(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびゴム成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20240307BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240307BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K9/06
C09C3/12
(21)【出願番号】P 2020060773
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-226532(JP,A)
【文献】特開2003-096249(JP,A)
【文献】特開2020-019849(JP,A)
【文献】特開2017-095656(JP,A)
【文献】特開2012-181471(JP,A)
【文献】特開2009-035578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレンに由来する構造単位(a1)と、炭素数3以上のα-オレフィンに由来する構造単位(a2)と、非共役ポリエンに由来する構造単位(a3)とを有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、および
(B)アルキルアルコキシシラン化合物により表面処理されたカーボンブラック
(ただしアルキルアルコキシシラン化合物およびシリカにより表面処理されたカーボンブラックを除く。)
を含
み、
前記表面処理されたカーボンブラック(B)の含有量が、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対し1~400質量部である、
ゴム組成物。
【請求項2】
前記非共役ポリエンが、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記α-オレフィンがプロピレンを含む請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
さらに架橋剤を含む請求項1~
3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載のゴム組成物の架橋物からなるゴム成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびゴム成形体に関し、より詳細にはエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを含むゴム組成物、およびその架橋物からなるゴム成形体関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、主鎖に不飽和結合を持たないため、共役ジエン系のゴムと比較して耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れている。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを含むゴム組成物、およびその架橋体は、上記性質を利用し、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品、ゴム引布等のゴム製品等に広く用いられている。中でも動的環境で使用されるシール部品では、耐摩耗性に優れたゴム製品が求められることから、カーボンブラックを配合し、補強性を高めることが、広く知られている(特許文献1、2など)。
【0003】
また、特許文献3、4には、アルコキシシラン化合物等で表面処理されたカーボンブラックをゴム成分に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-191863号公報
【文献】特開2012-31342号公報
【文献】特開平10-30067号公報
【文献】特開平10-46047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カーボンブラックが配合された従来のゴム組成物には、その架橋物の強度を高めるために、たとえばカーボンブラック等の補強材を増量すると、加工性が悪化(未加硫時の粘度上昇)したり、架橋物の柔軟性が低下したりする場合があった。
【0006】
そこで本発明は、従来品と同程度の加工性を有しながら、強度および柔軟性に優れる架橋物を製造することのできるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の表面処理がなされたカーボンブラックをゴム組成物に配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1]
(A)エチレンに由来する構造単位(a1)と、炭素数3以上のα-オレフィンに由来する構造単位(a2)と、非共役ポリエンに由来する構造単位(a3)とを有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、および
(B)アルキルアルコキシシラン化合物により表面処理されたカーボンブラック
を含むゴム組成物。
【0009】
[2]
前記非共役ポリエンが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)からなる群から選択される少なくとも1種を含む前記[1]のゴム組成物。
【0010】
[3]
前記α-オレフィンがプロピレンを含む前記[1]または[2]のゴム組成物。
[4]
前記表面処理されたカーボンブラック(B)の含有量が、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対し1~400質量部である、前記[1]~[3]のいずれかのゴム組成物。
【0011】
[5]
さらに架橋剤を含む前記[1]~[4]のいずれかのゴム組成物。
[6]
前記[5]のゴム組成物の架橋物からなるゴム成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るゴム組成物は、従来品と同程度の加工性を有しながら、強度および柔軟性優れる架橋物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るゴム組成物等ついてさらに詳細に説明する。
[ゴム組成物]
本発明に係るゴム組成物は、
(A)エチレン(a1)に由来する構造単位と、炭素数3以上のα-オレフィン(a2)に由来する構造単位と、非共役ポリエン(a3)に由来する構造単位とを有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(以下「共重合体ゴム(A)」とも記載する。)、および
(B)アルキルアルコキシシラン化合物により表面処理されたカーボンブラック(以下「表面処理カーボンブラック(B)」とも記載する。)
を含むことを特徴としている。
【0014】
<共重合体ゴム(A)>
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は、エチレンに由来する構造単位(a1)と、炭素数3以上のα-オレフィンに由来する構造単位(a2)と、非共役ポリエンに由来する構造単位(a3)とを有する。
【0015】
前記α-オレフィンの炭素数は、3以上、好ましくは3~20、より好ましくは3~8である。
前記α-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1および12-エチルテトラデセン-1が挙げられる。これらの中でも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0016】
