の端部と隣接する位置(又は接する位置)に設けられる。第2の天板112は、表面側(第1面側)が地面を向き、裏面側(第2面側)が天面を向く第1の状態(図3(A)に示す状態)のとき、第2の固定部材118で固定され、表面側(第1面側)が天面を向き、裏面側(第2面側)が地面を向く第2の状態(図3(B)に示す状態)とき、第1の固定部材116で固定される。別言すれば、第2の天板112は、第1の状態にあるとき一端が第2の固定部材118で固定され、第2の状態にあるとき他端が第1の固定部材116で固定される。
【0033】
第2の天板112には、裏面側(第2面側)に脚柱113が設けられていてもよい。図3(A)に示すように、第1の状態では、脚柱113が第1の天板110の裏面側(第2面側)と接することで、第2の天板112を水平に保つことができる。また、図3(B)に示すように、マニピュレータ200が設置された第2の状態では、脚柱113が第1の天板110の表面側(第1面側)と接することで、同様に第2の天板112を水平に保つことができる。
【0034】
第2の天板112は、第1の状態において、第1の天板110より低い位置に配置され、第2の状態において、第1の天板110より高い位置に配置される。マニピュレータ200は、第2の天板112の表面(第1面)に設置されるので、第2の天板112の状態によりその高さが変化する。図3(A)に示すように、第2の天板112が第1の状態にあるとき、マニピュレータ200は、基台104と第2の天板112(若しくは第1の天板110)との間に収納される。図3(B)に示すように、第2の天板112が回転して第1の天板110の上面側にある第2の状態のとき、マニピュレータ200は、第1の天板110の上方に配置される。第1の天板110と基台104との間には、電源212、コントローラ214が配置される。
【0035】
このように、本実施形態においても、第1の天板110を固定し、第2の天板112を第1の天板110に対して回動するように設けることで、マニピュレータ200を収納した第1の状態と、マニピュレータ200が第1の天板110の上方に設置され作動させることのできる第2の状態とを形成することができる。産マニピュレータ200は、第1の状態において基台104と第1の天板110との間の高さに配置され、第2の状態において第1の天板110より高い位置に配置される。
【0036】
産業用ロボットを搬送する場合には、図3(A)及び図4(A)に示す第1の状態とすることで、梁、柱、壁等の障害物に衝突することなく安全に搬送することができる。産業用ロボットを駆動させる場合には、図3(B)及び図3(B)に示すように、第2の天板112が第1の天板110の上方にある第2の状態とすることで、ワークアリアを確保し、作業性を高めることができる。
【0037】
この場合において、第1の天板110のヒンジ114が取り付けられる端部E1が、基台104の同じ側の端部E2よりも内側に位置していることで、第1の状態(図3(A)及び図4(A))、及び第2の状態(図3(B)及び図4(B))のいずれの状態においても、平面視で、第2の天板112が基台104の外側に突出しないようにすることができる。このような構成により、搬送台車100は、台車本体102にかかる荷重がキャスター106の内側の領域にかかるようにすることができ、搬送時はもとより作動時においてもマニピュレータ200を安定して支持することができる。
【0038】
なお、本実施形態においても、マニピュレータ200は、第2の天板112に着脱可能に設置され、搬送先で取り外し、別の作業台、スライダ等に設置するように構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態における第2の天板112の取り付け構造によれば、図3(B)に示すように、ヒンジ114の軸とマニピュレータ200の重心とを一致させることができる。それにより、搬送台車100は、マニピュレータ200を水平方向に回転させる場合でも安定性を保つことができる。
【0040】
本実施形態によれば、第1の天板110の端部に半円の円弧を描くように回動する第2の天板112を設け、第2の天板112にマニピュレータ200を設置することで、搬送台車100の移動時にはマニピュレータ200を安全な高さに収納した第1の状態で移動することができ、作業時にはマニピュレータ200を第1の天板110の上方に設置することができる。それにより、マニピュレータ200が搬送時に梁、柱、壁等と衝突することを防ぎ、搬送台車100の高い位置にマニピュレータ200を設置することができ、作業性を向上させることができる。さらに、上記のように、マニピュレータ200の重心と第2の天板112の回動軸とを揃えることができるので、マニピュレータ200の駆動時においても安定性を保つことができる。
【0041】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に示す搬送台車に対し、第2の天板の取り付け構造及び動作が異なる態様を示す。以下の説明においては、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
図5(A)は、本実施形態に係る産業用ロボットの搬送台車100の側面図を示し、図5(B)は、その平面図を示す。また、図6(A)及び図6(B)は、産業用ロボットに含まれるマニピュレータ200を上方に引き上げた状態を示す。以下の説明においては、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0043】
搬送台車100は、台車本体102の上に、支柱108で支持された第1の天板110と、基台104の上に設けられた架台122と、架台122に設けられた腕材124によって支持された第2の天板112とを含む。マニピュレータ200は、第2の天板112の上に設置されている。架台122は、高さが第1の天板110の高さよりも低く、第2の天板112及びマニピュレータ200を収納できる幅を有する。架台122の構造は任意であるが、支柱と梁を含んで構成される。架台122を構成する支柱の一部は、第1の天板110を支持する支柱108を兼ねていてもよい。架台122はマニピュレータ200を支持するため基台104に固定される。マニピュレータ200は、架台122の上に持ち上げられ、高さが調節されるため、第1の天板110は架台122の上部に突出しないように設けられる。