これらのα-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記非共役ポリエンの例としては、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエンおよび4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエン
が挙げられる。これらの中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。
【0017】
これらの非共役ポリエンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレンに由来する前記構造単位(a1)と、α-オレフィンに由来する前記構造単位(a2)とのモル比((a1)/(a2))は、好ましくは50/50~95/5、より好ましくは60/40~80/20である。
【0018】
前記共重合体ゴム(A)中の、非共役ポリエンに由来する前記構造単位(a3)の割合は、好ましくは1.0~20.0質量%、より好ましくは3.0~15質量%、さらに好ましくは4.0~14質量%である。
【0019】
前記共重合体ゴム(A)の135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]は、通常、0.5~5.0dL/g、好ましくは0.5~4.0dL/gである。
前記共重合体ゴム(A)の例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネンランダム共重合体、およびエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネンランダム共重合体が挙げられる。
【0020】
前記共重合体ゴム(A)の製造方法としては、特に制限はなく、たとえば特許文献1(特開2012-31342号公報)の[0012]~[0018]に記載の方法を採用できる。
【0021】
<表面処理カーボンブラック(B)>
前記表面処理カーボンブラック(B)は、アルキルアルコキシシラン化合物により表面処理されたカーボンブラックである。表面処理されるカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の各種カーボンブラックが挙げられる。
【0022】
前記表面処理カーボンブラック(B)および表面処理されるカーボンブラックの平均粒径は、ゴム組成物の補強性および加工性の観点から、好ましくは20~50μm、より好ましくは20~40μmである。
【0023】
前記アルキルアルコキシシラン化合物は、下記式(B1)で表される化合物である。
R1
nSi(OR2)(4-n) …(B1)
(R1は炭素数1~20のアルキル基であり、
R2は炭素数1~4のアルキル基であり、
nは1~3の整数である。)
R1の炭素数は、1~20、好ましくは6~10である。
【0024】
R1は、好ましくは直鎖状のアルキル基である。
一分子中に複数個のR1が存在する場合、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
R1の例としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基が挙げられ、これらの中でも、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が好ましく、n-オクチル基が特に好ましい。
【0026】
R2の炭素数は、1~4、好ましくは1~2である。
一分子中に複数個のR2が存在する場合、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
R2の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0028】
nは1~3の整数、好ましくは3である。
前記アルキルアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシランが挙げられ、好ましくはn-オクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0029】
アルキルアルコキシシラン化合物によるカーボンブラックの表面処理は、従来公知の方法で行うことができる。
前記表面処理カーボンブラック(B)の市販品の例としては、「OST-8 DK」(大東化成(株)製)が挙げられる。
【0030】
本発明に係るゴム組成物中の前記表面処理カーボンブラック(B)の量は、物性(架橋物の強度および柔軟性)とロール加工性のバランスという観点から、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは1~400質量部、より好ましくは10~150質量部、さらに好ましくは50~100質量部である。
【0031】
カーボンブラックは、通常、表面にカルボキシル基、水酸基などを有するため、EPDMに配合すると、EPDMとの相溶性が悪く、かつカーボンブラック同士の凝集が見られる。一方、前記表面処理カーボンブラック(B)は、前記アルキルアルコキシシラン化合物に由来するアルキル基(前記R1)を有しているため、EPDMとの高い相溶性を有し、EPDM組成物中に良好に分散することから、前記表面処理カーボンブラック(B)を含む本発明のゴム組成物は、従来品と同等の加工性(たとえば、(未加硫)ゴム組成物のムーニー粘度により評価される。)を有しながら、強度および柔軟性に優れる架橋物を製造できるのではないかと推測される。
【0032】
<補強材>
前記表面処理カーボンブラック(B)は、本発明に係るゴム組成物において、前記共重合体ゴム(A)の補強材としても機能するが、本発明に係るゴム組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記表面処理カーボンブラック(B)以外の補強材を含んでいてもよい。
【0033】
このような補強材としては、合成ゴムの補強材として一般に使用されている補強材が挙げられる。具体例としては、シリカ、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、タルクおよびクレー、これらの表面をシランカップリング剤等で処理したもの、表面処理されていないカーボンブラック、ならびに表面処理されたカーボンブラック(前記表面処理カーボンブラック(B)を除く。)が挙げられる。
【0034】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記補強材が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記補強材の量は、前記補強材と前記表面処理カーボンブラック(B)との合計量として、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常10~800質量部、好ましくは20~300質量部である。
【0035】
<架橋剤>
本発明に係るゴム組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
前記架橋剤の例としては、イオウ、イオウ化合物等のなどの加硫剤、および有機過酸化物が挙げられる。
【0036】
(加硫剤)
加硫剤の例としては、イオウ(硫黄)およびイオウ化合物が挙げられる。
イオウの例としては、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウが挙げられる。イオウは、後述する有機過酸化物が用いられる場合に、架橋助剤としても機能する。
【0037】
イオウ化合物の例としては、塩化イオウ、二塩化イオウ、高分子多硫化物、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物(たとえば、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノ-ルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン)が挙げられる。