【0044】
架台122には、支柱の上部に設けられた梁に腕材124が設けられる。腕材124は、例えば、架台122の上部の4箇所に設けられ、先端部分に第2の天板112が取り付けられる。腕材124は、架台122との取り付け部、及び第2の天板112との取り付け部に回転軸が設けられ、架台122への取り付け部分を中心に回動可能に設けられる。
【0045】
架台122には、また、ストッパ126が設けられる。ストッパ126は、例えば、架台122に取り付けられた固定板128と、ピン(図示されない)とによって構成される。腕材124と固定板128は、腕材124の回動半径上にピンを挿通可能な貫通孔130を有する。固定板に設けられる貫通孔130は複数設けられていることが好ましい。それにより、後述されるように、腕材124の回動位置を固定し、第2の天板112の高さ(すなわち、マニピュレータ200の高さ)を何段階かに調節することが可能となる。また、ストッパ126は、貫通孔に代えて、固定板128に腕材124の回動半径に沿った貫通溝が設けられていてもよい。固定板128に設けられた貫通溝と腕材124に設けられた貫通孔にボルト及びナット等の締結具を通し締結することで、第2の天板112に高さ(すなわち、マニピュレータの高さ)を任意の位置で保持することができる。このようなストッパ126は、図5(B)に示すように、架台122の両側に設けられていることが好ましく、それによりマニピュレータ200を所定の高さにおいて安定した状態で保持することができる。
【0046】
図5(A)及び図5(B)は、第2の天板112が腕材124によって架台122から吊り下げられ、マニピュレータ200が収納された第1の状態を示す。この第1の状態では、マニピュレータ200が、平面視において台車本体102から突出しないように収納され、また、高さ方向においても、第1の天板110より突出しないように収納される。第2の天板112は、この状態で図示されないロック機構によって揺れないように固定されていてもよい。
【0047】
図6(A)は、腕材124が、架台122の取り付け位置を中心に回動し、回動した位置がストッパ126により所定の角度で留められた状態を示す。第2の天板112は、腕材124が所定の角度で留められることにより、その角度に応じた高さで水平状態を保ったまま支持される。産業用ロボット200は、第2の天板112と共に持ち上げられ、第2の天板112が保持される高さに配置される。腕材124の角度は、前述のように所定の角度で保持することができるので、それに応じてマニピュレータ200の高さを調節することができる。そして、図6(B)に示すように、腕材124を垂直に立設することで、第2の天板112及びマニピュレータ200を最も高い位置で保持することができる。このように、本実施形態に係る搬送台車100は、架台122、腕材124、及び第2の天板112の機械的な動作により、マニピュレータ200の高さを異ならせることができ、ストッパ126の機構によりその高さを保持することができる。
【0048】
なお、図6(A)及び図6(B)は、いずれもマニピュレータ200が架台122に収納された状態から取り出されて作動可能に配置された第2の状態を示す。図6(A)に示す中間的な状態では、マニピュレータ200が搬送台車100の手前から少し突き出た状態となる。この状態を利用すると、搬送台車100の手前に障害物があって台車本体102を動かすことができない場合でも、マニピュレータ200を作業対象に近付けることが可能となる。
【0049】
また、第2の天板112の最大高さは、腕材124の長さによって設定することができる。例えば、図6(B)に示すように、架台122の高さを支柱108の長さの略半分程度とすることで、第2の天板112が第1の天板110と略同じ高さとなるようにすることができる。また、架台122の高さを支柱108の長さの1/2以上とすることで、腕材124の長さを長くすることができ、第2の天板112の位置を第1の天板110の高さより高くすることができる。また、架台122の高さを支柱108の長さの1/2以下とすることで、腕材124の長さ短くすることができ、第2の天板112の位置を第1の天板110の高さより低くすることができる。このように本実施形態に係る搬送台車100によれば、架台122及び腕材124の寸法によって、構造的にマニピュレータ200の高さを設定することができる。
【0050】
なお、本実施形態においても、マニピュレータ200は、第2の天板112に着脱可能に設置され、搬送先で取り外し、別の作業台、スライダ等に設置するように構成されていてもよい。
【0051】
このように、本実施形態によれば、架台122、腕材124、及び第2の天板112の機械的な動作により、動的にマニピュレータ200の高さを異ならせることができる。また、架台122と腕材124の寸法によって構造的にマニピュレータ200の高さを制御することができる。そして、搬送台車100の移動時には、図5に示すように、架台122の間にマニピュレータ200を収納した状態とすることで、マニピュレータ200を安全に搬送することができる。また、搬送台車100は、架台122と腕材124の機構によりマニピュレータ200の高さを調節することができ、作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
100・・・搬送台車、102・・・台車本体、104・・・基台、106・・・キャスター、108・・・支柱、110・・・第1の天板、112・・・第2の天板、113・・・脚柱、114・・・ヒンジ、116・・・第1の固定部材、118・・・第2の固定部材、120・・・支持部材、122・・・架台、124・・・腕材、126・・・ストッパ、128・・・固定板、130・・・貫通孔、200・・・マニピュレータ、202・・・ベース、204・・・アーム部、206・・・関節部、208・・・手首部、210・・・エフェクタ、211・・・溶接トーチ、212・・・電源、214・・・コントローラ、216・・・ワイヤ供給装置、
図1
図2
図3
図4
図5
図6