【0038】
これらの中でもイオウが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記加硫剤が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記加硫剤の量は、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0039】
(加硫促進剤)
前記加硫剤には加硫促進剤を併用することが好ましい。
前記加硫促進剤の例としては、
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾ-ルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾ-ルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物;
2-メルカプトベンゾチアゾール(例:サンセラーM(商品名、三新化学工業(株)製))、2-(2',4'-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(例:ノクセラーMDB-P(商品名、大内新興化学工業(株)製))、ジベンゾチアジルジスルフィド(例:サンセラーDM)等のチアゾール系化合物;
ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;
アセトアルデヒド-アニリン反応物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド-アンモニア系化合物;
2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;
チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、N,N’-ジブチルチオユリア(例えば、サンセラーBUR)、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;
テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA)等のチウラム系化合物;
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZT)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーEZT)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛鉛(例えば、サンセラーBT)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;
ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;
亜鉛華(酸化亜鉛)
が挙げられる(「サンセラー」は、いずれも三新化学工業(株)製の加硫促進剤の商品名である。)。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記加硫促進剤が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記加硫促進剤の量は、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常0.1~20質量部、好ましくはは0.2~10質量部である。
【0041】
(有機過酸化物)
前記有機過酸化物の例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが挙げられる。これらの中でも、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記有機過酸化物が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記有機過酸化物の量は、前記共重合体ゴム(A)100gに対して、通常0.0003~0.05mol、好ましくは0.001~0.03molである。
【0043】
(架橋助剤)
前記有機過酸化物には架橋助剤を併用することが好ましい。
前記架橋助剤の例としては、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニルベンゼンが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記架橋助剤が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記架橋助剤の量は、使用される前記有機過酸化物1molに対して、0.5~2mol、好ましくは、およそ等モルである。
【0045】
<軟化剤>
本発明に係るゴム組成物は、軟化剤を含んでいてもよい。
前記軟化剤としては、ゴム組成物に通常配合される軟化剤を使用できる。
【0046】
前記軟化剤の例としては、
プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ;
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質
が挙げられる。これらの中でも石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記軟化剤が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記軟化剤の量は、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常150重量部以下、好ましくは130重量部以下である。
【0048】
<加工助剤>
本発明に係るゴム組成物は、加工助剤を含んでいてもよい。
前記加工助剤としては、ゴム組成物に通常配合される加工助剤とを使用できる。
【0049】
前記加工助剤の例としては、
ゴリシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;
ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩;
リシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルチミン酸エステル、ラウリン酸エステル等の高級脂肪酸エステル類
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記加工助剤が用いられる場合、本発明に係るゴム組成物中の前記加工助剤の量は、前記共重合体ゴム(A)100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【0051】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物には、その架橋物(加硫物)の用途、性能に応じて、上述の成分以外にも、一般にゴム製品の製造で用いられる各種公知の配合剤、たとえば、老化防止剤、活性剤、反応抑制剤、着色剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、防カビ剤、素練促進剤、粘着付与剤、染料(分散染料、酸性染料等)、無機・有機顔料、界面活性剤、発泡のための配合剤(発泡剤、発泡助剤など)、または脱泡剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選定し、適切な量で配合してもよい。
【0052】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明に係るゴム組成物は、その原料として前記共重合体ゴム(A)および前記表面処理カーボンブラック(B)を使用することを除いて、ゴム組成物の従来公知の製造方法によって製造することができる。
【0053】
本発明に係るゴム組成物の製造方法としては、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、前記共重合体ゴム(A)、前記前記表面処理カーボンブラック(B)、および必要に応じて、補強材、軟化剤(油展用)、加工助剤、加硫促進剤などを、80~170℃の温度で2~20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、軟化剤、加硫剤(たとえば、イオウ)、加硫促進剤、および必要に応じて、発泡剤、架橋剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤、発泡助剤、脱法剤を追加混合し、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより製造することができる。
【0054】
[ゴム成形体]
本発明に係るゴム成形体は、本発明に係るゴム組成物の架橋物(加硫物)からなり、優れた摺動性を持つ。そのため、自動車部品、家電関連部品、土木・建材関連部品、雑貨ならびに日用品をはじめ種々の用途に用いることができる。
【0055】
このような用途の例としては、
自動車用、航空機用ウェザーストリップ(例えばドアウェザーストリップ、トランクウェザーストリップ、ラゲージウェザーストリップ、ルーフサイドレールウェザーストリップ、スライドドアウェザーストリップ、ベンチレータウェザーストリップ、スライディングループパネルウェザーストリップ、フロントウインドウェザーストリップ、リヤウインドウェザーストリップ、クォーターウインドウェザーストリップ、ロックピラーウェザーストリップ、ドアガラスアウナーウェザーストリップ、ドアガラスインナーウェザーストリップ)、
ダムウインドシールド、グラスランチャネル、ドアミラー用ブラケット、シールヘッドランプ、シールカウルトップ;
自動車用ホース(例えばブレーキホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアークリーナーホース、送水用ホース)、
ガス用ホース、
建材シール部品(例えばガスケット、エアータイト、目地材)
戸当たり部、
家電シール部品、
自動車用カップ・シール材(例えばマスタシリンダーピストンカップ、ホイールシリンダーピストンカップ)、
産業機械用シール材、シート、伝動ベルトまたは搬送用ベルト、被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品、OA機器用ロール、工業用ロール、家庭用ゴム製品およびシューズ
が挙げられる。
【0056】
本発明のゴム成形体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、発泡成形体であってもよい。発泡成形体の例としては、ドアスポンジ用スポンジ、オープニングトリム用スポンジ、フードシール用スポンジ、トランクシール用スポンジ等のウェザーストリップ用スポンジ材、断熱スポンジ、ダムラバー等高発泡スポンジ材が挙げられる。
【0057】
(ゴム成形体の製造方法)
本発明に係るゴム成形体は、通常一般のゴムを加硫(架橋)するときと同様に、未加硫の本発明に係るゴム組成物を、上述したような方法で調製し、次いで(または同時に)所望の形状に成形し、次いで加硫(架橋)することにより製造することができる。
【0058】
上記のようにして調製された未加硫の本発明に係るゴム組成物は、種々の成形法により成形、加硫することができ、好ましくは圧縮成形、射出成形、注入成形などの型成形により成形、加硫することができる。
【0059】
圧縮成形の場合、たとえば、予め秤量した未加硫の本発明に係るゴム組成物を型に入れ、型を閉じた後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱することにより、目的とする加硫ゴム成形体が得られる。
【0060】
射出成形の場合、たとえば、リボン状あるいはペレット状の配合ゴムをスクリューにより予め設定した量だけポットに供給し、引き続き予備加熱された配合ゴムをプランジャーにより金型内に1~20秒で送り込み、配合ゴムを射出した後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱することにより、目的とするゴム成形体が得られる。
【0061】
注入成形の場合、たとえば、予め秤量した配合ゴムをポットに入れピストンにより金型内に1~20秒で注入し、配合ゴムを注入した後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱することにより、目的とする加硫ゴム成形体が得られる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
〔未加硫ゴム特性〕
<ムーニー粘度>
ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用い、JIS K6300に準拠して、未加硫ゴムのムーニー粘度ML(1+4)100℃を測定した。
【0063】
〔加硫ゴム特性〕
<硬さ>
JIS K6253に準拠して、シートの硬さ(タイプAデュロメータ硬さ)を測定した。ただし、厚さ2mmのゴムシート6枚を、平らな部分を積み重ねて厚さ約12mmとしたものを、試験片として用いた。試験片として、異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0064】
<引張特性>
JIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、ゴムシートの切断時引張強さ(Tb)〔MPa〕および切断時伸び(Eb)〔%〕を測定した。
【0065】
[比較例1]
エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン三元共重合体(商品名:三井EPT 4045M、三井化学(株)製)100質量部と、ステアリン酸1質量部と、亜鉛華5質量部と、カーボンブラック(FEF)(商品名:旭#60UG、旭カーボン(株)製、諸物性は表1に記載のとおり。)80質量部と、パラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスPW-380、出光興産(株)製)50質量部とを1.7リットル容量のバンバリーミキサーで5分間混練した。
【0066】
さらに、この配合物を表面温度が50℃の6インチロールに巻き付けた後、この配合物236質量部に対し、加硫促進剤(商品名:サンセラーM、三新化学工業(株)製)を0.5質量部、加硫促進剤(商品名:サンセラーTT、三新化学工業(株)製)を1質量部、および硫黄を1.5質量部加えて8分間混練し、得られた配合物を放冷した。
【0067】
この配合物(未加硫ゴム組成物)から、プレス成形機を用いて160℃で20分間加硫を行なって厚さ2mmのゴムシート(加硫ゴム)を調製した。
上記のようにして得られた配合物(未加硫ゴム)およびゴムシート(加硫ゴム)について、上記方法により諸物性を測定した。結果を表2に示す。
【0068】
[実施例1]
カーボンブラック(FEF)をトリエトキシカプリリルシランで表面処理されたカーボンブラック(商品名:OST-8 DK、大東化成(株)製、諸物性は表1に記載のとおり。)80質量部に変更したこと以外は比較例1と同様にして、配合物(未加硫ゴム)を、次いでゴムシート(加硫ゴム)を調製した。
【0069】
上記のようにして得られた配合物(未加硫ゴム)およびゴムシート(加硫ゴム)について、上記方法により諸物性を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【0071】